説明

帯電部材、プロセスカートリッジおよび電子写真装置

【課題】電子写真装置の帯電部材において、帯電部材と感光体を長期間、当接放置した場合に発生する、Cセット画像と呼ばれる画像不良を抑制した帯電部材を提供する。
【解決手段】導電性基体1および弾性層2を有する帯電部材5であって、該弾性層2は、ジエン系ゴム、該ゴム中に分散されてなる電子導電粒子、該ゴム中に分散されてなるイオン導電粒子、および、重量平均分子量が3000乃至10000のポリアルキレンオキサイドを含み、該ポリアルキレンオキサイドは、ポリエチレンオキサイドを分子内に含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電部材、詳しくは、電圧を印加して被帯電体である電子写真感光体の表面を所定の電位に帯電するための帯電部材に関する。また、帯電部材を用いたプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用した電子写真装置は、主に電子写真感光体、帯電装置、露光装置、現像装置、転写装置及び定着装置からなる。
帯電装置は、電子写真感光体の表面に接触又は近接配置された帯電部材に電圧(直流電圧のみの電圧又は直流電圧に交流電圧を重畳した電圧)を印加することによって電子写真感光体の表面を帯電する方式が多く採用されている。帯電を安定に行う、及び、オゾンの発生を低減するという観点から、接触式の帯電方式が好んで用いられている。
【0003】
接触式の帯電方式の場合、ローラ形状の帯電部材(以下、「帯電ローラ」と呼ぶ)が好んで用いられている。帯電ローラは、電子写真感光体に対して、バネ等の押し圧力により当接され、従動回転するように配置される。
長期間にわたって上記状態で放置された場合、帯電ローラは電子写真感光体との当接部で歪み、半永久的に変形する、いわゆる圧縮永久歪み(以下、「Cセット」と呼ぶ)が生じる。放置された環境が高温高湿であると、歪み量はより顕著になる。
【0004】
このような、Cセットという技術課題を改善する提案は特許文献1に記載されている。
近年、電子写真装置に対して、より一層の高速化、高画質化及び高耐久化が要求されており、Cセットの改善が望まれている。
Cセットが発生した帯電部材を用いて電子写真感光体の帯電を行った場合、Cセットが発生している部分(以下、「Cセット部」と呼ぶ)が放電領域を通過する際に、均一な微小放電ギャップが維持できなくなる。これにより、Cセット部と非Cセット部とで帯電能力に差が生じてしまう。その結果、Cセット部に対応した位置において、長手方向の横黒スジ及び/又は横白スジといった画像濃度ムラ(以下、「Cセット画像」と呼ぶ)が発生する。また、Cセット画像は、帯電部材の印加電圧を直流電圧のみの電圧とした場合において、より発生し易い傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−265008号公報
【特許文献2】特開平10−154416号公報
【特許文献3】特開2006−039394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電子写真装置の帯電部材において、帯電部材と感光体を長期間、当接放置した場合に発生する、Cセット画像と呼ばれるスジ状画像の発生を抑制した帯電部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の帯電部材は、導電性基体および弾性層を有する帯電部材であって、弾性層は、ジエン系ゴム、該ゴム中に分散されてなる電子導電粒子、該ゴム中に分散されてなるポリアルキレンオキサイドを含むイオン導電粒子、および、重量平均分子量が3000〜10000のポリアルキレンオキサイドを含み、該ポリアルキレンオキサイドは、ポリエチレンオキサイドを分子内に含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電子写真感光体と長期間、当接放置した後に発生する帯電部材のCセット部における帯電能力の変化を抑制することが可能になる。これにより、Cセット画像の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る帯電ローラの断面図である。
【図2】帯電ローラの電気抵抗値測定方法の説明図である。
【図3】本発明に係る電子写真装置の断面図である。
【図4】本発明に係るプロセスカートリッジの断面図である。
【図5】帯電ローラと電子写真感光体との当接状態を表す概略図を示す。
【図6】帯電ローラを製造に用いるクロスヘッド押出し装置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の帯電部材は、導電性基体および弾性層を有するものであり、被帯電体を帯電するために用いられる。
弾性層は、ジエン系ゴム、ジエン系ゴム中に分散されてなる電子導電粒子、ポリアルキレンオキサイドを含むイオン導電粒子と、重量平均分子量が3000〜10000であるポリエチレンオキサイドを含むポリアルキレンオキサイドとを分子内に含むことを特徴とする。
【0011】
弾性層は、ジエン系ゴムに電子導電粒子、イオン導電粒子が分散されていることに加え、ジエン系ゴムと親和性が低く、イオン導電粒子と親和性が高い、分子量3000〜10000である分子量の大きい液状のポリアルキレンオキサイドを含有している。このような構成とすることで、イオン導電性を有する液状のポリアルキレンオキサイドがマトリクス相とイオン導電粒子の界面近傍に偏在し、イオン導電粒子間においてもイオン導電性が得られる。このように、電子導電ゴムからなるマトリクス相中に、イオン導電性の導電経路を形成した弾性層とすることにより、帯電部材に応力がかかった際の導電性の変化が減少し、Cセット画像の発生を抑制することが可能になったと推察している。
特許文献2には、弾性層にヒドリンゴム粒子等を含有させるという提案がなされている。
また、ポリアルキレンオキサイドを含む液状材料は、ゴムの可塑剤として含有させるという提案が特許文献3に一例が記載されている。しかしながら、ヒドリンゴム粒子単体、ポリアルキレンオキサイドを含む液状材料単体が分散されている系では、本発明の帯電部材が有するCセット画像の抑制効果は発現され難いものと考えられる。
【0012】
<帯電部材>
帯電部材はローラ形状だけでなく、平板形状、ベルト形状でも構わない。図1はローラ形状の帯電部材を示す。また、必要に応じて、弾性層の上に、表面層を有しても構わない。図1(A)は導電性基体1、弾性層2の2層構成からなるローラ形状の帯電部材5を示し、図1(B)は、導電性基体1、弾性層2、表面層3の3層構成からなるローラ形状の帯電部材5を示す。なお、これらの図は、本発明の帯電部材の概略断面図を示したものである。以下において、図1に示したローラ形状のもの、すなわち帯電ローラにて詳細に説明する。
【0013】
導電性基体と弾性層、あるいは、順次積層する層(例えば、弾性層2と表面層3)は、接着剤を介して接着してもよい。この場合、接着剤は導電性であることが好ましい。導電性とするため、接着剤には公知の導電剤を有することができる。
接着剤のバインダーとしては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が挙げられるが、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、ポリエーテル系、エポキシ系等の公知のものを用いることができる。
【0014】
接着剤に導電性を付与するための導電剤としては、後に詳述する導電剤から適宜選択し、単独で、また2種類以上組み合わせて、用いることができる。
本発明の帯電ローラは、感光体の帯電を良好なものとするため、通常、電気抵抗が、23℃/50%RHの環境中において、1×10Ω以上、1×1010Ω以下であることがより好ましい。
【0015】
一例として、図4に帯電ローラの電気抵抗の測定法を示す。導電性基体1の両端を、荷重のかかった軸受け33a、33bにより感光体と同じ曲率の円柱形金属32に、平行になるように当接させる。この状態で、モータ(不図示)により円柱形金属32を回転させ、当接した帯電ローラ5を従動回転させながら安定化電源34から直流電圧−200Vを印加する。この時に流れる電流を電流計35で測定し、帯電ローラの抵抗を計算する。後述するように、荷重は各4.9Nとし、金属製円柱は直径φ30mm、金属製円柱の回転は周速45mm/秒とした。
【0016】
帯電ローラは、感光体に対して、長手のニップ幅を均一にするという観点から、長手方向中央部が一番太く、長手方向両端部にいくほど細くなる形状、いわゆるクラウン形状が好ましい。クラウン量は、中央部の外径と中央部から90mm離れた位置の外径との差が、30μm以上200μm以下であるが好ましい。
【0017】
[導電性基体]
導電性基体は、導電性を有し、その上に設けられる弾性層等を支持する機能を有するものである。材質としては、例えば、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等の金属やその合金を挙げることができる。
【0018】
[弾性層]
弾性層は、ジエン系ゴムに、電子導電粒子、ポリアルキレンオキサイドを含むイオン導電粒子と、重量平均分子量が3000〜10000であるポリエチレンオキサイドを含むポリアルキレンオキサイドとを含有する。
【0019】
<ジエン系ゴム>
ジエン系ゴムは、ブタジエンに代表されるジエンを重合成分の1つとして含有しているゴムである。代表的なジエン系ゴムとしては、BR(ブタジエンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、IR(イソプレンゴム)、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)を挙げることができる。これらのゴムは、極性の低いジエンを主成分としている。このため、ポリアルキレンオキサイドを含む材料とは親和性が低く、ジエン系ゴム中に分散されてなるイオン導電粒子との界面において、液状のポリアルキレンオキサイドが偏在し、マトリクス相中のイオン導電性を向上することができる。また、吸水性の低いジエン系ゴムを用いることにより、イオン導電粒子の吸水を低減し、高温高湿環境下において、長期間、当接放置した場合の導電性の変化を抑制できる効果も得られる。
【0020】
<電子導電粒子>
電子導電粒子としては以下のものが挙げられる。アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀の如き金属系の微粒子や繊維、導電化処理を施した酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛の如き金属酸化物が挙げられる。また、前記記載の金属系微粒子、繊維及び金属酸化物表面に、電解処理、スプレー塗工、混合振とうにより表面処理した複合粒子が挙げられる。ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、PAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン、ピッチ系カーボンの如きカーボン粉が挙げられる。
ファーネスブラックとしては以下のものが挙げられる。
【0021】
また、これらの電子導電粒子を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
また、電子導電粒子はカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックは、疎水性が高く、かつストラクチャー構造を有しており、マトリクス相の疎水性、補強性をさらに高めることができる。また、平均粒子径が0.01μmから0.9μmがより好ましく、0.01μmから0.5μmであることが更に好ましい。この範囲であれば、マトリクス相の体積抵抗率の制御が容易になる。
【0022】
電子導電粒子の添加量は、バインダー(ジエン系ゴム)100質量部に対して2質量部から80質量部、好ましくは20質量部から60質量部の範囲である。20質量部よりも少ない添加量では、補強性の効果が低くなる。また、60質量部を超えた添加量では、弾性層におけるマトリクス相の抵抗が低く、イオン導電粒子及び液状のポリアルキレンオキサイドによるイオン導電性の効果が得られにくい。
<イオン導電粒子>
イオン導電粒子は、ポリアルキレンオキサイドを構造として含む樹脂またはゴムを架橋剤にて架橋したもの、電子線照射などのエネルギーを与えることにより自己架橋したものを粒子化したものである。アルキレンオキサイドを有するイオン導電粒子を用いることで、イオン導電粒子とは別にゴム含有されている重量平均分子量を規定した液状のポリアルキレンオキサイドがイオン導電粒子内に取り込まれた状態となることを抑制することができる。これにより、重量平均分子量を規定した液状のポリアルキレンオキサイドがイオン導電粒子の表面近傍に偏在するため、弾性層のイオン導電性を向上し、弾性層に応力がかかった際の導電性の変化を抑制すると考えられる。
【0023】
イオン導電粒子は、ポリアルキレンオキサイドを含む構造であることが必要である。さらに、ポリエチレンオキサイドを含むことにより、良好なイオン導電性を発現するため、好ましい。ポリエチレンオキサイドの含有量の好ましい範囲としては、ポリアルキレンオキサイド100モル%に対して、ポリエチレンオキサイドが50〜95モル%である。さらに好ましい範囲としては、70〜90モル%である。前記範囲とすることで、弾性層のイオン導電性がより向上し、Cセット画像の抑制効果が高まる。ポリエチレンオキサイドの含有モル%が大きい程、良好なイオン導電性を示すが、90モル%を超えると、ポリエチレンオキサイドによる結晶性が高くなるため、イオン導電性は低下する傾向にある。具体的には、エピクロルヒドリン/エチレンオキサイド2元共重合体ゴム、エピクロルヒドリン/エチレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル3元共重合体ゴム、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル3元共重合体ゴムを架橋剤により架橋して得られた架橋ゴムを粒子化したものが好適に用いられる。
【0024】
架橋剤としては、硫黄系、有機過酸化物系、ポリチオール系など、公知の架橋剤を使用することができる。
イオン導電粒子の粒子径の好ましい範囲は、1μm〜100μmである。より好ましくは5μm〜50μmである。前記範囲とすることで、弾性層の抵抗ムラが小さく、イオン導電粒子による導通が形成されやすくなるため、弾性層のイオン導電性がより向上し、Cセット画像の抑制効果が高まる。
【0025】
(イオン導電粒子の平均粒子径の測定方法)
ここでイオン導電粒子の平均粒子径は、粉体状のイオン導電粒子をコールターカウンターマルチサイザー等を用いて測定した測定値を採用することができる。
例えば、電解質溶液100〜150mlに界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5ml添加し、これに測定試料(イオン導電粒子)を2〜20mg添加する。試料を懸濁した電解質液を超音波分散器で1〜3分間分散処理して、コールターカウンターマルチサイザーにより17μm又は100μm等の適宜イオン導電粒子サイズに合わせたアパチャーを用いて体積を基準として、0.3〜64μmの粒度分布等を測定する。
この条件で測定した質量平均粒子径をコンピュータ処理により求める。
【0026】
また、既に弾性層に含有された状態でのイオン導電粒子の粒子径の測定方法は、層の断面を顕微鏡等で観察することにより簡易的に求める事もできる。まず、弾性層の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)にて観察し、イオン導電粒子の断面画像データから、イオン導電粒子の投影面積を求め、次に、この面積と等しい面積を持つ円の直径をイオン導電粒子の粒子径とする。同様に別のイオン導電粒子の断面投影面積から、この面積と等しい面積を持つ円の直径を求め、これらの円の直径の算術平均を平均粒子径とした。
【0027】
本発明では、弾性層の任意の点を500μmに亘って、20nmずつ集束イオンビーム「FB−2000C」(日立製作所製)にて切り出し、その断面画像を撮影する。そして同じイオン導電粒子を撮影した画像を組み合わせて立体像を算出する。イオン導電粒子の立体像からイオン導電粒子の投影面積を求め、次に、この面積と等しい面積を持つ円の直径を樹脂粒子の粒径とする。同様に別のイオン導電粒子の断面投影面積から、この面積と等しい面積を持つ円の直径を求め、これらの円の直径の算術平均を平均粒子径とした。
【0028】
このような作業を視野内の10個のイオン導電粒子について行う。そして、同様の測定を帯電部材の長手方向10点について行い、得られた計100個の平均値を算出する。
イオン導電粒子の添加量の好ましい範囲は、ジエン系ゴム100質量部に対して、50質量部〜250質量部である。より好ましい範囲は80〜200質量部である。前記範囲とすることで、弾性層の使用環境による導電性の変化が小さく、かつイオン導電性を向上することができるため、Cセット画像の抑制効果が高まる。
【0029】
イオン導電粒子には、イオン導電性を向上する目的で、イオン導電剤を含有してもよい。イオン導電剤としては以下のものが挙げられる。過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カルシウムの如き無機イオン物質、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルプロピルアンモニウムブロミド、変性脂肪族ジメチルエチルアンモニウムエトサルフェートの如き陽イオン性界面活性剤、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ジメチルアルキルラウリルベタインの如き両性イオン界面活性剤、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸トリメチルオクタデシルアンモニウムの如き第四級アンモニウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等の有機酸リチウム塩。これらを単独又は2種類以上組み合わせて用いることができる。イオン導電剤の中でも、環境変化に対して抵抗が安定なことから特に過塩素酸4級アンモニウム塩が好適に用いられる。
【0030】
イオン導電粒子には、弾性層の加工性や機械物性を調整するために、公知のフィラーを添加したものも用いることができる。
例えば、補強性を付与する目的でカーボンブラックを添加しても構わない。カーボンブラックを添加する場合には、MT、FT、GPF、SRFカーボンブラック等の導電性が低いカーボンブラックとすることが好ましい。前記カーボンブラックは、ゴム100質量部に対して、0.5質量部〜10質量部の範囲で添加することが好ましい。
【0031】
また、増量材としては、各種炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカ等の無機充填材を添加しても構わない。
イオン導電粒子の作製方法としては、まず、前記の材料を密閉型ミキサー、二軸混練機などの混練機にて混練、次いで架橋し、架橋ゴムを作製する。作製した架橋ゴムを冷凍粉砕し、粒子化することにより作製することができる。
【0032】
ポリアルキレンオキサイドは、重量平均分子量が3000〜10000である。このポリアルキレンオキサイドは、ジエン系ゴムに分散されてなるイオン導電粒子の界面近傍に偏在するポリアルキレンオキサイドであって、イオン導電粒子の中に含まれるポリアルキレンオキサイドではない。重量平均分子量を前記範囲とすることにより、マトリクス相とイオン導電粒子の界面近傍に偏在することができるため、イオン導電粒子とポリアルキレンオキサイドによるイオン導電性が得られ、弾性層のイオン導電性を向上することができる。重量平均分子量が3000未満であると、流動性が大きいため、長期間、弾性層に圧縮歪みを与えた場合、圧縮応力により弾性層中にポリアルキレンオキサイドが拡散し、イオン導電性が低下しやすい。また、重量平均分子量が10000を超えると、ゴム状、もしくは樹脂状となるため、ジエン系ゴムとイオン導電粒子の界面に存在しにくくなり、イオン導電粒子と別個にゴム中に存在し、イオン導電性の導電経路が形成されにくい。また、ポリアルキレンオキサイドはポリエチレンオキサイドを含み、ポリアルキレンオキサイド100モル%に対して、エチレンオキサイドは30モル%以上含有していることが好ましく、さらには70〜90モル%含有していることがより好ましい。前記範囲とすることで、ポリアルキレンオキサイドのイオン導電性が向上し、弾性層のイオン導電性をより向上することができる。
【0033】
本発明のポリアルキレンオキサイドの具体例として、ポリエーテルポリオールを挙げることができる。
ポリエーテルポリオールは、従来公知の材料を用いてもよく、また、ポリエーテルポリオールは、水酸化カリウム触媒の存在下、活性水素化合物にアルキレンオキサイドを付加重合することにより、製造することができる。水酸化カリウム触媒と活性水素化合物を仕込んだオートクレーブにアルキレンオキサイドを連続的に送入しながら、反応温度105〜150℃、反応圧力480〜600kPaの条件で、所定の分子量が得られるまで反応させる。次いで、ポリオキシアルキレンポリオール中の水酸化カリウムを無機酸で中和した後、脱水、乾燥して析出したカリウム塩を濾過し、所望のポリエーテルポリオールを製造することができる。
【0034】
(ポリアルキレンオキサイドの重量平均分子量の測定方法)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、クロロホルムを展開溶媒として、既知の分子量(分子量分布=1)の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。この検量線に基づいて、GPCのリテンションタイムから算出した。
この他にも、弾性層には、必要に応じて可塑剤、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、分散剤及び離型剤の配合剤を添加できる。
【0035】
弾性層の形成方法としては、弾性体の原料ゴム組成物を密閉型ミキサーで混合後に、押し出し成形、射出成形、又は、圧縮成形等の公知の方法により形成できる。また、弾性層は、接着層を設けた導電性基体の上に直接弾性体を成形して作製してもよい。あるいは、予めチューブ形状に成形した導電性弾性体を導電性基体の上に被覆形成させてもよい。なお、弾性層の作製後に表面を研磨して形状を整えてもよい。
【0036】
弾性層の硬度は、マイクロ硬度(MD−1型)で70°以下が好ましく、より好ましくは60°以下である。マイクロ硬度(MD−1型)が70°を超えると、帯電ローラと感光体との間のニップ幅が小さくなる。
なお、「マイクロ硬度(MD−1型)」とは、アスカー マイクロゴム硬度計MD−1型(商品名、高分子計器株式会社製)を用いて測定した硬度である。具体的には、常温常湿(23℃/55%RH)の環境中に12時間以上放置した帯電ローラに対して該硬度計を10Nのピークホールドモードで測定した値とする。
【0037】
表面層の体積抵抗率は、帯電部材の電気抵抗を上記とするために、23℃/50%RH環境において、1×10Ω・cm以上1×1010Ω・cm以下であることが好ましい。
弾性層の体積抵抗率は、弾性層に使用するすべての材料を厚さ2mmのシートに成型し、両面に金属を蒸着して電極とガード電極を形成して得た体積抵抗率測定用サンプルを得る。測定用サンプルを微小電流計(商品名:ADVANTEST R8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METER、(株)アドバンテスト製)を用いて200Vの電圧を印加する。そして、30秒後の電流を測定し、厚さと電極面積とから計算して求める。
弾性層は、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、UVや電子線を用いた表面加工処理や、化合物等を表面に付着及び/又は含浸させる表面改質処理を挙げることができる。
【0038】
[表面層]
(バインダー樹脂)
表面層に用いるバインダーとしては、公知のバインダーを採用することができる。例えば、樹脂、天然ゴムやこれを加硫処理したもの、合成ゴム等を挙げることができる。
樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂が使用できる。中でも、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂等がより好ましい。
【0039】
合成ゴムとしては、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム及びエピクロルヒドリンゴム等が使用できる。
表面層の体積抵抗率は、帯電部材の電気抵抗を上記とするために、23℃/50%RH環境において、1×10Ω・cm以上1×1013Ω・cm以下であることが好ましい。
【0040】
表面層の体積抵抗率は、以下のようにして求める。まず、ローラ状態から表面層を剥がし、5mm×5mm程度の短冊形に切り出す。両面に金属を蒸着して電極とガード電極とを作製し測定用サンプルを得る。あるいはアルミシートの上に塗布して表面層塗膜を形成し、塗膜面に金属を蒸着して測定用サンプルを得る。得られた測定用サンプルについて、上記弾性層の体積抵抗率測定方法と同様にして測定できる。
表面層の体積抵抗率は、イオン導電剤、電子導電剤等の導電剤により調整することができる。
【0041】
イオン導電剤としては以下のものが挙げられる。過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カルシウムの如き無機イオン物質、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルプロピルアンモニウムブロミド、変性脂肪族ジメチルエチルアンモニウムエトサルフェートの如き陽イオン性界面活性剤、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ジメチルアルキルラウリルベタインの如き両性イオン界面活性剤、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸トリメチルオクタデシルアンモニウムの如き第四級アンモニウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等の有機酸リチウム塩。これらを単独又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0042】
電子導電剤としては以下のものが挙げられる。アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀の如き金属系の微粒子や繊維、導電化処理を施した酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛の如き金属酸化物。前記記載の金属系微粒子、繊維及び金属酸化物表面に、電解処理、スプレー塗工、混合振とうにより表面処理した複合粒子。ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、PAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン、ピッチ系カーボンの如きカーボン粉。
【0043】
ファーネスブラックとしては以下のものが挙げられる。SAF−HS、SAF、ISAF−HS、ISAF、ISAF−LS、I−ISAF−HS、HAF−HS、HAF、HAF−LS、T−HS、T−NS、MAF、FEF、GPF、SRF−HS−HM、SRF−LM、ECF、FEF−HS。サーマルブラックとしては、FT、MTがある。
また、これらの導電剤を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0044】
また、導電剤は、平均粒径が0.01μmから0.9μmがより好ましく、0.01μmから0.5μmであることが更に好ましい。この範囲であれば、マトリクス層の体積抵抗率の制御が容易になる。
表面層に加えるこれらの導電剤の添加量は、バインダー100質量部に対して2質量部から80質量部、好ましくは20質量部から60質量部の範囲が適当である。
【0045】
導電剤は、その表面を表面処理してもよい。表面処理剤としては、アルコキシシラン、フルオロアルキルシラン、ポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、シラン系、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系の各種カップリング剤、オリゴマー又は高分子化合物が使用可能である。これらは一種で使用しても、二種以上を用いても良い。好ましくは、アルコキシシラン、ポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、シラン系、チタネート系、アルミネート系又はジルコネート系の各種カップリング剤であり、更に好ましくは、有機ケイ素化合物である。
【0046】
表面層は、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、UVや電子線を用いた表面加工処理や、化合物等を表面に付着及び/又は含浸させる表面改質処理を挙げることができる。
本発明の表面層は、0.1μm以上100μm以下の厚さを有することが好ましい。より好ましくは、1μm以上50μm以下である。
【0047】
(表面層の形成)
表面層は、静電スプレー塗布やディッピング塗布等の塗布法により形成できる。または、予め所定の膜厚に成膜されたシート形状又はチューブ形状の層を接着又は被覆することにより形成できる。あるいは、型内で所定の形状に材料を硬化、成形する方法も用いることができる。この中でも、塗布法によって塗料を塗工し、塗膜を形成することが好ましい。
塗布法によって層を形成する場合、塗布液に用いられる溶剤としては、バインダー樹脂を溶解することができる溶剤であればよい。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、キシレン、リグロイン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族化合物などが挙げられる。これらの溶剤は、使用するバインダー樹脂に応じて適宜選択される。
塗布液に、バインダーや粒子等を分散する方法としては、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミル等の公知の溶液分散手段を用いることができる。
【0048】
[電子写真装置]
本発明の帯電部材を備える電子写真装置の1例の概略構成を図5に示す。
電子写真装置は、感光体、感光体を帯電する帯電装置、露光を行う潜像形成装置、トナー像に現像する現像装置、転写材に転写する転写装置、感光体上の転写トナーを回収するクリーニング装置、トナー像を定着する定着装置等から構成されている。
感光体4は、導電性基体の上に感光層を有する回転ドラム型である。感光体は矢示の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。
【0049】
帯電装置は、感光体4に所定の押圧力で当接されることにより接触配置される接触式の
帯電ローラ5を有する。帯電ローラ5は、感光体の回転に従い回転する従動回転であり、帯電用電源19から所定の電圧を印加することにより、感光体を所定の電位に帯電する。
感光体4に静電潜像を形成する潜像形成装置(不図示)としては、例えばレーザービームスキャナーなどの露光装置が用いられる。一様に帯電された感光体に画像情報に対応した露光光11を照射することにより、静電潜像が形成される。
【0050】
現像装置は、感光体4に近接又は接触して配設される現像ローラ6を有する。感光体帯電極性と同極性に静電的処理されたトナーを反転現像により、静電潜像をトナー像に可視化現像する。
転写装置は、接触式の転写ローラ8を有する。感光体からトナー像を普通紙などの転写
材7(転写材は、搬送部材を有する給紙システムにより搬送される。)に転写する。
【0051】
クリーニング装置は、ブレード型のクリーニング部材10、回収容器を有し、転写した後、感光体の上に残留する転写残トナーを機械的に掻き落とし回収する。
ここで、現像装置にて転写残トナーを回収する現像同時クリーニング方式を採用することにより、クリーニング装置を省くことも可能である。
定着装置9は、加熱されたローラ等で構成され、転写されたトナー像を転写材7に定着させた後、転写材7を機外に排出する。
【0052】
[プロセスカートリッジ]
感光体、帯電装置、現像装置、クリーニング装置等を一体化し、電子写真装置に着脱可能に設計されたプロセスカートリッジ(図6)を用いることもできる。
すなわち、帯電部材が被帯電体と少なくとも一体化され、電子写真装置本体に着脱自在に構成されているプロセスカートリッジであり、該帯電部材が上記の帯電部材である。
また、電子写真装置は、少なくとも、プロセスカートリッジ、露光装置及び定着装置を有し、該プロセスカートリッジが上記のプロセスカートリッジである。
【実施例】
【0053】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
[ポリアルキレンオキサイドを含むイオン導電粒子の作製]
(製造例1) イオン導電粒子1
表1に示す成分を80℃に調節した密閉型ミキサーにて15分間混練した。
【0054】
【表1】

これに、表2に示す成分を、25℃に冷却した二本ロール機にて10分間混練し、原料ゴム組成物を得た。
【0055】
【表2】

原料ゴム組成物を、熱プレスにて10MPaの圧力下、160℃で30分間加硫を行って100mm×150mm×2mmのゴムシートを得た。ゴムシートの体積抵抗率は、以下に述べる方法で測定した。得られたゴムシートの両面に金属を蒸着して電極とガード電極とを形成し、23℃、50%の環境下に24時間放置した。その後、前記環境下において、微小電流計(商品名:ADVANTEST R8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METER、(株)アドバンテスト製)を用いて、200Vの直流電圧を印加して30秒後の電流を測定した。得られた電流値とゴムシートの厚さと電極面積とから、体積抵抗率を算出した。
ゴムシートを液体窒素にて冷却粉砕及び分級し、平均粒子径20μmのイオン導電粒子を得た。物性を表8に示す。
【0056】
(製造例2〜7) イオン導電粒子2〜7
製造例1の方法と同様に、ゴムシートを作製した。冷却粉砕及び分級し、イオン導電粒子1と平均粒子径の異なるイオン導電粒子2〜7を得た。物性を表8に示す。
(製造例8) イオン導電粒子8
製造例1において、表3に示す原料ゴム組成物を用いた以外は、製造例1と同様にしてイオン導電粒子8を得た。物性を表8に示す。
【0057】
【表3】

【0058】
(製造例9〜12) イオン導電粒子9〜12
製造例8の方法と同様に、ゴムシートを作製した。冷却粉砕及び分級し、イオン導電粒子8と平均粒子径の異なるイオン導電粒子9〜12を得た。物性を表8に示す。
(製造例13) イオン導電粒子13
製造例1において、表4に示す原料ゴム組成物を用いた以外は、製造例1と同様にしてイオン導電粒子13を得た。物性を表8に示す。
【0059】
【表4】

【0060】
(製造例14〜17) イオン導電粒子14〜17
製造例13の方法と同様に、ゴムシートを作製した。冷却粉砕及び分級し、イオン導電粒子13と平均粒子径の異なるイオン導電粒子14〜17を得た。物性を表8に示す。
(製造例18) イオン導電粒子18
製造例1において、表5に示す原料ゴム組成物を用いた以外は、製造例1と同様にしてイオン導電粒子18を得た。物性を表8に示す。
【0061】
【表5】

【0062】
(製造例19〜22) イオン導電粒子19〜22
製造例18の方法と同様に、ゴムシートを作製した。冷却粉砕及び分級し、イオン導電粒子18と平均粒子径の異なるイオン導電粒子19〜22を得た。物性を表8に示す。
(製造例23) イオン導電粒子23
製造例1において、表6に示す原料ゴム組成物を用いた以外は、製造例1と同様にしてイオン導電粒子23を得た。物性を表8に示す。
【0063】
【表6】

【0064】
(製造例24〜27) イオン導電粒子24〜27
製造例23の方法と同様に、ゴムシートを作製した。冷却粉砕及び分級し、イオン導電粒子23と平均粒子径の異なるイオン導電粒子24〜27を得た。物性を表8に示す。
(製造例28) イオン導電粒子28
製造例1において、表7に示す原料ゴム組成物を用いた以外は、製造例1と同様にしてイオン導電粒子28を得た。物性を表8に示す。
【0065】
【表7】

【0066】
【表8】

【0067】
(実施例1)
[帯電ローラ1の作製]
(弾性層の作製)
スチレンブタジエンゴム(結合スチレン量 23.5%、ムーニー粘度 35)100質量部に対し表9に示す成分を加えて、80℃に調節した密閉型ミキサーにて15分間混練して、原料コンパウンドを調製した。
【0068】
【表9】

【0069】
これに、加硫剤として硫黄2質量部、加硫促進剤としてジベンゾチアジルスルフィド(DM)1質量部、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)1質量部を添加し、25℃に冷却した二本ロール機にて10分間混練し、原料ゴム組成物を得た。
直径6mm、長さ252mmのステンレス製棒に、熱硬化性接着剤(商品名:メタロックU−20、東洋化学研究所社製)を塗布し、180℃の熱風炉内にて30分間静置して導電性基体を得た。
【0070】
続いて、図8に示すクロスヘッド37を具備する押出成形装置を用いて、導電性基体1を中心軸として、同軸上に円筒状に原料ゴム組成物を被覆して、原料ゴム組成物層の外径が直径φ9.2mmである帯電部材予備成形体39を得た。
クロスヘッド37は、一般に電線や針金の被覆に用いられている装置であり、押出し機38のシリンダのゴム排出部に取り付けて使用されるものである。
これを、160℃の熱風炉内にて60分間加熱した後、弾性層の端部を除去し、長さが226.5mmの弾性層を得た。次いで、弾性層の外周面を、プランジカット式の円筒研磨機を用いて研磨して、弾性層の外径をφ8.5mmに調整した。
【0071】
(表面層の作製)
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が16質量%となるように調整した。この溶液714.3質量部(アクリルポリオール固形分100質量部)に対して、表10に示す成分を加え、ウレタン樹脂の混合溶液を調整した。
【0072】
【表10】

【0073】
このとき、ブロックイソシアネート混合物は、イソシアネート量としては「NCO/OH=1.0」となる量であった。
(*1)変性ジメチルシリコーンオイル「SH28PA」(商品名、東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製)
(*2)ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とイソホロンジイソシアネート(IPDI)の各ブタノンオキシムブロック体の7:3混合物
【0074】
内容積450mLのガラス瓶に上記混合溶液200gを、メディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gと共に入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて48時間分散した。分散した後、ガラスビーズを除去して表面層用塗布溶液を得た。上記表面層塗布液を用いて、弾性ローラに1回ディッピング塗布を行った。ここで、ディッピング塗布は以下の通りである。浸漬時間9秒、ディッピング塗布引き上げ速度は、初期速度20mm/s、最終速度2mm/s、その間は時間に対して直線的に速度を変化させて行った。塗布後に常温で30分間以上風乾し、熱風循環乾燥機にて80℃で1時間、更に160℃で1時間乾燥し、弾性層上に表面層を形成した帯電ローラ1を得た。また、表面層の厚さは10μmであった。
【0075】
[帯電ローラの抵抗測定]
作成した帯電ローラの抵抗を測定した。
電気抵抗の測定方法を示す。図4(a)の様に、帯電ローラの両端の軸1を荷重のかかった軸受け33aと33bとにより感光体と同じ曲率の円柱形金属32に対して帯電ローラが平行になるように当接させる。次に図4(b)の様に、図示しないモータにより円柱形金属32を回転させ、ローラを円柱形金属32に当接させたまま従動回転させながら安定化電源34から直流電圧−200Vを印加したときに帯電ローラに流れる電流を電流計35によって測定した。そして測定値に基づいて帯電ローラの抵抗を計算した。本発明では軸の両端にそれぞれ4.9Nの力を加えて、直径φ30mmの金属円柱に当接させ、該金属円柱の周速45mm/秒で回転させた。
なお、実施例1の帯電ローラをN/N(常温常湿:23℃/55%RH)環境に24時間以上放置した後、電気抵抗を測定したところ、1.6×10Ωであった。
【0076】
[画像評価]
図5に示す構成を有する電子写真装置であるキヤノン株式会社キヤノン社製カラーレーザージェットプリンター(LBP5400)を記録メディアの出力スピード200mm/秒(A4縦出力)に改造して用いた。画像の解像度は、600dpi、1次帯電の出力は直流電圧−1100Vである。
なお、図6に示す構成を有するプロセスカートリッジとして、上記プリンタ用のプロセスカートリッジ(ブラック用)を用いた。
【0077】
上記プロセスカートリッジから帯電ローラを取り外し、作製した帯電ローラ1をセットした。帯電ローラは、感光体に対し、一端で4.9N、両端で合計9.8Nのバネによる押し圧力で当接させた(図7)。このプロセスカートリッジを40℃、95%RH環境に1ヶ月間放置し、その後、前記環境から取り出した。その後、取り出したプロセスカートリッジを、N/N環境下(23℃、50%RH)、L/L環境下(15℃、10%RH)に24時間馴染ませた後、電子写真装置に組み込んで画像評価を行った。
【0078】
ハーフトーン画像(感光体の回転方向と長手方向に幅1ドット、間隔2ドットの直線を描いた画像)を、出力し、評価した。出力画像の評価結果を表12に示す。表12中、ランクAは黒いスジ状の画像が発生しない。ランクBはハーフトーン画像の一部に、軽微な黒いスジ状の画像が発生しているのみである。ランクCはハーフトーン画像の一部に、軽微な黒いスジ状の画像が帯電ローラピッチで確認できるが、実用上問題のない画像である。ランクDはハーフトーン画像に黒いスジ状の画像が目立ち、画質の低下が認められる画像である。
本実施例の帯電ローラ1については、N/N環境、L/L環境ともに黒いスジ状の画像は発生せず、良好な画像が得られた。
【0079】
(実施例2〜63)
実施例1において、ポリアルキレンオキサイドの種類を表11〜12に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして帯電ローラ2〜63を作製した。実施例1と同様にして帯電ローラ2〜63を評価した。結果を表13〜14に示す。
【0080】
(比較例1)
実施例1において、表12に示すとおりに変更し、実施例1と同様にして帯電ローラ64を作製した。実施例1と同様にして帯電ローラ64を評価した。結果を表15に示す。
【0081】
(比較例2)
実施例1において、表12に示すとおりに変更し、ポリアルキレンオキサイドを重量平均分子量が600であるポリエチレングリコールに変更した。これらの変更以外は、実施例1と同様にして帯電ローラ65を作製した。実施例1と同様にして帯電ローラ65を評価した。結果を表15に示す。
【0082】
(比較例3)
実施例1において、表12に示すとおりに変更し、ポリアルキレンオキサイドを未架橋のエピクロルヒドリンゴム(エピクロルヒドリン/エチレンオキサイド2元共重合体 50モル%/50モル% ムーニー粘度65)に変更した。これらの変更以外は、実施例1と同様にして帯電ローラ66を作製した。実施例1と同様にして帯電ローラ66を評価した。結果を表15に示す。
【0083】
(比較例4)
比較例2において、イオン導電粒子を添加していないこと以外は、比較例2と同様にして帯電ローラ67を作製した。実施例1と同様にして帯電ローラ67を評価した。結果を表15に示す。
【0084】
(比較例5)
比較例4において、ゴム種をヒドリンゴム(エピクロルヒドリン/エチレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル3元共重合体 48モル%/48モル%/4モル% ムーニー粘度 65)に変更した。かかる変更以外は、比較例4と同様にして帯電ローラ68を作製した。実施例1と同様にして帯電ローラ68を評価した。結果を表15に示す。
【0085】
【表11】

【0086】
【表12】

【0087】
SBR JSR1507
(結合スチレン量 23.5%、ジエン量66.5%、ムーニー粘度 35)
EPDM エスプレン505
(エチレン/プロピレン/エチリデンノルボルネン共重合体 ジエン量10%、ムーニー粘度 47)
BR JSR BR01
(ムーニー粘度 45)
NBR N230SV
(結合アクリロニトリル量 33.5%、ジエン量 66.5%、ムーニー粘度 32)
【0088】
ポリアルキレンオキサイド1
(EO/PO付加型 ポリエーテルポリオール、重量平均分子量5000、EO比 70モル%)
ポリアルキレンオキサイド2
(EO/PO付加型 ポリエーテルポリオール、重量平均分子量4000、EO比 50モル%)
ポリアルキレンオキサイド3
(EO/PO付加型 ポリエーテルポリオール、重量平均分子量3000、EO比 70モル%)
ポリアルキレンオキサイド4
(EO/PO付加型 ポリエーテルポリオール、重量平均分子量3000、EO比 30モル%)
ポリアルキレンオキサイド5
(EO/PO付加型 ポリエーテルポリオール、重量平均分子量10000、EO比 80モル%)
【0089】
ポリエチレングリコール
(重量平均分子量600)
未架橋ヒドリンゴム
(エピクロルヒドリン/エチレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル3元共重合体 50モル%/50モル%、ムーニー粘度65)
カーボンブラック1
(1次平均粒子径 28nm、DBP吸油量 87cm3/100g)
カーボンブラック2
(1次平均粒子径 30nm、DBP吸油量 350cm3/100g )
導電性酸化亜鉛
(アルミニウムをドープした酸化亜鉛 一次粒子径 150nm)
【0090】
【表13】

【0091】
【表14】

【0092】
【表15】

【0093】
上記表13〜15の結果に示すように、本発明の帯電ローラは、黒いスジ状の画像(Cセット画像)の発生を抑制し、良好な画像が提供でき、電子写真装置、プロセスカートリッジに組み込んで好ましいものである。
【符号の説明】
【0094】
1 導電性基体
2 弾性層
3 表面層
4 電子写真感光体
5 帯電部材(帯電ローラ)
6 現像ローラ
7 印刷メディア
8 転写ローラ
9 定着部
10 クリーニングブレード
11 露光
12 帯電前露光装置
13 弾性規制ブレード
14 トナー供給ローラ
18、19、20 電源
30 トナーシール
32 円柱形金属
33 軸受け
34 電源
35 電流計
36 送りロール
37 クロスヘッド
38 押出し機
39 帯電部材予備成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体および弾性層を有する帯電部材であって、
該弾性層は、
ジエン系ゴム、
該ゴム中に分散されてなる電子導電粒子、
該ゴム中に分散されてなるポリアルキレンオキサイドを含むイオン導電粒子、
および、
重量平均分子量が3000乃至10000のポリアルキレンオキサイドを含み、
該ポリアルキレンオキサイドは、ポリエチレンオキサイドを分子内に含むことを特徴とする帯電部材。
【請求項2】
前記イオン導電粒子が、ポリアルキレンオキサイド100モル%に対して、ポリエチレンオキサイドを70モル%以上90モル%以下の割合で含む請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
前記弾性層が、前記イオン導電粒子を、前記ジエン系ゴムに対して80質量部以上、200質量部以下の割合で含む請求項1または2に記載の帯電部材。
【請求項4】
前記電子導電粒子がカーボンブラックであり、
前記弾性層が、該電子導電粒子をジエン系ゴムに対して、20質量部以上、60質量部以下の割合で含む請求項1乃至3の何れか一項に記載の帯電部材。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の帯電部材と、感光体とを備え、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されていることを特徴とするプロセスカ−トリッジ。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の帯電部材と、感光体とを備えていることを特徴とする電子写真装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−220576(P2012−220576A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83858(P2011−83858)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】