説明

巻取システムのために設計されたクリールを動作するための方法および装置ならびに対応するクリール

本発明は、そこから同じ種類または異なる種類のいくつかの糸が同時に巻取機(3)によって引出される、複数の巻取ヘッド(7)を含むクリール(2)に関する。前記クリールは、各巻取ヘッドに関連付けられる少なくとも1つの動的な糸張り装置(6)を含み、そこで変動する制動力が糸に与えられて、予め定められた糸の張りを生成する。各糸引張り装置(6)は関連付けられた駆動モータ(20)によって起動され得る。前記クリール(2)は、巻取機(3)の始動および/または中止中に角速度または糸速度に基づいて糸張力を制御するための制御装置と、巻取機(3)の定常の通常段階中に糸張力を調整するためのレギュレータ(25)とを含む。制御装置およびレギュレータ(25)は、糸張力または各糸の出力張力が設定点の値に相対してほぼ一定のレベルに維持され得るように設計される。糸張り装置(6)を制御するために必要とされる制動力の調整(32)の質を決定するために、外乱の質を予め補償することが実現される。前記予めの補償は、入力品質として糸速度(v)、少なくともモータの慣性の補償された補正量(34)、および駆動モータ(20)の摩擦係数から計算される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の前文に従った、巻取システムのために設計されたクリールを動作するための方法および装置、ならびに対応するクリールに関する。この種類の方法はクリール上のすべての糸に対して最適な張力の均等化を目的とする。なぜならば、ボビンステーションと巻取機との間を糸が走る長さとこれに関連付けられる糸の経路とが異なると、対応する均等化なしには糸張力が異なることに繋がるからである。これは結果として均一でない巻線密度を生じる。
【背景技術】
【0002】
各糸の糸の張りが一定の所望の値にできるだけ近く保たれるような、クリールを動作するための方法は既に公知である。したがって、たとえば、EP−A−1 162 295は、複数のボビンステーションを有する整経システムについてクリールを動作するための方法を記載し、その方法では、それぞれの糸は各ボビンステーションにおける糸張り器による制動力で作用している。この場合、糸の張りは巻取動作中に継続して測定される。このように測定された糸の張りの実際の値または初期の糸張力の値が所望の値と比較され、差異が検出されると、各糸張り器が対応する駆動モータによって起動され、この値に近づけられる。実際には、確かに記載されている調整方法は、たとえば円錐整経機などの巻取機の一定の回転速度における通常運転中は、優れた結果を達成することが示されている。しかしながら、他の運転状態、特に始動動作または停止動作中、しばしば調整が過度となる。特に、クリールと巻取機との間に長い糸セクションを有する巻取システムにおいては、この方法を扱うことが困難であることがわかっている。高速運転中、特に巻取機の始動時または停止時において、糸セクションは、糸の張りの調整中の張力の適合があまりにも速いために振動し得る。糸は(糸の張りが大きすぎる場合には)切れたり、(糸の張りが小さすぎる場合には絡まる危険性があって)撓んだりする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、知られている欠点を回避すること、特に最初に言及された種類の方法を与えることであり、それは、特に始動動作または停止動作中、非定常の運転状態においてさえ、すべての糸の張力の最適な均等化を確実にすることである。特に、各糸の糸の張りは、すべての運転状態において特に一定な所望の値で維持することができなければならない。この方法は、クリールと巻取システムとの間の糸セクションが長い巻取システムに特に好適である。さらに、クリールを動作するための装置の設置は可能な限り低コストで実現されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、請求項1の特徴を有する方法によってこれらの目的が達成される。
たとえば整経ドラムを有する円錐整経機などの巻取機は、ある角速度で回転する。角速度は定常の通常運転においてはほぼ一定であることができ、非定常の運転状態においては変動し得る。各ボビンステーションにおいては、糸は、実質的に初期の糸の張力に対応する特定の糸の張りを生成するために、少なくとも1つの糸張り器の助けを借りて、変動する制動力で作用する。各糸張り器は、糸の張りを所望の値に維持するために、始動動作および/または停止動作中、巻取機の角速度を介して制御される。始動動作は、このコンテキストでは、巻取機が0から定常の通常運転まで加速するような、非定常の運転状態を意味するとして理解されるべきである。停止動作中、定常の通常運転から停止までの巻取機のブレーキが発生する。各糸張り器には駆動モータが割り当てられる。駆動モータは糸張
り器を制御するために起動される。このように各糸は簡単なやり方で必要な制動力で作用することができる。さらに、角速度は簡単な手段によって測定され得る。この制御の利点は、各糸張り器がすべての運転状態、特に始動動作または停止動作の全期間中でさえ、正確に設定されることである。非定常の運転状態における糸張り器の制御は、調整と比較すると、糸の振動の確立または好ましくない励起が回避されるという利点を有する。当然のことながら、各糸張り器が、角速度の測定に代替して、糸の糸速度を介して直接に制御されることも考慮され得る。
【0005】
各糸張り器を制御するための入力変数は、糸速度である。したがって、糸張り器を制御するためには、巻取機の角速度が始動動作および/または停止動作中に継続して測定され、かつ糸速度に変換されると、有利であろう。これは特に、巻取機において糸パッケージの層の厚さを含むことで特に有利に行われる。層の厚さは対応する装置によって測定され得る。層の厚さは特に糸の種類に不可避的に依存するので、層の厚さを測定しなくても、計算することさえ可能である。この場合、正確な結果を得るために、プレスローラの圧力を含むこともできる。巻取機の角速度が測定されることによって、当然、糸の加速度を糸速度と同様のやり方で検出することができる。したがって、非定常の運転状態において、全期間中の糸の挙動がわかり、したがって糸張り器の正確な制御を確実にする。上述のように、クリールと巻取機との間において糸の糸速度を直接に測定することも考慮され得る。
【0006】
糸張り器を制御するために必要な制動力は、糸速度と、糸張り器に特有、特に糸張り器の駆動モータのモータに特有のパラメータとから計算することができる。特に、モータ慣性および駆動モータの摩擦係数が、糸張り器を制御するための制御関連パラメータとして考慮に入れられる。
【0007】
糸張り器を制御するために必要な制動力についての操作変数を決定するために、糸速度を入力変数として外乱変数補償が補正変数を計算することができる。この場合、有利なことに、少なくともモータの慣性および駆動モータの摩擦係数が補償される。モータ慣性、摩擦係数、および有利には駆動モータのトルク定数の値もまた簡単なやり方で検出され得る。たとえば、モータ慣性、摩擦係数およびトルク定数の値は、それぞれの製造業者のデータシートから読取ることができる。高価な測定装置は不要になり得る。外乱変数補償はこのように簡単なやり方で実行することができる。駆動モータはトルク調整することができ、前記操作変数および補正変数は電流の形式である。巻取機の始動または停止中の糸の張力の上述の制御は、巻取機の定常段階(通常運転)の調整と組合せることができる。この目的のために、通常運転中、各糸の糸の張りの実際の値が糸張力センサによって継続的に検出され、コントローラによって所望の値に調整される。このような調整は、たとえばEP−A−1 162 295に記載される。この組合された制御および調整は、すべての運転状態におけるすべての糸の最適な糸の張りプロファイルを確実にする。
【0008】
コントローラは、いずれの運転状態(始動、通常運転、停止)が優勢であるかを糸速度プロファイルから検出する。調整は、1つの運転状態から別の運転状態(たとえば始動から定常の通常運転へ)への変化または遷移の時点において、スイッチが入ったり切れたりする。たとえば、糸は巻取機の始動中には糸速度を上げる(この場合、糸または巻取機に一定の加速度が与えられるのが特に好ましい)。糸加速度がゼロに近づくかちょうどゼロになるとすぐに、コントローラにスイッチが入れられる。このように簡単なやり方で制御を調整に変えることができる。当然、制御から調整への変化(またはその逆)は、特定の最終値に基づいて巻取機の角速度を介して直接に起ることもできる。
【0009】
本発明のさらなる局面は、特に整経機などの巻取システムのクリールを動作するための装置、特に制御および調整装置に関し、クリールは、ボビンステーションから取り上げら
れる同一または異なる一般的な種類の複数の糸を連結して巻取るために巻取機の複数のボビンステーションを有する。この装置は、各糸の一定の糸の張りを維持するために、巻取機における始動動作および/または停止動作中の糸の張りを制御するための外乱変数補償を有し、それは巻取機の回転エンコーダに入力側で動作的に接続され、前記回転エンコーダは巻取機の角速度のための信号を送る。この場合、変動する角速度は外乱変数を表わす。糸速度の変化は糸の張りの変動につながる。外乱変数補償の助けを用いて、糸システムの故障は簡単なやり方で補償される。特に巻取システムのクリールを動作するための上述の方法において、制御および調整装置を用いることができる。外乱変数補償は、回転エンコーダに接続される代わりに、糸の糸速度を測定するための、たとえば偏向ローラの形の測定装置に接続されてもよい。
【0010】
制御および調整装置は、糸の糸速度を測定し得る速度測定装置を有してもよい。回転エンコーダを介して駆動される巻取機は巻取機の角速度のための信号を送ることができ、この信号は糸速度に変換され得る。代替的には、糸速度はたとえば偏向ローラの助けによって直接検出されてもよい。
【0011】
さらに、巻取機の通常運転中に糸の張りを調整するためにコントローラが与えられてもよい。このような調整装置と外乱変数補償を有する制御装置との組み合わせは、各糸の糸の張りの事実上の最適な設定を確実にする。各糸の糸引張りはこのように簡単なやり方で各運転状態についてほぼ一定の所望の値に保つことができる。
【0012】
糸張り器を制御するために必要な制動力のための操作変数を生成するための加算装置が与えられると有利であり、それにより外乱変数補償によって出力された補正変数が糸張り器の制動力の所望の値に加算される(または信号に依存して減算される)。加算装置が、巻取機の通常運転中に糸の張りを調整するためにコントローラによって出力されるコントローラ補正変数をも加算することができれば特に有利である。
【0013】
外乱変数補償を有する制御装置とコントローラを有する調整装置とが各糸に与えられ得る。これらの構成要素は、特にCANおよび/またはPROFIバスシステムなどのバスシステムを介して互いにリンクされることができる。
【0014】
本発明のさらなる局面は、特に上述の種類の方法に従って作動され得るクリール、特に上述の種類の制御および調整装置をも備え得るクリールに関する。クリールは、巻取機の始動動作および/または停止動作中の巻取機の角速度の関数または糸の糸速度の関数として糸の張りを制御するための制御装置を有する。さらに、クリールは、巻取機の定常の通常運転中に糸の張りを調整するための少なくとも1つのコントローラを備えた調整装置を有する。この場合、制御装置および調整装置は、駆動モータを介して設定され得る糸張り器の助けによって、各糸の糸の張りが所望の値に対してほぼ一定に保たれ得るようなやり方で構成される。特に好適な駆動モータは直流モータである。
【0015】
糸張り器(または糸ブレーキ)として動的な糸張り器が選択されるのが有利である。このような糸張り器は、回転軸を備えた少なくとも1つの回転可能な回転体を有し、糸は制動力で作用するために回転体の外周領域で少なくとも部分的に係合し、回転体は制動力を設定するためにそれぞれの駆動モータを介して駆動可能である。このような糸張り器は、たとえばEP−A−950 742またはUS4,413,981に記載される。しかしながら、他の糸張り器、たとえばディスクブレーキを備えた糸張り器や、さらに、適切であれば、眼球タイプのプレテンショナまたはクレープタイプのプレテンショナも当然に想定され得る。回転体を備えた糸張り器は、たとえばディスクブレーキなどの摩擦ブレーキと比較して、回転体の慣性質量が糸の走りに対して(安定させるという)有益な効果を有する点で有利である。しかしながら、1つの回転可能な回転体のみを有する糸張り器も特
に好適である。なぜならば、ほんの数個の制御関連および調整関連のパラメータしか有さないので簡単に取扱えるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のさらなる利点および個々の特徴は下記の例示的実施例の説明および図面から集めることができる。
【0017】
図1は、1として指定され、クリール2および巻取機3を備える、たとえば整経システム、たとえば円錐整経機などの巻取システムを示す。しかしながら、シングルワープまたはビーミング機械も当然想定されてもよい。個々の糸ボビン4はクリールのボビンステーション7に取付けられ、連結して取上げられる糸5は、各場合において、予め定められた糸の張りを維持するために少なくとも1つの糸張り器(または糸ブレーキ)6を通過する。図1による例は平行なクリールを示す。この場合のボビンは縦および横の行を形成し、各場合において各クリール側の縦の行は糸のグループを形成し、その糸がボビンステーションから巻取機まで走る長さが同一である。しかしながら、たとえばVクリールなどの他のいかなる種類のクリールでも同じ原理を利用することができる。
【0018】
異なる一般的な種類のボビン、たとえば異なる糸質または異なる糸色のボビンを、糸の走る長さとは関係なく、異なるステーションにおいてクリールに取付けることができる。各場合において、異なる一般的な種類の糸が、クリール長さ補償として知られるものに依存せずに、個々の制動力に対して晒され得る。
【0019】
各個々の糸のための糸張力センサ9は、巻取機3の最も近くにあるクリール側8の領域に配列されるのが好ましい。しかしながら、糸張力センサの配列はこの時点においては強制的ではない。基本的に、糸張力センサを巻取機の巻取ポイントにできるだけ近く導くことが有利である。
【0020】
糸はクリールを出た後巻取機3の領域に入り、そこで糸はまず綾取り筬10を通り、そこで糸は正しいシーケンスを獲得する。糸は続いてワーピングリード11に与えられ、そこで一緒にされて、偏向および/または測定ローラ13を介して、パッケージ15または巻取ビーム14となる糸複合体12として続いて巻取られる。
【0021】
巻取システム1のクリール2を動作するために、制御および調整装置17が与えられる。この装置17は巻取機3の回転のための回転エンコーダ16に接続される。図1による極めて簡略化された図において、装置17は入力側において回転エンコーダ16から信号29を、および張力センサ9から信号30を受取る。装置17は出力側において、操作変数32によって制御され調整される糸張り器6に接続される。たとえば、角速度ωのための信号が入力信号29として与えられる。特に好適な入力信号29は、たとえば角速度ωおよびパッケージ15の測定された厚さから計算することができる糸速度vのための信号である。しかしながら、糸速度vは偏向ローラ13の助けを用いて直接測定されることもできる。
【0022】
図2は、たとえばボビン4から巻出された糸5がいかに糸張り器6を通るかを示す。ここで、糸が走る方向において一方が他方の後ろになるように配列された2つのブレーキアクチュエータ装置を有するディスクブレーキ18によって制動力が与えられる。ディスクブレーキは、U字型脚部に糸5の通過のために配列される糸案内開口部を備えたU形状の縦の支持輪郭に収容される。図3はディスクブレーキを備えた糸張り器のさらなる詳細を示す。個別の駆動モータ20が各ディスクブレーキ18の上の支持輪郭に直接に締め付けられる。この駆動モータは、調整支持部22を介して、ブレーキディスクに負荷をかけたり緩めたりする圧力素子23を起動する。
【0023】
しかしながら、1つしか回転可能な回転体を有しない糸張り器が特に好適であることが示されている。図4に示されるように、特に好適な糸張り器6は、駆動モータ(示されない)に接続される1つだけの回転可能な回転体から構成される。回転体は、この場合、半径rおよび回転軸Rを有する糸車輪19として構成される。図5から明らかなように、糸5はローラ19の周りを複数回巻かれる。しかしながら、単一の巻でも当然十分であろう。次に糸5の糸の張りが糸センサ9の助けを用いて測定される。制御および調整装置の下記の説明は、図4および図5による糸張り器に関連する。このような糸車輪のセットアップおよび動作モードは、たとえばEP−A−950 742に記載される。しかしながら、特にUS4,413,981から知られる糸車輪もまた、糸車輪として与えられ得る。当然、下記に記載された制御および調整原理は、他の動的な糸張り器(図面2/図3参照)についても用いられ得る。したがって、糸がニップを介して2つのローラ間に導かれるローラテンショナもまた適切である。
【0024】
図6は、巻取機のクリールを動作するための制御および調整装置を有するブロック図を示す。糸のための制御されたシステムは26によって表わされる。コントローラ25は巻取機の定常の通常運転中の糸の張りを調整する。このような調整方法は、たとえばEP−A−1 162 295から公知である。継続的に測定された糸の張りの実際の値30は、コントローラ25において、対応する所望の値31と比較され、所望の値と実際の値との間に偏差が検出されると、糸張り器は、実際の値が所望の値に近づくような方法でコントローラの助けを用いて調整される。結果として、コントローラ25は、駆動モータを駆動するための定常の電流に対応する信号36と、実際の値の所望の値からの偏差をカバーして含む補正変数35とを出力側に与える。加算装置40においては、2つの信号35および36が加算され、定常の通常運転のために、糸張り器の駆動モータのための操作変数(稼動電流)32を与える。
【0025】
特別な運転状態については、特に巻取機の始動または停止については、上述の調整方法はいくらか適当ではない。これは特に糸の長さが長い巻取システムに当てはまる。これらの非定常の運転状態、たとえば巻取機の始動または停止のために、外乱変数補償24が与えられる。測定された糸速度vは、この場合、外乱変数補償24のための入力信号29として役立つ。外乱変数補償24は出力側において、加算装置40で所望の変数または所望の電流36から減算される補正変数(補正電流)34を送る。始動動作または停止動作中、コントローラ25からの補正電流35は、たとえば0であり得る。
【0026】
図6はさらに、27において、たとえば千鳥巻きのボビンなどのボビンから取上げることの影響を示す。ボビンから取上げることに起因する糸の張りの外乱は、外乱信号33を送る。この場合のコントローラ25の仕事は、特にこの影響を均すことである。
【0027】
図7は、外乱変数補償24の詳細を示す。糸速度vは、乗算器50(1/r)によって、半径rを有する糸車輪の回転速度に変換される。図4/図5による糸張り器は、糸車輪の半径に加えて、駆動モータのパラメータによって特徴付けられる。したがって、モータのモータ慣性J、摩擦kr、およびトルク定数Kmが制御関連パラメータとして検出される。
【0028】
糸の加速の値は装置55の助けを用いて計算される。乗算器53(モータの慣性J)は加速度をトルクの値に変換する。このトルクは、加算装置41において、駆動モータの摩擦によって生成されたさらなるトルクに加算される。この目的のために、糸車輪の回転速度は摩擦数krによって乗算される(乗算器54)。最後に、トルクの合計が乗算器52によって補正変数34(駆動モータに対する補正電流)に変換される(トルク定数1/Km)。
【0029】
図8はコントローラ25の簡略化されたブロック図である。糸の張りの所望の値31が、乗算器51および52(51の半径r、52のトルク定数1/Km)を介して糸張り器の駆動モータの所望の電流36に変換される。さらに、加算装置42によって、実際の値30と所望の値31との偏差が形成される(この場合、実際の値は負の信号を有する)。このように形成された糸の張りの差は、積分器43および続いて乗算器51(半径r)および52(トルク定数1/Km)を介し、補正変数または補正電流35に変換される。
【0030】
図9aおよび図9bは、停止動作中の糸の張りのプロファイルおよび操作変数または糸張り器の駆動モータのための稼動電流32の関連するプロファイルを示す。曲線29は糸の糸速度を示す。これは時間ポイントT0までは実質的に一定であり、停止までのタイムスパンΔTにおいてはほぼ直線になる。糸の張りに対して予め定められた所望の値は31によって表わされる。明らかに、測定された実際の値30は、調整によって、時間ポイントT0までは一定の所望の値に沿った狭い幅の領域で動く。次に時間ポイントT0において、糸張り器の調整から制御への変化が起こる。これは曲線30が示すように、タイムスパンΔTの間は比較的所望の直線31に近い。図9は、タイムポイントT0からは、糸張り器を制御するために、駆動モータを制動するための増大した稼動電流32が用いられることを示す。
【0031】
図10は、上述の方法に従って制御され調整される巻取システム1の、極めて簡略化された図を示す。糸張り器6および糸センサ9は、この場合、クリールの左側(LS)および右側(RS)に割り当てられる。高品質なデータを処理するために、個別の構成要素は、たとえばCANバス原理において動作するデータ線43および44を介して互いに接続される。巻取機のメモリプログラムされた制御をクリールのメモリプログラムされた制御(SPS)に接続するデータ線45は、PROFIバスとして設計される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】クリールを備えた巻取システムの概略的側面図である。
【図2】糸センサを備えた糸張り器を有する個別のボビンステーションの上面図である。
【図3】図2による糸張り器の斜視図である。
【図4】糸張り器および糸センサの上面図である。
【図5】図4による糸張り器の側面図である。
【図6】巻取システムの制御および調整装置の簡略化されたブロック図である。
【図7】図6による制御および調整装置のための外乱変数補償を示す図である。
【図8】図6による制御および調整装置のためのコントローラを示す図である。
【図9a】巻取システムの停止動作中の糸の張りの測定されたプロファイルを示す図である。
【図9b】図9aの駆動モータのための稼動電流の関連するプロファイルを示す図である。
【図10】巻取システムの極めて簡略的な図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のボビンステーション(7)を有する巻取システム(1)、特に整経システムなどのためのクリール(2)を動作するための方法であって、この方法において、同一または一般的な種類の複数の糸(5)は、角速度(ω)において回転する巻取機(3)によってボビンステーションから連結的に取上げられ、糸は、特定の糸の張りを生成するために、少なくとも1つの糸張り器(6)の助けを用いて各ボビンステーションにおいて変動する制動力で作用し、糸張り器はこれに割り当てられた駆動モータ(20)によって起動され、巻取機(3)の始動動作および/または停止動作中に各糸の糸引張りを所望の値(31)に対してほぼ一定に保つために、各糸張り器(6)が巻取機(3)の角速度を介して制御されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
巻取機(3)の角速度(ω)は始動動作および/または停止動作中に継続して測定され、糸速度(v)に変換され、各糸張り器(6)は制御のための入力変数としての糸速度(v)によって制御されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
糸張り器(6)を制御するために必要な制動力は、糸速度(v)と、糸張り器に特有、特に糸張り器(6)の駆動モータ(20)のモータに特有のパラメータ(J,kr)とから計算されることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
糸張り器(6)を制御するために必要な制動力について操作変数(32)を決定するために、糸速度(v)を入力変数として、外乱変数補償(24)が補正変数(34)を計算することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
糸張り器(6)を制御するために必要な制動力について操作変数(32)を決定するために、糸速度(v)を入力変数として、外乱変数補償(24)が、駆動モータ(20)の少なくともモータの慣性(J)および摩擦係数(kr)によって補償される補正変数(34)を計算することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
巻取機(3)の通常運転中、各糸の糸引張りの実際の値(30)が糸張力センサ(9)によって継続して検出され、コントローラ(25)によって所望の値(31)に調整されることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
巻取システム(1)、特に整経システムのためのクリール(2)を動作するための装置であって、複数のボビンステーション(7)を有するクリール(2)と、ボビンステーションから取上げられる、同一または異なる一般的な種類の複数の糸(5)を連結して巻取るための巻取機(3)とを備え、装置は、各糸の一定の糸の張りを維持するために、巻取機(3)の回転エンコーダ(16)の入力側で動作的に接続される、巻取機(3)の始動動作および/または停止動作中の糸の張りを制御するための外乱変数補償(24)を有し、その回転エンコーダによって巻取機(3)の角速度(ω)のための信号が生成され得ることを特徴とする、装置。
【請求項8】
速度測定装置が与えられ、それにより、特に巻取機(3)の角速度(ω)に基づいて糸速度(v)を測定することができることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
巻取機(3)の通常運転中に糸の張りを調整するためのコントローラ(25)を与えることをさらに特徴とする、請求項7または8に記載の装置。
【請求項10】
糸張り器(6)を制御するために必要な制動力について操作変数(32)を生成するための加算装置(40)が与えられ、それは、外乱変数補償(24)によって出力された補
正変数(34)を糸張り器(36)の制動力についての所望の変数(36)に加算することを特徴とする、請求項7から9のいずれかに記載の制御および調整装置。
【請求項11】
同一または異なる一般的な種類の複数の糸が巻取機(3)によってそこから同時に取上げられることができる複数のボビンステーション(7)を有するクリール(2)であって、各ボビンステーションに割り当てられた少なくとも1つの動的な糸張り器(6)を有し、糸は、特定の糸の張りを生成するために、変動する制動力で作用することができ、各糸張り器(6)はそれに割り当てられた駆動モータ(20)によって起動され、巻取機(3)の始動動作および/または停止動作中の角速度または糸速度の関数として糸の張りを制御するための制御装置と、巻取機(3)の定常の通常段階中に糸の張りを調整するためのコントローラ(25)とが与えられ、制御装置およびコントローラ(25)は、各糸の糸の張りまたは最初の糸張力が所望の値に対してほぼ一定に保たれ得るように構成されることを特徴とする、クリール(2)。
【請求項12】
各糸張り器(6)は、各場合において、回転軸(R)を備えた少なくとも1つの回転可能な回転体(19)を有し、糸は制動力で作用するために回転体の外周領域で少なくとも部分的に係合し、前記糸は好ましくは前記回転体の周りを少なくとも1回巻くことができ、回転体は制動力を設定するためにそれぞれの駆動モータ(20)を介して駆動され得ることを特徴とする、請求項1に記載のクリール(2)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−534404(P2008−534404A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503466(P2008−503466)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060619
【国際公開番号】WO2006/103156
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(594038520)ベニンガー・アクチェンゲゼルシャフト (1)
【氏名又は名称原語表記】BennINGER AG
【Fターム(参考)】