説明

干渉画像記録装置および干渉画像記録装置における光学系の調整方法

【課題】チルト式位相シフトホログラフィ法を用いた場合に、所望の干渉パターンを得るための光学系の調整を容易に行いえるようにすること。
【解決手段】
被測定物体10が存在しない状態で、CCD7の受光面に形成された干渉パターンが記録されたときに、干渉パターンにおける濃淡度合が同一となるべき画素の画素値を抽出して、その抽出された画素の画素値のみから画像を再構築した場合に、その再構築画像の一方向に沿った複数の画素の画素値のラインプロファイル周波数Fを算出し、そのラインプロファイル周波数Fが目標値となるように、参照光調整ミラー4の回転方向16の角度調整を行なう。このように同一の画素値を出力すべき複数の画素の画素値から算出されるラインプロファイル周波数を用いることにより、参照光8の入射角度が設定値に一致するように参照光調整ミラー4の角度調整することが容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チルト式位相シフトホログラフィ法を用いた干渉画像記録装置及び、その干渉画像記録装置における光学系の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィ法を用いた干渉画像記録再生装置は、3次元物体への光照射によって得られる物体光と、参照光との干渉パターンをCCD等の撮像素子で記録し、記録された干渉パターンから3次元物体の像を再生するものである。
【0003】
特に、チルト式位相シフトホログラフィ法を用いた装置は、撮像素子の受光面に対して参照光を斜めに入射させることにより、参照光位相が異なる複数の干渉パターンを同時に記録するものである(例えば、特許文献1参照)。このように、参照光位相が異なる複数の干渉パターンを同時に記録することにより、3次元物体の再生像を得るために必要が情報を一回の干渉パターンの記録で得ることができる。そのため、例えば、噴霧等の移動する微粒子を計測することも可能となる。
【特許文献1】特開2008−185690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1においては、例えば、撮像素子をなす多数の画素が2次元配列された受光面において、互いに隣り合う画素の位相値が、π/2ずつずれるように、参照光の入射角が設定される。
【0005】
ここで、参照光の入射角は、レーザを参照光と物体光とに分けるビームスプリッタを通過した参照光を受光面に向けて反射するミラーの角度によって調整される。具体的な調整方法としては、所望の干渉パターンに対応する各画素毎の濃淡値に対応する電気信号値(画素値)を目標値とし、各画素の画素値がその目標値に一致するように、ミラーが傾動駆動される。
【0006】
しかしながら、受光面における各画素は所定の大きさ(たとえば画素サイズ7.4μm)を有し、各画素は、それぞれの画素範囲に入射されている光の濃淡度合に応じた画素値を出力する。このような各画素の分解能の問題から、参照項の位相値の繰り返し周期が、各画素の間隔に一致していない場合であっても、目標値どおりの画素値を出力する画素もあれば、目標値とは異なる画素値を出力する画素もあるなど、画素値と目標値とは、種々の関係が混在することになる。このため、例えば、ある画素の画素値が目標値に一致するように、ミラーの角度を調整しても、他の画素の画素値は却って目標値からずれてしまうなど、各画素の画素値をそれぞれの目標値に一致させるように調整を行なうことは非常に困難である。
【0007】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、チルト式位相シフトホログラフィ法を用いた場合に、所望の干渉パターンを得るための調整をより容易に行うことが可能な干渉画像記録装置、及びその干渉画像記録装置における光学系の調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数の位相値を有する参照光と、被測定物体に向けて照射される物体光とを干渉させることによって、撮像手段の受光面に形成される干渉パターンを被測定物体の画像情報として記録する干渉画像記録装置において、
入射された光を、参照光として撮像手段の受光面に向けて反射するとともに、反射面の回転角度によって、受光面への参照光の入射角度を変化させるミラーと、
ミラーの反射面の回転角度を調整する調整手段と、
被測定物体が存在しない状態で撮像手段の受光面に形成された干渉パターンが記録されたときに、干渉パターンにおける濃淡度合が同一となるべき画素の画素値を抽出して、その抽出された画素の画素値のみから画像を再構築した場合に、その再構築画像の一方向に沿った複数の画素の画素値のラインプロファイル周波数を算出し、そのラインプロファイル周波数が目標値となるように、調整手段を介してミラーの反射面の回転角度を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上述したように、請求項1に記載の発明では、干渉パターンにおける濃淡度合が同一となるべき画素の画素値に基づいて、ラインプロファイル周波数を算出し、このラインプロファイル周波数が目標値となるように、ミラーの反射面の回転角度を制御する。参照光の入射角度が設定値に一致していれば、干渉パターンにおける濃淡度合が同一となるべき画素の画素値は同一となり、ラインプロファイル周波数は原則としてゼロになるはずである。従って、算出したラインプロファイル周波数がある周波数となっている場合には、参照光の入射角度が設定値からずれているとみなすことができ、この場合、ラインプロファイル周波数がゼロに近づくように、ミラーの反射面の回転角度が制御される。このように、請求項1の発明では、同一の画素値を出力すべき複数の画素の画素値から算出されるラインプロファイル周波数を用いているので、参照光の入射角度が設定値に一致するようにミラーの反射面の角度を調整することが容易となる。
【0010】
請求項2に記載したように、撮像手段の受光面には、多数の画素が2次元配列されており、当該2次元配列の一配列方向をX軸方向、その一配列方向に直交する配列方向をY軸方向として定義したときに、被測定物体が存在しない状態で撮像手段の受光面に干渉パターンが形成されたとき、Y軸方向に沿って配列された各画素には位相差が同一となる参照光と物体光とが入射されるとともに、X軸方向に隣接する各画素には、所定の繰り返し周期で位相差が異なる参照光と物体光とが入射されることが好ましい。この場合、干渉パターンは、Y軸方向に同じ濃淡度合の筋が伸び、X軸方向においてはその筋の濃淡度合が変化する縞模様となる。このような縞模様を呈する干渉パターンを用いることにより、干渉パターンの模様の単純さから、より容易にミラーの回転角度の調整を行なうことができる。
【0011】
請求項3に記載したように、制御手段は、Y軸方向に沿って配列された画素列の画素値を、X軸方向に沿って所定の繰り返し周期毎に抽出し、その抽出順序に従って画素列の画素値を組み合わせることによって再構築画像とするものであって、ラインプロファイル周波数として、X軸方向に沿った複数の画素の画素値のラインプロファイル周波数を算出することが好ましい。上述した縞模様の干渉パターンを採用した場合、基本的にY軸方向に配列された画素の画素値は同じであるため、再構築画像においてX軸方向に並んだ複数の画素の画素値のラインプロファイル周波数を目標値に合わせ込むだけで、ミラーの反射面の回転角度の調整が完了するためである。
【0012】
なお、X軸方向に並んだ複数の画素の画素値のラインプロファイル周波数は、請求項4に記載したように、X軸方向に沿って並んだ任意の一列の画素列の画素値から算出しても良いし、請求項5に記載したように、Y軸方向に沿って並んだ画素列毎に平均画素値を算出し、X軸方向に沿って各画素列毎の平均画素値から算出しても良い。
【0013】
請求項6に記載したように、制御手段は、参照光と物体光との異なる位相差の中で、任意の1つだけの位相差の参照光と物体光とが入射される画素の画素値からなる再構築画像に関して、ラインプロファイル周波数を算出するようにしても良い。再構築画像は、上述したように、同じ位相差の参照光と物体光とが入射される画素の画素値からなる。同じ位相差の参照光と物体光とが入射される画素は離れており、その間には異なる位相差の参照光と物体光とが入射される画素が介在する。従って、ある位相差の参照光と物体光とが入射される画素の画素値からなる再構築画像のラインプロファイル周波数が目標値になったときには、参照光と物体光との位相差の変化の周期が、一連の異なる位相差の参照光と物体光とが入射されるべき画素間の間隔に合致しているとみなすことができる。従って、1つの位相差の参照光と物体光とが入射される画素の画素値からなる再構築画像のラインプロファイル周波数が目標値となれば、必然的に、他の位相差の参照光と物体光とが入射される画素の画素値からなる再構築画像のラインプロファイル周波数も目標値になっていると考えられる。
【0014】
請求項7に記載したように、制御手段は、被測定物体が存在しない状態で撮像手段の受光面に形成される干渉パターンを記録したときに、その干渉パターンにおける干渉縞が、Y軸方向に対して傾斜しているか否かを判別し、傾斜している場合には、ミラーの回転角度の調整方向と直交する方向において、ミラーの反射面のあおり角度の調整を行なうことが好ましい。上述した縞模様の干渉パターンは、撮像手段の受光面までの光の光路の長さをY軸方向では一定としつつ、X軸方向において変化させることによって得られる。干渉パターンにおける干渉縞がY軸方向に対して傾斜している状態は、Y軸方向においても光路長が異なっている状態である。従って、干渉パターンの干渉縞が、Y軸方向に対して傾斜している場合には、ミラーの回転角度の調整方向と直交する方向において、ミラーの反射面のあおり角度の調整を行なうことにより、修正することができる。なお、縞模様の干渉パターンを採用することにより、このようなミラーの反射面のあおり角度の調整も容易に行うことができる。
【0015】
請求項8〜10は、干渉画像記録装置における光学系の調整方法に関するものであるが、それらの内容は請求項1、2、及び7と類似するため、説明を省略する。
【0016】
請求項11に記載の干渉画像記録装置における光学系の調整方法では、あおり角度調整ステップによりミラーのあおり角度の調整が行なわれた後に、回転角度調整ステップによりミラーの回転角度の調整が行なわれることを特徴としている。回転角度調整ステップによるミラーの回転角度の調整は、干渉パターンにおける干渉縞が、Y軸方向と平行であることを前提としているためである。ただし、ミラーの回転角度の調整において、その回転角度を微小角度ずつ変化させ、その都度、ラインプロファイル周波数と目標値との関係を確認するような場合には、そのラインプロファイル周波数と目標値との関係の確認の前に、あおり角度の調整を行なうことが好ましい。ミラーの反射面の回転角度の調整によってあおり角度が変化してしまう可能性もあるためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面に基づいて説明する。図1は、本発明による干渉画像記録装置が組み込まれた干渉画像記録再生装置の全体構成を示す構成図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る干渉画像記録再生装置は、所定波長(例えば、532nm)のレーザ光を発光する光源1を備える。光源1によって発光されたレーザ光は、レンズ2a,2bに入射される。レンズ2a,2bに入射されたレーザ光は、これらのレンズ2a,2bが備えるコリメータ機能によって、ビーム径が拡大されるとともに、平行光に変換される。
【0019】
レンズ2a,2bによって変換された平行光は、ビームスプリッタ3に入射される。ビームスプリッタ3は、入射された平行光を、干渉パターンを作成する際に基準となる参照光8と、被測定物体10に向けて照射される物体光9とに分割する。ビームスプリッタ3を透過した参照光8は、参照光調整ミラー4により、ビームコンバイナ6に向けて反射される。
【0020】
参照光調整ミラー4は、ミラーホルダに保持されている。当該ミラーホルダには、例えば複数のピエゾアクチュエータが設けられており、それら複数のピエゾアクチュエータの伸縮駆動によって、回転方向16及びあおり方向17において、参照光調整ミラー4の微小な(例えば数ミクロンオーダーの)角度調整が可能に構成されている。
【0021】
一方、ビームスプリッタ3により反射された物体光9は、さらにミラー5によって被測定物体10に向けて反射される。被測定物体10を通過した物体光9は、ビームコンバイナ6に入射される。
【0022】
ビームコンバイナ6に入射した参照光8及び物体光9は、撮像手段としてのCCD7の受光面に入射される。これにより、CCD7の受光面に、参照光8と物体光9との干渉パターンが形成される。
【0023】
CCD7は、多数の画素が2次元配列されたものである。各画素は、例えば7.4μmの画素サイズを有する。CCD7の受光面に干渉パターンが形成されたとき、各画素は、形成された干渉パターンの濃淡度合(輝度)に応じた電気信号値(画素値)を出力する。このようにして、CCD7は干渉パターンを検出し、被測定物体10の画像情報である検出画像データ(各画素の画素値の集合)がコンピュータ11に出力される。コンピュータ11は、CCD7の検出画像データを記録するとともに、公知のデジタルホログラフィ法を用いて、被計測物体10の3次元再生像を計算により算出する。
【0024】
ここで、本実施形態においては、上述したように、CCD7の受光面には、多数の画素が2次元配列されており、当該2次元配列の一配列方向をX軸方向、その一配列方向に直交する配列方向をY軸方向として定義する。
【0025】
そして、本実施形態では、物体光9は、ビームコンバイナ6を透過して、CCD7の受光面にほぼ垂直に入射するが、ビームコンバイナ6によって反射される参照光8は、CCD7の垂直方向から上述したX軸に向かって所定の角度だけ傾いて、斜めに入射するように、ビームコンバイナ6が配置されている。この結果、物体光9に関しては、CCD7の受光面において位相の違いは生じない。しかし、参照光8に関しては、Y軸方向に沿って配列された各画素には同じ位相値を有する参照光8が入射されるが、X軸方向に隣接する各画素には、異なる位相値の参照光が入射される。このため、参照光8と物体光9との位相差に応じてCCD7の受光面に形成される干渉パターンは、後述する図3(a)や図5(a)に示すように、Y軸方向に同じ濃淡度合の筋が伸び、X軸方向においてはその筋の濃淡度合が変化する縞模様となる。本実施形態では、このような縞模様を呈する干渉パターンを用いるので、干渉パターンの模様の単純さから、後述する、参照光調整ミラーの回転方向16及びあおり方向17への角度調整をより容易に行なうことができる。なお、図1において、紙面の上下方向がX軸方向に対応し、奥行き方向がY軸方向に対応する。
【0026】
チルト式位相シフトホログラフィ法では、一般的に、隣り合う画素において、参照光8と物体光9との位相差がπ/2ずつ変化するように設定される。この場合、干渉パターンは、互いに異なる4種類の位相値に位相シフトした4つの干渉パターンが組み合わされた状態となる。従って、1回の干渉パターンの記録で、被測定物体10の再生像を得るために必要な情報(3種類以上の位相値に位相シフトされた干渉パターン)を得ることができる。
【0027】
隣り合う画素における、参照光8と物体光9との位相差の変化分は、以下の式1によって表される。
(式1)
隣り合う画素の位相差の変化分=(2π/λ)・ρsinθ
なお、λはレーザ光の波長、ρはCCD7の分解能(画素の画素サイズ)、及びθは物体光9に対する参照光8の入射角度である。
【0028】
例えば、干渉パターンの記録のために一般的に用いられるYAGレーザは、波長λが532nmであり、CCD7の画素サイズ7.4μmである場合、隣り合う画素において、参照光8と物体光9との位相差がπ/2ずつ変化するためには、物体光9に対する参照光8の入射角度θは1.03°と非常に微小な角度となる。
【0029】
さらに、特許文献1に示される従来装置のように、X軸方向及びY軸方向の両方向において、隣り合う画素間で位相差を異ならせた干渉パターンを得るためには、参照光8をX軸方向及びY軸方向の各々の方向に向かって傾斜するように、参照光8の入射角度を設定する必要がある。この入射角度の設定は、所望の干渉パターンに対応する各画素毎の濃淡度合に対応する電気信号値(画素値)を目標値とし、各画素の画素値がその目標値に一致するように、ミラーが傾動駆動されることによりなされる。しかしながら、個々の画素の画素値をすべて目標値に一致させるように、ミラーの角度を調整することは容易なことではない。
【0030】
そこで、本実施形態では、同じ位相差の参照光8と物体光9とが入射されるべき、言い換えれば、同じ位相値を有する参照光8が入射されるべき画素の画素値に基づいて、ラインプロファイル周波数を算出し、このラインプロファイル周波数が目標値となるように、参照光調整ミラー4の反射面の回転方向16の角度を制御することとした。これにより、参照光8の入射角度が設定値に一致するようにミラーの反射面の角度の調整を容易に行うことができる。
【0031】
以下、本実施形態における、干渉画像記録再生装置における光学系の調整手法に関して、図2のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0032】
まず、ステップS110では、カウンタNをゼロにクリアする。続くステップS120では、被測定物体10が存在しない状態で、CCD7の受光面に干渉パターンが形成されたときに、CCD7から出力される検出画像データを記録する。このとき、参照光8のみが、CCD7の受光面において位相値が連続的に変化するので、参照光8と物体光9とがともに一様な平行光束であれば、干渉パターンにおける干渉縞の濃淡度合(輝度)は、以下の式2に示されるように、一定の周期で変化する。
(式2)
干渉縞の輝度=A+A+2Acos(Δφ)
なお、A、Aは、参照光8と物体光9の振幅、Δφは、参照光8と物体光9との位相差である。
【0033】
この様子を具体的に示したのが、図3(a),(b)及び図5(a)、(b)である。図3(a)は、参照光8の入射角度が設定値であり、X軸方向に隣り合う画素において、位相値がπ/2ずつずれているときの干渉パターンについて、受光面の一部の画素における濃淡度合を示したものであり、図3(b)は、各画素の濃淡度合(輝度)に応じて各画素が出力する画素値の、X軸方向に沿ったラインプロファイルを示したものである。また、図5(a)は、参照光8の入射角度が設定値よりも大きくなったときの、受光面の一部の画素における濃淡度合を示したものであり、図5(b)は、各画素の濃淡度合(輝度)に応じて各画素が出力する画素値の、X軸方向に沿ったラインプロファイルを示したものである。
【0034】
図3(a)及び図5(a)とも、干渉縞の輝度は、それぞれ一定の周期で変化している。ただし、参照光8の入射角度が設定値よりも大きいとき、X軸方向において隣り合う画素の参照光8と物体光9との位相差は、式1からπ/2よりも大きくなる。このため、干渉縞の周期は、図3(a)の干渉パターンの干渉縞の周期よりも短くなっている。
【0035】
次に、ステップS130では、参照光8と物体光9との位相差が同一となるべき、すなわち参照光8の位相値が同一となるべき画素の画素値を抽出し、抽出した順序で画素値を組み合わせて画像を再構築する。ただし、実際に再構築画像を形成しなくとも、抽出した画素値から、直接後述するラインプロファイルの測定を行なっても良い。
【0036】
本実施形態では、参照光8の入射角度が設定値に一致して、狙いとする干渉パターンが得られているとき、X軸方向に隣り合う画素において、π/2ずつ参照光8の位相値が変化するので、参照光8の位相値が同一となるべき画素は、X軸方向において4画素おきに存在する。従って、4画素おきに画素値を抽出して再構築画像を形成する。
【0037】
図4(a)〜(d)及び図6(a)〜(d)は、再構築画像の例を示すものである。具体的には、図4(a)〜(d)は、図3(a)に示す干渉パターンが得られたときの、4n列、4n+1列、4n+2列、及び4n+3列(n=0,1,2,…)の画素の画素値からそれぞれ形成された再構築画像を示すものである。また、図6(a)〜(d)は、図5(a)に示す干渉パターンが得られたときの、4n列、4n+1列、4n+2列、及び4n+3列(n=0,1,2,…)の画素の画素値からそれぞれ形成された再構築画像を示すものである。
【0038】
図4(a)〜(d)に示すように、物体光9に対する参照光8の入射角度が設定値通りであり、狙いとする干渉パターンが得られているときには、再構築画像を形成する各画素の画素値は同一となる。一方、図6(a)〜(d)に示すように、参照光8の入射角度が設定値からずれている場合には、再構築画像を形成する各画素の画素値は同一とはならない。
【0039】
ステップS140では、再構築画像のX軸方向に沿った複数の画素の画素値のラインプロファイルを測定する。なお、ラインプロファイルは、X軸方向に沿って並んだ任意の一列の画素列の画素値から測定しても良いし、Y軸方向に沿って並んだ画素列毎に平均画素値を算出し、X軸方向に沿って各画素列毎の平均画素値から測定しても良い。また、本実施形態では、上述したように縞模様の干渉パターンを採用しているので、基本的にY軸方向に配列された画素の画素値は同じである。従って、再構築画像においてX軸方向に並んだ複数の画素の画素値のラインプロファイルを測定し、後述する手法に従って、ラインプロファイルの周波数を目標値に合わせ込むだけで、参照光調整ミラー4の回転方向16の角度調整が完了する。
【0040】
この測定されるラインプロファイルの例を、図7(a)〜(d)に示す。図7(a)〜(d)に示すように、参照光8の入射角度が設定値に一致しているときには、再構築画像の各画素の画素値は同一であるため、ラインプロファイルの周波数はゼロとなる。一方、参照光8の入射角度が設定値からずれている場合には、画素値のラインプロファイルは周期的なものとなる。そして、図7(a)〜(d)に示すように、入射角度が設定値に近い場合(設定値±A°の場合)、設定値から遠い場合(設定値±B°の場合)に比較して、ラインプロファイル周波数は低下する。
【0041】
続くステップS150では、ステップS140にて測定したラインプロファイルから、そのラインプロファイルの周波数Fを算出する。そして、ステップS160において、ラインプロファイル周波数Fが目標値(ゼロ)に一致しているか否かを判定する。なお、目標値は、ゼロを中心とした所定の範囲として設定しても良い。
【0042】
ステップS160において、ラインプロファイル周波数Fが目標値に一致していると判定された場合、参照光8の入射角度が設定値に一致しており、狙いとする干渉パターンが得られているとみなされるので、処理を終了する。一方、ステップS160において、ラインプロファイル周波数Fが目標値に一致していないと判定された場合、ステップS170の処理に進む。
【0043】
ステップS170では、カウンタNの値がゼロであるか否かを判定する。カウンタNの値がゼロであると判定された場合、参照光調整ミラー4の最初の回転方向16への角度調整であるため、ステップS180に進んで、参照光調整ミラー4を、予め定めた回転方向16のプラス方向へ所定の微小角度αN°だけ回転させる。そして、ステップS220において、カウンタNの値をインクリメントし、再度、ステップS120〜ステップS160までの処理を実行する。
【0044】
ステップS180における参照光調整ミラー4の角度調整によっても、再度実行されたステップS160において、ラインプロファイル周波数は目標値に一致しないと判定された場合、ステップS170の判定処理において否定判定されるので、ステップS190の処理が実行される。ステップS190では、今回の処理で算出したラインプロファイル周波数Fから前回の処理で算出したラインプロファイル周波数FN−1を減算した結果が、ゼロより小さいか否かを判定する。すなわち、今回の処理で算出したラインプロファイル周波数Fが前回の処理で算出したラインプロファイル周波数FN−1よりも低下しているか否かを判定するのである。
【0045】
上述したように、参照光8の入射角度が設定値に近づくほど、再構築画像から算出されるラインプロファイル周波数は低下し、設定値に一致したとき、ラインプロファイル周波数はゼロとなる。このため、ステップS190において、今回の処理で算出したラインプロファイル周波数Fが前回の処理で算出したラインプロファイル周波数FN−1よりも低下していると判定された場合、参照光8の入射角度は設定値に近づいているとみなすことができる。そのため、この場合には、ステップS200に進んで、前回の調整と同じ方向に所定の微小角度αN°だけ参照光調整ミラー4を回転させる。
【0046】
一方、ステップS190において、今回の処理で算出したラインプロファイル周波数Fが前回の処理で算出したラインプロファイル周波数FN−1よりも高くなったと判定された場合、参照光8の入射角度は設定値から逆に離れているか、設定値よりも小さくなったとみなすことができる。そのため、この場合には、ステップS210に進んで、前回の調整と逆の方向に、ミラー4の回転角度が次第に小さくなる角度(例えば前回の処理での移動角度αN-1°からミラー4の調整機構の最小分解能β°だけ減じた角度)で参照光調整ミラー4を回転させる。
【0047】
上述した処理を、ラインプロファイル周波数Fがゼロになるまで繰り返すことで、参照光8の入射角度を設定値に調整することができる。
【0048】
なお、上述した実施形態において、ラインプロファイルの測定及びラインプロファイル周波数の算出は、4種類の再構築画像それぞれについて実施しなくとも良く、参照光8と物体光9との4種類の位相差の中で、任意の1つだけの位相差の参照光8と物体光9とが入射される画素の画素値からなる再構築画像に関して、ラインプロファイル周波数を算出するようにしても良い。
【0049】
再構築画像は、上述したように、同じ位相差の参照光8と物体光9とが入射される画素の画素値からなる。同じ位相差の参照光8と物体光9とが入射される画素はX軸方向において離れており、その間には異なる位相差の参照光8と物体光9とが入射される画素が介在する。従って、ある1つの位相差の参照光8と物体光9とが入射される画素の画素値からなる再構築画像のX軸方向に並んだ画素の画素値のラインプロファイル周波数が目標値になったときには、参照光8と物体光9との位相差の変化の周期が、一連の4種類の位相差の参照光8と物体光9とが入射されるべき4画素間の間隔に合致しているとみなすことができる。従って、1つの位相差の参照光8と物体光9とが入射される画素の画素値からなる再構築画像のラインプロファイル周波数が目標値となれば、必然的に、他の位相差の参照光8と物体光9とが入射される画素の画素値からなる再構築画像のラインプロファイル周波数も目標値になっていると考えられるためである。
【0050】
また、上述した実施形態では、参照光8の入射角度を設定値に一致させるために、参照光調整ミラー4の回転方向16の角度調整を行なう手法について説明した。しかしながら、参照光調整ミラー4は、図1に示すあおり方向17において角度ずれが生じる場合もある。
【0051】
上述した縞模様の干渉パターンは、CCD7の受光面までの光の光路の長さをY軸方向では一定としつつ、X軸方向のみにおいて変化させることによって得られるものである。しかし、参照光調整ミラー4の角度があおり方向17においてずれると、Y軸方向における光路長さも異なることになる。この場合、干渉パターンの干渉縞12は、図8に示すように、Y軸方向に対して傾斜した状態となる。
【0052】
このため、被測定物体が存在しない状態でCCD7の受光面に形成される干渉パターンを記録したときに、その干渉パターンにおける干渉縞が、Y軸方向に対して傾斜しているか否かを画像処理により判別し、傾斜している場合には、参照光調整ミラー4をあおり方向17において角度調整する。干渉パターンにおける干渉縞がY軸方向に対して傾斜しているか否かは、例えば、Y軸方向において、同一画素値を出力している画素が、Y軸方向に沿って並んでおらず、X軸方向に序々に遷移しているか否かにより判別することができる。
【0053】
このようなあおり方向17の角度調整を行なうことにより、図8に示すようにY軸に対して傾斜した干渉縞12を、Y軸と平行に伸びるように修正することができる。
【0054】
上述したあおり方向17の角度調整は、参照光調整ミラー4の回転方向16の角度調整よりも先に行なわれることが好ましい。参照光調整ミラー4の回転方向16の角度調整は、干渉パターンにおける干渉縞が、Y軸方向と平行であることを前提としているためである。ただし、参照光調整ミラー4の回転方向16の角度調整において、その回転角度を微小角度α°ずつ変化させ、その都度、ラインプロファイル周波数Fと目標値との関係を確認する場合、そのラインプロファイル周波数Fと目標値との関係の確認の前に、あおり方向17の角度調整を行なうことが好ましい。参照光調整ミラーの回転方向16の角度調整によってあおり方向17の角度が変化してしまう可能性もあるためである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施形態に係わる干渉画像記録再生装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】干渉画像記録再生装置における光学系の調整処理手順を示すフローチャートである。
【図3】(a)は、参照光が設定入射角度であり、X軸方向に隣り合う画素において、参照光の位相値がπ/2ずつずれているときの干渉パターンについて、受光面の一部の画素における濃淡度合を示した図であり、(b)は、各画素の濃淡度合(輝度)に応じて各画素が出力する画素値の、X軸方向に沿ったラインプロファイルを示した図である。
【図4】(a)〜(d)は、図3(a)に示す干渉パターンが得られたときの、4n列、4n+1列、4n+2列、及び4n+3列(n=0,1,2,…)の画素の画素値からそれぞれ形成された再構築画像を示す図である。
【図5】(a)は、参照光の入射角度が設定値よりも大きくなったときの、受光面の一部の画素における濃淡度合を示した図であり、(b)は、各画素の濃淡度合(輝度)に応じて各画素が出力する画素値の、X軸方向に沿ったラインプロファイルを示した図である。
【図6】(a)〜(d)は、図5(a)に示す干渉パターンが得られたときの、4n列、4n+1列、4n+2列、及び4n+3列(n=0,1,2,…)の画素の画素値からそれぞれ形成された再構築画像を示す図である。
【図7】(a)〜(d)は、4n列、4n+1列、4n+2列、及び4n+3列(n=0,1,2,…)の画素の画素値から形成された各々の再構築画像から測定されるラインプロファイルを示す図である。
【図8】参照光調整ミラー4が、あおり方向17において角度ずれが生じる場合の、干渉パターンの様子の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 光源
2a,2b レンズ
3 ビームスプリッタ
4 参照光調整ミラー
5 ミラー
6 ビームコンバイナ
7 CCD
8 参照光
9 物体光
10 被計測物体
11 コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の位相値を有する参照光と、被測定物体に向けて照射される物体光とを干渉させることによって、撮像手段の受光面に形成される干渉パターンを前記被測定物体の画像情報として記録する干渉画像記録装置において、
入射された光を、前記参照光として前記撮像手段の受光面に向けて反射するとともに、反射面の回転角度によって、前記受光面への前記参照光の入射角度を変化させるミラーと、
前記ミラーの反射面の回転角度を調整する調整手段と、
前記被測定物体が存在しない状態で前記撮像手段の受光面に形成された干渉パターンが記録されたときに、干渉パターンにおける濃淡度合が同一となるべき画素の画素値を抽出して、その抽出された画素の画素値のみから画像を再構築した場合に、その再構築画像の一方向に沿った複数の画素の画素値のラインプロファイル周波数を算出し、そのラインプロファイル周波数が目標値となるように、前記調整手段を介して前記ミラーの反射面の回転角度を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする干渉画像記録装置。
【請求項2】
前記撮像手段の受光面には、多数の画素が2次元配列されており、当該2次元配列の一配列方向をX軸方向、その一配列方向に直交する配列方向をY軸方向として定義したときに、前記被測定物体が存在しない状態で前記撮像手段の受光面に干渉パターンが形成されたとき、Y軸方向に沿って配列された各画素には、位相差が同一となる参照光と物体光とが入射されるとともに、X軸方向に隣接する各画素には、所定の繰り返し周期で位相差が異なる参照光と物体光とが入射されることを特徴とする請求項1に記載の干渉画像記録装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記Y軸方向に沿って配列された画素列の画素値を、X軸方向に沿って前記所定の繰り返し周期毎に抽出し、その抽出順序に従って画素列の画素値を組み合わせることによって前記再構築画像とするものであって、前記ラインプロファイル周波数として、前記X軸方向に沿った複数の画素の画素値のラインプロファイル周波数を算出することを特徴とする請求項2に記載の干渉画像記録装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記再構築画像において、前記X軸方向に沿って並んだ任意の一列の画素列の画素値から、前記ラインプロファイル周波数を算出することを特徴とする請求項3に記載の干渉画像記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記再構築画像において、前記Y軸方向に沿って並んだ画素列毎に平均画素値を算出し、前記X軸方向に沿って各画素列毎の前記平均画素値のラインプロファイル周波数を算出することを特徴とする請求項3に記載の干渉画像記録装置。
【請求項6】
前記制御手段は、参照光と物体光との異なる位相差の中で、任意の1つだけの位相差の参照光と物体光とが入射される画素の画素値からなる再構築画像に関して、前記ラインプロファイル周波数を算出することを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の干渉画像記録装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記被測定物体が存在しない状態で前記撮像手段の受光面に形成される干渉パターンを記録したときに、その干渉パターンにおける干渉縞が、前記Y軸方向に対して傾斜しているか否かを判別し、傾斜している場合には、前記ミラーの回転角度の調整方向と直交する方向において、前記ミラーの反射面のあおり角度の調整を行なうことを特徴とする請求項2乃至6のいずれかに記載の干渉画像記録装置。
【請求項8】
複数の位相値を有する参照光と、被測定物体に向けて照射される物体光とを干渉させることによって、撮像手段の受光面に形成される干渉パターンを前記被測定物体の画像情報として記録する干渉画像記録装置における光学系調整方法であって、
前記干渉画像記録装置は、
入射された光を、前記参照光として前記撮像手段の受光面に向けて反射するとともに、反射面の回転角度によって、前記受光面への前記参照光の入射角度を変化させるミラーと、
前記ミラーの反射面の回転角度を調整する調整手段と、を備え
前記被測定物体が存在しない状態で前記撮像手段の受光面に形成された干渉パターンが記録されたときに、干渉パターンにおける濃淡度合が同一となるべき画素の画素値を抽出する抽出ステップと、
抽出された画素の画素値のみから画像を再構築した場合に、その再構築画像の一方向に沿った複数の画素の画素値のラインプロファイル周波数を算出する算出ステップと、
前記ラインプロファイル周波数と目標値とを比較し、前記ラインプロファイル周波数が目標値となるまで、前記調整手段を介して前記ミラーの反射面の回転角度を調整する回転角度調整ステップと、を備えることを特徴とする干渉画像記録装置における光学系調整方法。
【請求項9】
前記撮像手段の受光面には、多数の画素が2次元配列されており、当該2次元配列の一配列方向をX軸方向、その一配列方向に直交する配列方向をY軸方向として定義したときに、前記被測定物体が存在しない状態で前記撮像手段の受光面に干渉パターンが形成されたとき、Y軸方向に沿って配列された各画素には、位相差が同一となる参照光と物体光とが入射されるとともに、X軸方向に隣接する各画素には、所定の繰り返し周期で位相差が異なる参照光と物体光とが入射されることを特徴とする請求項8に記載の干渉画像記録装置における光学系調整方法。
【請求項10】
前記被測定物体が存在しない状態で前記撮像手段の受光面に形成される干渉パターンを記録したときに、その干渉パターンにおける干渉縞が、前記Y軸方向に対して傾斜しているか否かを判別するステップと、
前記干渉縞が前記Y軸方向に対して傾斜している場合には、当該干渉縞が前記Y軸方向と平行に伸びるように、前記ミラーの回転角度の調整方向と直交する方向において、前記ミラーの反射面のあおり角度の調整を行なうあおり角度調整ステップと、をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の干渉画像記録装置における光学系調整方法。
【請求項11】
前記あおり角度調整ステップにより前記ミラーのあおり角度の調整が行なわれた後に、前記回転角度調整ステップにより前記ミラーの回転角度の調整が行なわれることを特徴とする請求項10に記載の干渉画像記録装置の光学系調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−145843(P2010−145843A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324433(P2008−324433)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(504255685)国立大学法人京都工芸繊維大学 (203)
【Fターム(参考)】