説明

帯電ローラおよび画像形成装置

【課題】帯電ローラと感光体との安定したニップ幅が得られるとともに,トナーの融着を防止することのできる帯電ローラおよび画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明の帯電ローラ1は,芯金2と円筒状の弾性体層3とを有し,φ50mmの円板状の加圧部材を用いて,弾性体層3を半径方向に外側からその厚さの30%まで押し込んだときの押し込み軸方向単位長さ当たりの反力が,10〜60mN/mmの範囲内であり,軸方向長さが10mm,幅が弾性体層3の最大接触幅以上である加圧面を有する加圧部材を用いて,10mm/分を超えない一定の速さで,弾性体層3を半径方向に外側からその厚さの75%まで押し込み,直ちに同じ速さで加圧部材を初期の位置まで引き戻したときの,ヒステリシスロス率が20%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,画像形成装置に使用され,感光体等の表面を均一に帯電させるための帯電ローラおよびその画像形成装置に関する。さらに詳細には,基材として発泡弾性体を用いた帯電ローラおよび画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より,電子写真方式の画像形成装置では,感光体の表面を帯電装置によって均一に帯電させた上で,画像データに基づいて露光して静電潜像を形成することが行われている。ここで,帯電装置として,帯電ローラによるものがある。すなわち,バイアス電圧を印加した帯電ローラを感光体表面に押し当てて,電荷を注入することにより帯電を行う帯電装置である。このようなものでは,感光体に対する帯電ローラの接触状態ができるだけ均一であることが求められる。そのため,帯電ローラに弾性材料を用いることが多い(例えば,特許文献1,特許文献2参照。)。
【0003】
このような帯電ローラでは,従来より,弾性材料として比較的,硬度の低いものを使用し,押し当て力を大きくしないで押し当て変位を大きくすることが良いとされている。押し当て力を大きくすると,感光体の駆動トルクが上昇してしまうからである。また,押し当て力が大きいために感光体の表面温度が上昇してしまうと,感光体の表面にトナーが融着するおそれもあるからである。これに対して,弾性材料を低硬度のものとすれば,感光体の駆動トルクや表面温度を上昇させることがなく,感光体との均一なニップが得られると考えられていた。
【特許文献1】特開平6−202442号公報
【特許文献2】特開平7−92776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,低硬度のローラは一般に,形状の変化からの戻り速度が遅い。そのため,前記したような低硬度の弾性材料を用いた従来の帯電ローラでは,帯電ローラの回転速度によっては,感光体とのニップ幅が安定しないおそれがあった。特に高速プロセス機においてごく低硬度のローラを用いると,ニップから離れた後,完全に元の形状に戻る前に再び感光体と接触してしまうことがある。そのため,ニップ幅が設定通りにならないという問題点があった。
【0005】
またさらに,帯電ローラは抵抗体であるため,電流が流れると発熱する。また,帯電ローラのうち感光体とごく接近した位置にある箇所では放電が発生し,その放電によっても熱が発生する。帯電ローラの硬度が低すぎると,感光体と帯電ローラとが接近した状態が続くおそれがある。そのようになると,放電が起こりやすいという問題点があった。そして,この放電による熱によって,感光体表面にトナーの融着がおきるおそれがあった。つまり,低硬度であればよいというものではなかった。
【0006】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,帯電ローラと感光体との安定したニップ幅が得られるとともに,トナーの融着を防止することのできる帯電ローラおよび画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の帯電ローラは,芯金と円筒状の発泡弾性体層とを有し,画像形成装置の像担持体に接触してその表面層を帯電させる帯電ローラであって,φ50mmの円板状の加圧部材を用いて,発泡弾性体層を半径方向に外側からその厚さの30%まで押し込んだときの押し込み軸方向単位長さ当たりの反力が,10〜60mN/mmの範囲内であり,軸方向長さが10mm,幅が発泡弾性体層の最大接触幅以上である加圧面を有する加圧部材を用いて,10mm/分を超えない一定の速さで,発泡弾性体層を半径方向に外側からその厚さの75%まで押し込み,直ちに同じ速さで加圧部材を初期の位置まで引き戻したときの,押し込み過程における押し込み圧の押し込み量による積分値に対して,押し込み過程における押し込み圧と引き戻し過程における押し込み圧との差の押し込み量による積分値が占めるヒステリシスロス率が20%以下であるものである。
【0008】
本発明の帯電ローラによれば,発泡弾性体層が適度に低硬度であり,また復元の速いものとされている。従って,帯電ローラと感光体との安定したニップ幅が得られるとともに,トナーの融着を防止することができる。なおここで,押し込み軸方向単位長さ当たりの反力とは,実質的に,発泡弾性層を半径方向に圧縮したときのバネ定数のことである。
【0009】
さらに本発明は,回転する像担持体と,像担持体に接触してその表面層を帯電させる帯電ローラと,像担持体の表面に潜像を形成する露光装置と,像担持体の潜像にトナーを付与して現像する現像装置とを有する画像形成装置であって,帯電ローラが,芯金と円筒状の発泡弾性体層とを有し,φ50mmの円板状の加圧部材を用いて,発泡弾性体層を半径方向に外側からその厚さの30%まで押し込んだときの押し込み軸方向単位長さ当たりの反力が,10〜60mN/mmの範囲内であり,軸方向長さが10mm,幅が発泡弾性体層の最大接触幅以上である加圧面を有する加圧部材を用いて,10mm/分を超えない一定の速さで,発泡弾性体層を半径方向に外側からその厚さの75%まで押し込み,直ちに同じ速さで加圧部材を初期の位置まで引き戻したときの,押し込み過程における押し込み圧の押し込み量による積分値に対して,押し込み過程における押し込み圧と引き戻し過程における押し込み圧との差の押し込み量による積分値が占めるヒステリシスロス率が20%以下である画像形成装置にも及ぶ。
【0010】
さらに本発明は,像担持体の回転速度が周速200mm/sec以上であり,現像装置によって付与されるトナーが,重量平均粒径が4.5〜7.0μmの範囲内であり,ガラス転移による吸熱ピークが10〜30℃の範囲内と50〜65℃との範囲内との計2箇所にあり,軟化点が70〜110℃の範囲内にある画像形成装置において特に有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の帯電ローラおよび画像形成装置によれば,帯電ローラと感光体との安定したニップ幅が得られるとともに,トナーの融着を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下,本発明を具体化した最良の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,弾性材料を用いた帯電ローラを使用する画像形成装置に本発明を適用したものである。
【0013】
本形態に係る画像形成装置10は,図1にその主要部分を示すように,感光体11,現像装置12,ホッパ13を有している。また,感光体11の周囲には,感光体11の表面を所定の電位に帯電する帯電ローラ1と,感光体11の表面にレーザー光を照射して潜像を形成する露光装置15,感光体11上に残留した現像剤を回収するクリーナ16も備えられている。また,帯電ローラ1には,電源17が接続され,バイアス電圧が印加されている。なお,ここではホッパ13が現像装置12とは別に備えられた画像形成装置10を図示しているが,本発明は,ホッパが一体となった使い切り式の画像形成装置にも適用できる。
【0014】
現像装置12は,図1に示すように,現像ローラ21,トナー供給ローラ22,攪拌ローラ23,搬送ローラ24を有している。また,ホッパ13内には,搬送部材31および攪拌部材32が設けられている。そして,ホッパ13と現像装置12との間には,現像剤を搬送するための搬送路33が設けられている。
【0015】
現像装置12には適量の現像剤が収容され,画像形成に使用されるとともに,攪拌ローラ23によって適宜攪拌されている。ホッパ13内には新しい現像剤が収容され,図1中矢印で示すように回転する攪拌部材32によって攪拌されている。現像装置12内の現像剤が使用されて少なくなると,ホッパ13から現像装置12へ現像剤が供給される。その際には,搬送部材31により,搬送路33を介して現像装置12へ現像剤が供給される。そして,現像装置12では,搬送ローラ24によって図中奥行き方向(感光体11の軸方向)に搬送される。
【0016】
また,本形態の帯電ローラ1は,図2にその断面を示すように,芯金2と弾性体層3とを有している。弾性体層3は,軸方向に貫通孔が形成された,円筒形状の発泡弾性体である。芯金2は弾性体層3の貫通孔に接着されている。ここでは,新品の帯電ローラ1の自由状態での弾性体層3の厚さをDとする。
【0017】
画像形成時には,図1中に矢印で示すように,感光体11,帯電ローラ1,現像ローラ21,トナー供給ローラ22がそれぞれ回転される。特に,感光体11は,その周速が200mm/sec以上の高速で回転される。感光体11は,帯電ローラ1によってその表面が一様に帯電され,露光装置15によって部分的に露光されて,表面に静電潜像が形成される。静電潜像が形成された感光体11の部分は,さらに回転されて,次に現像装置12に対面する。
【0018】
このとき,現像ローラ21の表面には,トナー供給ローラ22によって適量のトナーが供給されている。感光体11の静電潜像は,現像ローラ21と対面した位置において,トナーが付与されて現像される。本形態の画像形成装置10で使用されるトナーは,重量平均粒径が4.5〜7.0μmの範囲内であり,ガラス転移による吸熱ピークが10〜30℃の範囲内と50〜65℃の範囲内との計2箇所にあり,さらに,フローテスターにおける軟化点が70〜110℃の範囲内にあるものである。なお,感光体11上に形成されたトナー像は,その後の工程で用紙に転写され,定着される。上記のようなトナーを使用しているので,本形態の定着温度は160℃程度でよい。
【0019】
画像形成時には,帯電ローラ1は,電源17によってバイアス電圧が印加される。そして,感光体11に接触して回転され,感光体11に電荷を注入することにより,感光体11の表面を帯電する。なお,弾性体層3は,感光体11に比較して柔らかい部材である。そのため,感光体11と帯電ローラ1との接触箇所では,主に弾性体層3が圧縮されることによってニップ部が形成される。
【0020】
ここで,弾性部材の特性の評価方法の一つとして,所定の加圧部材を用いて押し込み,続いて引き戻すという動作を行い,その圧縮率と圧縮圧力との関係を測定することがある。この圧縮率と圧縮圧力との間の関係は,図3に示すようなヒステリシス曲線を描く。これは,弾性部材の復元速度と圧縮部材による押し込みあるいは引き戻しの速度との関係から,押し込み過程と引き戻し過程とで,同じ圧縮率(あるいは押し込み量)でも圧縮圧力(押し込み圧)が異なることによる。この関係を以下ではヒステリシス特性という。本形態の帯電ローラ1は,後述するヒステリシスロス率が20%以下であるようなヒステリシス特性を有するものである。
【0021】
本形態では,以下の測定方法を採用して,帯電ローラ1のヒステリシス特性を測定した。まず,図4に示すように,軸方向(図4中の奥行き方向)の長さが約10mm以上の加圧板4を,弾性体層3の外周面に当接させる。また,加圧板4の巾方向(図4中の左右方向)の大きさは,最大押し込み時にも帯電ローラ1との接触幅より大きいものであればよい。なおここでは,帯電ローラ1として,芯金2を含んだ状態の新品のものを使用する。次に,その加圧板4を10mm/min以下の一定速度vで,芯金2に垂直な方向に押し込む。そして,その圧縮率が75%となったら,すなわち,圧縮箇所での弾性体層3の厚さhが初期状態の厚さDの25%となったら,直ちに,同じ速度vで加圧板4を引き戻す。この過程で,押し込み開始から加圧板4が弾性体層3から離れるまでの間の圧縮圧力wを測定する。
【0022】
上記の測定の過程で,圧縮率に対する圧縮圧力の変化を示したものが,図3のグラフである。この図3のグラフにおいて,図中上側の曲線L1は,押し込み過程での圧縮率に対する圧縮圧力の大きさを示す。図中下側の曲線L2は,引き戻し過程での圧縮率に対する圧縮圧力の大きさを示す。測定開始から押し込みを開始し,75%押し込み時には圧縮率と圧縮圧力との関係は点Pとなる。ここから引き戻しを開始し,加圧板4が帯電ローラ1から離れたとき,圧縮圧力は0となる。このとき弾性体層3はまだ復元途中であり,歪みが少し残っている。この状態が点Qである。また,点Pから横軸に垂線を下ろし,それらの交点を点Rとした。
【0023】
図3のグラフにおいて,ヒステリシスロス率は,押し込み過程における押し込み圧の押し込み量による積分値に対する,押し込み過程における押し込み圧と引き戻し過程における押し込み圧との差の押し込み量による積分値が占める割合で表すことができる。ここでは,原点−曲線L1−点P−点R−原点で囲まれる面積S1と原点−曲線L1−点P−曲線L2−点Q−原点で囲まれる面積S2とから,
ヒステリシスロス率(%) = (S2/S1) ×100
となる。本形態の帯電ローラ1では,この値が20%以下である。すなわち,押し込み時と引き戻し時との押し込み圧の差が小さい。これは,弾性体層3の復元が速いことを意味する。
【0024】
このようなものであれば,高速プロセス機においても適切なニップ巾が確保できる。例えば,感光体11の周速が200mm/s以上の高速プロセス機においても適切なニップ巾を確保するためには,帯電ローラ1の粘性が小さく,復元が早いことが必要である。すなわち,ヒステリシスロス率が20%より大きいものでは,粘性が高く,変形に対する復元が遅いため望ましくない。
【0025】
さらに,本形態の帯電ローラ1は,上記のヒステリシスロス率とは別の特性として,押し込みに対する反力の特性にも特徴を有している。すなわち,φ50mmの円板状の加圧部材を,新品の帯電ローラ1の外側から,芯金2に垂直な方向(半径方向)に押し込む。本形態の帯電ローラ1は,弾性体層3の厚さ方向に初期状態の厚さDの30%まで押し込んだ際の,押し込み軸方向の反力が10〜60mN/mmの範囲内であるという特性を有する。この反力は,例えば以下のようにして測定することができる。まず,プッシュプルゲージ(IMADA社製,ZP−20N)の先端にφ50mmのアルミ製円板を取り付けて,弾性体層3に対して芯金2に垂直な方向に押し込む。そして,圧縮箇所での弾性体層3の厚さhが初期状態の厚さDの70%となった時の,押し込み軸方向単位長さ当たりの反力を測定する。
【0026】
この反力が大き過ぎると弾性が高すぎ,感光体11とのニップ幅が十分確保できない。逆に小さすぎると弾性が低すぎ,部材強度に劣る。さらには,帯電ローラ1の弾性が低すぎると,帯電ローラ1と感光体11との接触した状態が長く継続しすぎることとなる。このようなものでは,帯電ローラ1に熱が発生し,トナーが融着するおそれがある。本形態の帯電ローラ1は,この反力が10〜60mN/mmであるので,十分なニップ幅が確保できるとともに,トナーの融着が発生することはない。
【0027】
次に,本形態の帯電ローラ1の製造方法について説明する。ポリオールとしてはポリエーテルポリオール,イソシアネートとしてはトルエンジフェニルジイソシアネートを用い,これらを混合した。このとき,オークスミキサ等の空気を混ぜ込むことを目的とした混合装置を用いて混合した。これにより,化学反応によって発生するガスによる化学的発泡と,ミキサによって強制的に混ぜ込まれた空気による機械的発泡とが同時に起き,均一で細かい泡が多数発生した発泡状態が得られる。これを硬化させて,発泡ウレタンを作成した。この発泡ウレタンを帯電ローラ1の形状に加工した。
【0028】
このように機械的発泡と化学的発泡とを併用することにより,セル数の多い発泡ウレタンが得られる。これは,化学的発泡ではセル壁の厚い泡が発生するのに対し,機械的発泡によれば,セル壁の薄い泡ができるからである。これらを併用することにより,トータルのエア量は従来のものとほとんど同じでありながら,個々のセルが小さく,セル数の多い発泡ウレタンを得ることができた。さらに,ポリオールとイソシアネートとの混合比率,または,オークスミキサの攪拌時間を調整することにより,上記のヒステリシスロス率の特性と反力の特性とをともに満たす帯電ローラ1を製造することができた。
【0029】
次に,ポリオールとイソシアネートとの混合比率,または,オークスミキサの攪拌時間を変更して得た,特性の異なる複数種の帯電ローラを用いて,感光体11へのトナー固着や画像への地肌かぶりの発生の有無を比較評価した。特に,低温定着トナーを用いた場合のトナー固着の発生の有無について比較した。
【0030】
評価に用いた低温定着トナーの特性は,重量平均粒径が4.5〜7.0μmであり,ガラス転移による吸熱ピークが10〜30℃と50〜65℃との2箇所にあり,さらに,フローテスターにおける軟化点が70〜110℃にあるものである。ここでは,粒子径が4.5μm,吸熱ピークが10℃と50℃,軟化点が70℃のもの(以下,トナーBという)と,粒子径が6.5μm,吸熱ピークが20℃と60℃,軟化点が100℃のもの(以下,トナーCという)とを使用した。
【0031】
このような低温定着トナーを用いると,例えば感光体11の周速が300mm/s程度の高速プロセスにおいて,一般に行われているローラ定着では,160℃程度の定着温度で十分である。これは,従来のトナーが200℃程度必要であったのに比較してかなり低温での定着である。なお,比較のために,従来より用いられており,低温定着ではないトナー(以下,トナーAという)についても評価実験を行った。トナーAの吸熱ピークは55〜65℃の間の1箇所で,軟化点は120〜150℃である。
【0032】
なお,上記のトナーの特性は以下の方法で得たものである。トナーの粒子径は,SYSMEX社製のFPIAを用いて測定した。また,吸熱ピークは,ASTM規格のD3418−8に準じて測定した。フローテスターにおける軟化点は,島津製作所社製のフローテスターCFT−500を用いて以下の条件で測定した。この測定条件は,高さ10mmのトナーペレットを作成し,昇温速度を6℃/分,プランジャ圧力は200MPa,ノズル径は1mmとした。そして,降下量5mmとなった温度を軟化点とした。
【0033】
評価は,KONICAMINOLTA社製のmagicolor5440DLの帯電装置を実施例や比較例の帯電ローラを使用したものに取り替える改造を施し,トナーカートリッジに,上記の低温定着トナー等を組み込んだもので実施した。このうち,実施例1〜実施例8は,本形態の特性範囲を満たす帯電装置である。実施例9〜11は,帯電装置は本形態の特性範囲を満たすものであるが,帯電装置以外の条件に本形態の範囲を満たさないものを使用した例である。実施例9,10は感光体周速が小さすぎるものである。実施例11は上記した従来のトナーを使用したものである。比較例1〜比較例4は本形態の特性範囲を満たさない帯電装置である。比較例1,2は,反力が大きすぎ,比較例3は反力が小さすぎ,比較例4はヒステリシスロス率が大きすぎるものである。
【0034】
評価基準は以下の通りとした。
トナー固着については:感光体表面にトナー固着がない場合に○
感光体表面にトナー固着がある場合に×
地肌かぶりについては:目視で確認できない場合に○
目視で確認できる場合に×
総合評価は:トナー固着と地肌かぶりとのいずれも○である場合に○
いずれかでも×である場合に×
【0035】
なお,この評価試験では,NN環境(温度23度,湿度65%)とHH環境(温度30℃,湿度90%)とで実験を行った。また,各環境条件において,帯電装置が新品の状態と,5%チャートを1万枚印刷した後のものとで実験を行った。そして,これらの各条件の全てにおいて基準を満たした場合にのみ○とした。
【0036】
【表1】

【0037】
評価実験の結果は表1の通りであった。実施例1〜8のいずれも,良好な結果であった。また,実施例9〜11の結果も良好であった。すなわち,本形態の帯電ローラ1は,高速プロセスであり低温定着トナーを採用した画像形成装置について有効であるとともに,従来の低速の画像形成装置や低温定着ではないトナーを使用した装置でも問題なく使用できることが確認できた。
【0038】
以上詳細に説明したように本形態では,帯電ローラ1として,ヒステリシスロス率が20%以下であり,かつ,φ50mmの円板状の加圧部材を弾性体厚みの30%まで押し込んだ際の押し込み軸方向の反力が10〜60mN/mmの範囲内であるものを使用している。従って,小さい押し当て力で十分なニップが得られるとともに,ニップから脱出した後の復元が速い。これにより,過剰に発熱することはない。すなわち,感光体との安定したニップ幅が得られるとともに,トナーの融着を防止することのできる帯電ローラとなっている。
【0039】
なお,本形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
例えば,上記の形態では,帯電ローラ1として,芯金2と弾性体層3のみを有するものを示しているが,さらにその表面にフィルム状の表層等を有していても良い。また例えば,画像形成装置の帯電ローラ以外の部材については,図示のものに限らず,どのようなものであっても良い。本発明は,カラーあるいはモノクロのプリンタ,コピー機,FAX等のあらゆる画像形成装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本形態に係る画像形成装置の主要部分を示す概略構成図である。
【図2】帯電ローラを示す断面図である。
【図3】ヒステリシス曲線を示すグラフ図である。
【図4】帯電ローラのヒステリシス曲線を得るための測定方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1 帯電ローラ
2 芯金
3 弾性体層
10 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金と円筒状の発泡弾性体層とを有し,画像形成装置の像担持体に接触してその表面層を帯電させる帯電ローラにおいて,
φ50mmの円板状の加圧部材を用いて,前記発泡弾性体層を半径方向に外側からその厚さの30%まで押し込んだときの押し込み軸方向単位長さ当たりの反力が,10〜60mN/mmの範囲内であり,
軸方向長さが10mm,幅が前記発泡弾性体層の最大接触幅以上である加圧面を有する加圧部材を用いて,10mm/分を超えない一定の速さで,前記発泡弾性体層を半径方向に外側からその厚さの75%まで押し込み,直ちに同じ速さで加圧部材を初期の位置まで引き戻したときの,押し込み過程における押し込み圧の押し込み量による積分値に対して,押し込み過程における押し込み圧と引き戻し過程における押し込み圧との差の押し込み量による積分値が占めるヒステリシスロス率が20%以下であることを特徴とする帯電ローラ。
【請求項2】
回転する像担持体と,前記像担持体に接触してその表面層を帯電させる帯電ローラと,前記像担持体の表面に潜像を形成する露光装置と,前記像担持体の潜像にトナーを付与して現像する現像装置とを有する画像形成装置において,
前記帯電ローラが,
芯金と円筒状の発泡弾性体層とを有し,
φ50mmの円板状の加圧部材を用いて,前記発泡弾性体層を半径方向に外側からその厚さの30%まで押し込んだときの押し込み軸方向単位長さ当たりの反力が,10〜60mN/mmの範囲内であり,
軸方向長さが10mm,幅が前記発泡弾性体層の最大接触幅以上である加圧面を有する加圧部材を用いて,10mm/分を超えない一定の速さで,前記発泡弾性体層を半径方向に外側からその厚さの75%まで押し込み,直ちに同じ速さで加圧部材を初期の位置まで引き戻したときの,押し込み過程における押し込み圧の押し込み量による積分値に対して,押し込み過程における押し込み圧と引き戻し過程における押し込み圧との差の押し込み量による積分値が占めるヒステリシスロス率が20%以下であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置において,
前記像担持体の回転速度が周速200mm/sec以上であり,
前記現像装置によって付与されるトナーが,
重量平均粒径が4.5〜7.0μmの範囲内であり,
ガラス転移による吸熱ピークが10〜30℃の範囲内と50〜65℃との範囲内との計2箇所にあり,
軟化点が70〜110℃の範囲内にあるものであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−20262(P2009−20262A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182066(P2007−182066)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】