説明

希土類化合物造粒成形体およびその製造方法

【課題】有害物質成分または有価物成分を効率的に除去または回収することができる吸着剤として用いられる希土類化合物造粒成形体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】希土類化合物の粉体粒子を親水性樹脂を含む多孔質バインダーで結合してなる希土類化合物造粒成形体、および、親水性樹脂および水溶性化合物を含む水溶液もしくはエマルション、または水と有機溶媒の混合溶液もしくはエマルションを希土類化合物の粉体粒子に含ませた後、加熱乾燥し、次いで、水に接触させて上記水溶性化合物を溶出させることを特徴とする希土類化合物造粒成形体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は希土類化合物造粒成形体およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、希土類化合物粉体の表面積を維持し、かつ、多孔質バインダーで固定化された希土類化合物造粒成形体およびその製造方法に関する。本発明の希土類化合物造粒成形体は主として重金属等有害物質成分または有価物成分の吸着剤として用いられる。
【背景技術】
【0002】
有害物質成分または有価物成分を含む水溶液もしくはエマルションを、低濃度から高濃度まで効率的に処理できる吸着剤として、希土類化合物を用いたものがある(例えば、特開2004−330012号公報、特開2005−28312号公報、特開2006−36995号公報参照)。
特開2004−330012号公報に記載のホウ素吸着剤は、希土類元素水酸化物と高分子樹脂を含有するものである。
特開2005−28312号公報に記載のフッ素吸着剤は、高温焼成された希土類元素含水酸化物と高分子樹脂とからなるものである。
特開2006−36995号公報に記載の土壌改良剤は、特定量の水酸化ランタンを含有する希土類元素化合物からなり、特定の平均径を有するものであり、一実施形態として高分子樹脂との混合物がある。
【0003】
これらの混合物は粒子状に成形され、吸着剤の主成分として希土類化合物の酸化物、含水酸化物が使用されており、さらに、これらに用いられる樹脂はいずれも耐水性があって水に溶出しない耐水性をもつ有機高分子重合体またはこれら樹脂の誘導体が使用されている。好ましい樹脂として、フッ素系樹脂、ポリビニル系樹脂、フッ化ビニリデン系樹脂、ビニルアルコール共重合体からなる樹脂が挙げられている。
【0004】
さらに、特開2006−36995号公報では、樹脂混合粒子体の好ましい内部断面構造として、粒子表面に近い部分に高分子樹脂が内部より極めて濃度の高い層を有する構造であり、中心部には空洞空隙部があり、その空洞部から表面方向に放射状の細い空隙があり、その粒子の内部の空隙表面に希土類元素化合物を露出させた構造が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、希土類含水酸化物とフッ素系樹脂、ポリビニル系樹脂、フッ化ビニリデン系樹脂、ビニルアルコール共重合体からなる樹脂を混合した吸着剤は、水系での有害物質成分の除去性能または有価物成分の回収性能に劣る。
その理由は、以下の通りである。
耐水性のフッ素系樹脂、フッ化ビニリデン系の樹脂は表面の自由化エネルギーが低いため、水が内部まで導入されにくく、有害物質成分または有価物成分との接触効率が低下する。また、ポリビニル系樹脂、ビニルアルコール共重合体からなる樹脂は強度の点において劣る。
【0006】
したがって、本発明の第1の目的は、吸着能を有する主成分として用いられる希土類化合物による吸着効果を最大限に発揮させ、水中に含まれる有害物質成分または有価物成分を効率的に除去または回収することができる吸着剤として用いられる、希土類化合物造粒成形体およびその製造方法を提供することにある。
さらに別の観点から、本発明の第2の目的は、その強度が改善された希土類化合物造粒成形体および造粒性や成形性がよい希土類化合物造粒成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記第1の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、希土類化合物の粉体粒子(以下、吸着主剤と記載することもある)を、多孔質のバインダーで結合してなる希土類化合物造粒成形体とすることにより、その目的を達成し得ること、そして特定の方法により、希土類化合物造粒成形体を効率よく製造し得ることを見出し、その知見に基づいて本発明を完成するに至った。
また、上記第2の目的を達成するために種々検討した結果、希土類化合物造粒成形体にさらに粘土鉱物を含ませることによって、その目的を達成し得ることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)希土類化合物の粉体粒子を、親水性樹脂を含む多孔質バインダーで結合してなる希土類化合物造粒成形体、
(2)前記希土類化合物が、水酸化セリウムおよび/または水酸化セリウム水和物である上記(1)に記載の希土類化合物造粒成形体、
(3)前記親水性樹脂が、ポリビニルアルコール、親水性エポキシ樹脂、ポリ乳酸樹脂、および側鎖に官能基を有するビニル単量体の単独重合体または共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種である上記(1)または(2)に記載の希土類化合物造粒成形体、
(4)前記親水性樹脂が硬化されたものである上記(1)〜(3)いずれかに記載の希土類化合物造粒成形体、
(5)前記硬化が硬化剤または硬化触媒を用いて行なわれる上記(4)に記載の希土類化合物造粒成形体、
(6)前記硬化が架橋である上記(4)に記載の希土類化合物造粒成形体、
(7)前記架橋が架橋剤を用いて行なわれる上記(6)に記載の希土類化合物造粒成形体、
(8)前記希土類化合物造粒成形体が、さらに粘土鉱物を含む上記(1)〜(7)のいずれかに記載の希土類化合物造粒成形体、
(9)前記粘土鉱物が、層状ポリ珪酸塩である上記(8)に記載の希土類化合物造粒成形体、
(10)前記粘土鉱物が、スメクタイトまたはバーミキュライトである上記(8)に記載の希土類化合物造粒成形体、
(11)前記スメクタイトが、合成スメクタイトである上記(10)に記載の希土類化合物造粒成形体、
(12)前記粘土鉱物が、平均粒子径50μm以下の粒子状である上記(8)〜(11)のいずれかに記載の希土類化合物造粒成形体、
(13)吸着剤である上記(1)〜(12)のいずれかに記載の希土類化合物造粒成形体、
(14)親水性樹脂と、水溶性化合物と、溶媒として少なくとも水を含む溶液もしくはエマルションを、希土類化合物の粉体粒子に含ませた後、加熱乾燥し、次いで水に接触させて上記水溶性化合物を溶出させることを特徴とする希土類化合物造粒成形体の製造方法、
(15)前記親水性樹脂が、ポリビニルアルコール、親水性エポキシ樹脂、ポリ乳酸樹脂、および側鎖に官能基を有するビニル単量体の単独重合体または共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種である上記(14)に記載の希土類化合物造粒成形体の製造方法、
(16)前記水溶性化合物が、カゼイン、グルカン、ヒドロキシプロピルエーテル化澱粉、およびヒドロキシエチルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも一種である上記(14)または(15)に記載の希土類化合物造粒成形体の製造方法、
(17)前記溶液もしくはエマルションが架橋剤、硬化剤または硬化触媒のいずれか少なくとも1つを含む上記(14)〜(16)のいずれかに記載の希土類化合物造粒成形体の製造方法、
(18)前記溶媒が、さらに水溶性の有機溶媒を含む上記(14)〜(17)のいずれかに記載の希土類化合物造粒成形体の製造方法、
(19)前記有機溶媒が、アルコール系および/またはグリコール系の有機溶媒である上記(18)に記載の希土類化合物造粒成形体の製造方法、
(20)前記希土類化合物の粉体粒子に、さらに粘土鉱物を含ませた上記(14)〜(19)のいずれかに記載の希土類化合物造粒成形体の製造方法、
(21)前記粘土鉱物が、層状ポリ珪酸塩である上記(20)に記載の希土類化合物造粒成形体の製造方法、
(22)前記粘土鉱物が、スメクタイトまたはバーミキュライトである上記(20)に記載の希土類化合物造粒成形体の製造方法、
(23)前記スメクタイトが、合成スメクタイトである上記(22)に記載の希土類化合物造粒成形体の製造方法、および
(24)前記粘土鉱物が、平均粒子径50μm以下の粒子状である上記(20)〜(23)のいずれかに記載の希土類化合物造粒成形体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、各種有害物質成分または有価物成分等の除去率または回収率の高い吸着剤として利用可能な希土類化合物造粒成形体、およびその効率的な製造方法を提供することができる。本発明の造粒成形体は多孔質であるので、吸着のための希土類化合物の表面積が大きい。それに加えて、造粒成形体を形成させるための親水性樹脂を含むバインダーも多孔質であるので、吸着のための希土類化合物の表面積をほとんど減少させることがない。もちろん、その形状を造粒成形体としているので、取扱いが容易である。
さらに、本発明により、その強度が改善された希土類化合物造粒成形体と共に、造粒性や成形性がよい希土類化合物造粒成形体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の希土類化合物造粒成形体は、親水性樹脂、水溶性化合物、および溶媒として少なくとも水を含む溶液もしくはエマルション(以下、溶液もしくはエマルションを「溶液等」と記載する場合がある)を、希土類化合物の粉体粒子に含ませた後、加熱乾燥し、次いで、水に接触させて上記水溶性化合物を溶出させることによって得られる。
【0011】
以下、各成分ごとに詳細に説明する。
本発明において用いられる希土類化合物は有害物質成分または有価物成分等の吸着能を有する吸着主剤であり、具体的には、水酸化セリウムおよび同水和物、酸化セリウムおよび同水和物、水酸化ランタンおよび同水和物、酸化ランタンおよび同水和物等があるが、中でも有害物質成分等または有価物成分、特にホウ素、フッ素、ヒ素、鉛、6価クロム、セレン、水銀、アンチモン、モリブデン、インジウム、カドミウム、銅、白金等の除去率または回収率が高いという観点で3価および4価の水酸化セリウムおよび同水和物が好ましく、球状、破砕状、顆粒状、不定形のものなど、形状は何でもよいが、2次粒径が0.5〜100μmのものが好ましい。
【0012】
水酸化セリウム水和物の具体的な調製法の一例を以下に示す。
<3価の水酸化セリウム水和物>
炭酸セリウム(III)を塩酸または硫酸などの酸で処理した後、NaOH等のアルカリで中和し、3価の水酸化セリウム水和物を主成分とする吸着剤(3価と4価の質量比が90:10)を得る。このような3価の水酸化セリウム水和物の2次粒径は平均粒径でおよそ15μmであり、通常は破砕状の形態である。
【0013】
<4価の水酸化セリウム水和物>
炭酸セリウム(IV)を塩酸または硫酸などの酸で処理した後、NaOH等のアルカリで中和処理し、その後、加熱乾燥し、4価の水酸化セリウム水和物を主成分とする吸着剤(3価と4価の重量比が5:95)を得る。このような4価の水酸化セリウム水和物の2次粒径は平均粒径でおよそ15μmであり、通常は破砕状の形態である。
【0014】
上記のような希土類化合物を後で述べる方法で調製した本発明の造粒成形体の粒径は、0.1〜3mmφである。
水酸化セリウムは800℃以上の高温で焼成すると、酸化されて酸化セリウムになるため、できるだけ低温での処理が好ましい。また、200〜300℃付近で水和物中の結合水が脱離して吸着性能が低下するため、250℃より低温での処理が好ましい。
【0015】
本発明において適用可能な親水性樹脂としては、(1)ポリビニルアルコール、(2)親水性エポキシ樹脂、(3)エポキシ樹脂のエマルション(通常、フタル酸エステル系、アジピン酸エステル系等のエステル系可塑剤含む)、(4)ポリ乳酸樹脂のエマルション、(5) 2-ヒドロキシエチルメタクリレートのような官能基を有するビニル単量体の単独重合体または共重合体等が挙げられる。
【0016】
これらの親水性樹脂の数平均分子量は、通常500〜50,000であり、好ましくは1,000〜30,000、より好ましくは、1,000〜20,000である。数平均分子量を500以上とすることにより、希土類化合物の粉体粒子を固定する多孔質バインダーの機械的強度が確保され、50,000以下とすることにより、多孔質バインダーを形成させるための「溶液等」の粘度を適度に保つことができ、「溶液等」を粉体粒子に含ませ易くなる(「溶液等」およびそれらを粉体粒子に含ませるための条件については後で詳細に述べる)。なお、親水性樹脂は数平均分子量が大きくなると水溶性が低下するためエマルションになる傾向がある。
これらの親水性樹脂を単独か、あるいは2種類以上任意に組み合わせて使用することも可能である。
【0017】
親水性樹脂の一例であるポリビニルアルコール(PVA)としては、完全鹸化タイプ・部分鹸化タイプの2種類がある。完全鹸化タイプは水に溶けにくく、部分鹸化タイプは水に溶けやすい。完全鹸化タイプを用いると、例えば、135℃程度で硬化させて塗膜になった時に白濁する傾向があり、部分鹸化タイプは白濁しにくい傾向がある。耐水性では完全鹸化タイプが部分鹸化タイプより若干劣る。したがって、希土類化合物造粒成形体に要求される特性および処理(吸着)対象物質に合わせて選ぶ必要がある。市販品として入手が可能なPVAとしては、株式会社クラレ製のPVA-204、PVA-205、PVA-217、PVA-220、PVA-224(樹脂分:100質量%)、PVA-124などがあるが、それらは鹸化度、水溶液化もしくはエマルション化した場合の粘度が異なる。中でも、PVA-224[鹸化度:87〜89モル%、4質量%水溶液もしくはエマルションの粘度:40〜60mPa・s(20℃)]が水に溶解しやすいため、取り扱い性の点で優れている。
【0018】
親水性樹脂の別の例である親水性エポキシ樹脂としては、グリシジルエーテル型、グリシジルアミン型、グリシジルエステル型、オレフィン酸化型のエポキシ樹脂が挙げられる。
具体的には、
エチレングリコールグリシジルエーテル;
グリセロールポリグシジルエーテル;
ビスフェノールAやビスフェノールF、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコールとエピクロルヒドリンから得られるポリグリシジルエーテル型からなるエポキシ樹脂;
フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸などの多塩基酸とエピクロルヒドリンから得られるポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;
アニリン、トルイジン、4,4'-ジアミノジフェニルメタンやイソシアヌル酸などのアミンとエピクロリドヒドリンから得られるポリグリシジルアミン型エポキシ樹脂;
さらには、シクロペンタジエンオキサイドやシクロヘキセンオキサイドなどの脂環式エポキシ樹脂等である。親水性エポキシ樹脂はエマルション形態のものでもよい。
【0019】
親水性エポキシ樹脂の市販品として入手可能なものは、ジャパンエポキシレジン株式会社製のエピレッツ(登録商標)WD510(エポキシ樹脂分:100質量%)、エピレッツ6943(エポキシ樹脂分:70質量%)、エピレッツ7148(エポキシ樹脂分:48質量%)、エピレッツ7058(エポキシ樹脂分:58質量%)、エピレッツ3520WY55(エポキシ樹脂分:55質量%)、エピレッツ3540WY55(エポキシ樹脂分:55質量%)、エピレッツ5003W55(エポキシ樹脂分:58質量%)、エピレッツ5522WY55(エポキシ樹脂分:54質量%)、およびエピレッツ6006W70(エポキシ樹脂分:70質量%)等が挙げられる。
【0020】
さらに、ナガセケムテックス株式会社製のEX−611、EX―612、EX−614、EX−614B、EX−512、EX−521、EX−421、EX−313(エポキシ樹脂分:100質量%)、EX−314、EX−321、EX−810、EX−811、EX−850、EX−851、EX−821、EX−830、EX−832、EX−841、EX−861、EX−911、EX−941、EX−920、EX−145、およびEX−171等が挙げられる。
【0021】
親水性樹脂の別の例であるポリ乳酸樹脂のエマルションの市販品で入手が可能なものとしては、ミヨシ油脂株式会社製のランディPL-1000、ランディPL-2000(ポリ乳酸樹脂分:40質量%)、ランディPL-3000等が挙げられる。
【0022】
ビニル単量体の単独重合体または共重合体としては、側鎖に水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキルエーテル基、アルカニルエーテル基、アルケニルエーテル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、置換アミノ基、またはテトラヒドロフルフリル基のような官能基を有するものが挙げられる。
ビニル単量体としては、メチルメタクリレートおよびアクリレート、エチルメタクリレートおよびアクリレート、ブチルメタクリレートおよびアクリレート、ヒロドキシエチルメタクリレートおよびアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレートおよびアクリレートなどのメタクリル酸およびアクリル酸エステル類、メタクリル酸およびアクリル酸、スチレン、酢酸ビニルなどの重合性ビニル単量体等が挙げられる。メチルメタクリレートおよびアクリレートのような官能基を有していないビニル単量体は単独重合体としては使用されず、ヒロドキシエチルメタクリレートおよびアクリレートのような官能基を有するビニル単量体との共重合体として用いられる。
【0023】
以下に種々の官能基を側鎖に有するビニル単量体の単独重合体を例示する。
<水酸基を含有するビニル単量体の単独重合体>
側鎖に水酸基を含むビニル単量体の単独重合体の構造は以下のようなものである。
【0024】
【化1】

【0025】
ここで、R1およびR2は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示し、X1は水酸基を含む側鎖を示す。nは10〜1000程度である。
【0026】
前記単独重合体を形成する単量体としては、具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシアリルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0027】
<側鎖にエポキシ基を含むビニル単量体の単独重合体>
側鎖にエポキシ基を含むビニル単量体の単独重合体の構造は以下の通りである。
【0028】
【化2】

【0029】
ここで、R3およびR4は水素原子、または炭素数1〜5の低級アルキル基を示し、X2はエポキシ基を含む側鎖を示す。
【0030】
前記単独重合体を形成する単量体としては、具体的には、グリシジルメタクリレートおよびアクリレート、β-グリシドキシエチルメタクリレートおよびアクリレート、3,4-エポキシブチルメタクリレートおよびアクリレート、4,5-エポキシペンチルメタクリレートおよびアクリレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルクロトネート等が挙げられる。
【0031】
<側鎖にアルコキシカルボニル基、アルキルエーテル基、アルカニルエーテル基、アルケニルエーテル基、またはテトラヒドロフルフリル基を含むビニル単量体の単独重合体>
側鎖に種々の上記官能基を含むビニル単量体の単独重合体の構造は以下の通りである。
【0032】
【化3】

【0033】
ここで、R5およびR6は水素原子、または炭素数1〜5のアルキル基を示し、X3はアルコキシカルボニル基、アルキルエーテル基、アルカニルエーテル基、アルケニルエーテル基、テトラヒドロフルフリル基を含む側鎖を示す。
【0034】
前記単独重合体を形成する単量体としては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0035】
<側鎖にカルボキシル基を含むビニル単量体の単独重合体>
側鎖にカルボキシル基を含有するビニル単量体ポリマーの構造は以下の通りである。
【0036】
【化4】

【0037】
ここで、R7およびR8は水素原子、または炭素数1〜5のアルキル基を示し、X4はカルボキシル基を含む側鎖を示す。前記単独重合体を形成する単量体としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられる。
【0038】
<側鎖にアミノ基、置換アミノ基を含むビニル単量体の単独重合体>
側鎖にアミノ基、置換アミノ基を含むビニル単量体ポリマーの構造は以下の通りである。
【0039】
【化5】

【0040】
ここで、R9およびR10は水素原子、または炭素数1〜5のアルキル基を示し、X5はアミノ基または置換アミノ基を含有する側鎖を示す。
【0041】
前記単独重合体を形成する単量体としては、具体的には、アミノメチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、クロトンアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、2-(2-ヒドロキシエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N-ジ(2-ヒドロキシメチル)アミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)アミノメチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、クロトンアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソ-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、2-(N-メチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(エチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(N,N-ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリレート、2-(N,N-ジブチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、3-(N,N-ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、2-(N,N-ジブチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、N-メチロールアクリルアミド等が挙げられる。
【0042】
単独重合体を製造するために用いる官能基を有する上記の各種単量体は、それらを2種類以上組み合わせて用いることもできるし、官能基を有していない他の汎用のラジカル重合性単量体と共重合させて、共重合体として用いることもできる。ただし、エポキシ基を有する単量体とアミノ基やカルボキシル基を有する単量体のように、互いに反応する官能基を有するものを組み合わせて使用することはできない。
【0043】
本発明において、親水性樹脂とともに使用される水溶性化合物としては、親水性樹脂と相溶性があり、親水性樹脂と非結合性の水溶性成分であり、具体的には、多糖類として、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、トラビアゴム、ペクチン、デンプン、グルカン等が挙げられる。その他、微生物より得られるデキストリン、動物系のゼラチン、カゼイン、コラーゲン等が挙げられる。
【0044】
さらに、セルロース系のメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
さらにまた、デンプン系の可溶性デンプン、メチルデンプン、マルトデキストリン、ヒドロキシプロピルエーテル化デンプン、ビニル系のポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、アクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0045】
その他、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、酢酸エチル;糖類または水溶性高分子化合物が挙げられ、具体的には、アラビアゴム、ベンゾインゴム、ダンマルゴム、グアヤク脂、アイルランド苔、カラヤゴム、トラガントゴム、キャロブゴム、クインシード、寒天、カゼイン、乳糖、果糖、ショ糖またはそのエステル、トレハロースまたはその誘導体等;カルボキシメチルキチンまたはキトサン、エチレンオキサイド等のアルキレン(C2〜C4)オキサイドが付加されたヒドロキシアルキル(C2〜C4)キチンまたはキトサン、低分子キチンまたはキトサン、キトサン塩、硫酸化キチンまたはキトサン、リン酸化キチンまたはキトサン;アルギン酸またはその塩、ヒアルロン酸またはその塩、コンドロイチン硫酸またはその塩、ヘパリン等が挙げられる。
【0046】
水溶性化合物の市販品として入手可能なものは、日澱化学株式会社製のアミコールNo.3−L、アミコールNo.1、アミコールNo.5−L、アミコールNo.6−L、アミコールNo.7−H、アミコールNo.10(以上、グルカン類)、ペノン JE−66(ヒドロキシプロピルエーテル化デンプン)が挙げられる。また不二製油株式会社製のソヤファイブ、ソヤアップが挙げられる。
【0047】
本発明において、必要に応じて水とともに使用される水溶性の有機溶媒としては、アルコール系およびグリコール系、もしくは他の有機溶媒等が挙げられる。
具体的には、
・飽和脂肪族アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、2-ブタノール等)、
・セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ等)、
・プロピレングリコール誘導体類(プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルアセテート等)、
・エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、
・エーテル類(ジエチルエーテル、メチルイソブチルエーテル等)、
・ケトン類(アセトン、メチルイソブチルケトン等)、
・芳香族類、
・その他の例(エチレングリコール、テトラヒドロフラン、N,N,-ジメチルホルムアミド、ジクロロエタン等)である。
中でも、アルコール系およびグリコール系の有機溶媒が好ましい。有機溶媒を使用する場合は、水/有機溶媒の混合比率(質量比)は使用する親水性樹脂の性質によって変えられるが、通常80/20〜20/80、しばしば50/50程度で用いられる。
【0048】
本発明において、親水性樹脂を硬化させる場合に使用される架橋剤または硬化剤としては、ブロック化イソシアネート、有機珪素化合物、メラミン樹脂、イソシアネートおよびエポキシ樹脂用硬化剤等が挙げられ、これらの架橋剤または硬化剤を単独か、あるいは任意の組み合わせで使用することも可能である。
【0049】
ブロック化イソシアネートとは、ヘキサメチレンジイソシアネート等のビウレット構造、イソシアヌレート構造からなる化合物の遊離のイソシアネート基を、ブロック化剤としてメタノールとε―カプロラウタム等を用いブロック化し、熱に対する反応性を安定化したものである。
例えば、住化バイエルウレタン株式会社製のスミジュールBL3175(有効成分:75質量%)、デスモジュールBL3475、デスモジュールBL3370、デスモジュール3272、デスモジュールVPLS2253、デスモジュールTPLS2134、旭化成工業株式会製のデュラネート(登録商標)17B-60PX、デュラネートTPA-B80E、デュラネートMF-K60X、第一工業製薬株式会社製のエラストロン(登録商標)BN−04(有効成分:34質量%)、およびエラストロンCAT−21等が挙げられる。
【0050】
有機珪素化合物(2官能以上の有機珪素化合物)としては、R11SiX2で表される二官能性シランとして、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルジメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシジエトキシシラン、β-(3.4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0051】
12SiX3で表される三官能性シランとしては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3.4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0052】
SiX4で表される四官能性シランの例としては、テトラエチルオルソシリケート、テトラメチルオルトシリケート等が挙げられる。
【0053】
エポキシ樹脂用硬化剤の市販品で入手可能なものとして、ジャパンエポキシレジン(株)製のエピキュア(登録商標)8536MY60(硬化剤成分:60質量%)、エピキュア8537WY60(硬化剤成分:60質量%)、エピキュア8290Y60(硬化剤成分:60質量%)、エピキュア8060(硬化剤成分:100質量%)、エピキュア3255(硬化剤成分:50質量%)などがある。
【0054】
上記親水性樹脂、上記水溶性化合物、および架橋剤または硬化剤とともに、さらに、必要に応じて硬化触媒を添加して用いてもよい。
硬化触媒としては、酢酸ナトリウム等のカルボン酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、アセチルアセトンの金属塩およびアンモニウム塩、エチルアセトアセテートの金属塩、アセチルアセトンとエチルアセテートが配位した金属塩、エチレンジアミンの金属塩水和物、第1〜3級アミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルメチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン、ポリアルキレンアミン、ポリアミドポリアミン、ポリアミンアダクト、脂環式ポリアミン、イソホロジアミン、芳香族ポリアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルメタン、変性脂肪族アミン、スルホン酸塩、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸アンモニウム、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸スズ等の有機金属塩、SnCl4、TiCl4、ZnCl2等のルイス酸が用いられる。またこれら化合物と有機メルカプタンやメルカプトアルキルシランを併用することも可能である。
【0055】
これらの中で、特にジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンのような脂肪族ポリアミンが適している。これら硬化触媒は、通常、親水性樹脂としてエポキシ樹脂を使用した場合や、架橋剤または硬化剤として有機珪素化合物(シラン化合物)を使用した場合に架橋反応を促進させるために用いるのが好ましい。たとえば、架橋剤としてシラン化合物を使用した場合、シラン化合物の加水分解により生じたシラノール基同士の縮合反応、水酸基とシラノール基の縮合反応を硬化触媒が促進し、多孔質バインダーが緻密になり外部からの応力に対する耐力が向上する。
【0056】
親水性樹脂としてエポキシ樹脂を使用し、架橋剤または硬化剤を使用しない場合は、硬化触媒を使用するのが好ましい。親水性樹脂としてPVA、エポキシ樹脂または官能基を有するラジカル重合性モノマーから得られた共重合体を使用し、架橋剤または硬化剤としてブロックイソシアネートを使用する場合などは、硬化触媒は使用しなくても良い。
硬化触媒は硬化後に残る成分(親水性樹脂、水溶性化合物、架橋剤および硬化触媒の総量)の通常0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%程度、さらに好ましくは0.1〜3質量%の範囲になるように添加される。
【0057】
「溶液等」中の親水性樹脂の配合量は、「溶液等」を希土類化合物の粉体粒子に含ませた後、加熱乾燥後水に接触させて水溶性化合物を除去して希土類化合物造粒成形体を製造した際、多孔質バインダーとなって希土類化合物の粉体粒子を固定した状態で希土類化合物の100質量部に対して、通常5〜400質量部、好ましくは5〜200質量部、より好ましくは10〜100質量部になるように調整される。「溶液等」を希土類化合物の粉体粒子に含ませるための具体的手段としては、噴霧、浸漬、塗布、滴下等が挙げられる。また、加熱乾燥後水に接触させるための具体的手段としては、浸漬、流水による抽出等が挙げられる。
親水性樹脂の配合量を5質量部以上とすることにより、希土類化合物の粉体粒子を固定する多孔質バインダーの機械的強度が確保され、400質量部以下とすることにより、多孔質バインダーの適度な多孔性が確保される。
【0058】
「溶液等」中の水溶性化合物の配合量は、上記親水性樹脂の場合と同様の状態で希土類化合物の100質量部に対して、通常5〜400質量部、好ましくは5〜200質量部、より好ましくは10〜100質量部になるように調整される。
水溶性化合物の配合量を5質量部以上とすることにより、適度な多孔性を有する多孔質バインダーとなり、400質量部以下とすることにより、多孔質バインダーの機械的強度が確保される。
【0059】
「溶液等」中の架橋剤または硬化剤の配合量は、上記親水性樹脂や水溶性化合物の場合と同様の状態で希土類化合物の100質量部に対して0.1〜400質量部、好ましくは、0.5〜200質量部、より好ましくは、1〜100質量部になるように調整される。
架橋剤または硬化剤の配合量を0.1質量部以上とすることにより、多孔質バインダーの機械的強度が確保され、400質量部以下とすることにより、多孔質バインダーにおける適度な多孔性が確保される。
【0060】
次に、「溶液等」を希土類化合物の粉体粒子に含ませた後、加熱乾燥し、次いで、水に接触させて上記水溶性化合物を溶出させる希土類化合物造粒成形体の製造方法について説明する。
まず、希土類化合物の粉末を、例えば、造粒機の中に投入後、造粒機を転動または揺動させながら前記のような配合組成で調製した「溶液等」を噴霧等により希土類化合物の粉末中に含ませる。「溶液等」中の水または水と有機溶媒以外の成分を合計したものの濃度(固形分濃度と称する)は通常5〜80質量%、好ましくは、15〜60質量%程度である。固形分濃度を5質量%以上とすることにより、適度な造粒時間と加熱乾燥時間を確保し、固形分濃度を80質量%以下とすることにより「溶液等」を噴霧等で容易に希土類化合物の粉末中に含ませることができる。
【0061】
「溶液等」の量はその固形分濃度に依存する。含ませる量が多いほど、乾燥後、強固な造粒成形体が得られるが、吸着主剤である希土類化合物の粉末を被覆する厚みが厚くなり、結果として、非結合性の水溶性成分の洗浄除去効率が悪くなり、適度な多孔性が得られず有害物質成分や有価物成分の吸着除去効率が低下する。
造粒方法としては、転動造粒法、噴霧乾燥法、圧片造粒、押し出し成形法、プレス成形法がある。転動造粒法は成形体が適切な硬さになり、噴霧乾燥法は細孔の形成が促進されやすいという特徴があるので好ましい。
【0062】
水溶性成分洗浄除去後の残りの成分の量は、吸着主剤100質量部に対して、10〜400質量部の範囲にするのが好ましい。
好ましい条件として、「溶液等」中の固形分濃度が40質量%のとき、吸着主剤100質量部に対し、「溶液等」を80質量部含ませる。加熱乾燥後、吸着主剤100質量部に対して、「溶液等」の固形分が20〜60質量部となるようにする。加熱乾燥後、非結合性の水溶性成分を洗浄除去するが、洗浄除去後の比率は、吸着主剤100質量部に対して、「溶液等」中の固形分濃度は10〜30質量部程度となる。加熱乾燥は含ませる「溶液等」の量や濃度等に依存するが50〜250℃で、好ましくは70〜200℃、より好ましくは80〜170℃で行う。加熱乾燥時間は、同様な理由で通常1分〜12時間、好ましくは5分〜5時間、より好ましくは10分〜2時間行う。その後、篩い機にかけ、一定範囲の造粒成形体を得る。
【0063】
加熱乾燥後、非結合性の水溶性成分を洗浄除去することにより、本発明の希土類化合物造粒成形体を結合するための多孔質バインダーが形成される。水溶性成分を洗浄除去するには常温の水でも良いが、80℃程度の温水を使用すれば、洗浄除去を効率的に行うことができる。
【0064】
このようにして形成された多孔質バインダー中に縦横に存在する微細孔による毛細管現象により、優れた吸水性および保水性が得られ、希土類化合物の粉体粒子の表面積低下も最小限に抑えられる。
【0065】
したがって、従来の吸着剤と比較して、成形体の内部まですばやく有害物質成分または有価物成分を含んだ処理対象水が浸透するため、より効果的に有害物質成分または有価物成分の吸着性能を有する吸着剤を得ることができる。その他必要に応じて賦形剤を使用することができる。
賦形剤としては、有機系繊維や無機系繊維などが挙げられる。
【0066】
本発明の第2の目的を達成するために、希土類化合物造粒成形体に、さらに粘土鉱物を含有させてもよい。この粘土鉱物は、親水性の無機化合物であり、成形前の希土類化合物の粉体粒子と、多孔質のバインダーとなる親水性樹脂などに添加することで、バインダーとの親和性を改善し、バインダーを均質に分散させる。これにより、成形性がよくなると共に、造粒成形体における結合性を改善でき、成形体の強度を向上させることができる。
【0067】
粘土鉱物は水分がないときはさらさらした状態であり、均一に混ざりやすい性質を有している。一方、粘土鉱物は一般に膨潤性が高く、水分を含むとその表面に均質に水分がいきわたり、膨潤して粘性物質となる。
粘土鉱物が粉体粒子に混合されてそれらを含む水溶液の状態になると粘度が増大し、チクソトロピー性が発現するために、成形や造粒がしやすくなる。また、成形時の粉体粒子の残留または微粉末の発生を最小限に抑えられる。
【0068】
粘土鉱物の含有量は造粒成形体の1〜20質量%(好ましくは10〜20質量%)程度になるように添加して成形体を作製するとよい。粘土鉱物は、多孔質バインダーとの相性が良く、多孔質バインダーの機械的強度を向上させる。バインダー強度を上げることで、造粒成形体は外圧に対し壊れにくくなる。
【0069】
本発明に用いられる粘土鉱物としては、層状ポリ珪酸塩が好ましく用いられる。層状ポリ珪酸塩としては、例えば、シリカ−X、シリカ−Y、マガディアイト、ケニアイト、マカタイト、オクトシリケイトまたはカネマイトが挙げられる。
【0070】
また、本発明に用いられる粘土鉱物としては、膨潤性に優れたスメクタイトやバーミキュライトが好ましく用いられる。スメクタイトには、ベントナイト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等がある。スメクタイトの中でも、不純物が極めて少ないということから、合成スメクタイトが最も好ましい。
【0071】
粘土鉱物の粒子サイズとしては、20〜300μmの平均粒子径、1〜50nmの平均厚みおよび5〜500の平均アスペクト比を有するものが好ましく用いられる。このうち、平均粒子径が50μm以下で、平均アスペクト比が10〜200であれば、さらに好ましい。
平均粒子径が300μm以下であれば、または、平均アスペクト比が500以下であれば、希土類化合物粉体との混合性および成形後の強度が落ち易くなるのを防止する。
なお、本発明における平均粒子径とは、超音波装置等で粒子を一次粒子まで分散させ、その粒子10個をSEMで観察して測定した数値を平均化したものである。
【0072】
例えば、合成スメクタイト粒子としては、クニピアF[平均粒子径20μm、クニミネ工業(株)製]や、スメクトンSA[平均粒子径約20μm、クニミネ工業(株)製]として入手できる。ベントナイト粒子の粉末は、クニボンドKB、クニボンドTYなどが入手できる。
【0073】
多孔質バインダーの溶媒として有機溶媒を含むものを使用する場合は、スメクタイト粒子の表面を有機変性、すなわち親油化処理するとよい。
親油化処理した粒子は、合成スメクタイト粒子を水に分散させた後に、第4級アンモニウム塩でイオン交換し、その後に水を除去することにより得られる。第4級アンモニウムイオンとしては、オクタデシルアンモニウムイオン、ジステアリルジメチルアンモニウムイオン、ポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウムイオン、トリオクチルメチルアンモニウムイオンが挙げられる。
【0074】
親油化処理した合成スメクタイト粒子も市販されており、例えば「ルーセンタイトSPN」[平均粒子径50nm、厚み1〜10nm、コープケミカル(株)製、ポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウムイオン処理]、「ルーセンタイトSTN」[平均粒子径50nm、厚み1〜10nm、コープケミカル(株)製、トリオクチルメチルアンモニウムイオン処理]として入手することができる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0076】
<合成例1>
エチルセロソルブ320質量部に、2-ヒドロキエチルメタクリレート72質量部、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート12質量部、およびメチルメタクリレート16質量部を加え、さらにアゾビスイソブチルニトリルを0.4質量部加え、窒素雰囲気下90℃で4時間加熱撹拌して共重合させた。
得られた共重合体は、数平均分子量が10000の2-ヒドロキエチルメタクリレート、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、およびメチルメタクリレートの共重合体であった(樹脂分:24質量%)。得られた共重合体を合成樹脂1と称する。
【0077】
<合成例2>
エチルセロソルブ320質量部に、2-ヒドロキエチルメタクリレート100質量部を加え、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.4質量部を加え、窒素雰囲気下90℃で4時間加熱撹拌して共重合させた。得られた共重合体は、数平均分子量が10000の2-ヒドロキエチルメタクリレートの単独重合体であった(樹脂分:24質量%)。
得られた共重合体を合成樹脂2と称する。
【0078】
[実施例1〜8および比較例1、2]
表1に示す配合組成になるように各成分を混合して濃度19〜51質量%の各種溶媒溶液もしくはエマルションを調製した。
別途、パン型造粒機(アズワン社製の品番:PZ−01)に吸着主剤である水酸化セリウム水和物の粉体粒子を35g〜270g投入(各実施例および比較例で投入した量は表1に記載)した。パン型造粒機を45度の角度に設定し、適当な速度で回転させながら、かつ、噴霧量が粉体粒子100質量部あたり約30〜60質量部になるように調整しながら「溶液等」を噴霧し、吸着主剤の粉体粒子が「溶液等」により固定されて造粒された0.1〜3mmφの粒子を調製した。次いで、造粒された粒子を140℃で30分間加熱乾燥した。「溶液等」から生じた乾燥した後の固形分は、吸着主剤100質量部に対して、いずれも約30質量部であった。なお、実施例8については粉体粒子の成形性を観察し、得られた希土類化合物造粒成形体の強度を測定した。
【0079】
次に、造粒された粒子100質量部を、1000質量部の温度80℃の温水に30分間浸漬して、水溶性化合物を洗浄除去した。洗浄除去後、遠心脱水機で脱液して希土類化合物造粒成形体を調製した。洗浄除去後の固形分は、吸着主剤100質量部に対して、約15質量部であった。実施例2で得られた希土類化合物造粒成形体の写真を図1〜3に示す。
【0080】
[実施例9〜11]
実施例9〜11は、希土類化合物である水酸化セリウムと、粘土鉱物として合成スメクタイトを十分混合した後に、実施例2と同じ方法で作製した。用いた「溶液等」の配合組成および吸着試験の結果(各成分の除去率)を表1に、粉体粒子の成形性および得られた希土類化合物造粒成形体の強度を表3にそれぞれ示す。
表1中、スメクトンSAはクニミネ工業(株)製の平均粒子径約20μmを有する合成スメクタイト、クニボンドKBはクニミネ工業(株)製のベントナイト粒子である。
【0081】
<吸着能力の測定>
評価方法(吸着試験)
下記試薬を用いて、100mg/リットル濃度の各水溶液を調製した。それらの水溶液100gに対し、上記で得られた希土類化合物造粒成形体1gを添加し、温度20℃で1時間振とうさせ、添加前後での濃度変化を確認した。
<試薬>
ホウ素(B):メタホウ酸(1級試薬)
ヒ素(As):Na2HAsO4(1級試薬)
フッ素(F):NaF(1級試薬)
鉛(Pb):鉛・硝酸(0.1mol/L)溶液[原子吸光用標準液(1000ppm、関東化学製)]
6価クロム(Cr6+):二クロム酸カリウム・硝酸(0.1mol/L)溶液[原子吸光用標準液(1000ppm、関東化学製)]
セレン(Se4+):セレン(IV)・硝酸(0.1mol/L)溶液[原子吸光用標準液(1000ppm、関東化学製)]
セレン(Se6+):セレン酸(VI)ナトリウム(一級試薬)
水銀(Hg):塩化水銀(II)・硝酸(0.1mol/L)[原子吸光用標準液(1000ppm、関東化学製)]
<分析方法>
各種金属濃度はICP(島津製作所製、ICP−1000IV)を用いた定量分析により測定した。フッ素はイオンメーターを用いた定量分析により測定した。調製した水溶液から除去された各種成分の割合(除去率)を表2および3に表示した。
<粉体粒子の成形性>
加熱乾燥後、パン型造粒機内に残った粉体の量を目視で観察して評価した。
<希土類化合物造粒成形体の強度>
オートグラフ(島津製作所製、AGS-J)を用いて、約2mmφの成形体に圧力をかけて、破壊したときの圧力を成形体の強度とした。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
本発明の希土類化合物造粒成形体は、親水性樹脂を含む多孔質バインダーで希土類化合物の粉体粒子を結合させて造粒化しているため、高い吸着性能を維持した状態で、十分な強度を有している。さらに、粘土鉱物を配合し成形することで、結合強度を上げることができる。粘土鉱物は吸着作用も有しているので、より高い吸着性能を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の希土類化合物造粒成形体は、各種排水やプロセス水等から有害物質成分や有価物成分を除去したり、回収するために利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】実施例2で得られた希土類化合物造粒成形体の全体の写真(実物大)である。
【図2】同上10倍に拡大した写真である。
【図3】実施例2で得られた希土類化合物造粒成形体の粒子の表面状態を示す走査型電子顕微鏡写真(撮影倍率10,000倍)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類化合物の粉体粒子を、親水性樹脂を含む多孔質バインダーで結合してなる希土類化合物造粒成形体。
【請求項2】
前記希土類化合物が、水酸化セリウムおよび/または水酸化セリウム水和物である請求項1に記載の希土類化合物造粒成形体。
【請求項3】
前記親水性樹脂が、ポリビニルアルコール、親水性エポキシ樹脂、ポリ乳酸樹脂、および側鎖に官能基を有するビニル単量体の単独重合体または共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1または2に記載の希土類化合物造粒成形体。
【請求項4】
前記親水性樹脂が硬化されたものである請求項1〜3のいずれかに記載の希土類化合物造粒成形体。
【請求項5】
前記硬化が硬化剤または硬化触媒を用いて行なわれる請求項4に記載の希土類化合物造粒成形体。
【請求項6】
前記硬化が架橋である請求項4に記載の希土類化合物造粒成形体。
【請求項7】
前記架橋が架橋剤を用いて行なわれる請求項6に記載の希土類化合物造粒成形体。
【請求項8】
前記希土類化合物造粒成形体が、さらに粘土鉱物を含む請求項1〜7のいずれかに記載の希土類化合物造粒成形体。
【請求項9】
前記粘土鉱物が、層状ポリ珪酸塩である請求項8に記載の希土類化合物造粒成形体。
【請求項10】
前記粘土鉱物が、スメクタイトまたはバーミキュライトである請求項8に記載の希土類化合物造粒成形体。
【請求項11】
前記スメクタイトが、合成スメクタイトである請求項10に記載の希土類化合物造粒成形体。
【請求項12】
前記粘土鉱物が、平均粒子径50μm以下の粒子状である請求項8〜11のいずれかに記載の希土類化合物造粒成形体。
【請求項13】
吸着剤である請求項1〜12のいずれかに記載の希土類化合物造粒成形体。
【請求項14】
親水性樹脂と、水溶性化合物と、溶媒として少なくとも水を含む溶液もしくはエマルションを、希土類化合物の粉体粒子に含ませた後、加熱乾燥し、次いで水に接触させて上記水溶性化合物を溶出させることを特徴とする希土類化合物造粒成形体の製造方法。
【請求項15】
前記親水性樹脂が、ポリビニルアルコール、親水性エポキシ樹脂、ポリ乳酸樹脂、および側鎖に官能基を有するビニル単量体の単独重合体または共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項14に記載の希土類化合物造粒成形体の製造方法。
【請求項16】
前記水溶性化合物が、カゼイン、グルカン、ヒドロキシプロピルエーテル化澱粉、およびヒドロキシエチルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項14または15に記載の希土類化合物造粒成形体の製造方法。
【請求項17】
前記溶液もしくはエマルションが架橋剤、硬化剤または硬化触媒のいずれか少なくとも1つを含む請求項14〜16のいずれかに記載の希土類化合物造粒成形体の製造方法。
【請求項18】
前記溶媒が、さらに水溶性の有機溶媒を含む請求項14〜17のいずれかに記載の希土類化合物造粒成形体の製造方法。
【請求項19】
前記有機溶媒が、アルコール系および/またはグリコール系の有機溶媒である請求項18に記載の希土類化合物造粒成形体の製造方法。
【請求項20】
前記希土類化合物の粉体粒子に、さらに粘土鉱物を含ませた請求項14〜19のいずれかに記載の希土類化合物造粒成形体の製造方法。
【請求項21】
前記粘土鉱物が、層状ポリ珪酸塩である請求項20に記載の希土類化合物造粒成形体の製造方法。
【請求項22】
前記粘土鉱物が、スメクタイトまたはバーミキュライトである請求項20に記載の希土類化合物造粒成形体の製造方法。
【請求項23】
前記スメクタイトが、合成スメクタイトである請求項22に記載の希土類化合物造粒成形体の製造方法。
【請求項24】
前記粘土鉱物が、平均粒子径50μm以下の粒子状である請求項20〜23のいずれかに記載の希土類化合物造粒成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−24912(P2008−24912A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5055(P2007−5055)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【出願人】(000232760)日本無機株式会社 (104)
【Fターム(参考)】