説明

巻取装置

【課題】可動筒の上方に飛散する風綿を確実に回収することができる巻取装置を提供する。
【解決手段】風綿回収装置30は、解舒補助装置2の可動筒13の上方開口13aの近傍に配された上ノズル31と、可動筒13の下方開口13bの近傍に配された下ノズル32とを備える。これにより、可動筒13の下方に飛散する風綿のみならず、可動筒13の上方に飛散する風綿をも回収することができる。また、可動筒13のみならず、上下ノズル31・32を給糸ボビンBからの解舒作業に追随させて下降変位されるように構成したので、風綿回収装置30の吸引ノズルの姿勢位置が固定されている形態に比べて、飛散する風綿をより効率的に回収することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻取装置に関し、特に解舒補助装置の風綿回収装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の風綿回収装置の従来例としては、本特許出願人による特許文献1、特許文献2などを挙げることができる。特許文献1においては、解舒作業の進行に伴って下降変位されるバルーン規制部材に風綿回収装置を設けている。そこでのバルーン規制部材は、内管と外管とで構成されて、内流路と外流路とを有する二重管構造に形成されており、両流路を区画する内管の筒壁に、風綿吸引用の開口が設けられている。内管の下部から吸込まれた風綿は、開口を介して外流路に至り、外流路に連通された吸引パイプから集綿ボックスに送られる。
【0003】
特許文献2に記載の風綿回収装置は、風綿を吸引回収する吸引開口部を有する吸引ノズルと、吸引ノズルを昇降変位させる昇降手段とを備える。そして、給糸ボビンの解舒位置および解舒された糸がバルーンを形成するバルーン形成領域に対して吸引ノズルの吸引開口部が臨むように、給糸ボビンから解舒作業の進行に追随させて昇降手段により吸引ノズルを下降変位させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−139621号公報(図2、図3参照)
【特許文献2】特開2009−046267号公報(請求項1、図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の風綿回収装置では、給紙ボビンの真上で風綿を回収するため、給糸ボビンから水平方向に広がるバルーン形態で解舒された糸に付着の風綿に対する回収効率が悪く、風綿が周囲に飛散しやすい。これに対して、特許文献2に記載の風綿回収装置によれば、給糸ボビンからの解舒作業に追随させて、昇降手段により吸引ノズルを下降変位させるため、吸引ノズルの姿勢位置が固定されている特許文献1の形態に比べて風綿を効率的に回収することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献2の風綿回収装置においても、解舒補助装置の可動筒の上方に飛散する風綿を回収することが不可能である。すなわち、この種の巻取装置は、給糸ボビンからの解舒作業に追随して下降変位される可動筒と、可動筒の上方に配された固定筒と、可動筒を上下動させるための昇降手段とからなる解舒補助装置を備え、可動筒を上下動させることにより、バルーンを適切な大きさに制御している。また、バルーン形態で解舒された糸は、可動筒、次いで固定筒の内部を通って糸継装置等に送られる。
【0007】
以上のような構成からなる解舒補助装置においては、可動筒が上方に位置している状態では、両筒が内外に重なる重畳状態にある。この状態から給糸ボビンからの解舒作業が進み、可動筒が最下方位置の近傍まで移動されると、可動筒の上端と固定筒の下端との間には空隙が形成され、可動筒の上方開口から排出された糸は、この空隙において小さなバルーンとなった後に固定筒の下方開口に導入される。このため、特許文献2に記載の風綿回収装置においては、給糸ボビンと可動筒との間に形成されるバルーンから飛散される風綿を吸引回収することができるものの、可動筒と固定筒との間の空隙に形成されるバルーンから飛散される風綿を吸引回収することは不可能である。また、両筒が重畳状態にある場合でも、可動筒の内壁面と固定筒の外壁面との間の隙間を通って、可動筒の上方開口から風綿が飛散することがあり、特許文献2に記載の風綿回収装置では、当該風綿を吸引回収することは不可能である。
【0008】
本発明は、以上のような従来の巻取装置における問題を解決するためになされたものであり、その目的は、可動筒の上方に飛散する風綿を確実に回収することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る巻取装置は、給糸ボビンBからパッケージPに向けて糸を走行させて巻取作業をおこなう巻取装置を対象とする。この巻取装置は、糸解舒に追従させて第一規制部13を移動させることにより、該給糸ボビンBからの解舒作業に伴って形成されるバルーン10の制御を行う解舒補助装置2と、前記第一規制部13の糸走行方向下流側の開口13aの近傍に配された下流ノズル31を備え、該第一規制部13の下流位置に飛散する風綿の回収を行う風綿回収装置30と、を備えることを特徴とする。
【0010】
前記下流ノズル31は前記給糸ボビンBの長手方向に移動可能に構成され、前記給糸ボビンBからの解舒作業の進行に追随させて、前記第一規制部13および前記下流ノズル31を同時に移動させる昇降機構を備える形態を採ることができる。
【0011】
前記風綿回収装置30は、該第一規制部13の糸走行方向上流側の開口13bの近傍に配された上流ノズル32をさらに備え、該第一規制部13の上流側及び下流側に飛散する風綿の回収を行うものとすることができる。
【0012】
前記第一規制部13、前記下流ノズル31及び前記上流ノズル32は、前記給糸ボビンBの長手方向に一体的に移動可能に構成されており、前記給糸ボビンBからの解舒作業の進行に追随させて、前記第一規制部13、前記下流ノズル31及び前記上流ノズル32を同時に移動させる昇降機構を備えるものとすることができる。
【0013】
前記下流ノズル31が、前記第一規制部13を囲むように、かつ下流側に向けて開口する平面視でU字状の吸引開口部38を備えており、前記上流ノズル32が、前記第一規制部13を囲むように、かつ上流側に向けて開口する平面視でU字状の吸引開口部42を備える形態を採ることができる。
【0014】
前記下流側及び上流側の各ノズル31・32の吸引開口部38・42が、平面視で真円状の円弧部38a・42aを含み、前記第一規制部13の内壁面が、断面円状に形成されており、前記円弧部38a・42aの円中心で規定される前記吸引開口部38・42の中心位置O1・O3と、前記内壁面の中心で規定される前記第一規制部13の中心位置O2とが、垂直方向において同心位置にあるように前記上流ノズル32および下流ノズル31が配されている形態を採ることができる。
【0015】
前記解舒補助装置2は、巻取作業時に一定の位置で停止して糸を案内する第二規制部12を更に備え、前記第一規制部13及び前記第二規制部12は筒状体であり、前記第一規制部13は前記給糸ボビンBの解舒過程において、前記第二規制部12と重なる位置から、ボビン解舒側に離間する位置まで移動可能に構成されている形態を採ることができる。
【0016】
前記風綿回収装置30から集綿ボックスに至るダクト33には、伸縮自在なフレキシブル管45が設けられており、前記ダクト33の前記フレキシブル管45よりも上流側に、上流側および下流側の各ノズル32・31からフレキシブル管45に至る2本の分岐路35・40が設けられている形態を採ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る巻取装置においては、糸解舒に追従させて移動される第一規制部13の糸走行方向下流側の開口13aの近傍に下流ノズル31を配したので、すなわち、第一規制部13の上方側の開口13aの近傍に下流ノズル31を配したので、該第一規制部13の上方に飛散する風綿を確実に回収することができる。
【0018】
給糸ボビンBからの解舒作業の進行に追随させて、第一規制部13および下流ノズル31を同時に移動させる昇降機構14を備えるものとする。これによれば、これら第一規制部13および下流ノズル31を専用の昇降機構で移動させる形態に比べて、昇降機構の簡素化を図り、巻取装置の製造コストの削減に貢献できる。
【0019】
第一規制部13の糸走行方向上流側の開口13bの近傍に配された上流ノズル32をさらに備えるものとすることができる。これによれば、第一規制部13の下流側の開口13aのみならず、上流側の開口13bに飛散する風綿も回収することが可能となる。換言すれば、第一規制部13の上方の開口13aのみならず、下方開口13bに飛散する風綿をも回収することが可能となる。
【0020】
第一規制部13、下流ノズル31及び上流ノズル32を同時に移動させる昇降機構14を備えるものとする。これによれば、これら第一規制部13、下流ノズル31及び上流ノズル32を専用の昇降機構14で移動させる形態に比べて、昇降機構14の簡素化を図り、巻取装置の製造コストの削減に貢献できる。
【0021】
下流ノズル31を、第一規制部13を囲むように配された上方に指向する平面視でU字状の吸引開口部38を備えるものとし、上流ノズル32を、第一規制部13を囲むように配された下方に指向する平面視でU字状の吸引開口部42を備えるものとする。これによれば、第一規制部13の上流側の開口13b(下方開口13b)および下流側の開口13a(上方開口13a)を上下流のノズル32・31で囲むことができるので、第一規制部13の上流側の開口13b、および下流側の開口13aに飛散する風綿をより確実に回収することができる。
【0022】
給糸ボビンBから繰り出される糸Yは、バルーン形態で旋回されながら繰り出される。また、当該バルーン10の旋回中心は、給糸ボビンB、および該給糸ボビンBの頭部に被さる第一規制部13の中心位置O2と略一致している。このため、上流ノズル32の吸引開口部42を、平面視で真円状の円弧部42aを含むものとし、該円弧部42aの円中心で規定される吸引開口部42の中心位置O3と、内壁面の真円の円中心で規定される第一規制部13の中心位置O2とが、垂直方向において同心位置にあるように上流ノズル32が配されていると、バルーン10に付着して全周方向に飛散する風綿を、上流ノズル32によって確実に吸込むことができる。加えて、下流ノズル31の吸引開口部38を、平面視で真円状の円弧部38aを含むものとし、円弧部38aの円中心で規定される吸引開口部38の中心位置O1と、内壁面の真円の円中心で規定される第一規制部13の中心位置O2とが、垂直方向において同心位置にあるように下流ノズル31が配されていると、第一規制部13の下流側の開口13aから全周方向に飛散する風綿を、下流ノズル31によって確実に吸込むことができる。
【0023】
解舒補助装置2は、取作業時に一定の位置で停止して糸を案内する第二規制部12を更に備えるものとし、第一規制部13が給糸ボビンBの解舒過程において、第二規制部12と重なる位置から、ボビン解舒側に離間する位置まで移動可能に構成されている形態を採ることができる。これによれば、第一規制部13が第二規制部12と重なる位置にあるときには、給糸ボビンBから解舒された糸Yは、給糸ボビンBの解舒位置24と第一規制部13の上流側の開口13bとの間でバルーン10を形成したのち第一規制部13の上流側の開口13bに導入され、次いで、第二規制部12の上流側の開口12bから該第二規制部12内に導入される。また、第一規制部13がボビン解舒側に離間する位置にあるときには、給糸ボビンBから解舒された糸Yは、給糸ボビンBの解舒位置24と第一規制部13の上流側の開口13bとの間でバルーン10を形成したのち第一規制部13の上流側の開口13bに導入され、前記離間位置において上バルーン10bを形成したのち、第二規制部12の上流側の開口12bから第二規制部12内に導入される。
【0024】
このため、第一規制部13の下方においては、バルーン10に付着の風綿が飛散する。加えて、第一規制部13の上方においては、第一規制部13が第二規制部12と重なる位置にあるときには、第一規制部13の内壁面と第二規制部12の外壁面との間の隙間50を通り、第一規制部13の下流側の開口13aから風綿が飛散する。第一規制部13がボビン解舒側に離間する位置にあるときには、第一規制部13と第二規制部12との間の離間位置に形成される上バルーン10bに付着の風綿が飛散する。
【0025】
以上のような実情を踏まえて、本発明においては、上記のように、第一規制部13の上流側の開口13bの近傍に風綿回収装置30の上流ノズル32を配置したので、バルーン10に付着して第一規制部13の下方に飛散する風綿を吸引し、これを回収することが可能である。また、第一規制部13の下流側の開口13aの近傍に風綿回収装置30の下流ノズル31を配置したので、第一規制部13が第二規制部12と重なる位置にあるときには、第一規制部13の内壁面と第二規制部12の外壁面との間の隙間50を通って、下流側の開口13aから第一規制部13の上方に飛散する風綿を下流ノズル31で吸込み、これを回収することができる。また、第一規制部13がボビン解舒側に離間する位置にあるときには、第一規制部13と第二規制部12との間の離間位置19に形成される上バルーン10bに付着して第一規制部13の上方に飛散する風綿を下流ノズル31で吸込み、これを回収することができる。
【0026】
風綿回収装置30から集綿ボックスに至るダクトに、伸縮自在なフレキシブル管45が設けられており、ダクトのフレキシブル管45よりも上流側に、上下の各ノズル31・32からフレキシブル管に至る2本の分岐路35・40が設けられていると、各ノズル31・32から集綿ボックスに至るように、各ノズル31・32に専用のダクトを設ける形態に比べて、ダクトの本数を減らすことができる。従って、巻取装置の製造コストの上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る巻取装置の要部の縦断側面図であり、可動筒が上方位置にある状態を示している。
【図2】本発明に係る巻取装置が適用される自動ワインダーの全体構成図である。
【図3】本発明に係る巻取装置の要部の縦断側面図であり、可動筒が下方位置にある状態を示している。
【図4】図3のC−C線断面図である。
【図5】図3のD−D線断面図である。
【図6】本発明に係る巻取装置の風綿回収装置による風綿の吸い取り動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1から図5に、本発明に係る巻取装置を自動ワインダーに適用した実施形態を示す。自動ワインダー装置は、列状に配置した一群のワインディングユニットで構成されている。図2において、ワインディングユニットは、起立固定される縦長箱状のユニットフレーム1を基体にして構成する。ユニットフレーム1の一側には、解舒補助装置2と、テンション装置3と、糸継ぎ装置4と、スラブキャッチャー5などが、フレーム下部からフレーム上部へ向かって記載順に配置されている。ユニットフレーム1の一側上部には、糸Yを一定の幅範囲で変位操作(トラバース)して、パッケージPとする綾振ドラム6とが配置されている。ワインディングユニットには、これらの機器以外に、切断された糸を吸引捕捉して糸継ぎ装置4に渡す中継ぎパイプ7とサクションマウス8が、先の機器列の中途部に上下方向へ旋回可能に設けられている。
【0029】
図1から図3に示すように、解舒補助装置2の下方には、給糸ボビンBが起立姿勢で支持されている。給糸ボビンBからバルーン10の形態で繰り出された糸Yは、先の各機器2〜5を通過する間に糸欠陥の有無がチェックされ、糸欠陥が発見されるとスラブキャッチャー5に設けたカッターと、テンション装置3に設けたカッターで切断されて、欠陥部が吸引除去される。尚、ここで言う「バルーン」とは、給糸ボビンBの解舒位置から、直下流のガイド(可動筒)の間に形成される糸Yの挙動を示す。解舒された糸Yは、遠心力により給糸ボビンBの周方向への力を受けつつ巻き上げられる。この力により、糸Yはバルーン状に膨らむ挙動を示す。
【0030】
図1および図3に示すように、解舒補助装置2は、固定筒(第二規制部)12と、固定筒12の下方に配されたバルーン10の大きさを制御するための可動筒(第一規制部)13と、可動筒13を昇降変位させるための昇降機構としてのモータ14などを備える。可動筒13は、固定筒12の外形寸法よりも大きな内径寸法を有する円筒体を基体とするものであり、固定筒12の外周に遊嵌状態で装着されている。可動筒13の下方開口(上流側の開口)13bには、下拡がりのベルマウス状の導入口が形成されている。固定筒12は、ユニットフレーム1から伸びる支持腕17に固定されており、固定筒12の下方開口(上流側の開口)12bには、下拡がりテーパー状のガイド面18が形成されている。
【0031】
可動筒13の外周には、左右一対の覆い部21・21が固定され、これら覆い部21・21がモータ14によってネジ部材15が回転することにより上下動される作動腕16に連結されている。モータ14のネジ部材15の回転に応じて、可動筒13は、固定筒12の外壁面に被さり、両筒12・13が二重筒状となる上方位置(図1参照:第一規制部が給糸ボビンの解舒過程において第二規制部と重なる位置)と、可動筒13の上方開口13aと固定筒12の下方開口12bとの間に対向空隙19が形成される下方位置(図3参照:ボビン解舒側に離間する位置)との間で昇降変位される。
【0032】
各覆い部21・21は、作動腕16から水平方向に延びる翼部22と、翼部22の先端から下方に延びる腕部23からなる。各腕部23の遊端の内面には、給糸ボビンBの解舒位置24であるチェース部25を検出するためのセンサ26が配設されている。センサ26は、投光素子と受光素子とからなる透過型のセンサであり、給糸ボビンBをワインディングユニットにセットした初期状態においては、投光素子からの照射光はチェース部25で遮られて受光は検出されず、コントローラ28はオフ信号を受けるようになっている。初期状態から解舒作業が進み、チェース部25が下降すると、受光素子による受光量が増えて、受光素子はオン信号を発する。かかる受光素子からのオン信号を受けると、コントローラ28はモータ14によってネジ部材15を回転操作して、覆い部21・21を下降させる。投光素子からの照射光がチェース部25で遮られて受光素子がオフ信号を発すると、コントローラ28はモータ14によるネジ部材15の回転操作を停止させる。以上のようなモータ14の回転操作により、可動筒13を覆い部21・21と共に順次下降変位させることができる。
【0033】
図1および図3において、符号30は、給糸ボビンBからの解舒作業に際して生じた風綿を吸引回収するための風綿回収装置を示す。風綿回収装置30は、可動筒13の上下方向に飛散する風綿の回収を担うものであり、可動筒13の上方開口13aの近傍に配されて、可動筒13の上方における風綿の回収を行う上ノズル(下流ノズル)31と、可動筒13の下方開口13bの近傍に配されて、可動筒13の下方における風綿の回収を行う下ノズル(上流ノズル)32とを備える。これら上下ノズル31・32で回収された風綿は、集綿ダクト33を介して図外の集綿ボックスに送られる。
【0034】
図1、図3および図4に示すように、上ノズル31は、内部流路(分岐路)35を備える扁平箱状のノズル本体36と、ノズル本体36の一端部から下方に伸びるダクト管37とを備える樹脂成形品であり、ノズル本体36の上面に、可動筒13を囲むように配された、上方に指向する平面視でU字状の吸引開口部38が開設されている。詳しくは、図4に示すように、吸引開口部38は、平面視で部分真円状の円弧部38aと、円弧部38aの両端部から前方に向けて突出された2つの直線部38b・38bとからなるU字状に形成されており、円弧部38aの円中心で規定される吸引開口部38の中心位置O1と、可動筒13の内壁面の真円の円中心とで規定される可動筒の中心位置O2とは、垂直方向に同心位置にある。上ノズル31の吸引開口部38の高さ位置は、可動筒13の上端よりも低い位置にある。本実施例においては、可動筒13の上端の約20mm下方に吸引開口部38が位置している。
【0035】
下ノズル32は、上ノズル31と略同様のノズル形態となっている。すなわち、図1、図3および図5に示すように、下ノズル32は、内部流路(分岐路)40を備える扁平箱状のノズル本体41を備える樹脂成形品であり、ノズル本体41の下面に、可動筒13を囲むように配された、下方に指向する平面視でU字状の吸引開口部42が開設されている。詳しくは、図5に示すように、吸引開口部42は、平面視で部分真円状の円弧部42aと、円弧部42aの両端部から前方に向けて突出された2つの直線部42b・42bとからなるU字状に形成されており、円弧部42aの円中心で規定される吸引開口部42の中心位置O3と、可動筒13の内壁面の真円の円中心とで規定される可動筒13の中心位置O2とは、垂直方向に同心位置にある。なお、下ノズル32の円弧部42aの径寸法は、上ノズル31の円弧部38aの径寸法よりも大きく設定されている。
【0036】
下ノズル32のノズル本体41の上面には、上ノズル31から伸びるダクト管37と、フレキシブル管45を介して集綿ダクト33に至る連結ダクト46とが接続されている。
【0037】
風綿回収装置30を構成するこれら上下のノズル31・32は、ユニット部品化された状態でフレキシブル管45に接続されている。すなわち、上ノズル31を構成するノズル本体36とダクト管37と、下ノズル32を構成するノズル本体41、および連結ダクト46は、一つのユニット部品とされた状態で、フレキシブル管45に接続されている。
【0038】
図1および図3に示すように、下ノズル32のノズル本体41の上面は、覆い部21・21に固定されており、モータ14のネジ部材15の回転に応じて、下ノズル32、および上ノズル31は昇降変位される。すなわち、上記のように、下ノズル32と上ノズル31とは、ダクト管37により接続されている。このため、モータ14のネジ部材15が回転操作されると、覆い部21・21に固定された下ノズル32のみならず、ダクト管37により下ノズル32に連結された上ノズル31も昇降変位される。
【0039】
次に、以上のような構成からなる風綿回収装置30による風綿の吸引回収動作について、図1、図3および図6を参照して説明する。まず、図1に示すように、可動筒13が上方位置にあるときには、給糸ボビンBから解舒された糸Yは、給糸ボビンBの解舒位置と可動筒13の下方開口13bとの間でバルーン10を形成したのち可動筒13の下方開口13bに導入され、次いで、固定筒12の下方開口12bから該固定筒12内に導入されて、固定筒12の上方開口12aからテンション装置3に送出される。また、図3に示すように、可動筒13が下方位置にあるときには、給糸ボビンBから解舒された糸Yは、給糸ボビンBの解舒位置と可動筒13の下方開口13bとの間でバルーン10を形成したのち可動筒13の下方開口13bに導入され、対向空隙19において小径の上バルーン10bを形成したのち、固定筒12の下方開口12bから固定筒12内に導入され、上方開口12aからテンション装置3に送出される。
【0040】
このため、可動筒13の下方においては、バルーン10に付着の風綿が飛散するおそれがある。加えて、可動筒13の上方においては、可動筒13が上方位置にあるときには、可動筒13の内壁面と固定筒の外壁面との間の隙間50を通って、可動筒13の上方開口13aから風綿が飛散するおそれがある(図1参照)。可動筒13が下方位置にあるときには、可動筒13と固定筒12との間の対向空隙19に形成される上バルーン10bに付着の風綿が飛散するおそれがある(図3および図6参照)。
【0041】
以上のような実情を踏まえて、本実施形態に記載の巻取装置(自動ワインダー)においては、上記のように、可動筒13の下方開口13bの近傍に風綿回収装置30の下ノズル32を配置したので、バルーン10に付着して可動筒13の下方に飛散する風綿を吸引し、これを回収することが可能である。また、給糸ボビンBからの解舒作業の進行に追随させて、モータ14により下ノズル32を下降変位させるので、解舒作業の進行に伴ってバルーン10と下ノズル32との対向間隔が変動することを抑えて、常にバルーン10に対する最適位置から下ノズル32で風綿を吸引することができる。
【0042】
また、本実施例に記載の巻取装置(自動ワインダー)においては、可動筒13の上方開口13aの近傍に風綿回収装置30の上ノズル31を配置したので、可動筒13が上方位置にあるときには、可動筒13の内壁面と固定筒の外壁面との間の隙間50を通って、上方開口13aから可動筒13の上方に飛散する風綿を上ノズル31で吸引し、これを回収することができる。また、可動筒13が下方位置にあるときにも、可動筒13と固定筒12との間の対向空隙19に形成される上バルーン10bに付着して可動筒13の上方に飛散する風綿を上ノズル31で吸引し、これを回収することができる。また、給糸ボビンBからの解舒作業の進行に追随させて、モータ14により可動筒13のみならず上ノズル31も下降変位させるように構成したので、可動筒13の上方開口13aと上ノズル31との間隔距離を常に一定に保ち、当該間隔距離が変動することを抑えて、常に最適位置から上ノズル31で風綿を吸引することができる。
【0043】
上記実施例においては、風綿回収装置30を構成する上ノズル31と下ノズル32と、可動筒13とは、同じモータ14で昇降操作されるものとしたが、本発明はこれに限られず、上ノズル31と下ノズル32とは、モータ14とは別の専用のアクチュエータで昇降操作されるものであってもよい。
上ノズル31と下ノズル32は、上記実施形態に示したものに限られず、例えば、円環状の吸引開口部を備えるものであってもよい。
上記実施形態として円筒状の可動筒13及び固定筒12を示したが、これに限られず、糸通しのためのスリットが形成された円筒状の可動筒13及び固定筒12を用いても良い。
【符号の説明】
【0044】
2 解舒補助装置
12 第二規制部(固定筒)
12b 第二規制部の上流側の開口(固定筒の下方開口)
13 第一規制部(可動筒)
13a 第一規制部の下流側の開口(可動筒の上方開口)
14 昇降機構(モータ)
19 離間位置(対向空隙)
30 風綿回収装置
31 下流ノズル(上ノズル)
32 上流ノズル(下ノズル)
33 集綿ダクト
35 内部流路
38 吸引開口部
38a 上ノズルの吸引開口部の円弧部
40 内部流路
42 吸引開口部
42a 下ノズルの吸引開口部の円弧部
45 フレキシブル管
B 給糸ボビン
O1 上ノズルの吸引開口部の中心位置
O2 可動筒の中心位置
O3 下ノズルの吸引開口部の中心位置
Y 糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸ボビンからパッケージに向けて糸を走行させて巻取作業をおこなう巻取装置であって、
糸解舒に追従させて第一規制部を移動させることにより、該給糸ボビンからの解舒作業に伴って形成されるバルーンの制御を行う解舒補助装置と、
前記第一規制部の糸走行方向下流側の開口の近傍に配された下流ノズルを備え、該第一規制部の下流位置に飛散する風綿の回収を行う風綿回収装置と、
を備えることを特徴とする巻取装置。
【請求項2】
前記下流ノズルは前記給糸ボビンの長手方向に移動可能に構成され、
前記給糸ボビンからの解舒作業の進行に追随させて、前記第一規制部および前記下流ノズルを同時に移動させる昇降機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の巻取装置。
【請求項3】
前記風綿回収装置は、該第一規制部の糸走行方向上流側の開口の近傍に配された上流ノズルをさらに備え、該第一規制部の上流側及び下流側に飛散する風綿の回収を行うことを特徴とする請求項1に記載の巻取装置。
【請求項4】
前記第一規制部、前記下流ノズル及び前記上流ノズルは、前記給糸ボビンの長手方向に一体的に移動可能に構成されており、
前記給糸ボビンからの解舒作業の進行に追随させて、前記第一規制部、前記下流ノズル及び前記上流ノズルを同時に移動させる昇降機構を備えることを特徴とする請求項3に記載の巻取装置。
【請求項5】
前記下流ノズルが、前記第一規制部を囲むように、かつ下流側に向けて開口する平面視でU字状の吸引開口部を備えており、
前記上流ノズルが、前記第一規制部を囲むように、かつ上流側に向けて開口する平面視でU字状の吸引開口部を備えている、請求項4記載の巻取装置。
【請求項6】
前記下流側及び上流側の各ノズルの吸引開口部が、平面視で真円状の円弧部を含み、
前記第一規制部の内壁面が、断面円状に形成されており、
前記円弧部の円中心で規定される前記吸引開口部の中心位置と、前記内壁面の中心で規定される前記第一規制部の中心位置とが、垂直方向において同心位置にあるように前記上流ノズルおよび下流ノズルが配されている、請求項5記載の巻取装置。
【請求項7】
前記解舒補助装置は、巻取作業時に一定の位置で停止して糸を案内する第二規制部を更に備え、
前記第一規制部及び前記第二規制部は筒状体であり、前記第一規制部は前記給糸ボビンの解舒過程において、前記第二規制部と重なる位置から、ボビン解舒側に離間する位置まで移動可能に構成されていることを特徴とする請求項6に記載の巻取装置。
【請求項8】
前記風綿回収装置から集綿ボックスに至るダクトには、伸縮自在なフレキシブル管が設けられており、
前記ダクトの前記フレキシブル管よりも上流側に、上流側および下流側の各ノズルからフレキシブル管に至る2本の分岐路が設けられている、請求項1〜7のいずれかに記載の巻取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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