説明

帯電部材、プロセスカートリッジおよび電子写真装置

【課題】弾性層からの低分子量成分の染み出しをより確実に抑制することができる表面層を備えた帯電部材を提供する。
【解決手段】基体、弾性層及び表面層を有し、該表面層は、Si−O−Ta結合を有し、かつ、下記構造式(1)で示される構成単位および下記構造式(2)で示される構成単位を有している高分子化合物を含有している。
【化1】


TaO5/2 (2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置に用いられる帯電部材、それを用いたプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体と当接して該感光体を帯電させる帯電部材は、感光体と帯電部材とのニップ幅を確保するためにゴムを含む弾性層を有する構成を取るのが一般的である。かかる弾性層中には低分子量成分が含まれているため、長期の使用によって、当該低分子量成分が帯電部材の表面にブリーディングし、感光体の表面に付着することがある。そして、当該低分子量成分が付着した感光体を用いて形成された電子写真画像には、スジ状のムラが現れることがある。
【0003】
また、かかる現像は、高温高湿環境下で、長期間に亘って停止した状態に置かれた電子写真装置を用いて電子写真画像を形成した場合に特に顕著に生じる。
【0004】
このような弾性層中の低分子量成分のブリーディングに対して、特許文献1には、弾性層の周面を有機−無機ハイブリッド被膜で被覆し、低分子量成分の表面へのブリーディングを抑制した帯電ロールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−173641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らが特許文献1に記載される有機−無機ハイブリッド被膜を備えた帯電ロールについて検討したところ、当該有機−無機ハイブリッド被膜は架橋密度が小さかった。これは、当該有機−無機ハイブリッド被膜が可撓性を重視しているためであると思われる。そのため、低分子量成分のブリーディングを確実に抑制するためには、当該有機−無機ハイブリッド被膜の膜厚をサブミクロン以上とする必要があることを認識した。
【0007】
ここで、帯電効率の観点からは、帯電部材の表面層の膜厚は薄い方が好ましい。また、均一な厚さの表面層を形成する上でも、表面層の膜厚は薄い方が好ましい。
【0008】
そこで、本発明の目的は、弾性層からの低分子量成分の染み出しをより確実に抑制することができる表面層を備えた帯電部材を提供することにある。また、本発明の他の目的は、高品位な電子写真画像を安定して形成することのできるプロセスカートリッジ、および電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明よれば、基体、弾性層及び表面層を有しており、該表面層が、Si−O−Ta結合を有し、かつ、下記構造式(1)で示される構成単位および下記構造式(2)で示される構成単位を有している高分子化合物を含有している帯電部材が提供される:
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
[構造式(1)中、R1、Rは各々独立して構造式(3)〜(6)のいずれかを示す。
【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

【0015】
【化5】

【0016】
【化6】

【0017】
(構造式(3)〜(6)中、R3〜R7、R10〜R14、R19、R20、R25およびR26は各々独立して水素、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を示す。R8、R9、R15〜R18、R23、R24およびR29〜R32は各々独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R21、R22、R27およびR28は各々独立して水素、酸素、炭素数1〜4のアルコキシ基、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。n、m、l、q、sおよびtは各々独立して1以上、8以下の整数を示す。pおよびrは各々独立して4以上、12以下の整数を示す。xおよびyは各々独立して0又は1を示す。記号「*」は構造式(1)中のケイ素原子への結合部位を示し、記号「**」は構造式(1)中の酸素原子への結合部位を示す。)]
また、本発明によれば、上記帯電部材と、該帯電部材に当接して配置されている電子写真感光体とを備え、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されているプロセスカートリッジが提供される。
【0018】
更に、本発明によれば、上記帯電部材と、該帯電部材に当接して配置されている電子写真感光体とを備える電子写真装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、薄い膜厚であってもブリーディングをより確実に抑制することができる表面層を備えた帯電部材を得ることができる。また、本発明によれば、高品位な電子写真画像を安定して提供可能な電子写真装置およびプロセスカートリッジを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る帯電部材の構成図である。
【図2】本発明に係る電子写真装置の構成図である。
【図3】実施例1で調製した縮合物の17O−NMRスペクトルである。
【図4】実施例1で調製した表面層形成用塗料から形成される硬化膜の29Si−NMRスペクトルを示す図である。
【図5】実施例1で調製した表面層形成用塗料から形成される硬化膜の13C−NMRスペクトルを示す図である。
【図6】本発明の帯電部材の表面層の形成工程における架橋反応の一例を示す説明図である。
【図7】(A)本発明の帯電部材の表面層に含有される高分子化合物の化学構造の一例を示す図である。(B)本発明の帯電部材の表面層に含有される高分子化合物の化学構造の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の帯電部材は、基体、弾性層及び表面層を有している。その一例として、ローラー形状を有するものを図1に示す。図1はローラーの軸に直交する方向の断面図であり、この帯電ローラーは、気体101上に弾性層102、及び表面層103を順次積層した構造を有する。帯電ローラーとしては、基体と弾性層との間に他の層が存在していてもよい。
【0022】
[基体]
基体としては、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、又はニッケルの金属や、これらの合金等の基体を用いることができる。
【0023】
[弾性層]
弾性層を形成する材料としては、従来の帯電部材の弾性層に用いられているゴムや熱可塑性エラストマーを1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。ゴムの具体例を以下に挙げる。ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム。スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、アクリロニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、またはアルキルエーテルゴム等。
【0024】
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー等が挙げられる。具体的には、スチレン系エラストマーの市販品としては、三菱化学(株)製の商品名「ラバロン」、クラレ(株)製の商品名「セプトンコンパウンド」等が挙げられる。オレフィン系エラストマーの市販品としては、例えば、以下のものが挙げられる。三菱化学(株)製の商品名「サーモラン」、三井石油化学工業(株)製の商品名「ミラストマー」、住友化学工業(株)製の商品名「住友TPE」、アドバンストエラストマーシステムズ社製の商品名「サントプレーン」等。
【0025】
弾性層は、導電剤を適宜使用することによって所定の導電性を有するように構成されている。弾性層の電気抵抗値の目安としては、10Ω以上、10Ω以下であり、特には10Ω以上、10Ω以下である。弾性層に用いる導電剤の例としては、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、帯電防止剤、電解質等が挙げられる。また、弾性層の硬度は、帯電部材と感光体とを当接させた際の帯電部材の変形を抑制する観点から、アスカーCが70度以上であることが好ましく、より好ましくは73度以上、92度以下である。帯電部材の形状を決定する弾性層は、中央部の層厚が端部の層厚よりも厚い、いわゆるクラウン形状にすることが好ましい。
【0026】
[表面層]
上記表面層は、Si−O−Ta結合を有し、かつ、下記構造式(1)で示される構成単位と、下記構造式(2)で示される構成単位とを有する高分子化合物を含む。
【0027】
【化7】

【0028】
TaO5/2 (2)
式(1)中、R1、Rは各々独立して、構造式(3)〜(6)を示す。
【0029】
【化8】

【0030】
【化9】

【0031】
【化10】

【0032】
【化11】

【0033】
構造式(3)〜(6)中、R3〜R7、R10〜R14、R19、R20、R25およびR26は各々独立して水素、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、カルボニル基、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を示す。R8、R9、R15〜R18、R23、R24およびR29〜R32は各々独立して水素または炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基を示す。R21、R22、R27およびR28は各々独立して水素、酸素、炭素数1〜4のアルコキシ基、または炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基を示す。n、m、l、q、s、およびtは各々独立して1以上、8以下の整数を示す。pおよびrは各々独立して4以上、12以下の整数を示す。xおよびyは各々独立して0又は1を示す。記号「*」は構造式(1)中のケイ素原子への結合部位を示し、記号「**」は構造式(1)中の酸素原子への結合部位を示す。
【0034】
上記高分子化合物の一例として、構造式(1)中のRが構造式(3)で示され、Rが構造式(4)で示されるときの構造の一部を図7Aに示す。また、上記高分子化合物の一例として、構造式(1)中のRが構造式(3)で示され、Rが構造式(6)で示されるときの構造の一部を図7Bに示す。
【0035】
上記高分子化合物は、シロキサン結合およびケイ素原子に結合した有機鎖部分が互いに重合している構造を有することに加え、Si−O−Ta結合を有することによって非常に緻密な架橋構造を構成している。そのため、このような高分子化合物を含む表面層は、膜厚が薄くてもブリーディングを高度に抑制し得るものとなる。
【0036】
上記高分子化合物における構造式(1)中、RおよびRとしては、各々独立して下記構造式(7)〜(10)で示される構造から選ばれる何れかであることが好ましい。このような構造とすることで、表面層をより強靭で耐久性に優れたものとすることができる。特に下記構造式(8)または(10)に示されるエーテル基を含む構造は、表面層の弾性体層への密着性をより一層向上させることができる。
【0037】
【化12】

【0038】
【化13】

【0039】
【化14】

【0040】
【化15】

【0041】
構造式(7)〜(10)中、N、M、L、Q、SおよびTは各々独立して1以上、8以下の整数、x’およびy’は各々独立して0又は1を示す。記号「*」は構造式(1)中のケイ素原子への結合部位を示し、記号「**」は構造式(1)中の酸素原子への結合部位を示す。
【0042】
上記高分子化合物に含有される、タンタルとケイ素の原子数比、Ta/Siが0.1以上、5.0以下であることが好ましい。Ta/Siが上記数値範囲内にある場合、高分子化合物の脆弱化を抑制することができる。その結果、かかる高分子化合物を含む表面層は、弾性層からの低分子量成分のブリーディングをより一層確実に抑制できると共に、耐久性にも優れたものとなる。
【0043】
このような高分子化合物は、下記構造式(11)で示される加水分解性シラン化合物と、下記構造式(12)で示される加水分解性タンタル化合物とを脱水縮合させて、加水分解縮合物を得る。その後、加水分解縮合物が有するラジカル重合可能な基、例えば、エポキシ基を反応させて架橋を形成して得ることができる。縮合は、これらの加水分解性化合物を混合し、適宜加熱して行うことができる。
【0044】
33−Si(OR34)(OR35)(OR36) (11)
Ta(OR37)(OR38)(OR39)(OR40)(OR41) (12)
上記構造式(11)中、R33は下記構造式(13)〜(16)で示される構造から選ばれる何れかを示す。R34〜R36は各々独立して炭素数1〜4のアルキル基を示す。構造式(12)中、R37〜R41は各々独立して炭素数1〜9のアルキル基を示す。
【0045】
【化16】

【0046】
【化17】

【0047】
【化18】

【0048】
【化19】

【0049】
上記構造式(13)〜(16)中、R42〜R44、R47〜R49、R54、R55、R60およびR61は各々独立して水素、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、クロロカルボニル基またはアミノ基を示す。R45、R46、R50〜R53、R58、R59およびR64〜R67は各々独立して水素、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示す。R56、R57、R62およびR63は各々独立して水素、炭素数1〜4のアルコキシ基または炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示す。また、CR4546、CR5051、CR5253、CR5859、CR6465、CR6667がカルボニル基でもよい。更に、R42、R43、R44、若しくは(CR4546n’中の炭素の少なくともいずれか2つ、R47、R48、R49、若しくは(CR5051m’中の炭素の少なくともいずれか2つは共同してシクロアルカンを形成してもよい。また、R54とR55、または、R60とR61は共同してシクロアルカンを形成してもよい。n’、m’、l’、q’、s’およびt’は各々独立して1以上、8以下の整数を示す。p’およびr’は各々独立して4以上、12以下の整数を示す。また、記号「*」は構造式(11)のケイ素原子との結合位置を示す。
【0050】
上記高分子化合物は、構造式(11)および(12)で示される加水分解性化合物と、下記構造式(17)で示される加水分解性シラン化合物との加水分解縮合物の架橋物であることが好ましい。このような架橋物は、合成段階での一般式(11)、(12)の溶解性、塗工性、更に硬化後の膜物性として、電気特性を向上させることが可能となる。特にR68が炭素数1〜21のアルキル基の場合、溶解性、塗工性の改善として好ましい。また、R68がフェニル基の場合は、電気特性、特に体積抵抗率向上に寄与するので好ましい。
【0051】
68−Si(OR69)(OR70)(OR71) (17)
式(17)中、R68は炭素数1〜21のアルキル基、またはフェニル基を示し、R69〜R71は各々独立して炭素数1〜6のアルキル基を示す。また、R68がフェニル基である加水分解性シラン化合物を含む場合、R68が炭素数1〜21のアルキル基である加水分解性シラン化合物と併用することが、加水分解縮合反応を通して構造が変化しても溶媒との相溶性が良好であることから、好ましい。
【0052】
上記高分子化合物は、このような加水分解性縮合物を含有する表面層形成用塗料を調製し、これを塗工して塗膜を形成した後、架橋反応を行い架橋物として得ることができる。
【0053】
表面層形成用塗料は、以下の工程によって調製することができる。
(1)工程
モノマーとしての式(11)で示される加水分解性シラン化合物(A)と、式(17)で示される加水分解性シラン化合物(B)と、式(12)で示される加水分解性タンタル化合物(C)とを準備する。
【0054】
(2)工程
加水分解性シラン化合物(A)と加水分解性シラン化合物(B)を混合し、水(D)、アルコール(E)を添加して、加熱還流により加水分解・縮合を行い、加水分解性シラン化合物の縮合物を得る。
【0055】
(3)工程
得られた液に、加水分解性タンタル化合物(C)を添加し、混合し、適宜加熱して、加水分解・縮合を行い、加水分解性シラン化合物と加水分解性タンタル化合物の縮合物(シランタンタル縮合物ともいう。)を生成させ、縮合物含有液を得る。
【0056】
(4)工程
縮合物含有液に光重合開始剤(G)を添加、混合する。
【0057】
上記(2)工程において、加水分解性シラン化合物(B)は必要に応じて用いればよく、また、加水分解性タンタル化合物(C)を、加水分解性化合物(A)等と同時に添加することにより、(3)工程を省略することもできる。
【0058】
以下、(1)工程、(2)工程、および(4)工程について詳述する。
(1)工程
加水分解性シラン化合物(A)の具体例を以下に示す。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
4-(1,2-エポキシブチル)トリメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン、8-オキシラン-2-イルオクチルトリメトキシシラン、8-オキシラン-2-イルオクチルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン。3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、1-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、1-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン。3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルオキシプロピルトリエトキシシラン。
【0060】
加水分解性シラン化合物(B)の具体例を以下に示す。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン。プロピルトリプロポキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリプロポキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、デシルトリプロポキシシラン。フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン。
【0062】
加水分解性ハフニウム化合物(C)の具体例を以下に示す。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
タンタルペンタメトキシド、タンタルペンタエトキシド、タンタルペンタn−プロポキシド、タンタルペンタi−プロポキシド、タンタルn−ブトキシド、タンタルt−ブトキシド、タンタルフェノキシド。
【0064】
これらの加水分解性シラン化合物(A)、加水分解性シラン化合物(B)、加水分解性タンタル化合物(C)の使用割合は、モル比において、式(20)を満たすことが好ましい。
【0065】
0.1≦C/(A+B)≦5.0 (20)
式(20)中、Aは、式(11)で示される加水分解性シラン化合物(A)のモル数を示す。Bは、式(17)で示される加水分解性シラン化合物(B)のモル数を示す。Cは、式(12)で示される加水分解性タンタル化合物(C)のモル数を示す。
【0066】
そして、C/(A+B)の値が0.1以上であれば、架橋密度が高く、ブリーディング効果の高い表面層を得ることができ、5.0以下であれば、表面層形成用塗料に白濁や沈殿が生じるのを抑制し、保存性を向上させることができる。更に、式(21)を満たすことが好ましい。
【0067】
0.5≦C/(A+B)≦3.0 (21)
(2)工程
添加する水(D)の添加量は、加水分解性シラン化合物(A)及び(B)の合計のモル数(A+B)に対する水のモル数Dとの比、Ror(D/(A+B))が、0.3以上、6.0以下であることが好ましい。Rorは1.2以上3.0以下であることがより好ましい。
【0068】
Rorが0.3以上であれば、縮合反応が充分に行われ、未反応のモノマーが残存するのを抑制し、架橋密度の高い膜が得られる。Rorが6.0以下であれば、縮合反応の速度が速く、表面層形成用塗料に白濁や沈殿が生成するのを抑制することができ、また、極性が高くなって縮合物との相溶性が低下するのを抑制することができる。アルコール(E)は、シランタンタル縮合物を相溶させるために用いられる。
【0069】
アルコール(E)としては、第1級アルコール、第2級アルコール、第3級アルコール、第1級アルコールと第2級アルコールの混合系、第1級アルコールと第3級アルコールの混合系を用いることが好ましい。アルコールとして、特に、エタノール、メタノールと2−ブタノールの混合溶液、エタノールと2−ブタノールの混合溶液が縮合物との相溶性や塗工性の観点から好ましい。
【0070】
(4)工程
光重合開始剤(G)は、シランタンタル縮合物を架橋させるために用いる。光重合開始剤(G)としては、ルイス酸あるいはブレンステッド酸のオニウム塩、カチオン重合触媒を用いることもできる。カチオン重合触媒としては、例えば、ボレート塩、イミド化合物、トリアジン化合物、アゾ化合物、過酸化物等が挙げられる。
【0071】
カチオン重合触媒としては、感度、安定性及び反応性の観点から、芳香族スルホニウム塩や芳香族ヨードニウム塩が好ましい。特に好ましいカチオン重合触媒として、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム塩や、式(18)で示される化合物(商品名:アデカオプトマ−SP150、旭電化工業(株)製)を挙げることができる。
【0072】
【化20】

【0073】
また、式(19)で示される化合物(商品名:イルガキュア261、チバスペシャルティーケミカルズ社製)も好適に用いることができる。
【0074】
【化21】

【0075】
光重合開始剤(G)は、表面層用塗料への相溶性を向上させるため、予めアルコールやケトン等の溶媒、例えば、メタノールやメチルイソブチルケトンに溶解して用いることが好ましい。
【0076】
更に、表面層形成用塗料は塗布性を向上させるため、溶剤を用いて塗工に適した濃度に調整する。用いる溶剤としては、例えば、エタノール、メタノール、2−ブタノール等のアルコールや、酢酸エチルや、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトンを挙げることができ、これらは混合して用いることもできる。特に、エタノールと2−ブタノールの混合液、エタノールと2−ブタノールの混合液が好ましい。
【0077】
表面層形成用塗料の塗布方法としては、ロールコーターを用いた塗布、浸漬塗布、リング塗布等の方法を使用することができる。
【0078】
上記方法により弾性層上に表面層形成用塗料を塗布して形成した塗膜中で、シランタンタル縮合物を架橋させる。架橋は、活性エネルギー線を照射し、光重合開始剤(G)によってシランタンタル縮合物中のエポキシ基を開裂、重合させて形成することができる。使用する活性エネルギー線としては、紫外線が、低温で光重合開始剤(G)のラジカルを発生させ、架橋反応を進行させることができることから、好ましい。
【0079】
低温で架橋反応を進行させることにより、塗膜から溶剤が急速に揮発するのを抑制し、塗膜に相分離、シワが発生するのを抑制し、弾性層との密着強度が高い表面層を形成することができる。弾性層との密着強力が高い表面層は、帯電部材が温湿度の変化が急激な環境下で使用され、温湿度の変化による弾性層の体積が変動しても、シワやクラックの発生を抑制することができる。その上、架橋反応の進行時に弾性層の熱劣化を抑制することができるため、製造工程における弾性層の電気的特性の低下を抑制することもできる。
【0080】
紫外線の供給源としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、エキシマUVランプ等を用いることができ、これらのうち、150nm以上480nm以下の波長の紫外線を供給するものが好ましい。紫外線は、照射時間、ランプ出力、ランプと表面層間の距離によって、供給量を調整して照射することができ、また、照射時間内で紫外線の照射量に勾配をつけることもできる。紫外線の積算光量は、適宜選択することができる。紫外線の積算光量は以下の式から求めることができる。
【0081】
紫外線積算光量[mJ/cm]=紫外線強度[mW/cm]×照射時間[s]
低圧水銀ランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計UIT−150−AやUVD−S254(いずれも商品名)を用いて測定することができる。また、エキシマUVランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計UIT−150−AやVUV−S172(いずれも商品名)を用いて測定することができる。
【0082】
このように形成される表面層の厚さは、10nm以上100nm以下であることが好ましい。厚さが10nm以上であれば、弾性層からのブリーディングの抑制効果をより確実に得ることができる。また、表面層の形成時の表面層形成用塗料の塗布むらを抑制し、均一な塗膜を形成することができる。また、外観、コスト面からも好ましい。
【0083】
上記表面層中のシラン化合物の縮合率DCは、加水分解性シラン化合物(A)、加水分解性シラン化合物(B)、加水分解性タンタル化合物(C)の使用モル比が式(20)を満たす場合、50%を超え、75%以下であることが好ましい。ここでDCはケイ素原子に結合する総ての基に対する縮合度合いを表す指標であり、式(22)を用いて算出する。
【0084】
【数1】

【0085】
式(22)中、nは加水分解性シラン化合物が有する加水分解可能な官能基、例えばアルコキシ基の数であり、上記加水分解性シラン化合物(A)、(B)の場合、3であり、αをTで示すと、式(23)から求めることができる。
【0086】
【数2】

【0087】
ここでT〜Tは、それぞれ加水分解性シラン化合物の縮合した加水分解部の数が0〜3である成分量を示す。DCが50%を超えれば、ブリーディング抑制効果の高い緻密な膜が得られる。上記加水分解性官能基が3のシラン化合物の総ての官能基が縮合した場合、縮合率は75%となる。縮合率が75%を超える場合、塗料は、高粘度になり塗工性が低下したり、白濁、又は分離が生じてしまう。
【0088】
上記高分子化合物の形成過程において生じる架橋および硬化反応について図6を用いて説明する。例えば、前記加水分解性シラン化合物(A)としての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランと、加水分解性タンタル化合物(C)とを加水分解させて得られるシランタンタル縮合物は、カチオン重合可能な基としてエポキシ基を有する。このようなシランタンタル縮合物のエポキシ基は、カチオン重合触媒(図6中、R+-と記載)の存在下で、エポキシ環が開環し、連鎖的に重合が進む。その結果、TaO5/2を含むポリシロキサン同士が架橋し、硬化して上記高分子化合物が形成される。図6中、nは1以上の整数を表す。
【0089】
[電子写真装置およびプロセスカートリッジ]
本発明の帯電部材を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の一例を図2に示す。円筒状の電子写真感光体1は本発明の帯電部材3(図2においてはローラー形状の帯電部材)に当接して配置されて、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。回転駆動される電子写真感光体1の表面は帯電部材3により、正または負の所定電位に均一に帯電される。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の露光手段(不図示)から出力される露光光(画像露光光)4を受けることで、電子写真感光体1の表面に、目的の画像に対応した静電潜像が形成される。
【0090】
帯電部材による感光体表面の帯電の際、帯電部材3には電圧印加手段(不図示)から直流電圧のみの電圧あるいは直流電圧に交流電圧を重畳した電圧が印加される。後述の実施例においては、帯電部材には直流電圧のみの電圧(−1000V)を印加した。また、後述の実施例において、暗部電位は−500V、明部電位は−150Vとした。感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5の現像剤に含まれるトナーにより現像(反転現像もしくは正規現像)されてトナー像となる。現像手段としては、例えば、ジャンピング現像手段、接触現像手段または磁気ブラシ手段などが挙げられるが、トナーの飛散性改善の観点から、接触現像手段が好ましく、後述の実施例においては、接触現像手段を採用した。電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像は、転写手段(転写ローラーなど)6からの転写バイアスによって、転写材(紙など)Pに順次転写されていく。転写材Pは、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1と転写手段6との間の当接部に電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて供給される。トナー像が転写された転写材Pは、感光体1の表面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。トナー像転写後の感光体1の表面は、クリーニング手段(クリーニングブレードなど)7によって転写残りの現像剤(トナー)の除去を受けて清浄面化される。さらに、前露光手段(不図示)からの前露光光(不図示)により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、帯電手段が接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0091】
本発明のプロセスカートリッジは、上述の感光体1と、帯電部材3とを備えたものであり、その他、現像手段5、転写手段6およびクリーニング手段7などから選択した手段を一体に結合して構成することができる。そして、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンター等の電子写真装置本体に対して着脱可能に構成する。図2に示す電子写真装置においては、電子写真感光体1、帯電部材3、現像手段5およびクリーニング手段7を一体に支持してカートリッジ化してプロセスカートリッジ9としている。これを電子写真装置本体のレール等の案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在としている。
【実施例】
【0092】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。以下に記載する「部」は「質量部」を意味する。
[実施例1]
[1]縮合物の調製および評価
表1に示す成分を混合した後、室温で30分攪拌した。
【0093】
【表1】

【0094】
次に、オイルバスを用いて、温度120℃で20時間加熱還流を行って、縮合物中間体1を得た。縮合物中間体1の濃度は固形分(加水分解性シラン化合物が総て脱水縮合したと仮定したときの溶液全質量に対する質量比率)として28.0質量%であった。
【0095】
次に、縮合物中間体1と、下記表2に示す材料とを混合し、室温で3時間攪拌して、液状縮合物1(シランタンタル縮合物)を得た。一連の攪拌は750rpmで行った。Ta/Si=1.00である。
【0096】
【表2】

【0097】
[評価1]
(1)Si−O−Ta結合の有無
縮合物1について、Taの縮合状態を以下のように測定した。測定用試料として、縮合物1の合成の際に用いたイオン交換水を17O−HO(7〜9.9atm%、CIL社製)に代えた他は、縮合物1と同様にして縮合物1(以降、「評価用縮合物1」とする)を合成した。
【0098】
得られた液状の評価用縮合物1について、核磁気共鳴装置(Avance500 BRUKER社製)を用いて17O−NMR測定を行った。その結果、図3に示すように、170〜200ppmにSi−17O−Taのピークと、410〜460ppmにTa−17O−Taのピークを有する基準スペクトルを得た。次いで、評価用縮合物1について17O−NMR測定を行い、得られたスペクトルから、Si−O−Ta結合の存在の有無を検出した。
(2)Si−O−Ta結合およびTa−O−Ta結合の数に対するTa−O−Ta結合の数の比の算出
上記評価[1](1)にて得た評価用縮合物1の17O−NMRのスペクトルにおける各ピークの積分値より、Si−O−Ta結合およびTa−O−Ta結合の数に対するTa−O−Ta結合の数の比、即ち、(Ta−O−Ta)/{(Si−O−Ta)+(Ta−O−Ta)}を算出した。
【0099】
[2]コーティング液の調製および評価
縮合物1の25gに、光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩(商品名:アデカオプトマー SP−150、旭電化工業(株)製)のメチルイソブチルケトン10質量%液の2.00gを添加して、コーティング液1を調製し、以下の評価[2]、[3]を行った。結果を表9に示す。
【0100】
[評価2]
コーティング液1の安定性を、以下の基準により評価した。結果を表9に示す。
A:1ヶ月放置しても白濁・沈殿が無い状態。
B:2週間程度から白濁気味になる状態。
C:1週間程度から白濁気味になる状態。
D:合成時に白濁・沈殿を生じる状態。
【0101】
[評価3]
以下の手順によりコーティング液1の硬化膜を形成し、その化学構造を分析し、また、縮合度(DC%)を算出した。即ち、脱脂した厚さ100μmのアルミシート上にコーティング液1を塗布した。乾燥後、低圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング(株)製)を用い254nmの波長の紫外線を積算光量が9000mJ/cmになるように照射し、コーティング液1を架橋、硬化し硬化膜を得た。得られた硬化膜をガラス板で削り取り、メノウ乳鉢を用いて粉砕し、測定用試料粉末を作成した。この試料を核磁気共鳴装置(JMN−EX400 JEOL社)を用いて29Si−NMRスペクトルを測定した。得られたスペクトルデータを図4に示す。検出されたスペクトルにおいて、−46〜−40ppmのピークをT成分、−55〜−47ppmのピークをT成分、−61〜−54ppmのピークをT成分、−71〜−61ppmのピークをT成分とする。ここで、T成分とは、有機基との結合を1つ有するケイ素原子が、酸素原子を介して他のケイ素原子、又は、タンタル原子との結合を3つ有する状態を示す。これらの検出値に基づき式(23)からSiに結合する加水分解官能基の縮合度を測定した。
【0102】
また試料の13C−NMRスペクトルを測定した。得られたスペクトルを図5に示す。このスペクトルから硬化膜中にエポキシ基が存在せず、総てのエポキシ基が開環したことを確認した。以上のことより、コーティング液1から形成される硬化膜において、原料のグリシドキシプロピルエトキシシラン化合物中のエポキシ基は総て開環、架橋し、且つ、式(1)中の−SiO3/2の構成単位を有していることを確認した。この評価3は、後述する実施例において、同様に確認できた。
【0103】
[3]帯電ローラーの作製
[表面層形成用塗料1−1〜1−7の調製]
上記コーティング液1を、エタノールと2−ブタノールの混合液(エタノール:2−ブタノール=1:1(質量比))で希釈し、固形分濃度が、1.0質量%、0.1質量%、0.2質量%、0.5質量%、3.5質量%、4.0質量%、および5.0質量%の表面層形成用塗料1−1〜1−7を調製した。
【0104】
[弾性ローラーの作製]
【0105】
【表3】

【0106】
上記表3に示す成分を、6L加圧ニーダー(TD6−15MDX:トーシン社製)にて、充填率70vol%、ブレード回転数30rpmで24分混合して、未加硫ゴム組成物を得た。この未加硫ゴム組成物174質量部に対して、加硫促進剤としてのテトラベンジルチウラムジスルフィド(商品名:サンセラーTBzTD、三新化学工業(株)製)4.5部、加硫剤としての硫黄1.2部を加えた。そして、ロール径12インチのオープンロールで、前ロール回転数8rpm、後ロール回転数10rpm、ロール間隙2mmで、左右の切り返しを合計20回実施した。その後、ロール間隙を0.5mmとして薄通し10回を行い、弾性層用の混練物Iを得た。
【0107】
次に、直径6mm、長さ252mmの円柱形の鋼製の支持体(表面をニッケルメッキ加工したもの)を準備した。そして、この支持体の、円柱面軸方向中央を挟んで両側115.5mmまでの領域(あわせて軸方向幅231mmの領域)に、金属及びゴムを含む熱硬化性接着剤(商品名:メタロックU−20、(株)東洋化学研究所製)を塗布した。これを30分間温度80℃で乾燥させた後、さらに1時間温度120℃で乾燥させた。混練物Iを、クロスヘッドを用いた押出成形によって、上記接着層付き芯金を中心として、同軸状に外径8.75〜8.90mmの円筒形に同時に押出し、端部を切断して、芯金の外周に未加硫の弾性層を積層した弾性ローラー1を作製した。押出機はシリンダー径70mm(Φ70)、L/D=20の押出機を使用し、押出時の温調はヘッドの温度を90℃とし、シリンダーの温度を90℃とし、スクリューの温度を90℃とした。
【0108】
次に上記ローラー1を異なる温度設定にした2つのゾーンをもつ連続加熱炉を用いて加硫した。第1ゾーンを温度80℃に設定し、30分で通過させ、第2ゾーンを温度160℃に設定し、こちらも30分通過させ、加硫された弾性ローラー2を得た。
【0109】
次に、表面研磨前の弾性ローラー2の弾性層部分(ゴム部分)の両端を切断し、弾性層部分の軸方向幅を232mmとした。その後、弾性層部分の表面を回転砥石で研磨(ワーク回転数333rpm、砥石回転数2080rpm、研磨時間12sec)した。こうすることで、端部直径8.26mm、中央部直径8.50mmのクラウン形状で、表面の十点平均粗さ(Rz)が5.5μmで、振れが18μm、硬度が73度(アスカーC)の弾性ローラー3(表面研磨後の弾性ローラー)を得た。
【0110】
十点平均粗さ(Rz)はJISB0601(1994)に準拠して測定した。振れの測定は、ミツトヨ(株)製高精度レーザー測定機LSM−430vを用いて行った。詳しくは、該測定機を用いて外径を測定し、最大外径値と最小外径値の差を外径差振れとし、この測定を5点で行い、5点の外径差振れの平均値を被測定物の振れとした。 アスカーC硬度の測定は、温度25℃、相対湿度55%RHの環境下で、測定対象の表面にアスカーC型硬度計(高分子計器(株)製)の押針を当接し、1000g加重の条件で行った。
【0111】
[表面層の作製]
7本の弾性ローラー3の弾性層上に表面層形成用塗料1−1〜1−7の各々を、リング塗布(吐出量:0.120ml/s、リング部の弾性ローラーに対する移動速度:85mm/s、総吐出量:0.130ml)した。次いで、各塗膜に対して、254nmの波長の紫外線を積算光量が9000mJ/cmになるように照射し、塗膜を硬化させることによって表面層を形成し、帯電ローラー1−1〜1−7を得た。紫外線の照射には低圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング(株)製)を用いた。得られた各帯電ローラーについて以下の評価[4]〜[6]を行った。結果を表10に示す。
【0112】
[評価4]
帯電ローラーの表面の外観を目視にて観察し、以下の基準により、その塗工性を評価した。結果を表10に示す。
A:帯電ローラーの表面に全く塗工不良がない。
B:帯電ローラーの表面の一部に塗工不良が生じた。
C:帯電ローラーの表面の全領域に塗工不良が生じた。
【0113】
[評価5]
帯電ローラーの表面層の層厚を測定した。得られた帯電ローラーの断面を、走査型透過電子顕微鏡(STEM 製品名:HD−2000、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて測定した。結果を、表10に示す。
【0114】
[評価6]
帯電ローラーを、感光体と共に一体に支持するプロセスカートリッジに組み込んだ。このとき帯電ローラーには合計1kgの加重がかかるようにした。その後高温高湿下(温度40℃、湿度95%RH)に30日間放置した。次いで、当該カートリッジを常温常湿下(温度25℃、湿度50%RH)に72時間放置した。このプロセスカートリッジを、A4サイズの紙を縦方向に出力可能なレーザービームプリンター(商品名:Color LaserJet 4700 Printer、HP社製)に装填し、電子写真画像として、黒のソリッド画像を出力した。
【0115】
このレーザービームプリンターの現像方式は反転現像方式であり、転写材の出力スピードは164mm/sであり、画像解像度は600dpiである。感光体は、支持体上に層厚19.0μmの有機感光層を有する有機電子写真感光体である。ここで、有機感光層は、支持体側から電荷発生層と変性ポリカーボネート(結着樹脂)を含有する電荷輸送層とを積層した積層型感光層であり、この電荷輸送層は電子写真感光体の表面層となっている。
【0116】
上記レーザービームプリンターに使用したトナーは、いわゆる重合トナーであり、そのガラス転移温度は63℃、体積平均粒子径は6μmである。この重合トナーは、ワックス、荷電制御剤、色素、スチレン、ブチルアクリレートおよびエステルモノマーを含む重合性単量体系を水系媒体中で懸濁重合して得られた粒子に、シリカ微粒子および酸化チタン微粒子を外添してあるトナー粒子を含んでいる。
【0117】
得られた出力画像の帯電ローラーの感光体との当接痕に起因する横スジの発生の有無、発生している場合にはそのスジの濃さ、および長さを、表4に示す基準により評価した。結果を表10に示す。表4に示す基準はA4縦用紙上で幅が1mm程度のスジを対象にしたときの横方向のスジの長さに基く。
【0118】
【表4】

【0119】
[実施例2〜19]
[縮合物2〜19の調製]
用いる原料を表5に記載したように変更した以外は縮合物中間体1と同様にして縮合物中間体2〜19を調製した。表5中の原料の略号が示す化合物種を表6に示す。
【0120】
【表5】

【0121】
【表6】

【0122】
次いで、縮合物中間体2〜11の種類および量、並びに、加水分解性タンタル化合物の種類および量を表7に示すように変更した以外は縮合物1と同様にして縮合物2〜19を調製し、評価[1]を行った。結果を表9に示す。表7中、加水分解性タンタル化合物の略号(Ta−1〜Ta−3)が示す化合物種も上記表6に示す。
【0123】
【表7】

【0124】
[コーティング液2〜19の調製]
縮合物2〜19を用いた以外は、コーティング液1と同様にしてコーティング液2〜19を調製し、評価[2]、[3]を行った。結果を表9に示す。
【0125】
[帯電ローラー2、3の作製]
コーティング液2、3を用いて、実施例1と同様にして表面層形成用塗料2−1〜2−5および3−1〜3−5を調製した。固形分濃度は、0.1質量%、0.2質量%、1.0質量%、4.0質量%および5.0質量%の5種類とした。これらの塗料を用いて実施例1と同様にして、帯電ローラー2−1〜2−5及び3−1〜3−5を作製し、評価[4]〜[6]に供した。結果を表10に示す。
【0126】
[帯電ローラー4〜7の作製]
コーティング液4〜7を用いて、実施例1と同様にして表面層形成用塗料4−1〜−3〜7−1〜7−3を調製した。固形分濃度は、0.5質量%、1.0質量%および3.5質量%の3種類とした。これらの塗料を用いて実施例1と同様にして、帯電ローラー4−1〜4−3、5−1〜5−3、6−1〜6−3及び7−1〜7−3を作製し、評価[4]〜[6]に供した。結果を表10に示す。
【0127】
[帯電ローラー8〜19の作製]
コーティング液8〜19を用いて、実施例1と同様にして表面層形成用塗料8〜19を調製した。固形分濃度は、1.0質量%とした。これらの塗料を用いて実施例1と同様にして、帯電ローラー8〜19を作製し、評価[4]〜[6]に供した。結果を表10に示す。
【0128】
[比較例1]
表8に示す組成とした以外は、実施例1と同様に比較用縮合物20を調製し、評価[1]を行い、比較用縮合物20を用いてコーティング液20を調製し、評価[2]、[3]を行った。結果を表9に示す。更に、コーティング液1に替えてコーティング液20を用いたこと以外は実施例1と同様に帯電ローラーを作製し、評価[4]〜[6]を行った。結果を表11に示す。
【0129】
[比較例2]
表8に示すように、加水分解性シラン化合物を用いず、加水分解性タンタル化合物、水、エタノールを混合し、室温で3時間攪拌して比較用縮合物21を得て、比較用縮合物について実施例1と同様に、評価[1]を行った。比較用縮合物21を用い、かつ、光カチオン重合開始剤を添加しない以外は、実施例1と同様にコーティング液21を調製し、塗膜の硬化にはUVを用いず、温度250℃で1時間加熱して、評価[2]、[3]を行った。結果を表9に示す。更に、コーティング液1に替えてコーティング液21を用いたこと以外は実施例1と同様に帯電ローラーを作製し、評価[4]〜[6]を行った。結果を表11に示す。
【0130】
【表8】

【0131】
【表9】

【0132】
【表10−1】

【0133】
【表10−2】

【0134】
【表11】

【符号の説明】
【0135】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電部材
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 クリーニング手段
8 定着手段
9 プロセスカートリッジ
10 案内手段
P 転写材
101 軸芯体(基体)
102 弾性層
103 表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体、弾性層及び表面層を有している帯電部材であって、
該表面層は、
Si−O−Ta結合を有し、かつ、
下記構造式(1)で示される構成単位および下記構造式(2)で示される構成単位を有している高分子化合物を含有していることを特徴とする帯電部材:
【化1】

【化2】

[構造式(1)中、R1、Rは各々独立して構造式(3)〜(6)のいずれかを示す。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

(構造式(3)〜(6)中、R3〜R7、R10〜R14、R19、R20、R25およびR26は各々独立して水素、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を示す。R8、R9、R15〜R18、R23、R24およびR29〜R32は各々独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R21、R22、R27およびR28は各々独立して水素、酸素、炭素数1〜4のアルコキシ基、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。n、m、l、q、sおよびtは各々独立して1以上、8以下の整数を示す。pおよびrは各々独立して4以上、12以下の整数を示す。xおよびyは各々独立して0又は1を示す。記号「*」は構造式(1)中のケイ素原子への結合部位を示し、記号「**」は構造式(1)中の酸素原子への結合部位を示す。)]
【請求項2】
前記構造式(1)のR1、R2が各々独立して下記構造式(7)〜(10)からなる群れから選ばれるいずれかで示されるものである請求項1に記載の帯電部材:
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

(構造式(7)〜(10)において、N、M、L、Q、SおよびTは各々独立して1以上、8以下の整数を示す。x’およびy’は各々独立して0又は1を示す。記号「*」は構造式(1)中のケイ素原子への結合部位を示し、記号「**」は構造式(1)中の酸素原子への結合部位を示す。)
【請求項3】
前記高分子化合物における、タンタルとケイ素との原子数比(Ta/Si)が0.1以上、5.0以下である請求項1又は2に記載の帯電部材。
【請求項4】
前記高分子化合物が、下記構造式(11)で示される加水分解性シラン化合物と、下記構造式(12)で示される加水分解性タンタル化合物との加水分解縮合物の架橋物である請求項1から3のいずれか一項に記載の帯電部材:
【化11】

【化12】

[構造式(11)中、R33は下記構造式(13)〜(16)のいずれかを示し、R34〜R36は各々独立して炭素数1〜4のアルキル基を示す。構造式(12)中、R37〜R41は各々独立して炭素数1〜9のアルキル基を示す。
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

(構造式(13)〜(16)中、R42〜R44、R47〜R49、R54、R55、R60およびR61は各々独立して水素、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、クロロカルボニル基またはアミノ基を示す。R45、R46、R50〜R53、R58、R59およびR64〜R67は各々独立して水素、炭素数1〜4のアルキル基を示す。R56、R57、R62およびR63は各々独立して水素、炭素数1〜4のアルコキシ基または炭素数1〜4のアルキル基を示す。n’、m’、l’、q’、s’およびt’は各々独立して1以上、8以下の整数を示す。p’およびr’は各々独立して4以上、12以下の整数を示す。また、記号「*」は構造式(11)のケイ素原子との結合位置を示す。)]
【請求項5】
前記高分子化合物が、前記構造式(11)で示される加水分解性シラン化合物と、前記構造式(12)で示される加水分解性タンタル化合物と、構造式(17)で示される加水分解性シラン化合物との加水分解縮合物の架橋物である請求項1から4のいずれか一項に記載の帯電部材:
【化17】

(構造式(17)中、R68は炭素数1〜21のアルキル基、またはフェニル基を示し、R69〜R71は各々独立して炭素数1〜6のアルキル基を示す。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の帯電部材と、該帯電部材に当接して配置されている電子写真感光体とを備え、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の帯電部材と、該帯電部材に当接して配置されている電子写真感光体とを備えていることを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−93727(P2012−93727A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207533(P2011−207533)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】