説明

帯電ロール

【課題】帯電音の発生を効果的に抑制し得る帯電ロールを提供すること。
【解決手段】数平均分子量:MnAが2000〜4000であるポリエーテルポリオールAと、数平均分子量:MnBが4000〜10000であるポリエーテルポリオールBと、ポリエーテル系ポリマーポリオールとから構成され、MnA及びMnBが所定の関係を満たし、且つ、ポリエーテルポリオールAの配合量:XA (重量部)、ポリエーテルポリオールBの配合量:XB (重量部)、及びポリエーテル系ポリマーポリオールの配合量:XC (重量部)が、所定の関係を満たすポリオール成分と、β)ポリイソシアネート成分、との配合物たるウレタン発泡原料を、芯金の周りに発泡成形せしめて、帯電ロールを構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機やプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置において、電子写真感光体や静電記録誘電体等からなる像担持体を帯電させるために用いられる帯電ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真方式を利用した複写機やプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置(以下、電子写真機器という)においては、電子写真感光体(ドラム)等の像担持体を、帯電ロールの外周面に接触せしめて、それら像担持体と帯電ロールとを相互に回転させるようにすることによって、かかる像担持体の表面を帯電させる、所謂ロール帯電方式が採用されている。
【0003】
また、そのようなロール帯電方式において用いられる帯電ロールとしては、従来より、様々な構造を呈するものが用いられている。例えば、ロール軸たる芯金の周りに、非発泡性の導電性ゴム材料からなる導電性弾性体層が所定の厚さにて設けられ、かかる導電性弾性体層の外周面上に、必要に応じて半導電性ゴム材料からなる抵抗調整層が設けられ、最外層として、半導電性樹脂材料からなる保護層が設けられてなるロールが、帯電ロールとして用いられている。
【0004】
ところで、ロール帯電方式は、上述したように像担持体と帯電ロールとを接触させるものであるところから、それら像担持体と帯電ロールとの接触部付近において、所謂帯電音が発生するという問題点が知られている。
【0005】
かかる帯電音の発生を抑制し得る手法として、例えば上述の如き構造の帯電ロールにおいて、非発泡性の導電性ゴム材料からなる導電性弾性体層の低硬度化を図ること等が挙げられるが、そのような非発泡性の導電性ゴム材料からなる導電性弾性体層の硬度を低下させると、かかる導電性弾性体層の圧縮永久歪みが悪化し、ひいてはロール全体のヘタリ性を悪化させる恐れがあった。
【0006】
また、帯電音の発生を効果的に抑制すべく、非発泡性の導電性ゴム材料からなる導電性弾性体層に代えて、所定の導電性発泡体からなる層を採用した帯電ロールが、従来より幾つか提案されている。
【0007】
例えば、特許文献1(特開平7−92775号公報)においては、被帯電体を帯電する帯電部材(帯電ロール)であって、比重が0.1g/cm3 以上0.6g/cm3 以下である発泡層と、この発泡層を支持し、電圧が印加される支持部材と、上記発泡層よりも上記被帯電体の近くに設けられた抵抗層とを有する帯電部材(帯電ロール)が、提案されている。また、特許文献2(特開2000−29273号公報)にあっては、円柱状の芯金と、その芯金の周囲に同心円状に積層された導電性を有するゴム層を設けた構造からなる導電性ローラであって、前記ゴム層は、少なくとも2層からなり、前記ゴム層のうち、内層のゴム層は、発泡倍率が2.0〜4.0であって、かつ、連泡度が1.3以上の発泡層からなるものが、提案されている。更に、特許文献3(特開2003−162105号公報)においては、金属シャフトの外周に、発泡剤が練り込まれた所定のバインダー材料を加熱発泡させて得られる、3次元網目構造からなる導電性弾性層が形成され、さらに該導電性弾性層の外周に、半導電性弾性層が形成されてなる電子写真用ローラが、示されている。
【0008】
しかしながら、上述した従来の帯電ロールについて本発明者等が検討したところ、それらの帯電ロールは、帯電音の発生をある程度、抑制し得るものではあるものの、十分に抑制し得るものとは言い難いものであった。即ち、近年、電子写真機器に対して画像品質の向上や印刷速度の高速化が要求されているところ、このような要求に応えるべく、電子写真機器に用いられる帯電ロールに対して、より高周波域の交流電圧が印加される傾向にあり、従来にも増して帯電音が発生し易くなっている。また、機器本体のコンパクト化等に伴い、従来よりも機器外へ帯電音が漏れ易い状況であり、更に、近年のパーソナルユーズ化に伴い、各種電子写真機器は使用者の近くに設置され、使用されることが多くなってきている。このような状況から、帯電音の発生をより効果的に抑制し得る新規な帯電ロールの開発が、切望されているのである。
【0009】
【特許文献1】特開平7−92775号公報
【特許文献2】特開2000−29273号公報
【特許文献3】特開2003−162105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、帯電音の発生を効果的に抑制し得る帯電ロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして、そのような課題を解決するために、本発明は、ロール軸となる長手棒状の芯金と、該芯金の周りにウレタンスポンジ層とを有し、該ウレタンスポンジ層が、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との配合物たるウレタン発泡原料の発泡成形によって形成されてなる帯電ロールにして、前記ポリオール成分が、数平均分子量:MnAが2000〜4000であるポリエーテルポリオールAと、数平均分子量:MnBが4000〜10000であるポリエーテルポリオールBと、ポリエーテル系ポリマーポリオールとから構成され、MnA及びMnBが下記式(1)を満たし、且つ、ポリエーテルポリオールAの配合量:XA (重量部)、ポリエーテルポリオールBの配合量:XB (重量部)、及びポリエーテル系ポリマーポリオールの配合量:XC (重量部)が、下記式(2)及び(3)を満たすことを特徴とする帯電ロールを、その要旨とするものである。
MnA:MnB=1:2〜1:3 ・・・(1)
A :XB =2:1〜8:1 ・・・(2)
(XA +XB ):XC =85:15〜95:5 ・・・(3)
【0012】
なお、そのような本発明に従う帯電ロールにあっては、その好ましい態様の一つにおいて、前記ウレタンスポンジ層の外周面上に保護層が設けられている。
【0013】
また、本発明の帯電ロールにおける別の好ましい態様の一つにおいては、前記ウレタンスポンジ層と前記保護層との間に抵抗調整層が設けられている。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明に係る帯電ロールにあっては、芯金と、その周りにウレタンスポンジ層とを有するものであって、かかるウレタンスポンジ層が、所定の条件を満たす3種類のポリオールからなるポリオール成分と、ポリイソシアネート成分との配合物たるウレタン発泡原料の発泡成形によって形成されてなるものである。このような特定のウレタン発泡原料を用いて得られるウレタンスポンジ層は、セル連通性に優れ、その硬度が効果的に低いものとなるところから、本発明の帯電ロールを各種電子写真機器において使用すると、帯電音の発生が有利に抑制され得るのである。
【0015】
また、本発明の帯電ロールは、セル連通性に優れたウレタンスポンジ層を有していることから、ロール形状を変形させた後の形状回復性が良好である。加えて、そのようなウレタンスポンジ層の成形時においては、ガス抜けが良好となって収縮変形が有利に抑制され、金型の内面形状への追随性が向上するのであり、以て、本発明の帯電ロールは、成形キャビティの形状乃至は大きさにより適合した、形状安定性に優れたロールとなる。
【0016】
さらに、本発明に係る帯電ロールにおいては、そのウレタンスポンジ層の硬度が低いため、感光ドラム等の像担持体やトナーに与えるストレスが効果的に低減され、また、感光ドラム等への接地性が向上する。このため、本発明の帯電ロールを電子写真機器に使用すると、多量の印刷を行なった際にも画像不具合が発生し難く、また、感光ドラム等の不均一な帯電に起因する画像ムラの発生も、効果的に抑制され得るのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
ところで、本発明に従う帯電ロールは、ロール軸となる長手棒状の芯金と、その芯金の周りにウレタンスポンジ層とを有するものであって、かかるウレタンスポンジ層が、特定のポリオール成分と、ポリイソシアネート成分との配合物たるウレタン発泡原料を発泡成形することによって形成されたものである。
【0018】
かかる帯電ロールを製造するに際して用いられるウレタン発泡原料のうち、本発明の特徴的部分であるポリオール成分としては、数平均分子量が異なる2種類のポリエーテルポリオールと、ポリエーテル系ポリマーポリオールとが用いられる。
【0019】
−ポリエーテルポリオール−
具体的には、数平均分子量が異なる2種類のポリエーテルポリオールとして、数平均分子量:MnAが2000〜4000であるもの(ポリエーテルポリオールA)、及び、数平均分子量:MnBが4000〜10000であるもの(ポリエーテルポリオールB)が用いられる。数平均分子量が2000未満のポリエーテルポリオールを用いると、得られるウレタンスポンジ層の硬度が低くなりすぎて、発泡成形によって目的とするロール形状が得られない恐れがある。その一方、数平均分子量が10000を超えるポリエーテルポリオールを用いると、得られるウレタンスポンジ層におけるセル連通性が悪化して硬度が高くなり、そのようなウレタンスポンジ層を有する帯電ロールは、電子写真機器に用いた場合、帯電音の発生を効果的に抑制し得ない恐れがあるからである。本発明においては、このような数平均分子量を有するポリエーテルポリオールであって、従来よりウレタン発泡体を製造する際に一般的に用いられているものであれば、如何なるものであっても使用可能であり、具体的には、アクトコールEP550N、MF-12 、EP-828(何れも商品名、三井化学ポリウレタン株式会社製)、SANNIX GL-3000(商品名、三洋化成工業株式会社製)、プレミノール7012(商品名、旭硝子株式会社製)等を、例示することが出来る。なお、本明細書及び特許請求の範囲における数平均分子量は、GPC(Gel permeation Chromatography )法(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法)によって測定されたものである。
【0020】
また、本発明においては、上述した数平均分子量を有する2種類のポリエーテルポリオールのうち、それぞれの数平均分子量(MnA、MnB)が下記式(1)を満たすポリエーテルポリオールA及びポリエーテルポリオールBが、併用される。即ち、下記式(1)を満たすような数平均分子量を各々、有する2種類のポリエーテルポリオールを併用すると、ウレタン発泡原料中における2種類のポリエーテルポリオールの相溶性が効果的に低下し、そのような相溶性が適度に低い状態のウレタン発泡原料を発泡成形せしめると、生じるセル膜は均一とならず、発泡過程において部分的に破れ、以て、得られるウレタンスポンジ層のセル連通性が優れたものとなるのである。
MnA:MnB=1:2〜1:3 ・・・(1)
【0021】
ここで、ポリエーテルポリオールAの数平均分子量:MnAに対して、小さすぎる数平均分子量:MnBを有するポリエーテルポリオールBを用いる(MnB<2MnA)と、数平均分子量が異なる2種類のポリエーテルポリオールを併用する効果、即ち、ウレタンスポンジ層における連通性の向上が有利に図られ得ない恐れがある。逆に、ポリエーテルポリオールAの数平均分子量:MnAに対して、大きすぎる数平均分子量:MnBを有するポリエーテルポリオールBを用いる(MnB>3MnA)と、得られるウレタンスポンジ層におけるセル連通性は向上するものの、それら2種類のポリエーテルポリオールの相溶性が悪化して、発泡成形によって目的とするロール形状が得られない恐れがある。
【0022】
また、それぞれの数平均分子量が上記式(1)を満たすポリエーテルポリオールA及びポリエーテルポリオールBは、それらの各配合量:XA 、XB (重量部)が、下記式(2)を満たす量的割合において用いられる。ポリエーテルポリオールBの配合量:XB に対して、ポリエーテルポリオールAの配合量:XA が少なすぎる(XA <2XB )と、得られるウレタンスポンジ層において、連通性の向上が有利に図られ得ない恐れがあり、その一方、ポリエーテルポリオールAの配合量:XA が多すぎる(XA >8XB )と、得られるウレタンスポンジ層におけるセル連通性は向上するものの、発泡成形によって目的とするロール形状が得られない恐れがあるからである。
A :XB =2:1〜8:1 ・・・(2)
【0023】
−ポリエーテル系ポリマーポリオール−
本発明の帯電ロールを製造するに際しては、ウレタン発泡原料中のポリオール成分として、上述の如きポリエーテルポリオールA及びポリエーテルポリオールBに加えて、更にポリエーテル系ポリマーポリオールが用いられる。かかるポリエーテル系ポリマーポリオールをも用いることによって、得られるウレタンスポンジ層のセル連通性が効果的に向上するのである。
【0024】
本明細書及び特許請求の範囲におけるポリエーテル系ポリマーポリオールとは、ポリエーテルポリオール中にビニル系ポリマーを分散させたもの、又はポリエーテルポリオールとビニル系ポリマーとを共重合せしめたものである。本発明においては、従来よりウレタン発泡体を製造する際に一般的に用いられているポリエーテル系ポリマーポリオールであれば、本発明の目的を阻害しない範囲において、何れのものも使用可能であり、具体的には、POP-31-28 (商品名、三井化学ポリウレタン株式会社製)を例示することが出来る。
【0025】
また、かかるポリエーテル系ポリマーポリオールは、本発明において、その配合量:XC (重量部)が、上述した2種類のポリエーテルポリオールの配合量:XA 、XB (重量部)との間において下記式(3)を満たす量的割合において、用いられる。ポリエーテルポリオールの総配合量:(XA+XB)に対して、ポリエーテル系ポリマーポリオールの配合量:XC が少なすぎる、換言すれば、2種類のポリエーテルポリオール及びポリエーテル系ポリマーポリオールの総配合量:100重量部に対して、ポリエーテル系ポリマーポリオールの配合量:XC が5重量部未満の場合は、ウレタンスポンジ層におけるセル連通性の向上が効果的に図られ得ない恐れがあり、一方、ポリエーテル系ポリマーポリオールの配合量:XC が多すぎる(ポリエーテル系ポリマーポリオールの配合量:XC が15重量部を超える)と、発泡成形によって目的とするロール形状が得られない恐れがあるからである。
(XA +XB ):XC =85:15〜95:5 ・・・(3)
【0026】
一方、本発明の帯電ロールを製造する際のウレタン発泡原料においては、上述してきた3種類のポリオールと共に、ポリイソシアネート成分が必須成分とされる。かかるポリイソシアネート成分としては、公知の少なくとも2官能以上のポリイソシアネートの全てが用いられ得、例えば、2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、オルトトルイジンジイソシアネート(TODI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、及びカーボジイミド変性MDI、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリメリックポリイソシアネート等が、単独で、又は併用して使用され得る。
【0027】
なお、本発明において、ウレタン発泡原料中のポリオール成分及びポリイソシアネート成分は、従来と同様に、それらの重量比(ポリオール成分:ポリイソシアネート成分)が、通常、9:1〜5:5程度となるように配合せしめられる。
【0028】
また、そのようなウレタン発泡原料には、最終的に目的とする帯電ロールが所望とする導電性を発揮し得るように、カーボンブラック、金属粉末、導電性金属酸化物、第4級アンモニウム塩等の導電剤が配合される。その配合量は、通常、導電剤が配合されたウレタン発泡原料にて形成されるウレタンスポンジ層が、1×103 〜1×106 Ω・cm程度の体積抵抗値を有するように、適宜に決定される。
【0029】
さらに、ウレタン発泡原料には、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応せしめて形成されるポリウレタンを発泡させるために、水が発泡剤として用いられる。この発泡剤としての水の添加量は、一般に、ポリオール成分の100重量部に対して、0.1〜3.0重量部程度とされるが、好ましくは0.5〜2.0重量部程度が採用される。なお、この水の添加量が少なくなると、十分な発泡を行ない難くなると共に、形成されるセルが大きくなりすぎるという問題がある。逆に、水の添加量が多すぎると、発泡速度が速く、ウレタン発泡原料が、金型へ注入される前に注型機内にて発泡反応が進みすぎ、これにより、ウレタン発泡原料の体積が増加し、注型口から反応途中の原料が漏れる等して、金型内への安定した注入作業を行なうことが困難となり、歩留りが悪くなったりする等の問題が生ずるようになる。
【0030】
加えて、上述せる如きウレタン発泡原料には、従来と同様に、必要に応じて触媒、整泡剤、難燃剤、減粘剤、安定剤、充填剤、架橋剤、着色剤等の各種添加剤が、本発明の目的を阻害しない範囲内において、適宜に添加せしめられる。
【0031】
そして、そのようなウレタン発泡原料を、長手棒状の芯金の周りに発泡成形せしめることにより、所定厚さのウレタンスポンジ層を有する本発明に係る帯電ロールが得られるのである。以下に、芯金の外周面上にウレタンスポンジ層を有し、かかる芯金の径方向外側に向かって、抵抗調整層及び保護層が、順次、積層形成されてなる帯電ロールの製造方法について、その一例を示す。
【0032】
先ず、目的とする帯電ロールのロール形状を与える成形キャビティを有する金型(成形型)として、パイプ状の型構造を有する、所謂パイプ型が準備される。なお、このパイプ型とは、帯電ロールにおけるウレタンスポンジ層の軸方向長さに略等しい長さのパイプと、かかるパイプの両端に取り付けられて、それぞれの端部を閉塞する2つのキャップとから構成されるものであり、パイプ内に、ロール軸となる長手棒状の芯金をセットした状態において、パイプの両端を2つのキャップにて閉塞すると共に、それら2つのキャップにて芯金を支持することによって、パイプ内に、目的とする帯電ロールのロール形状を与える成形キャビティが、形成されるようになっているものである。なお、ロール軸となる長手棒状の芯金としては、ステンレス等からなる金属製の導電性軸体であって、所定の長さのものが用いられる。
【0033】
パイプ型内に、抵抗調整層を与えるべく、所定のゴム材料からなるチューブがセットされる。かかるチューブは、従来と同様に、エピクロルヒドリンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)等のゴム材料に、導電剤、好ましくはイオン導電剤や帯電防止剤等が配合されて、体積抵抗率が、一般に1×107 〜1×1010Ω・cm程度に調製されてなるゴム組成物を用いて、これを押出成形することによって得られたものである。なお、このチューブの厚みは、目的とする抵抗調整層の厚さに応じて適宜に決定されるが、一般に、10〜1000μm程度、好ましくは100〜500μm程度とされる。
【0034】
かかるチューブをパイプ型内にセットした後、チューブと芯金との間に、予め準備したウレタン発泡原料を注入する。金型を閉塞し、従来と同様の操作に従って、発泡成形が実施される。
【0035】
そして、そのような発泡成形によって得られたモールド成形品は、パイプ型から脱型された後、その外周面上に保護層が形成されることにより、目的とする帯電ロールとされるのである。なお、この保護層は、ロール表面にトナー等が付着堆積することを防止するために設けられるものであって、例えば、N−メトキシメチル化ナイロン等のナイロン系材料や、フッ素変性アクリレート系樹脂を含む樹脂組成物等に、カーボンブラックや導電性金属酸化物等の導電剤が配合されて、その体積抵抗率が1×108 〜1×1013Ω・cm程度となるようにして、形成されることとなる。また、このような保護層は、従来と同様に、ディッピングやロールコート等の公知のコーティング手法に従って形成され、その厚みは、通常3〜20μm程度とされる。
【0036】
このようにして得られた帯電ロールにあっては、そのウレタンスポンジ層が、セル連通性に優れたものであり、ロール全体としての硬度が有利に低いものとなっているところから、電子写真機器において用いた場合、感光ドラム等の像担持体との接触に起因する帯電音の発生が効果的に抑制されることとなる。
【実施例】
【0037】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0038】
先ず、ウレタン発泡原料を調製するために、ポリオールとして、下記表1に示すポリエーテルポリオールと、ポリエーテル系ポリマーポリオール(三井化学ポリウレタン株式会社製、商品名:POP-31-28 )とを用いて、それらを下記表2及び表3に示す配合組成に従って含むポリオール配合剤を15種類、調製した。ポリオール成分以外の配合組成は、以下の通りである。
配合量
・ケッチェンEC 2重量部
(導電剤、ケッチェンブラックインターナショナル株式会社製)
・カオライザーNO.31 0.5重量部
(第三級アミン触媒、花王株式会社製)
・トヨキャットHX-35 0.1重量部
(第三級アミン触媒、東ソー株式会社製)
・ジブチル錫ジラウレート(錫系触媒) 0.1重量部
・L-5309 3重量部
(シリコーン系整泡剤、日本ユニカー株式会社製)
・水(発泡剤) 2重量部
【0039】
また、ポリイソシアネート成分としてプレポリマーを含むスミジュールVT-80 (商品名、住友バイエルウレタン株式会社製):26.9重量部を、ポリイソシアネート配合剤として準備した。
【0040】
そのようにして得られたポリオール配合剤とポリイソシアネート配合剤とを、ポリオール配合剤:ポリイソシアネート配合剤=100:25の重量比となるように混合して、ウレタン発泡原料を調製した。
【0041】
一方、下記配合組成の抵抗調整層用形成材料を、ニーダーにて混練した後、押出機により、チューブ状に押し出して、180℃で60分間、加硫した後、カットして、厚さ:0.5mm×外径:12mm×長さ:224mmのゴム弾性体チューブを作製した。
配合量
・ハイドリンT3102 100重量部
(エピクロルヒドリンゴム、日本ゼオン株式会社製)
・酸化亜鉛 5重量部
・DHT4A(受酸剤、協和化学工業株式会社製) 8重量部
・ルーナックS30(ステアリン酸、花王株式会社製) 0.5重量部
・イオン導電剤(テトラブチルアンモニウムクロライド) 1重量部
・シリカ 50重量部
・加硫剤(硫黄) 1.05重量部
・加硫促進剤(ジベンゾチアゾールジスルフィド) 1.5重量部
・加硫促進剤(テトラメチルチウラムモノサルファド) 0.5重量部
【0042】
次いで、金型としてパイプ型を用いて、その成形キャビティ(内径:12mm)内に、外径:6mm×長さ:260mmのステンレス(SUS304)製の芯金を配置する一方、成形キャビティの内面に、上記で得られたゴム弾性体チューブを挿入して、セットした。
【0043】
そして、パイプ型内に芯金が配置され、ゴム弾性体チューブがセットされた状態において、成形キャビティ内に、上記で調製されたウレタン発泡原料を注入し、120℃で60分間、発泡硬化させることにより、発泡成形されたモールド成形品を作製した。金型を冷却後、得られたモールド成形品をパイプ型から取り出し、ゴム弾性体チューブにて形成された外層の外周面上に、下記配合組成に従う樹脂組成物を用いて、最外層たる保護層をロールコート法に従って作製し、目的とする15種類の帯電ロールを得た(実施例1〜8、比較例1〜7)。なお、得られた各帯電ロールは、ロール外径:12mm、抵抗調整層の厚さ:500μm、保護層の厚さ:10μmであった。また、樹脂組成物を調製するに際しては、サンドミルを用いて分散処理を行なった。
配合量
・カイナーSL 100重量部
(アクリルフッ素樹脂、エルファトケムジャパン社製)
・グラフトカーボン 30重量部
・MEK(メチルエチルケトン) 200重量部
【0044】
得られた15種類の帯電ロールについて、ロール硬度、通気量及び帯電音の評価を行ない、その結果を、下記表2及び表3に示した。また、各帯電ロールについて、ウレタンスポンジ層が露出している面(軸方向両端面のうちの何れかの面)を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。実施例2に係る帯電ロールについてのSEM写真を、図1として示す。
【0045】
−ロール硬度−
帯電ロールを、その両端の芯金部分において支持し、ロール部分(ウレタンスポンジ層+抵抗調整層+保護層)の軸方向中央部付近を、幅:50mm×50mm(厚さ:7mm)の板状押圧面を有する治具にて、速度:10mm/minにて押圧し、かかる治具が0.5mm変位した時の荷重(gf)をもって、ロールの硬度とした。
【0046】
−通気量−
図2の(a)及び(b)に示されるように、各帯電ロールから、軸方向長さが5mmとなるロール部分を残して、他のロール部分を除去した状態のサンプル10を作製し、これを、アルミニウム材質の保持リング12に設けた、帯電ロール外径(D)よりも0.1mm小さな内径(φ)の保持孔14内に嵌入固定せしめて、図2(a)に示される如く、保持筒16の開口端に気密に固定して、サンプル10の軸方向の一端側が大気に晒されるようにする一方、その他端側が、保持筒16の内部に露呈せしめられるようにした。そして、かかる保持筒16の内部に連通するように、流量計18を介して、真空ポンプ20を設ける一方、保持筒16内の圧力を検出する圧力計としてのマノメータ22を設けた状態において、真空ポンプ20を作動せしめ、マノメータ22にて検出される保持筒16内部の圧力と外気圧との差が1.5kPaになるようにして、そのときの空気流量を流量計18で測定し、その測定値を、サンプル10のウレタンスポンジ層部分の断面積で除することによって、通気量(cc/min・cm2 )を算出した。
【0047】
−帯電音−
図3に示される如く、レーザービームプリンタ(LASER JET 4350、ヒューレットパッカード株式会社製)24のカートリッジ容器26内の現像部を取り外す一方、該カートリッジ容器26内に帯電ロールを取り付け、更に、信号発生器(NF1731、NF回路設計ブロック株式会社製)30を高圧アンプ(609C、レック株式会社製)32に接続すると共に、該高圧アンプ32をアースさせた状態で、高圧ケーブルにてカートリッジ容器26の電極端子に接続した。そして、感光体28を30rpm にて回転させる一方、帯電ロールに、2kVP-P 、−600Vの電圧を、2400〜3400Hzの間で周波数を変化させつつ印加して、感光体28を帯電させ、その際に生ずる帯電音を、種々の周波数毎に、感光体28と帯電ロールとの当接位置と水平で、且つ感光体28の軸方向と直角となる方向において、かかる当接位置から10mm離隔した位置で、リニアコーダ(LR04、リオン株式会社製)34が接続された騒音計(NL01A 、リオン株式会社製)36により測定した。なお、騒音レベルは、A特性にて評価した。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
かかる表2及び表3の結果からも明らかなように、本発明に従う帯電ロール(実施例1〜実施例8)にあっては、実機において用いた際に、帯電音の発生を効果的に抑制し得るものであることが、認められたのである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一の実施例に係る帯電ロールについて、そのウレタンスポンジ層のSEM写真である。
【図2】帯電ロールにおけるウレタンスポンジ層の通気量の測定手法を示す説明図であって、(a)はシステム全体の装置配設形態を示す説明図であり、(b)は各帯電ロールから取り出されたサンプルのセット形態を示す説明図である。
【図3】帯電ロールを実機に取り付けて、該実機を作動させた際に生ずる帯電音を測定するための装置を概略的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0053】
10 サンプル 12 保持リング
14 保持孔 16 保持筒
18 流量計 20 真空ポンプ
22 マノメータ 24 レーザービームプリンタ
26 カートリッジ容器 28 感光体
30 信号発生器 32 高圧アンプ
34 リニアコーダ 36 騒音計


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール軸となる長手棒状の芯金と、該芯金の周りにウレタンスポンジ層とを有し、該ウレタンスポンジ層が、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との配合物たるウレタン発泡原料の発泡成形によって形成されてなる帯電ロールにして、
前記ポリオール成分が、数平均分子量:MnAが2000〜4000であるポリエーテルポリオールAと、数平均分子量:MnBが4000〜10000であるポリエーテルポリオールBと、ポリエーテル系ポリマーポリオールとから構成され、MnA及びMnBが下記式(1)を満たし、且つ、ポリエーテルポリオールAの配合量:XA (重量部)、ポリエーテルポリオールBの配合量:XB (重量部)、及びポリエーテル系ポリマーポリオールの配合量:XC (重量部)が、下記式(2)及び(3)を満たすことを特徴とする帯電ロール。
MnA:MnB=1:2〜1:3 ・・・(1)
A :XB =2:1〜8:1 ・・・(2)
(XA +XB ):XC =85:15〜95:5 ・・・(3)
【請求項2】
前記ウレタンスポンジ層の外周面上に保護層が設けられている請求項1に記載の帯電ロール。
【請求項3】
前記ウレタンスポンジ層と前記保護層との間に抵抗調整層が設けられている請求項2に記載の帯電ロール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−32773(P2010−32773A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194763(P2008−194763)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】