説明

帯電装置

【課題】本発明は、簡単な構成で、グリッド電極の感光ドラムと対向する面全体を清掃することができる帯電装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る帯電装置の代表的な構成は、感光ドラム1に対向した、グリッド電極13と、グリッド電極13に接触するブラシ22を備え、移動しながら、グリッド電極13を清掃する清掃部材(グリッド電極清掃部14、放電ワイヤ清掃部15、ホルダ16)と、を有する帯電装置2において、ブラシ22の繊維は、グリッド電極13の感光ドラム1側のグリッド裏面よりも感光ドラム1側に伸びた直毛部23bと、直毛部23bに対して鋭角に屈曲した屈曲部23aと、を有し、清掃部材の移動に伴って、ブラシ22の繊維の先端が、グリッド電極13の感光ドラム1に対向したグリッド裏面13aに接触することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザービームプリンタなどの電子写真方式の画像形成装置に用いられる帯電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置において、装置内外に浮遊しているホコリや、トナーなどが、コロナ放電を行なう帯電装置の放電電極、シールド電極、グリッド電極に付着する。そして、コロナ放電電極の放電時間が長くなるほど付着量が増加していく。このため、一定量の画像形成が行なわれると、各電極の汚染などにより、放電効率の低下や、被帯電体への放電電流ムラが生じ、出力画像の画質劣化を引き起こすことがある。また、帯電装置の寿命の低下につながる。そこで、グリッド電極の自動清掃を行なう清掃装置が提案されている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−297457
【特許文献2】特開2005−338797
【特許文献3】特開平09−54482
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1〜3には、グリッド電極の感光ドラムに対向する面を清掃することが困難であるという共通した課題がある。すなわち、グリッド電極は、感光ドラムの帯電ムラを抑制するために、感光ドラムに1〜1.5mmで近接しなければならない。このような非常に狭いスペースに清掃部材を設けるためには、清掃装置が複雑な構成となり、かつ非常に高い精度の機構を必要とする。
【0005】
特許文献3には、このようなグリッド電極の両面を清掃する構成が記載されている。しかし、この構成では、シート状部材が交互にワイヤーグリッドにかかっているため、グリッド電極の感光ドラムに対向する側は全ワイヤーグリッドの半分しか清掃できない。また、この構成はワイヤーグリッドのみにしか適用できず、構成も複雑である。
【0006】
そこで本発明は、簡単な構成で、グリッド電極の感光ドラムと対向する面全体を清掃することができる帯電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る帯電装置の代表的な構成は、被帯電体に対向したグリッド電極と、前記グリッド電極に接触するブラシを備え、移動しながら前記グリッド電極を清掃する清掃部材と、を有する帯電装置において、前記ブラシの繊維は、前記グリッド電極の前記被帯電体側のグリッド裏面よりも前記被帯電体側に伸びた直毛部と、前記直毛部に対して鋭角に屈曲した屈曲部と、を有し、前記清掃部材の移動に伴って、前記ブラシの繊維の先端が、前記グリッド電極の前記被帯電体に対向した前記グリッド裏面に接触することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡単な構成で、グリッド電極の感光ドラムと対向する面全体を清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第一実施形態に係る帯電装置を搭載した画像形成装置の構成図である。
【図2】(a)第一実施形態に係る帯電装置の側面図である。(b)第一実施形態に係る帯電装置の正面図である。
【図3】(a)第一実施形態に係るグリッド電極の上面図である。(b)第一実施形態に係る清掃部材の構成説明図である。
【図4】(a)第一実施形態に係る清掃部材を構成する繊維の説明図である。(b)第一実施形態に係るブラシの繊維を作製する射出形成装置の概略図である。
【図5】第一実施形態に係るブラシの繊維の金型の概略図である。
【図6】第一実施形態に係る清掃部材のグリッド裏面清掃過程の説明図である。
【図7】(a)第一実施形態に係るブラシの繊維のはみ出し量Δ、侵入長lの説明図である。(b)第一実施形態に係る繊維のグリッド裏面への侵入過程を説明した図である。
【図8】(a)Δが大きい場合の繊維の挙動の説明図である。(b)κが大きい場合の繊維の挙動の説明図である。
【図9】第一実施形態に係る繊維のグリッド裏面への侵入過程を観察した結果の説明図である。
【図10】(a)(b)はみ出し量Δによるグリッド裏面接触面積の違いを説明した図である。(c)繊維が元に戻る前に次のグリッドに接触する様子を説明した図である。
【図11】第一実施形態に係る繊維のグリッド裏面からの離脱過程を観察した結果の説明図である。
【図12】繊維がグリッド表面に当接してから元に戻る様子を説明した図である。
【図13】繊維がグリッド表面に当接してから元に戻る様子を観察した結果の説明図である。
【図14】(a)E=250mg/cm、θ=45°の場合の清掃効果が高いa、bの組み合わせを表す図である。(b)E=250mg/cm、E=300mg/cm、E=150mg/cmのヤング率を持つ繊維のθ=45°の場合の清掃効果が高いa、bの組み合わせを表す図である。
【図15】(a)E=250mg/cmのヤング率を持つ繊維の、θ=30°、45°、60°の場合の清掃効果が高いa、bの組み合わせを表す図である。(b)第一実施形態に係るグリッド裏面のトナーの被服率の変化を表すグラフである。
【図16】(a)第一実施形態に係るグリッド裏面のケバの除去率の変化を表すグラフである。(b)第一実施形態に係る帯電装置使用時の白すじ出現までの画像出力枚数を表すグラフである。
【図17】(a)第二実施形態に係る清掃部材の構成説明図である。(b)第二実施形態に係る繊維に働く力の説明図である。
【図18】(a)E=250mg/cm、θ=60°、α=30°の場合の清掃効果が高いa、bの組み合わせを表す図である。(b)第三実施形態に係る清掃部材の構成説明図である。
【図19】(a)第一実施形態に係る清掃部材のブラシの進行方向の説明図である。(b)第三実施形態に係るグリッド裏面のトナーの被服率の変化を表すグラフである。
【図20】(a)第三実施形態に係るグリッド裏面のケバの除去率の変化を表すグラフである。(b)第三実施形態に係る帯電装置使用時の白すじ出現までの画像出力枚数を表すグラフである。
【図21】(a)〜(c)第三実施形態と同様の効果がある繊維の屈曲方向の構成の説明図である。(d)第四実施形態の清掃部材の構成の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第一実施形態]
本発明に係る帯電装置の第一実施形態について、図を用いて説明する。
【0011】
[帯電装置および帯電装置を搭載した画像形成装置の説明]
図1は本実施形態のコロナ帯電装置2を搭載した画像形成装置の構成図である。図1に示すように、被帯電体である感光ドラム1はコロナ帯電装置2によって負極性に一様に帯電される。画像信号に対応してスキャナ7から放出されるレーザー光Lが感光ドラム1上に照射されることによって、感光ドラム1の電位は減衰し、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、二成分現像器3によってトナー像として現像され、転写ローラ4によって転写材Pに転写される。感光ドラム1上に残存した転写残トナーはクリーナー5によって掻き取られる。クリーナー5内の掻き取られた転写残トナーは廃トナー容器(不図示)に搬送され回収される。その後、除電ランプ6によって潜像電位の履歴を消去した後、再びコロナ帯電装置2によって帯電され、一連の画像形成工程が繰り返し行なわれる。
【0012】
図2(a)は帯電装置2の側面図である。図2(b)は帯電装置2の正面図である。図2(a)、図2(b)に示すように、コロナ帯電装置2は、シールドケース10、絶縁性支持部11、放電ワイヤ12、グリッド電極13、グリッド電極清掃部14、放電ワイヤ清掃部15、ホルダ16を有している。絶縁性支持部11は、シールドケース10の両端に設けられている。放電ワイヤ12は、放電電極として、シールドケース10の内部長手方向に設けられている。グリッド電極13は、シールドケース10の感光ドラム1対向側(被帯電体側)に設けられている。
【0013】
グリッド電極清掃部14、放電ワイヤ清掃部15、ホルダ16は、放電ワイヤ12とグリッド電極13を清掃する清掃部材である。本実施形態はグリッド電極13と感光ドラム1の間に清掃部材を有しない構成である。ホルダ16は、グリッド電極清掃部14、放電ワイヤ清掃部15を保持する。ホルダ16は感光ドラム1対向側の反対側に配置された回転可能なネジ軸17に係合している。ネジ軸17は、絶縁性支持部11が有する軸受け18によって保持されており、回転方向自在のモータM1によって回転される。ネジ軸17の回転によってホルダ16は矢印c方向に移動する。
【0014】
グリッド電極清掃部14、放電ワイヤ清掃部15は、ホルダ16の移動に伴いホームポジションAから、グリッド端部Bまで移動し、その後、グリッド端部Bから元のホームポジションAに移動する。この行程を1回の清掃行程とし、グリッド電極清掃部14、放電ワイヤ清掃部15は、グリッド電極13および放電ワイヤ12の清掃を行なう。
【0015】
放電ワイヤ12はφ60μmのタングステン線であり、絶縁性支持部11に設けられた不図示の凸部とバネを介して架張されている。放電ワイヤ清掃部15はスポンジパッド15a、15bが放電ワイヤ12を両側から圧接するように配設してある。スポンジパッド15a、15bの放電ワイヤ12との接触面に研磨紙などを貼り付けても良い。
【0016】
コロナ帯電装置2の帯電範囲はΓであり、開口はその領域に対応する範囲で設けられている。さらにグリッド電極表面には、防錆処理として厚さ1μmのニッケルメッキ処理を施している。グリッド電極13と感光ドラム1の最近接位置での距離Λは1mmである。
【0017】
図3(a)はグリッド電極13の上面図である。図3(a)に示すように、グリッド電極13は、厚さ0.1mmの平面の板状部材であるSUS304を使用し、エッチング処理にてグリッドの長手方向に対してφの傾きを持ち、Wの幅を持った複数の開口を形成している。また、グリッド線の線幅はWとする。本実施形態ではφ=45°、W=1.4mm、W=0.14mmの組み合わせを持つグリッドを使用した。
【0018】
図3(b)はグリッド電極清掃部14の構成図である。図3(b)に示すように、グリッド電極清掃部14は、ブラシ22およびブラシ22を保持するブラシ保持部材19を有している。ブラシ保持部材19とグリッド電極13の間の距離Lは1mmである。
【0019】
[ブラシ22の構成]
図4(a)はブラシ22の構成図である。図4(a)に示すように、ブラシ22を構成する繊維23は、後に述べる射出成形によって作製される。繊維23は、直毛部23b、屈曲部23aを有している。直毛部23bは、グリッド電極13のある平面に対して直交している。直毛部23bは、グリッド電極13の感光ドラム1と反対側のグリッド表面13cから、グリッド電極13の感光ドラム1に対向したグリッド裏面13a側へ、各グリッド電極13間を抜けて、感光ドラム1に向けて伸びている。屈曲部23aは、直毛部23bに対して所定の角度θで屈曲し、グリッド裏面に向けて伸びている。また、本実施形態のブラシ22を構成する繊維23の素材としてはナイロン樹脂またはアクリル樹脂を使用した。
【0020】
ブラシ22の繊維23の形状のパラメータとして、屈曲部23aの長さをa、屈曲点23dまでの直毛部23bの繊維23の長さをbと定義する。また、繊維23の屈曲部23aの先端23cの向きはブラシ22の移動方向に並行であり、全ての繊維23において同じ方向を向くように植毛させている。
【0021】
[ブラシ22の製造方法]
図4(b)はブラシ22の繊維23を製造する射出成形機20の構成図である。図4(b)に示すように、射出成形機20は、型締力850t、圧縮比1.8のスクリューを持つ射出成形機である。図5(a)はブラシ22の繊維23を作製するための金型21の側面図である。図5(b)は金型21の立面図およびブラシ成形部分の拡大図である。ブラシ22の繊維23の原料となるナイロン樹脂またはアクリル樹脂を250℃の温度で溶融させ、射出成形機20によって80℃に加熱させた金型21に射出し、ブラシ22の繊維23の作製を行なった。
【0022】
[清掃工程におけるブラシ22の挙動]
図6はブラシ22の繊維23がグリッド電極13の感光ドラム対向面を清掃する過程を示す図である。グリッド電極清掃部14はモータM1の回転に伴いグリッド電極13の長手方向に移動し、ブラシ22の繊維23の屈曲部23aの先端23cは、図6の1〜7に示す状態を経てグリッド裏面13aに当接し、グリッド裏面13aの清掃を行なう。
【0023】
図6に示す1〜7の状態を、順を追って説明する。まず、1の状態で繊維23の屈曲部23aの先端23cはブラシ22の移動に伴いグリッド側面13bに当接する。2の状態で繊維23の屈曲部23aの先端23cはブラシ22の移動に伴いグリッド裏面13aへ侵入する。3の状態で、繊維23の屈曲部23aの先端23cはグリッド裏面13aに当接しつつ、グリッド裏面13aに付着したトナーなどの異物を除去する。4の状態で、繊維23のブラシ保持部材19と係合する点から屈曲点23dに至るまでの一部がグリッド側面13bに接触し、繊維23がたわむことで繊維23の屈曲部23aの先端23cはグリッドから遠ざかる方向へ移動する。5の状態で、繊維23の屈曲部23aがグリッド側面13bに当接し、繊維23全体が大きくたわみながらグリッド裏面13aから抜ける方向へ移動する。6の状態で、繊維23はグリッド裏面13aから抜け、繊維23全体が大きくたわみながらグリッド表面13cに当接した状態となる。7の状態で繊維23はブラシ22の移動に伴いグリッド表面13cから離脱し、元の状態へと戻る。
【0024】
[ブラシ22がグリッド裏面13aを清掃するための条件]
このような状態を経てブラシ22の繊維23がグリッド裏面13aを清掃するために必要な条件は以下の3つの条件である。
【0025】
[第1条件]繊維23の先端23cがグリッド裏面13aに侵入する条件
[第2条件]繊維23の先端23cがグリッド裏面13aに当接しトナーなどの異物を拭き取る条件
[第3条件]繊維23の先端23cがグリッド裏面13aに当接した後、ブラシ22の移動にともないグリッド電極13に引っかかることなく繊維23が元の状態に戻る条件。
【0026】
次にこの3つの条件を満たすために必要な繊維23のパラメータの関係について述べる。
【0027】
[第1条件に対する考察および観察結果]
まず、第1条件である繊維23の先端23cがグリッド裏面13aに侵入する条件に関する考察および観察結果を述べる。図7(a)に示すように、先端23cのグリッド裏面13aへの侵入および当接を特徴付ける量として、はみ出し量Δ、侵入長lを定義する。はみ出し量Δ、侵入長lを繊維23のパラメータa、b、θおよびグリッド電極13とブラシ保持部材19間の距離Lで表すと、Δ=acosθ−b+L、l=b−Lとなる。すると、繊維23のグリッド裏面13aへの当接に対する条件より、Δ<0となるような繊維パラメータの組み合わせは除外される。
【0028】
Δ=0であれば、幾何学的に繊維23の先端はグリッド裏面13aに侵入することができるが、繊維23の屈曲に伴う応力を考慮すると、Δ>0の場合にのみ、繊維23の先端23cはグリッド裏面13aに侵入することができる。
【0029】
図7(b)はΔ>0の条件下における繊維23の侵入の様子を示す図である。図7(b)に示すように、Δ>0であることによって繊維23の先端23cがグリッド側面13bに引っかかり、繊維全体が屈曲した状態となる。この繊維23の屈曲に伴う応力F1によって繊維23の先端23cには下向きの力が働き、また繊維23の先端23cにはグリット側面との摩擦力とグリッド側面13bからの抗力の合力F2が働く。このF1がF2よりも大きいならば、繊維23はグリッド側面13bをすり抜けてグリッド裏面13aに侵入することができる。
【0030】
グリッド側面13bおよび繊維23の表面の摩擦係数を無視すれば、F1およびF2を規定する繊維23のパラメータとして繊維23のヤング率E、はみ出し量Δの大きさ、はみ出し量Δと侵入長lの比κ=Δ/lの二つが考えられる。繊維23のヤング率Eに関しては、ヤング率Eが大きいほど繊維23の屈曲に伴う応力F1が大きくなり、グリット裏面に侵入しなくなる。
【0031】
図8(a)はΔが大きすぎる場合の繊維23の挙動を示す図である。図8(a)に示すように、Δが大きすぎる場合には、摩擦力と端面からの効力の合力F2がF1に比べ大きくなり、グリッド裏面13aに侵入しなくなる。
【0032】
図8(b)(a)Δがlに比べて大きすぎる場合のκによって繊維23の挙動が変化する様子を示す図である。図8(b)(b)はlがΔに比べて小さすぎる場合のκによって繊維23の挙動が変化する様子を示す図である。図8(b)(a)に示すように、Δがlに比べて大きすぎる場合には、繊維23の摩擦力と端面からの効力の合力F2がF1に比べ大きくなり、グリッド裏面13aに侵入しづらいことが予測される。図8(b)(b)に示すように、lがΔに比べて小さすぎる場合にも、繊維23の摩擦力F2がF1に比べ大きくなり、グリッド裏面13aに侵入しなくなる。具体的には、後述する表1、表2のように、0.1mm<Δ<0.4mmの場合に、清掃性、侵入性ともに良好な結果が得られた。
【0033】
図9(a)〜(d)はブラシ22をグリッド裏面13aに繊維23の屈曲部23aの先端23cが侵入する様子をCCDカメラによってとらえた結果を示す図である。ブラシ22として、θ=45°の屈曲角持つ繊維23についてヤング率Eおよびa、bを適当に変化させたものを用いた。繊維23の素材としては、ナイロン(E=150mg/cm、E=250mg/cm)を使用した。
【0034】
図9(a)は、E=250mg/cm(ナイロン)、Δ=0.22mm、l=0.2mmの場合の結果を示している。この場合、繊維23は侵入することができる。
【0035】
図9(b)はE=150mg/cm(ナイロン)、Δ=0.22mm、l=0.2mmの場合の結果を示している。この場合、ヤング率Eが小さいため繊維23は裏面に侵入することができなかった。
【0036】
図9(c)は、E=250mg/cm(ナイロン)、Δ=0.37mm、l=0.2mmの場合の結果を示している。この場合、Δが大きいため裏面に侵入することができなかった。
【0037】
図9(d)は、E=250mg/cm(ナイロン)、Δ=0.32mm、l=0.1mmの場合の結果を示している。この場合、κが大きいため裏面に侵入することができなかった。
【0038】
[第2条件に対する考察および観測結果]
次に第2条件である繊維23の先端23cがグリッド裏面13aに当接しトナーなどの異物を拭き取る条件に関する考察、および実際の繊維23の挙動をCCDカメラによって観察した結果を述べる。第1条件を満たす限り、繊維23の先端23cはグリッド裏面13aに当接可能であるので、トナーなどの異物を拭き取るための条件を考えればよい。トナーなどの異物は繊維23の先端23cがわずかに触れることによっても除去することが可能であるので、より効率的に除去するためには繊維23の先端23cとグリッド裏面13aとの接触面積が大きいほうが有利である。このためには前述のΔが大きいほど良い。
【0039】
図10(a)、図10(b)は、E=250mg/cm(ナイロン)のヤング率を持つ繊維23に対して、実際に屈曲部23aの長さa、直毛部23bの長さbを変えて、繊維23の先端の挙動を見た結果を示す図である。図10(a)はE=250mg/cm(ナイロン)Δ=0.22mmの場合の結果である。図10(b)はE=250mg/cm(ナイロン)Δ=0.12mmの場合の結果である。Δが大きい図10(a)の場合のほうが、Δが小さい図10(b)の場合に比べ、繊維23の先端23cのグリッド裏面13aとの接触面積が大きい。
【0040】
[第3条件に対する考察および観察結果]
次に第3条件である、繊維23の先端23cがグリッド裏面13aに当接した後、ブラシ22の移動にともないグリッド電極13に引っかかることなく繊維23が元の状態に戻る条件、に対する考察およびCCDカメラによる観察結果を述べる。第3条件には以下の2つの条件3A、3Bが存在する。
【0041】
[条件3A]繊維23がグリッド電極13から抜けるときにグリッド電極13との摩擦力によって繊維23が引っかからない条件
[条件3B]繊維23がグリッド電極13から抜けて元の状態に戻る時に次のグリッド電極13に接触しない条件。
【0042】
条件3Aが必要な理由は以下である。すなわち、繊維23がグリッド電極13から抜ける時には図6の5の状態のように繊維23は大きくたわんだ状態でグリッド側面13bに当接しつつ通過しなければならない。その際、ブラシ22を構成する繊維23一本一本には大きな摩擦力がかかり、その力の総和がブラシ22にかかることになる。この力がブラシ22の駆動力に比べて大きいとき、ブラシ22はグリッド電極13に引っかかってしまい、ブラシ22が動かない。このため、ブラシ22を駆動するモータに大きな負荷がかかり、ブラシ22を構成する繊維23が損耗あるいは断線するなどの課題が生じることになる。
【0043】
条件3Bが必要な理由は以下である。すなわち、繊維23がグリッド電極13から抜ける時、図6の6の過程のように繊維23は大きくたわみ、繊維23の根本部分が先端23cに対してブラシ22の移動方向に先行した状態となる。図10(c)はグリッド電極13の間隔に比べ繊維23の根本部分が先行する距離が大きい場合の予測を示す図である。図10(c)に示すように、この時、繊維23が元の状態に戻る前に次のグリッド電極13に接触してしまい、グリッド裏面13aに当接することができなくなる。
【0044】
[条件3Aに対する考察]
条件3Aを特徴付ける繊維23のパラメータとしては繊維全体の長さλ=a+bおよび繊維23のヤング率Eが考えられる。λが大きいほど繊維23がグリッド電極13から抜けるときの繊維23のたわみが大きく応力が大きいため、繊維23にかかる摩擦力も大きくなる。またヤング率Eが大きいほど繊維23が抜けるときの応力が大きく繊維23にかかる摩擦力も大きくなることが予測される。具体的には、後述する表1、表2のように、1mm<λ<3mm、150mg/cm<E<300mg/cmの場合に、良好な結果が得られた。
【0045】
[条件3Aに対する観察結果]
図11(a)〜図11(c)はヤング率Eおよびλを変化させ、CCDカメラによって観察した結果を示す図である。繊維23の素材としてはナイロン(E=250mg/cm)およびアクリル(E=300mg/cm)を用いた。
【0046】
図11(a)はE=250mg/cm(ナイロン)、λ=2.2mmの場合である。この時、繊維23はグリッド電極13から抜けることができる。
【0047】
図11(b)のヤング率E=300mg/cm(アクリル)、λ=2.2mmの場合である。図11(b)の場合はヤング率Eが大きいため、繊維23がグリッド電極13に引っかかり、ブラシ22が止まってしまうということが生じた。
【0048】
図11(c)はヤング率E=300mg/cm(アクリル)、λ=2.3mmの場合である。この場合にはλが大きいため、繊維23がグリッド電極13に引っかかり、ブラシ22が止まってしまうということが生じた。
【0049】
[条件3Bに対する考察]
条件3Bを特徴付ける繊維23のパラメータとしては繊維23が完全に伸びきったと仮定した状態から元の状態に戻るまでに繊維23の屈曲部23aとグリッド電極13のある平面との交点Aが移動する距離δがあげられる。図12(a)はδを示す図である。
【0050】
δを繊維23のパラメータa、b、θおよびグリッド電極とブラシ保持部材間の距離Lで表すと、δ=√(λ−L)+asinθ−Δtanθとなる。繊維23が完全に伸びきるまで繊維23がグリッド電極13から抜けないと仮定すれば、グリッド間隔Dに対し、条件3Bをみたす繊維23の条件はδ<Dとなる。
【0051】
しかし、実際には図12(b)に示すように、繊維23はたわんだ状態でグリッド表面13cから抜けるため、実際の繊維23が元の状態に戻るまでに繊維23の屈曲部23aとグリッド電極13のある平面との交点Aが移動する距離δ’はδよりも小さくなる。また、繊維23がたわむことによる応力のため、グリッド表面上をすべりながら抜けると考えられ、δがDよりも大きい場合にも繊維23はグリッド電極13から抜けることができる。また、本実施形態では、δの下限はltanθとなり、これ以下だと繊維が復元しない。よって、ltanθ<δ<Dであることが好ましい。なお、後述する第二実施形態の場合には、δの下限はbsinα+lcosαtan(θ-α)となる。
【0052】
[条件3Bに対する観察結果]
図13(a)〜図13(c)はヤング率Eおよびa、bを変化させ、CCDカメラによって観察した結果を示す図である。繊維23の素材としてはナイロン(E=150mg/cm、250mg/cm)を用いた。
【0053】
図13(a)はE=250mg/cm(ナイロン)、δ=2.57mmの場合の結果である。この時、繊維23は元の状態に戻ることができる。
【0054】
図13(b)はE=150mg/cm(ナイロン)、δ=2.57mmの場合である。この時、繊維23は元の状態に戻る前に次のグリッド電極13に当接し、グリッド裏面13aに当接できないということが生じた。
【0055】
これは繊維23の応力が大きいほど、すなわちヤング率Eが大きいほどグリッド表面上を滑りやすいため、ヤング率Eが大きいほどδが大きくても繊維23は元の状態にもどりやすくなるためである。
【0056】
図13(c)はE=250mg/cm(ナイロン)、δ=3mmの場合である。この場合δが大きいために、繊維23が元の状態に戻る前に次のグリッド電極13に当接し、グリッド裏面13aに当接できないということが生じた。
【0057】
[清掃に最適な繊維23のパラメータの検証]
第1条件から第3条件を満たし、実際にグリッド裏面13aを清掃できる条件を調べるために、屈曲部23aの長さa、直毛部23bの長さbをパラメータとしてそれぞれ0.1mmずつ変化させたブラシ22を作製した。繊維23の素材としてはナイロン(E=150mg/cm、250mg/cm)およびアクリル(E=300mg/cm)を用いた。
【0058】
ブラシ22が第1条件から第3条件を満たすかをCCDカメラにより観察し、さらに実際の画像形成装置であるキヤノン社製複合機imagePRESSC1改造機にそれぞれのパラメータを持つブラシ22を搭載し、グリッド裏面13aの清掃効果を測定した。
【0059】
清掃効果の評価は、各繊維23のパラメータを持つブラシ搭載した帯電装置を用いてキヤノン社製複合機imagePRESSC1改造機を用いて行った。この複合機により画像を出力し、トナーやケバなどの異物がグリッド電極13に付着することにより、感光ドラム1に帯電ムラが生じることで画像に白いすじが出現するまでの画像出力枚数を測定した。
【0060】
グリッド裏面13aの清掃は、5000枚の画像を出力するごとに1回の清掃を行なうものとした。グリッド電極清掃部14が図2(a)のホームポジションAから、グリッド端部Bまで移動し、その後、グリッド端部Bから元のホームポジションAに移動するまでを1回の清掃過程とした。
【0061】
また清掃部材評価の基準としては、白いすじが出現するまでの画像出力枚数が30,000枚以上の場合には○(良い)とした。15,000枚から30,000枚の場合には△(許容可能)とした。直毛ブラシと同程度の15,000枚未満の場合には×(悪い)とした。
【0062】
E=250mg/cm(ナイロン)、θ=45°の場合を表1(単位は全てmm)に示す。図14(a)は表1より第1条件から第3条件を満たし、かつ清掃効果が高かった屈曲部23aの長さa、直毛部23bの長さbの組み合わせを領域として示したグラフである。図14(a)において縦軸は繊維23の直毛部の長さbを、横軸は繊維23の屈曲部23aの長さaを表す。
【0063】
ブラシ22の製造条件から、屈曲部23aの長さa、直毛部23bの長さbには±0.1mm程度の誤差がある。このことを考慮すると、E=250mg/cm(ナイロン)、θ=45°の場合にはa=0.7mm、b=1.3mmまたはa=0.6mm、b=1.3mmの組み合わせがグリッド裏面13aの清掃に最も適していた。
【0064】
【表1】

同様にEが150mg/cm(ナイロン)、300mg/cm(アクリル)である2種類のブラシ22を用いた場合でも表1と同様の表を作成し、清掃効果が良かったa、bの組み合わせを領域として示したグラフを図14(b)に示す。図14(b)において縦軸は繊維23の直毛部23bの長さbを、横軸は繊維23の屈曲部23aの長さaを表す。
【0065】
E=250mg/cm(ナイロン)からE=300mg/cm(アクリル)にEを大きくすると清掃効果の高い領域は減少している。これは第3条件の条件3Aに述べたようにヤング率Eが大きいことで繊維23がグリッド側面13bに引っかかる影響である。
【0066】
またE=250mg/cm(ナイロン)からE=150mg/cm(ナイロン)にEを小さくしても清掃効果の高い領域は減少する。これは第3条件の条件3Bに述べたようにヤング率が小さいことで繊維23が元の状態に戻る前に次のグリッド電極13に接触してしまい、グリッド裏面13aに当接することができなくなる影響である。
【0067】
ブラシの製造条件から屈曲部23aの長さa、直毛部23bの長さbには±0.1mm程度の誤差があることを考えると、ヤング率Eはできるだけa、bに対する冗長性の良いE=250mg/cm(ナイロン)程度にすることが理想的である。
【0068】
次にヤング率E=250mg/cm(ナイロン)の条件のもと、屈曲角θを30°および60°に変化させたブラシを製造し、表1と同様の表を作成し、清掃効果が高かったa、bの組み合わせを領域として示したグラフを図15(a)に示す。図15(a)において縦軸は繊維23の直毛部23bの長さbを、横軸は繊維23の屈曲部23aの長さaを表す。
【0069】
屈曲角θが大きくなるにしたがって清掃効果の高い領域は直毛部23bの長さbが小さいほうにシフトしていく。これは、繊維23がグリッド裏面13aに当接できない境界条件Δ=0を表す直線がb=acosθ+1で表され、θの減少に伴いΔ>0の領域が直毛部23bの長さbが小さいほうへシフトしていくためである。図15(a)より冗長性の良い屈曲角の条件としてはθ=45°程度が良い。
【0070】
以上のような観測および測定結果により、繊維23のパラメータとして、E=250mg/cm(ナイロン)、θ=45°、a=0.7mm、b=1.3mmの組み合わせが最適である。または、E=250mg/cm(ナイロン)、θ=45°、a=0.6mm、b=1.3mmの組み合わせが最適である。
【0071】
[本実施形態の清掃効果]
特にE=250mg/cm(ナイロン)、θ=45°、a=0.7mm、b=1.3mmの繊維パラメータの組み合わせを持つブラシ22を用いて、グリッド裏面13aのトナーの被服率を調べた結果を図15(b)に示す。キヤノン社製複合機imagePRESSC1改造機を用いた。図15(b)において縦軸はグリッド裏面13aのトナー被服率を、横軸は画像出力枚数を表す。図15(b)には先端に屈曲処理を施していない直毛ブラシによるグリッド裏面13aのトナー被服率の結果も併せて示してある。またグリッド裏面13aの清掃は、前述の場合と同様の清掃を行なうものとした。
【0072】
グリッド裏面13aのトナーの被服率の測定方法は以下のようである。画像出力枚数ごとにコロナ帯電装置2を取り出し、グリッド裏面13aの顕微鏡による観察画像を取り込む。その画像のRGB比よりトナー付着部分を決定し、トナー付着部分の面積の積算値と、画像出力前に測定しておいたグリッド裏面13aの面積の商をとることにより算出した。
【0073】
図15(b)に示すように、先端に屈曲処理を施していない直毛ブラシによる清掃では、裏面のトナー被服率は画像出力枚数に伴って上昇していき、40,000枚出力時には50%以上に達する。これに対し、前記最適パラメータを持つ屈曲処理を施したブラシ22による清掃では、トナー被服率は40,000枚出力時にも10%程度にしかならず、屈曲処理を施したブラシ22によりグリッド裏面13aを清掃する効果がある。
【0074】
次にグリッド電極13にトナー以外の異物、特に埃やケバが付着したことを想定し、グリッド裏面13aにケバを100本人為的に付着させた。そして、屈曲処理を施したブラシ22と、屈曲処理を施していない直毛ブラシが、図2(a)のホームポジションA、グリッド端部B間を往復移動する回数(清掃回数)に伴い、グリッド裏面13a上のケバがどの程度とれるかを測定した。その結果を図16(a)に示す。図16(a)において縦軸はグリッド裏面13aのケバの除去率を、横軸は画像出力枚数を表す。
【0075】
図16(a)に示すように、先端に屈曲処理を施していない直毛ブラシによる清掃では、裏面のケバの除去率は20回清掃時にも5%以下で、ほとんどケバは除去されていない。これに対し、前記パラメータを持つ屈曲処理を施したブラシ22による清掃では、20回清掃により80%程度のケバを除去することができ、トナー以外のケバなどの埃に対しても屈曲処理を施したブラシは有効である。
【0076】
また、下記の繊維パラメータの組み合わせを持つブラシ22を用いて、トナーなどの異物がグリッドに付着することにより、感光ドラム1に帯電ムラが生じることで画像に白いすじが出現するまでの画像出力枚数を調べた。繊維パラメータは、前記最適パラメータであるのE=250mg/cm(ナイロン)、θ=45°、a=0.7mm、b=1.3mmとした。キヤノン社製複合機imagePRESSC1改造機を用いた。
【0077】
また、グリッド裏面13aの清掃は、5000枚の画像を出力するごとに1回の清掃を行なうものとした。前述の場合と同様に、グリッド電極清掃部14が図2(a)のホームポジションAから、グリッド端部Bまで移動し、その後、グリッド端部Bから元のホームポジションAに移動するまでを1回の清掃過程とした。その結果を図16(b)に示す。図16(b)に示すように、屈曲処理を施していない直毛ブラシを用いた場合では、10,000枚程度で帯電ムラによる白いすじが出てしまうのに対し、屈曲処理を施したブラシ22では、50,000枚近くまで白すじは出現しない。屈曲処理を施したブラシ22を用いることによって帯電ムラを抑制することができる。
【0078】
なお、上記に示したE、θ、a、bの最適値は図3(a)に示したグリッド電極13の形状および、図3(b)に示したグリッド電極13とブラシ保持部材19の間隔Lによって変化する。おのおののグリッド電極13の形状および、グリッド電極13とブラシ保持部材19の間隔Lに対して最適なE、θ、a、bの組み合わせを選ぶことで上記と同様の効果を期待することができる。
【0079】
また、本実施形態においては、ブラシ22を構成する繊維23の素材としてアクリルまたはナイロンを選択した。しかし、帯電装置2のおのおののグリッド電極13の形状および、グリッド電極13とブラシ保持部材19の間隔Lに対して最適なヤング率Eを持ってさえいれば良く、その素材についてはレーヨン、綿など様々なものが考えられ、特に限定されない。
【0080】
本実施形態によれば、簡単な構成で、グリッド電極13の感光ドラム1と対向する面全体を清掃することができる。
【0081】
[第二実施形態]
次に本発明に係る帯電装置の第二実施形態について図を用いて説明する。上記第一実施形態と説明の重複する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。図17(a)は本実施形態のブラシの構成図である。図17(a)に示すように、本実施形態のブラシ32は、上記第一実施形態のブラシ22を構成する繊維23を、ブラシ22の移動方向と繊維23の植毛方向とのなす角βを鋭角にし、屈曲部23aを先端23cがグリッド裏面13aに近づく方向に屈曲したものである。グリッド平面の法線と繊維23のなす角をαとする。繊維23に対する屈曲処理の形状は第一実施形態と共通である。
【0082】
[本実施形態のブラシ32の清掃過程に対する考察]
グリッド電極13のある平面に対して繊維23に角度を持たせることによって、先端23cがグリッド電極13に当接した時に、図17(b)のようにブラシ保持部材19からの力Fhが働く。このFhのグリッド平面に垂直な方向の成分Fvと、繊維23が屈曲することによる応力F1との合力が、繊維23のグリッド側面13bに当接した部分に働く。このため、繊維23はグリッド裏面13aに対してより容易に侵入することができる。そのため、第一実施形態よりもはみ出し量Δが大きい場合にもグリッド裏面13aに侵入することができる。
【0083】
しかし、繊維23が角度を持っていることによって、第一実施形態に述べた第3条件のうち、条件3Aの繊維全体の長さλに対する条件はより厳しいものとなる。なぜなら、繊維23が角度を持っていることによって、繊維23がグリッド側面13bに当接しつつグリッド裏面13aから抜けるときに繊維23はより大きく屈曲し、繊維の応力が大きいため、グリッド側面13bから受ける摩擦力も大きくなるためである。
【0084】
[清掃に最適な繊維のパラメータの検証]
【0085】
実際にE=250mg/cm(ナイロン)、θ=60°、α=30°の場合に屈曲部23aの長さa、直毛部23bの長さbをパラメータとしてそれぞれ0.1mmずつ変化させたブラシを作製した。そして、第一実施形態と同様にCCDカメラによる観察した結果および、キヤノン社製複合機imagePRESSC1改造機に作製したブラシを搭載し清掃効果を評価した結果から表1と同様の表を作成した。また、ブラシは第一実施形態と同様に射出形成によって繊維の先端部に屈曲処理を施したものを用いた。その結果を表2(単位は全てmm)に示す。
【0086】
【表2】

表2より清掃効果が高かった屈曲部23aの長さa、直毛部23bの長さbの組み合わせを領域として示したグラフを図18(a)に示す。図18(a)において縦軸は繊維23の直毛部23bの長さbを、横軸は繊維23の屈曲部23aの長さaを表す。図18(a)に示すように、E=250mg/cm(ナイロン)、θ=60°、α=30°の場合には冗長性のよいa=0.4mm、b=1.5mmの組み合わせが最適であった。
【0087】
このようにグリッド電極13のある平面に対して繊維23に角度を持たせた場合にも適切な屈曲部23aの長さa、直毛部23bの長さbの組み合わせを持つブラシ32を用いることで第一実施形態と同様の効果が得られる。
【0088】
また、本実施形態においてはブラシ32を構成する繊維23の素材としてナイロンを選択した。しかし、帯電装置2のおのおののグリッド電極13の形状および、グリッド電極13とブラシ保持部材19の間隔Lに対して最適なヤング率Eを持ってさえいれば良く、その素材についてはレーヨン、綿など様々なものが考えられ、特に限定されない。
【0089】
[第三実施形態]
次に本発明に係る帯電装置の第三実施形態について図を用いて説明する。上記第一実施形態と説明の重複する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。図18(b)は本実施形態のブラシ42の構成図である。図18(b)に示すように、本実施形態のブラシ42は、上記第一実施形態のブラシ22の繊維23を、繊維同士の屈曲方向が隣接する繊維同士で互いに反対方向を向くように構成したものである。繊維23に対する屈曲処理の形状は第一実施形態と共通である。
【0090】
[本実施形態のブラシ42と第一実施形態のブラシ22の清掃過程の比較]
図19(a)に第一実施形態のように繊維23の屈曲方向が一方向のみの場合のブラシ22の移動の様子を示す。図19(a)の矢印f方向にブラシ22が移動する場合、繊維23の屈曲方向とブラシ22の移動方向が揃っており、グリッド裏面13aを清掃することができる。しかし、図19(a)の矢印g方向にブラシ22が移動する場合、繊維23の屈曲方向とブラシ22の移動方向が逆になり、繊維23はグリッド裏面13aを清掃することができない。ブラシ22はモータM1の回転によってグリッド電極13に対して往復運動をするため、図19(a)のようにグリッド裏面13aにグリッド電極13のグリッド平面方向(ブラシ移動方向)における中心線を境としてA側とB側を定義する。この時、図6の1から3の過程を見てもわかるように、グリッド裏面13aのA側とB側ではグリッド裏面13aに対する当接力および接触面積が異なる。また、ブラシ22の屈曲部23aの先端23cは、B側のグリッド側面13bには当接できない。このためグリッド裏面13aのA側とB側では清掃のされ方が異なり、B側のみにトナーやケバなどが残留する可能性が考えられる。
【0091】
そこで図18(b)のように繊維同士の屈曲方向が互いに逆を向くように構成することで、ブラシ42の往路と復路でグリッド裏面13aを均等に清掃することができ、清掃効率の上昇および清掃ムラの防止を期待することができる。
【0092】
[本実施形態の清掃効果]
実際に第一実施形態の場合と同様に、下記の繊維パラメータを持つブラシ42を用いてグリッド裏面13aのトナー被服率およびグリッド裏面13aのケバ除去率を測定したものを図19(b)、図20(a)に示す。繊維パラメータは、最適パラメータであるE=250mg/cm(ナイロン)、θ=45°、a=0.7mm、b=1.3mmとした。図19(b)において縦軸はグリッド裏面13aのトナー被服率を、横軸は画像出力枚数を表す。また図20(a)において縦軸はグリッド裏面13aのケバの除去率を、横軸は画像出力枚数を表す。
【0093】
グリッド裏面13aの清掃方法は、第一実施形態の場合と同様とする。図19(b)、図20(a)に示すように、両者共に、繊維同士の屈曲方向が互いに逆を向くブラシ42は、屈曲方向が一方向のブラシ22に比べて清掃効率がよい。
【0094】
また、第一実施形態の場合と同様にキヤノン社製複合機imagePRESSC1改造機によって画像を出力し、画像に白いすじが出現するまでの画像出力枚数を調べた結果を図20(b)に示す。グリッド裏面13aの清掃方法は、上記と同様とする。
【0095】
この実験においても、ブラシ42を用いた場合に、第一実施形態の屈曲方向が一方向のブラシ22に比べて、白いすじが出現するまでの画像出力枚数が上昇し、清掃効果がより高い。
【0096】
本実施形態では、ブラシ42を構成する繊維23を、繊維同士の屈曲方向が隣接する繊維同士で互いに逆を向くように構成したものを用いて説明した。ブラシ42は、この他にも、図21(a)〜図21(c)のようにブラシ42の移動方向に対して繊維23の屈曲方向が互いに逆を向く繊維23を混在させてもよい。ブラシ42の移動方向の往方向に対して屈曲方向をもつ繊維23と復方向に対して屈曲方向を持つ繊維23の数は、等しくする必要がある。かかるブラシ42によっても、ブラシ42の往路と復路でグリッド裏面13aを均等に清掃することができ、本実施形態と同様の効果を期待することができる。
【0097】
[第四実施形態]
次に本発明に係る帯電装置の第四実施形態について図を用いて説明する。上記第一実施形態と説明の重複する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。図21(d)は本実施形態のブラシ52による清掃過程を示す図である。図21(d)に示すように、本実施形態のブラシ52は、上記第一実施形態のブラシ22の繊維23の先端部が屈曲処理されたものと、先端部が直毛のものを混在させたものである。繊維23に対する屈曲処理の形状は第一実施形態と共通である。
【0098】
第一実施形態のように屈曲処理した繊維23のみでブラシ22を構成した場合、第一実施形態の条件3Aで述べたように、繊維23のヤング率Eが大きいまたは繊維全体の長さλが大きいとき、グリッド側面13bから繊維23におよぼされる摩擦力が大きくなる。その摩擦力の全ての繊維23に対する総和がモータの駆動力を超えると、ブラシ22がグリッド電極13に引っかかり動かないということが生じる。そのため、その摩擦力の総和よりも大きい駆動力を持つモータが使用される。
【0099】
しかし、コストやスペースの節約のために駆動力が小さく、小型のモータを使用しなければならない場合がある。その場合、繊維23におよぼされる摩擦力によってモータにかかるトルクを小さくするために、ブラシ22を構成する屈曲処理した繊維23の本数を減らすということが考えられる。この場合、グリッド裏面13aの清掃効率が落ちることになるが、同時にグリッド表面13cの清掃効率も下がることが課題となる。
【0100】
そこで、図21(d)のように、ブラシ52は、繊維23の先端部が屈曲処理されたものと、先端部が直毛のものを混在させ、繊維全体の本数を変えない構成となっている。これにより、直毛繊維がグリッド表面13cの清掃を行い、本数が少なくなった屈曲繊維のみがグリッド裏面13aの清掃を行う。このため、グリッド表面13cの清掃効率を保ちつつモータにかかるトルクを減らすことができる。また、上記第一実施形態と同様に、簡単な構成で、グリッド電極13の感光ドラム1と対向する面全体を清掃することができる。
【符号の説明】
【0101】
A …ホームポジション
B …グリッド端部
L …レーザー光
M1 …モータ
P …転写材
1 …感光ドラム
2 …コロナ帯電装置
3 …二成分現像器
4 …転写ローラ
5 …クリーナー
6 …除電ランプ
7 …スキャナ
10 …シールドケース
11 …絶縁性支持部
12 …放電ワイヤ
13 …グリッド電極
13a …グリッド裏面
13b …グリッド側面
13c …グリッド表面
14 …グリッド電極清掃部
15 …放電ワイヤ清掃部
15a、15b …スポンジパッド
16 …ホルダ
17 …ネジ軸
18 …軸受け
19 …ブラシ保持部材
20 …射出成形機
21 …金型
22、32、42、52 …ブラシ
23 …繊維
23a …屈曲部
23b …直毛部
23c …先端
23d …屈曲点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被帯電体に対向したグリッド電極と、
前記グリッド電極に接触するブラシを備え、移動しながら前記グリッド電極を清掃する清掃部材と、を有する帯電装置において、
前記ブラシの繊維は、前記グリッド電極の前記被帯電体側のグリッド裏面よりも前記被帯電体側に伸びた直毛部と、前記直毛部に対して鋭角に屈曲した屈曲部と、を有し、前記清掃部材の移動に伴って、前記ブラシの繊維の先端が、前記グリッド電極の前記被帯電体に対向した前記グリッド裏面に接触することを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
前記ブラシは、前記ブラシの移動方向と前記ブラシの繊維の植毛方向とのなす角が鋭角であり、かつ前記屈曲部は前記ブラシの繊維の先端が前記グリッド裏面に近づく方向に屈曲したことを特徴とする請求項1に記載の帯電装置。
【請求項3】
前記ブラシは、前記屈曲部が前記ブラシの移動方向に屈曲したものと、前記屈曲部が前記ブラシの移動方向に対して反対方向に屈曲したものと、を混在してなることを特徴とする請求項1に記載の帯電装置。
【請求項4】
前記ブラシは、前記屈曲部を有する繊維と、前記屈曲部を有さない直毛部のみの繊維を混在してなることを特徴とする請求項1に記載の帯電装置。
【請求項5】
前記グリッド電極は、平面の板状部材に複数の開口が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の帯電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−88421(P2012−88421A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233388(P2010−233388)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】