説明

帯電粒子量評価装置

【課題】結露が発生しやすい環境下でも精度の高い帯電粒子量の評価が行える帯電粒子量評価装置を提供する。
【解決手段】帯電粒子量評価装置1は、円柱状の内側導体2aおよび内側導体2aよりも径の大きい円筒状の外側導体2bを同心に配置して構成される同心円筒状電極2と、両導体2a,2bの間の空間に同心円筒状電極2の軸方向に層流を発生させる吸気ファン3と、両導体2a,2b間に電圧を印加する電圧源5と、両導体2a,2b間に流れる電流を測定する電流計4と、電流計4の測定値を取得する電流値取得部12と、層流の流路の壁面をなす両導体2a,導体2bに発生する結露の有無を検出する結露検出部16と、結露検出部16で結露無しと検出された場合に、同心円筒状電極2の形状および寸法と吸気ファン3による層流の流量と電圧源5の印加電圧と電流値取得部12が取得した電流値とに基づいて帯電粒子量を評価する粒径算出部15とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中に浮遊する微粒子の粒径や粒子数などを評価する帯電粒子量評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の帯電粒子量評価装置としては、帯電した微粒子の電場中における移動速度(電気移動度)の違いを利用して、微粒子の粒径を測定する微分型電気移動度測定器(DMA:Differential Mobility Analyzer)が従来より提供されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、DMAを用いた帯電粒子量評価装置は大型のため、ゲルディエンコンデンサと呼ばれる二重同心円筒を用いた帯電粒子量評価装置が従来より提供されている(例えば非特許文献1参照)。図5はゲルディエンコンデンサを用いた帯電粒子量評価装置1の概略構成図であり、この帯電粒子量評価装置1は、同心円筒状電極2と、吸気ファン3と、電流計4と、電圧源5とを主要な構成として備えている。
【0004】
同心円筒状電極2は、互いに半径の異なる円筒状の内側導体2aおよび外側導体2bを同心に配して構成される。二重同心円筒の内、外側導体2bには電圧源5により直流電圧が印加され、内側導体2aは接地されている。なお電圧源5は図示しない電圧制御部によって電源電圧を変化させることができる。
【0005】
吸気ファン3は、内側導体2aと外側導体2bとの間の空間を通して空気を吸引することによって、内側導体2aと外側導体2bの間の空間に矢印Aの方向に空気を流し、この空間に空気の流れる方向と速度が均一な層流を生成する。
【0006】
電流計4は内側導体2aと外側導体2bとの間に流れる電流を測定するものであり、その電流値から帯電粒子の個数を算出することができる。
【0007】
本装置では吸気ファン3により空気を吸引している状態で、内側導体2aを接地するとともに、電圧源5により外側導体2bに電圧Vを印加して、内外の導体間に電位差を与えると、両導体間に吸引された空気中の帯電粒子が、両導体間に発生する電界によって内側導体2aに引き寄せられる。そして、帯電粒子が内側導体2aに流れ込むと、両導体間に電流が発生するので、電流計4の測定値をもとに帯電粒子の粒子数を測定することができる。なお、電圧源5による印加電圧Vの極性と、電流計4の測定値の極性とを考慮すれば正負何れの極性の帯電粒子でも測定することができる。
【0008】
ここで、帯電粒子の粒径はその移動度に依存し、その移動度は二重円筒(内側導体2aおよび外側導体2b)の寸法と空気の流量とを一定にすると、電圧源5の印加電圧Vによって定まる。したがって電圧源5の印加電圧を変化させ、その時の電流値を電流計4で測定することによって、所定の粒径の帯電粒子の数を求めることができる。但し、ゲルディエンコンデンサと呼ばれる二重同心円筒を用いた図5の測定装置では、電圧源5の印加電圧により定めた移動度以上(粒径以下)の帯電粒子を全て取り込み、その全数を評価している。
【特許文献1】特開平10−288600号公報
【非特許文献1】北川信一郎編著、「大気電気学」、東海大学出版会、1996年6月10日、47−49頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の帯電粒子量評価装置1では、移動度の変化をもとに帯電粒子の粒子量を所定の粒径範囲で測定することによって粒子数の分布を求めているが、層流の流路の壁面をなす内側導体2aと外側導体2bとに結露が発生すると、測定結果に誤差が生じるという問題があった。
【0010】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、結露が発生しやすい環境下でも精度の高い帯電粒子量の評価が行える帯電粒子量評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、円柱状の内側導体および内側導体よりも径の大きい円筒状の外側導体を同心に配置して構成された同心円筒状電極と、内側導体と外側導体との間の空間に同心円筒状電極の軸方向に層流を発生させる気流発生手段と、内側導体と外側導体との間に電圧を印加する電圧印加手段と、内側導体と外側導体との間に流れる電流を測定する電流測定手段と、層流の流路の壁面をなす内側導体および外側導体に発生する結露の有無を検出する結露検出手段と、当該結露検出手段により結露無しと検出された場合に、同心円筒状電極の形状および寸法と気流発生手段による層流の流量と電圧印加手段による印加電圧と電流測定手段の測定結果とに基づいて帯電粒子量を評価する帯電粒子量評価手段とを具備したことを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、層流の流路の途中であって帯電粒子量の評価時の気流発生方向において同心円筒状電極よりも下流側に配置されて空気を加熱するヒータと、気流発生手段による気流発生方向の正逆を切り換える送風方向切換手段と、結露検出手段が結露を検出した場合に、ヒータで空気を加熱させるとともに送風方向切換手段を用いて気流発生手段による気流発生方向を帯電粒子量の評価時と反対方向に切り換える暖気運転を行う暖気運転制御手段とを設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、暖気運転制御手段は、結露検出手段により結露無しと検出されるまで暖気運転を継続することを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項2又は3の発明において、気流発生手段の送風量を変化させる気流制御手段を設け、暖気運転制御手段は、暖気運転中に所定時間だけ、気流制御手段を用いて気流発生手段の送風量を帯電粒子量の評価時の送風量よりも大きい所定流量に増加させることを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか1つの発明において、結露検出手段は、電流測定手段の測定結果より求めた同心円筒状電極に蓄えられる電荷量および電圧印加手段による印加電圧から求めた静電容量と、同心円筒状電極の形状および寸法から求めた静電容量とを比較し、両者の差の絶対値が所定のしきい値を超えることから結露の発生を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、帯電粒子量評価手段は、結露検出手段により結露無しと検出された場合に、帯電粒子量の評価を行っており、誤差が発生しやすい結露環境下では帯電粒子量の評価を行っていないので、精度の高い帯電粒子量の評価を行えるという効果がある。
【0017】
請求項2の発明によれば、結露検出手段により結露ありと検出された場合には、暖気運転制御手段が、ヒータにより空気を加熱させるとともに、気流発生手段の送風方向を帯電粒子量の評価時と反対方向に切り換えており、ヒータの加熱で暖められた空気が内側導体と外側導体との間の空間に送風されるので、層流の流路の壁面をなす内側導体および外側導体の結露を取り除くことができる。また、暖気運転の結果、結露が検出されなくなると、帯電粒子量評価手段により帯電粒子量の評価が行われるので、より高い精度で帯電粒子量を評価することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、結露検出手段により結露無しと検出されるまで、暖気運転制御手段が暖気運転を継続しているので、結露を取り除くのに必要な最短時間で暖気運転を終了して、帯電粒子量の評価を行える状態に復帰させることができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、暖気運転制御手段が、暖気運転中に所定時間だけ、気流発生手段の送風量を帯電粒子量の評価時の送風量よりも大きい所定流量に増加させているので、結露を取り除くとともに内側導体や外側導体に付着した塵や埃を吹き飛ばすことができ、より精度の高い帯電粒子量の評価が行える。
【0020】
請求項5の発明によれば、結露検出手段は、電流測定手段の測定結果より求めた同心円筒状電極に蓄えられる電荷量および電圧印加手段による印加電圧から求めた静電容量と、同心円筒状電極の形状および寸法から求めた静電容量との差の絶対値が所定のしきい値を超えることから、結露の発生を検出しているので、結露検出用のセンサを別途設ける必要が無く、結露の有無を安価に検出できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
(実施形態1)
本発明の実施形態1を図1及び図2に基づいて説明する。本実施形態の帯電粒子量評価装置1は、図1に示すように、同心円筒状電極2と、気流発生手段たる吸気ファン3と、電流測定手段たる電流計4と、電圧印加手段たる電圧源5と、コントローラ10とを主要な構成として備えている。
【0023】
同心円筒状電極2は、円柱状の内側導体2aおよび内側導体2aよりも径の大きい円筒状の外側導体2bを同心に配して構成される。内側導体2aおよび外側導体2bは帯電粒子を引き寄せやすく、且つ、両導体間に流れる電流を測定しやすいように導電率の高い材料で形成するのが好ましく、例えば真鍮の表面にクロムめっきを施して形成される。
【0024】
内側導体2aは中空ではなく、周面に接地端子21と電流測定端子22とを備え、接地端子21に接続された接地線25を介してグランドに接地される。この内側導体2aは、帯電して電流が流れることによって誤差が生じるのを防止するために、高い絶縁性を有する保持部材(図示せず)を介して外側導体2b内に保持されており、保持部材の材料としては、例えば高絶縁性の三フッ化塩化エチレン樹脂を用いるのが好ましい。
【0025】
外側導体2bは中空円筒状であって、電源接続端子23と電流測定端子24とを備え、電源接続端子23を介して電圧源5の直流電圧が印加される。また内側導体2aの電流測定端子22と外側導体2bの電流測定端子24との間には電流計4が接続されている。ここに、内側導体2aの接地端子21と外側導体2bの電源接続端子23とで電圧印加端子が構成され、両導体2a,2b間に電圧源5の直流電圧が印加されようになっている。
【0026】
ここで、帯電粒子の粒径および移動度と、外側導体2bおよび内側導体2aの間に印加した印加電圧と、同心円筒状電極2の形状および寸法の関係を図5に基づいて説明する。
【0027】
空気中の帯電粒子が等しい移動度を持っていると仮定し、同心円筒状電極2の吸気側において外側導体2bの縁の点Pから流入した帯電粒子が、導体2a,2b間の電界を受けて点Sで捕捉されたものとすると、同心円筒状電極2の筒内に流入してくる帯電粒子は全て内側導体2aに捕捉されることになる。なお帯電粒子が捕捉される点Sの位置は外側導体2bへの印加電圧や気流の流量を調整することで変化する。
【0028】
ところで、実際の空気中には様々な移動度を持った帯電粒子が存在しており、ある印加電圧および流量の条件下で点Pから流入し、内側導体2aにおいて出口側の縁の点Tで捕捉される帯電粒子の移動度を臨界移動度と呼ぶ。この臨界移動度は、内側導体2aで捕捉可能な帯電粒子と、内側導体2aで捕捉できない帯電粒子の境界を示し、臨界移動度よりも移動度の大きな帯電粒子は内側導体2aで全て捕捉されるが、臨界移動度よりも移動度の小さい帯電粒子は一部が捕捉されずに、同心円筒状電極2の出口から外部へ流出することになる。
【0029】
例えば図5中の点Rから流入した帯電粒子が点Tで捕捉されたものとすると、移動度が同じ帯電粒子で、点Rを通る同心円C1と外側導体2bとの間の領域から流入する帯電粒子は同心円筒状電極2の出口から流出することになり、同心円C1と内側導体2aの間の領域(図中の斜線部)から流入した帯電粒子のみが内側導体2aで捕捉されることになる。
【0030】
ここで、帯電粒子の臨界移動度kcは、外側導体2bへの印加電圧がV、内側導体2aと外側導体2bとの間に流れる層流の流量がφ、外側導体2bの半径がr0、内側導体2aの半径がr1、同心円筒状電極2の軸方向の全長がLの場合に、以下の式(1)を用いて表される。
【0031】
【数1】

【0032】
また、移動度kcと帯電粒子の粒径Dpとの関係は、帯電粒子の荷電数をnp、電気素量をe、カニンガム補正係数をCc、空気の粘性係数をμとした時に以下の式(2)で表される。
【0033】
【数2】

【0034】
ここで、カニンガム補正係数Ccは粒径Dpの関数であり、臨界移動度kcと粒径Dp及び印加電圧Vは上記の式(1)と式(2)を連立して求めることができる。なお、粒径Dpと印加電圧Vとの関係を求める際には、カニンガム補正係数Ccが粒径Dpにより変化するため、式(1)と式(2)を連立して臨界移動度kcを消去した式から数値的に算出する。
【0035】
ところで、本実施形態では粒径の測定範囲を例えば0.6〜28nmとして以下の説明を行う。ここで、帯電粒子の荷電数npを1と仮定すると、式(2)より電気移動度は5.49〜0.00274cm/V・sとなる。また、層流の流量φを0.05m/min(50L/min)、内側導体2aの半径r1を4.5cm、外側導体2bの半径r0を4.8cmとし、同心円筒状電極2の全長を52cmと固定した場合、印加電圧Vは0〜60Vとなる。
【0036】
また、吸気ファン3は、帯電粒子量の評価時の気流発生方向において同心円筒状電極2に対し気流の出口側(図1中の右側)に配置され、内側導体2aと外側導体2bの間の環状空間2cの空気を吸引することによって、この環状空間2c内に同心円筒状電極2の軸方向に沿って流れる気流を生成している。吸気ファン3の回転数は一定に保たれ、気流の流量を一定にしている。また、両導体2a,2b間の空間(環状空間2c)内に層流を生成するために、吸気ファン3の備える回転羽根(図示せず)の径が外側導体2bの径よりも大きく形成されており、回転羽根の回転面が同心円筒状電極2の中心軸方向と直交し、且つ、回転羽根の回転軸と同心円筒状電極2の中心軸とが同一直線上に存在するように吸気ファン3が配置され、同心円筒状電極2と吸気ファン3との間に気流の流れを乱す凹凸が出来ないように接続されている。なお両導体2a,2bの間の空間に層流を生成するのは、同心円筒状電極2の入口側(図1中の左側)から両導体2a,2bの間の空間に流入した帯電粒子を同心円筒状電極2の軸方向と平行に進ませることによって、帯電粒子を一定速度で移動する状態にして電界を作用させるためである。
【0037】
電流計4は、内側導体2aの電流測定端子22と外側導体2bの電流測定端子24との間に接続されるデジタル式の電流計であり、電流の測定値は後述の電流値取得部12によって自動的に取得される。なお内側導体2aと外側導体2bとの間に流れる電流から帯電粒子の粒子数を求めることができ、両導体2a,2b間に流れる電流をisとすると、帯電粒子の荷電数npを1と仮定しているので、帯電粒子の個数nsは以下の式(3)で表される。なお、荷電数npが1でないときには、式(3)の電気素量eに荷電数npを乗じることにより算出できる。但し、eは電気素量、φは気流の流量である。
【0038】
【数3】

【0039】
また、電圧源5は、電源接続端子23を介して外側導体2bに直流電圧を印加する可変電源であり、自動制御で測定が行えるように後述の電圧制御部11によって印加電圧が自動的に制御される。なお、電圧源5による印加電圧の極性は正又は負に切り替えることが可能であり、電圧源5による印加電圧が正の電圧であれば正の帯電粒子を計測でき、印加電圧が負の電圧であれば負の帯電粒子を計測することができる。
【0040】
次にコントローラ10の構成について説明する。コントローラ10は電圧制御部11と電流値取得部12と入力部13と演算処理部14を主要な構成として備える。
【0041】
電圧制御部11は、後述の粒径算出部15から入力された印加電圧の電圧値および極性に基づいて電圧源5の印加電圧を自動的に制御する。
【0042】
電流値取得部12は、電流計4から電流の測定値を自動的に取得し、取得した電流値を粒径算出部15と後述の結露検出部16(結露検出手段)とに出力する。
【0043】
入力部13は、測定しようとする帯電粒子の測定範囲、極性及び粒径のスイープ幅、流量及び同心円筒状電極2の寸法などの測定条件をユーザが入力するためのものであり、入力された測定条件は演算処理部14の粒径算出部15と結露検出部16とに出力される。
【0044】
演算処理部14は、粒径算出部15(帯電粒子量評価手段)と結露検出部16とを備え、電圧制御部11を用いて電圧源5の印加電圧を設定したり、電流値取得部12から得られた電流値をもとに帯電粒子の粒径分布を求めたり、結露検出部16により内側電極2a又は外側電極2bの結露が検出されると粒径算出部15に結露の検出信号を出力する機能を有している。尚、演算処理部14は例えばマイクロコンピュータを用いて構成され、粒径算出部15および結露検出部16はマイクロコンピュータの演算機能によって実現される。
【0045】
粒径算出部15は、入力部13から入力された測定条件に従い、測定対象の帯電粒子の粒径と移動度の関係から、外側導体2bに印加する電圧を算出して算出結果を電圧制御部11と結露検出部16に出力するとともに、電流値取得部12から取得した電流値をもとに、電圧源5の印加電圧により設定される粒径以下の帯電粒子の個数を算出する。粒径算出部15では、電圧制御部11を用いて電圧源5の印加電圧をスイープさせることで、測定対象の粒径を所定のスイープ幅ずつ変化させており、測定対象の粒径をスイープ幅だけ変化させる毎に粒子数を測定することによって、帯電粒子の粒子数の粒径分布を求めることができる。さらに、粒径算出部15は計測したい帯電粒子の極性を電圧制御部11に出力する。また、粒径算出部15は、計測した粒径分布を電子データとして記憶部(図示せず)に記憶させるとともに、図示しない出力装置(プリンタやモニタ装置など)に粒径分布を出力する。また、粒径算出部15は、後述の結露検出部16から結露の検出信号が入力されると、検出信号が入力される間は帯電粒子量の評価を停止する機能を有している。
【0046】
結露検出部16は、同心円筒状電極2の形状および寸法から求めた静電容量C1と、電流値取得部12が取得した電流値より求めた同心円筒状電極2に蓄えられる電荷量および電圧源5の印加電圧から求めた静電容量C2とを比較することによって、結露の発生を検出する。すなわち、結露検出部16は、入力部13から入力された測定条件(同心円筒状電極2の寸法)をもとに、以下の式(4)を用いて同心円筒状電極2の静電容量C1を求める。但し、εは空気の誘電率である。
【0047】
【数4】

【0048】
この静電容量C1は、同心円筒状電極2の形状および寸法で決まる固有の値である。
【0049】
一方、結露検出部16は、電流値取得部12から入力された電流値isとその時間tと印加電圧Vから、以下の式(5)を用いて静電容量C2を求める。
【0050】
【数5】

【0051】
そして、結露検出部16は、同心円筒状電極2の形状および寸法で決まる同心円筒状電極2に固有の静電容量C1と、電流値isと印加電圧Vとから求めた実際の静電容量C2とを比較し、両者が異なる値になると(すなわち静電容量C1,C2の差の絶対値が所定のしきい値を超えると)、結露の発生を示す結露検出信号を粒径算出部15に出力するのである。
【0052】
次に本実施形態の帯電粒子量評価装置1の動作を図2のフロー図に従って説明する。
【0053】
先ずコントローラ10の電源を投入する。コントローラ10に電力が供給されて、コントローラ10が動作を開始すると、測定担当者が入力部13を用いて帯電粒子の粒径の測定範囲および極性と、粒径のスイープ幅と、同心円筒状電極2の寸法などの測定条件を入力する(ステップS1)。
【0054】
次に電圧源5の電源を投入する。但し電源投入時には電圧源5の電圧はゼロに設定されている。尚、コントローラ10の電源と連動して、電圧源5の電源を投入させても良い。
【0055】
電圧源5の電源が投入されると、粒径算出部15は、入力部13を用いて入力された帯電粒子の粒径の測定範囲および極性と、帯電粒子の流量と、同心円筒状電極2の寸法などの測定条件をもとに、前述の粒径、臨界移動度および印加電圧の関係式(1)(2)を連立して解くことにより、測定対象の粒径範囲に対応する印加電圧の変動範囲と、粒径のスイープ幅に対応した印加電圧のスイープ幅を算出しており、粒径を最小値から最大値まで所定のスイープ幅で変化させる際に各々の粒径に対応した印加電圧を求めている(ステップS2)。
【0056】
次に粒径算出部15は、粒径の最小値に対応した印加電圧の電圧値及び極性を電圧制御部11と結露検出部16とに出力する(ステップS3)。今回の測定条件では粒径の最小値は0.6nmである。このとき、電圧制御部11が電圧源5の印加電圧を設定して、粒径の最小値に対応した印加電圧が外側導体2bに印加される(ステップS4)。なお外側導体2bに印加される電圧の極性は測定対象の帯電粒子の極性と同極性であり、負の帯電粒子を測定したい場合は外側導体2bに印加する電圧の極性を負極性とする。これによって、内側導体2aから外側導体2bに電界が発生し、この電界により負の帯電粒子はグランドに接地された内側導体2aに引き寄せられる。そして、電圧源5の印加電圧で設定された粒径以下の帯電粒子は内側導体2aに取り込まれて、内側導体2aと外側導体2bとの間に電流が流れるのである(ステップS5)。
【0057】
内側導体2aに取り込まれた帯電粒子によって電流が流れると、その電流値は電流計4によって測定される。電流計4の測定値は電流値取得部12によって自動的に取得され、電流値取得部12は取得した電流値を粒径算出部15及び結露検出部16に出力する(ステップS6)。
【0058】
結露検出部16は、入力部13を用いて入力された測定条件から式(4)を用いて同心円筒状電極2に固有の静電容量C1を算出して、図示しない記憶部に記憶させる(ステップS7)。なお、静電容量C1を算出するステップS7の処理は、入力部13を用いて測定条件が入力される毎に1回だけ行えば良く、以後は記憶部から静電容量C1の値を読み込めば良い。
【0059】
また結露検出部16は、粒径算出部15から入力された印加電圧Vと、電流値取得部12から取得した電流値isと、取得した時間tとから、上述の式(5)を用いて実際の静電容量C2を算出して、記憶部に記憶させ(ステップS8)、ステップS7で求めた固有の静電容量C1との比較により結露の有無を判断する(ステップS9)。つまり結露検出部16は、同心円筒状電極2の形状および寸法から求めた固有の静電容量C1と、実際の静電容量C2とが一致しているか否かを判断し、一致していなければ(つまり静電容量C1,C2の差の絶対値が所定のしきい値を超えると)、結露が発生したと判断して、結露検出信号を粒径算出部15に出力し(ステップS10)、その後結露が検出されなくなるまで結露検出信号を粒径算出部15に出力し続ける。
【0060】
ここで、粒径算出部15は、結露検出部16から結露検出信号が入力されると、直ちに帯電粒子量の評価を停止し(ステップS11)、結露検出信号が入力されなくなるまで上述のステップS6〜S9の処理を繰り返し実行する。一方、粒径算出部15は、結露検出部16から結露検出信号が入力されなくなると、電流値取得部12から入力された電流値isから、上述の式(3)を用いて最小粒径以下の帯電粒子の数を算出し、測定対象の帯電粒子の粒径および個数を記憶部に記憶させる(ステップS12)。
【0061】
測定対象の帯電粒子の粒径と個数とを記憶部に記憶させると、粒径算出部15では全ての測定範囲について測定を終了したか否かを判断し(ステップS13)、測定が終わっていなければ、粒径を所定のスイープ幅だけ増加させた場合の印加電圧の電圧値及び極性を電圧制御部11および結露検出部16に出力した後(ステップS14)、上述のステップS4〜S12の処理を繰り返す。尚、本実施形態では0.6〜2nmの粒径範囲ではスイープ幅を0.2nm、2〜28nmの粒径範囲ではスイープ幅を2nmとしているので、最小粒径(0.6nm)の次は粒径が0.8nmの時の印加電圧の電圧値を出力する。
【0062】
本装置では上述の処理を行い、粒径を0.6nmから28nmまで所定のスイープ幅ずつスイープさせる毎に、各々の粒径の設定値で上記の処理S4〜S13を繰り返すことによって粒子数を算出して、粒径分布(粒径に対する個数の分布)を求めており、ステップS13において、粒径算出部15が、全ての測定範囲で測定を終了したと判断すると、粒径分布の算出結果を記憶部に記憶させるとともに、出力装置に測定結果を出力する(ステップS15)。
【0063】
以上説明したように本実施形態の帯電粒子量評価装置1では、同心円筒状電極2において層流の流路の壁面をなす内側導体2aおよび外側導体2bの結露の有無を検出する結露検出部16を設け、結露検出部16により結露が無いと判断された場合に粒径算出部15が帯電粒子量の評価を行っており、測定の誤差が発生しやすい結露環境下では帯電粒子量の評価を行わないので、精度の高い帯電粒子量の評価を行うことができる。
【0064】
また結露検出部16では、同心円筒状電極2の形状および寸法から求めた静電容量C1と、電流値取得部12の取得した電流値より求めた同心円筒状電極2に蓄えられる電荷量および電圧源5の印加電圧から求めた静電容量C2とを比較し、静電容量C1、C2の差の絶対値が所定のしきい値を超えることから、結露が発生したと判断しているので、結露検出用のセンサを別途設ける必要が無く、結露の有無を安価に検出することができる。
【0065】
(実施形態2)
本発明の実施形態2を図3及び図4に基づいて説明する。
【0066】
本実施形態では、実施形態1で説明した帯電粒子量評価装置1において、吸気ファン3に電源を供給する電圧源6と、吸気ファン3により発生される層流の流路の途中であって帯電粒子量の評価時の気流発生方向において同心円筒状電極2よりも下流側に配置されて空気を加熱するヒータ7と、電圧源6による印加電圧の極性を反転させることで吸気ファン3の気流発生方向の正逆を切り換える気流制御部17(送風方向切換手段)と、結露検出部16が結露の発生を検出すると、ヒータ7により吸気ファン3の近傍の空気を加熱させるとともに、気流制御部17を用いて吸気ファン3による気流発生方向を帯電粒子量の評価時と反対方向に切り換える暖気運転を行わせる暖気運転制御部18とを設けている。尚、電圧源6、ヒータ7、気流制御部17および暖気運転制御部18以外の構成は実施形態1と同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0067】
電圧源6は、電圧端子31を介して吸気ファン3に直流電圧を印加する可変電源であり、気流制御部17により印加電圧の極性が正又は負に切り換えられるようになっている。例えば気流制御部17が電圧源6による印加電圧の極性を正の電圧とすると、吸気ファン3は同心円筒状電極2側から空気を吸気し、ヒータ7を介して図3中の右側に空気を送風しており、気流発生方向は矢印Aの方向となる。一方、気流制御部17が電圧源6による印加電圧の極性を負の電圧とすると、吸気ファン3はヒータ7側から空気を吸気し、同心円筒状電極2を介して図3中の左側に空気を送風しており、気流発生方向は矢印Bの方向となる。
【0068】
ヒータ7は、吸気ファン3の近傍(本実施形態では帯電粒子量評価時の気流発生方向の排気側)の空気を加熱するものであり、暖気運転制御部18からの電源投入信号が接続端子71に入力されると、内蔵するスイッチが導通して、図示しない電圧源から電源が供給され、発熱するようになっている。
【0069】
入力部13は、実施形態1で説明した測定条件に加えて暖気運転時間を入力するためのものであり、入力された暖気運転時間を暖気運転制御部18に出力する機能を有している。
【0070】
粒径算出部15は、実施形態1で説明した機能に加えて、結露検出部16から結露の検出信号が入力された後に結露の検出信号が入力されなくなると、帯電粒子量の測定を開始する機能を備えている。
【0071】
結露検出部16は実施形態1で説明したものと同様であり、結露の発生を検出すると結露の検出信号を粒径算出部15と暖気運転制御部18とに出力する。また実施形態1では、結露検出部16は、結露の発生を検出している間だけ結露の検出信号を出力しているのに対して、本実施形態では、結露検出部16が、結露の発生を検出して結露検出信号を出力すると、暖気運転制御部18から暖気運転の終了を示す暖気終了信号が入力されるまで結露の検出信号を出力し続けており、暖気終了信号が入力された時点で再度結露が検出されなければ、結露検出信号の出力を停止する。
【0072】
気流制御部17は、暖気運転制御部18から入力される極性切換信号の極性に応じて電圧源6の印加電圧の極性を切り換え、吸気ファン3による気流発生方向の正逆を反転させるようになっている。
【0073】
暖気運転制御部18は、結露検出部16から結露の検出信号が入力されると、暖気運転を開始するために、気流制御部17に極性切換信号を出力して、吸気ファン3による気流発生方向を帯電粒子量の評価時と反対方向に切り換えるとともに、ヒータ7に電源投入信号を出力する機能を有している。暖気運転時にはヒータ7による加熱で乾燥させた空気が吸気ファン3に吸気されて、同心円筒状電極2の環状空間2c内へ送風されるので、内側導体2aや外側導体2bを暖めて、結露を取り除くことができる。また、暖気運転制御部18は、入力部13を用いて入力された暖気運転時間を図示しない記憶手段に保持させており、結露検出信号が入力されてから上記暖気運転時間が継続するまでの間暖気運転を行い、暖気運転時間が経過した時点で気流制御部17に極性切換信号を出力して気流発生方向を帯電粒子量の評価時の方向に反転させるとともに、ヒータ7の接続端子71に電源停止信号を出力して、ヒータ7への電源供給を停止させた後、結露検出部16に暖気終了信号を出力する。ここに、暖気運転時間は、内側導体2aおよび外側導体2bの結露を取り除くのに必要な時間よりもやや長い時間に設定されており、暖気運転を暖気運転時間だけ継続することで、内側導体2aおよび外側導体2bの結露を確実に無くすことができるようになっている。
【0074】
次に本実施形態の帯電粒子量評価装置1の動作を図4のフロー図に従って説明する。
【0075】
先ずコントローラ10の電源を投入する。コントローラ10に電力が供給されて、コントローラ10が動作を開始すると、測定担当者が入力部13を用いて帯電粒子の粒径の測定範囲および極性、粒径のスイープ幅および同心円筒状電極2の寸法などの測定条件と、暖気運転時間を入力する(ステップS1)。
【0076】
次に、電圧源6の電源を投入する。但し電源投入時の電圧源6の電圧値は予め設定された値となっており、既知の流量の層流が吸気ファン3により発生される。尚、コントローラ10の電源と連動して、電圧源6の電源を投入させても良い。
【0077】
その後、電圧源5の電源を投入する。但し電源投入時には電圧源5の電圧はゼロに設定されている。尚、コントローラ10の電源と連動して、電圧源5の電源を投入させても良い。
【0078】
電圧源5の電源が投入されると、粒径算出部15は、入力部13を用いて入力された帯電粒子の粒径の測定範囲および極性と、帯電粒子の流量と、同心円筒状電極2の寸法などの測定条件をもとに、前述の粒径、臨界移動度および印加電圧の関係式(1)(2)を連立して解くことにより、測定対象の粒径範囲に対応する印加電圧の変動範囲と、粒径のスイープ幅に対応した印加電圧のスイープ幅を算出しており、粒径を最小値から最大値まで所定のスイープ幅で変化させる際に各々の粒径に対応した印加電圧を求めている(ステップS2)。
【0079】
次に粒径算出部15は、粒径の最小値に対応した印加電圧の電圧値及び極性を電圧制御部11と結露検出部16とに出力する(ステップS3)。今回の測定条件では粒径の最小値は0.6nmである。このとき、電圧制御部11が電圧源5の印加電圧を設定して、粒径の最小値に対応した印加電圧が外側導体2bに印加される(ステップS4)。なお外側導体2bに印加される電圧の極性は測定対象の帯電粒子の極性と同極性であり、負の帯電粒子を測定したい場合は外側導体2bに印加する電圧の極性を負極性とする。これによって、内側導体2aから外側導体2bに電界が発生し、この電界により負の帯電粒子はグランドに接地された内側導体2aに引き寄せられる。そして、電圧源5の印加電圧で設定された粒径以下の帯電粒子は内側導体2aに取り込まれて、内側導体2aと外側導体2bとの間に電流が流れるのである(ステップS5)。
【0080】
内側導体2aに取り込まれた帯電粒子によって電流が流れると、その電流値は電流計4によって測定される。電流計4の測定値は電流値取得部12によって自動的に取得され、電流値取得部12は取得した電流値を粒径算出部15及び結露検出部16に出力する(ステップS6)。
【0081】
結露検出部16は、入力部13を用いて入力された測定条件から式(4)を用いて同心円筒状電極2に固有の静電容量C1を算出して、図示しない記憶部に記憶させる(ステップS7)。なお、静電容量C1を算出するステップS7の処理は、入力部13を用いて測定条件が入力される毎に1回だけ行えば良く、以後は記憶部から静電容量C1の値を読み込めば良い。
【0082】
また結露検出部16は、粒径算出部15から入力された印加電圧Vと、電流値取得部12から取得した電流値isと、取得した時間tとから、上述の式(5)を用いて実際の静電容量C2を算出して、記憶部に記憶させ(ステップS8)、ステップS7で求めた固有の静電容量C1との比較により結露の有無を判断する(ステップS9)。つまり結露検出部16は、同心円筒状電極2の形状および寸法から求めた固有の静電容量C1と、実際の静電容量C2とが一致しているか否かを判断し、一致していなければ(つまり静電容量C1,C2の差の絶対値が所定のしきい値を超えると)、結露の発生を示す結露検出信号を粒径算出部15および暖気運転制御部18に出力する(ステップS10)。
【0083】
ここで、粒径算出部15は、結露検出部16から結露検出信号が入力されると、直ちに帯電粒子量の評価を停止し、電圧制御部11により電圧源5の電圧をゼロにするとともに(ステップS15)、図示しない記憶部に評価停止直前の印加電圧を記憶させる。
【0084】
また、暖気運転制御部18は、結露検出部16から結露検出信号が入力されると、暖気運転を開始するために、気流制御部17に極性切換信号を出力するとともに、ヒータ7に電源投入信号を出力する(ステップS16)。このとき、気流制御部17では、暖気運転制御部18から入力された極性切換信号に応じて、電圧源6の極性を正から負に切り換え、吸気ファン3による気流発生方向を、帯電粒子量の評価時の気流発生方向と反対方向(つまり吸気ファン3から同心円筒状電極2側へと向かう方向)に切り換える(ステップS17)。また、ヒータ7では、暖気運転制御部18から電源投入信号が入力されると、電源が投入されて発熱し、周囲の空気を暖める(ステップS18)。而して、ヒータ7により吸気ファン3の吸気側の空気が暖められるとともに、ヒータ7で暖められた空気が吸気ファン3に吸気されて、同心円筒状電極2の環状空間2c内に送風されるので、同心円筒状電極2の内側導体2aと外側導体2bとが暖められる(ステップS19)。
【0085】
その後、暖気運転の開始時から入力部13で入力された暖気運転時間が経過すると、暖気運転制御部18は暖気運転を停止するために、気流制御部17に極性切換信号を出力するとともに、ヒータ7に電源停止信号を出力し、さらに結露検出部16に暖気終了信号を出力する(ステップS20)。このとき、気流制御部17では、暖気運転制御部18から入力された極性切換信号に応じて、電圧源6の極性を負から正に切り換え、吸気ファン3による気流発生方向を、吸気ファン3より同心円筒状電極2側へ向かう方向から、帯電粒子量の評価時の気流発生方向に切り換える(ステップS21)。また、ヒータ7では、暖気運転制御部18から電源停止信号が入力されると、電源供給が停止され、空気の加熱を終了する(ステップS22)。さらに、結露検出部16は、暖気運転制御部18から暖気終了信号が入力されると、結露検出信号の出力を停止し(ステップS23)、図示しない記憶部に記憶されている評価停止直前の印加電圧を電圧制御部11に出力し(ステップS24)、上述のステップS4〜S9の処理に戻って結露の有無を再度検出する。この時、結露検出部16が再び結露を検出して、結露検出信号を粒径算出部15および暖気運転制御部18に出力すると、暖気運転制御部18により再度ステップS10〜S23の暖気運転の処理が行われる。
【0086】
一方、ステップS9の判定で結露検出部16が結露無しと判断し、結露の検出信号が粒径算出部15に入力されなくなると、粒径算出部15は、電流値取得部12から入力された電流値isから、上述の式(3)を用いて最小粒径以下の帯電粒子の数を算出し、測定対象の帯電粒子の粒径および個数を記憶部(図示せず)に記憶させる(ステップS11)。このとき、粒径算出部15では測定対象の帯電粒子の粒径および個数を記憶部に記憶させるとともに、プリンタなどの出力装置(図示せず)に出力させても良い。
【0087】
測定対象の帯電粒子の粒径と個数とを記憶部に記憶させると、粒径算出部15では全ての測定範囲について測定を終了したか否かを判断し(ステップS12)、測定が終わっていなければ、粒径を所定のスイープ幅だけ増加させた場合の印加電圧の電圧値及び極性を電圧制御部11および結露検出部16に出力した後(ステップS13)、上述のステップS4〜S11の処理を繰り返す。尚、0.6〜2nmの粒径範囲ではスイープ幅を0.2nmとしているので、最小粒径(0.6nm)の次は粒径が0.8nmの時の印加電圧の電圧値を出力する。
【0088】
本装置では上述の処理を行い、粒径を0.6nmから28nmまで所定のスイープ幅ずつスイープさせる毎に、各々の粒径の設定値で上記の処理S4〜S13を繰り返すことによって粒子数を算出して、粒径分布(粒径に対する個数の分布)を求めており、ステップS12において全ての測定範囲で測定を終了したと判断されると、粒径算出部15は粒径分布の算出結果を記憶部に記憶させるとともに、出力装置に測定結果を出力する(ステップS14)。
【0089】
以上説明したように本実施形態の帯電粒子量評価装置1では、結露検出部16が内側導体2aおよび外側導体2bの結露を検出すると、暖気運転制御部18が暖気運転を行い、ヒータ7で暖めた空気を吸気ファン3により吸気して、同心円筒状電極2の環状空間2c内に送風することで、内側導体2aおよび外側導体2bの結露を取り除いており、暖気運転の結果、結露が検出されなくなると、粒径算出部15により帯電粒子量の評価を行わせているので、より高い精度で帯電粒子量の評価を行うことができる。また結露検出部16で結露が検出されなくなるまで、暖気運転制御部18が暖気運転時間だけ暖気運転を行う動作を繰り返しているので、できるだけ短い時間で暖気運転から復帰して、帯電粒子量の評価を行えるようになっている。
【0090】
(実施形態3)
本発明の実施形態3について以下に説明する。実施形態2で説明した帯電粒子量評価装置1では、吸気ファン3の風量を一定風量としているが、本実施形態では、気流制御部17に吸気ファン3の風量を変化させる機能を持たせ、暖気運転制御部18が、暖気運転中に所定時間だけ、気流制御部17を用いて吸気ファン3の送風量を帯電粒子量の評価時の送風量よりも大きい所定流量に増加させている。尚、帯電粒子量評価装置1の構成は実施形態2と同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0091】
気流制御部17では、暖気運転制御部18からの入力信号の極性および電圧値に応じて、電圧源6の極性および電圧値を変化させることによって、吸気ファン3による気流発生方向や送風量を変化させている。
【0092】
また暖気運転制御部18は、実施形態2で説明した機能に加えて、暖気運転中に所定時間だけ、吸気ファン3の送風量を帯電粒子量の評価時の送風量よりも大きい所定流量に増加させる信号を気流制御部17に出力する機能を有している。
【0093】
この帯電粒子量評価装置1の動作は、暖気運転時以外は実施形態2と同様であるので、その説明は省略し、暖気運転時の動作について図4を参照して以下に説明する。
【0094】
結露検出部16が、ステップS9の判定の結果結露ありと判断すると、結露の発生を示す結露検出信号を粒径算出部15および暖気運転制御部18に出力する(ステップS10)。
【0095】
ここで、粒径算出部15は、結露検出部16から結露検出信号が入力されると、直ちに帯電粒子量の評価を停止し、電圧制御部11により電圧源5の電圧をゼロにするとともに(ステップS15)、図示しない記憶部に評価停止直前の印加電圧を記憶させる。
【0096】
また、暖気運転制御部18は、結露検出部16から結露検出信号が入力されると、暖気運転を開始するために、気流制御部17に極性切換信号を出力するとともに、ヒータ7に電源投入信号を出力する(ステップS16)。このとき、気流制御部17では、暖気運転制御部18から入力された極性切換信号に応じて、電圧源6の極性を正から負に切り換え、吸気ファン3による気流発生方向を、帯電粒子量の評価時の気流発生方向と反対方向に切り換える(ステップS17)。また、ヒータ7では、暖気運転制御部18から電源投入信号が入力されると、電源が投入されて発熱し、周囲の空気を暖める(ステップS18)。而して、ヒータ7により吸気ファン3の吸気側の空気が暖められるとともに、ヒータ7で暖められた空気が吸気ファン3に吸気されて、同心円筒状電極2の環状空間2c内に送風されるので、同心円筒状電極2の内側導体2aと外側導体2bとが暖められる(ステップS19)。
【0097】
ここで、暖気運転制御部18は、入力部13により入力された暖気運転時間のうち所定時間(例えば暖気運転時間の20%の時間)だけ、吸気ファン3の送風量(流量)を帯電粒子量評価時の送風量よりも大きい所定流量(例えば帯電粒子量評価時の50%増の流量)に増加させる制御信号を気流制御部17に出力する。そして気流制御部17では、暖気運転制御部18から入力された制御信号に応じて、所定時間だけ吸気ファン3の流量を所定流量に増加させるように電圧源6の印加電圧を制御する。そして、吸気ファン3は電圧源6の印加電圧に応じて流量を変化させており、暖気運転中に所定時間だけ送風量を所定流量に増加させ、所定時間の経過後は帯電粒子量評価時の流量に戻している。
【0098】
その後、暖気運転の開始時から入力部13で入力された暖気運転時間が経過すると、暖気運転制御部18は暖気運転を停止するために、気流制御部17に極性切換信号を出力するとともに、ヒータ7に電源停止信号を出力し、さらに結露検出部16に暖気終了信号を出力する(ステップS20)。このとき、気流制御部17では、暖気運転制御部18から入力された極性切換信号に応じて、電圧源6の極性を負から正に切り換え、吸気ファン3による気流発生方向を、吸気ファン3より同心円筒状電極2側へ向かう方向から、帯電粒子量の評価時の気流発生方向に切り換える(ステップS21)。また、ヒータ7では、暖気運転制御部18から電源停止信号が入力されると、電源供給が停止され、空気の加熱を終了する(ステップS22)。さらに、結露検出部16は、暖気運転制御部18から暖気終了信号が入力されると、結露検出信号の出力を停止し(ステップS23)、図示しない記憶部に記憶されている評価停止直前の印加電圧を電圧制御部11に出力し(ステップS24)、上述のステップS4〜S9の処理に戻って結露の有無を再度検出する。この時、結露検出部16が再び結露を検出して、結露検出信号を粒径算出部15および暖気運転制御部18に出力すると、暖気運転制御部18により再度ステップS10〜S23の暖気運転の処理が行われる。
【0099】
このように本実施形態では、気流制御部17に、吸気ファン3の送風量を変化させる機能を追加し、暖気運転制御部18が、暖気運転中に所定時間だけ、気流制御部17を用いて吸気ファン3の送風量を帯電粒子量の評価時の送風量よりも大きい所定流量に増加させているので、温風を送風することで結露を取り除くとともに、帯電粒子量の評価時よりも流量の大きい層流を送風することで、内側導体2aおよび外側導体2bに付着した塵や埃を吹き飛ばすことができ、より高い精度で帯電粒子量の評価を行うことができる。
【0100】
なお、本発明の精神と範囲に反することなしに、広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は、特定の実施形態に制約されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】実施形態1の帯電粒子量評価装置の概略構成図である。
【図2】同上の動作を説明するフロー図である。
【図3】実施形態2の帯電粒子量評価装置の概略構成図である。
【図4】同上の動作を説明するフロー図である。
【図5】従来の帯電粒子量評価装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0102】
1 帯電粒子量評価装置
2 同心円筒状電極
2a 内側導体
2b 外側導体
3 吸気ファン(気流発生手段)
4 電流計(電流測定手段)
5 電圧源(電圧印加手段)
10 コントローラ
14 演算処理部
15 粒径算出部(帯電粒子量評価手段)
16 結露検出部(結露検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の内側導体および内側導体よりも径の大きい円筒状の外側導体を同心に配置して構成された同心円筒状電極と、内側導体と外側導体との間の空間に同心円筒状電極の軸方向に層流を発生させる気流発生手段と、内側導体と外側導体との間に電圧を印加する電圧印加手段と、内側導体と外側導体との間に流れる電流を測定する電流測定手段と、層流の流路の壁面をなす内側導体および外側導体に発生する結露の有無を検出する結露検出手段と、当該結露検出手段により結露無しと検出された場合に、同心円筒状電極の形状および寸法と気流発生手段による層流の流量と電圧印加手段による印加電圧と電流測定手段の測定結果とに基づいて帯電粒子量を評価する帯電粒子量評価手段とを具備したことを特徴とする帯電粒子量評価装置。
【請求項2】
前記層流の流路の途中であって帯電粒子量の評価時の気流発生方向において前記同心円筒状電極よりも下流側に配置されて空気を加熱するヒータと、前記気流発生手段による気流発生方向の正逆を切り換える送風方向切換手段と、前記結露検出手段が結露を検出した場合に、ヒータで空気を加熱させるとともに送風方向切換手段を用いて気流発生手段による気流発生方向を帯電粒子量の評価時と反対方向に切り換える暖気運転を行う暖気運転制御手段とを設けたことを特徴とする請求項1記載の帯電粒子量評価装置。
【請求項3】
前記暖気運転制御手段は、前記結露検出手段により結露無しと検出されるまで暖気運転を継続することを特徴とする請求項2記載の帯電粒子量評価装置。
【請求項4】
前記気流発生手段の送風量を変化させる気流制御手段を設け、前記暖気運転制御手段は、暖気運転中に所定時間だけ、気流制御手段を用いて気流発生手段の送風量を帯電粒子量の評価時の送風量よりも大きい所定流量に増加させることを特徴とする請求項2又は3記載の帯電粒子量評価装置。
【請求項5】
前記結露検出手段は、前記電流測定手段の測定結果より求めた前記同心円筒状電極に蓄えられる電荷量および前記電圧印加手段による印加電圧から求めた静電容量と、前記同心円筒状電極の形状および寸法から求めた静電容量とを比較し、両者の差の絶対値が所定のしきい値を超えることから結露の発生を検出することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1つに記載の帯電粒子量評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−102037(P2008−102037A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285360(P2006−285360)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】