説明

希少金属回収処理方法及び回収処理装置

【課題】 被処理物から機械的な手法で希少金属を効率良く回収して効率的なリサイクルができる希少金属回収処理方法を提供すること。
【解決手段】 被処理物の希少金属部分を回収するための処理方法として、搬入したHDD10の位置情報を得た後、このHDD10内の希土類磁石部分11を識別センサ30で識別し、この識別した希土類磁石部分11を切断機40の非磁性刃ポンチ41位置に位置させた後、この希土類磁石部分11を非磁性刃ポンチ41で切り取り、この切り取った希土類磁石部分11と他の部分とを別々に搬出して処理するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃家電品等に用いられている希少金属(レアメタル)を機械的に回収する回収処理方法とその回収処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータのハードディスクドライブや携帯電話等の廃小型家電品などの使用済み製品は、銅や貴金属等の一部の金属しか回収されていないが、これらの廃小型家電品に用いられている小型モータ等にはネオジム、レアアース等のレアメタル(なお、レアメタルには、プラチナとパラジウム以外の貴金属は含まれない。また、この明細書及び特許請求の範囲の書類中でレアメタルと貴金属を総称する場合は「希少金属」という)が使用されており、近年、資源の有効活用のために、上記したような使用済み製品を収集し、そこから希少金属を選別・回収してリサイクルしようとする動きが高まっている。
【0003】
このような廃小型家電品などの使用済み製品(この明細書及び特許請求の範囲の書類中では、「被処理物」ともいう)から希少金属等を回収する方法として、現在は、手作業で解体して主要部品を回収するか、使用済み製品全体を粉砕機に投入し粉末状にする方法が考えられている。しかし、前者の場合、人件費が嵩むため経済的に成立し難い場合が多く、大規模な事業として成立させるのは難しい。後者の場合、プラスチックと金属を選別したり、鉄やアルミニウムなどを選別して回収することは可能である。また、銅を含むミックスメタルから、非鉄製錬により、銅や貴金属を回収することも可能である。しかし、非鉄製錬では貴金属と一部のレアメタルしか回収できないため、事前に粒子段階で多くのレアメタルを選別しておく必要があるが、被処理物全体を粉砕したあとで、非鉄製錬で回収できる貴金属や一部のレアメタルと、非鉄製錬では回収できない多くのレアメタルを粒子選別する技術は確立していない。
【0004】
また、上記レアメタルの使用例としては、希土類磁石として被処理物の内部に存在していることも少なくない。具体的には、パーソナルコンピュータに用いられているハードディスクドライブ内のボイスコイルモータやデジタルカメラのモータ、携帯電話のバイブレータ等に使用されている。このような希土類磁石を内包する製品を粉砕すると、粉砕機内に磁石が強固に磁着して、破砕機スクリーンの目詰まりを起すなど、トラブルの原因にもなる。
【0005】
そのため、現状では、小型家電品等の被処理物の全数からレアメタル等を大規模かつ経済的に回収することは難しく、ほとんど行われていない。
【0006】
なお、被処理物から金属類等を分離して回収しようとする先行技術として、例えば、圧縮機等の機械装置を構造部品毎に解体分離することができる装置がある。この装置では、解体前の段階において外部ケーシング内の内部構造をX線撮像装置などの内部可視化手段によって可視化し、可視化した状態において内部構造に対応して外部ケーシングの切断位置を決定し、その切断位置を切断して内部構造部品を解体分離するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、他の先行技術として、廃家電品から有価資源材の金属塊状物を分断するために、廃家電品の種類を光学センサを用いた識別装置で識別して切断位置を決定し、その切断位置となるように切断装置とストッパとの位置を制御し、ストッパに当接した廃家電品から金属塊状物を切断装置で切断して分離するようにしたものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
さらに、他の先行技術として、フェースプレートとリアプレートとを枠を介して鉛含有フリットガラスにより接合しているフラットパネルディスプレイを解体処理する方法として、センサによりその機種を識別し、その機種のデータベースに基づいて、フェースプレートを含む部分とリアプレートを含む部分をそれぞれ分離して取り出し、それぞれを液体中で処理するようにしたものもある(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
また、他の先行技術として、機械廃棄物を産業機械で簡単に解体するために、廃棄する機械部材の締結部材頭部を構成部材と異なる色により彩色し、画像カメラにより締結部材の頭部位置を認識し、その締結部材を産業機械で除去して機械部材を解体し、解体後に材料毎に選別するようにしたものもある(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−197870号公報
【特許文献2】特開平9−300127号公報
【特許文献3】特開2000−310955号公報
【特許文献4】特開2001−276793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術は、X線情報に基づいて可視化した内部構造によって決定した切断位置で切断して内部構造部品を解体分離するものであり、上記特許文献2,3に記載された技術は、光学センサ等のセンサ情報に基づいて被処理物の機種を識別して切断位置を決定するものであり、上記特許文献4に記載された技術は、予め彩色した締結部材を画像カメラで認識して産業機械で解体するものであり、被処理物の一部に存在するレアメタルの部分を識別して選択的に回収するものではなく、被処理物に含まれているレアメタルを効率良く回収してリサイクルすることはできない。
【0012】
また、例えば、レアメタルが希土類磁石の場合にもその部分を識別することはできず、被処理物から分離した希土類磁石を上述したように粉砕すると、回収が困難になるばかりか、希土類磁石などが装置の金属部分に磁着してトラブルの原因になる。
【0013】
そこで、本発明は、被処理物から機械的な手法で有価なレアメタル等の希少金属を効率良く回収して効率的なリサイクルができる希少金属回収処理方法及び回収処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の希少金属回収処理方法は、被処理物の一部に存在する希少金属部分を回収するための処理方法であって、搬入した被処理物の搬送位置情報を得た後、該被処理物内の希少金属部分を識別センサで識別し、該識別した希少金属部分を切断機の切断位置に位置させた後、該希少金属部分を切断機で切り取り、該切り取った希少金属部分と他の部分とを別々に搬出して処理するようにしている。これにより、搬入した被処理物の位置情報と、その被処理物内の希少金属部分を識別センサで識別した上で、その情報に基づいて希少金属部分を機械的な手法である切断機で選択的に切り取って有価な希少金属部分を被処理物から取り除いた後、その切り取った希少金属部分と他の部分とを別々に処理するので、希少金属部分は適した処理方法によって希少金属を効率良く回収することができ、他の部分は粉砕等を行って他の金属等を回収して、それぞれ別々に適した方法で回収するようにでき、希少金属を効率良くリサイクルすることができる。
【0015】
また、前記搬入する被処理物を予め被処理物の種類毎に選別し、該選別した種類毎の被処理物を所定間隔で連続して処理するようにしてもよい。このようにすれば、種類に応じて同様の位置に存在する希少金属部分を効率良く切り取って回収することができる。
【0016】
さらに、前記選別した種類毎の被処理物を更に類似形状毎に選別し、該類似形状毎に選別した被処理物を同一の向きで連続的に搬入するようにしてもよい。このようにすれば、ほぼ同一形状をしている被処理物を連続して処理するため、切り取り精度を高くすることができる。
【0017】
また、前記希少金属部分が希土類磁石を有しており、該希土類磁石部分を磁気センサで識別し、該希土類磁石部分を切断機で切り取った後、該切り取った希土類磁石部分に非磁性材料でコーティングをするようにしてもよい。このようにすれば、被処理物から切り取った希土類磁石部分が金属部分に磁着するのを防止して搬出することができる。
【0018】
さらに、前記被処理物がハードディスクドライブであり、該ハードディスクドライブを所定の方向で搬入し、該搬入したハードディスクドライブの希少金属部分を磁気センサと位置センサとを有する識別センサで識別するようにしてもよい。このようにすれば、希少金属部分を比較的特定しやすいハードディスクドライブから希少金属部分を効率良く回収することができる。
【0019】
一方、本発明の希少金属回収処理装置は、上記いずれかの希少金属回収処理方法を実現する希少金属回収処理装置であって、搬入した被処理物の搬送位置情報を得る位置センサと、該被処理物内の希少金属部分を識別するための識別センサと、該識別センサで識別した希少金属部分を切断機の切断位置に搬送する搬送部と、前記識別センサで識別した希少金属部分を切り取る切断機と、該切断機で切り取った希少金属部分と他の部分とを別々に処理するために搬出する搬出部とを備えている。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「切断機」は、所定範囲を打ち抜くポンチ等の切断刃を備えた機械をいう。これにより、搬入した被処理物の姿勢等の位置情報を位置センサで識別した後、その被処理物内の希少金属部分を予め識別センサ(例えば、磁気センサ、画像センサ、これらのセンサの組み合わせ等)で識別することにより、予め被処理物のどこに希少金属含有部分が存在するかを識別した上で、その希少金属含有部分を切断機の切断位置(例えば、打ち抜きポンチ、カッタ等による切断位置)に搬送して切断機で切り取り、その切り取った部分と、他の部分とを別々に処理するように搬出するので、希少金属部分の回収処理と、他の部分の回収処理とを効率良く行い、希少金属を効率的にリサイクルすることができる。
【0020】
また、前記切断機は、非磁性金属の切断刃を備えていてもよい。このようにすれば、希少金属含有部分が希土類磁石を含む部位であっても、切断刃に磁着することなく安定して切り取ることができる。
【0021】
さらに、前記搬入する被処理物を予め被処理物の種類毎に選別する手段を有し、該選別手段で選別した被処理物を所定間隔で連続的に搬入する搬入機を備えていてもよい。このようにすれば、種類に応じて同様の位置に存在する希少金属部分を効率良く切り取って回収することができる。
【0022】
また、前記選別した種類毎の被処理物を更に類似形状毎に選別する手段を有し、該類似形状毎に選別した被処理物を同一の向きに整列させて連続的に搬入する搬入機を備えていてもよい。このようにすれば、ほぼ同一形状をしている被処理物を連続して処理するため、切り取り精度を高くすることができる。
【0023】
さらに、前記被処理物がハードディスクドライブであり、該ハードディスクドライブを搬送する搬送手段と、該搬送するハードディスクドライブの希土類磁石部分を検知する磁気センサと、該磁気検知したハードディスクドライブの検知位置を切断機の位置に搬送する位置調節手段と、該切断機でハードディスクドライブの希土類磁石部分を切り取った後、該希土類磁石部分と他の部分とを別々に搬出する搬出部を備えていてもよい。このようにすれば、ほぼ同一外形のハードディスクドライブを連続的に搬入し、希少金属部分である希土類磁石部分を効率良く切り取った後、この希土類磁石部分と他の部分とを別々に搬出して後処理を行うようにでき、効率良く希土類磁石部分を回収することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、被処理物から機械的な手法で有価な希少金属部分を切り取り、その希少金属部分と他の部分とを別々に回収処理するので、被処理物全体を効率良くリサイクルすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る希少金属回収処理方法によって処理する被処理物の一例であるハードディスクドライブの希少金属部分位置パターンを示す平面図である。
【図2】図1に示すハードディスクドライブから希少金属を回収する処理手順の平面図である。
【図3】希少金属部分を検知する組み合わせを示す図面である。
【図4】(a) は、図2に示すハードディスクドライブの平面図、(b) は、同ハードディスクドライブの表面磁束密度分布を示す平面図である。
【図5】図2に示すハードディスクドライブの希少金属部分を示す平面図である。
【図6】図5に示す希少金属部分の希土類磁石を示す分解図である。
【図7】図2に示す処理手順後に希土類磁石を選別・回収する方法の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、被処理物として、パーソナルコンピュータ等に用いられている3.5インチハードディスクドライブ(以下、単に「HDD」という)を例に説明する。この3.5インチHDDは、規格により外形サイズが決まっており、内部には回転するディスクに書き込み/読み取りを行う磁気ヘッドを動かすアクチュエータ制御のボイスコイルモータ(希土類磁石部分;希少金属部分)が1箇所に設けられている。そして、このボイスコイルモータ内に、希少金属を含有する希土類磁石が設けられている。以下の説明では、図2に示す状態の左方を後方、右方を前方とし、紙面下方を手前側、紙面上方を奥側とする。
【0027】
図1(a) 〜(d) は、上記HDD10の長手方向を左右方向に向けた時の平面視において、内部の希土類磁石12が設けられた希土類磁石部分11(斜線部分)が位置するパターンを示している。HDD10の長手方向を左右方向に向けた状態では、前後逆向き、左右逆向きに配置される状態があるため、1箇所に設けられた希土類磁石部分11(希少金属部分)が図示するような四隅に位置する4パターンとなる(図示する斜線部分)。
【0028】
図2に示すように、この実施形態の希少金属回収処理装置20では、ステージ21上に搬入された上記HDD10が、このステージ21上を、この例では、図の左方から右方に搬送される。図では、HDD10の搬送過程における複数位置の状態を実線で示しており、各位置に(1)〜(4)を付している。
【0029】
HDD10の搬送は、ステージ21の基準位置(1)に搬入されたHDD10が、搬送部及び搬送手段であるHDD搬送スライドバー22によって後端を押されて、磁気センサ31,32と位置センサ33,34とを有する識別センサ30が設けられた検知位置(2)まで搬送される。この例の識別センサ30は、HDD10の希土類磁石12から漏洩する表面の微弱な磁気を検知する磁気センサ31,32と、この磁気センサ31,32が磁気を検知した時のHDD搬送スライドバー22の位置を検知する位置センサ33,34とを有しており、磁気センサ31,32によって検知する磁気がHDD10の左右位置のいずれであるかと、位置センサ33,34によって検知するHDD搬送スライドバー22の位置がいずれであるかと、の組み合わせから希土類磁石部分11の位置を識別するようにしている。
【0030】
図3は、これら磁気センサ31,32と位置センサ33,34とによる検知条件とHDD10の希土類磁石12の位置との組み合わせを示している。図示するように、上記組み合わせとしては、磁気センサ31が磁気を検知した時に位置センサ34がHDD搬送スライドバー22を検知すると希土類磁石12は(A)位置、磁気センサ32が磁気を検知した時に位置センサ34がHDD搬送スライドバー22を検知すると希土類磁石12は(B)位置、磁気センサ31が磁気を検知した時に位置センサ33がHDD搬送スライドバー22を検知すると希土類磁石12は(C)位置、磁気センサ32が磁気を検知した時に位置センサ33がHDD搬送スライドバー22を検知すると希土類磁石12は(D)位置、となるので、HDD10を磁気センサ31,32の上方を横切らせ、磁気センサ31,32で磁気を検出した前方又は後方、手前側又は奥側の2組の情報から、HDD10内の希土類磁石12の位置が起こり得る4パターンのいずれの位置であるかを識別するようにしている。
【0031】
上記磁気センサ31,32による磁気検知は、図4(a) に示すように、HDD10は平面視が矩形状に形成されており、(b) に示すように、このHDD10の表面をガウスメータでスキャンすると磁束密度分布が図示するようになることに基づいている。図示するように、この例では、四隅の1箇所のみで1mT〜3mTの磁気が検知され、図示する状態のHDD10では左下に希土類磁石12が格納されていることを非破壊で識別することができる。
【0032】
このように、HDD10の表面に漏洩する微弱な磁気の読取りと、その時のHDD10の搬送位置を検知することにより、HDD10の四隅のどこに希土類磁石12が存在するかを非破壊で識別するようにしている。
【0033】
なお、上記磁気センサ31,32としては、例えば、1mT〜5mT程度の検知が可能なホール素子型センサが用いられ、例えば、閾値を超える磁場が検知されたか否かだけを検出するようにしてもよい。この磁気センサ31,32の磁気感度としては、被処理物の形状や希土類磁石12の大きさ、配置関係等に応じて設定すればよい。
【0034】
そして、上記したように磁気センサ31,32と位置センサ33,34とによって希土類磁石部分11が検知されたHDD10は、切断機40による切取位置(3)の非磁性刃ポンチ41(切断刃)の真下の位置(4)に搬送され、希土類磁石部分11が切り取られた後、希土類磁石部分11とその他の部分とが別々に搬出されるようになっている。この詳細は、以下に説明する。
【0035】
以下、上記図2に基づいて、上記希少金属回収処理装置20によってHDD10の希土類磁石部分11を切り取って回収する処理を詳細に説明する。以下の説明では、希土類磁石部分を確認するための処理時間を最低限度の時間とし、効率良く希土類磁石部分を切り取って処理する方法を説明する。この例では、上記(D)位置に希土類磁石12がある場合を例に説明する。
【0036】
図2の基準位置(1)に搬入されたHDD10は、検知位置(2)を通過して図の右方の切取位置(3)(図中では、移動した状態のHDD10の一部を二点鎖線で示す)までHDD搬送スライドバー22によって搬送される。
【0037】
これらの位置の間で搬送されるHDD10は、両方の磁気センサ31,32の上方位置に達すると、上記希土類磁石12の磁気が磁気センサ31,32によって検知される。この磁気センサ31,32のいずれが希土類磁石12の磁気を検知したかで、HDD10の手前側又は奥側のいずれに希土類磁石12が存在するかが検知される。
【0038】
そして、その磁気を検知した時にHDD搬送スライドバー22が横切るのを位置センサ33,34のいずれが検知するかによって希土類磁石12の位置が、HDD10の前部か後部のいずれに位置するかが特定される。
【0039】
つまり、矩形状のHDD10を長手方向に送ることにより、磁気センサ31,32のいずれが磁気を検知したかと、その磁気を検知した時の位置センサ33,34の位置との組み合わせによって、上記図3に示すように、希土類磁石12がHDD10の前部又は後部のいずれかで、手前側又は奥側のいずれに存在するかを検知している。
【0040】
その後、HDD10が切取位置(3)に送られて、上記HDD搬送スライドバー22が位置センサーリセット35を通過すると、識別センサ30は次のHDD10の希土類磁石部分11の検知に備えて上記HDD10の希土類磁石部分検知位置情報がリセットされる。このHDD搬送スライドバー22は、後述するように、希土類磁石部分11が切り取られたHDD10の他の部分を搬出部であるボディ回収ポケット24に回収した後、上記基準位置(1)に戻って次のHDD10の希土類磁石12の位置検知に備えられる。
【0041】
一方、この例のHDD10は、希土類磁石部分11が(D)の位置であるため、上記切取位置(3)に送られた後、搬送部及び位置調節手段であるHDD破壊位置スライドバー23によって切断機40(図7)の非磁性刃ポンチ41(切断刃)の真下の位置(4)に希土類磁石部分11が位置するように奥側へ移動させられる。
【0042】
また、HDD搬送スライドバー22とHDD破壊位置スライドバー23とによるHDD10の移動は、上記識別された4パターンの位置に応じて、非磁性刃ポンチ41の真下に希土類磁石部分11が配置されるよう連係動作させられる。なお、HDD破壊位置スライドバー23は、HDD10を切取位置(4)に搬送した後、速やかに元の位置まで戻る(二点鎖線で示す位置)。
【0043】
なお、この実施形態では、HDD10の(D)位置に希土類磁石12が位置する例を示しているが、他の(A),(C)位置に希土類磁石12が位置する場合はHDD搬送スライドバー22によって切取位置(4)にHDD10が送られると、HDD破壊位置スライドバー23による移動を行うことなくHDD10の希土類磁石部分11が非磁性刃ポンチ41の真下に位置するようになっている。
【0044】
そして、切断機40の非磁性刃ポンチ41によって希土類磁石部分が切り取られる。この非磁性刃ポンチ41による希土類磁石部分の切り取りは、図示する紙面上方から下方に向けて打ち抜くことによって希土類磁石部分11の四辺が打ち抜かれて切り取られ、下方へ搬出される。このように、非磁性刃ポンチ41によってHDD10から切り取られた希土類磁石部分(ボイスコイルモータ部分)11は、落下穴(図示略)を通じて落下して回収される。
【0045】
この希土類磁石部分11が切り取られたHDD10の他の部分は、HDD搬送スライドバー22によってボディ回収ポケット24に回収され、上記希土類磁石部分とは別に希少金属回収処理装置20から搬出される。
【0046】
このようにして、HDD10(被処理物)から有価な希土類磁石部分11(希少金属部分)を切り取り、その希土類磁石部分11と他の部分とを別々に回収処理する方法が、希少金属回収処理装置20による希少金属回収方法である。
【0047】
一方、図5に示すように、上記HDD10の場合、ボイスコイルモータの部分に設けられた希土類磁石12は、図6に示すように、ヨーク15に希土類磁石12が密着した状態で取り付けられているため、図5に示すように、上記非磁性刃ポンチ41による希土類磁石部分の打ち抜きを、希土類磁石12を収めるヨーク15の取付け部分を切断するように非磁性刃ポンチ41の形状を定めてヨーク15の部分で打ち抜くことにより、このヨーク15と希土類磁石12との間の密着強度を弱めることができ、非磁性刃ポンチ41の押し込みによるヨーク15の変形も伴って、落下時の衝撃等でヨーク15と希土類磁石12とを剥離させることもできる。
【0048】
この場合、図7に示すように、上記非磁性刃ポンチ41によって打ち抜いた希土類磁石部分11の落下位置に、この希土類磁石部分11を一時的に受け止める衝撃板16を落下方向に対して、例えば、斜め45度の角度をつけて設置し、これを鋼板などで構成することで、落下する希土類磁石部分11の希土類磁石12をこの衝撃板16に磁着させ、ヨーク15のみを磁着させずに衝撃板16の斜面に沿った法線方向にバウンドさせてさらに下方へ落下させることができる。
【0049】
このような衝撃板16を設けることにより、切り取られた希土類磁石部分11(ボイスコイルモータ部分)から、さらに希土類磁石12だけを選択的に効率良く回収することが可能となる。
【0050】
ところで、上記実施形態では、HDD10を例に説明したが、上記した希少金属回収処理方法、及び装置は、DVDドライブなど、機種や製造年を問わず、規格上、ほぼ同じ形状・構造を有する製品に対して一番有効である。また、特に規格がない場合でも、ほぼ類似の構造を有する携帯電話などについても、適用可能である。例えば、携帯電話の場合でも、上記希少金属回収処理装置20と同様に磁気センサ31,32を設置すれば、内部のバイブレータやスピーカを検知して、これらのサイズに合わせた切断刃41(ポンチ)により切断し、その希少金属部分を効率良く回収することが可能である。
【0051】
また、プリント実装基板を対象とした場合、各素子ごとの色や形、大きさの情報(例えば、タンタルコンデンサは、黄色か黒色、長方形、2mm〜7mm等の複数の情報)をあらかじめ制御器(図示略)に入力しておけば、これに該当する素子だけを画像センサ(識別センサ)により検知し、例えば、切断機40に可動アームに取り付けられた複数の小型ポンチ(切断刃)を設け、この小型ポンチで上記素子を抜き取ることも可能である。
【0052】
以上のように、上記希少金属回収処理装置20によれば、希少金属を回収処理するリサイクル処理工程において、HDD10(被処理物)から予め希土類磁石部分(希少金属部分)11を取り除くことができ、後工程においてスクリーンによる篩い分けを行ったとしても、スクリーン目詰まりを回避することができる。また、希土類磁石12などのレアメタル等含有部分のみを効率的に回収して集めることができるので、そのまま、又は更に選別工程を経ることにより、レアメタル含有部品の非常に効率の良い回収とともに市場流通性を高めることが可能となる。
【0053】
また、機械的な手法で有価なレアメタル含有部分が予め切り取られたHDD10(被処理物)は、その後、粉砕されてその他の金属等を回収するようにすればよく、その他の金属の回収も効率良く行うことができる。
【0054】
なお、上記実施形態では、被処理物としてハードディスクドライブを例に説明したが、上記したように製品間に形状や構造の違いの少ないDVDドライブや携帯電話、デジタルカメラ等においても同様に希少金属部分を効率良く回収することができ、被処理物は上記構成に限定されるものではない。
【0055】
また、筐体に格納されていない実装プリント基板等、画像センサ等で希少金属部分を識別することができる被処理物においても、上記識別センサ30を変更することで同様に希少金属部分を回収することができ、種々の被処理物に応用することができる。
【0056】
さらに、上述した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る回収処理方法は、小型家電製品等に使用されている有価なレアメタルを効率良く回収したい回収処理装置に利用できる。
【符号の説明】
【0058】
10 HDD(被処理物)
11 希土類磁石部分
12 希土類磁石
15 ヨーク
16 衝撃板
20 希少金属回収処理装置
21 ステージ
22 HDD搬送スライドバー(搬送部・搬送手段)
23 HDD破壊位置スライドバー(搬送部・位置調節手段)
24 ボディ回収ポケット(搬出部)
30 識別センサ
31,32 磁気センサ
33,34 位置センサ
35 位置センサーリセット
40 切断機
41 非磁性刃ポンチ(切断刃)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物の一部に存在する希少金属部分を回収するための処理方法であって、
搬入した被処理物の搬送位置情報を得た後、
該被処理物内の希少金属部分を識別センサで識別し、
該識別した希少金属部分を切断機の切断位置に位置させた後、
該希少金属部分を切断機で切り取り、
該切り取った希少金属部分と他の部分とを別々に搬出して処理するようにしたことを特徴とする希少金属回収処理方法。
【請求項2】
前記搬入する被処理物を予め被処理物の種類毎に選別し、
該選別した種類毎の被処理物を所定間隔で連続して処理するようにした請求項1に記載の希少金属回収処理方法。
【請求項3】
前記選別した種類毎の被処理物を更に類似形状毎に選別し、
該類似形状毎に選別した被処理物を同一の向きで連続的に搬入するようにした請求項2に記載の希少金属回収処理方法。
【請求項4】
前記希少金属部分が希土類磁石を有しており、
該希土類磁石部分を磁気センサで識別し、該希土類磁石部分を切断機で切り取った後、
該切り取った希土類磁石部分に非磁性材料でコーティングをするようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載の希少金属回収処理方法。
【請求項5】
前記被処理物がハードディスクドライブであり、該ハードディスクドライブを所定の方向で搬入し、該搬入したハードディスクドライブの希少金属部分を磁気センサと位置センサとを有する識別センサで識別するようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の希少金属回収処理方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の希少金属回収処理方法を実現する希少金属回収処理装置であって、
搬入した被処理物の搬送位置情報を得る位置センサと、
該被処理物内の希少金属部分を識別するための識別センサと、
該識別センサで識別した希少金属部分を切断機の切断位置に搬送する搬送部と、
前記識別センサで識別した希少金属部分を切り取る切断機と、
該切断機で切り取った希少金属部分と他の部分とを別々に処理するために搬出する搬出部とを備えていることを特徴とする希少金属回収処理装置。
【請求項7】
前記切断機は、非磁性金属の切断刃を備えている請求項6に記載の希少金属回収処理装置。
【請求項8】
前記搬入する被処理物を予め被処理物の種類毎に選別する選別手段を有し、
該選別手段で選別した被処理物を所定間隔で連続的に搬入する搬入機を備えている請求項6又は7に記載の希少金属回収処理装置。
【請求項9】
前記選別した種類毎の被処理物を更に類似形状毎に選別する選別手段を有し、
該類似形状毎に選別した被処理物を同一の向き整列させて連続的に搬入する搬入機を備えている請求項8に記載の希少金属回収処理装置。
【請求項10】
前記被処理物がハードディスクドライブであり、
該ハードディスクドライブを搬送する搬送手段と、
該搬送するハードディスクドライブの希土類磁石部分を検知する磁気センサと、
該磁気検知したハードディスクドライブの検知位置を切断機の位置に搬送する位置調節手段と、
該切断機でハードディスクドライブの希土類磁石部分を切り取った後、該希土類磁石部分と他の部分とを別々に搬出する搬出部を備えている請求項6〜9のいずれか1項に記載の希少金属回収処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−41575(P2012−41575A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181549(P2010−181549)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(594046938)近畿工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】