帯状ワークの突合せ接合装置
【課題】 突合せ溶接する帯状ワークの厚みに応じて帯状ワークの突合せ部近傍を挾持するクランプ機構の左右の上部クランプ間の間隔を簡単に正確に自動調整できるようにする。
【解決手段】 先行の帯状ワークW1と後行の帯状ワークW2の突合せ部近傍を上部治具5′及び下部治具5″から成るクランプ機構5で挾持し、前記突合せ部を溶接装置7により突合せ溶接する帯状ワークの突合せ接合装置に於いて、クランプ機構5の上部治具5′が、帯状ワークW1,W2の上方に位置する支持フレーム17の下面側に帯状ワークW1,W2の走行方向へ往復移動自在に配設した左右のスライド板21に夫々取り付けられ、帯状ワークW1,W2の突合せ部近傍の上面に当接する左右の上部クランプ5aから成り、左右の上部クランプ5aを支持フレーム17側と左右のスライド板21との間に夫々設けた駆動装置25により往復移動させ、左右の上部クランプ5a間の間隔を調整する。
【解決手段】 先行の帯状ワークW1と後行の帯状ワークW2の突合せ部近傍を上部治具5′及び下部治具5″から成るクランプ機構5で挾持し、前記突合せ部を溶接装置7により突合せ溶接する帯状ワークの突合せ接合装置に於いて、クランプ機構5の上部治具5′が、帯状ワークW1,W2の上方に位置する支持フレーム17の下面側に帯状ワークW1,W2の走行方向へ往復移動自在に配設した左右のスライド板21に夫々取り付けられ、帯状ワークW1,W2の突合せ部近傍の上面に当接する左右の上部クランプ5aから成り、左右の上部クランプ5aを支持フレーム17側と左右のスライド板21との間に夫々設けた駆動装置25により往復移動させ、左右の上部クランプ5a間の間隔を調整する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電磁鋼板等の金属薄板製の帯状ワークの熱処理や表面処理等を連続的に行う加工ライン、或いはステンレスや銅、アルミ等の金属薄板製の帯状ワークからリードフレームやコネクター、シャーシ類、パイプ類等の各種製品を連続的に生産するプレスラインや造管ライン等に夫々設置され、ライン上を流れている先行の帯状ワークの後端に後行の帯状ワークの先端を突合せ溶接により接合するようにした帯状ワークの突合せ接合装置の改良に係り、特に、突き合された両帯状ワークの突合せ部近傍を上下方向から挾持固定するクランプ機構の上部治具を構成する左右の上部クランプ間の間隔を帯状ワークの厚み等に応じて簡単且つ正確に自動調整できるようにした帯状ワークの突合せ接合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属薄板製の帯状ワークの熱処理や表面処理等を連続的に行う加工ライン、或いは金属薄板製の帯状ワークを連続的に供給しながらリードフレームやコネクター、シャーシ類等を成形加工するプレスライン等に於いては、生産性の向上及び品質の安定化等を図るため、ライン上に繰り出されている先行の帯状ワークの後端に新しい後行の帯状ワークの先端を突合せ溶接により接合し、新しい帯状ワークを加工ラインやプレスライン等へ連続的に供給することが行われている。
【0003】
上述の如き帯状ワークの突合せ溶接に於いては、溶接部の機械的強度の確保だけでなく、溶接部の仕上げ精度(例えば溶接部の厚さや直線性等)にも高い精度が要求される。何故なら、溶接部の仕上げ精度が悪いと、プレスの金型に損傷を生じたり、或いは溶接部を含んだ成形加工品の品質が極端に悪くなるからである。
【0004】
従来、帯状ワークの突合せ溶接を行う装置しては、本件発明者等が先に開発したTIG溶接法を用いた帯状金属薄板(帯状ワーク)の突合せ接合装置が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3等参照)。
【0005】
即ち、前記突合せ接合装置は、図示していないが、帯状ワークが支持載置される作業用テーブルと、先行の帯状ワークの後端部及び後行の帯状ワークの先端部を幅方向に直線状に切断する切断装置と、先行の帯状ワークの後端及び後行の帯状ワークの先端の位置決めを行うセンター位置決め機構と、先行の帯状ワーク及び後行の帯状ワークの突合せ部近傍を上下方向から挾持固定する上部治具及び下部治具から成るクランプ機構と、両帯状ワークの突合せ部を突合せ溶接するTIG溶接装置等から構成されており、先行の帯状ワークの後端部及び後行の帯状ワークの先端部を切断装置により夫々幅方向に一直線状に切断し、両帯状ワークの切断端面同士をセンター位置決め機構により位置決めして突き合せ、この状態で両帯状ワークの突合せ部近傍をクランプ機構の上部治具及び下部治具により上下方向から挾持固定した後、両帯状ワークの突合せ部をTIG溶接装置により突合せ溶接するようにしたものである。
この突合せ接合装置は、極めて薄い帯状ワークであってもその突合せ溶接を高品質で且つ美麗に行うことができ、然も、レーザ溶接装置に比較して低価格で操作性や作業性、取扱性等に優れた効果を奏するものである。
【0006】
ところで、理想的な突合せ溶接を行うには、クランプ機構の上部治具を構成する左右の上部クランプ間の間隔を突合せ溶接する帯状ワークの厚さに応じて調整する必要があり、一般には帯状ワークの厚さが薄くなれば上部クランプ間の間隔を狭くし、又、帯状ワークの厚さが厚くなれば上部クランプ間の間隔を広くするようにしている。特に、厚みの極めて薄い帯状ワークを突合せ溶接する場合には、上部クランプ間の間隔を出来るだけ狭くする方が良い。これは上部クランプ間の間隔を広くすると、溶接時の熱で帯状ワークの表面温度が厚板の帯状ワークに比較して高温になり易く、そのために溶接中に変形が生じて溶接不良を引き起こすことになるからである。又、上部クランプ間の間隔を狭くすると、不要なアークが上部クランプの先端部により遮断され、両帯状ワークの突合せ部にアークエネルギーが集中的に与えられるからである。
【0007】
ところが、上述した従来の突合せ接合装置のクランプ機構に於いては、上部治具を構成する左右の上部クランプが固定された部材であり、帯状ワークの厚みに応じて上部クランプ間の間隔を調整することができなかった。
そのため、突合せ溶接する帯状ワークの厚みが変わった場合には、帯状ワークの厚みに応じて左右の上部クランプを別の幅を有する左右の上部クランプと交換し、これにより左右の上部クランプ間の間隔を変えて帯状ワークの突合せ溶接を行うようにしていた。
【0008】
しかし、左右の上部クランプを交換するには、多数のボルトを緩めたり、締め付けたりしなければならず、取り換えに極めて手数が掛かると云う問題があった。又、大きさの異なる複数組の上部クランプを用意しておかなければならず、コストの高騰を招くと云う問題もあった。
【0009】
尚、円筒状又は角筒状に曲げ加工されたワークの端面同士を突合せ溶接により接合して丸パイプや角パイプを作製する水平型の自動溶接装置に於いては、ワークの端面同士を突合せ状態でマンドレルに設けたバックバー上へ押圧固定する左右のクランプ間の間隔を調整できるようにしたクランプ機構(図示省略)が設けられている(例えば、特許文献4参照)。
【0010】
ところが、前記クランプ機構に於いては、作業員が手動操作により調整ネジを廻して左右のクランプを水平移動させ、これにより左右のクランプ間の間隔を調整するようにしているため、左右のクランプ間の間隔が帯状ワークの厚みに応じて最適な間隔になるように調整するのに手間が掛かるうえ、左右のクランプ間の間隔調整を短時間で正確に行えないと云う問題があった。
【特許文献1】特開平11−347792号公報
【特許文献2】特開2001−47281号公報
【特許文献3】特開2004−34254号公報
【特許文献4】特開2003−205369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、突合せ溶接する帯状ワークの厚みや材質に応じて帯状ワークの突合せ部近傍を挾持固定するクランプ機構の上部治具を構成する左右の上部クランプ間の間隔を簡単且つ正確に自動調整することができるようにした帯状ワークの突合せ接合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の発明は、幅方向に夫々切断した先行の帯状ワークの後端と後行の帯状ワークの先端とを突き合せ、両帯状ワークの突合せ部近傍を上部治具及び下部治具から成るクランプ機構により上下方向から挾持固定した後、両帯状ワークの突合せ部を溶接装置により突合せ溶接して接合するようにした帯状ワークの突合せ接合装置に於いて、前記クランプ機構の上部治具は、両帯状ワークの突合せ部の上方に位置する支持フレームの下面側に両帯状ワークの走行方向へ往復移動自在に配設した左右のスライド板に夫々取り付けられ、両帯状ワークの突合せ部近傍の上面に当接し得る対向状に配置した左右の上部クランプから成り、前記左右の上部クランプを支持フレーム側と左右のスライド板との間に夫々設けたモータ駆動型の駆動装置により両帯状ワークの走行方向へ往復移動させ、当該左右の上部クランプ間の間隔を調整できるように構成したことに特徴がある。
【0013】
本発明の請求項2の発明は、左右のスライド板の下面側に両帯状ワークの幅よりも長めに形成した長尺板状の左右の上部クランプを夫々上下方向へ揺動自在又はスライド自在に取り付け、前記左右の上部クランプの先端部を左右のスライド板と左右の上部クランプとの間に夫々介設した複数の弾性体により両帯状ワークの突合せ部近傍の上面へ弾性的に当接させるようにしたことに特徴がある。
【0014】
本発明の請求項3の発明は、モータ駆動型の駆動装置が、支持フレーム側と左右のスライド板との間に夫々設けられ、左右のスライド板を両帯状ワークの走行方向へ夫々往復移動させる左右のボールネジ機構と、支持フレーム側に配設した回転角度を制御できる左右のモータと、左右のモータの回転運動を左右のボールネジ機構に夫々伝達する左右の伝動装置とから成り、左右のモータの回転角度を制御することによって、左右の上部クランプ間の間隔を微調整できるように構成したことに特徴がある。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1の突合せ接合装置は、クランプ機構の上部治具が、両帯状ワークの突合せ部の上方に位置する支持フレームの下面側に両帯状ワークの走行方向へ往復移動自在に配設した左右のスライド板に夫々取り付けられ、両帯状ワークの突合せ部近傍の上面に当接し得る対向状に配置した左右の上部クランプから成り、前記左右の上部クランプを支持フレーム側と左右のスライド板との間に夫々設けたモータ駆動型の駆動装置により両帯状ワークの走行方向へ往復移動させ、当該左右の上部クランプ間の間隔を調整できるように構成しているため、帯状ワークの厚さや材質に応じて左右の上部クランプ間の間隔が最適な間隔になるように左右の上部クランプ間の間隔を簡単且つ正確に自動調整することができる。その結果、本発明の請求項1の突合せ接合装置は、従来の突合せ接合装置のように左右の上部クランプを別の上部クランプと交換したり、或いは交換用の上部クランプを用意したり、上部クランプ間の間隔を手動操作により調整したりする必要が全くなく、操作性や作業性、取扱性等に極めて優れたものとなる。
【0016】
本発明の請求項2及び請求項3の突合せ接合装置は、上記効果に加えて更に次のような効果を奏することができる。
即ち、本発明の請求項2の突合せ接合装置は、左右のスライド板の下面側に帯状ワークの幅よりも長めに形成した長尺板状の左右の上部クランプを夫々上下方向へ揺動自在又はスライド自在に取り付け、前記左右の上部クランプの先端部を左右のスライド板と左右の上部クランプとの間に夫々介設した複数の弾性体により両帯状ワークの突合せ部近傍の上面へ弾性的に当接させるようにしているため、広幅の帯状ワークであっても端部全域を幅方向に亘って下部治具の上面へ均一且つ確実に押圧することができ、両帯状ワークの突合せを高精度で行える。
又、本発明の請求項3の突合せ接合装置は、モータ駆動型の駆動装置が、支持フレーム側と左右のスライド板との間に夫々設けられ、左右のスライド板を両帯状ワークの走行方向へ夫々往復移動させる左右のボールネジ機構と、支持フレーム側に配設した回転角度を制御できる左右のモータと、左右のモータの回転運動を左右のボールネジ機構に夫々伝達する左右の伝動装置とから成り、左右のモータの回転角度を制御することによって、左右の上部クランプ間の間隔を微調整できるように構成しているため、帯状ワークの厚さや材質に応じて上部クランプ間の間隔をより一層簡単且つ正確に自動調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1乃至図3は本発明の実施の形態に係る帯状ワークの突合せ接合装置を示し、当該突合せ接合装置は、電磁鋼板等の広幅の帯状ワークの圧延や熱処理、表面処理を連続的に行う加工ライン、或いはステンレスや銅等の帯状ワークからリードフレームやシャーシ類等の各種製品を連続的に生産するプレスライン等に設置されており、ライン上を流れている先行の帯状ワークW1の後端に新しい後行の帯状ワークW2の先端を突合せ溶接により接合し、新しい後行の帯状ワークW2を先行の帯状ワークW1に引き続いてライン上へ供給できるようにしたものである。
【0018】
即ち、前記突合せ接合装置は、図1乃至図4に示す如く、ライン上を流れている先行の帯状ワークW1の走行方向に対して直交する姿勢で配置された細長いボックス状のキャビネット本体1と、キャビネット本体1に配設され、先行の帯状ワークW1の後端部が支持載置される電磁石2を設けた先行側作業テーブル3と、キャビネット本体1に帯状ワークW1の走行方向及び幅方向へ移動調整可能に配設され、後行の帯状ワークW2の先端部が支持載置される電磁石2を設けた後行側作業テーブル4と、先行の帯状ワークW1及び後行の帯状ワークW2の突合せ部近傍を上下方向から挾持固定する上部治具5′及下部治具5″から成るクランプ機構5と、下部治具5″の中央部に昇降自在に配設され、先行の帯状ワークW1の後端及び後行の帯状ワークW2の先端の位置決めを夫々行うセンタープレート6と、両帯状ワークW1,W2の突合せ部を突合せ溶接するTIG溶接装置7と、溶接条件や電極位置等を設定するモニター付きの操作盤8等から構成されている。
【0019】
具体的には、前記キャビネット本体1は、図2及び図3に示す如く、ライン上を流れている先行の帯状ワークW1の下方位置に先行の帯状ワークW1と直交する姿勢で配置されたボックス状の前側キャビネット部1Aと、前側キャビネット部1Aの後方位置(図2及び図3に示す前側キャビネット部1Aの右側位置)に配置されたボックス状の後側キャビネット部1Bとから成り、その内部には溶接用ガスボンベや溶接用電源装置等(何れも図示省略)が夫々格納されている。
【0020】
前記先行側作業テーブル3及び後行側作業テーブル4は、図1及び図2に示す如く、キャビネット本体1の前側キャビネット部1Aの上面に昇降可能に設けた昇降台9上に水平姿勢で且つ対向状に配設されており、昇降台9の昇降に伴って先行の帯状ワークW1及び後行の帯状ワークW2のパスラインよりも下方位置で昇降動するようになっている。昇降台9は、前側キャビネット部1Aの上面に複数本の鉛直姿勢の支持軸10を介して昇降自在に支持されており、前側キャビネット部1Aに設けた複数の流体圧シリンダ11を伸縮動作させることによって、昇降動するようになっている。
又、先行側作業テーブル3及び後行側作業テーブル4の上面には、これらに支持載置された先行の帯状ワークW1の後端部及び後行の帯状ワークW2の先端部を磁力により各作業テーブル3,4上面へ吸着保持する電磁石2が夫々配設されている。この電磁石2は、図4及び図6に示す如く、先行側作業テーブル3及び後行側作業テーブル4の上面に両帯状ワークW1,W2の幅方向に沿って二列の状態で夫々配設されている。
【0021】
そして、前記後行側作業テーブル4は、図4に示す如く、昇降台9の上面にガイドレール12を介して両帯状ワークW1,W2の幅方向へ往復移動自在に支持された移動台13に配設されており、昇降台9と移動台13との間に設けた移動台用駆動装置14により両帯状ワークW1,W2の幅方向へ往復移動するようになっている。移動台用駆動装置14は、図4及び図9に示す如く、昇降台9に両帯状ワークW1,W2の幅方向に沿う姿勢で回転自在に支持されたネジ軸14aと、移動台13の下面側に取り付けられ、ネジ軸14aが螺挿されるブロックナット14bと、昇降台9に取り付けられ、ネジ軸14aを正逆回転させるモータ14cと、ネジ軸14aとモータ14cを連動連結する伝動機構14dとから成り、モータ14cによりネジ軸14aを正逆回転させ、ブロックナット14b及び移動台13をネジ軸14aに沿って移動させることによって、後行側作業テーブル4を両帯状ワークW1,W2の幅方向へ往復移動させることができるようになっている。
又、後行側作業テーブル4は、図4及び図6に示す如く、移動台13の上面にガイドレール15を介して両帯状ワークW1,W2の走行方向へ往復移動自在に支持されており、移動台13と後行側作業テーブル4との間に介設した複数の流体圧シリンダ16を伸縮動作させることによって、両帯状ワークW1,W2の走行方向へ往復移動するようになっている。
【0022】
前記クランプ機構5は、図3及び図4に示す如く、キャビネット本体1の上方位置に両帯状ワークW1,W2の幅方向へ水平移動自在に配設した支持フレーム17の下面側に設けられ、先行の帯状ワークW1及び後行の帯状ワークW2の突合せ部近傍の上面を保持する上部治具5′と、先行側作業テーブル3と後行側作業テーブル4の間に配設され、両作業テーブルと同期的に昇降して上部治具5′との間で両帯状ワークW1,W2の突合せ部近傍を挾持する下部治具5″とから構成されており、支持フレーム17を前進させて上部治具5′を下部治具5″の上方位置へ移動させた後、下部治具5″を上昇させることによって、両帯状ワークW1,W2の突合せ部近傍を上部治具5′と下部治具5″との間で緊密且つ強固に挾持固定することができるようになっている。
【0023】
尚、支持フレーム17は、図2、図3及び図5に示す如く、後側キャビネット部1Bの上面にガイドレール18を介して両帯状ワークW1,W2の幅方向へ水平移動自在に配設されており、ラック19a、ピニオン19b及びモータ19cから成る支持フレーム用駆動装置19によって、両帯状ワークW1,W2の幅方向へ往復移動自在となっている。この支持フレーム17を両帯状ワークW1,W2の幅方向へ往復移動させることによって、上部治具5′は下部治具5″の上方に位置するクランプ位置(図3の実線位置)と後側キャビネット部1Bの上方に位置する待機位置(図3の一点鎖線位置)とを取り得るようになっている。
【0024】
前記クランプ機構5の上部治具5′は、図4及び図10に示す如く、支持フレーム17の下面側に両帯状ワークW1,W2の幅方向に沿う姿勢で且つ僅かな間隔を空けて対向状に配設され、両帯状ワークW1,W2の突合せ部近傍の上面に当接し得る左右の上部クランプ5aから成り、主にアークの拡がりを遮断して両帯状ワークW1,W2の突合せ部にアークエネルギーを集中的に与えるものである。
即ち、左右の上部クランプ5aは、銅材により両帯状ワークW1,W2の幅よりも長めの長尺板状に形成されており、支持フレーム17の下面側に左右のクランプ取付け座20及び左右のスライド板21を介して両帯状ワークW1,W2の走行方向へ往復移動自在に取り付けられている。
【0025】
前記左右のクランプ取付け座20は、図10乃至図12に示す如く、アルミ合金等の金属材により両帯状ワークW1,W2の幅よりも長めの長尺板状に形成されており、支持フレーム17の下面側に対向状に配設されてボルトにより支持フレーム17の下面に固定されている。この左右のクランプ取付け座20の下面側には、案内レール22a及び案内レール22a上をボール(図示省略)を介して摺動するスライダ22bから成るリニアガイド22が収納固定される凹部20aがクランプ取付け座20の長手方向へ一定間隔毎に形成されている。
又、左右のスライド板21は、図10乃至図12に示す如く、アルミ合金等の金属材により両帯状ワークW1,W2の幅よりも長めの長尺板状に形成されており、左右のクランプ取付け座20の下面側にリニアガイド22を介して両帯状ワークW1,W2の走行方向へ往復移動自在に取り付けられている。この左右のスライド板21の下面側には、左右の上部クランプ5aを下方へ附勢するための弾性体23を収納する収納穴21aがスライド板21の長手方向へ一定間隔毎に形成されている。更に、左右のスライド板21の一側面には、後述するボールネジ機構26の一部分が収納される窪み部21bがスライド板21の長手方向へ一定間隔毎に形成されている。
【0026】
そして、左右の上部クランプ5aは、図10乃至図12に示す如く、両帯状ワークW1,W2の走行方向へ往復移動する左右のスライド板21の下面側に夫々複数本のボルト24により上下方向へ揺動自在に取り付けられており、左右のスライド板21と左右の上部クランプ5aとの間に夫々介設した複数の弾性体23(圧縮スプリング)により下方へ附勢され、鋭角状に形成した先端部が両帯状ワークW1,W2の突合せ部近傍の上面へ弾性的に当接するようになっている。
又、左右の上部クランプ5aは、支持フレーム17側(左右のクランプ取付け座20)と左右のスライド板21との間に夫々設けたモータ駆動型の駆動装置25により両帯状ワークW1,W2の走行方向へ往復移動し、左右の上部クランプ5a間の間隔を調整できるように構成されている。この実施の形態に於いては、左右の上部クランプ5a間の間隔は、0〜6mmの範囲で調整できるように設定されている。
【0027】
前記モータ駆動型の駆動装置25は、図10乃至図13に示す如く、支持フレーム17側(左右のクランプ取付け座20)と左右のスライド板21との間に夫々設けられ、左右のスライド板21を両帯状ワークW1,W2の走行方向へ夫々往復移動させる複数の左右のボールネジ機構26と、支持フレーム17側(左右のクランプ取付け座20)に配設した回転角度を制御できる左右のモータ27と、左右のモータ27の回転運動を左右のボールネジ機構26に夫々伝達する左右の伝動装置28とから成り、左右のモータ27の回転角度を制御することによって、左右の上部クランプ5a間の間隔を微調整できるように構成されている。
【0028】
具体的には、各ボールネジ機構26は、図11及び図13に示す如く、クランプ取付け座20の下面に固定した軸受29に帯状ワークW1,W2の走行方向へ沿う姿勢で回転自在に支持され、スライド板21と同じ高さ位置に配置されて一端部側がスライド板21の窪み部21bに収納されるボールネジ軸26aと、スライド板21の窪み部21b内に固定され、ボールネジ軸26aが螺挿されるボールナット26bとから成り、ボールネジ軸26aが正逆回転すると、廻り止めされたボールナット26bがボールネジ軸26aに沿って往復移動し、スライド板21を帯状ワークW1,W2の走行方向へ往復移動させるようになっている。この実施の形態に於いては、ボールネジ機構26は、長尺板状の左右のスライド板21を同じ姿勢を保った状態で平行移動させることができるように左右のクランプ取付け座20と左右のスライド板21との間に夫々3箇所設けられている。
【0029】
又、左右のモータ27は、図11に示す如く、左右のクランプ取付け座20の端面に夫々固定したモータブラケット30に取り付けられており、当該モータ27には基本ステップ角が4度又は8度のステッピングモータが使用されている。この実施の形態に於いては、モータ27にステッピングモータを使用しているが、回転角度を制御できるモータ27であれば如何なる型式のモータであっても良く、例えばサーボモータ(DCモータ+エンコーダ)やACサーボモータ(ACモータ+エンコーダ)、超音波モータを使用するようにしても良い。
【0030】
更に、左右の伝動装置28は、図11に示す如く、歯車伝動機構とベルト伝動機構とを組み合わせた構造に構成されており、左右のクランプ取付け座20の下面に固定した複数の軸受28aに回転自在に支持され、各ボールネジ機構26の近傍に位置して両帯状ワークW1,W2の幅方向に沿う連結軸28bと、連結軸28bに嵌着され、各ボールネジ機構26のボールネジ軸26aの近傍に位置する三つの駆動傘歯車28cと、各ボールネジ機構26のボールネジ軸26aに嵌着され、駆動傘歯車28cに夫々噛合する三つの従動傘歯車28dと、モータ27の出力軸27aに嵌着された駆動プーリ28eと、連結軸28bの一端部に嵌着された従動プーリ28fと、駆動プーリ28eと従動プーリ28fに巻き回されたベルト28gとから成る。
尚、前記歯車伝動機構は、連結軸28b、駆動傘歯車28c及び従動傘歯車28dから成り、又、ベルト伝動機構は、駆動プーリ28e、従動プーリ28f及びベルト28gから成る。
【0031】
而して、モータ駆動型の駆動装置25によれば、モータ27(ステッピングモータ)へ所定数のパルス入力信号が加えられると、モータ27の出力軸27aが入力パルス数に応じたステッピング回転を行い、この回転運動が伝動装置28によりボールネジ機構26のボールネジ軸26aに伝達され、これによってボールネジ軸26aを所定の角度又は所定の回転数だけ正回転又は逆回転させる。そうすると、ボールネジ機構26により左右のスライド板21及び左右のスライド板21に取り付けた左右の上部クランプ5aが両帯状ワークW1,W2の走行方向へ往復移動し、左右の上部クランプ5a間の間隔が調整されることになる。
【0032】
一方、クランプ機構5の下部治具5″は、図4及び図6に示す如く、先行側作業テーブル3と後行側作業テーブル4との間に配設され、両帯状ワークW1,W2の突合せ部近傍の下面に当接し得る長尺板状で且つ銅材製の左右の下部クランプ5bから成り、両帯状ワークW1,W2を突合せ溶接する際に余分な熱を吸収してビードの溶け落ちや穴あき、両帯状ワークW1,W2の熱歪等を防止すると共に、両帯状ワークW1,W2の突合せ部の裏側にシールドガスを流して溶接部の酸化を防止するようにしたものである。
又、左右の下部クランプ5bは、その上面が先行側作業テーブル3及び後行側作業テーブル4の上面と面一の状態になるように先行側作業テーブル3と後行側作業テーブル4との間に配設されており、先行側作業テーブル3に複数の取付け板31を介して取り付けられている。
更に、左右の下部クランプ5b間には、後述するセンタープレート6が遊嵌状態で挿通されるスリット状の間隙が形成されていると共に、左右の下部クランプ5b間の上面には、スリット状の間隙に連通してアルゴンガス等のシールドガスが流れる1mm幅の浅溝が形成されている。
【0033】
前記センタープレート6は、図4、図7及び図8に示す如く、厚さが0.5mmの薄板鋼板により長尺板状に形成されており、左右の下部クランプ5b間に形成したスリット状の間隙内に鉛直姿勢で且つ昇降自在に配設されている。このセンタープレート6は、昇降台9に取り付けた複数の流体圧シリンダ32のロッドに取付け金具33を介して取り付けられており、流体圧シリンダ32の短縮時には左右の下部クランプ5b間に形成したスリット状の間隙内に収納され、流体圧シリンダ32の伸長時にはその先端が左右の下部クランプ5bの上面から上方へ5mm程度突出するようになっている。
【0034】
前記TIG溶接装置7は、キャビネット本体1に設けた支持フレーム17に配設されており、両帯状ワークW1,W2の突合せ部を溶接する際に支持フレーム17と共に前方へ引き出され、支持フレーム17上を両帯状ワークW1,W2の幅方向へ沿って移動するようになっている。
即ち、TIG溶接装置7は、図4に示す如く、支持フレーム17の上面にガイドレール34を介して帯状ワークW1,W2の幅方向へ往復移動自在に配設された走行台35と、走行台35に昇降自在に支持され、先端部からアルゴンガス等のシールドガスを流すと共に、タングステン電極棒36aを挿着した溶接用トーチ36と、溶接用トーチ36を昇降動させるサーボモータ等から成るトーチ上下動駆動装置(図示省略)と、溶接状況(タングステン電極棒36aの消耗やアークの状態等)や帯状ワークW1,W2の突合せ状況を確認する監視カメラ(図示省略)と、走行台35に取り付けられ、先行の帯状ワークW1及び後行の帯状ワークW2の幅を自動測定するレーザセンサー37と、溶接開始前に於ける電極と帯状ワークW1,W2の間隙設定を容易にし、溶接中に於ける電極と帯状ワークW1,W2の接触事故を直ちに検知する電極接触検知装置(図示省略)と、走行台35を帯状ワークW1,W2の幅方向へ走行させる走行台用駆動装置38等から構成されており、帯状ワークW1,W2の突合せ部を溶接する際に支持フレーム17と一緒に前方へ引き出され、溶接用トーチ36の先端が自動的に高さ調整され且つ溶接用トーチ36が所定の速度で帯状ワークW1,W2の突合せ部に沿って直線移動するようになっている。
又、走行台用駆動装置38は、図2及び図3に示す如く、支持フレーム17の上面に帯状ワークの幅方向に沿う姿勢で回転自在に支持されたネジ軸38aと、走行台35に取り付けられ、ネジ軸38aが螺挿されるブロックナット38bと、支持フレーム17に取り付けられ、ネジ軸38aに連動連結されてネジ軸38aを正逆回転させるモータ38cとから成り、モータ38cによりネジ軸38aを正逆回転させ、ブロックナット38b及び走行台35をネジ軸38aに沿って移動させることによって、走行台35及びこれに支持された溶接用トーチ36を帯状ワークW1,W2の幅方向へ往復移動させることができるようになっている。
そして、このTIG溶接装置7は、アークが集中するように溶接用電極棒36aの先端がシャープな円錐形状に形成されていると共に、突合せ溶接時に於けるアーク長が磁気吹き(アークが磁場の影響を受けて偏向する現象)を生じない長さに設定されている。この実施の形態に於いては、突合せ溶接時に於けるタングステン電極棒36aの先端と両帯状ワークW1,W2の突合せ部との間隔が0.3mm〜0.7mmとなるように設定されている。
【0035】
次に、上述した帯状ワークの突合せ接合装置を用いて広幅の先行の帯状ワークW1と広幅の後行の帯状ワークW2を突合せ溶接により接合する場合について説明する。
尚、溶接電流、アーク長、不活性ガスの供給量、溶接用トーチ36の走行速度、タングステン電極棒36aの先端形状等の溶接条件は、帯状ワークW1,W2の材質、板厚、幅等に応じて最適の条件下に設定されていることは勿論である。又、左右の上部クランプ5a間の間隔は、帯状ワークW1,W2の厚み等に応じて予め最適な間隔に調整されている。
【0036】
先ず、先行の帯状ワークW1の後端部と後行の帯状ワークW2の先端部とを切断装置(図示省略)により幅方向に一直線状に切断加工した後、センタープレート6を流体圧シリンダ32により上昇させてセンタープレート6の先端部を左右の下部クランプ5bの上面から上方へ突出させる。
【0037】
次に、先行の帯状ワークW1の後端部を先行側作業テーブル3の上面に載せ、先行の帯状ワークW1の後端を手作業によりセンタープレート6の一方の側面に突き当てると共に、この状態で先行側作業テーブル3に設けた電磁石2をONの状態にして先行の帯状ワークW1の後端部を磁力により先行側作業テーブル3の上面へ吸着保持して固定する(図14(A)参照)。このとき、監視カメラにより先行の帯状ワークW1の後端の一部(溶接開始端)が監視カメラにより操作盤8のモニターに映し出される。
【0038】
引き続き、後行の帯状ワークW2の先端部を後行側作業テーブル4の上面に載せ、後行の帯状ワークW2の先端を手作業によりセンタープレート6の他方の側面に突き当てると共に、この状態で後行側作業テーブル4に設けた電磁石2をONの状態にして後行の帯状ワークW2の先端部を磁力により後行側作業テーブル4の上面へ保持固定する(図14(A)参照)。このときにも、監視カメラにより先行の帯状ワークW1の後端の一部(溶接開始端)が監視カメラにより操作盤8のモニターに映し出される。
【0039】
その後、センタープレート6を流体圧シリンダ32により下降させて左右の下部クランプ5b間に収納し、後行側作業テーブル4を流体圧シリンダ16により前進させて後行の帯状ワークW2の先端を先行の帯状ワークW1の後端に突き合せる(図14(B)参照)。この状態で後行側作業テーブル4を移動台用駆動装置14により帯状ワークW1,W2の幅方向へ移動調整し、先行の帯状ワークW1と後行の帯状ワークW2の幅方向のズレ修正を行い、両帯状ワークW1,W2の幅方向の両端を合致させる。このとき、両帯状ワークW1,W2は、両作業テーブル3,4に電磁石2により確実且つ強固に吸着保持されているため、帯状ワークW1,W2の突合せ時に帯状ワークW1,W2がズレたり、浮き上がったりすると云うことがなく、広幅の帯状ワークW1,W2の突合せを確実且つ正確に高精度で行えることになる。又、後行側作業テーブル4を流体圧シリンダ16により前進させて後行の帯状ワークW2の先端を先行の帯状ワークW1の後端に突き合せるようにしているため、両帯状ワークW1,W2の端面は常時加圧状態で突き合されて密着状態となっていると共に、先行の帯状ワークW1の後端と後行の帯状ワークW2の先端とを常に一定の押圧力で突き合せることができる。
【0040】
先行の帯状ワークW1の後端と後行の帯状ワークW2の先端とが突き合されたら、支持フレーム17が支持フレーム用駆動装置19により前進して左右の上部クランプ5aを帯状ワークW1,W2の突合せ部の上方位置(クランプ位置)へ移動させる(図15(A)参照)。この状態で昇降台9が流体圧シリンダ11により上昇し、両作業テーブル3,4及び下部クランプ5bをそれらの上面が上部クランプ5aの先端部下面の高さと略同じ位置になるように上昇させる(図15(B)参照)。これにより、両帯状ワークW1,W2は、端面同士が完全に突き合された状態で上部クランプ5aと下部クランプ5bとの間で緊密且つ強固に挾持固定される。このとき、帯状ワークW1,W2の幅よりも長めに形成した長尺板状の左右の上部クランプ5aの先端部を複数の弾性体23により帯状ワークW1,W2の突合せ部近傍の上面へ弾性的に当接させるようにしているため、広幅の帯状ワークW1,W2であっても端部全域を幅方向に亘って左右の下部クランプ5bの上面へ均一に押圧することができ、両帯状ワークW1,W2の突合せを高精度に行える。
【0041】
両帯状ワークW1,W2の突合せ部がクランプ機構5により挾持固定されたら、支持フレーム17上の走行台35が走行台用駆動装置38により前進し、走行台35に設けたレーザセンサー37が帯状ワークW1,W2の幅を自動測定し、所定のプログラムにてTIG溶接装置7により両帯状ワークW1,W2の突合せ部が突合せ溶接される。
【0042】
即ち、先行側作業テーブル3及び後行側作業テーブル4に夫々設けた電磁石2がOFFの状態になると共に、溶接用トーチ36が下降してタングステン電極棒36aの先端を両帯状ワークW1,W2の突合せ部の端部に位置させ、タングステン電極棒36aの先端と両帯状ワークW1,W2との間にアークを発生させる。その後、走行台35が走行台用駆動装置38により後退して溶接用トーチ36を帯状ワークW1,W2の突合せ部に沿って走行させ、突合せ部を突合せ溶接する。このとき、タングステン電極棒36aの先端をシャープな円錐形状に形成してアークを集中させていると共に、突合せ溶接時に於けるアーク長を磁気吹きが生じない長さに設定しているため、電磁鋼板のように表面に絶縁皮膜が形成されている帯状ワークW1,W2であっても突合せ溶接を良好且つ確実に行えると共に、アークが電磁石2及び帯状ワークW1,W2に生じる残留磁気の影響を受けることがなく、溶接中の磁気吹きを防止することができる。即ち、先行の帯状ワークW1及び後行の帯状ワークW2を先行側作業テーブル3及び後行側作業テーブル4の上面へ保持するのに電磁石2を使用していても、TIG溶接法を用いて両帯状ワークW1,W2の突合せ溶接を確実且つ良好に行うことができる。
【0043】
両帯状ワークW1,W2の突合せ溶接が終了したら、電磁石2がONの状態になって両帯状ワークW1,W2を両作業テーブル3,4の上面へ吸着保持すると共に、この状態で両作業テーブル3,4及び下部クランプ5bが下降し、引き続いて支持フレーム17及び上部クランプ5aが後退した後、電磁石2がOFFの状態になって両帯状ワークW1,W2を開放する。これによって、先行の帯状ワークW1の後端に接合された後行の帯状ワークW2は、先行の帯状ワークW1に引き続いてライン上へ供給されることになる。
【0044】
そして、突合せ溶接する先行の帯状ワークW1及び後行の帯状ワークW2の厚みが変わった場合には、クランプ機構5の左右の上部クランプ5aをモータ駆動型の駆動装置25により帯状ワークW1,W2の走行方向へ移動させ、左右の上部クランプ5a間の間隔を突合せ溶接する帯状ワークW1,W2の厚さに応じて調整する。
【0045】
即ち、両帯状ワークW1,W2の厚さが薄くなれば上部クランプ5a間の間隔を狭くし、又、両帯状ワークW1,W2の厚さが厚くなれば上部クランプ5a間の間隔を広くする。これにより、両帯状ワークの理想的な突合せ溶接を行うことができる。
例えば、両帯状ワークW1,W2の板厚が0.15mmのときには左右の上部クランプ5a間の間隔が1.0mmに、両帯状ワークW1,W2の板厚が0.23mmのときには左右の上部クランプ5a間の間隔が1.4mmに、両帯状ワークW1,W2の板厚が0.35mmのときには左右の上部クランプ5a間の間隔が2.0mmに、両帯状ワークW1,W2の板厚が0.5mmのときには左右の上部クランプ5a間の間隔が4.0mmになるようにモータ駆動型の駆動装置25により夫々調整する。
【0046】
上述した突合せ接合装置に於いては、突合せ溶接する帯状ワークの厚みに応じて左右の上部クランプ5a間の間隔をモータ駆動型の駆動装置25により調整するようにしているため、帯状ワークW1,W2の厚さや材質に応じて左右の上部クランプ5a間の間隔が最適な間隔になるように上部クランプ5a間の間隔を簡単且つ正確に自動調整することができる。
然も、モータ駆動型の駆動装置25が、ボールネジ機構26、回転角度を制御できるモータ27(ステッピングモータ)及び伝動装置28から成り、左右のモータ27の回転角度を制御することによって、左右の上部クランプ5a間の間隔を微調整できるように構成しているため、帯状ワークW1,W2の厚さに応じて上部クランプ5a間の間隔をより一層簡単且つ正確に自動調整することができる。
【0047】
尚、上記の実施の形態に於いては、左右のスライド板21の下面側に左右の上部クランプ5aを上下方向へ揺動自在に取り付けるようにしたが、他の実施の形態に於いては、左右のスライド板21の下面側に左右の上部クランプ5aを上下方向へスライド自在に取り付けるようにしても良い。
【0048】
上記の実施の形態に於いては、支持フレーム17の下面に固定した左右のクランプ取付け座20に左右のスライド板21を帯状ワークW1,W2の走行方向へ々往復移動自在に夫々取り付けるようにしたが、他の実施の形態に於いては、左右のクランプ取付け座20を省略し、左右のスライド板21を支持フレーム17の下面に帯状ワークW1,W2の走行方向へ往復移動自在に直接取り付けるようにしても良い。
【0049】
上記の実施の形態に於いては、モータ駆動型の駆動装置25をボールネジ機構26とモータ27と伝動装置28とから構成したが、他の実施の形態に於いては、伝動装置28を省略し、ボールネジ機構26のボールネジ軸26aにモータ27の出力軸27aを直接連結するようにしても良く、或いは歯車伝動機構及びベルト伝動機構から成る伝動装置28のベルト伝動機構を省略し、モータ27の出力軸27aを歯車伝動機構の連結軸28bに連結するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態に係る帯状ワークの突合せ接合装置の一部切欠正面図である。
【図2】突合せ接合装置の一部切欠側面図である。
【図3】突合せ接合装置の平面図である。
【図4】突合せ接合装置の要部の縦断面図である。
【図5】支持フレーム及び支持フレームを往復移動させる支持フレーム用駆動装置の縦断面図である。
【図6】先行側作業テーブル及び後行側作業テーブルの平面図である。
【図7】センタープレート及び昇降台部分の平面図である。
【図8】支持フレーム及び上部治具等が先行側作業テーブル及び後行側作業テーブルの上方位置へ移動した状態の縦断面図である。
【図9】昇降台及び移動台の縦断面図である。
【図10】クランプ機構の上部治具部分の底面図である。
【図11】クランプ機構の上部治具部分の一部省略拡大底面図である。
【図12】図10のA−A線拡大断面図である。
【図13】図10のB−B線拡大断面図である。
【図14】突合せ接合装置の作動状態を示し、(A)はセンタープレートにより先行の帯状ワーク及び後行の帯状ワークを位置決めし、両帯状ワークを電磁石により先行側作業テーブル及び後行側作業テーブルに吸着保持した状態の縦断面図、(B)は後行側作業テーブル4を移動調整して先行の帯状ワークの後端と後行の帯状ワークの先端とを突き合せた状態の縦断面図である。
【図15】突合せ接合装置の作動状態を示し、(A)は支持フレーム及び上部治具等が突き合された両帯状ワークの上方位置へ移動した状態の縦断面図、(B)は両作業テーブル及び下部治具等が上昇して両帯状ワークの突合せ部近傍を上部治具及び下部治具により挾持固定した状態の縦断面図である。
【符号の説明】
【0051】
5はクランプ機構、5′は上部治具、5″は下部治具、5aは上部クランプ、7はTIG溶接装置、17は支持フレーム、21はスライド板、23は弾性体、25はモータ駆動型の駆動装置、26はボールネジ機構、27はモータ(ステッピングモータ)、28は伝動機構、W1は先行の帯状ワーク、W2は後行の帯状ワーク。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電磁鋼板等の金属薄板製の帯状ワークの熱処理や表面処理等を連続的に行う加工ライン、或いはステンレスや銅、アルミ等の金属薄板製の帯状ワークからリードフレームやコネクター、シャーシ類、パイプ類等の各種製品を連続的に生産するプレスラインや造管ライン等に夫々設置され、ライン上を流れている先行の帯状ワークの後端に後行の帯状ワークの先端を突合せ溶接により接合するようにした帯状ワークの突合せ接合装置の改良に係り、特に、突き合された両帯状ワークの突合せ部近傍を上下方向から挾持固定するクランプ機構の上部治具を構成する左右の上部クランプ間の間隔を帯状ワークの厚み等に応じて簡単且つ正確に自動調整できるようにした帯状ワークの突合せ接合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属薄板製の帯状ワークの熱処理や表面処理等を連続的に行う加工ライン、或いは金属薄板製の帯状ワークを連続的に供給しながらリードフレームやコネクター、シャーシ類等を成形加工するプレスライン等に於いては、生産性の向上及び品質の安定化等を図るため、ライン上に繰り出されている先行の帯状ワークの後端に新しい後行の帯状ワークの先端を突合せ溶接により接合し、新しい帯状ワークを加工ラインやプレスライン等へ連続的に供給することが行われている。
【0003】
上述の如き帯状ワークの突合せ溶接に於いては、溶接部の機械的強度の確保だけでなく、溶接部の仕上げ精度(例えば溶接部の厚さや直線性等)にも高い精度が要求される。何故なら、溶接部の仕上げ精度が悪いと、プレスの金型に損傷を生じたり、或いは溶接部を含んだ成形加工品の品質が極端に悪くなるからである。
【0004】
従来、帯状ワークの突合せ溶接を行う装置しては、本件発明者等が先に開発したTIG溶接法を用いた帯状金属薄板(帯状ワーク)の突合せ接合装置が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3等参照)。
【0005】
即ち、前記突合せ接合装置は、図示していないが、帯状ワークが支持載置される作業用テーブルと、先行の帯状ワークの後端部及び後行の帯状ワークの先端部を幅方向に直線状に切断する切断装置と、先行の帯状ワークの後端及び後行の帯状ワークの先端の位置決めを行うセンター位置決め機構と、先行の帯状ワーク及び後行の帯状ワークの突合せ部近傍を上下方向から挾持固定する上部治具及び下部治具から成るクランプ機構と、両帯状ワークの突合せ部を突合せ溶接するTIG溶接装置等から構成されており、先行の帯状ワークの後端部及び後行の帯状ワークの先端部を切断装置により夫々幅方向に一直線状に切断し、両帯状ワークの切断端面同士をセンター位置決め機構により位置決めして突き合せ、この状態で両帯状ワークの突合せ部近傍をクランプ機構の上部治具及び下部治具により上下方向から挾持固定した後、両帯状ワークの突合せ部をTIG溶接装置により突合せ溶接するようにしたものである。
この突合せ接合装置は、極めて薄い帯状ワークであってもその突合せ溶接を高品質で且つ美麗に行うことができ、然も、レーザ溶接装置に比較して低価格で操作性や作業性、取扱性等に優れた効果を奏するものである。
【0006】
ところで、理想的な突合せ溶接を行うには、クランプ機構の上部治具を構成する左右の上部クランプ間の間隔を突合せ溶接する帯状ワークの厚さに応じて調整する必要があり、一般には帯状ワークの厚さが薄くなれば上部クランプ間の間隔を狭くし、又、帯状ワークの厚さが厚くなれば上部クランプ間の間隔を広くするようにしている。特に、厚みの極めて薄い帯状ワークを突合せ溶接する場合には、上部クランプ間の間隔を出来るだけ狭くする方が良い。これは上部クランプ間の間隔を広くすると、溶接時の熱で帯状ワークの表面温度が厚板の帯状ワークに比較して高温になり易く、そのために溶接中に変形が生じて溶接不良を引き起こすことになるからである。又、上部クランプ間の間隔を狭くすると、不要なアークが上部クランプの先端部により遮断され、両帯状ワークの突合せ部にアークエネルギーが集中的に与えられるからである。
【0007】
ところが、上述した従来の突合せ接合装置のクランプ機構に於いては、上部治具を構成する左右の上部クランプが固定された部材であり、帯状ワークの厚みに応じて上部クランプ間の間隔を調整することができなかった。
そのため、突合せ溶接する帯状ワークの厚みが変わった場合には、帯状ワークの厚みに応じて左右の上部クランプを別の幅を有する左右の上部クランプと交換し、これにより左右の上部クランプ間の間隔を変えて帯状ワークの突合せ溶接を行うようにしていた。
【0008】
しかし、左右の上部クランプを交換するには、多数のボルトを緩めたり、締め付けたりしなければならず、取り換えに極めて手数が掛かると云う問題があった。又、大きさの異なる複数組の上部クランプを用意しておかなければならず、コストの高騰を招くと云う問題もあった。
【0009】
尚、円筒状又は角筒状に曲げ加工されたワークの端面同士を突合せ溶接により接合して丸パイプや角パイプを作製する水平型の自動溶接装置に於いては、ワークの端面同士を突合せ状態でマンドレルに設けたバックバー上へ押圧固定する左右のクランプ間の間隔を調整できるようにしたクランプ機構(図示省略)が設けられている(例えば、特許文献4参照)。
【0010】
ところが、前記クランプ機構に於いては、作業員が手動操作により調整ネジを廻して左右のクランプを水平移動させ、これにより左右のクランプ間の間隔を調整するようにしているため、左右のクランプ間の間隔が帯状ワークの厚みに応じて最適な間隔になるように調整するのに手間が掛かるうえ、左右のクランプ間の間隔調整を短時間で正確に行えないと云う問題があった。
【特許文献1】特開平11−347792号公報
【特許文献2】特開2001−47281号公報
【特許文献3】特開2004−34254号公報
【特許文献4】特開2003−205369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、突合せ溶接する帯状ワークの厚みや材質に応じて帯状ワークの突合せ部近傍を挾持固定するクランプ機構の上部治具を構成する左右の上部クランプ間の間隔を簡単且つ正確に自動調整することができるようにした帯状ワークの突合せ接合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の発明は、幅方向に夫々切断した先行の帯状ワークの後端と後行の帯状ワークの先端とを突き合せ、両帯状ワークの突合せ部近傍を上部治具及び下部治具から成るクランプ機構により上下方向から挾持固定した後、両帯状ワークの突合せ部を溶接装置により突合せ溶接して接合するようにした帯状ワークの突合せ接合装置に於いて、前記クランプ機構の上部治具は、両帯状ワークの突合せ部の上方に位置する支持フレームの下面側に両帯状ワークの走行方向へ往復移動自在に配設した左右のスライド板に夫々取り付けられ、両帯状ワークの突合せ部近傍の上面に当接し得る対向状に配置した左右の上部クランプから成り、前記左右の上部クランプを支持フレーム側と左右のスライド板との間に夫々設けたモータ駆動型の駆動装置により両帯状ワークの走行方向へ往復移動させ、当該左右の上部クランプ間の間隔を調整できるように構成したことに特徴がある。
【0013】
本発明の請求項2の発明は、左右のスライド板の下面側に両帯状ワークの幅よりも長めに形成した長尺板状の左右の上部クランプを夫々上下方向へ揺動自在又はスライド自在に取り付け、前記左右の上部クランプの先端部を左右のスライド板と左右の上部クランプとの間に夫々介設した複数の弾性体により両帯状ワークの突合せ部近傍の上面へ弾性的に当接させるようにしたことに特徴がある。
【0014】
本発明の請求項3の発明は、モータ駆動型の駆動装置が、支持フレーム側と左右のスライド板との間に夫々設けられ、左右のスライド板を両帯状ワークの走行方向へ夫々往復移動させる左右のボールネジ機構と、支持フレーム側に配設した回転角度を制御できる左右のモータと、左右のモータの回転運動を左右のボールネジ機構に夫々伝達する左右の伝動装置とから成り、左右のモータの回転角度を制御することによって、左右の上部クランプ間の間隔を微調整できるように構成したことに特徴がある。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1の突合せ接合装置は、クランプ機構の上部治具が、両帯状ワークの突合せ部の上方に位置する支持フレームの下面側に両帯状ワークの走行方向へ往復移動自在に配設した左右のスライド板に夫々取り付けられ、両帯状ワークの突合せ部近傍の上面に当接し得る対向状に配置した左右の上部クランプから成り、前記左右の上部クランプを支持フレーム側と左右のスライド板との間に夫々設けたモータ駆動型の駆動装置により両帯状ワークの走行方向へ往復移動させ、当該左右の上部クランプ間の間隔を調整できるように構成しているため、帯状ワークの厚さや材質に応じて左右の上部クランプ間の間隔が最適な間隔になるように左右の上部クランプ間の間隔を簡単且つ正確に自動調整することができる。その結果、本発明の請求項1の突合せ接合装置は、従来の突合せ接合装置のように左右の上部クランプを別の上部クランプと交換したり、或いは交換用の上部クランプを用意したり、上部クランプ間の間隔を手動操作により調整したりする必要が全くなく、操作性や作業性、取扱性等に極めて優れたものとなる。
【0016】
本発明の請求項2及び請求項3の突合せ接合装置は、上記効果に加えて更に次のような効果を奏することができる。
即ち、本発明の請求項2の突合せ接合装置は、左右のスライド板の下面側に帯状ワークの幅よりも長めに形成した長尺板状の左右の上部クランプを夫々上下方向へ揺動自在又はスライド自在に取り付け、前記左右の上部クランプの先端部を左右のスライド板と左右の上部クランプとの間に夫々介設した複数の弾性体により両帯状ワークの突合せ部近傍の上面へ弾性的に当接させるようにしているため、広幅の帯状ワークであっても端部全域を幅方向に亘って下部治具の上面へ均一且つ確実に押圧することができ、両帯状ワークの突合せを高精度で行える。
又、本発明の請求項3の突合せ接合装置は、モータ駆動型の駆動装置が、支持フレーム側と左右のスライド板との間に夫々設けられ、左右のスライド板を両帯状ワークの走行方向へ夫々往復移動させる左右のボールネジ機構と、支持フレーム側に配設した回転角度を制御できる左右のモータと、左右のモータの回転運動を左右のボールネジ機構に夫々伝達する左右の伝動装置とから成り、左右のモータの回転角度を制御することによって、左右の上部クランプ間の間隔を微調整できるように構成しているため、帯状ワークの厚さや材質に応じて上部クランプ間の間隔をより一層簡単且つ正確に自動調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1乃至図3は本発明の実施の形態に係る帯状ワークの突合せ接合装置を示し、当該突合せ接合装置は、電磁鋼板等の広幅の帯状ワークの圧延や熱処理、表面処理を連続的に行う加工ライン、或いはステンレスや銅等の帯状ワークからリードフレームやシャーシ類等の各種製品を連続的に生産するプレスライン等に設置されており、ライン上を流れている先行の帯状ワークW1の後端に新しい後行の帯状ワークW2の先端を突合せ溶接により接合し、新しい後行の帯状ワークW2を先行の帯状ワークW1に引き続いてライン上へ供給できるようにしたものである。
【0018】
即ち、前記突合せ接合装置は、図1乃至図4に示す如く、ライン上を流れている先行の帯状ワークW1の走行方向に対して直交する姿勢で配置された細長いボックス状のキャビネット本体1と、キャビネット本体1に配設され、先行の帯状ワークW1の後端部が支持載置される電磁石2を設けた先行側作業テーブル3と、キャビネット本体1に帯状ワークW1の走行方向及び幅方向へ移動調整可能に配設され、後行の帯状ワークW2の先端部が支持載置される電磁石2を設けた後行側作業テーブル4と、先行の帯状ワークW1及び後行の帯状ワークW2の突合せ部近傍を上下方向から挾持固定する上部治具5′及下部治具5″から成るクランプ機構5と、下部治具5″の中央部に昇降自在に配設され、先行の帯状ワークW1の後端及び後行の帯状ワークW2の先端の位置決めを夫々行うセンタープレート6と、両帯状ワークW1,W2の突合せ部を突合せ溶接するTIG溶接装置7と、溶接条件や電極位置等を設定するモニター付きの操作盤8等から構成されている。
【0019】
具体的には、前記キャビネット本体1は、図2及び図3に示す如く、ライン上を流れている先行の帯状ワークW1の下方位置に先行の帯状ワークW1と直交する姿勢で配置されたボックス状の前側キャビネット部1Aと、前側キャビネット部1Aの後方位置(図2及び図3に示す前側キャビネット部1Aの右側位置)に配置されたボックス状の後側キャビネット部1Bとから成り、その内部には溶接用ガスボンベや溶接用電源装置等(何れも図示省略)が夫々格納されている。
【0020】
前記先行側作業テーブル3及び後行側作業テーブル4は、図1及び図2に示す如く、キャビネット本体1の前側キャビネット部1Aの上面に昇降可能に設けた昇降台9上に水平姿勢で且つ対向状に配設されており、昇降台9の昇降に伴って先行の帯状ワークW1及び後行の帯状ワークW2のパスラインよりも下方位置で昇降動するようになっている。昇降台9は、前側キャビネット部1Aの上面に複数本の鉛直姿勢の支持軸10を介して昇降自在に支持されており、前側キャビネット部1Aに設けた複数の流体圧シリンダ11を伸縮動作させることによって、昇降動するようになっている。
又、先行側作業テーブル3及び後行側作業テーブル4の上面には、これらに支持載置された先行の帯状ワークW1の後端部及び後行の帯状ワークW2の先端部を磁力により各作業テーブル3,4上面へ吸着保持する電磁石2が夫々配設されている。この電磁石2は、図4及び図6に示す如く、先行側作業テーブル3及び後行側作業テーブル4の上面に両帯状ワークW1,W2の幅方向に沿って二列の状態で夫々配設されている。
【0021】
そして、前記後行側作業テーブル4は、図4に示す如く、昇降台9の上面にガイドレール12を介して両帯状ワークW1,W2の幅方向へ往復移動自在に支持された移動台13に配設されており、昇降台9と移動台13との間に設けた移動台用駆動装置14により両帯状ワークW1,W2の幅方向へ往復移動するようになっている。移動台用駆動装置14は、図4及び図9に示す如く、昇降台9に両帯状ワークW1,W2の幅方向に沿う姿勢で回転自在に支持されたネジ軸14aと、移動台13の下面側に取り付けられ、ネジ軸14aが螺挿されるブロックナット14bと、昇降台9に取り付けられ、ネジ軸14aを正逆回転させるモータ14cと、ネジ軸14aとモータ14cを連動連結する伝動機構14dとから成り、モータ14cによりネジ軸14aを正逆回転させ、ブロックナット14b及び移動台13をネジ軸14aに沿って移動させることによって、後行側作業テーブル4を両帯状ワークW1,W2の幅方向へ往復移動させることができるようになっている。
又、後行側作業テーブル4は、図4及び図6に示す如く、移動台13の上面にガイドレール15を介して両帯状ワークW1,W2の走行方向へ往復移動自在に支持されており、移動台13と後行側作業テーブル4との間に介設した複数の流体圧シリンダ16を伸縮動作させることによって、両帯状ワークW1,W2の走行方向へ往復移動するようになっている。
【0022】
前記クランプ機構5は、図3及び図4に示す如く、キャビネット本体1の上方位置に両帯状ワークW1,W2の幅方向へ水平移動自在に配設した支持フレーム17の下面側に設けられ、先行の帯状ワークW1及び後行の帯状ワークW2の突合せ部近傍の上面を保持する上部治具5′と、先行側作業テーブル3と後行側作業テーブル4の間に配設され、両作業テーブルと同期的に昇降して上部治具5′との間で両帯状ワークW1,W2の突合せ部近傍を挾持する下部治具5″とから構成されており、支持フレーム17を前進させて上部治具5′を下部治具5″の上方位置へ移動させた後、下部治具5″を上昇させることによって、両帯状ワークW1,W2の突合せ部近傍を上部治具5′と下部治具5″との間で緊密且つ強固に挾持固定することができるようになっている。
【0023】
尚、支持フレーム17は、図2、図3及び図5に示す如く、後側キャビネット部1Bの上面にガイドレール18を介して両帯状ワークW1,W2の幅方向へ水平移動自在に配設されており、ラック19a、ピニオン19b及びモータ19cから成る支持フレーム用駆動装置19によって、両帯状ワークW1,W2の幅方向へ往復移動自在となっている。この支持フレーム17を両帯状ワークW1,W2の幅方向へ往復移動させることによって、上部治具5′は下部治具5″の上方に位置するクランプ位置(図3の実線位置)と後側キャビネット部1Bの上方に位置する待機位置(図3の一点鎖線位置)とを取り得るようになっている。
【0024】
前記クランプ機構5の上部治具5′は、図4及び図10に示す如く、支持フレーム17の下面側に両帯状ワークW1,W2の幅方向に沿う姿勢で且つ僅かな間隔を空けて対向状に配設され、両帯状ワークW1,W2の突合せ部近傍の上面に当接し得る左右の上部クランプ5aから成り、主にアークの拡がりを遮断して両帯状ワークW1,W2の突合せ部にアークエネルギーを集中的に与えるものである。
即ち、左右の上部クランプ5aは、銅材により両帯状ワークW1,W2の幅よりも長めの長尺板状に形成されており、支持フレーム17の下面側に左右のクランプ取付け座20及び左右のスライド板21を介して両帯状ワークW1,W2の走行方向へ往復移動自在に取り付けられている。
【0025】
前記左右のクランプ取付け座20は、図10乃至図12に示す如く、アルミ合金等の金属材により両帯状ワークW1,W2の幅よりも長めの長尺板状に形成されており、支持フレーム17の下面側に対向状に配設されてボルトにより支持フレーム17の下面に固定されている。この左右のクランプ取付け座20の下面側には、案内レール22a及び案内レール22a上をボール(図示省略)を介して摺動するスライダ22bから成るリニアガイド22が収納固定される凹部20aがクランプ取付け座20の長手方向へ一定間隔毎に形成されている。
又、左右のスライド板21は、図10乃至図12に示す如く、アルミ合金等の金属材により両帯状ワークW1,W2の幅よりも長めの長尺板状に形成されており、左右のクランプ取付け座20の下面側にリニアガイド22を介して両帯状ワークW1,W2の走行方向へ往復移動自在に取り付けられている。この左右のスライド板21の下面側には、左右の上部クランプ5aを下方へ附勢するための弾性体23を収納する収納穴21aがスライド板21の長手方向へ一定間隔毎に形成されている。更に、左右のスライド板21の一側面には、後述するボールネジ機構26の一部分が収納される窪み部21bがスライド板21の長手方向へ一定間隔毎に形成されている。
【0026】
そして、左右の上部クランプ5aは、図10乃至図12に示す如く、両帯状ワークW1,W2の走行方向へ往復移動する左右のスライド板21の下面側に夫々複数本のボルト24により上下方向へ揺動自在に取り付けられており、左右のスライド板21と左右の上部クランプ5aとの間に夫々介設した複数の弾性体23(圧縮スプリング)により下方へ附勢され、鋭角状に形成した先端部が両帯状ワークW1,W2の突合せ部近傍の上面へ弾性的に当接するようになっている。
又、左右の上部クランプ5aは、支持フレーム17側(左右のクランプ取付け座20)と左右のスライド板21との間に夫々設けたモータ駆動型の駆動装置25により両帯状ワークW1,W2の走行方向へ往復移動し、左右の上部クランプ5a間の間隔を調整できるように構成されている。この実施の形態に於いては、左右の上部クランプ5a間の間隔は、0〜6mmの範囲で調整できるように設定されている。
【0027】
前記モータ駆動型の駆動装置25は、図10乃至図13に示す如く、支持フレーム17側(左右のクランプ取付け座20)と左右のスライド板21との間に夫々設けられ、左右のスライド板21を両帯状ワークW1,W2の走行方向へ夫々往復移動させる複数の左右のボールネジ機構26と、支持フレーム17側(左右のクランプ取付け座20)に配設した回転角度を制御できる左右のモータ27と、左右のモータ27の回転運動を左右のボールネジ機構26に夫々伝達する左右の伝動装置28とから成り、左右のモータ27の回転角度を制御することによって、左右の上部クランプ5a間の間隔を微調整できるように構成されている。
【0028】
具体的には、各ボールネジ機構26は、図11及び図13に示す如く、クランプ取付け座20の下面に固定した軸受29に帯状ワークW1,W2の走行方向へ沿う姿勢で回転自在に支持され、スライド板21と同じ高さ位置に配置されて一端部側がスライド板21の窪み部21bに収納されるボールネジ軸26aと、スライド板21の窪み部21b内に固定され、ボールネジ軸26aが螺挿されるボールナット26bとから成り、ボールネジ軸26aが正逆回転すると、廻り止めされたボールナット26bがボールネジ軸26aに沿って往復移動し、スライド板21を帯状ワークW1,W2の走行方向へ往復移動させるようになっている。この実施の形態に於いては、ボールネジ機構26は、長尺板状の左右のスライド板21を同じ姿勢を保った状態で平行移動させることができるように左右のクランプ取付け座20と左右のスライド板21との間に夫々3箇所設けられている。
【0029】
又、左右のモータ27は、図11に示す如く、左右のクランプ取付け座20の端面に夫々固定したモータブラケット30に取り付けられており、当該モータ27には基本ステップ角が4度又は8度のステッピングモータが使用されている。この実施の形態に於いては、モータ27にステッピングモータを使用しているが、回転角度を制御できるモータ27であれば如何なる型式のモータであっても良く、例えばサーボモータ(DCモータ+エンコーダ)やACサーボモータ(ACモータ+エンコーダ)、超音波モータを使用するようにしても良い。
【0030】
更に、左右の伝動装置28は、図11に示す如く、歯車伝動機構とベルト伝動機構とを組み合わせた構造に構成されており、左右のクランプ取付け座20の下面に固定した複数の軸受28aに回転自在に支持され、各ボールネジ機構26の近傍に位置して両帯状ワークW1,W2の幅方向に沿う連結軸28bと、連結軸28bに嵌着され、各ボールネジ機構26のボールネジ軸26aの近傍に位置する三つの駆動傘歯車28cと、各ボールネジ機構26のボールネジ軸26aに嵌着され、駆動傘歯車28cに夫々噛合する三つの従動傘歯車28dと、モータ27の出力軸27aに嵌着された駆動プーリ28eと、連結軸28bの一端部に嵌着された従動プーリ28fと、駆動プーリ28eと従動プーリ28fに巻き回されたベルト28gとから成る。
尚、前記歯車伝動機構は、連結軸28b、駆動傘歯車28c及び従動傘歯車28dから成り、又、ベルト伝動機構は、駆動プーリ28e、従動プーリ28f及びベルト28gから成る。
【0031】
而して、モータ駆動型の駆動装置25によれば、モータ27(ステッピングモータ)へ所定数のパルス入力信号が加えられると、モータ27の出力軸27aが入力パルス数に応じたステッピング回転を行い、この回転運動が伝動装置28によりボールネジ機構26のボールネジ軸26aに伝達され、これによってボールネジ軸26aを所定の角度又は所定の回転数だけ正回転又は逆回転させる。そうすると、ボールネジ機構26により左右のスライド板21及び左右のスライド板21に取り付けた左右の上部クランプ5aが両帯状ワークW1,W2の走行方向へ往復移動し、左右の上部クランプ5a間の間隔が調整されることになる。
【0032】
一方、クランプ機構5の下部治具5″は、図4及び図6に示す如く、先行側作業テーブル3と後行側作業テーブル4との間に配設され、両帯状ワークW1,W2の突合せ部近傍の下面に当接し得る長尺板状で且つ銅材製の左右の下部クランプ5bから成り、両帯状ワークW1,W2を突合せ溶接する際に余分な熱を吸収してビードの溶け落ちや穴あき、両帯状ワークW1,W2の熱歪等を防止すると共に、両帯状ワークW1,W2の突合せ部の裏側にシールドガスを流して溶接部の酸化を防止するようにしたものである。
又、左右の下部クランプ5bは、その上面が先行側作業テーブル3及び後行側作業テーブル4の上面と面一の状態になるように先行側作業テーブル3と後行側作業テーブル4との間に配設されており、先行側作業テーブル3に複数の取付け板31を介して取り付けられている。
更に、左右の下部クランプ5b間には、後述するセンタープレート6が遊嵌状態で挿通されるスリット状の間隙が形成されていると共に、左右の下部クランプ5b間の上面には、スリット状の間隙に連通してアルゴンガス等のシールドガスが流れる1mm幅の浅溝が形成されている。
【0033】
前記センタープレート6は、図4、図7及び図8に示す如く、厚さが0.5mmの薄板鋼板により長尺板状に形成されており、左右の下部クランプ5b間に形成したスリット状の間隙内に鉛直姿勢で且つ昇降自在に配設されている。このセンタープレート6は、昇降台9に取り付けた複数の流体圧シリンダ32のロッドに取付け金具33を介して取り付けられており、流体圧シリンダ32の短縮時には左右の下部クランプ5b間に形成したスリット状の間隙内に収納され、流体圧シリンダ32の伸長時にはその先端が左右の下部クランプ5bの上面から上方へ5mm程度突出するようになっている。
【0034】
前記TIG溶接装置7は、キャビネット本体1に設けた支持フレーム17に配設されており、両帯状ワークW1,W2の突合せ部を溶接する際に支持フレーム17と共に前方へ引き出され、支持フレーム17上を両帯状ワークW1,W2の幅方向へ沿って移動するようになっている。
即ち、TIG溶接装置7は、図4に示す如く、支持フレーム17の上面にガイドレール34を介して帯状ワークW1,W2の幅方向へ往復移動自在に配設された走行台35と、走行台35に昇降自在に支持され、先端部からアルゴンガス等のシールドガスを流すと共に、タングステン電極棒36aを挿着した溶接用トーチ36と、溶接用トーチ36を昇降動させるサーボモータ等から成るトーチ上下動駆動装置(図示省略)と、溶接状況(タングステン電極棒36aの消耗やアークの状態等)や帯状ワークW1,W2の突合せ状況を確認する監視カメラ(図示省略)と、走行台35に取り付けられ、先行の帯状ワークW1及び後行の帯状ワークW2の幅を自動測定するレーザセンサー37と、溶接開始前に於ける電極と帯状ワークW1,W2の間隙設定を容易にし、溶接中に於ける電極と帯状ワークW1,W2の接触事故を直ちに検知する電極接触検知装置(図示省略)と、走行台35を帯状ワークW1,W2の幅方向へ走行させる走行台用駆動装置38等から構成されており、帯状ワークW1,W2の突合せ部を溶接する際に支持フレーム17と一緒に前方へ引き出され、溶接用トーチ36の先端が自動的に高さ調整され且つ溶接用トーチ36が所定の速度で帯状ワークW1,W2の突合せ部に沿って直線移動するようになっている。
又、走行台用駆動装置38は、図2及び図3に示す如く、支持フレーム17の上面に帯状ワークの幅方向に沿う姿勢で回転自在に支持されたネジ軸38aと、走行台35に取り付けられ、ネジ軸38aが螺挿されるブロックナット38bと、支持フレーム17に取り付けられ、ネジ軸38aに連動連結されてネジ軸38aを正逆回転させるモータ38cとから成り、モータ38cによりネジ軸38aを正逆回転させ、ブロックナット38b及び走行台35をネジ軸38aに沿って移動させることによって、走行台35及びこれに支持された溶接用トーチ36を帯状ワークW1,W2の幅方向へ往復移動させることができるようになっている。
そして、このTIG溶接装置7は、アークが集中するように溶接用電極棒36aの先端がシャープな円錐形状に形成されていると共に、突合せ溶接時に於けるアーク長が磁気吹き(アークが磁場の影響を受けて偏向する現象)を生じない長さに設定されている。この実施の形態に於いては、突合せ溶接時に於けるタングステン電極棒36aの先端と両帯状ワークW1,W2の突合せ部との間隔が0.3mm〜0.7mmとなるように設定されている。
【0035】
次に、上述した帯状ワークの突合せ接合装置を用いて広幅の先行の帯状ワークW1と広幅の後行の帯状ワークW2を突合せ溶接により接合する場合について説明する。
尚、溶接電流、アーク長、不活性ガスの供給量、溶接用トーチ36の走行速度、タングステン電極棒36aの先端形状等の溶接条件は、帯状ワークW1,W2の材質、板厚、幅等に応じて最適の条件下に設定されていることは勿論である。又、左右の上部クランプ5a間の間隔は、帯状ワークW1,W2の厚み等に応じて予め最適な間隔に調整されている。
【0036】
先ず、先行の帯状ワークW1の後端部と後行の帯状ワークW2の先端部とを切断装置(図示省略)により幅方向に一直線状に切断加工した後、センタープレート6を流体圧シリンダ32により上昇させてセンタープレート6の先端部を左右の下部クランプ5bの上面から上方へ突出させる。
【0037】
次に、先行の帯状ワークW1の後端部を先行側作業テーブル3の上面に載せ、先行の帯状ワークW1の後端を手作業によりセンタープレート6の一方の側面に突き当てると共に、この状態で先行側作業テーブル3に設けた電磁石2をONの状態にして先行の帯状ワークW1の後端部を磁力により先行側作業テーブル3の上面へ吸着保持して固定する(図14(A)参照)。このとき、監視カメラにより先行の帯状ワークW1の後端の一部(溶接開始端)が監視カメラにより操作盤8のモニターに映し出される。
【0038】
引き続き、後行の帯状ワークW2の先端部を後行側作業テーブル4の上面に載せ、後行の帯状ワークW2の先端を手作業によりセンタープレート6の他方の側面に突き当てると共に、この状態で後行側作業テーブル4に設けた電磁石2をONの状態にして後行の帯状ワークW2の先端部を磁力により後行側作業テーブル4の上面へ保持固定する(図14(A)参照)。このときにも、監視カメラにより先行の帯状ワークW1の後端の一部(溶接開始端)が監視カメラにより操作盤8のモニターに映し出される。
【0039】
その後、センタープレート6を流体圧シリンダ32により下降させて左右の下部クランプ5b間に収納し、後行側作業テーブル4を流体圧シリンダ16により前進させて後行の帯状ワークW2の先端を先行の帯状ワークW1の後端に突き合せる(図14(B)参照)。この状態で後行側作業テーブル4を移動台用駆動装置14により帯状ワークW1,W2の幅方向へ移動調整し、先行の帯状ワークW1と後行の帯状ワークW2の幅方向のズレ修正を行い、両帯状ワークW1,W2の幅方向の両端を合致させる。このとき、両帯状ワークW1,W2は、両作業テーブル3,4に電磁石2により確実且つ強固に吸着保持されているため、帯状ワークW1,W2の突合せ時に帯状ワークW1,W2がズレたり、浮き上がったりすると云うことがなく、広幅の帯状ワークW1,W2の突合せを確実且つ正確に高精度で行えることになる。又、後行側作業テーブル4を流体圧シリンダ16により前進させて後行の帯状ワークW2の先端を先行の帯状ワークW1の後端に突き合せるようにしているため、両帯状ワークW1,W2の端面は常時加圧状態で突き合されて密着状態となっていると共に、先行の帯状ワークW1の後端と後行の帯状ワークW2の先端とを常に一定の押圧力で突き合せることができる。
【0040】
先行の帯状ワークW1の後端と後行の帯状ワークW2の先端とが突き合されたら、支持フレーム17が支持フレーム用駆動装置19により前進して左右の上部クランプ5aを帯状ワークW1,W2の突合せ部の上方位置(クランプ位置)へ移動させる(図15(A)参照)。この状態で昇降台9が流体圧シリンダ11により上昇し、両作業テーブル3,4及び下部クランプ5bをそれらの上面が上部クランプ5aの先端部下面の高さと略同じ位置になるように上昇させる(図15(B)参照)。これにより、両帯状ワークW1,W2は、端面同士が完全に突き合された状態で上部クランプ5aと下部クランプ5bとの間で緊密且つ強固に挾持固定される。このとき、帯状ワークW1,W2の幅よりも長めに形成した長尺板状の左右の上部クランプ5aの先端部を複数の弾性体23により帯状ワークW1,W2の突合せ部近傍の上面へ弾性的に当接させるようにしているため、広幅の帯状ワークW1,W2であっても端部全域を幅方向に亘って左右の下部クランプ5bの上面へ均一に押圧することができ、両帯状ワークW1,W2の突合せを高精度に行える。
【0041】
両帯状ワークW1,W2の突合せ部がクランプ機構5により挾持固定されたら、支持フレーム17上の走行台35が走行台用駆動装置38により前進し、走行台35に設けたレーザセンサー37が帯状ワークW1,W2の幅を自動測定し、所定のプログラムにてTIG溶接装置7により両帯状ワークW1,W2の突合せ部が突合せ溶接される。
【0042】
即ち、先行側作業テーブル3及び後行側作業テーブル4に夫々設けた電磁石2がOFFの状態になると共に、溶接用トーチ36が下降してタングステン電極棒36aの先端を両帯状ワークW1,W2の突合せ部の端部に位置させ、タングステン電極棒36aの先端と両帯状ワークW1,W2との間にアークを発生させる。その後、走行台35が走行台用駆動装置38により後退して溶接用トーチ36を帯状ワークW1,W2の突合せ部に沿って走行させ、突合せ部を突合せ溶接する。このとき、タングステン電極棒36aの先端をシャープな円錐形状に形成してアークを集中させていると共に、突合せ溶接時に於けるアーク長を磁気吹きが生じない長さに設定しているため、電磁鋼板のように表面に絶縁皮膜が形成されている帯状ワークW1,W2であっても突合せ溶接を良好且つ確実に行えると共に、アークが電磁石2及び帯状ワークW1,W2に生じる残留磁気の影響を受けることがなく、溶接中の磁気吹きを防止することができる。即ち、先行の帯状ワークW1及び後行の帯状ワークW2を先行側作業テーブル3及び後行側作業テーブル4の上面へ保持するのに電磁石2を使用していても、TIG溶接法を用いて両帯状ワークW1,W2の突合せ溶接を確実且つ良好に行うことができる。
【0043】
両帯状ワークW1,W2の突合せ溶接が終了したら、電磁石2がONの状態になって両帯状ワークW1,W2を両作業テーブル3,4の上面へ吸着保持すると共に、この状態で両作業テーブル3,4及び下部クランプ5bが下降し、引き続いて支持フレーム17及び上部クランプ5aが後退した後、電磁石2がOFFの状態になって両帯状ワークW1,W2を開放する。これによって、先行の帯状ワークW1の後端に接合された後行の帯状ワークW2は、先行の帯状ワークW1に引き続いてライン上へ供給されることになる。
【0044】
そして、突合せ溶接する先行の帯状ワークW1及び後行の帯状ワークW2の厚みが変わった場合には、クランプ機構5の左右の上部クランプ5aをモータ駆動型の駆動装置25により帯状ワークW1,W2の走行方向へ移動させ、左右の上部クランプ5a間の間隔を突合せ溶接する帯状ワークW1,W2の厚さに応じて調整する。
【0045】
即ち、両帯状ワークW1,W2の厚さが薄くなれば上部クランプ5a間の間隔を狭くし、又、両帯状ワークW1,W2の厚さが厚くなれば上部クランプ5a間の間隔を広くする。これにより、両帯状ワークの理想的な突合せ溶接を行うことができる。
例えば、両帯状ワークW1,W2の板厚が0.15mmのときには左右の上部クランプ5a間の間隔が1.0mmに、両帯状ワークW1,W2の板厚が0.23mmのときには左右の上部クランプ5a間の間隔が1.4mmに、両帯状ワークW1,W2の板厚が0.35mmのときには左右の上部クランプ5a間の間隔が2.0mmに、両帯状ワークW1,W2の板厚が0.5mmのときには左右の上部クランプ5a間の間隔が4.0mmになるようにモータ駆動型の駆動装置25により夫々調整する。
【0046】
上述した突合せ接合装置に於いては、突合せ溶接する帯状ワークの厚みに応じて左右の上部クランプ5a間の間隔をモータ駆動型の駆動装置25により調整するようにしているため、帯状ワークW1,W2の厚さや材質に応じて左右の上部クランプ5a間の間隔が最適な間隔になるように上部クランプ5a間の間隔を簡単且つ正確に自動調整することができる。
然も、モータ駆動型の駆動装置25が、ボールネジ機構26、回転角度を制御できるモータ27(ステッピングモータ)及び伝動装置28から成り、左右のモータ27の回転角度を制御することによって、左右の上部クランプ5a間の間隔を微調整できるように構成しているため、帯状ワークW1,W2の厚さに応じて上部クランプ5a間の間隔をより一層簡単且つ正確に自動調整することができる。
【0047】
尚、上記の実施の形態に於いては、左右のスライド板21の下面側に左右の上部クランプ5aを上下方向へ揺動自在に取り付けるようにしたが、他の実施の形態に於いては、左右のスライド板21の下面側に左右の上部クランプ5aを上下方向へスライド自在に取り付けるようにしても良い。
【0048】
上記の実施の形態に於いては、支持フレーム17の下面に固定した左右のクランプ取付け座20に左右のスライド板21を帯状ワークW1,W2の走行方向へ々往復移動自在に夫々取り付けるようにしたが、他の実施の形態に於いては、左右のクランプ取付け座20を省略し、左右のスライド板21を支持フレーム17の下面に帯状ワークW1,W2の走行方向へ往復移動自在に直接取り付けるようにしても良い。
【0049】
上記の実施の形態に於いては、モータ駆動型の駆動装置25をボールネジ機構26とモータ27と伝動装置28とから構成したが、他の実施の形態に於いては、伝動装置28を省略し、ボールネジ機構26のボールネジ軸26aにモータ27の出力軸27aを直接連結するようにしても良く、或いは歯車伝動機構及びベルト伝動機構から成る伝動装置28のベルト伝動機構を省略し、モータ27の出力軸27aを歯車伝動機構の連結軸28bに連結するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態に係る帯状ワークの突合せ接合装置の一部切欠正面図である。
【図2】突合せ接合装置の一部切欠側面図である。
【図3】突合せ接合装置の平面図である。
【図4】突合せ接合装置の要部の縦断面図である。
【図5】支持フレーム及び支持フレームを往復移動させる支持フレーム用駆動装置の縦断面図である。
【図6】先行側作業テーブル及び後行側作業テーブルの平面図である。
【図7】センタープレート及び昇降台部分の平面図である。
【図8】支持フレーム及び上部治具等が先行側作業テーブル及び後行側作業テーブルの上方位置へ移動した状態の縦断面図である。
【図9】昇降台及び移動台の縦断面図である。
【図10】クランプ機構の上部治具部分の底面図である。
【図11】クランプ機構の上部治具部分の一部省略拡大底面図である。
【図12】図10のA−A線拡大断面図である。
【図13】図10のB−B線拡大断面図である。
【図14】突合せ接合装置の作動状態を示し、(A)はセンタープレートにより先行の帯状ワーク及び後行の帯状ワークを位置決めし、両帯状ワークを電磁石により先行側作業テーブル及び後行側作業テーブルに吸着保持した状態の縦断面図、(B)は後行側作業テーブル4を移動調整して先行の帯状ワークの後端と後行の帯状ワークの先端とを突き合せた状態の縦断面図である。
【図15】突合せ接合装置の作動状態を示し、(A)は支持フレーム及び上部治具等が突き合された両帯状ワークの上方位置へ移動した状態の縦断面図、(B)は両作業テーブル及び下部治具等が上昇して両帯状ワークの突合せ部近傍を上部治具及び下部治具により挾持固定した状態の縦断面図である。
【符号の説明】
【0051】
5はクランプ機構、5′は上部治具、5″は下部治具、5aは上部クランプ、7はTIG溶接装置、17は支持フレーム、21はスライド板、23は弾性体、25はモータ駆動型の駆動装置、26はボールネジ機構、27はモータ(ステッピングモータ)、28は伝動機構、W1は先行の帯状ワーク、W2は後行の帯状ワーク。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向に夫々切断した先行の帯状ワーク(W1)の後端と後行の帯状ワーク(W2)の先端とを突き合せ、両帯状ワーク(W1),(W2)の突合せ部近傍を上部治具(5′)及び下部治具(5″)から成るクランプ機構(5)により上下方向から挾持固定した後、両帯状ワーク(W1),(W2)の突合せ部を溶接装置(7)により突合せ溶接して接合するようにした帯状ワークの突合せ接合装置に於いて、前記クランプ機構(5)の上部治具(5′)は、両帯状ワーク(W1),(W2)の突合せ部の上方に位置する支持フレーム(17)の下面側に両帯状ワーク(W1),(W2)の走行方向へ往復移動自在に配設した左右のスライド板(21)に夫々取り付けられ、両帯状ワーク(W1),(W2)の突合せ部近傍の上面に当接し得る対向状に配置した左右の上部クランプ(5a)から成り、前記左右の上部クランプ(5a)を支持フレーム(17)側と左右のスライド板(21)との間に夫々設けたモータ駆動型の駆動装置(25)により両帯状ワーク(W1),(W2)の走行方向へ往復移動させ、当該左右の上部クランプ(5a)間の間隔を調整できるように構成したこと特徴とする帯状ワークの突合せ接合装置。
【請求項2】
左右のスライド板(21)の下面側に両帯状ワーク(W1),(W2)の幅よりも長めに形成した長尺板状の左右の上部クランプ(5a)を夫々上下方向へ揺動自在又はスライド自在に取り付け、前記左右の上部クランプ(5a)の先端部を左右のスライド板(21)と左右の上部クランプ(5a)との間に夫々介設した複数の弾性体(23)により両帯状ワーク(W1),(W2)の突合せ部近傍の上面へ弾性的に当接させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の帯状ワークの突合せ接合装置。
【請求項3】
モータ駆動型の駆動装置(25)は、支持フレーム(17)側と左右のスライド板(21)との間に夫々設けられ、左右のスライド板(21)を両帯状ワーク(W1),(W2)の走行方向へ夫々往復移動させる左右のボールネジ機構(26)と、支持フレーム(17)側に配設した回転角度を制御できる左右のモータ(27)と、左右のモータ(27)の回転運動を左右のボールネジ機構(26)に夫々伝達する左右の伝動装置(28)とから成り、左右のモータ(27)の回転角度を制御することによって、左右の上部クランプ(5a)間の間隔を微調整できるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の帯状ワークの突合せ接合装置。
【請求項1】
幅方向に夫々切断した先行の帯状ワーク(W1)の後端と後行の帯状ワーク(W2)の先端とを突き合せ、両帯状ワーク(W1),(W2)の突合せ部近傍を上部治具(5′)及び下部治具(5″)から成るクランプ機構(5)により上下方向から挾持固定した後、両帯状ワーク(W1),(W2)の突合せ部を溶接装置(7)により突合せ溶接して接合するようにした帯状ワークの突合せ接合装置に於いて、前記クランプ機構(5)の上部治具(5′)は、両帯状ワーク(W1),(W2)の突合せ部の上方に位置する支持フレーム(17)の下面側に両帯状ワーク(W1),(W2)の走行方向へ往復移動自在に配設した左右のスライド板(21)に夫々取り付けられ、両帯状ワーク(W1),(W2)の突合せ部近傍の上面に当接し得る対向状に配置した左右の上部クランプ(5a)から成り、前記左右の上部クランプ(5a)を支持フレーム(17)側と左右のスライド板(21)との間に夫々設けたモータ駆動型の駆動装置(25)により両帯状ワーク(W1),(W2)の走行方向へ往復移動させ、当該左右の上部クランプ(5a)間の間隔を調整できるように構成したこと特徴とする帯状ワークの突合せ接合装置。
【請求項2】
左右のスライド板(21)の下面側に両帯状ワーク(W1),(W2)の幅よりも長めに形成した長尺板状の左右の上部クランプ(5a)を夫々上下方向へ揺動自在又はスライド自在に取り付け、前記左右の上部クランプ(5a)の先端部を左右のスライド板(21)と左右の上部クランプ(5a)との間に夫々介設した複数の弾性体(23)により両帯状ワーク(W1),(W2)の突合せ部近傍の上面へ弾性的に当接させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の帯状ワークの突合せ接合装置。
【請求項3】
モータ駆動型の駆動装置(25)は、支持フレーム(17)側と左右のスライド板(21)との間に夫々設けられ、左右のスライド板(21)を両帯状ワーク(W1),(W2)の走行方向へ夫々往復移動させる左右のボールネジ機構(26)と、支持フレーム(17)側に配設した回転角度を制御できる左右のモータ(27)と、左右のモータ(27)の回転運動を左右のボールネジ機構(26)に夫々伝達する左右の伝動装置(28)とから成り、左右のモータ(27)の回転角度を制御することによって、左右の上部クランプ(5a)間の間隔を微調整できるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の帯状ワークの突合せ接合装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−62243(P2008−62243A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239404(P2006−239404)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(591286823)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(591286823)
【Fターム(参考)】
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