説明

平ベルト

【課題】ベルトの長手方向における強度を低下させることなく、芯体層における心線と樹脂フィルムとの接着強度を高める。
【解決手段】平ベルト10は、芯体層20と、芯体層20の上面及び下面それぞれに積層接着される第1及び第2の帆布21、22と、第1及び第2の帆布21、22それぞれの上面及び下面に積層接着される第1及び第2の表面ゴム層23、24とを備える。芯体層20は、樹脂フィルム26の内部に、多数の無撚りフィラメント25が埋設されて構成される。無撚りフィラメント25は、長手方向に延在すると共に、ベルトの横断面においてランダムに配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置あるいは動力伝達装置に用いられる平ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エラストマーから形成され、心線が埋設される中間層の両面に帆布を接着し、帆布の外面にゴム又は熱可塑性エラストマーの表面層を積層して構成される平ベルトが知られている(特許文献1参照)。この平ベルトでは、心線は非伸縮性で高強度な撚線で構成されると共に、長手方向に延在されたものが幅方向に一列に並べられており、長手方向におけるベルトの引張強度は、心線によって確保されている。
【0003】
上記平ベルトは、いわゆるフィンガー継手によって、帯状の平ベルトの両端部が継ぎ合わされて、無端状に成形されて使用される。フィンガー継手では、フィンガー状にされたベルトの両端部が突き合わされ、その突き合わせ部分が加圧加熱されることにより中間層が溶融され、溶融された中間層によって両端部が接合され、無端状ベルトに成形される。
【特許文献1】特開2001−153186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記平ベルトは、比較的大径の撚線が中間層に埋設されているため、心線と中間層のエラストマーとの接着面積が径に対して相体的に小さくなり、撚線とエラストマーとの間の界面剥離が生じやすいという問題がある。特に、特許文献1の平ベルトは、心線が1列に並べられ層を成しているので、その心線の層とエラストマーとの間の接着強度が低下しやすく、それらの間で層間剥離が生じやすくなる。さらに、1列に並べられた心線は、継手加工される際、溶融したエラストマーと共に流されることによりその配置位置が乱されて、ベルト張力が不均一になることもある。
【0005】
そこで、本発明は、これら問題点に鑑みてなされたものであり、ベルトの長手方向における引張強度を十分に高くしつつ、中間層における心線の界面剥離を生じにくくし、さらにフィンガー継手を行っても継手部分において心線の位置が乱れにくい平ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る平ベルトは、樹脂フィルムの内部に、ベルトの長手方向に延在する複数の無撚りフィラメントが埋設された芯体層を備えることを特徴とする。このとき、無撚りフィラメントは、ベルトの横断面においてランダムに配置されることが好ましい。
【0007】
上記樹脂フィルムは、例えばポリアミド樹脂フィルムまたはウレタン樹脂フィルムである。芯体層の両面には、帆布がそれぞれ積層されていても良い。帆布の少なくとも一方の外側には、さらに表面ゴム層が積層されていても良い。無撚りフィラメントは、例えば、アラミド繊維で形成される。
【0008】
上記平ベルトは、例えば、帯状に形成された平ベルトの両端部の端面同士が、突き合わされた状態で、加熱加圧されることにより、芯体層が溶融され、その溶融された芯体層によって両端部が融着されて無端状に形成される。
【0009】
また例えば、帯状に形成された平ベルトの両端部の端面の少なくとも一方に接着剤が塗布された後、それら端面同士が突き合わされ、接着剤によって端面同士が接着されて無端状に形成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、心線として無撚りフィラメントを用いることにより、ベルトの長手方向における引張強度を十分に高くしつつ、中間層における心線と樹脂フィルムとの間の剥離を生じにくくすることができる。また、上記無撚りフィラメントを横断面においてランダムに並べることにより、心線が層を成されないので、中間層における心線の界面剥離をより有効に防止できる。さらに、ベルトの両端部が溶融されて継ぎ合わされたベルトでも、芯体層に埋設される心線を継手部分において均等に配置しやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明を具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示すための平ベルトの横断面図である。なお、以下の説明においては、図1における下方側を下面側、上方側を上面側として説明する。
【0012】
平ベルト10は、無端状に形成されたベルトであって、例えば搬送用に使用される。平ベルト10は、ベルトの厚さ方向における中央部分に設けられ、ベルトの全長にわたって延びる芯体層20と、芯体層20の上面及び下面それぞれに積層接着される第1及び第2の帆布21、22と、第1及び第2の帆布21、22それぞれの上面及び下面に積層接着される第1及び第2の表面ゴム層23、24とを備える。
【0013】
芯体層20は、樹脂フィルム26の内部に、無撚りフィラメント25が無数埋設されて構成される。樹脂フィルム26としては、ウレタン樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム等の熱可塑性樹脂が好適に使用される。無数の無撚りフィラメント25は、各々ベルトの長手方向に沿って延在すると共に、図1に示すように、ベルトの横断面において芯体層20の全体にわたってランダムに配置されている。本実施形態における無撚りフィラメント25は、ベルト10の抗張部材としての役割を果す。
【0014】
上記樹脂フィルム26としてはポリアミド樹脂フィルムが用いられることが特に好ましい。ポリアミド樹脂フィルムは、比較的融点が高く、ベルト長手方向及び幅方向に高剛性であるため、長手方向のみならず幅方向においてもベルトを補強することができ、例えばベルトの耐フランジ性を強化できる。
【0015】
無撚りフィラメント25は、高張力ポリエステル繊維、或いはアラミド繊維等で形成されるが、好ましくは剛性がより高いアラミド繊維が使用される。無撚りフィラメント25は、モノフィラメント或いは複数のフィラメントが束ねられたものであって、撚りがかけられていないものである。
【0016】
第1及び第2の帆布21、22は、ベルトの長手方向に伸縮性を有すると共に、幅方向に実質的に非伸縮である。本実施形態では、長手方向に伸縮する帆布が用いられることにより、ベルトの長手方向における伸縮性を良好にすることができる。第1及び第2の帆布21、22は、例えばベルトの長手方向に延在し、伸縮性糸である第1の糸(例えば経糸)と、ベルトの幅方向に延在し、非伸縮性糸である第2の糸(例えば緯糸)とによって織られた織布である。第1及び第2の帆布21、22は、例えばポリアミド繊維の糸によって織られている。
【0017】
第1及び第2の表面ゴム層23は、ニトリルゴム等から形成されたゴム層である。第1の表面ゴム層23の上面は、たとえばベルトの外周面であって、被搬送物を搬送するための搬送面となる。第1の表面ゴム層23の上面には、所定の摩擦係数を有するように、規則的に配列された凹凸である目打ちが形成される。第2の表面ゴム層24の下面は、例えばベルトの内周面であって、プーリに掛け回されるときプーリに接触する面となる。なお、第2の表面ゴム層24の下面には、規則的に配列された凹凸である目打ちが形成されており、搬送面として使用することも可能である。
【0018】
本実施形態に係る平ベルト10は、例えば以下説明するような方法によって製造される。本実施形態ではまず、無撚りフィラメント25が、一方向に延在しかつその一方向の垂直面においてランダムになるように、並べられたところに、溶融された樹脂が押し出されて供給される。そして、その供給された樹脂の内部に無撚りフィラメント25が埋設されると共に樹脂が固化されて、芯体層20が成形される。その後、芯体層20の両面に、第1及び第2の帆布21、22、並びに第1及び第2の表面ゴム層23、24が積層接着されて、帯状のベルト10が得られる。
【0019】
図2に示すように帯状のベルト10における、両端部10A、10Bは、適宜切断されて、フィンガー状に加工される。具体的には、一方の端部10Aは、ベルトの長手方向に突出した二等辺三角形の凸部13が、幅方向に連続して並べられた形状を呈する。他方の端部10Bは、凸部13と相補的に同じ形状を有する複数の凹部14がベルト幅方向に連続的に並べられた形状を呈し、一方の端部21に相補的なフィンガー状に加工される。両端部10A、10Bは、各凸部13が各凹部14に嵌め込まれることにより、それらの端面同士が突き合わされることとなる。端面同士が突き合わされた両端部10A、10Bは、加熱されると共にベルトの厚さ方向に加圧され、樹脂フィルム26が溶融され、その溶融された樹脂フィルム26によって、両端部10A、10Bが融着され、無端状ベルトが得られる。
【0020】
以上のように、本実施形態では、撚り糸と比べて小径である無撚りフィラメントが心線として使用されるので、心線と樹脂フィルムとの接着面積が径に対して相体的に大きくなる。したがって、心線と樹脂フィルムとの間の界面剥離が生じにくくなり、耐久性の高いベルトを提供することができる。
【0021】
また、無撚りフィラメントは、列を成しておらず、横断面においてランダムに配列されている。したがって、無撚りフィラメントを芯体層の全体にわたって密に埋設できるので、芯体層の厚さを薄くしても、ベルトの長手方向における引張強度を十分に高くすることができる。さらに、フィンガー継手を行うとき、樹脂が溶融され、その樹脂の流れに合わせて無撚りフィラメントが流れても、無撚りフィラメントのランダムな配列は維持されるので、ベルト張力が不均一になることが防止される。
【0022】
本実施形態では、凸部13は二等辺三角形に限定されず、矩形や他の三角形に形成されていても良い。
【0023】
また、本実施形態では、両端部10A、10Bの端面には、いずれか一方または両方に接着剤が塗布された後、端面同士が突き合わされることにより、上記接着剤によって端面同士が接着されて両端部10A、10Bが継ぎ合わされても良い。この場合、両端面が接着されるとき、突き合わされた部分は、幅方向に加圧されるが、加熱は必要ないので芯体層20の樹脂フィルム25は溶融されない。
【0024】
また、両端部10A、10Bは、スカイバー継手によって継ぎ合わされても良い。具体的には、ベルトの両端部10A、10Bの端面が互いに相補的なテーパー面に形成され、一方或いは両方のテーパー面に接着剤が塗布された後、その接着剤によってテーパー面同士が接着されて、両端部10A、10Bが継ぎ合わされる。両端部がスカイバー継手によって継ぎ合わされる場合、両端部10A、10Bは厚さ方向に加圧されると共に、加熱されるが、この加熱によって芯体層20の樹脂フィルムは溶融されない。
【0025】
なお、両端部10A、10Bが溶融されずに接着剤によって接着されるこれらの方法は、樹脂フィルム26がポリアミド樹脂フィルムである場合に好適である。ポリアミド樹脂フィルムは融点が高いためである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る平ベルトの横断面図である。
【図2】無端状に継ぎ合わされる前の平ベルトの両端部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
10 平ベルト
20 芯体層
21、22 第1及び第2の帆布
23、24 第1及び第2の表面ゴム層
25 無撚りフィラメント
26 樹脂フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムの内部に、ベルトの長手方向に延在する複数の無撚りフィラメントが埋設された芯体層を備えることを特徴とする平ベルト。
【請求項2】
前記無撚りフィラメントは、ベルトの横断面においてランダムに配置されることを特徴とする請求項1に記載の平ベルト。
【請求項3】
前記樹脂フィルムは、ポリアミド樹脂フィルムまたはウレタン樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1に記載の平ベルト。
【請求項4】
前記芯体層の両面には、帆布がそれぞれ積層されることを特徴とする請求項1に記載の平ベルト。
【請求項5】
前記帆布の少なくとも一方の外側には、さらに表面ゴム層が積層されることを特徴とする請求項4に記載の平ベルト。
【請求項6】
前記無撚りフィラメントは、アラミド繊維で形成されることを特徴とする請求項1に記載の平ベルト。
【請求項7】
帯状に形成された平ベルトの両端部の端面同士が、突き合わされた状態で、加熱加圧されることにより、前記芯体層が溶融され、その溶融された芯体層によって前記両端部が融着されて無端状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の平ベルト。
【請求項8】
帯状に形成された平ベルトの両端部の端面の少なくとも一方に接着剤が塗布された後、それら端面同士が突き合わされ、前記接着剤によって端面同士が接着されて無端状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の平ベルト。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−242007(P2009−242007A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87181(P2008−87181)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】