説明

巻尺

【課題】自動巻き取り式の巻尺において、巻尺に測定テープを出し入れするときに作動する仕掛を設けて、作業者の存在をアピールできたり、使用者が目で見て楽しむことができる巻尺を提供する。
【解決手段】ケースにおける一側の半ケース2のケース壁たる側壁3に内部を透視可能な窓4を設け、また、この窓4の内面と、該窓4に対向するケース内における回転ドラム6の回転面7に、放射状に直線模様8、8aを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動巻き取り式の巻尺に関し、特に、作業者の存在を周囲にアピール可能な巻尺に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの作業者は、現在進行している作業に集中するため、周囲の状況を確実に把握できないことから事故に巻き込まれる恐れもあって、このことから、蛍光色や反射可能なテープを配した安全ベストを着用し、自分(作業者)の存在を周囲にアピールすることがある。
【0003】
しかしながら、安全ベストは作業着の上に重ね着するため、特に作業中においては安全ベストが煩わしく感ずることがあり、また、気温の高い夏期などは重ね着している安全ベストによって体温の外部放出が低下して熱中症など生じる恐れや、安全ベストが汗をかいた首や腕に触れることによる不快感から作業の集中力が低下して事故が生じる恐れを理由に、安全ベストを着用をしないで作業をする者が多かった。
【0004】
このことから出願人は鋭意精査し、その結果、巻尺を使用する作業者においては、測定テープを出し入れする際の回転ドラムの回転動作を利用することで、自分(作業者)の存在を周囲にアピールできることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−151558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的とするところは、何らかの事情により安全ベストを着用しなかった場合でも、巻尺に設けた仕掛けの動作によって該巻尺を使用する自分(作業者)の存在を周囲にアピールすることができる巻尺を提供できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明に係る巻尺は、ケース内に、測定テープを周囲に巻き回し、該測定テープを巻き取り方向に付勢する付勢手段を内装した回転ドラムを回転自在に支持する自動巻取り式の巻尺であって、ケースの、回転ドラムの少なくとも一側の回転面に対向するケース壁に、このケース内を透視可能な窓を設け、また、該窓の少なくとも内面とこの窓に対向する回転ドラムの回転面に所定の模様を設けてなることを特徴とするものである。
【0008】
本巻尺は、本体ケースが一対の2つ割のケースからなっていて、この一方のケース内面に軸を立設し、この軸に測定テープを周囲に巻き回した回転ドラムを支持している。
【0009】
また、回転ドラムの内部にはぜんまいばねが設けられていて、この回転ドラムの周囲に巻き回された測定テープがケースの外方に引き出されていくことによって前記ぜんまいばねに付勢力が蓄積される。
【0010】
そして、測定テープをケース内に引き込む際は、引き出された測定テープの保持状態を解除することで、ぜんまいばねに蓄積された付勢力が解放されて該ぜんまいばねが初期状態に戻る作用によって回転ドラムが回転し、引き出された測定テープをケース内に引き込み、且つ、回転ドラムの周囲に巻き回していく。
【0011】
また、この回転ドラムにおける該回転ドラムを支持する軸の基部側と反対側に位置する回転ドラム面に対向するケース面に、このケース内を透視可能にした窓を設けている。
【0012】
そして、該窓の少なくとも内面とこの窓に対向する前記回転ドラム面に所定の模様を設けている。
【0013】
また、前記回転ドラム面に設ける模様は、例えば、線(直線/曲線)、円形や三角形などの図形、イラストなどの平面的、乃至、立体的な模様を設けてもよく、さらには、模様、乃至、模様を描く画面部分を任意の色で着色してもよい。
【0014】
なお、回転ドラム面の模様は、平面的、乃至、立体的な模様を成形してなる別部材を取り付けることで形成するようにしてもよい。
【0015】
さらに、模様、乃至、模様を描く画面部分を、畜光剤などを用いて周囲が暗くなったときに発光するようにしてもよい。
【0016】
前記窓は、ケースを透明素材で成形した場合は、該ケースそのものが窓となり、ケースを不透明素材で形成した場合は、該ケースに開口を形成してこの開口にケース内を透視可能な素材で形成した窓となる部材を取り付ける。
【0017】
そして、窓の少なくとも内面に所定の模様を設けるが、該模様は、回転ドラムの回転面に配した模様によっては、窓内に見える前記回転面に配した模様がぼけて見えるように、窓を半透明にしたり、線(直線や曲線)を放射状に設けるようにしてもよい。
【0018】
また、窓に放射状の線(直線や曲線)を設ける場合は、該線の一部、乃至、全部を立体にした凸条に設けてもよく、さらには、任意の色を着色してもよい。
【0019】
なお、窓の模様は、平面的、乃至、立体的な模様を成形してなる別部材を取り付けることで形成するようにしてもよい。
【0020】
そして、回転ドラムが回転していることをアピールするには、窓の内面および回転ドラムの回転面に配する模様を放射状の線にし、且つ、窓の内面に設ける方を凸条の立体的に、また、回転ドラムの回転面に設ける方を略平面的にするのがよい。
【0021】
また、回転ドラムの回転面に設ける放射状の線の一部を、所定の間隔を開けて他の線より太い線にし、且つ、色も変えることにより、回転ドラムの回転をより大にアピールすることができる。
【0022】
そして、巻尺の本体となるケースは、窓を形成するため強度に優れる熱可塑性プラスチックの一種であるエンプラ(エンジニアリング・プラスチック)のポリカーボネートを用いるのが望ましく、また、窓もポリカーボネートを用いることによって、透明性に優れると共に、窓部の強度も得ることができる。
【0023】
もちろん、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)等の汎用プラスチックや、ポリアミド(ナイロン)等のエンプラを用いて巻尺の本体となるケースや窓を形成してもよいことは言うまでもない。
【発明の効果】
【0024】
本発明の巻尺によれば、巻尺の使用により回転ドラムが回転すると、該回転ドラムにおける回転面の回転する模様に反射した光(反射光)がケース面の窓から外部に通過する際、該窓の模様によって光が断続的に遮られたり、また、該窓の立体的な模様によって乱反射することにより、巻尺を使用する自分(作業者)の存在を周囲に強くアピールすることができ、また、この乱反射によってきらめく光を確認することで、現場の離れた場所からでも容易に作業者の居場所を把握できる。
【0025】
また、前述のように、巻尺を使用する作業者の存在を周囲にアピールできることに加え、ケース面の窓から外部に通過する反射光を装飾光として目で見て楽しむこともできるので、機能一辺倒だけでなく装飾性を備える巻尺として、近年、製造現場に増えつつある女性作業者に対しても、自己安全の向上と共に使って楽しい魅力ある巻尺を提供することができる。
【0026】
さらに、ポリカーボネートを用いてケースおよび窓を形成することによって、巻尺の本体たるケースの強度も十分に確保できると共に窓の透明性も確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る巻尺の一例を示す半ケースを取り外した状態の斜視図。
【図2】巻尺の断面図。
【図3】窓の内面に形成した立体模様の断面を示す図。
【図4】巻尺の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る巻尺は、図1、図2に示すように、巻尺の本体となるケース1を半ケース2、2aから構成して、このケース1における一側の半ケース2のケース壁たる側壁3に内部を透視可能な窓4を設け、また、この窓4の内面5と、該窓4に対向するケース1内における回転ドラム6の回転面7に、放射状に直線模様8、8aを設けている。
【0029】
そして、窓4の内面5に設けている直線模様8を、図3に示すような断面略三角形状の立体的に形成し、また、回転ドラム6の回転面7に設けている直線模様8aを平面的に設けている。
【0030】
したがって、本実施例における半ケース2の窓4のケース外面側に示している直線模様8は、図3における窓4の内面5に形成した断面略三角形状の直線模様8(山状の立体模様)における峰および谷の部分が、この窓4を透して見えているものである。
【0031】
また、本実施例における回転ドラム6の回転面7に設けた直線模様8aは、直線(直線模様8a)を印刷した所定の薄板状部材たる台紙を回転面7上に貼り付けることにより、該回転面7に直線模様8aを形成している。
さらに、直線模様8aや該直線模様8aを印刷する台紙の上面を、光の反射に有利な光沢を有するものにする場合がある。
【0032】
しかも、直線模様8aは、テープの引き出しや巻き取りの際に回転ドラム6の回転をより大にアピールできるようにするため、直線模様8における一部の直線を、他の直線よりも太い直線(太線9)にし、且つ、色も他の直線と異なるものにしている。
【0033】
図4は、本発明の巻尺の一例であり、図4中の(a)の巻尺は、図1に示した巻尺の取り外した半ケース2を半ケース2aに嵌合して、巻尺の本体たるケース1を形成した状態のものである。
また、図4中の(b)の巻尺は、測定用テープ11を所望の引き出し位置で固定するためのブレーキ手段をON/OFFするブレーキレバー10を設けたものである。
【0034】
このように構成した本巻尺は、巻尺の本体たるケース1に測定テープ11を出し入れするときに回転ドラム6が回転すると、回転ドラム6の回転面7の回転する直線模様8aに反射した光(反射光)が、半ケース2の窓4から外部に通過する際に該窓4の直線模様8(山状の立体模様)によって乱反射する。
【0035】
そして、直線模様8における一部の直線を、他の直線よりも太い直線(太線9)にし、且つ、色も他の直線と異なるものにしているので、回転ドラム6が高速で回転してしまった場合であっても、適当な間隔で設けた太線9が他の模様(直線模様8)に同化することなく、該太線9に反射した光(反射光)が半ケース2の窓4から外部に通過する際に該窓4の直線模様8(山状の立体模様)によって乱反射する。
【0036】
したがって、巻尺を使用する自分(作業者)の存在を周囲に強くアピールすることができ、また、上述の乱反射によってきらめく光を確認することで、現場の離れた場所からでも容易に作業者の居場所を把握できる。
【0037】
実施例における図中の符号12は、回転ドラム6を支持する半ケース2aに立設した軸、符号13は、回転ドラム6内に備える測定用テープ11を巻き取るための巻き取りばね、符号14は、測定用テープ11の先端に備えるフック、符号15は、ケースを作業者のベルトに係着するためのベルトクリップである。
【符号の説明】
【0038】
1 ケース
2 半ケース
2a 半ケース
3 側壁
4 窓
5 内面
6 回転ドラム
7 回転面
8 直線模様
8a 直線模様
9 太線
10 ブレーキレバー
11 測定用テープ
12 軸
13 巻き取りばね
14 フック
15 ベルトクリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に、測定テープを周囲に巻き回し、該測定テープを巻き取り方向に付勢する付勢手段を内装した回転ドラムを回転自在に支持する自動巻取り式の巻尺であって、ケースの、回転ドラムの少なくとも一側の回転面に対向するケース壁に、このケース内を透視可能な窓を設け、また、該窓の少なくとも内面とこの窓に対向する回転ドラムの回転面に所定の模様を設けてなることを特徴とする巻尺。
【請求項2】
前記窓の内面および回転ドラムの回転面に配する模様が放射状の線であり、且つ、窓の内面に設ける方を立体的に、また、回転ドラムの回転面に設ける方を略平面的に設けてなることを特徴とする請求項1の巻尺。
【請求項3】
前記回転ドラムの回転面に設ける放射状の線の一部を他の線よりも太い線にし、且つ、色も変えてなることを特徴とする請求項2の巻尺。
【請求項4】
前記回転ドラムの回転面に設ける模様を、所定の部材によって発光させてなることを特徴とする請求項1の巻尺。
【請求項5】
前記ケースおよび窓を、ポリカーボネートを用いて形成してなることを特徴とする請求項1の巻尺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−7602(P2013−7602A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139286(P2011−139286)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000165882)原度器株式会社 (43)
【Fターム(参考)】