説明

帯電ローラ

【課題】セット跡画像を発生させることのない帯電ローラを提供する。
【解決手段】帯電ローラは、度が40℃で、湿度が90%の環境下に1ヶ月間放置した後の圧縮永久歪み量を20μm以下とするとともに、弾性層の厚さを1.5mm以下として構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置の感光体に押圧されて回転し感光体に電荷を供給する帯電ローラに関し、特に、帯電ローラを感光体に長時間押圧したあとの画像劣化を防止することのできるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンター等の電子写真装置では、まず、感光体の表面を一様に帯電させ、この感光体に光学系から映像を投射して、光を当てた部分の帯電を消去することによって潜像を形成する静電潜像プロセスにより静電潜像を得、次いで、トナーの付着により静電潜像をトナー像として顕像化し、紙等の記録媒体へのトナー像の転写により、プリントする方法がとられている。
【0003】
そして、感光体の表面を帯電するのには、感光体に弾性ローラを当接させ、これらを回転させながら弾性ローラに電圧を印加することにより、感光体表面を帯電させる接触帯電方式が広く実施されている。この接触帯電方式で使用される弾性ローラは帯電ローラと呼ばれ、例えば、ゴムやウレタンフォーム等の材料を、金型内に注入し、あるいは押出機から押し出してシャフトの周りに弾性層を形成し、この弾性層の半径方向外側に、ウレタン、アクリルウレタン、アクリルエステル、ナイロン等の樹脂やNBR等の合成ゴムに導電剤を添加して抵抗値を調整した抵抗調整層を形成し、更にその外側にアクリル、ウレタン、ナイロン等の樹脂を有機溶剤や水に溶解した樹脂溶液をディッピング法等により塗布して、表皮層を形成したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−131474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの帯電ローラは、感光体に電荷を注入しない時には、回転することなく感光体に押圧された状態で放置され、この間、同じ姿勢で長時間押圧されるので、押圧による圧縮永久歪みが発生し、放置後、電子写真装置を作動させたとき、帯電ローラの周長に等しいピッチの濃淡がプリント画像に現れる、いわゆるセット跡画像が発生するという問題を生じる可能性があり、問題となっていた。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、セット跡画像を発生させることのない帯電ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>は、直径が5〜6mmの芯金の周囲に弾性層を配設した帯電ローラにおいて、
温度が40℃で、湿度が90%の環境下に1ヶ月間放置した後の圧縮永久歪み量を20μm以下とするとともに、弾性層の厚さを1.5mm以下としてなる帯電ローラである。
【0007】
<2>は、<1>において、弾性層のマイクロ硬度を35〜50とするとともに、振れをローラ長さ方向全領域において、70μm以下とし、ローラ長さ方向断面において、長さ方向中央が端部より突出させ、その突出の程度を表すクラウン量を45〜120μmとしてなる帯電ローラである。
【0008】
<3>は、<1>もしくは<2>において、弾性層を、独立気泡を分散させたフォーム体で構成してなる帯電ローラである。
【0009】
<4>は、<1>〜<3>のいずれかにおいて、弾性層の外側にローラ表面を構成する表皮層を配設し、表皮層のマイクロ硬度を弾性層より高くしてなる帯電ローラである。
【発明の効果】
【0010】
<1>の発明によれば、弾性層の厚さを1.5mm以下とすることにより、圧縮永久歪み量を20μm以下としたので、帯電ローラに対する押圧力を除去したあとの残留歪みをなくすことができ、セット跡画像の発生を抑えることができる。
【0011】
<2>の発明によれば、弾性層のマイクロ硬度を35〜50とするとともに、振れをローラ長さ方向全領域において、70μm以下とし、ローラ長さ方向断面において、長さ方向中央が端部より突出され、その突出の程度を表すクラウン量を45〜120μmとしたので、詳細を後述するように通常画像についても改良効果をあげることができる。
【0012】
<3>の発明によれば、弾性層を、独立気泡を分散させたフォーム体で構成したので、上記のマイクロ硬度を容易に実現することができる。
【0013】
<4>の発明によれば、弾性層の外側に、弾性層よりマイクロ硬度の高い表皮層を配設し、機能の異なる複数の層よりなる多層構造としたので、ローラ全体の硬度を低う抑えつつ、ローラ表面に所望の特性を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る実施形態について説明する。図1は、この実施形態の帯電ローラを例示する長さ方向断面図であり、帯電ローラ10は、芯体1の外周に弾性層2を形成し、この弾性層2上に特定の樹脂組成物からなる抵抗調整層3を形成すると共に、この抵抗調整層3上に表皮層4を形成したものとして構成することができる。なお、抵抗調整層3については、必須の構成ではなく、弾性層2の外側に直接表皮層4を形成してもよく、この場合、以下の実施形態についての説明から抵抗調整層3の記載を除いて理解すればよい。
【0015】
上記芯体1としては、金属或いはプラスチック製のシャフトを用いることができる。また、上記弾性層2を形成する弾性体は、特に制限はなく、感光体等の被帯電体との良好な接触状態を得ることができる弾性体であればよく、公知のゴム或いは樹脂、又はこれらに独立気泡を分散させたフォーム体で形成することができる。具体的には、ポリウレタン、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム等を基材ゴムとするゴム組成物が例示されるが、特にポリウレタンが好ましく、更にはポリウレタンフォームがより好ましく用いられる。この場合、ポリウレタンフォームの発泡倍率は、特に制限されるものではないが、1.2〜50倍、特に1.5〜10倍程度が好ましく、フォーム密度は、0.1〜0.7g/cm3程度が適当である。
【0016】
上記弾性層2には、導電剤を添加することにより、導電性を付与又は調整して所定の抵抗値とすることができる。その導電剤としては、特に限定されず、ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウムの過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、臭化ベンジル塩、塩化ベンジル塩等のハロゲン化ベンジル塩等の第四級アンモニウム塩などの陽イオン性界面活性剤、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩などの陰イオン界面活性剤、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等の非イオン性帯電防止剤などの帯電防止剤、NaClO4、LiAsF6、LiBF4、NaSCN、KSCN、NaCl等のLi+、Na+、K+等の周期律表第1族の金属塩、あるいはNH4+の塩などの電解質、また、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン、酸化処理を施したカラー(インク)用カーボン、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト、アンチモンドープの酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属及び金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等が挙げられる。この場合、これら導電剤の配合量は、組成物の種類に応じて適宜選定され、通常弾性層の体積抵抗率が100〜108Ω・cm、好ましくは102〜106Ω・cmとなるように調整される。
【0017】
また、この弾性層2には、上記導電剤の他にも、必要に応じて、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、分散剤、チクソトロピー性付与剤、湿潤剤、ブロッキング防止剤、架橋剤、成膜助剤等の公知の添加剤を適量配合することができる。
【0018】
この弾性層2上に形成される上記抵抗調整層3は、樹脂基材に導電剤を添加した樹脂組成物により形成される。この樹脂組成物を構成する樹脂基材は、上記体積抵抗率を有するものであればいずれのものでもよく、特に制限されるものではないが、具体的には、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して用いることができ、特にウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリル樹脂等の水系樹脂が好ましく用いられる。
【0019】
この樹脂基材に添加される導電剤としては、弾性層2に用いられた導電剤と同じものを使用することができる。
【0020】
この抵抗調整層3は、帯電部材の電気抵抗値を調整するものであり、該抵抗調整層3の抵抗値は上記弾性層2の抵抗値や部材に求められる抵抗値に応じて適宜設定されるが、通常は1x103〜1x108Ω・cm、特に1x105〜1x107Ω・cmとされる。この場合、上記導電剤の配合量は、この抵抗値が達成される適量とされるが、通常は上記樹脂基材100重量部に対して、0.1〜20重量部、特に1〜10重量部とすることが好ましい。
【0021】
この抵抗調整層3には、上記導電剤の他に本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜な添加剤を配合することができ、例えば、オキサゾリン系、エポキシ系、メラミン系、グアナミン系、イソシアネート系、フェノール系等の架橋剤を用いる低抵抗樹脂基材に応じて適量配合することができ、また抵抗調整層3の目的を逸脱しない範囲で、造膜助剤、分散剤、増粘剤、レベリング剤、チクソトロピー性付与剤、構造粘性付与剤等の公知の添加剤を適量配合することができる。
【0022】
抵抗調整層3の厚さは、上記弾性層2の厚さや帯電部材の形態などに応じて適宜選定され、特に制限されるものではないが、通常は10〜500μm、特に50〜300μmとすることが好ましく、50μm未満であると、十分な抵抗値の調整を行うことが困難になる場合があり、一方300μmを超えると、相対的に弾性層の厚みが薄くなってローラ硬度(部材硬度)が高くなってしまったり、必要以上にコスト高となったりする場合がある。
【0023】
この抵抗調整層3の形成方法は、特に制限はなく、公知のディピング法、スプレー法、押出成形法などの公知の方法により形成することができるが、通常は上記低抵抗樹脂基材、イオン導電性物質、その他の添加剤を分散又は溶解した塗料溶液を用いてディピング法、スプレー法などにより、上記弾性層2上に塗布する方法が好ましく用いられ、特にディピング法が好適に用いられる。
【0024】
次に、上記表皮層4を形成する材料としては、帯電部材の表皮層を形成する場合に用いられる公知のゴムや樹脂を用いることができ、特に制限されるものではないが、ウレタン変性アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、及びフッ素樹脂等が例示され、これらの1種又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中では、フッ素樹脂が特に好ましく用いられ、フッ素樹脂を用いることにより、良好な低摩擦性及びトナー付着性(非付着性)を達成することができる。
【0025】
このフッ素樹脂として具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン-エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ビニリデンフルオライド共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド等が例示される。
【0026】
また、この表皮層4を形成する樹脂中には、特に制限されるものではないが、導電剤を添加して表皮層の導電性(電気抵抗)を付与又は調整することができる。この場合、導電剤としては、特に制限はなく、各種電子導電剤や各種イオン導電剤を用いることができるが、本発明では特にカーボンを用いることが好ましい。
【0027】
導電剤の添加量は、所望とする抵抗が得られるように適宜調整することができる。この場合、表皮層4の抵抗は、体積抵抗率1x104〜1x1012Ω・cm、特に1x106〜1x108Ω・cmとすることが好ましく、このような体積抵抗率を達成するように導電剤の添加量を調整することができ、導電剤としてカーボンを用いた場合の添加量は、通常、基材樹脂に対して1〜100phr、特に10〜70phr程度とされる。
【0028】
なお、この表皮層を形成する樹脂組成物には、架橋剤、増粘剤、チクソトロピー性付与剤、構造粘性付与剤等の添加剤を必要に応じて添加することができる。
【0029】
この表皮層4を形成する方法は、特に制限されるものではないが、通常は上記樹脂成分及び導電剤等を分散又は溶解した塗料溶液を調製し、この塗料溶液をディピング法、スプレー法、ロールコーター法などにより上記抵抗調整層上に塗布して乾燥固化させる方法が採用され、特にディピング法が好ましく用いられる。なお、上記塗料溶液を調製するための溶媒としては、樹脂組成物を構成する基材樹脂の種類などに応じて適宜選定すればよく、例えば基材樹脂としてフッ素樹脂を用いる場合には、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン、キシレン等が好適に用いられる。
【0030】
この表皮層4の厚さは、帯電ローラ10の形態等に応じて設定され、特に制限されるものではないが通常1〜30μm、特に1〜20μmとすることができ、1μm未満であると、ローラの耐久性に劣る場合があり、一方20μmを超えると帯電特性に悪影響を与えたり、表面にしわを生じたりするなど、良好な表面性が得られない場合がある。
【0031】
本発明の帯電ローラ10は、上記弾性層2上に表皮層4を形成し、もしくはこれらの層2、4の間に抵抗調整層3を配設したものであるが、必要に応じて弾性層2と抵抗調整層3との間や抵抗調整層3と表皮層4との間に他の層を介在させることもできる。例えば、上記弾性層2と抵抗調整層3との間に両層を強固に接着させるために厚さ1〜50μm程度の接着層を設けることができる。この場合、接着層は、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂材料を含有する塗料をディピング法などにより弾性層2上に塗布することにより形成することができ、必要に応じて導電剤や他の添加剤を添加することもできる。
【0032】
ここで、上記抵抗調整層3、表皮層4及び接着層等の形成には、上述のように、ディッピング法により塗料を塗布し乾燥させることにより、成膜する方法が好ましく採用されるが、このディッピング法による成膜操作の良否が各層の均一性等に大きく影響し、これが帯電ローラの性能の良否にも大きく影響する。このため、これら各層の成膜時の温度条件管理や乾燥条件管理を厳格に行い、良好な成膜状態を確実に得ることは、重要である。
【0033】
即ち、上記抵抗調整層3、表皮層4、接着層などをディッピング法により形成する場合、通常、工業的には、30本以上の複数本のローラをハンガーに垂直に吊るし、複数本のローラを同時に塗料に浸漬して引き上げ、送風により乾燥させる方法がとられるが、この場合、塗料塗布時における塗料や塗布されるローラの温度管理、及び乾燥のための送風条件を厳格に行うことが、良好な成膜状態を得るために重要である。
【0034】
具体的には、塗料温度の管理については、ディップ用浴槽にヒータ及び温度センサーを設け、塗布時の塗料温度を25〜35℃の範囲でほぼ一定に保持することが好ましく、より具体的には塗料を上記温度範囲で±1℃の範囲に維持した状態でディッピングによる塗料塗布を行うことが好ましい。また、ローラの温度管理については、塗料に浸漬する直前の全てのローラをヒータや温風によりほぼ均一の温度に調整することが好ましく、より具体的には3℃以上の温度にローラを加熱し、各ローラの温度のばらつきを全ローラの平均温度の±1℃とすることが好ましい。更に、送風条件については、ハンガーに吊るした複数本のローラに対して、下方から上方へと向けて送風することにより乾燥を行うことが好ましく、更には全ローラの表面各所における空気流の速度のばらつきを±0.1m/s以内とすることか好ましい。そして、これら塗料温度管理、ローラ温度管理及び送風条件管理を行うことにより、塗料の液ダレや膜張り、或いは気泡の発生などを生じることなく、良好に上記抵抗調整層3、表皮層4、接着剤層などを形成することができる。
【0035】
以上のように構成された帯電ローラ10は、温度が40℃で、湿度が90%の環境下に1ヶ月間放置した後の圧縮永久歪み量を20μm以下であり、かつ弾性層の厚さを1.5mm以下であるという特徴を有する。すなわち、従来は弾性層が厚かったことに起因して圧縮永久歪み量が大きく、その結果、セット跡画像が良好でないという問題が発生する可能性があったが、本発明は、弾性層の厚さを1.5mm以下に抑えることにより、圧縮永久歪み量を20μm以下にすることを可能にし、セット跡画像の問題を解消することができる。
【0036】
ここで、圧縮永久歪み量は、帯電ローラ10の使用前後(例えば、カートリッジへの耐電ローラ10の組み込み前後)における該ローラの外径差によって定義することができ、その測定は、一般的なレーザ形状測定機(例えば、ミツトヨ(株)製高精度レーザ測定機LSM-430V)を用いて測定することができる。
【0037】
本発明の帯電ローラ10は、弾性層のマイクロ硬度を35〜50とするとともに、振れをローラ長さ方向全領域において、70μm以下とし、ローラ長さ方向断面において、長さ方向中央が端部より突出され、その突出の程度を表すクラウン量を45〜120μmとすることが好ましく、このようにすることによって、通常の画像を一層良好なものにすることができる。
【0038】
帯電ローラ10と感光体とは接触しながら回転しているのだが、帯電ローラ10の振れが大きい場合には、帯電ローラ10と感光体との間に空隙が生じてくる。更にその空隙距離も様々になってしまう。この場合、感光体上に残留しているトナー粒子及び外添剤が、その空隙に侵入しやすくなり、帯電ローラ10にムラとなって付着する。従って、ローラ表面は、まだらに汚れる結果となり、画像不良の原因となってしまうのである。
【0039】
ここで、マイクロ硬度を35未満とした場合には、弾性層を形成する際、エア同士が結合して独立気泡を形成しづらくなって硬度ムラを発生しやすく、一方、これを、50を越えるものとした場合には、硬度が高すぎて帯電ローラを感光体に押しつけても変形しづらくローラ中央部で画像不良が発生する。また、振れが70μmを越えた場合には、振れの大きい部分で感光体との距離が変化して帯電量が不均一になってしまう。なる問題が生じる。そして、このようなマイクロ硬度を達成するには、弾性層2をフォーム体よりなるものとするのが好ましく、この構成を容易に実現することができる。
【0040】
また、クラウン量を45μm未満とした場合には、ローラ長さ方向中央部の接触圧が低くなり、一方、これを、120μmを越えるものとした場合には、ローラ長さ方向中央部が強く接触しすぎ、いずれの場合も帯電量の不均一を招く虞がある。
【0041】
本発明における帯電ローラ10の振れの測定は、ミツトヨ(株)製高精度レーザ測定機LSM−430vを用いて行った。本測定機により、外径を、ローラ長さ方向各5点について測定し、各点について測定した外径の最大値と最小値との差の平均値を振れとした。
【0042】
また、本発明における帯電部材のクラウン量の測定も、上記のミツトヨ(株)製高精度レーザ測定機LSM−430vを用いて行った。本測定機により、ローラ中央部及び中央部から端部へ向かう90mmの位置において外径を測定し、中央部の外径と両端部方向へ各90mmの位置における外径の平均値との差をローラクラウン量とする。例えばローラ長250mmの帯電部材においては、一方の端から35mm、125mm、215mmの3点において外径を測定する。その際、一方の端から35mm位置における外径をA(mm)、125mm位置における外径をB(mm)、215mm位置における外径をC(mm)とすると、クラウン量(μm)は式(1)で求められる。

クラウン量(μm)={B-(A+C)/2}x1000 (1)
【実施例】
【0043】
直径や力学的特性の異なる複数の帯電ローラを試作し、それぞれのローラをプリンタカートリッジに装着して画像評価を行った。結果を表1にまとめた。
【0044】
【表1】

【0045】
上記において、弾性層の長さは220mmであった。また、比較例1および実施例1の弾性層には、ポリエーテルポリオール(三井武田ケミカル社製・アクトコールED-26)を60質量部、TDI(三井武田ケミカル社製・コスモネートT-80)40質量部に、カーボン(旭カーボン社製・旭#80)を20質量部添加し成形したソリッド体ウレタンを用い、また、比較例2および実施例2の弾性層には、上記材料とエアとを混合し、密度が0.5となるように成形したフォーム体ウレタンを用いた。
【0046】
また、画像評価は、それぞれのローラをLBP2050(キヤノン製)に装着して画像を印刷し、目視で評価した。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の帯電ローラは、種々の電子写真装置に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る帯電ローラを示す長さ方向断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 芯体
2 弾性層
3 抵抗調整層
4 表皮層
10 帯電ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径が5〜6mmの芯金の周囲に弾性層を配設した帯電ローラにおいて、
温度が40℃で、湿度が90%の環境下に1ヶ月間放置した後の圧縮永久歪み量を20μm以下とするとともに、弾性層の厚さを1.5mm以下としてなる帯電ローラ。
【請求項2】
弾性層のマイクロ硬度を35〜50とするとともに、振れをローラ長さ方向全領域において、70μm以下とし、ローラ長さ方向断面において、長さ方向中央が端部より突出させ、その突出の程度を表すクラウン量を45〜120μmとしてなる請求項1に記載の帯電ローラ。
【請求項3】
弾性層を、独立気泡を分散させたフォーム体で構成してなる請求項1もしくは2に記載の帯電ローラ。
【請求項4】
弾性層の外側にローラ表面を構成する表皮層を配設し、表皮層のマイクロ硬度を弾性層より高くしてなる請求項1〜3のいずれかに記載の帯電ローラ。

【図1】
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【公開番号】特開2007−121445(P2007−121445A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−310210(P2005−310210)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】