説明

帯電ロール

【課題】ロール表面におけるトナーフィルミングの発生を抑制すると共に、ゴースト画像の発生、感光体表面の削れ発生、及び、保護層に含まれる粗さ形成用粒子の脱落をも抑制する帯電ロールを提供すること。
【解決手段】軸体の外周面上に導電性ゴム発泡体層が設けられ、かかる導電性ゴム発泡体層の外側に、合成樹脂材料及び粗さ形成用粒子を含む合成樹脂組成物を用いて保護層が設けられてなる帯電ロールにして、前記導電性ゴム発泡体層は、開口率が0.5〜20%であるスキン層を表層部に有すると共に、硬度が0.02N/mm2 以下であり、前記合成樹脂材料の硬度:X(N/mm2 )及び前記粗さ形成用粒子の硬度:Y(N/mm2 )が、所定の条件式(1)〜(3)の全てを満たし、前記保護層の厚さ:a(μm)及び前記粗さ形成用粒子の平均粒子径:b(μm)が所定の条件式(4)を満たすように、構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機やプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置において、電子写真感光体や静電記録誘電体等からなる像担持体を帯電せしめるために用いられる帯電ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した複写機やプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置(以下、電子写真機器という)においては、感光体(ドラム)等の像担持体を、帯電ロールの外周面に接触せしめて、それら像担持体と帯電ロールとを相互に回転させるようにすることによって、かかる像担持体の表面を帯電させる、所謂ロール帯電方式(接触帯電方式)が広く採用されている。
【0003】
そのようなロール帯電方式において用いられる帯電ロールとしては、一般に、要求される様々な特性が効果的に発揮され得るように、各々が異なる材料からなる2以上の層が順次、積層形成された複層構造を呈するロールが広く採用されている。
【0004】
例えば、長期間に及ぶ使用によってもトナーや感光体に与えるストレスを低いものとすると共に、製造コストの削減等を目的として、導電体たる軸体の(芯金)の周りに、ベース層として、低硬度の導電性ゴム発泡体からなる導電性ゴム発泡体層が設けられ、更にその外側に保護層が設けられてなる構造の帯電ロールが、従来より広く用いられている。特に、そのような2層構造の帯電ロールについては、ロール自体の抵抗の均一化及び製品形状の高精度化を図ると共に、感光体との長期間に亘る圧接においても優れた耐ヘタリ性を発揮するように、ベース層として、表面にスキン層を有する連通発泡チューブを用いることが、提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、ロール表面における帯電ムラの発生を抑制し、良好な画像を得ること等を目的として、従来より、帯電ロールの最外層を、各種の合成樹脂材料やゴム材料に粗さ形成用粒子等の所定の粒子を配合してなる組成物を用いて形成することが提案されている(特許文献2〜4参照)。
【0006】
しかしながら、本願発明者等が、従来の、表面にスキン層を有する導電性ゴム発泡体層の外側に粗さ形成用粒子等の粒子を含む保護層が設けられてなる帯電ロールについて、検討を進めたところ、ロール表面の帯電ムラ(残像現象)に起因して、所謂、ゴースト画像を発生する恐れがあることが判明した。即ち、ロール帯電方式(接触帯電方式)においては、帯電ロールと感光体との接触部における僅かな空隙(放電可能領域)で放電を起こすことにより、感光体を帯電させるものであるところ、上記した構成を有する従来の帯電ロールにあっては、その空隙(放電可能領域)が小さく、感光体への帯電性が十分なものではなく、その結果、ゴースト画像を発生させる恐れがあったのである。
【0007】
また、最外層として、粗さ形成用粒子等の粒子を含む保護層が設けられてなる帯電ロールにあっては、長期間に及ぶ使用により、保護層中の粒子によって感光体表面が削られる恐れや、保護層より粒子が脱落し、斑点画像や画像ムラ等の様々な画像不具合を発生する恐れがある等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−237532号公報
【特許文献2】特開2005−91455号公報
【特許文献3】特開2007−178559号公報
【特許文献4】特開2007−264491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、ロール表面におけるトナーフィルミングの発生を抑制すると共に、ゴースト画像の発生、感光体表面の削れ発生、及び、保護層に含まれる粗さ形成用粒子の脱落をも抑制する帯電ロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、本発明は、そのような課題を解決するために、軸体の外周面上に導電性ゴム発泡体層が設けられ、かかる導電性ゴム発泡体層の外側に、合成樹脂材料及び粗さ形成用粒子を含む合成樹脂組成物を用いて保護層が設けられてなる帯電ロールにして、(A)前記導電性ゴム発泡体層は、開口率が0.5〜20%であるスキン層を表層部に有すると共に、硬度が0.02N/mm2 以下であり、(B)前記合成樹脂材料の硬度:X(N/mm2 )及び前記粗さ形成用粒子の硬度:Y(N/mm2 )が、下記条件式(1)〜(3)の全てを満たし、(C)前記保護層の厚さ:a(μm)及び前記粗さ形成用粒子の平均粒子径:b(μm)が下記条件式(4)を満たす、ことを特徴する帯電ロールを、その要旨とするものである。
【数1】

【0011】
なお、そのような本発明に従う帯電ロールにおいては、有利には、前記合成樹脂材料が、アクリル樹脂水系エマルジョン、ウレタン樹脂水系エマルジョン又はアルコール可溶性ポリアミドである。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明に従う帯電ロールは、基層たるベース層として、開口率が0.5〜20%であるスキン層を表層部に有する、硬度が0.02N/mm2 以下である導電性発泡体層を採用しており、ロール全体の硬度が低く抑えられているところから、ロール表面におけるトナーフィルミングの発生が効果的に抑制されるのである。それに加えて、保護層が、合成樹脂材料及び粗さ形成用粒子を含む合成樹脂組成物を用いて形成されているところ、合成樹脂材料の硬度:X及び粗さ形成用粒子の硬度:Yが所定の条件式(1)〜(3)を全て満たすと共に、保護層の厚さ:a及び粗さ形成用粒子の平均粒子径:bが条件式(4)を満たしていることから、ロール表面におけるトナーフィルミングの発生を効果的に抑制すると共に、ゴースト画像の発生、感光体表面の削れ、及び、保護層に含まれる粗さ形成用粒子の脱落についても、効果的に抑制し得るのである。
【0013】
また、上記の合成樹脂材料として、アクリル樹脂水系エマルジョン、ウレタン樹脂水系エマルジョン又はアルコール可溶性ポリアミドを用いた場合には、保護層の厚さの均一化がより有利に図られ、以て、画像不具合の発生を効果的に抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に従う帯電ロールの一例を示す軸直角断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を適宜、参酌して、本発明を詳細に説明する。
【0016】
図1には、本発明に従う帯電ロールの代表的な一実施形態が、軸心に直角な方向の断面において、概略的に示されている。かかる図1において、帯電ロール10は、金属製の導電性軸体(芯金)12の外周面上に、ロール径方向の内側から外側に向かって、順に、ベース層である導電性ゴム発泡体層14と、最外層である保護層16が、各々、所定の厚さで一体的に形成されている。
【0017】
なお、導電性軸体12としては、導電性を有する金属からなるものであれば特に限定されるものではなく、鉄、ステンレス鋼(SUS)や快削鋼(SUM)等からなるものを、例示することが出来る。また、かかる導電性軸体12には、メッキ処理等が施されていてもよく、更に必要に応じて、接着剤やプライマー等が外周面に塗布されていてもよい。加えて、導電性軸体12の形状も、図1に示される如きロッド状の中実体以外にも、パイプ状の中空円筒体であっても、何等差し支えない。
【0018】
そして、本発明に従う帯電ロール10は、先ず、導電性軸体12の外周面上に一体的に形成された導電性ゴム発泡体層14が、開口率が0.5〜20%であるスキン層18を表層部に有するものであり、且つ、その硬度は0.02N/mm2 以下とされている。
【0019】
このように、開口率が所定の範囲内にあるスキン層(18)を表層部に有する導電性ゴム発泡体層(14)を採用することにより、かかる導電性ゴム発泡体層(14)の表面に、例えば後述するエマルジョン系材料を用いて保護層(16)を形成すると、かかるエマルジョン系材料が導電性ゴム発泡体層(14)の表面(非開口部及び開口部)に効果的に含浸すると共に、粗さ形成用粒子(20)は、凝集することなく導電性ゴム発泡体層(14)の表面に比較的均一に分散せしめられる。これにより、本発明の帯電ロール(10)においては、表層(16)の厚さが比較的均一となり、以て、画像不具合の発生が効果的に抑制される。
【0020】
また、導電性ゴム発泡体層(14)の硬度が0.02N/mm2 以下とされているところから、ロール全体の硬度も低く抑えられ、ロール表面におけるトナーフィルミングの発生が効果的に抑制されるのである。
【0021】
ここで、導電性ゴム発泡体層(14)におけるスキン層(18)の開口率が小さ過ぎると、上述した効果を有利に享受し得ない恐れがあり、その一方で、スキン層(18)の開口率が大き過ぎると、保護層(16)を形成せしめることが困難となったり、保護層(16)の厚さが不均一となって最終的に得られる画像にムラが発生する恐れがある。従って、本発明に係る帯電ロール(10)において、導電性ゴム発泡体層(14)におけるスキン層(18)の開口率は0.5〜20%とされる。また、導電性ゴム発泡体層(14)の硬度が0.02N/mm2 を超えると、ロール表面におけるトナーフィルミングの発生を抑制することが困難となる恐れがある。
【0022】
なお、本明細書及び特許請求の範囲における開口率(%)とは、以下のようにして算出されるものを意味する。即ち、保護層が形成せしめられる前の導電性ゴム発泡体層について、その軸方向中央部及び両端部の3箇所において、各箇所において3回ずつ、即ち合計9回、レーザ顕微鏡等の光学顕微鏡を用いて開口面積を測定する。測定された開口面積を光学顕微鏡の観察面積で除し、一の測定における開口率(%)を算出する。そして、9回の測定により得られた開口率(%)の平均値を算出して、この平均値を、本明細書及び特許請求の範囲における開口率(%)とした。
【0023】
また、導電性ゴム発泡体層(14)の硬度とは、以下のようにして測定し、算出したものを意味する。即ち、保護層が形成せしめられる前の導電性ゴム発泡体層を、その両端の軸体(12)部分において支持し、支持された導電性ゴム発泡体層の表面に対して、板状の押圧面(50mm×50mm、厚さ:7mm)を有する治具を10mm/分の速度で押圧し、0.25mm変位時の単位面積当たりの荷重(N/mm2 )を測定する。このような測定を、導電性ゴム発泡体層の軸方向中央部における4箇所(軸中心に0°、90°、180°、270°回転させた位置)において行ない、4回の測定結果の平均値を算出して、この平均値を、本明細書及び特許請求の範囲における導電性ゴム発泡体層(14)の硬度(N/mm2 )とした。
【0024】
本発明において、所定の開口率にて開口したスキン層(18)を有する導電性ゴム発泡体層(14)を形成せしめるに際しては、各種ゴム材料を主成分とする発泡性導電性ゴム組成物が用いられる。本発明において用いられ得るゴム材料としては、エピクロルヒドリンゴム(ECO、CO等)、ニトリルゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)や天然ゴム(NR)等を例示することが出来、これらはそれぞれ単独で用いられ得ることは勿論のこと、二種以上を併用することも可能である。本発明においては、特に、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、エピクロルヒドリンゴムやニトリルゴム等が、好適に用いられる。
【0025】
また、そのようなゴム材料に対しては、従来と同様に、発泡剤や導電剤、更には必要に応じて、充填剤、増量剤、補強剤、加工助剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、顔料、シリコーンオイルや界面活性剤等の各種添加剤が、本発明の目的を阻害しない範囲内において、それぞれの添加目的に応じて適宜、配合される。それらの中でも、特に、発泡剤、加硫剤及び加硫促進剤は、加圧下での加熱によるスキン層(18)の形成に大きく影響を与えることから、その種類及び配合量の選択は重要である。
【0026】
例えば、発泡剤としては、従来より公知の無機系発泡剤や有機系発泡剤を配合することが可能である。熱分解により容易に発泡可能であり、また分解物がマトリックスたるゴム材料との相溶性に優れる等の観点から、本発明においては、有機系発泡剤が有利に用いられる。かかる有機系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニル)ヒドラジド[OBSH]、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等を、例示することが出来る。
【0027】
また、導電剤としては、ケッチェンブラックやアセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、金属粉、導電性金属酸化物、更には各種イオン導電剤、例えば、テトラメチルアンモニウムパークロレート、トリメチルオクタデシルアンモニウムパークロレート、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等を、例示することが出来る。
【0028】
そして、本発明に従う帯電ロール10にあっては、上述した導電性ゴム発泡体層14の外側に、合成樹脂材料及び粗さ形成用粒子20を含む合成樹脂組成物を用いて保護層16が設けられているのであり、かかる保護層16を構成する合成樹脂材料及び粗さ形成用粒子が所定の条件を満たすものであると共に、保護層16の厚さと粗さ形成用粒子20の平均粒子径とが所定の条件を満たすものであるところに、本発明の大きな特徴が存するのである。即ち、本発明においては、合成樹脂材料の硬度:X(N/mm2 )及び粗さ形成用粒子20の硬度:Y(N/mm2 )は下記条件式(1)〜(3)の全てを満たし、保護層16の厚さ:a(μm)及び粗さ形成用粒子20の平均粒子径:b(μm)は下記条件式(4)を満たしているのである。
【数2】

【0029】
このように、最外層として設けられる保護層16において、合成樹脂材料の硬度及び粗さ形成用粒子20の硬度が所定の条件を満たし、且つ、保護層16の厚さと粗さ形成用粒子20の平均粒子径が所定の条件を満たすことにより、本発明の帯電ロール10は、実機に組み込んで使用した際に、ゴースト画像の発生、感光体表面の削れ発生、及び、保護層16に含まれる粗さ形成用粒子20の脱落が、それぞれ効果的に抑制されるのである。
【0030】
ここで、合成樹脂材料の硬度及び粗さ形成用粒子の硬度は、ISO 14577−1「金属材料−硬さのためのインデンテーション試験テストと材料パラメーター Part1:試験方法」に規定されている押込み試験を行ない、その結果を用いて同附属書Aの「A.2マルテンス硬さHM」に準拠して算出したものである。尚、合成樹脂材料がエマルジョン系材料である場合には、その硬化物を試料として用いて測定し、算出したものである。
【0031】
また、粗さ形成用粒子の平均粒子径とは、体積平均粒子径(D50)を意味するものであり、JIS−Z−8825−1:2001に準拠して測定されるものである。更に、保護層の厚さとは、帯電ロールの最外層として設けられた保護層より、ロール軸方向に1mm程度、周方向に2〜5mm程度、深さ方向に1〜2mm程度の大きさの試料を切り出し、かかる試料の断面をレーザー顕微鏡で観察し、測定されるものである。
【0032】
本発明において、合成樹脂材料の硬度:X(N/mm2 )及び粗さ形成用粒子の硬度:Y(N/mm2 )が下記条件式(1)〜(3)の何れかを満たさない場合には、ロール表面におけるトナーフィルミングの発生や感光体表面の削れを効果的に抑制することが出来ない恐れがある。また、保護層の厚さ:a(μm)及び粗さ形成用粒子の平均粒子径:b(μm)が下記条件式(4)を満たさない場合には、ゴースト画像の発生や粒子脱落の脱落を有利に防止することが出来ない恐れがある。
【数3】

【0033】
本発明の保護層16を構成する合成樹脂材料としては、従来より公知の各種合成樹脂材料の中から、最終的に目的とする帯電ロールに応じたものを適宜に選択して、使用することが可能である。合成樹脂材料としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ナイロン樹脂やアクリルスチレン樹脂等を例示することが出来るが、本発明においては、アクリル樹脂水系エマルジョンやウレタン樹脂水系エマルジョン等の合成樹脂の水系エマルジョン(エマルジョン材料)や、アルコール可溶性ポリアミド等が、特に有利に用いられる。これらを用いて液状の合成樹脂組成物を調製し、この液状の合成樹脂組成物を導電性ゴム発泡体層の表面に塗工すると、かかる合成樹脂組成物が導電性ゴム発泡体層の表面(非開口部及び開口部)に効果的に含浸すると共に、粗さ形成用粒子は、凝集することなく導電性ゴム発泡体層の表面に比較的均一に分散せしめられる。これにより、保護層の厚さが比較的均一となり、画像不具合の発生が効果的に抑制されることとなる。尚、合成樹脂材料としてエマルジョン系材料を用いる場合には、必要に応じて更に水が添加され、また、合成樹脂材料としてアルコール可溶性ポリアミドを用いる場合には、分散媒として、メタノールやエタノール等の各種アルコールが用いられる。合成樹脂の水系エマルジョンとしては、VONCOAT CP-6190 、VONCOAT SA-6360 、VONCOAT 550EF 、VONCOAT VF-1040 、VONCOAT CG-8400 、BURNOCK WE-304(以上、商品名:DIC株式会社製)、タケラックW系(商品名:三井化学株式会社製)、HUX320(商品名:株式会社ADEKA製)等を、また、アルコール可溶性ポリアミドとしてはトレジン EF30T(商品名:ナガセケムテックス株式会社製)等を、例示することが出来る。
【0034】
また、粗さ形成用粒子(20)としては、ウレタン樹脂粒子、ナイロン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子等の各種合成樹脂粒子や、シリカ粒子等を用いることが可能である。これら粗さ形成用粒子は、単独で用いられ得ることは勿論のこと、二種以上のものを併用することも可能である。
【0035】
本発明の帯電ロールにおける保護層形成用の合成樹脂組成物を調製するに際しては、公知の導電剤や架橋剤、充填剤等の各種添加剤が、各々、従来と同様な配合割合にて配合され、最終的に得られる保護層(16)の体積抵抗率が、一般に、1×105 〜1×1013Ω・cm程度となるように、調製される。
【0036】
ところで、図1に示す如き構造を呈する、本発明に従う帯電ロール10は、例えば、以下の如き手法に従って製造することが可能である。
【0037】
先ず、上述の如き発泡性導電性ゴム組成物を用いて、最終的に導電性ゴム発泡体層14を与える未加硫未発泡発泡性ゴム層を準備する。具体的には、発泡性導電性ゴム組成物をチューブ状に成形する。
【0038】
発泡性導電性ゴム組成物をチューブ状に成形する際には、押出成形や型成形等を始めとする従来より公知の成形方法の何れをも採用することが出来るが、生産性等の観点から、有利には押出成形が採用される。押出成形の際には、一般的な押出成形機を用いることが可能であり、また、軸体12又は他の芯材の外周面上に直接、未加硫未発泡発泡性ゴム層を成形することも可能である。
【0039】
そのようにして作成された未加硫未発泡発泡性ゴム層を、先ず、加圧下で加熱して、表層部にスキン層18を有する半加硫未発泡発泡性ゴム層とする。加圧下で加熱することにより、未加硫未発泡発泡性ゴム層の内部においては発泡が抑制される一方、かかる未加硫未発泡発泡性ゴム層の加硫は進行し、以て、表層部にスキン層18を有する半加硫未発泡発泡性ゴム層が得られるのである。
【0040】
本発明に係る帯電ロールを製造するに際して、このようなスキン層18を先に設けることは非常に意義がある。即ち、未加硫未発泡発泡性ゴム層について、先ずスキン層18を形成せしめ、その後、所定の操作によってスキン層18の表面を開口せしめることにより、最終的に得られる導電性ゴム発泡体層14の表面における開口率を所望の範囲内とすることが容易ならしめられるのである。なお、従来より広く採用されている、円筒状金型の成形キャビティ内に軸体及び未加硫未発泡発泡性ゴム層を同軸的に配置し、その状態にて金型を加熱して、未加硫未発泡発泡性ゴム層の発泡及び加硫を同時に行なう手法においては、発泡を制御することが困難であるため、最終的に得られる導電性ゴム発泡体層(18)表面の開口率を所望の範囲内(0.5〜20%)とすることは非常に困難である。
【0041】
ここで、未加硫未発泡発泡性ゴム層は、軸体12又は他の芯材が挿入された状態で、加圧下、加熱せしめることが好ましい。けだし、未加硫未発泡発泡性ゴム層において、軸体12等の近傍にある部位(軸直角方向内側の部位)に対しては熱が伝わり難くなることから、その表層部(軸直角方向外側の部位)においてのみスキン層が有利に形成せしめられ得るからである。
【0042】
また、かかる加圧下で加熱する際の種々の条件、例えば、加圧条件、加熱温度や加熱時間等は、未加硫未発泡発泡性ゴム層の加硫が完全に終了しないような(未加硫未発泡発泡性ゴム層が半加硫状態となるような)条件が、発泡性導電性ゴム組成物に含まれる加硫剤及び加硫促進剤の種類や配合量等、更には、後述するスキン層を開口せしめるための手法等に応じて、適宜に決定される。更に、加圧下で加熱する際には、加圧オーブン等が用いられる。そのような適宜に選択された条件に従い、通常、10〜100μm程度の厚さを有するスキン層18が、半加硫未発泡発泡性ゴム層の表層部に形成されることとなる。
【0043】
そのようにして得られた、表層部にスキン層が形成された半加硫未発泡発泡性ゴム層を、開口率が所定の範囲内(0.5〜20%)であるスキン層を表層部に有する導電性ゴム発泡体層14とするためには、以下の如き手法を例示することが出来る。
【0044】
−手法1−
上述の半加硫未発泡発泡性ゴム層を、常圧下で加熱し、半加硫未発泡発泡性ゴム層の内部において発泡及び加硫を進行せしめることにより、開口していないスキン層(18)を表層部に有する導電性ゴム発泡体層14を形成せしめる。その後、かかる導電性ゴム発泡体層14の表面(開口していないスキン層の表面)に対して、レーザーを照射する等によって、導電性ゴム発泡体層14の表面を開口させる。なお、かかるレーザー照射の際の各種条件は、開口率が0.5〜20%となるように、適宜に決定される。
【0045】
−手法2−
上述の半加硫未発泡発泡性ゴム層のスキン層を、上記手法1にて採用する半加硫未発泡発泡性ゴム層のものより比較的薄く設けた後、常圧下で加熱し、半加硫未発泡発泡性ゴム層の内部において発泡及び加硫を進行せしめることにより、開口率が0.5〜20%であるスキン層を表層部に有する導電性ゴム発泡体層14とする。
【0046】
そして、このようにして得られた、開口率が所定範囲内にあるスキン層18を有する導電性ゴム発泡体層14の表面に、前述した、粗さ形成用粒子20を含有する液状の合成樹脂組成物を、ロールコート法等の従来より公知の各種手法に従って塗工する。その後、かかる塗膜を乾燥(及び必要に応じて加熱)せしめることにより、保護層16が得られることとなる。なお、保護層16は、その厚さが、粗さ形成用粒子の平均粒子径との間において上記条件式(4)を満たすように、形成される。
【0047】
このようにして製造された本発明の帯電ロール10にあっては、導電性ゴム発泡体層14及び保護層16が、それぞれ所定の条件を満たすように構成されているところから、ロール表面におけるトナーフィルミングの発生を効果的に抑制すると共に、ゴースト画像の発生、感光体表面の削れ、及び、保護層に含まれる粗さ形成用粒子の脱落についても、効果的に抑制し得るものとなっているのである。
【実施例】
【0048】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には、上述の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。尚、以下の実施例及び比較例における合成樹脂材料の硬度の測定等は、具体的には、それぞれ以下のように実施した。
【0049】
−合成樹脂材料の硬度の測定−
フィッシャー・インストルメンツ社製のフィッシャースコープH-100 (商品名)を用いて測定した。尚、試料の厚さは50〜60μmとし、圧子としてビッカース圧子を用いて、圧子の押し込み荷重:1.0mN、押し込み深さ:2.0μmにて測定した。試料上の異なる10点について測定を行ない、その平均値を算出した。
【0050】
−粗さ形成用粒子の硬度の測定−
フィッシャー・インストルメンツ社製のフィッシャースコープH-100 (商品名)を用いて測定した。尚、圧子として、先端が正方形(50μm×50μm)の平坦なものを用いて、圧子の押し込み荷重を1.0mNとし、押し込み深さを、試料である粗さ形成用粒子の平均粒子径として、測定した。粗さ形成用粒子として準備したものの中から任意に選択した10個の粒子について測定を行ない、その平均値を算出した。
【0051】
−粗さ形成用粒子の平均粒子径の測定−
レーザー回折式粒度分布計(日機装株式会社製、商品名:マイクロトラックHRA )を用いて測定した。
【0052】
−保護層の厚さの測定−
レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製、商品名:VK-9500 )を用いて測定した。
【0053】
先ず、下記表1に示す配合割合に従って、導電性ゴム発泡体層(基層)の形成材料としての発泡性導電性ゴム組成物を調製した。尚、ゴム組成物の調製に用いたエピクロルヒドリンゴムは、ダイソー株式会社製のエピクロマーDG(商品名)である。
【0054】
【表1】

【0055】
一方、下記表2に示す合成樹脂材料のうちの一種と下記表3に示す粗さ形成用粒子(以下、単に粒子ともいう)のうちの一種とを、下記表4及び表5に示す各組合せにおいて用いて、保護層形成材料としての合成樹脂組成物を調製した。具体的には、合成樹脂材料の100重量部と、粒子の10重量部と、カーボンブラックの20重量部とを、分散媒としての水又は有機溶媒(メタノール)の450重量部に添加して、液状の合成樹脂組成物を調製した。
【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
上述のようにして調製された発泡性導電性ゴム組成物(導電性ゴム発泡体層形成材料)と液状の合成樹脂組成物(表層形成用材料)とを用いて、以下の手法に従って帯電ロールを作製した。
【0059】
シリンダ径:40φの押出成形部とクロスタイプのヘッドとを備えた押出成形装置を用いて、発泡性導電性ゴム組成物を、所定径の芯材(SUS304製)と共に同時押出しを行ない、芯材の外周面上に未加硫未発泡発泡性ゴム層が形成されてなる複合体を得た。
【0060】
得られた複合体を、加圧オーブン内に載置し、オーブン内を1MPaまで加圧した後、150℃まで加熱して15分間、加熱処理を行なった。尚、かかる加熱処理後の複合体表面(半加硫未発泡発泡性ゴム層の表面)を目視で観察したところ、発泡セルは見当たらず、スキン層が形成されていることが認められた。
【0061】
その後、オーブン内の圧力を常圧まで減圧し、複合体から芯材を除去した。得られたゴムチューブ(半加硫未発泡発泡性ゴム層)に対して、オーブン内にて、常圧下、150℃で30分間、加熱処理を施した。
【0062】
さらに、得られたゴムチューブに、外径:6φの金属製軸体を挿入した後、ゴムチューブの表面にレーザーを照射することにより、軸体の外周面上に導電性ゴム発泡体層が一体的に設けられてなるベースロールであって、かかる導電性ゴム発泡体層の表層部に、下記表4及び表5に示す開口率を有するスキン層を備えたものを作製した。
【0063】
そして、そのようにして得られた各ベースロールの表面に、下記表4及び表5に示す合成樹脂材料及び粒子を含む液状の合成樹脂組成物を、ロールコート法に従って塗布し、120℃で30分間、乾燥して保護層を形成することにより、19種類の帯電ロールを製造した(実施例1〜11、比較例1〜8)。尚、下記表4及び表5において、合成樹脂材料の硬度:X及び粗さ形成用粒子の硬度:Yが本発明の条件式(1)〜(3)の全てを満たす場合には○と、それら条件式のうち何れか一つでも満たさない場合には×と、それぞれ示した。また、下記表4及び表5における「b/a」は、[粗さ形成用粒子の平均粒子径:b(μm)]/[保護層の厚さ:a(μm)]を示す。
【0064】
得られた19種類の帯電ロールについて、以下の評価を行なった。
【0065】
−ゴースト画像の評価−
帯電ロールを実機(ヒューレット・パッカード社製、商品名:Color Laser Jet CP1215。以下同じ。)のカートリッジ内にセットし、上半分が黒ベタであり、下半分が25%ハーフトーンパターンである画像を出力した。得られた画像について、以下の基準に従って評価した。評価結果を、「ゴースト」として表4及び表5に示す。
◎:画像中に、黒ベタの残像が認められない。
○:画像中に黒ベタの残像が認められるものの、許容範囲内である。
△:画像中に、黒ベタの残像が顕著に認められる。
【0066】
−トナーフィルミングの評価−
帯電ロールを実機のカートリッジ内にセットし、5%濃度画像を、カートリッジについて定められた耐久印刷数だけ出力した。その後、帯電ロール及び感光ドラムの各表面を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。評価結果を、「トナーフィルミング」として表4及び表5に示す。
○:感光ドラム及び帯電ロールの何れの表面にも、トナーの融着が認められない。
×:感光ドラム又は帯電ロールの何れかの表面に、出力画像に悪影響を与えるような トナーの融着が認められる。
【0067】
−ドラム削れの評価−
帯電ロールを実機のカートリッジ内にセットし、5%濃度画像を、カートリッジについて定められた耐久印刷数だけ出力した。その後、感光ドラムの表面を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。評価結果を、「ドラム削れ」として表4及び表5に示す。
○:感光ドラムの表面に、欠損が認められない。
×:感光ドラムの表面に、欠損が認められる。
【0068】
−画像ムラの評価−
帯電ロールを実機のカートリッジ内にセットし、25%ハーフトーンパターンを出力した。得られた画像について、以下の基準に従って評価した。評価結果を、「画像ムラ」として表3及び表4に示す。
○:画像中に、帯電ロールピッチで画像の濃度ムラが認められない。
×:画像中に、帯電ロールピッチで顕著な画像の濃度ムラが認められる。
【0069】
【表4】

【0070】
【表5】

【0071】
かかる表4及び表5の結果からも明らかなように、本発明に従う帯電ロール(実施例1〜11)にあっては、ロール表面におけるトナーフィルミングの発生を抑制すると共に、ゴースト画像の発生、感光体表面の削れ発生、及び、保護層に含まれる粗さ形成用粒子の脱落をも抑制するものであることが、認められたのである。
【符号の説明】
【0072】
10 帯電ロール 12 軸体
14 導電性ゴム発泡体層 16 保護層
18 スキン層 20 粗さ形成用粒子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の外周面上に導電性ゴム発泡体層が設けられ、かかる導電性ゴム発泡体層の外側に、合成樹脂材料及び粗さ形成用粒子を含む合成樹脂組成物を用いて保護層が設けられてなる帯電ロールにして、
前記導電性ゴム発泡体層は、開口率が0.5〜20%であるスキン層を表層部に有すると共に、硬度が0.02N/mm2 以下であり、
前記合成樹脂材料の硬度:X(N/mm2 )及び前記粗さ形成用粒子の硬度:Y(N/mm2 )が、下記条件式(1)〜(3)の全てを満たし、
前記保護層の厚さ:a(μm)及び前記粗さ形成用粒子の平均粒子径:b(μm)が、下記条件式(4)を満たす、
ことを特徴する帯電ロール。
【数1】

【請求項2】
前記合成樹脂材料が、アクリル樹脂水系エマルジョン、ウレタン樹脂水系エマルジョン又はアルコール可溶性ポリアミドである請求項1に記載の帯電ロール。


【図1】
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【公開番号】特開2012−42700(P2012−42700A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183648(P2010−183648)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】