説明

希釈装置

【課題】 アスピレータ式の希釈手段を備え、希釈液のみの吐出と混合液の吐出とを切換可能な希釈装置において、切換忘れなどにより誤って混合液が吐出されてしまうことを防止できるようにする。
【解決手段】 希釈液の動圧降下に伴って生じる負圧を利用して薬液を吸引し所定倍率に希釈された混合液を得るアスピレータ部18と、少なくとも希釈液のみの吐出と混合液の吐出とを切り換える吐出切換機構17とを備えた希釈装置1において、前記吐出切換機構が混合液の吐出側に切り換えられている場合において、混合液の吐出の許可と禁止とを切り換える安全弁機構30が更に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所謂アスピレータ式の希釈手段を備えた希釈装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬液を所定の希釈液で薄めて所定希釈倍率の混合液を得る希釈装置として、例えば水道水等の希釈液の動圧降下に伴って生じる負圧を利用して薬液を吸引することにより、所定希釈倍率に薄めた混合液を得るようにした、所謂、アスピレータ式のものは、一般に良く知られている。
【0003】
かかるアスピレータ式の希釈装置において、希釈液のみの吐出と混合液の吐出とを切り換える切換手段を備えたものは従来公知である(例えば特許文献1参照)。尚、この特許文献1に開示された希釈装置は、水道の蛇口へ直接に取り付けて使用するタイプのものである。
【特許文献1】特許第3149166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のように、切換手段の切換操作により希釈液のみの吐出と混合液の吐出とを切り換えることができるようにした希釈装置では、希釈液のみの吐出を行わせるつもりが、切換操作の失念(切換忘れ)などにより誤って混合液を吐出させてしまう場合があるという問題があった。特に、希釈液が水道水で薬液も無色透明の場合には、吐出されているのが水道水であるのか混合液であるのかを一見して判断することができないので、気が付かないままで誤った吐出が長時間継続されることになる。
【0005】
そこで、この発明は、希釈液のみの吐出と混合液の吐出とを切換可能な希釈装置において、切換忘れなどにより誤って混合液が吐出されてしまうことを防止できるようにすることを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本願請求項1の発明(以下、第1の発明という)は、希釈液の動圧降下に伴って生じる負圧を利用して薬液を吸引し所定倍率に希釈された混合液を得る希釈手段と、少なくとも希釈液のみの吐出と混合液の吐出とを切り換える切換手段とを備えた希釈装置において、前記切換手段が混合液の吐出側に切り換えられている場合において、混合液の吐出の許可と禁止とを切り換える安全手段が更に設けられていることを特徴としたものである。
【0007】
また、本願の請求項2に係る発明(以下、第2の発明という)は、前記第1の発明において、前記安全手段を混合液の吐出許可状態に保持する保持手段を備えていることを特徴としたものである。
【0008】
更に、本願の請求項3に係る発明(以下、第3の発明という)は、前記第1又は第2の発明において、前記保持手段は、前記安全手段が前記吐出許可状態に保持されていることを表示する表示手段を備えていることを特徴としたものである。
【0009】
また更に、本願の請求項4に係る発明(以下、第4の発明という)は、前記第1から第3の発明の何れか一において、前記希釈液の供給管の蛇口部への直接取付用の蛇口取付部を備えていることを特徴としたものである。
【0010】
また更に、本願の請求項5に係る発明(以下、第5の発明という)は、前記第1から第4の発明の何れか一において、壁面への取付用の壁面取付板を備えていることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本願の第1の発明によれば、切換手段が混合液の吐出側に切り換えられている場合であっても、更に安全手段が混合液の吐出許可側に切り換えられなければ、混合液が吐出されることはない。従って、切換手段の切換忘れがあった場合でも、希釈液のみを吐出させるつもりが誤って混合液が吐出されてしまうことを確実に防止することができる。
【0012】
また、本願の第2の発明によれば、基本的には前記第1の発明と同様の作用効果を奏することができる。特に、混合液を継続して吐出させる場合には、保持手段によって安全手段を混合液の吐出許可状態に保持することができるので、使用者が安全手段を混合液の吐出許可側に操作し続ける必要はなく、利便性が向上する。
【0013】
更に、本願の第3の発明によれば、基本的には前記第1又は第2の発明と同様の作用効果を奏することができる。特に、安全手段が吐出許可状態に保持されている場合には、このことを表示手段によって知ることができ、いま現在吐出されている液が混合液であることを容易かつ確実に知ることができる。
【0014】
また更に、本願の第4の発明によれば、特に、希釈液の供給管の蛇口部へ直接に取り付けて使用するタイプの希釈装置について、基本的には前記第1から第3の発明の何れか一と同様の作用効果を奏することができる。
【0015】
また更に、本願の第5の発明によれば、基本的には前記第1から第4の発明の何れか一と同様の作用効果を奏することができる。特に、壁面取付板を用いて希釈装置を壁面へ取り付けて使用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、水道蛇口から供給される水道水を希釈液に用い、別設のタンクに貯えられた洗浄液を薬液として用いるようにした希釈装置を例にとって、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1−6は本実施形態に係る希釈装置(以下、適宜、単に「装置」と略称する)の外形形状を概略的に示す図で、図1は全体斜視図、図2は正面図、図3及び図4は左右の側面図、図5は背面図、図6は平面図である。また、図7−9は前記希釈装置の断面構造を示す図で、図7は図6におけるY7−Y7線に沿った断面説明図、図8は図6におけるY8−Y8線に沿った断面説明図、図9は図6におけるY9−Y9線に沿った断面説明図である。
尚、これらの図は何れも、後述する安全キャップを装着した状態の希釈装置を示したものである。
【0017】
これらの図に示すように、本実施形態に係る希釈装置1は、装置本体2の外側の大部分をカバー体3で覆って構成され、これら装置本体2及びカバー体3は、例えば合成樹脂を用いて製作されている。前記カバー体3は、好ましくは、複数に分割された分割構造のもので、水道水や洗浄液を装置本体2内に取り入れるための取り合い部分や混合液を装置本体2の外部に排出するための取り合い部分、或いは後述するメータ類の表示部分などの所要部分を除外して、装置本体2の外側の大部分を覆っている。
【0018】
前記装置本体2の上部には、水道水を流入させる給水孔11hを有する水道水供給部11が形成される一方、装置本体2の下部には、水道水のみ又は水道水と薬液との希釈混合液を吐出する吐出孔12hを有する吐出部12が形成されている。また、装置本体2の例えば左側部には、薬液を流入させる給液孔13hを有する薬液取り入れ部13が設けられている。更に、装置本体2の例えば右側部には、吐出部12からの吐出について、後述するように少なくとも水道水のみの吐出と希釈混合液の吐出とを切り換える切換手段としての吐出切換レバー5が備えられている。尚、本実施形態では、この吐出切換レバー5を操作することで、吐出部12から何れの液体をも吐出しない閉止状態とすることもできる。
【0019】
前記希釈装置1は、図10及び図11に示すように、希釈液としての水道水の供給管101の蛇口部102(つまり水道蛇口部)に直接に取り付けて使用することができるタイプのもので、前記水道水供給部11には、水道蛇口部102に対して装置1を(つまり装置本体2を)直接に取り付けて固定するための固定ナット103が備えられている。この固定ナット103は、装置本体2の水道水供給部11に設けた雄ネジ部11nに螺着し締結固定されるものである。
【0020】
また、装置1の背面側(つまり装置本体2の背面側)には、壁面への取付用の壁面取付板4が一体的に設けられており、図11に示されるように、例えば水道水供給管101の近傍に位置する壁面に壁面取付板4を取り付けて装置1を壁面に固定することで、水道水供給管101に対する重量的負担を軽減することができる。
【0021】
尚、前記壁面取付板4を介して装置1を壁面に固定しておき、装置1を水道蛇口部102に直接に取り付けることなく、装置本体2の水道水供給部11に対し水道蛇口からホース等を介して水道水を供給し、薬液の希釈を行うようにすることもできる。この場合には、水道水供給管101に対する重量的負担を無くすることができる。
【0022】
このように、蛇口取付部(水道水供給部11の雄ネジ部11nと固定ナット103)と壁面取付板4の両方を備えていることにより、使用状況や使用箇所のレイアウトに応じ、装置1の配置について、水道蛇口部102への直結配置と壁面への取付配置の何れか、或いは両方を選ぶことができる。従って、装置1のレイアウト性が高く、利便性が大いに向上する。
【0023】
また、装置本体2の例えば左側部に設けられた前記薬液取り入れ部13は、所定の薬液(洗浄液)を貯えた薬液タンク105からの薬液配管106を繋ぐための継ぎ手を構成している。尚、薬液タンク105にも、壁面への固定用の壁面取付板106が付設されている。更に、図11に示されるように、希釈装置1の吐出部12に所定長さの吐出管109を繋ぐようにしても良い。
【0024】
次に、希釈装置1の構造の詳細について説明する。
図7及び図9に示されるように、前記水道水供給部11には、下流側(各図における下側)への水道水の流入を許容し上流側への逆流を阻止するスプリング式の逆止弁機構15が組み込まれ、その下流側には通過流量を一定に維持するための定流量弁機構16が組み込まれている。この定流量弁機構16の下流側には、前記吐出切換レバー5により切換操作される吐出切換機構17が配設され、その更に下流側に、希釈混合液を得るための希釈手段としてのアスピレータ部18が設けられている。このアスピレータ部18の下流側が、動圧調整プレート19を介して、吐出部12に連通している。
【0025】
前記逆止弁機構15及び定流量弁機構16は共に、従来公知のものと同様の構成を備え同様の作用をなすものである。
前記吐出切換機構17は、後で詳しく説明するように、吐出切換レバー5の切換操作により、吐出部12からの吐出について、水道水のみの吐出状態と、希釈混合液の吐出状態と、何れの液体をも吐出しない閉止状態の3つの状態に選択的に切り換えるものである。
【0026】
図7から図9に示された状態は、希釈混合液の吐出状態に対応したものであり、この状態では、水道水供給部11に供給された水道水は、一点鎖線矢印で示すように、逆止弁機構15,定流量弁機構16,吐出切換機構17を順次通過してアスピレータ部18に至る。そして、後述する安全弁機構30が薬液をアスピレータ部18へ供給し得る状態に維持されている場合には、水道水は、このアスピレータ部で、吸引された薬液(破線矢印参照)と混合され、希釈混合液(二点鎖線矢印参照)として吐出部12から吐出される。
【0027】
前記アスピレータ部18は、希釈液(水道水)の動圧降下に伴って生じる負圧を利用して薬液(洗浄液)を吸引し所定倍率に希釈された混合液を得るもので、アスピレータ出口穴18hのサイズ及び動圧調整プレート19の頂部との間隔等に応じて、動圧降下特性が異なり、従って、負圧特性および薬液吸引特性が異なることになる。
【0028】
図7に示されるように、アスピレータ部18の側方(図7における左側方)には、水量メータ61が配置されている。後述するように、水道水のみを吐出させる場合には、この水量メータ61が吐出切換機構17の下流側となるように、水道水の流路が切り換えられる。
前記水量メータ61は、バネ特性を有するスプリング63で上流側に付勢された例えば樹脂製のセンサ体62を流路内に配置して構成され、流路内に水道水が流入する際には、スプリング63の付勢力に抗してセンサ体62が下方へ移動させられる。このとき、水道水の流量に応じてセンサ体62の上下方向位置が変化することにより、当該流路を通過する水量を計測するものである。図12から良く分かるように、水量メータ61の側壁部は、例えばプラスチック製の透明部材で形成され、その透明な側壁部に付された目盛を読み取ることで、目視により水道水の供給流量を知ることができるように、水量メータ61の側壁部に対応する部分については、カバー体3が切り欠かれて開口が形成されている。
【0029】
一方、図8及び図9に示されるように、薬液取り入れ部13の下流側には、調節ダイヤル22の回動操作により取り入れる薬液量を調節し得る流量調節弁機構21が設けられ、その下流側にはフリーの状態(自由な状態)で浮動するセンサ体24(センサボール)の上下方向位置により薬液量を計測する薬液量メータ23が配置されている。この薬液量メータ23の下流側には、薬液の流れ方向をU字状に変換するU字形継ぎ手25が組み込まれ、更にその下流側には、下流側への薬液の流入を許容し上流側への逆流を阻止するスプリング式の逆止弁機構26が配設されている。この逆止弁機構26の下流側には後述する安全弁機構30が設けられ、この安全弁機構30の下流側が前記アスピレータ部18に連通している。
【0030】
前記流量調節弁機構21は、図8から良く分かるように、一端側(下端側)が調節ダイヤル22に結合された筒状の弁体21aを有し、この筒状弁体21aには複数の上下方向のスリット21bが形成されている。そして、調節ダイヤル22を回してスリット21bの薬液取り入れ部13からの流路に対する位置を調節することにより、通過する薬液量を調節することができる。尚、かかる調節弁機構としては、例えばプラグ型やニードル型の弁体を有するものなど、通過する流量を調節し得るものであれば、他の種々の公知の形式のものを適用することができる。
【0031】
また、前記薬液量メータ23は、図8から良く分かるように、例えば樹脂製の所定体積および重量のセンサボール24をフリーな状態で流路内に配置して構成され、流路を通過する薬液の流量に応じて浮動するセンサボール24の上下方向位置が変化することにより、当該流路を通過する薬液量を計測するものである。図12から良く分かるように、薬液量メータ23の側壁部は、例えばプラスチック製の透明部材で形成され、その透明な側壁部に付された目盛を読み取ることで、目視により薬液流量を知ることができるように、薬液量メータ23の側壁部に対応する部分については、前記カバー体3が切り欠かれて開口が形成されている。
この薬液量メータ23での測定値と前記水量メータ61の測定値により、希釈混合液の希釈倍率を算出することができる。そして、薬液流量および/または水道水の流量を調整することで、所望の希釈倍率の希釈混合液を得ることができる。
【0032】
前記逆止弁機構26は、図8及び図9に示されるように、基本的には、従来公知のものと同様の構成を備え同様の作用をなすものであるが、開弁時には、弁軸26aの外周部と当該弁軸26aの上下方向のスライド動作を案内するガイド筒部26bの内周部との間隙を通って、薬液が下流側の安全弁機構30に向かって通過するように構成されている。
【0033】
前記安全弁機構30は、図9に示されるように、実質的に水平方向に延びる円柱状の弁軸31と、該弁軸31の外側端部に一体的に結合された操作ボタン32と、弁軸31の水平方向のスライド動作を案内するガイド筒部33と、前記操作ボタン32を外方(図9における左方)へ付勢するスプリング34とを備えている。また、前記弁軸31の先端部(右端部)の近傍には、シール部材35(所謂”O−リング”)が装着されている。
【0034】
図9は、操作ボタン32がスプリング34の付勢力に抗して右方へ押し操作された状態を示している。この状態では、弁軸31も右方へスライドさせられて押し操作位置にあり、弁軸31の先端部近傍のシール部材35はガイド筒部33よりも右方に位置している。従って、前記逆止弁機構26を通過した薬液は、弁軸31の外周部とガイド筒部33の内周部との間隙を通って、アスピレータ部18に向かって流れることができる。
【0035】
しかし、操作ボタン32が押し操作されていない初期状態においては、操作ボタン32及び弁軸31は、スプリング34の付勢力により、図9に示した状態よりも所定量だけ左方(外方)に位置させられることになる。この初期状態では、弁軸31の先端部近傍の前記シール部材35がガイド筒部33内に位置し、弁軸31の外周部とガイド筒部33の内周部との間を液密に封止する。従って、この初期状態では、前記逆止弁機構26を通過した薬液が、アスピレータ部18に向かって流れることはない。つまり、操作ボタン32が押し操作されていない初期状態では、薬液の安全弁機構30の通過が阻止される。
【0036】
前記安全弁機構30には、操作ボタン32の押し操作状態を保持する保持手段として、操作ボタン32の外側(左側)に被せる安全キャップ37が付設されており、この安全キャップ37の内周部には複数(例えば2つ)の爪部37kが形成されている。
図13は、かかる安全キャップ37が取り付けられていない状態での安全弁機構30を示しているが、該安全弁機構30には、前記安全キャップ37を取り付けるために、カバー体3と一体的に形成されたキャップ取付部38が設けられている。該キャップ取付部38には、安全キャップ37の爪部37kを挿入させる複数(例えば2つ)の切欠部38mが形成されている。そして、前記爪部37kが切欠部38mから挿入するように、安全キャップ37をキャップ取付部38に組み合わせた上で、安全キャップ37を回動させることにより、図9に示すように、各爪部37kがキャップ取付部38の爪係止部38kにそれぞれ係止される。これにより、操作ボタン32が押し操作状態に保持され、薬液のアスピレータ部18への供給状態を保持することができる。
【0037】
尚、安全キャップ37の外周部にはチェーン繋留部37jが設けられる一方、カバー体3にも同様のチェーン繋留部3jが形成されており、両者37j,3jを互いにチェーン等の紐状体で繋ぐことにより、安全キャップ37の不使用時には、当該安全キャップ37をカバー体3に繋いでおくことができ、利便性をより高めることができる。
【0038】
このような安全キャップ37を備えたことにより、希釈混合液を継続して吐出させる場合には、安全キャップ37によって、安全弁機構30を薬液のアスピレータ部18への供給を許可する状態に保持することができる。従って、オペレータが安全弁機構30の操作ボタン32を押し操作し続ける必要はなく、利便性が向上する。
【0039】
前記安全キャップ37の外面には、図1,図2等に示されるように、危険の「危」の文字が表示されている。これにより、薬液のアスピレータ部18への供給状態が保持されていることを知ることができ、従って、いま現在吐出部12から吐出されている液が希釈混合液であることを容易かつ確実に知ることができる。
尚、安全キャップ37の表示手段としては、前記のような文字(「危」)によるもの以外にも、例えば点滅等を行うランプなど、より目立って報知機能の高いものを用いるようにすることもできる。
【0040】
次に、前記吐出切換機構17の構造の詳細および作用について説明する。
図14〜図16は何れも希釈装置の全体斜視図で、図14は希釈混合液の吐出状態を、図15は吐出停止状態を、図16は水道水のみの吐出状態を、それぞれ示している。また、図17〜図19は何れも図7に対応した希釈装置の拡大断面説明図で、図17は希釈混合液の吐出状態を、図18は吐出停止状態を、図19は水道水のみの吐出状態を、それぞれ示している。
【0041】
前記吐出切換機構17は、前述のように、吐出切換レバー5の切換操作により、吐出部12からの吐出について、水道水のみの吐出状態と、希釈混合液の吐出状態と、何れの液体をも吐出しない閉止状態の3つの状態に選択的に切り換えるものであり、図17〜図19に示されるように、吐出切換レバー5の基端部に結合されて吐出切換レバー5と共に回動する回動シャフト41と、該回動シャフト41と係合し回動シャフトの回動動作によって実質的に水平方向に摺動する摺動シリンダ42と、装置本体2内に固定され前記摺動シリンダ42の摺動動作を案内する案内シリンダ43とを備えている。
【0042】
前記回動シャフト41は、その基端側(図における右端側)が、例えば2個のアダプタ45,46を介しネジ部材47を用いて吐出切換レバー5の基端部に結合されている。
図20〜図25は前記回動シャフト41を説明する図で、図20は全体斜視図、図21は平面説明図、図22は正面説明図、図23は左側面図、図24は図23のY24−Y24線に沿った断面説明図、また、図25は図23のY25−Y25線に沿った断面説明図である。
【0043】
これらの図に示すように、回動シャフト41は、長手方向の略中央部に鍔部41aを有し、該鍔部41aの外側(右側)部分41Rは、前記ネジ部材47を螺着させる雌ネジ部41bを有する円柱状に形成されている。一方、前記鍔部41aの左側部分41Lは円筒状に形成され、その先端部近傍の外周部には、上下方向に突出する一対の突起41cが設けられている。後述するように、この突起41cによって、回動シャフト41が前記摺動シリンダ42と係合している。
【0044】
前記摺動シリンダ42は、回動シャフト41の回動動作に連動して実質的に水平方向にスライドし、このスライド動作により装置1内の流路の切換を行うものである。
図26〜図31は前記摺動シリンダ42を説明する図で、図26は全体斜視図、図27は平面説明図、図28は正面説明図、図29は図27のY29−Y29線に沿った断面説明図、図30は図28のY30−Y30線に沿った断面説明図、また、図31は図29のY31−Y31線に沿った断面説明図である。
【0045】
これらの図に示すように、摺動シリンダ42は、長手方向の略中央部に隔壁部42aを有し、該隔壁部42aには、水道水を流通させる上下方向の水流路42bが形成されている。この水流路42bは、その横断面の周縁形状が円形である。
前記隔壁部42aの右側部分42Rは、内周部に2本の螺旋溝42cが設けられた円筒状に形成されている。摺動シリンダ42の右側部分42Rの内周部は、回動シャフト41の左側部分41Lの外周部に対して摺動自在に嵌合するように設定されており、前記螺旋溝42cに回動シャフト41の左側部分41L先端の突起41cを係合させた状態で、両者を互いに嵌合させることができるように構成されている。また、この右側部分42Rの先端部近傍の外周部には、上下方向に突出する一対の突起42d,42eが設けられている。
隔壁部42aの左側部分42Lは、所定長さ及び幅の開口部42fが上部に設けられた円筒状に形成されている。
【0046】
前記案内シリンダ43は、装置本体2内に固定され前記摺動シリンダ42の外周側に位置して、摺動シリンダ42の水平方向における摺動動作を案内するものである。
図32〜図39は前記案内シリンダ43を説明する図で、図32及び図33はそれぞれ異なる方向からの全体斜視図、図34は正面説明図、図35は底面説明図、図36は左側面図、図37は右側面図、図38は図36のY38−Y38線に沿った断面説明図、図39は図36のY39−Y39線に沿った断面説明図である。
【0047】
これらの図に示すように、案内シリンダ43は全体として略円筒状に形成され、その内周部に前記摺動シリンダ42の外周部が摺動自在に挿入される。また、案内シリンダ43の長手方向における所定部位には、水道水を流通させる上下一対の開口部43a,43bが設けられている。この案内シリンダ43を装置本体2内に組み込んだ状態では、図17〜図19に示されるように、案内シリンダ43の上流側に上側アダプタ51が位置し、下流側には下側アダプタ52が位置している。そして、案内シリンダ43の上側開口部43aが上側アダプタ51の流路51fと連通し、下側開口部43bが下側アダプタ52の流路52fと連通するように設定されている。
【0048】
また、図17に示されるように、希釈混合液の吐出状態においては、摺動シリンダ42の水流路42bが案内シリンダ43の上側開口部43a及び下側開口部43bと連通し、吐出停止状態においては、図18に示されるように、摺動シリンダ42の水流路42bと案内シリンダ43の上側開口部43a及び下側開口部43bとの連通が遮断される。更に、水道水のみの吐出状態においては、図19に示されるように、摺動シリンダ42の水流路42bと案内シリンダ43の上側開口部43a及び下側開口部43bとの連通は遮断されるが、案内シリンダ43の上側開口部43aが摺動シリンダ42の開口部42fと連通し、上側アダプタ51の流路51fからの水道水は、水量メータ61に向かって流れるようになっている。以上のような吐出切換機構17内の流路の連通/遮断の切換については、後で詳しく説明する。
【0049】
前記案内シリンダ43の右端側の内周部には、摺動シリンダ42の上下の突起42d,42eと係合し、これらを水平方向に案内する上下一対のガイド溝43d,43eが形成されており、摺動シリンダ42の周方向への回動動作を規制するようになっている。これにより、摺動シリンダ42が水平方向にスライド動作する際に、摺動シリンダ42が周方向に回動して水流路42b及び開口部42fの周方向位置が変化することが、確実に防止される。
【0050】
以上の構成において、希釈混合液を吐出させる場合には、図14及び図17に示されるように、吐出切換レバー5を先端側が上方を指向する方位に位置させる。このとき、摺動シリンダ42の水流路42bが案内シリンダ43の上側開口部43a及び下側開口部43bと連通している。従って、水道水供給部11に供給された水道水は、一点鎖線矢印で示すように、逆止弁機構15,定流量弁機構16,吐出切換機構17を順次通過してアスピレータ部18に至る。
【0051】
このとき、前記安全弁機構30の操作ボタン32が押し操作されており、薬液のアスピレータ部18への供給を許可する状態に維持されている場合には、水道水は、このアスピレータ部で、吸引された薬液(破線矢印参照)と混合され、希釈混合液(二点鎖線矢印参照)として吐出部12から吐出される。
しかし、前記操作ボタン32が押し操作されておらず、薬液のアスピレータ部18への供給が禁止されている場合には、薬液がこのアスピレータ部で吸引されることはなく、従って、水道水のみが吐出部12から吐出されることになる。
【0052】
このように、本実施形態によれば、吐出切換レバー5が希釈混合液を吐出させる位置に切り換えられている場合において、薬液のアスピレータ部18への供給の許可と禁止とを切り換える安全弁機構30が更に設けられているので、前記吐出切換レバー5が希釈混合液を吐出させる位置に切り換えられている場合であっても、更に安全弁機構30の操作ボタン32が薬液のアスピレータ部18への供給を許可する押し操作状態に切り換えられなければ、吐出部12から希釈混合液が吐出されることはない。従って、吐出切換レバー5の切換忘れがあった場合でも、水道水のみを吐出させるつもりが誤って希釈混合液が吐出されてしまうといった不具合が生じることを確実に防止することができる。
【0053】
次に、水道水および希釈混合液の両方について、吐出部12からの吐出を停止する場合には、図15及び図18に示されるように、吐出切換レバー5を90度回動させて水平方向に切り換える。このとき、吐出切換レバー5の回動動作に伴って回動シャフト41が回動し、従って、その先端の突起41cも回動する。この突起41cは摺動シリンダ42の螺旋溝42cと係合しているので、この係合が維持された状態で、摺動シリンダ42は、図18における右方にスライドする。尚、このとき、摺動シリンダ42の突起42d,42eが案内シリンダ43のガイド溝43d,43eと係合しているので、摺動シリンダ42は周方向へ回動動作することはなく、水平方向へスライド動作する。
【0054】
この結果、摺動シリンダ42は、摺動シリンダ42の水流路42bと案内シリンダ43の上側開口部43a及び下側開口部43bとの連通が遮断される位置までスライドし、水道水供給部11に供給された水道水は、吐出切換機構17で下流側への連通が遮断され、吐出部12から吐出されることはない。
また、薬液についても、安全弁機構30の前記操作ボタン32が押し操作されない限り、アスピレータ部18へ供給されることはなく、従って、吐出部12から吐出されることはない。
【0055】
水道水のみを吐出させる場合には、図16及び図19に示されるように、吐出切換レバー5を更に90度回動させて、吐出切換レバー5を先端側が下方を指向する方位に位置させる。この吐出切換レバー5の回動動作に伴って、摺動シリンダ42が図18の位置から更に右方にスライドする。これにより、図19に示されるように、摺動シリンダ42の水流路42bと案内シリンダ43の上側開口部43a及び下側開口部43bとの連通は遮断されるが、案内シリンダ43の上側開口部43aが摺動シリンダ42の開口部42fと連通するようになる。そして、上側アダプタ51の流路51fからの水道水は、水量メータ61に向かって流れ、この水量メータ61を経て吐出部12から吐出されるようになっている。
【0056】
以上、説明したように、本実施形態に係る希釈装置1によれば、吐出切換レバー5の切換操作により、ワンタッチで、吐出部12からの吐出について、水道水のみの吐出状態と、希釈混合液の吐出状態と、何れの液体をも吐出しない吐出停止状態の3つの状態に選択的に切り換えることができる。
しかも、前記吐出切換レバー5が希釈混合液を吐出させる位置に切り換えられている場合であっても、更に安全弁機構30の操作ボタン32を押し操作しなければ、吐出部12から希釈混合液が吐出されることはなく、吐出切換レバー5の切換忘れがあった場合でも、水道水のみを吐出させるつもりが誤って希釈混合液が吐出されてしまうといった不具合が生じることを確実に防止することができるのである。
【0057】
尚、本発明は、前記実施態様に限定されるものではなく、また、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良あるいは設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、所謂アスピレータ式の希釈手段を備え、希釈液のみの吐出と混合液の吐出とを切換可能な希釈装置において、切換忘れなどにより誤って混合液が吐出されてしまうことを防止できるようにするもので、例えば、洗剤の原液を水で所定倍率に薄めて用いる場合に使用される業務用等の希釈装置として、好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係る希釈装置の外形形状の全体を概略的に示す全体斜視図である。
【図2】前記希釈装置の正面説明図である。
【図3】前記希釈装置の左側面説明図である。
【図4】前記希釈装置の右側面説明図である。
【図5】前記希釈装置の背面説明図である。
【図6】前記希釈装置の平面説明図である。
【図7】図6におけるY7−Y7線に沿った断面説明図である。
【図8】図6におけるY8−Y8線に沿った断面説明図である。
【図9】図6におけるY9−Y9線に沿った断面説明図である。
【図10】前記希釈装置の配設状態の一例を示す説明図である。
【図11】前記希釈装置の配設状態の他の一例を示す説明図である。
【図12】前記希釈装置の薬液量メータ側からの全体斜視図である。
【図13】前記希釈装置の安全キャップを取り外した状態を示す全体斜視図である。
【図14】前記希釈装置の希釈混合液の吐出状態を示す全体斜視図である。
【図15】前記希釈装置の吐出停止状態を示す全体斜視図である。
【図16】前記希釈装置の水道水のみの吐出状態を示す全体斜視図である。
【図17】前記希釈装置の希釈混合液の吐出状態を拡大して示す断面説明図である。
【図18】前記希釈装置の吐出停止状態を拡大して示す断面説明図である。
【図19】前記希釈装置の水道水のみの吐出状態を拡大して示す断面説明図である。
【図20】前記希釈装置の吐出切換機構の回動シャフトの全体斜視図である。
【図21】前記回動シャフトの平面説明図である。
【図22】前記回動シャフトの正面説明図である。
【図23】前記回動シャフトの左側面図である。
【図24】図23におけるY24−Y24線に沿った断面説明図である。
【図25】図23におけるY25−Y25線に沿った断面説明図である。
【図26】前記希釈装置の吐出切換機構の摺動シリンダの全体斜視図である。
【図27】前記摺動シリンダの平面説明図である。
【図28】前記摺動シリンダの正面説明図である。
【図29】図27におけるY29−Y29線に沿った断面説明図である。
【図30】図28におけるY30−Y30線に沿った断面説明図である。
【図31】図29におけるY31−Y31線に沿った断面説明図である。
【図32】前記希釈装置の吐出切換機構の案内シリンダの全体斜視図である。
【図33】前記案内シリンダの異なる方向からの全体斜視図である。
【図34】前記案内シリンダの正面説明図である。
【図35】前記案内シリンダの底面説明図である。
【図36】前記案内シリンダの左側面図である。
【図37】前記案内シリンダの右側面図である。
【図38】図36におけるY38−Y38線に沿った断面説明図である。
【図39】図36におけるY39−Y39線に沿った断面説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1…希釈装置
4…壁面取付板
5…吐出切換レバー
11…水道水供給部
12…吐出部
13…薬液取り入れ部
17…吐出切換機構
18…アスピレータ部
30…安全弁機構
32…操作ボタン
37…安全キャップ
38…キャップ取付部
101…水道水供給管
102…水道蛇口部
103…固定ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希釈液の動圧降下に伴って生じる負圧を利用して薬液を吸引し所定倍率に希釈された混合液を得る希釈手段と、少なくとも希釈液のみの吐出と混合液の吐出とを切り換える切換手段とを備えた希釈装置において、
前記切換手段が混合液の吐出側に切り換えられている場合において、混合液の吐出の許可と禁止とを切り換える安全手段が更に設けられていることを特徴とする希釈装置。
【請求項2】
前記安全手段を混合液の吐出許可状態に保持する保持手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の希釈装置。
【請求項3】
前記保持手段は、前記安全手段が前記吐出許可状態に保持されていることを表示する表示手段を備えていることを特徴とする請求項2記載の希釈装置。
【請求項4】
前記希釈液の供給管の蛇口部への直接取付用の蛇口取付部を備えていることを特徴とする請求項1から3の何れか一に記載の希釈装置。
【請求項5】
壁面への取付用の壁面取付板を備えていることを特徴とする請求項1から4の何れか一に記載の希釈装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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