説明

帯電防止性離型剤組成物

【課題】剥離性等が良好であると同時に優れた帯電防止性能を発揮できる離型層を形成できる離型剤を提供する。
【解決手段】離型性成分、帯電防止成分及び電解質成分を含む離型剤組成物であって、前記帯電防止成分として、特定の一般式で示されるオルガノポリシロキサンを含有することを特徴とする帯電防止性離型剤組成物に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な帯電防止性離型剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
離型剤は、一般的にはアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノポリハイドロジェンシロキサンを含むシリコーン組成物が使用されている。これを白金触媒下で付加重合することにより各種粘着剤に対して剥離力を有する硬化皮膜を形成する。通常は、例えば紙、ラミネート紙、プラスチックフィルム等の基材に離型剤を塗布し、これを熱硬化させることによって得られる離型フィルムとして用いられている。
【0003】
離型剤を用いて作製された離型フィルムは、一般にポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等のキャスト成膜用工程フィルム、粘着フィルムの粘着層の保護フィルム、積層セラミックコンデンサのグリーンシート成形用工程フィルム等として利用されている。
【0004】
従来、離型フィルムとしては、一般に基材フィルムの表面にシリコーン組成物を塗布することにより離型層を形成したものが知られている。ところが、シリコーン組成物による塗膜は、そのシリコーン主鎖結合及び側鎖構造からわかるように、電荷の漏えいがなく、非常に帯電しやすいという欠点がある。離型フィルムは、搬送、切断、印刷等の工程で様々なロール又はコンベヤと接触することにより摩擦帯電しやすい環境にあり、さらには離型フィルムから剥離した際にも帯電を引き起こすといった問題がある。
【0005】
このような静電気障害は、特に樹脂シート等を積み重ねて保管する場合、離型フィルムとの剥離前後にかかわらず電気的反発の引き合いによって、樹脂シート同士が反発あるいは貼りついた状態となる不具合のほか、粘着フィルムの場合は粘着層に塵埃等の異物が付着する不具合の原因となる。また、離型フィルム表面に塗工される粘着剤等に塗布斑が発生しやすくなるという問題も生じる。以上のような見地より、離型フィルムには帯電防止処理を施す必要がある。
【0006】
上記の静電気障害の問題を解決できるフィルムとして、離型層中に界面活性剤系の帯電防止剤を直接添加した離型フィルムが知られている(特許文献1)。しかし、界面活性剤を帯電防止剤として選択した場合、シリコーンの付加反応に関わる白金触媒にイオン種(アミン,リン,イオウ,鉛)が配位することにより触媒毒を引き起こし、重合不十分となる。このため、帯電防止性能は発揮しても基材フィルムと剥離層との間で密着性の低下、剥離性の低下等の問題を引き起こす。また、触媒毒を引き起こさないイオン種以外においても、ブリードが問題となる。そもそも、シリコーン中に帯電防止剤を混合しても表面にブリードして粘着剤への移行が問題となり、また、シリコーンとの相溶性が悪く、均一に分散しないため架橋密度に斑を生じてしまい離型層の密着性が低下し、且つ剥離性能も低下する。
【0007】
また、別の手段として、基材フィルムの一方の表面に離型層を設け、他方の表面に帯電防止層を設けてなることを特徴とする離型フィルムが提案されている(特許文献2)。 しかしながら、これは離型層とは反対側の表面に帯電防止層を設けた離型フィルムであるため、剥離帯電を抑制するには帯電防止性能が不十分という問題がある。
【0008】
さらに、基材フィルムの表面に帯電防止層を形成し、その帯電防止層の上に離型層を重ねて積層させた離型フィルムが知られている(特許文献3、特許文献4)。しかし、帯電防止層の上に離型層を重ねて設けた離型フィルムの場合、剥離性を優先すると帯電防止性能が低下したり、帯電防止剤によっては離型層の曇り又は脱落を引き起こすおそれがある。さらに、基材に2層を塗布することは、少なくとも2工程以上を必要とするために費用の面で不利である。2層の場合は表層にシリコーン層が存在するため、離型フィルムの剥離時において被離型面である粘着フィルムは負に強く帯電することとなる。つまり、離型フィルム自体の無帯電化はできても、被離型面を完全に無帯電化することはできないので実用に供されない。
【0009】
その他にも、帯電防止層と離型層を2層に分けずにカーボンナノチューブ(CNT)又は導電性高分子であるポリピロール等微粒子体を離型層に直接添加する方法が試みられている(特許文献5)。しかし、CNTは分散方法が非常に困難であることのほか、帯電防止性能を十分に発現させるための添加量ではフィルムに着色が起きてしまうため、実用面での課題が残る。また、CNT又は導電性高分子は離型層中に固定化するためのバインダーが併用される。このバインダーは離型層であるポリオルガノシロキサンとの相性は一般的に悪いため、離型層と帯電防止層を分けずに一層に設計しようとしても、実際にはバインダーが偏在又は分離を引き起こし、離型層とバインダー樹脂成分との層間で剥離等の問題が生じ、離型層の密着強度が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−44336
【特許文献2】特開平11−157013
【特許文献3】特開2000−52495
【特許文献4】特開2005−153250
【特許文献5】特開2008−49542
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の主な目的は、剥離性等が良好であると同時に優れた帯電防止性能を発揮できる離型層を形成できる離型剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の帯電防止成分を含む組成物を離型剤として採用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、下記の帯電防止性離型剤組成物に係る。
1. 離型性成分、帯電防止成分及び電解質成分を含む離型剤組成物であって、
前記帯電防止成分として、一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサンを含有することを特徴とする帯電防止性離型剤組成物;
【化1】

〔R11は、1価の有機基を示す。XABは、モノマーユニットAの0〜100個とモノマーユニットBの1〜100個が、互いに任意の配列順序でシロキサン結合により結合してなる構成部分である。モノマーユニットAは一般式(1−1)で示され、モノマーユニットBは一般式(1−2)で示される;
【化2】

(一般式(1−1)(1−2)中、R11は、1価の有機基を示す。R12はアルキレン基を示す。R15は水素原子又は1価の有機基を示す。YCDは、モノマーユニットCの0〜100個とモノマーユニットDの0〜100個とが、互いに任意の配列順序でエーテル結合により結合してなる構成部分である。モノマーユニットCは[−R13O−](但し、R13はアルキレン基を示す。)で示され、モノマーユニットDは[−R14O−](但し、R14はアルキレン基を示す。)で示される。モノマーユニットC及びモノマーユニットDは互いに異なり、両者が同時に0個になることはない。)〕。
2. 離型性成分が、アルケニル基とSiH基との付加重合により硬化する成分を含む、前記項1に記載の帯電防止性離型剤組成物。
3. 離型性成分が、1)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン及び2)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む、前記項1に記載の帯電防止性離型剤組成物。
4. 離型性成分が、1)下記の一般式(2)で示される化合物及び2)下記の一般組成式(3)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む、前記項1に記載の帯電防止性離型剤組成物;
【化3】

〔式中、RA1〜RA10は、互いに同一又は異なって、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子又はシアノ基で置換されていて良い。RA11〜RA15は、互いに同一又は異なって、アルケニル基を示す。
a1、b1、c1、d1及びe1は、互いに同一又は異なって、正の整数であり、かつ、b1、c1、d1及びe1の少なくとも1つは0であっても良い。α及びβは、互いに同一又は異なって、0、1、2又は3である。〕
【化4】

〔式中、RA16は、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であって、炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子又はシアノ基で置換されていて良いものである。fは0≦f≦3を満たす実数であり、gは0<g≦3を満たす実数であり、1≦f+g≦3を満たす。〕
5. 前記項1〜4のいずれかに記載の帯電防止性離型剤組成物から得られる離型層を含む帯電防止性離型フィルム。
6. 離型層が、帯電防止性離型剤組成物による塗膜を加熱により硬化させることによって得られる、前記項5に記載の帯電防止性離型フィルム。
【発明の効果】
【0014】
本発明の帯電防止性離型剤組成物は、離型性組成物(シリコーン組成物)に特定の帯電防止成分が含まれていることから、従来技術に見られるような触媒毒、ブリード等の問題を効果的に抑制ないしは防止できるので、良好な剥離性等とともに優れた帯電防止性能を発揮する離型層を形成することができる。すなわち、本発明の帯電防止性離型剤組成物による離型層は、剥離又は摩擦による帯電を防止し、被剥離面からの良好な剥離性を発揮できる。
【0015】
特に、従来では、離型性組成物として特定のシリコーン組成物(例えば、後記のA成分を含む組成物)のようなガラス質成分を用いる場合は、界面活性剤型の帯電防止剤成分との相性が悪いためにブリード等の問題が生じることから前記成分の併用が一般に忌避されていたが、予想外にも本発明の帯電防止成分はそのような問題がほとんど起こらないため、優れた剥離性と帯電防止性能を両立させることが可能である。
【0016】
また、同様の理由により、前記離型層を基材フィルム上に形成して用いる場合は、基材フィルムとの密着性において優れた性能を発揮することができる。これにより、優れた離型フィルム(離型紙)を提供することも可能となる。すなわち、基材フィルム上に本発明の帯電防止性離型剤組成物による離型層を含む離型フィルムが提供できる。
【0017】
さらに、前記離型層は、優れた剥離性と帯電防止性能を併せもつため、別途に必要とされていた帯電防止層や剥離層の形成を省くことも可能である。すなわち、基材フィルム及び本発明の帯電防止性離型剤組成物による離型層の2層タイプの離型フィルムを構成することも可能である。これにより、従来よりも薄い離型フィルムを提供することができる。
【0018】
本発明の帯電防止性離型剤組成物又はそれを用いて形成された離型層(又は離型フィルム)は、従来の離型剤又は離型フィルムと同様の用途に用いることができる。すなわち、材料の表面を保護するために当該材料に積層した後、材料の使用時に剥離される離型フィルムとして好適に用いることができる。より具体的には、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等のキャスト成膜用工程フィルム、粘着フィルムの粘着層の保護フィルム、積層セラミックコンデンサのグリーンシート成形用工程フィルム、その他キャスト成膜用工程フィルム等として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.帯電防止性離型剤組成物
本発明の帯電防止性離型剤組成物(本発明組成物)は、離型性成分、帯電防止成分及び電解質成分を含む離型剤組成物であって、
前記帯電防止成分として、一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサンを含有することを特徴とする帯電防止性離型剤組成物;
【化5】

〔R11は、1価の有機基を示す。XABは、モノマーユニットAの0〜100個とモノマーユニットBの1〜100個が、互いに任意の配列順序でシロキサン結合により結合してなる構成部分である。モノマーユニットAは一般式(1−1)で示され、モノマーユニットBは一般式(1−2)で示される。
【化6】

(一般式(1−1)(1−2)中、R11は、1価の有機基を示す。R12は互いに同一又は異なってアルキレン基を示す。R15は水素原子又は1価の有機基を示し、特に水素原子であることが好ましい。YCDは、モノマーユニットCの0〜100個とモノマーユニットDの0〜100個とが、互いに任意の配列順序でエーテル結合により結合してなる構成部分である。モノマーユニットCは[−R13O−](但し、R13はアルキレン基を示す。)で示され、モノマーユニットDは[−R14O−](但し、R14はアルキレン基を示す。)で示される。モノマーユニットC及びモノマーユニットDは互いに異なり、両者が同時に0個になることはない。)〕
【0020】
以下、本発明組成物の成分等について説明する。
離型性成分(A成分)
離型性成分としては、特に限定されず、公知の離型剤で使用されている離型性成分をいずれも用いることができるが、特に付加型シリコーン系離型剤を好適に用いることができる。すなわち、付加重合により硬化する離型剤成分を含む組成を用いることが好ましい。
【0021】
より具体的には、アルケニル基とSiH基との付加重合により硬化し得る組成を離型性成分として用いることが好ましい。このような離型剤としては市販品を使用することもできる。例えば製品名「KS−847T」、「KS−774」、「KS−3703」(シリコーン組成物、いずれも信越化学工業(株)製)、「SD7226」、「LTC750A」(シリコーン組成物、いずれも東レ・ダウコーニング(株)製)等が挙げられる。
【0022】
上記のように、アルケニル基とSiH基との付加重合により硬化し得る組成を採用することにより、本発明の帯電防止成分(B成分)として種々の化学構造をもつ化合物を幅広く用いることができる。例えば、イソシアネート基と水酸基との縮合型反応を起こす化合物群を離型性成分として用いる場合は、水酸基を末端に有する帯電防止成分を用いるとイソシアネート基と帯電防止成分が優先的に反応すれば、架橋阻害、基材との密着性低下等が生じるおそれがある。これに対し、アルケニル基とSiH基との付加重合により硬化し得る組成を離型性成分として用いる場合は、上記のような現象も起こりにくいため、所望の効果がより確実に得ることができる。
【0023】
上記のような付加型シリコーン系離型剤としては、例えば1)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン(A成分)及び2)1分子中に少なくとも2個(好ましくは、少なくとも3個)のSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(A成分)を含む組成を好適に採用することができる。これにより、主剤となるA成分に対してA成分が架橋剤としての役割を果たし、所望の剥離性を有するシリコーン離型層を形成することができる。すなわち、この2成分系を採用することによって、前記オルガノポリシロキサンのアルケニル基が、A成分のSiH基と反応することにより付加反応型(付加重合型)の硬化性シリコーン組成物を硬化させることができる結果、所望のシリコーン剥離層をより効果的に形成することができる。A成分のアルケニル基が1分子中2個未満では硬化性が低下して所望のシリコーン離型層を形成させることができない場合があるので、A成分では1分子当たり少なくとも2個のアルケニル基を有することが好ましい。同様の理由より、A成分のSiH基も、1分子当たり少なくとも2個有することが好ましい。このようなA成分及びA成分としては、次のようなものが例示される。
【0024】
(A成分)
成分としては、下記一般式(2)で示される化合物を好適に用いることができる。
【化7】

〔式中、RA1〜RA10は、互いに同一又は異なって、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子又はシアノ基で置換されていて良い。RA11〜RA15は、互いに同一又は異なって、アルケニル基を示す。
a1、b1、c1、d1及びe1は、互いに同一又は異なって、正の整数であり、かつ、b1、c1、d1、e1は0であっても良い。α及びβは、互いに同一又は異なって、0、1、2又は3である。〕
【0025】
A1〜RA10は、互いに同一又は異なって、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示すものであって、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子又はシアノ基で置換されていて良いものである。前記アルキル基としては、置換基を含めた炭素原子数が1〜20であることが好ましい。前記シクロアルキル基としては、置換基を含めた炭素原子数が3〜20であることが好ましい。前記アリール基としては、置換基を含めた炭素原子数が6〜20であることが好ましい。
【0026】
これらRA1〜RA10の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、1−エチルペンチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基等のアルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基等を挙げることができる。また、これらの炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基で置換した基としては、例えばクロロメチル基、2−ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、p−クロロフェニル基、2−シアノエチル基等が挙げられる。
【0027】
本発明では、前記RA1〜RA10としては、炭素原子数1〜20アルキル基が好適であり、さらにはRA1〜RA10の一部又は全部がメチル基がより好適である。例えば、RA1〜RA10の基の合計数に対して80%以上がメチル基であるA成分を好適に用いることができる。特に、RA1〜RA10の全部がメチル基であることがより好ましい。
【0028】
A11〜RA15は、互いに同一又は異なって、アルケニル基を示す。アルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ヘプテニル基等が挙げられる。本発明では、RA11〜RA15の上記アルケニル基としては、特にビニル基が好ましい。すなわち、RA11〜RA15の一部又は全部がビニル基であることがより好ましい。
【0029】
また、a1、b1、c1、d1及びe1は、互いに同一又は異なって、正の整数であり、かつ、b1、c1、d1、e1の少なくとも1つは0であっても良い。特に、a1、b1、c1、d1及びe1は、オルガノポリシロキサン(A)の25℃での粘度が0.05Pa・s以上となり、オルガノポリシロキサン(A)の30%トルエン溶液の25℃での粘度が0.002〜30Pa・s、特に0.005〜20Pa・sとなるような数であることが好ましい。このような粘度を有するA成分を採用することにより、基材フィルム上でよりいっそう均一な厚みの層を形成することができ、塗工時の作業性をより高めることができる。かかる見地より、a1、b1、c1、d1及びe1は、上記の粘度等の見地より、28≦a1+b1×(d1+e1+2)+c1≦10000を満たす正の数であることが望ましい。
【0030】
前記α及びβは、互いに同一又は異なって、0、1、2又は3である。ただし、b1×(e1+β)+c1+2×α≧2となることが好ましい。このような関係を充足する場合は、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を持つオルガノシロキサン構造となり、SiH基と付加反応して成膜するという効果をより確実に得ることができる。
【0031】
オルガノポリシロキサン(A)のアルケニル基が、後述する架橋剤(A)のSiH基と反応して硬化するが、オルガノポリシロキサンは1分子当たり少なくとも2個のアルケニル基が必要である。2個未満ではシリコーン組成物の硬化性が低下して所望のシリコーン離型層を形成させることができない場合がある。
【0032】
本発明では、とりわけ、式(2)において、1分子がもつアルケニル基の合計数b1×(e1+β)+c1+2×αが2〜150の範囲とすることが好ましい。前記下限値未満ではシリコーン組成物の硬化性が低下して所望のシリコーン離型層を形成させることができないことがある。他方、前記上限値を超える場合は、シリコーン離型層の非粘着性が低下するおそれがある。
【0033】
本発明におけるA成分の具体例としては、下記式で示される化合物を挙げることができる。このような化合物も、公知又は市販のものを使用することができる。
【化8】

【0034】
(A成分)
成分としては、下記の一般組成式(3)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを好適に用いることができる。
【化9】

〔式中、RA16は、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であって、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子又はシアノ基で置換されていて良いものである。〕
【0035】
前記アルキル基としては、置換基を含めた炭素原子数が1〜20であることが好ましい。前記シクロアルキル基としては、置換基を含めた炭素原子数が3〜20であることが好ましい。前記アリール基としては、置換基を含めた炭素原子数が6〜20であることが好ましい
【0036】
これらの基の具体例としては、前記RA1〜RA10で示したものと同様のものを用いることができる。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、1−エチルペンチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基等を挙げることができる。また、これらの炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基で置換した基としては、例えばクロロメチル基、2−ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、p−クロロフェニル基、2−シアノエチル基等が挙げられる。
【0037】
本発明では、RA16としては、これらの中でも、炭素原子数1〜20アルキル基が好適であり、さらにはメチル基がより好適である。
【0038】
前記fは、0≦f≦3を満たす実数であり、gは0<g≦3を満たす実数であり、1≦f+g≦3を満たす。
【0039】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、前記の通り、1分子中にSiH基を少なくとも2個、特に3個以上有することが好ましい。
【0040】
また、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造も、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであっても良い。特に、A成分の粘度(25℃)は、数mPa・s〜数万mPa・s、特に1〜20000mPa・sであり、さらには5〜10000mPa・sであることが好ましい。このような粘度を有するA成分を採用することにより基材フィルムへの塗工性をより高めることができる。
【0041】
成分として使用されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例として、一般式(4)〜(8)のものを好適に用いることができる。これらは、付加反応型シリコーン樹脂の架橋剤等として公知又は市販のものを使用することができる。
【化10】

〔一般式(4)〜(8)のhからwは、次に示される範囲の整数である。h、l、nは互いに同一又は異なって3〜500の整数、m、p及びuは互いに同一又は異なって1〜500の整数、i、j、k、o、q、r、s、t、v及びwは互いに同一又は異なって0〜500の整数である。〕
【0042】
成分は、そのSiH基のモル数が、A成分に含まれるアルケニル基のモル数の1〜5倍に相当するような含有量とすることが好ましい。一般的には、A成分100重量部に対して0.1〜30重量部、好ましくは0.1〜20重量部の範囲とすれば良い。SiH基のモル数が前記下限値未満では、アルケニル基とSiH基の付加反応による橋架け結合が十分ではなく、シリコーン組成物の硬化物で形成されたシリコーン離型層の非粘着性が低下するおそれがある。一方、前記上限値を超えて配合しても効果の相応の増加は見られず、コストパフォーマンスが低下するだけでなく、かえって組成物の経時変化が起こり得る。
【0043】
帯電防止成分(B成分)
本発明組成物における帯電防止成分としては、一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサンを用いる。このようなオルガノポリシロキサン自体は公知又は市販のものを使用することができる。例えば、製品名「KF−354」、「KF−355」、「KF−945」(いずれも信越化学工業(株)製)等を好適に用いることができる。
【化11】

〔R11は、1価の有機基を示す。XABは、モノマーユニットAの0〜100個とモノマーユニットBの1〜100個が、互いに任意の配列順序でシロキサン結合により結合してなる構成部分である。モノマーユニットAは一般式(1−1)で示され、モノマーユニットBは一般式(1−2)で示される。
【化12】

(一般式(1−1)(1−2)中、R11は、1価の有機基を示す。R12は互いに同一又は異なってアルキレン基を示す。R15は水素原子又は1価の有機基を示す。特に好ましくは水素原子である。YCDは、モノマーユニットCの0〜100個とモノマーユニットDの0〜100個とが、互いに任意の配列順序でエーテル結合により結合してなる構成部分である。モノマーユニットCは[−R13O−](但し、R13はアルキレン基を示す。)で示され、モノマーユニットDは[−R14O−](但し、R14はアルキレン基を示す。)で示される。モノマーユニットC及びモノマーユニットDは互いに異なり、両者が同時に0個になることはない。)〕。
【0044】
11の一価の有機基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜4のアルキル基を有する1価の有機基、フェニル基、トリル基等の炭素数6〜8のアリール基を有する1価の有機基、ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜9のアラルキル基を有する1価の有機基であり、それぞれ水酸基等の置換基を有しても良い。
【0045】
12、R13及びR14のアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基等の炭素数1〜8のアルキレン基等を挙げることができ、R12、R13及びR14は互いに同一であっても異なっても良い。
【0046】
13及びR14は、アルキレン基であるが、電解質塩の溶解度の点から、少なくともどちらか一方がエチレン基又はプロピレン基であることが好ましい。
【0047】
15としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜5のアルキル基またはアセチル基、プロピオニル基等のアシル基で例示される1価の有機基であり、それぞれ水酸基等の置換基を有しても良い。また、R15は水素原子であっても良い。
【0048】
また、上記式において、モノマーユニットAとモノマーユニットBとの配列順序、モノマーユニットCとモノマーユニットDとの配列順序は任意である。従って、例えばそれぞれのモノマーユニットがブロック状又はランダムに配列することができる。
【0049】
本発明におけるB成分として、より具体的には例えば下記一般式(9)で示される化合物を用いることができる。
【化13】

式中、RB1は1価の有機基、RB2〜RB4はアルキレン基、RB5は水素原子又は1価の有機基を示す。xは0〜100の整数、yは1〜100の整数である。−Si(RB1)−O−単位と−Si(RB1)(RB2O−)−O−単位の配列順序は任意である。z及びaaは、互いに同一又は異なって、それぞれ1〜100の整数であり、同時に0であることはない。−RB3O−単位と−RB4O−単位の配列順序は任意である。
【0050】
前記のRB1の有機基は前記R11と同様であり、前記のRB2〜RB4のアルキレン基は前記R12〜R14と同様であり、前記のRB5の有機基はR15と同様である。より具体的には、例えば、RB1がメチル基であり、RB2〜RB4がエチレン基又はプロピレン基であり、RB5が水素原子である化合物を好適に用いることができる。
【0051】
B成分は、A成分の100重量部に対して0.5〜20重量部とすることが好ましく、特に1〜10重量部とすることがより好ましい。0.5重量部より少ないと得られる離型層の帯電防止性能が不十分となることがある。また、20重量部を超えると離型層の架橋が不十分となって塗膜の硬度が得られず、密着性が低下する場合がある。
【0052】
電解質成分(C成分)
電解質成分(C成分)としては、イオン伝導性の電解質塩化合物であれば特に限定されない。例えば、無機酸又は有機酸の金属塩を用いることができる。より具体的には、次に示す陽イオンと陰イオンからなる電解質成分を好適に用いることができる。
【0053】
前記陽イオンとしては、ナトリウム,カリウム,リチウム,セシウム等のアルカリ金属のイオン、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属のイオンを例示することができる。
【0054】
前記陰イオンとしては、過塩素酸、過臭素酸等の過ハロゲン酸アニオン、塩素酸,臭素酸等のハロゲン酸アニオン、塩素、臭素等のハロゲンアニオン、オクチルスルホン酸,ステアリルスルホン酸等のアルキルスルホン酸アニオン、ドデシルベンゼンスルホン酸,ベンゼンスルホン酸等のアリールスルホン酸アニオン、ラウリル硫酸,エチル硫酸等のアルキル硫酸アニオン、硫酸アニオン、酢酸,プロピオン酸等のカルボン酸アニオン、アルキルリン酸アニオン、リン酸アニオン、亜リン酸アニオン、硝酸アニオン、石炭酸アニオン、テトラフルオロホウ素,ヘキサフルオロヒ素,ヘキサフルオロリン等のハロゲン化物アニオン、トリクロロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のパーフルオロアルキルスルホン酸、ビストリフルオロメタンスルホニルイミド酸等のビスパーフルオロアルキルスルホニルイミド酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等のハロゲン化アルキルを有する有機酸アニオン、チオシアン酸アニオン、テトラフェニルホウ素アニオン等が例示される。
【0055】
本発明では、これらの中でも、1)パーフルオロアルキルスルホン酸のリチウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩ならびに2)ビスフルオロメタンスルホニルイミド酸のリチウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩の少なくとも1種を好適に用いることができる。
【0056】
電解質成分の含有量は限定的ではないが、特に(B成分のモル数)×(B成分の1分子中の−R13O−基及び−R14O−基の数)を[R13O+R14O]で表し、これを−R13O−基及び−R14O−基からみたB成分の仮りのモル数として表現するとき、帯電防止効果及び透明性等の点から、[R13O+R14O]に対し、0.005〜1.5モル倍量とすることが好ましい。
【0057】
その他の成分
本発明組成物では、公知の離型剤に添加されている成分を適宜配合することができる。例えば、溶剤、触媒等を挙げることができる。
【0058】
触媒としては、シリコーン系離型性成分を重合させるための触媒を用いることができる。このような触媒としては、付加型シリコーン系離型剤の場合、公知の白金触媒や酸化チタンなどを触媒として使用することができる。本発明組成物中における触媒の含有量は特に制限されないが、通常0.1〜10重量%程度とすれば良い。
【0059】
また、溶剤(溶媒又は分散媒)としては、離型剤の塗工液(溶液型塗工液又はエマルション型塗工液)の調製に使用されているものであれば限定的でなく、例えば水のほか、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、へプタン等の有機溶剤又はこれらの混合物等が希釈剤として用いられる。
【0060】
本発明組成物の調製
本発明組成物は、前記の各成分を均一に混合することによって得ることができる。液状タイプの組成物とする場合は、前記の溶剤等を用いて均一に混合すれば良い。これにより、溶液型塗工液又はエマルション型塗工液を調製することができる。これらの塗工液では、一般に溶剤が希釈剤として用いられ、塗工可能な粘度に調節することができる。溶剤を用いる場合、本発明組成物の固形分は0.1〜10重量%程度とすれば良い。
【0061】
2.帯電防止性離型フィルム
本発明は、本発明組成物を用いて塗膜を形成し、加熱により硬化させることによって得られる帯電防止性離型フィルム(本発明フィルム)を包含する。
【0062】
塗膜の形成方法は特に限定されず、例えば本発明組成物(塗工液)を基材フィルムの少なくとも一方の面に塗工すれば良い。塗工方法としては、例えばグラビアコート法、バーコート法、マルチロールコート法等を採用することができる。塗工量は固形分換算塗工量として0.01〜10g/mが適当であり、特に0.03〜1g/mとすることが好ましい。
【0063】
基材フィルムは、特に制限はなく、従来より離型フィルムの基材フィルムとして使用されているものの中から、各種離型フィルムの用途に応じて適宜選択することができる。このような基材フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等が挙げられる。
【0064】
この基材フィルムの厚さに特に制限はなく、離型フィルムの用途に応じて適宜選定されるが、通常は10〜150μmであり、好ましくは20〜120μmである。
【0065】
また、この基材フィルムは、その表面に設けられる離型剤層との密着性を向上させる目的で、片面又は両面に対して、酸化法、凹凸化法等による表面処理、あるいはプライマー処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。また、プライマー処理としては、シランカップリング剤を単独で使用したり、ポリエステル樹脂を使用したり、特定の樹脂とシランカップリング剤を併用させること等によって接着性を高めることが行われている。これらの表面処理法は基材フィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、本発明ではコロナ放電処理法が好ましい。
【0066】
本発明では、離型剤組成物中に硬化剤として活性水素と反応しないタイプのイソシアネート化合物を併用しても良い。調剤安定性の面からも、特にブロックイソシアネート化合物が望ましい。
【0067】
次いで、塗膜を加熱することによって硬化させる。加熱処理は70〜160℃程度の温度範囲とすれば良い。加熱時間は、本発明組成物の組成、塗工量等に応じて十分硬化するまでの時間を確保すれば良い。加熱は、例えば塗工機のオーブンで加熱処理すれば良い。
【0068】
このようにして帯電防止性離型剤組成物から形成された離型剤層の厚さ(乾燥後厚さ)は特に制限されないが、均一な性膜性、ブロッキング防止性、剥離性及び基材フィルムとの密着性等の観点から、通常は0.01〜3μm程度とし、特に0.05〜1μmとすることが望ましい。
【実施例】
【0069】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0070】
実施例1
離型性成分であるシリコーン組成物100重量部[信越化学工業(株)製,商品名KS-847T,(固形分30重量%)]、触媒[信越化学工業(株)製,商品名CAT-PL-50T]を5重量部、帯電防止剤成分のポリアルキレン鎖含有のオルガノポリシロキサン[信越化学工業(株)製,商品名KF-354]を1.05重量部、電解質塩化合物として過塩素酸リチウム0.45重量部を添加し、希釈剤としてメチルエチルケトン201.7重量部加えて攪拌混合して帯電防止性離型剤組成物を作製した。この帯電防止性離型剤組成物を厚さ38μmのポリエステルフィルム[東洋紡績(株)製、商品名E-5101]にバーコーターNo.3(wet6.87μm)にて塗布した後、140℃で1分間加熱処理して硬化させ、厚さ0.10μmで剥離塗膜中の帯電防止剤濃度が5重量%の帯電防止性離型層を有する帯電防止性離型フィルムを作製した。
【0071】
実施例2
離型性成分であるシリコーン組成物100重量部[信越化学工業(株)製,商品名KS-774,(固形分30重量%)]、触媒[信越化学工業(株)製,商品名CAT-PL-4]を5重量部、帯電防止剤成分のポリアルキレン鎖含有のオルガノポリシロキサン [信越化学工業(株)製,商品名KF-354]を1.05重量部、電解質塩化合物としてトリフルオロメタンスルホン酸リチウム0.45重量部を添加し、希釈剤としてメチルエチルケトン201.7重量部加えて攪拌混合して帯電防止性離型剤組成物を作製した。この帯電防止離型剤組成物を実施例1と同様にフィルム上に塗布して帯電防止性離型フィルムを作製した。
【0072】
実施例3
離型性成分であるシリコーン組成物100重量部[信越化学工業(株)製,商品名KS-3703,(固形分30重量%)]、触媒[信越化学工業(株)製,商品名CAT-PL-50T]を5重量部、帯電防止剤成分のポリアルキレン鎖含有のオルガノポリシロキサン[信越化学工業(株)製,商品名KF-355]を1.05重量部、電解質塩化合物としてビストリフルオロメタンスルホニルイミドリチウム0.45重量部を添加し、希釈剤としてメチルエチルケトン201.7重量部加えて攪拌混合して帯電防止性離型剤組成物を作製した。この帯電防止離型剤組成物を実施例1と同様にフィルム上に塗布して帯電防止性離型フィルムを作製した。
【0073】
実施例4
離型性成分であるシリコーン組成物100重量部[東レ・ダウコーニング(株)製,商品名SD7226,(固形分30重量%)]、触媒[東レ・ダウコーニング(株)製,商品名SRX-212]を5重量部、帯電防止剤成分のポリアルキレン鎖含有のオルガノポリシロキサン[信越化学工業(株)製,商品名KF-945]を1.05重量部、電解質塩化合物として過塩素酸リチウム0.45重量部を添加し、希釈剤としてメチルエチルケトン201.7重量部加えて攪拌混合して帯電防止性離型剤組成物を作製した。この帯電防止離型剤組成物を実施例1と同様にフィルム上に塗布して帯電防止性離型フィルムを作製した。
【0074】
実施例5
離型性成分であるシリコーン組成物100重量部[東レ・ダウコーニング(株)製,商品名LTC750A,(固形分30重量%)]、触媒[東レ・ダウコーニング(株)製,商品名SRX-212]を5重量部、帯電防止剤成分のポリアルキレン鎖含有のオルガノポリシロキサン[信越化学工業(株)製,商品名KF-354]を1.05重量部、電解質塩化合物として過塩素酸リチウム0.45重量部を添加し、希釈剤としてメチルエチルケトン201.7重量部加えて攪拌混合して帯電防止性離型剤組成物を作製した。この帯電防止離型剤組成物を実施例1と同様にフィルム上に塗布して帯電防止性離型フィルムを作製した。
【0075】
比較例1
離型性成分であるシリコーン組成物100重量部[信越化学工業(株)製,商品名KS-847T,(固形分30重量%)]、触媒[信越化学工業(株)製,商品名CAT-PL-50T]を5重量部、帯電防止剤成分のカチオン系界面活性剤[丸菱油化工業(株)製,商品名デノン1826]1.50重量部を添加し、希釈剤としてメチルエチルケトン201.7重量部加えて攪拌混合して帯電防止性離型剤組成物を作製した。この帯電防止離型剤組成物を実施例1と同様にフィルム上に塗布して帯電防止性離型フィルムを作製した。
【0076】
比較例2
離型性成分であるシリコーン組成物100重量部[信越化学工業(株)製,商品名KS-847T,(固形分30重量%)]、触媒[信越化学工業(株)製,商品名CAT-PL-50T]を5重量部、帯電防止剤成分のアニオン系界面活性剤[丸菱油化工業(株)製,商品名エリミナ724]1.50重量部を添加し、希釈剤としてメチルエチルケトン201.7重量部加えて攪拌混合して帯電防止性離型剤組成物を作製した。この帯電防止離型剤組成物を実施例1と同様にフィルム上に塗布して帯電防止性離型フィルムを作製した。
【0077】
試験例1
実施例及び比較例で得られたフィルムについて、各種の性能を評価した。その結果を表1に示す。表1中「Blank」は、帯電防止成分を含有しないシリコーン組成物( [信越化学工業(株)製,商品名KS-774,(固形分30重量%)]、触媒[信越化学工業(株)製,商品名CAT-PL-4]を5重量部)から作製した離型フィルムである。なお、表1中の各性能については、下記の方法により評価を実施した。
【0078】
(1)帯電防止性能及び透明性の評価
(1−1)表面固有抵抗値
JIS K6911に準じて剥離フィルムの表面固有抵抗値を測定した(TOA Electronics,
Ltd ULTRA MEGOHMMETER SM-8210)。
(1−2)帯電圧試験
作製した剥離フィルムから測定用サンプル(5cm×5cm)を切り出し、帯電圧測定器(スタチックオネストメータ)内に装着し、コロナ放電(電圧10kV×1min)により表面を帯電させ、平衡帯電圧及び半減期を測定した。(シシド静電気(株)製,製品名STATIC HONESTMETER H-0110)
(1−3)透明性
全光線透過率とヘイズは、積分球式分光透過率測定法により測定を行った。((有)東京電色製,製品名 ヘーズメーター MODEL TC-H III)
【0079】
(2)剥離フィルムとしての性能評価
(2−1)密着性
指で500gの荷重をかけて5往復擦った時の状態を観察した。白化及び脱落が生じない場合を「○」とし、それらのいずれかが生じた場合を「×」とした。
(2−2)剥離力
剥離フィルムに粘着テープ(日東電工(株)製、31Bテープ、幅2.5cm)を3〜5kg荷重にて貼り合せ、室温23℃、湿度50%の雰囲気下にて20時間調湿後、万能引張試験機にて剥離強度を180度方向に剥離速度0.3m/minで剥がしたときの荷重を測定した。
(2−3)残留接着率
剥離フィルムに粘着テープ(日東電工(株)、31Bテープ、幅2.5cm)を貼り合せ、20g/cmで20時間圧着した。このテープを剥離フィルムから剥がし、ステンレス板(SUS304、鏡面加工BA板)に2kg荷重のゴムローラーで貼り合せ、万能引張試験機にて180度方向に引き剥がし速度0.3m/minで剥がしたときの接着力を測定した。標準は31BテープとしSUS板への接着力を100%とした。
(残留接着率%)=(剥離フィルムに一度貼り合せた後、SUS板に貼り合せたテープの剥離強度)÷(未使用のテープを、SUS板に貼り合せたテープの剥離強度)×100(%)
【0080】
【表1】

【0081】
以上の結果からも明らかなように、帯電防止成分として界面活性剤を使用した場合は帯電防止性能が十分でないだけでなく、密着性等においても満足できる結果が得られないことがわかる。これに対し、実施例1〜5では、剥離性等が良好であると同時に優れた帯電防止性能を発揮できる離型層が形成できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型性成分、帯電防止成分及び電解質成分を含む離型剤組成物であって、
前記帯電防止成分として、一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサンを含有することを特徴とする帯電防止性離型剤組成物;
【化14】

〔R11は、1価の有機基を示す。XABは、モノマーユニットAの0〜100個とモノマーユニットBの1〜100個が、互いに任意の配列順序でシロキサン結合により結合してなる構成部分である。モノマーユニットAは一般式(1−1)で示され、モノマーユニットBは一般式(1−2)で示される;
【化15】

(一般式(1−1)(1−2)中、R11は、1価の有機基を示す。R12はアルキレン基を示す。R15は水素原子又は1価の有機基を示す。YCDは、モノマーユニットCの0〜100個とモノマーユニットDの0〜100個とが、互いに任意の配列順序でエーテル結合により結合してなる構成部分である。モノマーユニットCは[−R13O−](但し、R13はアルキレン基を示す。)で示され、モノマーユニットDは[−R14O−](但し、R14はアルキレン基を示す。)で示される。モノマーユニットC及びモノマーユニットDは互いに異なり、両者が同時に0個になることはない。)〕。
【請求項2】
離型性成分が、アルケニル基とSiH基との付加重合により硬化する成分を含む、請求項1に記載の帯電防止性離型剤組成物。
【請求項3】
離型性成分が、1)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン及び2)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む、請求項1に記載の帯電防止性離型剤組成物。
【請求項4】
離型性成分が、1)下記の一般式(2)で示される化合物及び2)下記の一般組成式(3)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む、請求項1に記載の帯電防止性離型剤組成物;
【化16】

〔式中、RA1〜RA10は、互いに同一又は異なって、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子又はシアノ基で置換されていて良い。RA11〜RA15は、互いに同一又は異なって、アルケニル基を示す。
a1、b1、c1、d1及びe1は、互いに同一又は異なって、正の整数であり、かつ、b1、c1、d1及びe1の少なくとも1つは0であっても良い。α及びβは、互いに同一又は異なって、0、1、2又は3である。〕
【化17】

〔式中、RA16は、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であって、炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子又はシアノ基で置換されていて良いものである。fは0≦f≦3を満たす実数であり、gは0<g≦3を満たす実数であり、1≦f+g≦3を満たす。〕
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の帯電防止性離型剤組成物から得られる離型層を含む帯電防止性離型フィルム。
【請求項6】
離型層が、帯電防止性離型剤組成物による塗膜を加熱により硬化させることによって得られる、請求項5に記載の帯電防止性離型フィルム。

【公開番号】特開2011−178828(P2011−178828A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41832(P2010−41832)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000157717)丸菱油化工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】