巻取機
【課題】巻取機において、コンタクトローラを傾斜させるための傾斜装置が壊れてしまった場合にも、糸の巻き崩れや、コンタクトローラ周辺の部分の破損などが生じにくくする。
【解決手段】巻取機1においては、ボビンBに巻き取られる糸Yの量が増加するにつれて、ターレットテーブル3が、ボビンホルダ2がコンタクトローラ11から離れる方向に回動する。傾斜機構5は、このターレットテーブル3の回動を、カム31、カムロッド32、倍力アーム33、タイロッド34及び傾斜アーム35により、支持部材12を昇降自在に支持するガイド軸13に伝達することでガイド軸13を傾斜させる。これにより、ボビンホルダ2に装着された複数のボビンBに巻き取られる糸Yの量が増加して、ボビンホルダ2が撓むのに合わせて、支持部材12に支持されたコンタクトローラ11が傾斜する。
【解決手段】巻取機1においては、ボビンBに巻き取られる糸Yの量が増加するにつれて、ターレットテーブル3が、ボビンホルダ2がコンタクトローラ11から離れる方向に回動する。傾斜機構5は、このターレットテーブル3の回動を、カム31、カムロッド32、倍力アーム33、タイロッド34及び傾斜アーム35により、支持部材12を昇降自在に支持するガイド軸13に伝達することでガイド軸13を傾斜させる。これにより、ボビンホルダ2に装着された複数のボビンBに巻き取られる糸Yの量が増加して、ボビンホルダ2が撓むのに合わせて、支持部材12に支持されたコンタクトローラ11が傾斜する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビンに糸を巻き取る巻取機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の巻取機においては、片持ち支持されたボビンホルダに装着された複数のボビンに、ボビンホルダと平行に延びたコンタクトローラ(タッチローラ)を当接させることによって、コンタクトローラによりボビンに接圧を付与しつつ、ボビンに糸を巻き取っている。
【0003】
ここで、このような巻取機においては、コンタクトローラによるボビンに巻き取られる糸の量が増加するにつれて、糸の重みにより、ボビンホルダが、支持されている部分から離れた先端部分ほど下方に撓んでしまう。
【0004】
そこで、特許文献1に記載の巻取機においては、各ボビンの接圧を検出するとともに、この検出結果に応じて調整用シリンダを伸長あるいは縮退させることにより、コンタクトローラに加える圧力を変化させて、コンタクトローラを撓んだボビンホルダとほぼ平行になるように傾斜させている。そして、これにより、コンタクトローラによるボビンへの接圧を均一にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−310723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、各ボビンの接圧を検出し、検出結果に応じて調整用シリンダによりコンタクトローラに加える圧力を変化させることによって、コンタクトローラを傾斜させる場合には、万一、糸の巻取り中に、調整用シリンダが壊れてしまうと、調整用シリンダによりコンタクトローラに加えられていた圧力が急激に変動してしまい、その結果、コンタクトローラによるボビンへの接圧が急激に変化して糸の巻き崩れが生じたり、コンタクトローラに振動が発生して、コンタクトローラの取り付け部分が破損したりしてしまう虞がある。
【0007】
本発明の目的は、コンタクトローラを傾斜させるための傾斜装置が壊れてしまった場合にも、糸の巻き崩れや、コンタクトローラ周辺の部分の破損などが生じにくい巻取機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る巻取機は、機台本体に片持ち支持された、糸を巻き取るためのボビンが装着されるボビンホルダと、前記ボビンホルダに装着されたボビンに当接するコンタクトローラと、前記コンタクトローラを、上下方向に傾斜させる傾斜機構とを備え、前記傾斜機構は、ボビンに巻き取られる糸の量の変化に伴って移動する移動部と機械的に連動しており、前記移動部の移動を利用して、前記コンタクトローラを傾斜させることを特徴とする。
【0009】
本発明によると、傾斜機構は、ボビンに巻き取られた糸の量の変化に伴って移動する移動部と機械的に連動しており、移動部の移動を利用してコンタクトローラを傾斜させるものであるため、万一故障したとしても、移動部と機械的に連動しなくなり、それ以上、移動部の移動を利用してコンタクトローラを傾斜させることができなくなるだけで、コンタクトローラの傾斜角度が急激に変化することがない。したがって、上述したような糸の巻き崩れや、コンタクトローラの振動などが発生しにくい。
【0010】
第2の発明に係る巻取機は、第1の発明に係る巻取機において、前記ボビンホルダを片持ち支持しているとともに、前記ボビンホルダの軸心と平行な回動軸を中心に回動することでボビンホルダを移動させるターレットテーブルをさらに備えており、糸の巻取時に、前記コンタクトローラが、所定の位置に保持されているとともに、前記ターレットテーブルが、ボビンに巻き取られる糸の量が増加するほど、前記ボビンホルダが前記コンタクトローラから離れる方向に回動する前記移動部として構成され、前記傾斜機構は、前記ターレットテーブルと機械的に連動しており、前記ターレットテーブルの回動を利用して、前記コンタクトローラを傾斜させることを特徴とする。
【0011】
本発明によると、糸の巻取時に、コンタクトローラが所定の位置に保持されるとともに、ターレットテーブルがボビンに巻き取られる糸の量の増加に連動して回動するように構成されることで移動部として構成されている場合、移動部としてのターレットテーブルの回動を利用して、コンタクトローラを傾斜させることができる。
【0012】
第3の発明に係る巻取機は、第2の発明に係る巻取機において、前記傾斜機構が、前記ターレットテーブルの回動を前記コンタクトローラに伝達することで、前記コンタクトローラを傾斜させるものであって、前記ターレットテーブルに設けられており、前記ターレットテーブルの回動方向に沿って延びたカム面を有するカムと、前記カム面に当接したカムロッドとを備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明によると、ターレットテーブルの回動を、ターレットテーブルに設けられたカムや、カム面上に配置されたカムロッドなどを介して、コンタクトローラに伝達することにより、コンタクトローラを傾斜させることができる。
【0014】
第4の発明に係る巻取機は、第1〜第3のいずれかの発明に係る巻取機において、前記コンタクトローラを昇降自在に支持するガイド軸をさらに備えており、前記傾斜機構は、前記ガイド軸を傾斜させることによって、前記コンタクトローラを傾斜させることを特徴とする。
【0015】
本発明によると、コンタクトローラがガイド軸に昇降自在に支持されている場合、ガイド軸を傾斜させることにより、コンタクトローラを傾斜させることができる。
【0016】
第5の発明に係る巻取機は、第1の発明に係る巻取機において、前記コンタクトローラは、糸の巻取時に、糸が巻き取られたボビンに押し上げられて移動するように構成されることで前記移動部となっており、前記傾斜機構は、前記コンタクトローラと機械的に連動しており、押し上げられたコンタクトローラ自身の移動を利用して前記コンタクトローラを傾斜させることを特徴とする。
【0017】
本発明によると、糸の巻取時に、コンタクトローラが、ボビンに巻き取られる糸に押し上げられて移動するように構成されることで移動部となっている場合、移動部であるコンタクトローラ自身の移動を利用して、コンタクトローラを傾斜させることができる。
【0018】
第6の発明に係る巻取機は、第5の発明に係る巻取機において、前記傾斜機構は、上下方向に対して傾斜した案内を有しており、移動する前記コンタクトローラを前記案内に沿って案内することによって、前記コンタクトローラを傾斜させる案内部材を備えていることを特徴とする。
【0019】
本発明によると、ボビンに巻き取られた糸に押し上げられて移動するコンタクトローラを、案内部材の上下方向に傾斜した案内に沿って案内することにより、コンタクトローラを傾斜させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、傾斜機構は、ボビンに巻き取られた糸の量の変化に伴って移動する移動部と機械的に連動しており、移動部の移動を利用してコンタクトローラを傾斜させるものであるため、万一故障したとしても、移動部と機械的に連動しなくなり、それ以上、移動部の移動を利用してコンタクトローラを傾斜させることができなくなるだけで、コンタクトローラの傾斜角度が急激に変化することがない。したがって、上述したような糸の巻き崩れや、コンタクトローラの振動などが発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る巻取機を正面から見た図である。
【図2】(a)が図1を矢印IIAの方向から見た図、(b)が図1を矢印IIBの方向から見た図である。
【図3】(a)が図1を矢印IIIの方向から見た図であり、(b)が(a)から取り付け部材及び揺動軸を除いた図である。
【図4】図3(a)のIV−IV線断面図である。
【図5】巻取時の様子を示す図2相当の図である。
【図6】巻取時の様子を示す図4相当の図である。
【図7】巻取時の様子を示す図3(b)相当の図である。
【図8】巻取時の様子を示す図1相当の図である。
【図9】変形例1の図1相当の図である。
【図10】変形例1の図2(a)相当の図である。
【図11】変形例1の図8相当の図である。
【図12】変形例2の図1相当の図である。
【図13】変形例2の図8相当の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0023】
図1は、本実施の形態に係る巻取機を正面から見た図である。図2(a)は図1を矢印IIAの方向から見た図である。図2(b)は図1を矢印IIBの方向から見た図である。図3(a)は、図1を矢印IIIの方向から見た図である。図3(b)は図3(a)から後述する取り付け部材22a及び揺動軸36を除いた図である。図4は図3(a)のIV−IV線断面図である。ただし、図1においては、巻取機1の機台10の一部を二点鎖線により図示するとともに、二点鎖線で示した部分の内部を図示しており、図3(b)においては、各部材の位置関係をわかりやすくするために、取り付け部材22aの位置を二点鎖線で示している。なお、以下では、各図に示すように、互いに直交する前後方向、左右方向及び上下方向を規定して説明を行う。
【0024】
図1〜図4に示すように、巻取機1は、機台10、及び、機台10に設けられた、2つのボビンホルダ2、ターレットテーブル3、接圧付与機構4、傾斜機構5などを備えている。
【0025】
2つのボビンホルダ2は、それぞれ、略円柱形状の部材であり、ターレットテーブル3に片持ち支持されている。また、ボビンホルダ2には、略円筒形状の複数のボビンBが装着されている。ボビンホルダ2は、図示しないモータなどに駆動されることより、回転軸2aを中心に回転し、これにより、後述するように、ボビンホルダ2に装着された複数のボビンBに糸Yが巻き取られる。ここで、ボビンホルダ2に装着された複数のボビンBの上方には、それぞれ、トラバース装置7が設けられており、各トラバース装置7の上方には、糸ガイド8が設けられている。これにより、糸Yは、トラバース装置7により糸ガイド8を支点として綾振りされつつ、ボビンBに巻き取られる。なお、トラバース装置7及び糸ガイド8は、後述する支持部材12上に配置されており、両者の間隔は常に一定となっている。
【0026】
ターレットテーブル3は、略円形の板状体であり、上述したように2つのボビンホルダ2を片持ち支持しているとともに、ボビンホルダ2の軸心と平行な回動軸3aを中心に回動することにより、2つのボビンホルダ2を移動させる。これにより、巻取機1においては、2つのボビンホルダ2の位置を入れ替えることができるようになっており、一方のボビンホルダ2に装着されたボビンBに糸の巻取を行っている間に、他方のボビンホルダ2に対するボビンBの交換を行うことにより、連続して糸の巻取を行うことができる。また、ターレットテーブル3は、後述するように、ボビンBへの糸Yの巻取時にも、巻き取られる糸Yの量の増加に伴って回動する。
【0027】
接圧付与機構4は、コンタクトローラ11、支持部材12などを備えている。コンタクトローラ11は、ボビンホルダ2とほぼ平行に延びており、2つのボビンホルダ2のうち巻取位置にあるボビンホルダ2に装着されたボビンBの外周面に当接している。これにより、ボビンBには、糸Yの巻取り時に、コンタクトローラ11により接圧が付与される。
【0028】
支持部材12は、コンタクトローラ11の両端部を回転自在に支持している。また、支持部材12の両端部近傍の部分には、それぞれ直動軸受19が設けられており、直動軸受19には、上下に延びたガイド軸13が挿通されている。ここで、支持部材12は、図示しない昇降機構によって昇降可能となっており、支持部材12を昇降させると、支持部材12及びコンタクトローラ11が、ガイド軸13に沿って昇降する。
【0029】
また、ガイド軸13は、その両端部が、それぞれ、直動軸受21a、21bに挿通されている。直動軸受21a、21bは、それぞれ、フレーム6に固定された取り付け部材22a、22bに取り付けられている。
【0030】
また、直動軸受21a、21bは、その内径が、ガイド軸13の径よりも若干大きくなっており、直動軸受21a、21bと、直動軸受21a、21bに挿通されたガイド軸13との間には、それぞれ、オーリング23が介在している。これにより、ガイド軸13は、フレーム6(取り付け部材22a、22b)に固定された直動軸受21a、21bに対して揺動可能となっている。
【0031】
次に、傾斜機構5の構成について説明する。傾斜機構5は、コンタクトローラ11を傾斜させるための機構であり、カム31、カムロッド32、倍力アーム33、タイロッド34、傾斜アーム35などを備えている。
【0032】
カム31は、ターレットテーブル3の側面に、2つのボビンホルダ2に対応して2つ設けられている。各カム31は、それぞれ、図2(b)に示すように、ターレットテーブル3の周方向に沿って延びており、図2(b)における時計回り方向における上流側の部分ほど、その外周面であるカム面31aが、回動軸3aに対してターレットテーブル3の径方向の外側に張り出している(ターレットテーブル3の回動軸3aから離れた位置にある)。
【0033】
カムロッド32は、その下端部に設けられたコロ41がカム面31aに接触しているとともに、その上端部が、倍力アーム33に連結されている。また、カムロッド32は、コロ41が設けられているロッド形成部材32aと、倍力アーム33に連結されているロッド形成部材32bとを有しており、2つのロッド形成部材32a、32bは上下に相対移動可能となっている。また、ロッド形成部材32aとロッド形成部材32bとの間には、スプリング42が設けられており、ロッド形成部材32bのスプリング42のすぐ上に配置されたボルト43を締めると、スプリング42が圧縮される。これにより、ボルト43をどの程度締めるかによって、ロッド形成部材32aの移動を、どの程度スプリング42により吸収した上で、ロッド形成部材32bに伝達するかを調整することができるようになっている。なお、スプリング42は設けられていなくてもよく、この場合には、カムロッド32の2つのロッド形成部材32a、32bに相当する部分を、1つの部材によって形成すればよい。
【0034】
倍力アーム33は、略矩形の板状体であって、その一端部にカムロッド32が取り付けられているとともに、カムロッド32と反対側の端部に、軸受37に挿通された揺動軸36が取り付けられており、揺動軸36を中心に揺動可能となっている。
【0035】
また、揺動軸36の下端部には、タイロッド34を取り付けるための取り付け軸38が設けられている。これにより、倍力アーム33においては、タイロッド34が、カムロッド32よりも、揺動軸36の中心から近い位置に取り付けられる。タイロッド34は、倍力アーム33と傾斜アーム35との間に取り付けられており、倍力アーム33と傾斜アーム35とを連結している。
【0036】
また、揺動軸36が挿通された軸受37は、タイロッド34を前後にまたぐように略コの字に折り曲げられた取り付け板39の、タイロッド34の前側に位置する部分に固定されており、取り付け板39は、タイロッド34を挟んだ軸受37が固定されているのと反対側の部分において、フレーム6に固定されている。なお、取り付け板39のフレーム6に固定された部分にも、揺動軸36及び軸受37と同様の揺動軸及び軸受が設けられており、この揺動軸に、取り付け軸38の揺動軸36と反対側の端部が取り付けられている。
【0037】
傾斜アーム35は、前後方向に延びた板状体であり、その略中央部において、取り付け部材22aに設けられた揺動軸24に揺動自在に支持されている。また、傾斜アーム35には、その後端部にタイロッド34が取り付けられているとともに、その前端部には貫通孔35aが形成されている。貫通孔35aには、上述のガイド軸13が挿通されている。
【0038】
次に、巻取機1における糸Yの巻取動作について説明する。図5〜図9は、それぞれ、糸巻取時の、図2、図4、図3(b)及び図1に相当する図である。
【0039】
巻取機1においてボビンBに糸Yを巻き取るためには、まず、巻取機1の上方に配置された図示しない紡糸装置において生成された糸Yを、糸ガイド8及びトラバース装置7に掛け、その後、図示しない昇降機構により、支持部材12を、コンタクトローラ11が、ボビンホルダ2に装着されたボビンBに当接しない位置まで上昇させた状態で、ボビンBに糸掛けを行う。そして、ボビンBへの糸掛けを行った後、支持部材12を降下させてコンタクトローラ11をボビンBに当接させ、この状態でボビンホルダ2を回転させることにより、ボビンBに接圧を付与しつつ、ボビンBに糸Yを巻き取っていく。
【0040】
ここで、このようにボビンBに糸Yを巻き取っていくと、巻き取られる糸Yの量が増加するにつれて、糸Yを含めたボビンBの径が徐々に大きくなっていくため、これに合わせて、ボビンホルダ2とコンタクトローラ11との距離を徐々に大きくする必要がある。
【0041】
このとき、本実施の形態では、支持部材12の昇降は行わず(コンタクトローラ11が所定の位置に保持され)、図5(a)に示すように、ボビンBに巻き取られる糸Yの量の増加するにつれて、ターレットテーブル3を、コンタクトローラ11から離れる方向(図5(a)における反時計回り方向、図5(b)における時計回り方向)に回動させることにより、ボビンホルダ2とコンタクトローラ11との距離を徐々に大きくしている。
【0042】
そして、このように、ターレットテーブル3を回動させると、図5(b)に示すように、ターレットテーブル3の側面に設けられたカム31も回動軸3aを中心に回動する。カム31は、上述したように、図5(b)における時計回り方向の上流側の部分ほど、カム面31aが、回動軸3aに対してターレットテーブル3の径方向の外側に張り出しているため、カム31が回動すると、カム31のカム面31aに当接するカムロッド32が、矢印aで示すようにカム31に押し出されて上方に移動する。
【0043】
カムロッド32が移動すると、図6に示すように、倍力アーム33が、揺動軸36を中心に反時計回りに回動し、これに連動して、倍力アーム33に取り付けられているタイロッド34が、矢印bで示すように、倍力アーム33側(図中右側)に引っ張られる。このとき、上述したように、倍力アーム33においては、タイロッド34が、カムロッド32よりも揺動軸36の中心に近い位置に取り付けられているため、カムロッド32が移動することで倍力アーム33が回動したときのタイロッド34の移動量は、カムロッド32の移動量に比べて小さなものとなる。したがって、倍力アーム33からタイロッド34に作用する力の大きさは、カムロッド32から倍力アーム33に作用する力の大きさよりも大きくなる。
【0044】
タイロッド34が倍力アーム33側に引っ張られると、図7に示すように、タイロッド34に連結された傾斜アーム35の後端部も、矢印bで示すように、倍力アーム33側に引っ張られ、これにより、傾斜アーム35が揺動軸24を中心に時計回りに回動する。そして、この傾斜アーム35の回動により、ガイド軸13が挿通されている傾斜アーム35の前端部が、矢印cで示すように、後端部と反対方向(図中左方)に移動する。
【0045】
そして、このように傾斜アーム35の前端部が移動すると、図6、図8に示すように、ガイド軸13が、傾斜アーム35(貫通孔35aの壁)に押されて傾斜し、これにより、ガイド軸13に沿って昇降する支持部材12、及び、支持部材12より支持されたコンタクトローラ11が傾斜する。このとき、コンタクトローラ11は、ボビンホルダ2の先端側の部分に対応する部分ほど下方に位置するように傾斜する(図8では、巻取完了直前の状態での傾斜角度がαとなっている)。
【0046】
すなわち、本実施の形態では、ターレットテーブル3が、本発明に係る移動部となっており、カム31、カムロッド32、倍力アーム33、タイロッド34及び傾斜アーム35により構成される傾斜機構5が、ターレットテーブル3と機械的に連動している。そして、傾斜機構5は、移動部としてのターレットテーブル3の回動を利用して、コンタクトローラ11を傾斜させている。また、ボビンBに巻き取られる糸Yの量が増加し、ターレットテーブル3が大きく回動するほど、コンタクトローラ11の傾斜角度は大きくなる。
【0047】
ここで、ボビンBに巻き取られる糸Yの量が多くなると、ボビンホルダ2は、糸Yの重みにより、ターレットテーブル3に支持されている部分から離れた先端側の部分ほど下方に撓み、この撓み量は、ボビンBに巻き取られる糸Yの量が増加するほど大きくなる。このとき、上述したのとは異なり、コンタクトローラ11が傾斜しないとすると、ボビンホルダ2の先端側に装着されたボビンBほど、コンタクトローラ11により付与される接圧が小さくなり、その結果、糸Yの巻取が完了したときに、ボビンBの左右の径に差が生じてしまう。
【0048】
しかしながら、本実施の形態では、上述したように、ボビンBに巻き取られる糸Yの量が増加するのに伴って、コンタクトローラ11が、ボビンホルダ2の先端側の部分に対応する部分ほど下方にくるように傾斜するため、ボビンホルダ2とコンタクトローラ11とがほぼ平行な状態に保持され、互いの距離が均一になる。これにより、コンタクトローラ11とボビンBとの間の接圧が均一になり、巻取が完了したときのボビンの径も均一になる。
【0049】
さらに、本実施の形態では、ターレットテーブル3と機械的に連動した傾斜機構5により、ボビンBに巻き取られる糸Yの量が増加するのに連動して回動するターレットテーブル3の回動をガイド軸13に伝達することで、コンタクトローラ11を傾斜させている。そのため、万一、傾斜機構5のいずれかの部分が破損するなどしても、ターレットテーブル3の回動が、ガイド軸13に伝達されなくなり(傾斜機構5がターレットテーブル3と機械的に連動しなくなり)、コンタクトローラ11をそれ以上傾斜させることができなくなってしまうだけであり、コンタクトローラ11は、傾斜機構5の破損直前の姿勢に保持されたままとなる。
【0050】
したがって、傾斜機構5が破損しても、コンタクトローラ11に急激な傾斜角度の変動が生じて、ボビンBにおいて糸Yの巻き崩れが生じたり、コンタクトローラ11に振動が発生して、支持部材12のコンタクトローラ11を支持している部分が破損したりするといったことが起こりにくい。
【0051】
また、コンタクトローラ11は、ある程度重量の大きなものであり、コンタクトローラ11を傾斜させるためにはある程度大きな力が必要となるが、上述したように倍力アーム33からタイロッド34に作用する力が、カムロッド32から倍力アーム33に作用する力よりも大きいため、カム31がカムロッド32を押し出す力がそれほど大きくなくても、重量の大きいコンタクトローラ11を傾斜させることができる。
【0052】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成については、適宜その説明を省略する。
【0053】
上述の実施の形態では、ターレットテーブル3の回動を、カム31、カムロッド32、倍力アーム33、タイロッド34及び傾斜アーム35を備えた傾斜機構5を用いてガイド軸13に伝達したが、これとは別の機構によって、ターレットテーブル3の回動をガイド軸13に伝達してもよい。
【0054】
また、上述の実施の形態では、コンタクトローラ11を支持する支持部材12を昇降自在に支持するガイド軸13を傾斜させることによって、支持部材12及びコンタクトローラ11を傾斜させたが、ガイド軸13や支持部材12は傾斜させずに、コンタクトローラ11を直接傾斜させてもよい。
【0055】
また、上述の実施の形態では、コンタクトローラ11を支持する支持部材12が昇降可能となっていることにより、糸Yの巻取時には、コンタクトローラ11をボビンBに当接させ、糸掛け時などには、コンタクトローラ11をボビンホルダ2から離すことができるようになっていたが、コンタクトローラ11をボビンホルダ2に対して接離させる構成はこれには限れらない。
【0056】
一変形例(変形例1)では、図9、図10に示すように、コンタクトローラ11を支持する支持部材51に揺動軸52が設けられている。揺動軸52の両端部は、それぞれ、軸受53a、53bに挿通されており、これにより、支持部材51は、揺動軸52を中心に揺動可能となっている。そして、支持部材51を揺動させることによって、コンタクトローラ11を、図10において実線で示すボビンBに当接した位置と、図10において二点鎖線で示すボビンホルダ2から離れた位置との間で移動させることができるようになっている。
【0057】
また、軸受53a、53bは、球面軸受となっており、揺動軸52が、軸受53a、53bに対して揺動可能となっている。
【0058】
また、軸受53aは、機台10に固定された図示しないフレームなどに取り付けられており、軸受53bは、アーム54に取り付けられている。アーム54は、その一端部に設けられた揺動軸55を中心に揺動自在に支持されており、その略中央部に軸受53bが取り付けられているとともに、揺動軸55と反対側の端部にカムロッド32が連結されている。すなわち、アーム54においては、軸受53bが、カムロッド32よりも揺動軸55に近い位置に取り付けられている。
【0059】
この場合にも、上述の実施の形態と同様、ボビンBに巻き取られる糸Yの量が増加するのに伴って、ターレットテーブル3が回動し、これにより、カム31が回動するとともに、カムロッド32がカム31に押し出されて上方に移動するが、変形例1の場合には、カムロッド32が上方に移動すると、図11に示すように、アーム54が揺動軸55を中心に揺動し、アーム54に取り付けられた軸受53bが上方に押し上げられる。これにより、軸受53a、53bに挿通されている揺動軸52、揺動軸52に支持されている支持部材51、及び、支持部材51に支持されているコンタクトローラ11が傾斜する。なお、この場合も、コンタクトローラ11は、ボビンホルダ2の先端側の部分に対応する部分ほど下方にくるように傾斜する。また、変形例1では、コンタクトローラ11を傾斜させるための、カム31、カムロッド32及びアーム54が、本発明に係る傾斜機構に相当する。
【0060】
なお、変形例1の場合でも、アーム54において、軸受53bが、カムロッド32よりも、揺動軸55に近い位置に取り付けられているため、アーム54が回動したときの軸受53bの移動量が、カムロッド32の移動量よりも小さい。したがって、アーム54から軸受53bに作用する力が、カムロッド32からアーム54に作用する力よりも大きくなり、カム31がカムロッド32を押し出す力がそれほど大きくなくても、重量の大きいコンタクトローラ11を傾斜させることができる。
【0061】
また、上述の実施の形態では、ボビンBに巻き取られる糸Yの量が増加するのに伴って、ターレットテーブル3が回動することで、ボビンホルダ2とコンタクトローラ11との距離が徐々に離れるようになっており、このターレットテーブル3の回動を伝達することによってコンタクトローラ11を傾斜させていたが、これには限られない。
【0062】
別の一変形例(変形例2)では、図12に示すように、コンタクトローラ11の両端部を支持する支持部材61の一端部に、直動軸受62が設けられている。また、変形例2の巻取機には、機台10の図示しないフレームなどに固定されているとともに、上下に延びたガイド軸63が設けられており、直動軸受62は、ガイド軸63に挿通されている。そして、これにより、支持部材61及びコンタクトローラ11は、ガイド軸63により支持されるとともに、ガイド軸63に沿って昇降可能となっている。
【0063】
ここで、直動軸受62の両端部と支持部材61との間には、それぞれ、オーリング64が介在している。これにより、支持部材61及びコンタクトローラ11は、機台10に固定されたガイド軸63に対して揺動可能となっている。
【0064】
また、支持部材61の端部には、コロ61aが設けられている。さらに、コロ61aに対応して、支持部材61の側方には、機台10の図示しないフレームなどに固定された傾斜機構65が設けられている。
【0065】
傾斜機構65には、上下に延びた溝66が形成されている。溝66には、支持部材61のコロ61aが嵌め込まれており、コロ61aは、支持部材61がガイド軸63に沿って昇降するのに合わせて、溝66に沿って昇降する。また、溝66の内部には、コロ61aの先端部と接触する案内部材67が配置されている。案内部材67は、コロ61aの先端部と接触する案内面67a(案内)が、上側の部分ほど、支持部材61側(図中左側)にくるように、上下方向に対して傾斜している。
【0066】
この場合には、ボビンBに巻き取られる糸Yの量が増加したときに、ターレットテーブル3は回動せず、代わりに、コンタクトローラ11及び支持部材61が、糸Yが巻き取られることで径が大きくなったボビンBに押し上げられることでガイド軸63沿って移動し、これにより、ボビンホルダ2とコンタクトローラ11との間隔が大きくなるようになっている。
【0067】
そして、ボビンBに巻き取られる糸Yの量が増加するのに伴って、コンタクトローラ11及び支持部材61がボビンBに押し上げられて上方に移動すると、図13に示すように、コロ61aが溝66に沿って上方に移動する。これにより、コロ61aが、案内部材67の案内面67aに沿って案内され、支持部材61及びコンタクトローラ11が傾斜する。なお、この場合も、コンタクトローラ11は、ボビンホルダ2の先端側の部分に対応する部分ほど下方にくるように傾斜する。
【0068】
すなわち、変形例2では、コンタクトローラ11自身が本発明に係る移動部に相当するとともに、コンタクトローラ11を支持する支持部材61に設けられたコロ61aの先端部が、案内部材67(案内面67a)に接触していることにより、コンタクトローラ11と傾斜機構65とが機械的に連動している。そして、傾斜機構65は、ボビンBに巻き取られる糸Yの量が増加するときのコンタクトローラ11自身の移動を利用して、コンタクトローラ11を傾斜させている。
【0069】
また、変形例2では、支持部材61を案内部材67の案内面67aに沿って案内することで、コンタクトローラ11を傾斜させていたが、これには限られず、コンタクトローラ11自身の移動を別の形で利用する、コンタクトローラ11と機械的に連動した傾斜機構により、コンタクトローラ11を傾斜させてもよい。
【0070】
また、以上の説明では、傾斜機構が、ターレットテーブル3の回動あるいはコンタクトローラ11自身の移動を利用して、コンタクトローラ11を傾斜させていたが、これには限られない。巻取機が、ボビンBに巻き取られる糸Yの量が増加するのに伴って移動する、ターレットテーブル3及びコンタクトローラ11以外の移動部を有している場合には、傾斜機構は、その移動部と機械的に連動しており、その移動部の移動を利用してコンタクトローラ11を傾斜させるものであってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 巻取機
2 ボビンホルダ
3 ターレットテーブル
5 傾斜機構
11 コンタクトローラ
31 カム
32 カムロッド
54 アーム
65 傾斜機構
67 案内部材
67a 案内面
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビンに糸を巻き取る巻取機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の巻取機においては、片持ち支持されたボビンホルダに装着された複数のボビンに、ボビンホルダと平行に延びたコンタクトローラ(タッチローラ)を当接させることによって、コンタクトローラによりボビンに接圧を付与しつつ、ボビンに糸を巻き取っている。
【0003】
ここで、このような巻取機においては、コンタクトローラによるボビンに巻き取られる糸の量が増加するにつれて、糸の重みにより、ボビンホルダが、支持されている部分から離れた先端部分ほど下方に撓んでしまう。
【0004】
そこで、特許文献1に記載の巻取機においては、各ボビンの接圧を検出するとともに、この検出結果に応じて調整用シリンダを伸長あるいは縮退させることにより、コンタクトローラに加える圧力を変化させて、コンタクトローラを撓んだボビンホルダとほぼ平行になるように傾斜させている。そして、これにより、コンタクトローラによるボビンへの接圧を均一にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−310723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、各ボビンの接圧を検出し、検出結果に応じて調整用シリンダによりコンタクトローラに加える圧力を変化させることによって、コンタクトローラを傾斜させる場合には、万一、糸の巻取り中に、調整用シリンダが壊れてしまうと、調整用シリンダによりコンタクトローラに加えられていた圧力が急激に変動してしまい、その結果、コンタクトローラによるボビンへの接圧が急激に変化して糸の巻き崩れが生じたり、コンタクトローラに振動が発生して、コンタクトローラの取り付け部分が破損したりしてしまう虞がある。
【0007】
本発明の目的は、コンタクトローラを傾斜させるための傾斜装置が壊れてしまった場合にも、糸の巻き崩れや、コンタクトローラ周辺の部分の破損などが生じにくい巻取機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る巻取機は、機台本体に片持ち支持された、糸を巻き取るためのボビンが装着されるボビンホルダと、前記ボビンホルダに装着されたボビンに当接するコンタクトローラと、前記コンタクトローラを、上下方向に傾斜させる傾斜機構とを備え、前記傾斜機構は、ボビンに巻き取られる糸の量の変化に伴って移動する移動部と機械的に連動しており、前記移動部の移動を利用して、前記コンタクトローラを傾斜させることを特徴とする。
【0009】
本発明によると、傾斜機構は、ボビンに巻き取られた糸の量の変化に伴って移動する移動部と機械的に連動しており、移動部の移動を利用してコンタクトローラを傾斜させるものであるため、万一故障したとしても、移動部と機械的に連動しなくなり、それ以上、移動部の移動を利用してコンタクトローラを傾斜させることができなくなるだけで、コンタクトローラの傾斜角度が急激に変化することがない。したがって、上述したような糸の巻き崩れや、コンタクトローラの振動などが発生しにくい。
【0010】
第2の発明に係る巻取機は、第1の発明に係る巻取機において、前記ボビンホルダを片持ち支持しているとともに、前記ボビンホルダの軸心と平行な回動軸を中心に回動することでボビンホルダを移動させるターレットテーブルをさらに備えており、糸の巻取時に、前記コンタクトローラが、所定の位置に保持されているとともに、前記ターレットテーブルが、ボビンに巻き取られる糸の量が増加するほど、前記ボビンホルダが前記コンタクトローラから離れる方向に回動する前記移動部として構成され、前記傾斜機構は、前記ターレットテーブルと機械的に連動しており、前記ターレットテーブルの回動を利用して、前記コンタクトローラを傾斜させることを特徴とする。
【0011】
本発明によると、糸の巻取時に、コンタクトローラが所定の位置に保持されるとともに、ターレットテーブルがボビンに巻き取られる糸の量の増加に連動して回動するように構成されることで移動部として構成されている場合、移動部としてのターレットテーブルの回動を利用して、コンタクトローラを傾斜させることができる。
【0012】
第3の発明に係る巻取機は、第2の発明に係る巻取機において、前記傾斜機構が、前記ターレットテーブルの回動を前記コンタクトローラに伝達することで、前記コンタクトローラを傾斜させるものであって、前記ターレットテーブルに設けられており、前記ターレットテーブルの回動方向に沿って延びたカム面を有するカムと、前記カム面に当接したカムロッドとを備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明によると、ターレットテーブルの回動を、ターレットテーブルに設けられたカムや、カム面上に配置されたカムロッドなどを介して、コンタクトローラに伝達することにより、コンタクトローラを傾斜させることができる。
【0014】
第4の発明に係る巻取機は、第1〜第3のいずれかの発明に係る巻取機において、前記コンタクトローラを昇降自在に支持するガイド軸をさらに備えており、前記傾斜機構は、前記ガイド軸を傾斜させることによって、前記コンタクトローラを傾斜させることを特徴とする。
【0015】
本発明によると、コンタクトローラがガイド軸に昇降自在に支持されている場合、ガイド軸を傾斜させることにより、コンタクトローラを傾斜させることができる。
【0016】
第5の発明に係る巻取機は、第1の発明に係る巻取機において、前記コンタクトローラは、糸の巻取時に、糸が巻き取られたボビンに押し上げられて移動するように構成されることで前記移動部となっており、前記傾斜機構は、前記コンタクトローラと機械的に連動しており、押し上げられたコンタクトローラ自身の移動を利用して前記コンタクトローラを傾斜させることを特徴とする。
【0017】
本発明によると、糸の巻取時に、コンタクトローラが、ボビンに巻き取られる糸に押し上げられて移動するように構成されることで移動部となっている場合、移動部であるコンタクトローラ自身の移動を利用して、コンタクトローラを傾斜させることができる。
【0018】
第6の発明に係る巻取機は、第5の発明に係る巻取機において、前記傾斜機構は、上下方向に対して傾斜した案内を有しており、移動する前記コンタクトローラを前記案内に沿って案内することによって、前記コンタクトローラを傾斜させる案内部材を備えていることを特徴とする。
【0019】
本発明によると、ボビンに巻き取られた糸に押し上げられて移動するコンタクトローラを、案内部材の上下方向に傾斜した案内に沿って案内することにより、コンタクトローラを傾斜させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、傾斜機構は、ボビンに巻き取られた糸の量の変化に伴って移動する移動部と機械的に連動しており、移動部の移動を利用してコンタクトローラを傾斜させるものであるため、万一故障したとしても、移動部と機械的に連動しなくなり、それ以上、移動部の移動を利用してコンタクトローラを傾斜させることができなくなるだけで、コンタクトローラの傾斜角度が急激に変化することがない。したがって、上述したような糸の巻き崩れや、コンタクトローラの振動などが発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る巻取機を正面から見た図である。
【図2】(a)が図1を矢印IIAの方向から見た図、(b)が図1を矢印IIBの方向から見た図である。
【図3】(a)が図1を矢印IIIの方向から見た図であり、(b)が(a)から取り付け部材及び揺動軸を除いた図である。
【図4】図3(a)のIV−IV線断面図である。
【図5】巻取時の様子を示す図2相当の図である。
【図6】巻取時の様子を示す図4相当の図である。
【図7】巻取時の様子を示す図3(b)相当の図である。
【図8】巻取時の様子を示す図1相当の図である。
【図9】変形例1の図1相当の図である。
【図10】変形例1の図2(a)相当の図である。
【図11】変形例1の図8相当の図である。
【図12】変形例2の図1相当の図である。
【図13】変形例2の図8相当の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0023】
図1は、本実施の形態に係る巻取機を正面から見た図である。図2(a)は図1を矢印IIAの方向から見た図である。図2(b)は図1を矢印IIBの方向から見た図である。図3(a)は、図1を矢印IIIの方向から見た図である。図3(b)は図3(a)から後述する取り付け部材22a及び揺動軸36を除いた図である。図4は図3(a)のIV−IV線断面図である。ただし、図1においては、巻取機1の機台10の一部を二点鎖線により図示するとともに、二点鎖線で示した部分の内部を図示しており、図3(b)においては、各部材の位置関係をわかりやすくするために、取り付け部材22aの位置を二点鎖線で示している。なお、以下では、各図に示すように、互いに直交する前後方向、左右方向及び上下方向を規定して説明を行う。
【0024】
図1〜図4に示すように、巻取機1は、機台10、及び、機台10に設けられた、2つのボビンホルダ2、ターレットテーブル3、接圧付与機構4、傾斜機構5などを備えている。
【0025】
2つのボビンホルダ2は、それぞれ、略円柱形状の部材であり、ターレットテーブル3に片持ち支持されている。また、ボビンホルダ2には、略円筒形状の複数のボビンBが装着されている。ボビンホルダ2は、図示しないモータなどに駆動されることより、回転軸2aを中心に回転し、これにより、後述するように、ボビンホルダ2に装着された複数のボビンBに糸Yが巻き取られる。ここで、ボビンホルダ2に装着された複数のボビンBの上方には、それぞれ、トラバース装置7が設けられており、各トラバース装置7の上方には、糸ガイド8が設けられている。これにより、糸Yは、トラバース装置7により糸ガイド8を支点として綾振りされつつ、ボビンBに巻き取られる。なお、トラバース装置7及び糸ガイド8は、後述する支持部材12上に配置されており、両者の間隔は常に一定となっている。
【0026】
ターレットテーブル3は、略円形の板状体であり、上述したように2つのボビンホルダ2を片持ち支持しているとともに、ボビンホルダ2の軸心と平行な回動軸3aを中心に回動することにより、2つのボビンホルダ2を移動させる。これにより、巻取機1においては、2つのボビンホルダ2の位置を入れ替えることができるようになっており、一方のボビンホルダ2に装着されたボビンBに糸の巻取を行っている間に、他方のボビンホルダ2に対するボビンBの交換を行うことにより、連続して糸の巻取を行うことができる。また、ターレットテーブル3は、後述するように、ボビンBへの糸Yの巻取時にも、巻き取られる糸Yの量の増加に伴って回動する。
【0027】
接圧付与機構4は、コンタクトローラ11、支持部材12などを備えている。コンタクトローラ11は、ボビンホルダ2とほぼ平行に延びており、2つのボビンホルダ2のうち巻取位置にあるボビンホルダ2に装着されたボビンBの外周面に当接している。これにより、ボビンBには、糸Yの巻取り時に、コンタクトローラ11により接圧が付与される。
【0028】
支持部材12は、コンタクトローラ11の両端部を回転自在に支持している。また、支持部材12の両端部近傍の部分には、それぞれ直動軸受19が設けられており、直動軸受19には、上下に延びたガイド軸13が挿通されている。ここで、支持部材12は、図示しない昇降機構によって昇降可能となっており、支持部材12を昇降させると、支持部材12及びコンタクトローラ11が、ガイド軸13に沿って昇降する。
【0029】
また、ガイド軸13は、その両端部が、それぞれ、直動軸受21a、21bに挿通されている。直動軸受21a、21bは、それぞれ、フレーム6に固定された取り付け部材22a、22bに取り付けられている。
【0030】
また、直動軸受21a、21bは、その内径が、ガイド軸13の径よりも若干大きくなっており、直動軸受21a、21bと、直動軸受21a、21bに挿通されたガイド軸13との間には、それぞれ、オーリング23が介在している。これにより、ガイド軸13は、フレーム6(取り付け部材22a、22b)に固定された直動軸受21a、21bに対して揺動可能となっている。
【0031】
次に、傾斜機構5の構成について説明する。傾斜機構5は、コンタクトローラ11を傾斜させるための機構であり、カム31、カムロッド32、倍力アーム33、タイロッド34、傾斜アーム35などを備えている。
【0032】
カム31は、ターレットテーブル3の側面に、2つのボビンホルダ2に対応して2つ設けられている。各カム31は、それぞれ、図2(b)に示すように、ターレットテーブル3の周方向に沿って延びており、図2(b)における時計回り方向における上流側の部分ほど、その外周面であるカム面31aが、回動軸3aに対してターレットテーブル3の径方向の外側に張り出している(ターレットテーブル3の回動軸3aから離れた位置にある)。
【0033】
カムロッド32は、その下端部に設けられたコロ41がカム面31aに接触しているとともに、その上端部が、倍力アーム33に連結されている。また、カムロッド32は、コロ41が設けられているロッド形成部材32aと、倍力アーム33に連結されているロッド形成部材32bとを有しており、2つのロッド形成部材32a、32bは上下に相対移動可能となっている。また、ロッド形成部材32aとロッド形成部材32bとの間には、スプリング42が設けられており、ロッド形成部材32bのスプリング42のすぐ上に配置されたボルト43を締めると、スプリング42が圧縮される。これにより、ボルト43をどの程度締めるかによって、ロッド形成部材32aの移動を、どの程度スプリング42により吸収した上で、ロッド形成部材32bに伝達するかを調整することができるようになっている。なお、スプリング42は設けられていなくてもよく、この場合には、カムロッド32の2つのロッド形成部材32a、32bに相当する部分を、1つの部材によって形成すればよい。
【0034】
倍力アーム33は、略矩形の板状体であって、その一端部にカムロッド32が取り付けられているとともに、カムロッド32と反対側の端部に、軸受37に挿通された揺動軸36が取り付けられており、揺動軸36を中心に揺動可能となっている。
【0035】
また、揺動軸36の下端部には、タイロッド34を取り付けるための取り付け軸38が設けられている。これにより、倍力アーム33においては、タイロッド34が、カムロッド32よりも、揺動軸36の中心から近い位置に取り付けられる。タイロッド34は、倍力アーム33と傾斜アーム35との間に取り付けられており、倍力アーム33と傾斜アーム35とを連結している。
【0036】
また、揺動軸36が挿通された軸受37は、タイロッド34を前後にまたぐように略コの字に折り曲げられた取り付け板39の、タイロッド34の前側に位置する部分に固定されており、取り付け板39は、タイロッド34を挟んだ軸受37が固定されているのと反対側の部分において、フレーム6に固定されている。なお、取り付け板39のフレーム6に固定された部分にも、揺動軸36及び軸受37と同様の揺動軸及び軸受が設けられており、この揺動軸に、取り付け軸38の揺動軸36と反対側の端部が取り付けられている。
【0037】
傾斜アーム35は、前後方向に延びた板状体であり、その略中央部において、取り付け部材22aに設けられた揺動軸24に揺動自在に支持されている。また、傾斜アーム35には、その後端部にタイロッド34が取り付けられているとともに、その前端部には貫通孔35aが形成されている。貫通孔35aには、上述のガイド軸13が挿通されている。
【0038】
次に、巻取機1における糸Yの巻取動作について説明する。図5〜図9は、それぞれ、糸巻取時の、図2、図4、図3(b)及び図1に相当する図である。
【0039】
巻取機1においてボビンBに糸Yを巻き取るためには、まず、巻取機1の上方に配置された図示しない紡糸装置において生成された糸Yを、糸ガイド8及びトラバース装置7に掛け、その後、図示しない昇降機構により、支持部材12を、コンタクトローラ11が、ボビンホルダ2に装着されたボビンBに当接しない位置まで上昇させた状態で、ボビンBに糸掛けを行う。そして、ボビンBへの糸掛けを行った後、支持部材12を降下させてコンタクトローラ11をボビンBに当接させ、この状態でボビンホルダ2を回転させることにより、ボビンBに接圧を付与しつつ、ボビンBに糸Yを巻き取っていく。
【0040】
ここで、このようにボビンBに糸Yを巻き取っていくと、巻き取られる糸Yの量が増加するにつれて、糸Yを含めたボビンBの径が徐々に大きくなっていくため、これに合わせて、ボビンホルダ2とコンタクトローラ11との距離を徐々に大きくする必要がある。
【0041】
このとき、本実施の形態では、支持部材12の昇降は行わず(コンタクトローラ11が所定の位置に保持され)、図5(a)に示すように、ボビンBに巻き取られる糸Yの量の増加するにつれて、ターレットテーブル3を、コンタクトローラ11から離れる方向(図5(a)における反時計回り方向、図5(b)における時計回り方向)に回動させることにより、ボビンホルダ2とコンタクトローラ11との距離を徐々に大きくしている。
【0042】
そして、このように、ターレットテーブル3を回動させると、図5(b)に示すように、ターレットテーブル3の側面に設けられたカム31も回動軸3aを中心に回動する。カム31は、上述したように、図5(b)における時計回り方向の上流側の部分ほど、カム面31aが、回動軸3aに対してターレットテーブル3の径方向の外側に張り出しているため、カム31が回動すると、カム31のカム面31aに当接するカムロッド32が、矢印aで示すようにカム31に押し出されて上方に移動する。
【0043】
カムロッド32が移動すると、図6に示すように、倍力アーム33が、揺動軸36を中心に反時計回りに回動し、これに連動して、倍力アーム33に取り付けられているタイロッド34が、矢印bで示すように、倍力アーム33側(図中右側)に引っ張られる。このとき、上述したように、倍力アーム33においては、タイロッド34が、カムロッド32よりも揺動軸36の中心に近い位置に取り付けられているため、カムロッド32が移動することで倍力アーム33が回動したときのタイロッド34の移動量は、カムロッド32の移動量に比べて小さなものとなる。したがって、倍力アーム33からタイロッド34に作用する力の大きさは、カムロッド32から倍力アーム33に作用する力の大きさよりも大きくなる。
【0044】
タイロッド34が倍力アーム33側に引っ張られると、図7に示すように、タイロッド34に連結された傾斜アーム35の後端部も、矢印bで示すように、倍力アーム33側に引っ張られ、これにより、傾斜アーム35が揺動軸24を中心に時計回りに回動する。そして、この傾斜アーム35の回動により、ガイド軸13が挿通されている傾斜アーム35の前端部が、矢印cで示すように、後端部と反対方向(図中左方)に移動する。
【0045】
そして、このように傾斜アーム35の前端部が移動すると、図6、図8に示すように、ガイド軸13が、傾斜アーム35(貫通孔35aの壁)に押されて傾斜し、これにより、ガイド軸13に沿って昇降する支持部材12、及び、支持部材12より支持されたコンタクトローラ11が傾斜する。このとき、コンタクトローラ11は、ボビンホルダ2の先端側の部分に対応する部分ほど下方に位置するように傾斜する(図8では、巻取完了直前の状態での傾斜角度がαとなっている)。
【0046】
すなわち、本実施の形態では、ターレットテーブル3が、本発明に係る移動部となっており、カム31、カムロッド32、倍力アーム33、タイロッド34及び傾斜アーム35により構成される傾斜機構5が、ターレットテーブル3と機械的に連動している。そして、傾斜機構5は、移動部としてのターレットテーブル3の回動を利用して、コンタクトローラ11を傾斜させている。また、ボビンBに巻き取られる糸Yの量が増加し、ターレットテーブル3が大きく回動するほど、コンタクトローラ11の傾斜角度は大きくなる。
【0047】
ここで、ボビンBに巻き取られる糸Yの量が多くなると、ボビンホルダ2は、糸Yの重みにより、ターレットテーブル3に支持されている部分から離れた先端側の部分ほど下方に撓み、この撓み量は、ボビンBに巻き取られる糸Yの量が増加するほど大きくなる。このとき、上述したのとは異なり、コンタクトローラ11が傾斜しないとすると、ボビンホルダ2の先端側に装着されたボビンBほど、コンタクトローラ11により付与される接圧が小さくなり、その結果、糸Yの巻取が完了したときに、ボビンBの左右の径に差が生じてしまう。
【0048】
しかしながら、本実施の形態では、上述したように、ボビンBに巻き取られる糸Yの量が増加するのに伴って、コンタクトローラ11が、ボビンホルダ2の先端側の部分に対応する部分ほど下方にくるように傾斜するため、ボビンホルダ2とコンタクトローラ11とがほぼ平行な状態に保持され、互いの距離が均一になる。これにより、コンタクトローラ11とボビンBとの間の接圧が均一になり、巻取が完了したときのボビンの径も均一になる。
【0049】
さらに、本実施の形態では、ターレットテーブル3と機械的に連動した傾斜機構5により、ボビンBに巻き取られる糸Yの量が増加するのに連動して回動するターレットテーブル3の回動をガイド軸13に伝達することで、コンタクトローラ11を傾斜させている。そのため、万一、傾斜機構5のいずれかの部分が破損するなどしても、ターレットテーブル3の回動が、ガイド軸13に伝達されなくなり(傾斜機構5がターレットテーブル3と機械的に連動しなくなり)、コンタクトローラ11をそれ以上傾斜させることができなくなってしまうだけであり、コンタクトローラ11は、傾斜機構5の破損直前の姿勢に保持されたままとなる。
【0050】
したがって、傾斜機構5が破損しても、コンタクトローラ11に急激な傾斜角度の変動が生じて、ボビンBにおいて糸Yの巻き崩れが生じたり、コンタクトローラ11に振動が発生して、支持部材12のコンタクトローラ11を支持している部分が破損したりするといったことが起こりにくい。
【0051】
また、コンタクトローラ11は、ある程度重量の大きなものであり、コンタクトローラ11を傾斜させるためにはある程度大きな力が必要となるが、上述したように倍力アーム33からタイロッド34に作用する力が、カムロッド32から倍力アーム33に作用する力よりも大きいため、カム31がカムロッド32を押し出す力がそれほど大きくなくても、重量の大きいコンタクトローラ11を傾斜させることができる。
【0052】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成については、適宜その説明を省略する。
【0053】
上述の実施の形態では、ターレットテーブル3の回動を、カム31、カムロッド32、倍力アーム33、タイロッド34及び傾斜アーム35を備えた傾斜機構5を用いてガイド軸13に伝達したが、これとは別の機構によって、ターレットテーブル3の回動をガイド軸13に伝達してもよい。
【0054】
また、上述の実施の形態では、コンタクトローラ11を支持する支持部材12を昇降自在に支持するガイド軸13を傾斜させることによって、支持部材12及びコンタクトローラ11を傾斜させたが、ガイド軸13や支持部材12は傾斜させずに、コンタクトローラ11を直接傾斜させてもよい。
【0055】
また、上述の実施の形態では、コンタクトローラ11を支持する支持部材12が昇降可能となっていることにより、糸Yの巻取時には、コンタクトローラ11をボビンBに当接させ、糸掛け時などには、コンタクトローラ11をボビンホルダ2から離すことができるようになっていたが、コンタクトローラ11をボビンホルダ2に対して接離させる構成はこれには限れらない。
【0056】
一変形例(変形例1)では、図9、図10に示すように、コンタクトローラ11を支持する支持部材51に揺動軸52が設けられている。揺動軸52の両端部は、それぞれ、軸受53a、53bに挿通されており、これにより、支持部材51は、揺動軸52を中心に揺動可能となっている。そして、支持部材51を揺動させることによって、コンタクトローラ11を、図10において実線で示すボビンBに当接した位置と、図10において二点鎖線で示すボビンホルダ2から離れた位置との間で移動させることができるようになっている。
【0057】
また、軸受53a、53bは、球面軸受となっており、揺動軸52が、軸受53a、53bに対して揺動可能となっている。
【0058】
また、軸受53aは、機台10に固定された図示しないフレームなどに取り付けられており、軸受53bは、アーム54に取り付けられている。アーム54は、その一端部に設けられた揺動軸55を中心に揺動自在に支持されており、その略中央部に軸受53bが取り付けられているとともに、揺動軸55と反対側の端部にカムロッド32が連結されている。すなわち、アーム54においては、軸受53bが、カムロッド32よりも揺動軸55に近い位置に取り付けられている。
【0059】
この場合にも、上述の実施の形態と同様、ボビンBに巻き取られる糸Yの量が増加するのに伴って、ターレットテーブル3が回動し、これにより、カム31が回動するとともに、カムロッド32がカム31に押し出されて上方に移動するが、変形例1の場合には、カムロッド32が上方に移動すると、図11に示すように、アーム54が揺動軸55を中心に揺動し、アーム54に取り付けられた軸受53bが上方に押し上げられる。これにより、軸受53a、53bに挿通されている揺動軸52、揺動軸52に支持されている支持部材51、及び、支持部材51に支持されているコンタクトローラ11が傾斜する。なお、この場合も、コンタクトローラ11は、ボビンホルダ2の先端側の部分に対応する部分ほど下方にくるように傾斜する。また、変形例1では、コンタクトローラ11を傾斜させるための、カム31、カムロッド32及びアーム54が、本発明に係る傾斜機構に相当する。
【0060】
なお、変形例1の場合でも、アーム54において、軸受53bが、カムロッド32よりも、揺動軸55に近い位置に取り付けられているため、アーム54が回動したときの軸受53bの移動量が、カムロッド32の移動量よりも小さい。したがって、アーム54から軸受53bに作用する力が、カムロッド32からアーム54に作用する力よりも大きくなり、カム31がカムロッド32を押し出す力がそれほど大きくなくても、重量の大きいコンタクトローラ11を傾斜させることができる。
【0061】
また、上述の実施の形態では、ボビンBに巻き取られる糸Yの量が増加するのに伴って、ターレットテーブル3が回動することで、ボビンホルダ2とコンタクトローラ11との距離が徐々に離れるようになっており、このターレットテーブル3の回動を伝達することによってコンタクトローラ11を傾斜させていたが、これには限られない。
【0062】
別の一変形例(変形例2)では、図12に示すように、コンタクトローラ11の両端部を支持する支持部材61の一端部に、直動軸受62が設けられている。また、変形例2の巻取機には、機台10の図示しないフレームなどに固定されているとともに、上下に延びたガイド軸63が設けられており、直動軸受62は、ガイド軸63に挿通されている。そして、これにより、支持部材61及びコンタクトローラ11は、ガイド軸63により支持されるとともに、ガイド軸63に沿って昇降可能となっている。
【0063】
ここで、直動軸受62の両端部と支持部材61との間には、それぞれ、オーリング64が介在している。これにより、支持部材61及びコンタクトローラ11は、機台10に固定されたガイド軸63に対して揺動可能となっている。
【0064】
また、支持部材61の端部には、コロ61aが設けられている。さらに、コロ61aに対応して、支持部材61の側方には、機台10の図示しないフレームなどに固定された傾斜機構65が設けられている。
【0065】
傾斜機構65には、上下に延びた溝66が形成されている。溝66には、支持部材61のコロ61aが嵌め込まれており、コロ61aは、支持部材61がガイド軸63に沿って昇降するのに合わせて、溝66に沿って昇降する。また、溝66の内部には、コロ61aの先端部と接触する案内部材67が配置されている。案内部材67は、コロ61aの先端部と接触する案内面67a(案内)が、上側の部分ほど、支持部材61側(図中左側)にくるように、上下方向に対して傾斜している。
【0066】
この場合には、ボビンBに巻き取られる糸Yの量が増加したときに、ターレットテーブル3は回動せず、代わりに、コンタクトローラ11及び支持部材61が、糸Yが巻き取られることで径が大きくなったボビンBに押し上げられることでガイド軸63沿って移動し、これにより、ボビンホルダ2とコンタクトローラ11との間隔が大きくなるようになっている。
【0067】
そして、ボビンBに巻き取られる糸Yの量が増加するのに伴って、コンタクトローラ11及び支持部材61がボビンBに押し上げられて上方に移動すると、図13に示すように、コロ61aが溝66に沿って上方に移動する。これにより、コロ61aが、案内部材67の案内面67aに沿って案内され、支持部材61及びコンタクトローラ11が傾斜する。なお、この場合も、コンタクトローラ11は、ボビンホルダ2の先端側の部分に対応する部分ほど下方にくるように傾斜する。
【0068】
すなわち、変形例2では、コンタクトローラ11自身が本発明に係る移動部に相当するとともに、コンタクトローラ11を支持する支持部材61に設けられたコロ61aの先端部が、案内部材67(案内面67a)に接触していることにより、コンタクトローラ11と傾斜機構65とが機械的に連動している。そして、傾斜機構65は、ボビンBに巻き取られる糸Yの量が増加するときのコンタクトローラ11自身の移動を利用して、コンタクトローラ11を傾斜させている。
【0069】
また、変形例2では、支持部材61を案内部材67の案内面67aに沿って案内することで、コンタクトローラ11を傾斜させていたが、これには限られず、コンタクトローラ11自身の移動を別の形で利用する、コンタクトローラ11と機械的に連動した傾斜機構により、コンタクトローラ11を傾斜させてもよい。
【0070】
また、以上の説明では、傾斜機構が、ターレットテーブル3の回動あるいはコンタクトローラ11自身の移動を利用して、コンタクトローラ11を傾斜させていたが、これには限られない。巻取機が、ボビンBに巻き取られる糸Yの量が増加するのに伴って移動する、ターレットテーブル3及びコンタクトローラ11以外の移動部を有している場合には、傾斜機構は、その移動部と機械的に連動しており、その移動部の移動を利用してコンタクトローラ11を傾斜させるものであってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 巻取機
2 ボビンホルダ
3 ターレットテーブル
5 傾斜機構
11 コンタクトローラ
31 カム
32 カムロッド
54 アーム
65 傾斜機構
67 案内部材
67a 案内面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機台本体に片持ち支持された、糸を巻き取るためのボビンが装着されるボビンホルダと、
前記ボビンホルダに装着されたボビンに当接するコンタクトローラと、
前記コンタクトローラを、上下方向に傾斜させる傾斜機構とを備え、
前記傾斜機構は、ボビンに巻き取られる糸の量の変化に伴って移動する移動部と機械的に連動しており、前記移動部の移動を利用して、前記コンタクトローラを傾斜させることを特徴とする巻取機。
【請求項2】
前記ボビンホルダを片持ち支持しているとともに、前記ボビンホルダの軸心と平行な回動軸を中心に回動することでボビンホルダを移動させるターレットテーブルをさらに備えており、
糸の巻取時に、
前記コンタクトローラが、所定の位置に保持されているとともに、
前記ターレットテーブルが、ボビンに巻き取られる糸の量が増加するほど、前記ボビンホルダが前記コンタクトローラから離れる方向に回動する前記移動部として構成され、
前記傾斜機構は、前記ターレットテーブルと機械的に連動しており、前記ターレットテーブルの回動を利用して、前記コンタクトローラを傾斜させることを特徴とする請求項1に記載の巻取機。
【請求項3】
前記傾斜機構が、前記ターレットテーブルの回動を前記コンタクトローラに伝達することで、前記コンタクトローラを傾斜させるものであって、
前記ターレットテーブルに設けられており、前記ターレットテーブルの回動方向に沿って延びたカム面を有するカムと、
前記カム面に当接したカムロッドとを備えていることを特徴とする請求項2に記載の巻取機。
【請求項4】
前記コンタクトローラを昇降自在に支持するガイド軸をさらに備えており、
前記傾斜機構は、前記ガイド軸を傾斜させることによって、前記コンタクトローラを傾斜させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の巻取機。
【請求項5】
前記コンタクトローラは、糸の巻取時に、糸が巻き取られたボビンに押し上げられて移動するように構成されることで前記移動部となっており、
前記傾斜機構は、前記コンタクトローラと機械的に連動しており、押し上げられたコンタクトローラ自身の移動を利用して前記コンタクトローラを傾斜させることを特徴とする請求項1に記載の巻取機。
【請求項6】
前記傾斜機構は、上下方向に対して傾斜した案内を有しており、移動する前記コンタクトローラを前記案内に沿って案内することによって、前記コンタクトローラを傾斜させる案内部材を備えていることを特徴とする請求項5に記載の巻取機。
【請求項1】
機台本体に片持ち支持された、糸を巻き取るためのボビンが装着されるボビンホルダと、
前記ボビンホルダに装着されたボビンに当接するコンタクトローラと、
前記コンタクトローラを、上下方向に傾斜させる傾斜機構とを備え、
前記傾斜機構は、ボビンに巻き取られる糸の量の変化に伴って移動する移動部と機械的に連動しており、前記移動部の移動を利用して、前記コンタクトローラを傾斜させることを特徴とする巻取機。
【請求項2】
前記ボビンホルダを片持ち支持しているとともに、前記ボビンホルダの軸心と平行な回動軸を中心に回動することでボビンホルダを移動させるターレットテーブルをさらに備えており、
糸の巻取時に、
前記コンタクトローラが、所定の位置に保持されているとともに、
前記ターレットテーブルが、ボビンに巻き取られる糸の量が増加するほど、前記ボビンホルダが前記コンタクトローラから離れる方向に回動する前記移動部として構成され、
前記傾斜機構は、前記ターレットテーブルと機械的に連動しており、前記ターレットテーブルの回動を利用して、前記コンタクトローラを傾斜させることを特徴とする請求項1に記載の巻取機。
【請求項3】
前記傾斜機構が、前記ターレットテーブルの回動を前記コンタクトローラに伝達することで、前記コンタクトローラを傾斜させるものであって、
前記ターレットテーブルに設けられており、前記ターレットテーブルの回動方向に沿って延びたカム面を有するカムと、
前記カム面に当接したカムロッドとを備えていることを特徴とする請求項2に記載の巻取機。
【請求項4】
前記コンタクトローラを昇降自在に支持するガイド軸をさらに備えており、
前記傾斜機構は、前記ガイド軸を傾斜させることによって、前記コンタクトローラを傾斜させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の巻取機。
【請求項5】
前記コンタクトローラは、糸の巻取時に、糸が巻き取られたボビンに押し上げられて移動するように構成されることで前記移動部となっており、
前記傾斜機構は、前記コンタクトローラと機械的に連動しており、押し上げられたコンタクトローラ自身の移動を利用して前記コンタクトローラを傾斜させることを特徴とする請求項1に記載の巻取機。
【請求項6】
前記傾斜機構は、上下方向に対して傾斜した案内を有しており、移動する前記コンタクトローラを前記案内に沿って案内することによって、前記コンタクトローラを傾斜させる案内部材を備えていることを特徴とする請求項5に記載の巻取機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−255979(P2011−255979A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129624(P2010−129624)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(502455511)TMTマシナリー株式会社 (91)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(502455511)TMTマシナリー株式会社 (91)
【Fターム(参考)】
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