説明

帯電ローラ

【課題】感光体汚染がなく、かつ、帯電均一性に優れた低抵抗の帯電ローラを提供する。
【解決手段】弾性体層が、エピヒドリンゴムに少なくとも下記一般式(但し、Aはカリウム又はテトラアルキルアンモニウムであり、nは3〜7である)で表されるパーフルオロアルカンスルホン酸塩を配合したゴム原料から構成される。なお、表面に抵抗層が形成されていることが好ましい。
CF3(CF2nSO3-・A+

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ページプリンター、ファクシミリなどの電子写真方式の画像形成装置において、画像形成プロセス、特には、帯電プロセスに使用する帯電ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した画像形成装置において、感光体を帯電する手段として、様々な帯電手段が用いられている。帯電手段として、従前はコロナ放電を利用されていたが、近年、放電によるオゾン発生等の問題から、感光体に帯電部材を接触させて帯電する接触帯電方式が多く利用されるようになっている。接触帯電方式では、帯電部材に直流電圧に交流電圧を重畳して印加するか、直流電圧のみを印加する。
【0003】
接触帯電方式に用いられる帯電部材としては、ローラ形状、ブレード形状、ブラシ形状、ベルト形状等種々の形態のものがあり、一般的には、ローラ形状のもの、すなわち、帯電ローラが多く採用されている。
【0004】
帯電ローラでは、求められる性能として、感光体を均一に帯電させることが必要不可欠であり、そのため抵抗として104Ω以上108Ω以下の半導電性範囲にあること、かつ抵抗が均一であることが望ましい。また、帯電ローラは感光体と接触して使用されるので、通常導電性芯金に弾性体層が形成されている。
【0005】
そこで、帯電ローラの抵抗を上記の範囲に調整する方法として、例えば、弾性体層が導電性ゴムであるローラの場合、ゴムにカーボンブラックや導電性金属酸化物といった電子導電系導電性粒子を添加、分散する調整方法(電子導電系の機構利用)、ゴム自身が導電性を有するイオン導電性ゴムを使用したり、ゴムに第4級アンモニウム塩、リチウム塩等のイオン導電剤を添加したりする調整方法(イオン導電系の機構利用)の2通りがある。
【0006】
電子導電系の場合、導電性粒子の添加量にて抵抗領域を容易に調整可能であり、また、導電性粒子の分散状態が抵抗領域及び抵抗の均一性と相関している。分散の安定化は、導電性粒子の粒径、ストラクチャー、表面官能基等の物性によるゴムとの相溶性や、ゴム組成物の混練条件の最適化が必要であるため、狙いとする抵抗領域のゴム組成物を安定に製造すること、またゴム組成物の抵抗均一性を向上することは容易ではない。
【0007】
一方、イオン導電系の場合、導電性粒子の分散状態によらず、ゴム自身の抵抗が反映されるため、電子導電系と比較して抵抗の均一性は高い。ただし、ゴム自身の抵抗として、107Ω以下の抵抗に調整するためには、界面活性剤等のイオン導電性物質を添加する必要がある。
【0008】
電気抵抗が均一な半導電性の弾性体層を得る方法として、エピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリルブタジエン共重合体であるニトリルゴム(NBR)等のそれ自身が半導電性を有する極性ゴム(イオン導電系ゴム)、あるいは、原料ゴムにイオン導電剤を添加して半導電性を付与したイオン導電系ゴムにより弾性体層を構成する方法が知られている。
【0009】
例えば、特許文献1には、電子写真式複写装置又はレーザープリンタ等に使用される帯電、転写(中間転写)、現像、クリーニング等のローラ、ベルト、ブレード等に好適な導電性部材として、基材がNBR系ゴムを含有し、これにイオン導電性物質を添加してなる導電性部材が開示されている。ここでは、NBR系ゴムにイオン導電性物質を添加することにより、カーボン等のフィラー系導電性物質のみの場合に比べて所定の電気抵抗に調整することが非常に容易となり、NBR系ゴムとイオン導電性物質が共存する場合にのみ、通電による電気抵抗の上昇を抑制することができるとされている。
【0010】
特許文献2は、導電性付与剤として側鎖の少なくとも1つがエチレンオキサイド及び又はプロピレンオキサイドからなるエーテル鎖を主成分とする第4級アンモニウム塩化合物を含有してなる導電性材料を開示している。そして、この第4級アンモニウム化合物がポリウレタン等の高分子材料に添加混合してなる導電性材料も開示している。また、これらの導電性材料を用いてなる、電子写真装置において他部材の帯電を制御する帯電制御用部材(帯電部材、現像部材、転写部材など)も開示している。ここでは、導電性付与剤として上記のように特定する第4級アンモニウム塩化合物を用いているので、電気抵抗のばらつきが少ない上、樹脂基材との相溶性に優れ、滲み出しが生じにくく他部材を汚染するようなことがないとしている。
【0011】
特許文献3には、軸体の外周に導電性弾性体層が形成され、この導電性弾性体層の外周に、抵抗調整層が形成された導電性ロールであって、上記抵抗調整層が、(A)エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合体、(B)アクリロニトリル−ブタジエンゴム及びアクリルゴムの少なくとも一方、(C)第4級アンモニウム塩などのイオン導電剤を主体とする組成物によって形成されていることを特徴とする導電性ロールが開示されている。この導電性ロールは、電気抵抗が全体に均一であり、長期間使用しても電気抵抗の上昇が抑制され、良好な複写画像が得られるとされている。
【0012】
しかしながら、近年、電子写真装置におけるプロセススピードの向上と画質の高精細化に伴い、帯電部材には、被帯電体を均一に帯電させる能力のさらなる向上が要求されている。この帯電能力の向上のためには、帯電部材の電気抵抗をさらに安定かつ均一にし、低抵抗化することが必要である。
【0013】
しかし、帯電部材を安定かつ均一な低抵抗化のために、イオン導電剤を弾性体層に多量に配合した場合、導電剤が感光体などの被帯電部材に移行して被帯電部材を汚染し、画像不良が発生する場合があった。
【特許文献1】特開平8−328351号公報
【特許文献2】特開平11−209633号公報
【特許文献3】特許第2964821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、感光体汚染がなく、かつ、帯電均一性に優れた低抵抗の帯電ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するため検討した結果、画像形成装置に用いられる帯電ローラに導電性をコントロールするために添加するイオン導電剤として、低抵抗化かつ低ブリードアウト性を達成できる塩が、いずれも疎水性のカチオン及びアニオンの組合せであるとよいことを見出し、さらに検討して、本願発明に至った。
【0016】
すなわち、本発明は、導電性芯金上に少なくとも弾性体層を有する帯電ローラにおいて、該弾性体層が、少なくとも下記一般式(1)に示すパーフルオロアルカンスルホン酸塩を含む極性ゴムからなることを特徴とする帯電ローラである。
CF3(CF2nSO3-・A+ (1)
式中、Aはカリウム又はテトラアルキルアンモニウムであり、nは3〜7である。
【0017】
極性ゴムが、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム又はニトリルゴムであることが好ましい。
【0018】
エピクロルヒドリンゴムが、エチレンオキサイド含有量40モル%以上80モル%以下であるエピクロルヒドリンゴムであることが好ましい。
【0019】
また、本発明は、弾性体層の体積抵抗が、105Ω・cm以上108Ω・cm以下である上記の帯電ローラである。
【0020】
さらに、本発明は、弾性体層上に、さらに膜厚0.1μm以上30μm以下である抵抗層(表層)を有する上記の帯電ローラである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の帯電ローラは、疎水性が高く、かつ安定にイオン化するカチオン、アニオンからなるイオン導電剤が極性ゴムに添加されて導電性弾性体層が形成されているので、高い導電性が達成され、かつ、高温高湿環境下においてもイオン導電剤のブリードアウトが殆ど或いは全く発生しない、つまり、イオン導電剤のブリードアウトによる帯電不良が発生しない良好なもので、電子写真方式の画像形成装置における、帯電プロセスに使用する帯電ローラとして大変有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0023】
図1に、本発明における導電性ゴム組成物を用いた導電性ローラの例として、帯電ローラの構成を示す。図1(a)において、金属製の芯金11の外周に、導電性ゴム組成物からなる弾性体層12が形成されている。図1(b)のように、弾性体層12から感光体を汚染する物質が滲み出すのを抑えたり、電気特性をコントロールしたりするために弾性体層12の上にさらに表層(抵抗層)13が形成される。
【0024】
なお、弾性体層12の体積抵抗は、帯電バイアス電圧を感光体に印加することができるように、通常、103Ω・cm以上108Ω・cm以下の範囲、好ましくは105Ω・cm以上108Ω・cm以下の範囲に調整されている。
【0025】
弾性体層12は、極性官能基を有する極性ゴムに少なくとも下記一般式(1)で示されるパーフルオロアルカンスルホン酸塩がイオン導電剤として配された組成物よりなっている。
CF3(CF2nSO3-・A+ (1)
式中、Aはカリウム又はテトラアルキルアンモニウムであり、nは3〜7である。
【0026】
なお、極性ゴム中の極性官能基により、電離したイオン導電剤が極性官能基上に分極した電荷と相互作用することにより、ゴム中を効率よく移動することにより導電性を効率よく発現することができる。また、極性官能基としては、エチレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイドを多く含有するほど、得られる導電性は向上する。
【0027】
ここで使用される極性ゴムとしては、ニトリルゴム(NBR)、エピクロルヒドリンゴム(CHR、CHC)、ウレタンゴム(PU)等のそれ自身がイオン導電性を有するゴムが好ましい。
【0028】
また、一般式(1)で示されるパーフルオロアルカンスルホン酸塩のカチオン(A+)としては、具体的には、カリウムイオン及びテトラアルキルアンモニウムイオンである。
【0029】
従来、イオン導電剤としてリチウム塩がゴムの導電性を著しく向上することから用いられていたが、リチウムイオンは最も水和しやすいイオンで、高温、高湿状態においては潮解性が強く、ブリードアウトしやすいこと、水和するとイオンが大きくなってしまい、リチウムイオンの小ささを活かしたイオンの移動度が減少し、効率よく導電性が得られるわけではない。
【0030】
これに対して、カリウムイオンはイオン化傾向が高く、得られる導電性はリチウムイオンと同等であり、また、リチウムイオンに比べて水和しにくいことから、ほとんど潮解性がなく、低ブリードアウト性であるので好適である。
【0031】
また、テトラアルキルアンモニウムイオンも官能基が疎水性であるアルキル基の効果により、カチオンが安定しているとともに、高温高湿状態においてもブリードアウトが抑えられているので好適である。なお、テトラアルキルアンモニウム塩のアルキル基は、炭素数1〜12、好ましくは2〜8のアルキル基が好ましく、4つのアルキル基は全て同じでも異なっていてもよい。アルキル基として、具体的に、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等があげられる。
【0032】
イオン導電剤としての塩のアニオンとして、炭素数4〜8のパーフルオロアルカンスルホン酸イオンが好適である。すなわち、パーフルオロアルキル基の電子吸引効果により、アニオンが安定するため、高い導電性を得ることができる。また、トリフルオロメチル基に比べ、パーフルオロアルキル基が大きいため、疎水性が高く、高温高湿状態においても低ブリードアウト性が達成されるので好適である。
【0033】
本発明でイオン導電剤として使用するパーフルオロアルカンスルホン酸塩として、具体的に、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム、パーフルオロオクタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム、パーフルオロブタンスルホン酸テトラエチルアンモニウム等が好ましい。
【0034】
また、電子導電系の導電剤である、カーボンブラック、グラファイト、導電性酸化チタン、導電性酸化スズ等の金属酸化物、Cu、Agなどの金属粉、導電性の繊維等を必要に応じて併用してもよい。
【0035】
イオン導電剤の配合量としては、特に制限はないが、原料ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下、好ましくは、0.5質量部以上5質量部以下が適当である。0.1質量部未満であると、弾性体層の低抵抗化が殆ど達成されないため好ましくない。
【0036】
弾性体層を発泡体とするときには、発泡剤として、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)、パラトルエンスルフォニルヒドラジン(TSH)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、4,4′−オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジン(OBSH)等の有機発泡剤、重炭酸ソーダ等の無機発泡剤が使用可能である。高発泡倍率で良好なスキン表面を得るには、アゾジカルボンアミド(ADCA)と4,4′−オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジン(OBSH)を併用することが好ましい。
【0037】
この他に弾性体層用ゴム組成物には、必要に応じてゴムの配合剤として一般に用いられている架橋助剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤、補強剤、充填剤、分散剤、増量剤、可塑剤、老化防止剤等を添加することができる。
【0038】
弾性体層の形成方法としては、未加硫のゴム組成物を押出機により、芯金の外径よりも小さい内径を持つチューブ状に押出成形し、その後加熱して加硫してチューブを得、必要な長さに裁断した後に芯金を圧入接着し、研磨等によりローラ形状を得る方法、未加硫のゴム組成物を、クロスヘッドを装着した押出機により、芯金を中心に円筒形に共押出し、加熱加硫してローラ形状を得る方法、芯金を納めた金型に未加硫のゴム組成物を注入し、加熱加硫した後に金型から取り出し、必要によりさらに加熱加硫(二次加硫)してローラ形状を得る方法等を挙げることができる。
【0039】
加熱は、熱風炉、加硫缶、熱盤、遠・近赤外線、誘導加熱などいずれの手法でも良い。また、熱風炉中で加熱加硫するには、原料ゴムの種類にもよるが、通常、炉温度130℃以上250℃以下、加熱時間5分以上120分以下とする。好ましくは炉温度140℃以上200℃以下、加熱時間10分以上40分以下が適当である。その後、必要に応じて二次加硫する。
【0040】
表層(抵抗層)は、上記した欠陥発生を防ぐほか、本発明では、感光体上にピンホール等の欠陥が生じた場合に、ここに帯電電流が集中して、帯電部材、感光体が破損することを防止するために有用であるので設けることが好ましい。その際には、電気抵抗として106Ω以上1×1010Ω以下が要求される。一般的には、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、シリコーン等のバインダー高分子に、カーボンブラック、グラファイト等の導電性カーボン;酸化チタン、酸化錫等の酸化物;Cu、Ag等の金属;導電性の酸化物や金属を粒子表面に被覆して導電化した無機、有機の微粒子などの導電フィラーを適量分散させることにより、電気抵抗を調整して用いられる。
【0041】
表層の形成は、バインダー高分子を溶剤に溶解又は分散し、さらに導電フィラーを分散させた表層用塗布液を、ディッピング塗工、ビーム塗工、ロールコーター塗工等によって、弾性体層表面にコーティングする方法や、バインダー高分子中に導電フィラーを練り込み、それを押出機などによって円筒形状に成形したものを弾性体層に被覆する方法等により行なわれる。
【0042】
なお、本発明における帯電ローラには、必要に応じて、弾性体層や表層以外に、接着層、拡散防止層、下地層、プライマー層等の機能層を設けることもできる。
【0043】
本発明の帯電ローラは、電子写真方式の画像形成装置に帯電ローラとして用いると、感光体の汚染がなく、かつ、イオン導電剤のブリードアウトによる帯電不良も発生しないので、良好な画像出力が達成される。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
【0045】
実施例1
<弾性体層の作成>
ゴムとしてヒドリンゴムA(エピクロルヒドリン23mol%/エチレンオキサイド73mol%/アリルグリシジルエーテル4mol%の3元共重合体ゴム)100質量部、充填剤として充填剤A(カーボンブラック「トーカブラック シーストSO」(商品名、東海カーボン株式会社製))5質量部及び充填剤B(炭酸カルシウム「シルバーW」(商品名、白石化学工業株式会社製))50質量部、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸亜鉛1質量部、老化防止剤(2−メルカプトベンゾイミダゾール)0.5質量部、エステル系可塑剤「ポリサイザーP202」(商品名、大日本インキ工業株式会社製)5質量部及びイオン導電剤A(パーフルオロブタンスルホン酸カリウム)2質量部を80℃に調節した密閉型ミキサーにて10分間混練し、この中に加硫促進剤として2−メルカプトベンゾチアゾール2質量部及び加硫剤としてイオウ2質量部を加えて更に15分間オープンロールで混練して、原料コンパウンドを作製した。
【0046】
このコンパウンドを、ゴム押し出し機を使用して、熱硬化性接着剤(商品名:メタロックU−20)を塗布した直径6mm、長さ250mmの円柱形の導電性支持体(鋼製、表面はニッケルメッキ)の周囲にローラ状になるように成形し、電気オーブンの中160℃で2時間、加硫及び接着剤の硬化を行った後、ゴム部分の両端部を突っ切り、ゴム部分を回転砥石で研磨し、端部直径8.4mm、中央部直径8.5mmのクラウン形状の弾性体層を有する弾性ローラを得た。また、この弾性ローラの弾性体層のマイクロ硬さ(JIS−A)は48°であり、弾性体層の体積抵抗値は1.5×106Ω・cmであった。
【0047】
なお、弾性体層の体積抵抗値は、別途原料コンパウンドを帯電ローラ形成と同じ条件で硬化処理して、成型した厚さ1mmのシートの両面に金属を蒸着して電極とガード電極とを作成し、微小電流計(商品名:ADVANTEST R8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METER、(株)アドバンテスト製)を用いて、200Vの直流電圧を印加して30秒後の電流を測定し、シートの厚さと電極面積とから計算して求めたものである。表1に材料物性を示す。
【0048】
<表層の作成>
ラクトン変性アクリルポリオール「プラクセルDC2009」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)200質量部を、MIBK(メチルイソブチルケトン)500重量部に溶解し、固形分16重量%の溶液とした。このアクリルポリオール溶液200質量部に対してカーボンブラック「MA100」(商品名、三菱化学株式会社製)12質量部を加え、これに直径0.8mmのガラスビーズ200質量部を加えて、ペイントシェーカを使い12時間分散した。
【0049】
この分散液370質量部にヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型3量体「デュラネートTPA−B80E」(商品名、旭化成工業株式会社製)30質量部を混合し、ボールミルで1時間攪拌して表層塗料を得た。
【0050】
表層塗料をディッピンク法により弾性体層の表面に塗工し、30分間風乾した後、160℃で120分間乾燥して、帯電ローラを得た。なお、SEMによりローラ断面を観察することにより測定した表層の膜厚は5μmであった。また、表層のマイクロ硬さ(JIS−A)は52°であった。
【0051】
得られた帯電ローラを下記のような方法で電気抵抗を測定したところ、電気抵抗は4.0×105Ω(23℃、湿度50%)であった。さらに、帯電ローラを感光体に接触させておいたときの感光体汚染性を下記方法で評価したところ「○」であった。これらの結果を表1にまとめる。
【0052】
・帯電ローラの電気抵抗測定法:
図2に示すように、帯電ローラ1をステンレス製の円筒電極2に接触させる。帯電ローラ1の導電性芯金の両端にそれぞれ4.9Nの荷重をかけた状態で円筒電極2を回転させ、帯電ローラ1を60rpmになるようにする。この状態で、導電性芯金に200Vの電圧を電源S1より印加する。円筒電極2と電源S1の間は抵抗16(1kΩ)を経て接続されていて、帯電ローラ1への電圧印加時にこの抵抗16にかかる電圧を記録計17により記録する。この電圧より帯電ローラの電気抵抗を求める。
【0053】
・感光体汚染性の評価:
得られた帯電ローラを、ヒューレットパッカード社製のレーザープリンタ「レーザージェット4000N」(商品名)に使用されるカートリッジから取り出した感光体に接触させ、両端に9.8Nの荷重をかけ、40℃で95%RHの環境下に1ヶ月放置する。その後、荷重を外し、顕微鏡により感光体表面への付着物を調べた。次いで、この感光体をレーザープリンタに戻し、該カートリッジに組み込み、ベタ黒で5枚印字し、得られた画像を目視にて観察する。これらの観察結果から、感光体に付着物が無く、得られた画像が良好なものを「○」、感光体に付着物があり、得られた画像に当接跡による横スジ不良が発生したものを「×」と評価した。
【0054】
実施例2
ヒドリンゴムAに代えて、ヒドリンゴムB(エピクロルヒドリン40mol%/エチレンオキサイド56mol%/アリルグリシジルエーテル4mol%の3元共重合体ゴム)を用いる他は、実施例1と同様に弾性ローラ及び帯電ローラを作製した。表1に材料物性及び諸評価結果を示す。なお、表面層のマイクロ硬さ(JIS−A)は50°であり、帯電ローラの電気抵抗は9.0×105Ω(23℃、湿度50%)であった。
【0055】
実施例3
イオン導電剤Aに代えて、イオン導電剤B(パーフルオロオクタンスルホン酸カリウム)を用いる他は、実施例1と同様に弾性ローラ及び帯電ローラを作製した。表1に材料物性及び諸評価結果を示す。なお、表面層のマイクロ硬さ(JIS−A)は52°であり、帯電ローラの電気抵抗は7.0×105Ω(23℃、湿度50%)であった。
【0056】
実施例4
イオン導電剤Aに代えて、イオン導電剤C(パーフルオロブタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム)を用いる他は、実施例1と同様に弾性ローラ及び帯電ローラを作製した。表1に材料物性及び諸評価結果を示す。なお、表面層のマイクロ硬さ(JIS−A)は52°であり、帯電ローラの電気抵抗は6.0×105Ω(23℃、湿度50%)であった。
【0057】
実施例5
ヒドリンゴムAに代えて、ヒドリンゴムB(エピクロルヒドリン40mol%/エチレンオキサイド56mol%/アリルグリシジルエーテル4mol%の3元共重合体ゴム)を用いる他は、実施例4と同様に弾性ローラ及び帯電ローラを作製した。表1に材料物性及び諸評価結果を示す。なお、表面層のマイクロ硬さ(JIS−A)は50°であり、帯電ローラの電気抵抗は1.5×106Ω(23℃、湿度50%)であった。
【0058】
実施例6
イオン導電剤Aの添加量を1質量部に減らす他は、実施例1と同様に弾性ローラ及び帯電ローラを作製した。表1に材料物性及び諸評価結果を示す。なお、表面層のマイクロ硬さ(JIS−A)は50°であり、帯電ローラの電気抵抗は7.0×105Ω(23℃、湿度50%)であった。
【0059】
実施例7
ヒドリンゴムAに代えて、アクリルニトリル含有量35質量%のニトリルゴム(NBR)を用いる他は、実施例1と同様に弾性ローラ及び帯電ローラを作製した。表1に材料物性及び諸評価結果を示す。なお、表面層のマイクロ硬さ(JIS−A)は45°であり、帯電ローラの電気抵抗は1.0×107Ω(23℃、湿度50%)であった。
【0060】
比較例1
イオン導電剤Aに代えて、イオン導電剤D(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)用いる他は、実施例1と同様に弾性ローラ及び帯電ローラを作製した。表2に材料物性及び諸評価結果を示す。なお、表面層のマイクロ硬さ(JIS−A)は52°であり、帯電ローラの電気抵抗は4.0×105Ω(23℃、湿度50%)であった。なお、この帯電ローラは低抵抗ではあるが、感光体を汚染し、実機画像においても画像不良が発生してした。
【0061】
比較例2
ラクトン変性ポリオールの濃度を固形分20%とし、すなわちMIBKの添加量を360質量部として、表層塗料を作成する他は、比較例1と同様に帯電ローラを作製した。表2に材料物性及び諸評価結果を示す。なお、表面層のマイクロ硬さ(JIS−A)は58°であり、この帯電ローラの電気抵抗は9.0×105Ω(23℃、湿度50%)であった。この帯電ローラは表層の膜厚が15μmと比較例1に比べて厚いが、感光体を汚染し、実機画像においても画像不良が発生した。
【0062】
比較例3
イオン導電剤Aをイオン導電剤E(過塩素酸リチウム)に変更する他は、実施例1と同様にして弾性ローラ及び帯電ローラを作製した。表2に材料物性及び諸評価結果を示す。なお、表面層のマイクロ硬さ(JIS−A)は52°であり、帯電ローラの電気抵抗は5.0×105Ω(23℃、湿度50%)であった。この帯電ローラは低抵抗ではあるが、感光体を汚染し、実機画像においても画像不良が発生してしまった。
【0063】
比較例4
ラクトン変性ポリオールの濃度を固形分20%とし、すなわちMIBKの添加量を360質量部として、表層塗料を作成する他は、比較例3と同様に帯電ローラを作製した。表2に材料物性及び諸評価結果を示す。なお、表面層のマイクロ硬さ(JIS−A)は58°であり、この帯電ローラの電気抵抗は9.5×105Ω(23℃、湿度50%)であった。この帯電ローラは表層の膜厚が15μmと比較例3に比べて厚いが、感光体を汚染し、実機画像においても画像不良が発生してしまった。
【0064】
比較例5
イオン導電剤Dをイオン導電剤F(パーフルオロブタンスルホン酸リチウム)に変更する他は、比較例2と同様に帯電ローラを作製した。表2に材料物性及び諸評価結果を示す。なお、表面層のマイクロ硬さ(JIS−A)は58°であり、この帯電ローラの電気抵抗は1.0×106Ω(23℃、湿度50%)であった。この帯電ローラは表層の膜厚が15μmと充分に厚いが、感光体を汚染し、実機画像においても画像不良が発生してしまった。
【0065】
比較例6
イオン導電剤Dをイオン導電剤G(トリフルオロメタンスルホン酸カリウム)に変更する他は、比較例2と同様に帯電ローラを作製した。表2に材料物性及び諸評価結果を示す。なお、表面層のマイクロ硬さ(JIS−A)は58°であり、この帯電ローラの電気抵抗は6.5×105Ω(23℃、湿度50%)であった。この帯電ローラは表層の膜厚が15μmと充分に厚いが、感光体を汚染し、実機画像においても画像不良が発生してしまった。
【0066】
比較例7
イオン導電剤Dをイオン導電剤H(トリフルオロメタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム)に変更する他は、比較例2と同様に帯電ローラを作製した。表2に材料物性及び諸評価結果を示す。なお、表面層のマイクロ硬さ(JIS−A)は58°であり、この帯電ローラの電気抵抗は9.5×105Ω(23℃、湿度50%)であった。この帯電ローラは表層の膜厚が15μmと充分に厚いが、感光体を汚染し、実機画像においても画像不良が発生してしまった。
【0067】
なお、表1、2中で、弾性体層組成で示した物質は下記のとおりである。
・ヒドリンゴムA:エピクロルヒドリン23mol%/エチレンオキサイド73mol%/アリルグリシジルエーテル4mol%の3元共重合体ゴム
・ヒドリンゴムB:エピクロルヒドリン40mol%/エチレンオキサイド56mol%/アリルグリシジルエーテル4mol%の3元共重合体ゴム
・NBR:アクリルニトリル含有量35質量%のニトリルゴム
・老化防止剤:2−メルカプトベンゾイミダゾール
・充填剤A:東海カーボン株式会社製のカーボンブラック「トーカブラック シーストSO」(商品名)
・充填剤B:白石化学工業株式会社製の炭酸カルシウム「シルバーW」(商品名)
・イオン導電剤A:パーフルオロブタンスルホン酸カリウム
・イオン導電剤B:パーフルオロオクタンスルホン酸カリウム
・イオン導電剤C:パーフルオロブタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム
・イオン導電剤D:トリフルオロメタンスルホン酸リチウム
・イオン導電剤E:過塩素酸リチウム
・イオン導電剤F:パーフルオロブタンスルホン酸リチウム
・イオン導電剤G:トリフルオロメタンスルホン酸カリウム
・イオン導電剤H:トリフルオロメタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム
・エステル系可塑剤:大日本インキ工業株式会社製の「ポリサイザーP202」(商品名)
・加硫促進剤:2−メルカプトベンゾチアゾール
【0068】
また、表1中のローラ表面硬さは、マイクロ硬さ(JIS−A)である。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の帯電ローラの構成を示す断面図である。
【図2】本発明の帯電ローラの抵抗を測定する装置の模式図である。
【符号の説明】
【0072】
1 帯電ローラ
11 芯金
12 弾性抵抗層
13 表層(抵抗層)
15 ステンレス製の円筒電極
16 抵抗(1kΩ)
17 レコーダー
S1 直流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性芯金上に少なくとも弾性体層を有する帯電ローラにおいて、該弾性体層が、少なくとも下記一般式(1)に示すパーフルオロアルカンスルホン酸塩を含む極性ゴムからなることを特徴とする帯電ローラ。
CF3(CF2nSO3-・A+ (1)
式中、Aはカリウム又はテトラアルキルアンモニウムであり、nは3〜7である。
【請求項2】
極性ゴムが、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム又はニトリルゴムである請求項1に記載の帯電ローラ。
【請求項3】
エピクロルヒドリンゴムが、エチレンオキサイド含有量40モル%以上80モル%以下であるエピクロルヒドリンゴムである請求項2に記載の帯電ローラ。
【請求項4】
弾性体層の体積抵抗が、105Ω・cm以上108Ω・cm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯電ローラ。
【請求項5】
弾性体層上に、さらに膜厚0.1μm以上30μm以下である表層(抵抗層)を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の帯電ローラ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−199599(P2007−199599A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20682(P2006−20682)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】