説明

希土類含有リン酸塩の製造方法

【課題】セリウム、ランタンおよびテルビウム混合リン酸塩を調製する方法を提供する。
【解決手段】(a)ある容量を有するリン酸塩の初期装填物を、反応装置に導入する工程と、(b)初期装填物を反応装置に導入した後、その反応装置への希土類溶液の導入を開始する工程と、(c)その後、その反応装置へのリン酸塩と希土類溶液の両方の導入を継続する工程とを含み、希土類リン酸塩沈殿を生成することを特徴とする。従って、本方法は、リン酸塩の初期装填量を反応装置に、例えば、反応装置への水の初期装填量へのリン酸塩溶液の分取量の添加により、供給することを含む。従って、反応装置への希土類溶液の導入開始時、その反応装置の初期装填物は、2より上のpHを有する。反応装置への希土類溶液の添加前のその反応装置内の液体の初期pHは、1から8.5、好ましくは、約7.5であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体材料の製造に有用である、LaPO:Ce,Tbタイプの希土類含有リン酸塩に関する。特に好ましい実施形態において、本発明は、セリウム、ランタンおよびテルビウム混合リン酸塩を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LaPO:Ce,Tb系緑色蛍光材料の合成は、先行技術分野において幾度も記載されている。合成方法は、リン酸塩エンティティーでの個々の希土類塩および酸化物の高温処理から、高温でのリン酸塩の直接的共沈、それに続く、最終材料を形成するための沈殿焼成に及ぶ。用いられる合成法にかかわらず、合成された材料は、最小限の硬質凝集しか有してはならず、形状の点では球形に近くなければならず、そのD50特性の点では15マイクロメートル未満である狭い粒径を有し、および作りたての状態では高い相対輝度を有し、使用中にこの輝度は最小限にしか喪失されないと、当業者は一般に考える。さらにCeIII/CeIV比およびTbIII/TBIV比は、LaPO:Ce,Tbの最終形態で最大になると、一般に考えられている。
【0003】
これらの特性を達成するために、共沈が最上の合成法であると一般に認められている。共沈により、その材料は、蛍光体のより高い輝度を生じさせるために求められる、ホストマトリックスへの個々の希土類のより良好な分散を有すると考えられる。
【0004】
LaPO:Ce系蛍光体を形成するための様々な方法が、過去に開示されている。LaPO:Ce系蛍光体の共沈は、早くも1963年にはC.W.Struckにより米国特許第3,104,226号に記載されている。この特許に、著者は、NHOHなどの塩基によって5のpHに中和される混合希土類塩水溶液を調製する方法を記載している。その後、(NHHPO水溶液を攪拌しながら添加して、リン酸ランタンとリン酸セリウムの共沈を形成する。その後、その結果として生じた沈殿を濾過し、乾燥させ、弱還元雰囲気下、1000℃で焼成して、最終LaPO:Ceを生じさせる。
【0005】
Ropp(米国特許第3,507,804号明細書)は、希土類オルトリン酸塩蛍光体を調合するために用いられる共沈法を記載している。硝酸に可溶化した希土類の溶液を調製し、オルトリン酸溶液に時間をかけて添加する。1:1と1:9の間の前駆体溶液中の希土類対リン酸塩モル比で、およびより高い温度で、希土類含量中0.1〜6M、酸性、に沈殿希土類スラリー濃度を保持することにより、蛍光体の粒径を所望の値に調節することができ、ならびに粉砕が難しい、劣った蛍光体を生じる結果となる大きな硬いゼラチン状凝集体を作る可能性を最小にすることができる。
【0006】
Chauら(米国特許第5,132,042号明細書)は、リン酸ホウ素とLa:Ce,Tb前駆体の反応を含む、LaPO:Ce,Tbの非共沈型合成法を記載している。この特許において、前記ホウ素は、CeIVおよびTbIVのそれらの対応する3種への転化を助長する弱還元剤としての役割を果たすと述べられている。そしてまた、これは、1,150℃〜1,300℃で焼成したとき最終的に調製される蛍光体の輝度を補助すると報告されている。
【0007】
Collinら(米国特許第5,340,556号明細書)は、その沈殿の輝度が、か焼雰囲気による影響を受けにくい、LaPO:Ce,Tbの共沈方法を記載している。その沈殿pHを2以上の値におよび母液中でのその後の熟成処理を6以上のpH値に調節することによって、より容易に濾過できる非ゼラチン状生成物が得られると述べている。このpHの調節は、希土類イオンの溶液とリン酸塩化合物の溶液の混合中に塩基性化合物を添加することによって行うことができる。例えば、リン酸塩を希土類溶液に添加する場合、塩基性化合物をそのリン酸塩と同時に添加して、そのpHを2より上の値に調節する。同様に、希土類化合物の溶液をリン酸塩溶液に添加するとき、同時に塩基性化合物を添加して、pHを2より高い値、有利には一定した値に調節する。
【0008】
Braconnir(米国特許第5,470,503号明細書および米国特許第5,746,944号明細書)は、希土類塩の溶液をリン酸イオンの溶液に添加するプロセスを開示している。Collinらとは対照的に、この特許には、そのリン酸イオン溶液の初期pHが2より下であり、沈殿プロセス中に塩基を添加することによってその溶液のpHを2より下の値に調節すると述べられている。このプロセスの目的は、改善された粒径分布を得ることである。
【0009】
Kimuraら(米国特許第5,567,403号明細書)は、1μm以下または10μm以上のいずれかである粒子を用いてLaPO:Ce,Tbを合成することは不利なことであると述べている。粒子が小さすぎる場合、その蛍光体は熟成不足を被り、粒子が大きすぎる場合、それらは凝集体で構成され、該凝集体は分解して有利でないサブミクロンダストを生成すると、その特許請求の範囲に記載されている。さらに、非球形粒子はコーティングの問題をもたらすと述べている。これらの潜在的問題を多少とも解決するために、発明者らは、希土類塩水溶液を限定された期間(3秒から5分)にわたってリン酸水溶液に添加する共沈法を開示している。そのようにすると、塩基の添加によってpHを調節する必要がないと述べられている。他の研究者が記載しているような沈殿pHを調節するための塩基の添加は不利であり、それは、サブミクロン粒子を形成するという望ましくない影響を及ぼすとも述べている。
【0010】
Collinら(米国特許第5,580,490号明細書)は、「針」の形状のLaPO:Ce,Tbの結晶体を開示している。この特許において、発明者らは、シュウ酸LaCeTbをリン酸アニオン源と混合し、その母液を高温で熟成させ、その後、任意の雰囲気で600℃に処理すると、優れた輝度を有する六方晶LaPO:Ce,Tbが形成されることを開示している。さらに、この特許では、希土類化合物およびリン酸塩化合物の懸濁液の添加順序は重要でないと述べられている。しかし、リン酸塩化合物を希土類化合物の懸濁液に添加したほうが好ましい。
【0011】
希土類含有リン酸塩を製造するための上の合成法のすべてが、様々な利点、例えば、改善された粒径または粒径分布、およびか焼温度による影響を受けない輝度、を生じると説明されている。また、これらの方法は、それらが異なる範囲でのpHの調節を開示している点で、およびpHを調節すべきでないという点でも、相反するものである。全体として考えると、先行技術が、異なるレジメによる希土類およびリン酸塩の添加によって様々な特性を有する希土類リン酸塩を生じさせることができることを認めていることは、明らかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、X線もしくはUVもしくは可視光の効率的吸収および/またはスペクトルの緑色領域の発光が望まれる用途において有用なLaPO:Ce,Tbタイプの希土類含有リン酸塩の新規合成方法を記載するものである。「効率」は、現行技術分野において十分に定義されており、一般に、放射されるフォトン数の吸収されるフォトン数に対する相対的に高い比率と定義される。
【0013】
本発明によると、反応速度は、試薬の添加速度を調節することによって調節する。それに併せて、リン酸塩および希土類の溶液を調製することができる。溶液の濃度はわかっているので、反応装置内に存在するリン酸塩および希土類の量は、反応装置へのそれぞれの溶液の添加速度を知ることによってわかる。従って、反応装置へのリン酸塩溶液の添加速度および/または希土類溶液の添加速度を調整することによって、反応速度を調節することができる。それぞれの溶液を交互に少しずつ添加してもよいし、または好ましくは同時に添加してもよいことは理解される。これは、プロセスの単純なメカニズムを単純にし、その上、蛍光体として良好な特性を有する沈殿を生じさせる。
【0014】
従って、本発明は、希土類リン酸塩沈殿を形成するために調節された速度で希土類溶液およびリン酸塩溶液を併せることを含む、希土類化合物の調製方法に関する。好ましくは、希土類溶液およびリン酸塩水溶液を同時に反応装置に添加する。さらに好ましくは、希土類溶液およびリン酸水溶液を、それぞれ、概して一定した速度で反応装置に添加する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、本発明の1つの態様に従って、希土類リン酸塩の調製方法を提供し、この方法は、
(a)ある容量を有するリン酸塩の初期装填物を、反応装置に導入すること;
(b)初期装填物を反応装置に導入した後、その反応装置への希土類溶液の導入を開始すること;および
(c)その後、その反応装置へのリン酸塩と希土類溶液の両方の導入を継続すること
を含み、それによって希土類リン酸塩沈殿を生成する。
【0016】
従って、本方法は、リン酸塩の初期装填量を反応装置に、例えば、反応装置への水の初期装填量へのリン酸塩溶液の分取量の添加により、供給することを含む。従って、反応装置への希土類溶液の導入開始時、その反応装置の初期装填物は、2より上のpHを有する。反応装置への希土類溶液の添加前のその反応装置内の液体の初期pHは、1から8.5、好ましくは、約7.5であり得る。
【0017】
1つの実施形態において、希土類溶液の導入前、反応装置は、リン酸塩溶液の初期容量を収容している。
【0018】
もう1つの実施形態において、前記リン酸塩溶液は、リン酸塩と調達溶液を併せることによって調製される。
【0019】
もう1つの実施形態において、本方法は、反応装置に調達溶液の初期容量を準備しておくこと、およびその反応装置に前記リン酸塩を添加することをさらに含む。
【0020】
もう1つの実施形態において、前記調達溶液は、水、好ましくは脱イオン水を含む。
【0021】
もう1つの実施形態において、本方法は、希土類リン酸塩の種粒子を反応装置に準備しておくことをさらに含む。
【0022】
もう1つの実施形態において、前記リン酸塩は、リン酸塩水溶液として添加される。
【0023】
前記希土類溶液は、希土類塩水溶液を場合によっては含む。前記希土類塩水溶液は、一般に、(LaCeTb)Clまたは塩化ランタン塩と塩化セリウム塩と塩化テルビウム塩の混合物を含む。前記希土類塩水溶液の濃度は、好ましくは0.2〜1.2Mの範囲、およびさらに好ましくは0.3〜0.6Mの間である。前記希土類溶液のpHは、好ましくは1と1.5の間である。前記希土類溶液の温度は、好ましくは10℃〜90℃の間、さらに好ましくは45℃〜85℃の間である。
【0024】
前記リン酸塩溶液は、好ましくは、HPOまたは(NHHPOなどのリン酸塩水溶液を含む。前記リン酸塩溶液の濃度は、好ましくは0.3〜1.8Mの範囲である。前記リン酸塩水溶液は、さらに好ましくは、0.35〜0.45MのHPOまたは0.6〜0.9Mの(NHHPOである。前記リン酸塩溶液のpH範囲は、好ましくは、7.5と8.5の間(両端の値を含む)である。前記リン酸塩溶液の温度は、好ましくは10℃〜90℃の間、さらに好ましくは45℃〜85℃の間である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
さて、本発明をよりよく理解するために、およびどのようにして実施できるかをより明瞭に示すために、本発明の実施形態についての添付の図面を例として参照しよう。
【図1】本発明に従って使用することができる装置の概略図である。
【図2】沈殿工程中の反応溶液のpHプロフィールを例示するチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に従って、希土類リン酸塩の新規調製方法を提供する。本方法は、その合成条件に関してさほどストリンジェントでない。さらに、得られる粒径分布は、多分散分布、例えば、三山分布または二山分布であり得る。本発明は、LaPO:Ce,Tbの最終形態でのCeIII/CeIV比およびTbIII/TbIV比を最大にする必要がないことも証明する。例えば、最終生成物中のセリウムの量に基づき、CeIII/CeIV比におけるCe(IV)含有率は、少なくとも:1%、5%、20%または50%であり得る。同様に、最終生成物中のテルビウムの総量に基づき、TbIII/TbIV比におけるTb(IV)含有率は、少なくとも:1%、5%、20%または50%であり得る。
【0027】
本発明によると、リン酸塩と希土類の反応速度は、リン酸塩および希土類をある期間にわたって添加することにより、ならびにリン酸塩および希土類の添加速度を制御することによって調節する。
【0028】
前記反応装置は、バッチ式反応装置であってもよいし、または連続流通式反応装置であってもよい。好ましくは、前記反応装置は、バッチ式反応装置、例えば、攪拌タンク型反応装置である。反応装置がバッチ式反応装置である場合には、好ましくは、その反応装置は、調達溶液と、希土類リン酸塩沈殿を形成するためにその調達溶液と併せる試薬との合計容量を入れることができるようなサイズである。前記調達溶液は、リン酸塩と希土類をある期間にわたって添加するその反応装置の初期装填物であり、前記調達溶液によって、そのリン酸イオンと希土類イオンは化合して、希土類リン酸塩沈殿を形成することができる。
【0029】
反応装置に希土類を添加する前に、その反応装置にリン酸塩の初期装填物を供給する。この初期装填物は、ある量のリン酸塩および液体担体を含む。その初期装填物を生じさせるために液体担体と併せることができるリン酸塩源の濃度は、0.5から20モルであり得る。それより有意に低いまたは高い濃度を有する装填物は、性能が低下した蛍光体を生じさせる結果となり得る。
【0030】
前記液体担体は、希土類イオンおよびリン酸イオンを可溶化できなければならず、またはそれらに懸濁していなければならない。前記液体担体は、水であってもよく、好ましくは脱イオン水である。
【0031】
反応装置に供給される初期装填物は、その反応装置に液体担体を添加し、その後、リン酸塩の初期装填物をそれに添加することによって調製することができる。前述の実施形態では、調達溶液が、液体担体そのものである。前記リン酸塩は、1回で添加してもよいし、またはある期間(例えば、10から60秒)にわたって添加してもよい。従って、反応装置内の流体の初期容量(すなわち、希土類の添加前だが、液体担体によるリン酸塩源の希釈後)のリン酸塩濃度は、0.001Mから0.04M、好ましくは0.001Mから0.02M、およびさらに好ましくは0.004Mから0.01Mであり得る。あるいは、前記初期装填物は、リン酸塩のそのような希釈溶液を調製し、その後、反応装置に添加することによって、調製することができる。前述の実施形態において、調達溶液は、リン酸塩の希釈溶液である。いずれの実施形態においても初期充填物の容量は、反応装置の容量の10〜50%であり得る。
【0032】
従って、1つの実施形態では、液体担体から成る調達溶液の初期装填物を、反応装置に供給する。前述の実施形態において、調達溶液は、リン酸塩および希土類元素を一切含有しない。あるいは、調達溶液は、希土類溶液の添加前に反応装置に供給されるリン酸塩の初期装填物を含有することがある。
【0033】
前記調達溶液の温度は、20℃から90℃の間、好ましくは40℃と90℃の間、さらに好ましくは45℃〜85℃、および最も好ましくは60℃から80℃であり得る。
【0034】
場合によっては、希土類リン酸塩、好ましくは製造すべき希土類リン酸塩、の種粒子を調達溶液に備えさせることができる。例えば、調達溶液は、初期バッチまたは運転試験で形成された希土類リン酸塩沈殿の小部分をその中に備えていることがある。種材料の量は、そのプロセスの基体収量の0.5から3重量%、好ましくは約1重量%であり得る。前記種材料の目的は、より良好な形態を有する沈殿を形成することである。さらに、前記種の粒径は、生成物の要求粒径に見合って、すなわち類似して、いなければならない。
【0035】
特に好ましい実施形態において、前記プロセスは、単一のリン酸塩溶液濃度のみを用いる。従って、調達溶液は、リン酸塩を一切含有しない(すなわち、調達溶液は、好ましくは、水から本質的に成る)。調達溶液の初期装填物または初期容量を反応装置に供給する。その後、反応装置内のリン酸塩溶液の所望の濃度を得るために十分な量のリン酸塩溶液を反応装置に導入する。この量のリン酸塩溶液を反応装置に導入した後、希土類溶液および追加量のリン酸塩溶液をある期間にわたってその反応装置に導入する(例えば、それらを調達溶液に継続的に計量供給してもよい)。従って、リン酸塩溶液と希土類溶液の両方をある時間にわたって反応装置に添加する。しかし、希土類溶液は、一部のリン酸塩を反応装置に入れた後にしか添加しない。
【0036】
前記リン酸塩は、好ましくは、水溶液として添加する。このリン酸塩溶液は、希土類リン酸塩蛍光体を製造するために使用される、および当該技術分野において公知の任意の方法によって形成することができる、当該技術分野において公知のいずれの溶液であってもよい。好ましくは、前記蛍光体は、式XHPO(式中のXは、H、(NH、(NH)Hおよびこれらの混合物から成る群より選択される)のリン酸塩である。さらに好ましくは、前記リン酸塩水溶液は、HPOおよび(NHHPOの少なくとも一方を含み、最も好ましくは、(NHHPOから本質的に成る。
【0037】
前記リン酸塩水溶液の濃度は、0.3〜1.8Mの間、好ましくは0.6から0.9Mであり得る。例えば、前記リン酸塩水溶液の濃度は、0.35〜0.45MのHPOまたは0.6〜0.9Mの(NHHPOである。前記リン酸塩溶液のpHは、7.5と8.5の間である。前記リン酸塩溶液の温度は、10℃〜90℃の間、好ましくは40℃と90℃の間、およびより好ましくは45℃から85℃の間である。
【0038】
前記希土類溶液は、希土類リン酸塩蛍光体を製造するために使用される、および当該技術分野において公知の任意の方法によって形成することができる、当該技術分野において公知のいずれの溶液であってもよい。好ましくは、前記希土類は、希土類塩水溶液である。前記希土類溶液は、少なくとも1つの希土類の塩の水溶液を含む。好ましくは、前記希土類塩水溶液は、ランタン、セリウムおよびテルビウムのうちの少なくとも1つの塩化物、硝酸塩または酢酸塩を含む。さらに好ましくは、前記希土類塩は、1つより多くの希土類の組み合わせであり、最も好ましくは、ランタンとセリウムとテルビウムの組み合わせである。特に好ましい実施形態において、前記希土類塩水溶液は、(LaCeTb)Cl(式中、xは、=0.2〜0.8であり、y=0.1〜0.7、およびz=0.05〜0.5)を含む。例えば、(LaCeTb)Cl、(LaCeTb)(NOまたは(LaCeTb)Acの水溶液は、所望の分子比x/y/zを達成するために適切な量のそれぞれの希土類塩化物または硝酸塩または酢酸塩をそれぞれ添加することによって、調製することができる。
【0039】
前記溶液中の総希土類濃度を、0.2Mから1.2M、好ましくは0.3から0.6M、さらに好ましくは0.45Mから0.55M、および最も好ましくは0.45Mから0.5Mに調整することができる。前記溶液のpHを、0.1と1の間の値に調整することができる。前記希土類塩水溶液の温度を、10℃と90℃の間、好ましくは40℃と90℃の間、およびさらに好ましくは45から85℃の間に調整することができる。
【0040】
希土類溶液およびリン酸塩溶液は、好ましくは、徐々に反応装置に添加する。希土類溶液およびリン酸塩溶液を同時に添加してもよいし、または逐次的に添加してもよいが、但し、反応装置内のリン酸塩の希土類に対するモル比を、好ましくは、1.1から3、好ましくは1.2から1.6およびさらに好ましくは1.3から1.5の範囲内に維持することを条件とする。それに合うように、リン酸塩溶液の分取物と希土類溶液を交互に少しずつ反応装置に添加してもよい。
【0041】
好ましくは、希土類溶液とリン酸塩溶液を同時に反応装置に添加する。それぞれの溶液の反応装置への添加速度は、3リットル/分から15リットル毎分、好ましくは、5リットル毎分から10リットル毎分であり得る。この添加速度は、反応容器のサイズによって変わり得ることは理解されるが、好ましくは、希土類溶液およびリン酸塩水溶液が1〜3、さらに好ましくは1.3〜2および最も好ましくは1.3から1.8のリン酸塩の希土類に対するモル比で調達溶液に添加されるように、添加速度を調節する。従って、希土類溶液およびリン酸塩水溶液のそれぞれを、反応装置に、その反応装置内の初期装填物の容量に毎分添加される溶液の容量に基づき0.1と5%の間の率で添加することができる。反応の仕組みに関係なく、反応装置内のリン酸塩および希土類塩の量を制限することによって、反応速度を調節することができる。
【0042】
リン酸塩および希土類溶液を反応装置に添加すると、希土類リン酸塩沈殿が形成することとなる。その沈殿を取り出し、その後、当該技術分野において公知の任意の手段によって加工するこができる。
【0043】
好ましい実施形態実施形態を図1に例示する。そこに示されているように、加工溶液は、脱イオン水を含む。リン酸塩は、(NHHPOの0.8モル水溶液として供給し、希土類は、(LaCeTb)Clの0.5モル水溶液として供給する。LaCl、CeClおよびTbClの別個の溶液を貯蔵タンク10、12および14に準備しておくことができる。当該技術分野において公知であるように、LaCl、CeClおよびTbClを化合させて(LaCeTb)Clを生成することができ、それを貯蔵タンク16に入れておく。リン酸塩溶液を貯蔵タンク18に準備しておき、調達溶液(脱イオン水)を貯蔵タンク20に準備しておき、種結晶を貯蔵タンク22に準備しておく。それらの溶液のそれぞれの温度は、20℃〜90℃、好ましくは45℃〜85℃およびさらに好ましくは60℃〜80℃であり得る。
【0044】
最初の工程では、脱イオン水を、例えばポンプ28により、フローストリーム24経由で攪拌タンク型反応装置26に供給する。この実施例において、タンク26は、1.5mの全装填量を収容するサイズであり、脱イオン水の初期装填量は、500Lである。種結晶を反応装置26にライン30経由で添加し、その反応装置の攪拌を開始する。このプロセスでは種結晶を別の順序で添加してもよいこと、例えば、最初に種結晶を添加し、その後、水を添加してもよいことは、理解される。その後、リン酸塩溶液を、例えばポンプ34により、フローストリーム32経由で攪拌タンク式反応装置26に計量供給(例えば、6〜8L/分)する。所望の量のリン酸塩を反応装置26に添加した後(例えば、反応装置26へのリン酸塩溶液の5から80秒の添加の後)、(LaCeTb)Clを、例えばポンプ38により、フローストリーム36経由で攪拌タンク式反応装置26に計量供給(例えば、6〜8L/分)する。この時点で、リン酸塩溶液は、まだ反応装置26に添加され続けている。従って、リン酸塩の初期装填物を反応装置26に供給したら、リン酸塩溶液と希土類溶液の両方を同時に反応装置26に添加する。所望の量(この実施例では、1.5mの総装填量である)のリン酸塩および希土類が反応装置26に添加されるまで、リン酸塩溶液と希土類溶液を同時に反応装置26に添加することができる。これには50から80分かかり得る。調達溶液(例えば、水)が入っている反応装置26へのそれら2つの溶液の同時添加の結果として沈殿が生ずる。
【0045】
添加終了時、反応装置26の攪拌を停止させ、希土類リン酸塩結晶を沈殿および成長させることができる。熟成工程は1から3時間であり得る。
【0046】
リン酸塩および希土類溶液の添加および熟成工程中、反応装置内の液体の温度は、20℃〜90℃、好ましくは50℃〜85℃およびさらに好ましくは60℃〜80℃に維持することができる。このプロセスを調節するために、用いる必要はないが、所望される場合には、そのpHをモニターしてもよい。例示的pH対時間曲線を図2に示す。
【0047】
希土類の水溶液と別のリン酸塩溶液の共沈からウェットケーキを得る。沈殿および任意の熟成工程後、それらの固形物を洗浄し、標準的な沈殿技法によって母液から分離する。
【0048】
その後、そのウェットケーキを、約2時間、間に乾燥工程を入れてまたは入れずに、600℃から1000℃、好ましくは700℃から900℃、およびさらに好ましくは約800℃で焼成することができる。
【0049】
すべての出版物、特許および特許出願は、個々の出版物、特許または特許出願がその全体を参照として本明細書に取り入れられていると具体的におよび個々に示されている場合と同程度に、その全体を本明細書に参照として取り入れられている。
【0050】
上の説明は、好ましい実施形態を構成するものであるが、添付の特許請求の範囲の正しい意味を逸脱することなく本発明を修飾および変更できることは理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.ある容量を有するリン酸塩の初期装填物を、反応装置に導入すること;
b.初期装填物を反応装置に導入した後、その反応装置への希土類溶液の導入を開始すること;および
c.その後、その反応装置へのリン酸塩と希土類溶液の両方の導入を継続すること
を含み、それによって希土類リン酸塩沈殿を生成する、希土類リン酸塩の調製方法。
【請求項2】
前記希土類溶液の導入前に、前記反応装置が、前記リン酸塩溶液の初期容量を収容している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リン酸塩溶液が、リン酸塩と調達溶液を併せることによって調製される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応装置に前記調達溶液の初期容量を準備しておくこと、およびその反応装置に前記リン酸塩を添加することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記調達溶液が水を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記調達溶液が脱イオン水を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記希土類リン酸塩の種粒子を前記反応装置に準備しておくことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記反応装置への前記希土類溶液の導入開始時に、その反応装置の初期装填物が、2より上のpHを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記リン酸塩溶液が、10℃と90℃の間の温度を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記リン酸塩溶液の温度が、45℃と85℃の間である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記リン酸塩が、リン酸水塩溶液として添加される、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記リン酸塩が、式XHPO(式中のXは、H、(NH、(NH)Hおよびこれらの混合物から成る群より選択される)のリン酸塩である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記リン酸塩水溶液が、HPOおよび(NHHPOの少なくとも一方を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記リン酸塩水溶液が、0.3〜1.8Mの間であるリン酸塩濃度を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記リン酸塩水溶液が、0.6から0.9Mの(NHHPOを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記リン酸塩水溶液が、7.5と8.5の間のpHを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記リン酸塩水溶液が、10℃と90℃の間の温度を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記リン酸塩水溶液の温度が、45℃から85℃の間である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記希土類溶液およびリン酸塩水溶液のそれぞれの容量を、前記反応装置に、その反応装置内の初期装填物の容量に毎分添加される溶液の容量に基づき0.1%と5%の間の率で添加することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記希土類溶液が、少なくとも1つの希土類の塩の水溶液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記塩が、ランタン、セリウムおよびテルビウムのうちの少なくとも1つの塩化物、硝酸塩または酢酸塩を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記塩が、(LaCeTb)Cl(式中、xは、=0.2〜0.8であり、y=0.1〜0.7、およびz=0.05〜0.5)を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記希土類溶液が、0.2〜1.2Mの濃度を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記希土類溶液の濃度が、0.3Mと0.6Mの間である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記希土類溶液が、1と1.5の間のpHを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記希土類溶液が、10℃と90℃の間の温度を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記希土類溶液の温度が、45℃と85℃の間である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
工程(c)において、前記希土類溶液および前記リン酸塩水溶液が、前記反応装置に継続的に添加される、請求項11に記載の方法。
【請求項29】
工程(c)において、前記希土類溶液および前記リン酸塩水溶液が、前記反応装置に概して一定した速度で添加される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
工程(c)において、前記希土類溶液および前記リン酸塩水溶液が、1.3〜1.8のリン酸塩の希土類に対するモル比で、前記調達溶液と併せられる、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−507551(P2010−507551A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533594(P2009−533594)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/082127
【国際公開番号】WO2008/060823
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(509107312)エイエムアール インターナショナル コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】