説明

平型整流子

絶縁性の成形材料から形成された支持部材(1)と、整流子軸(2)を中心にして均等配置された複数の導体セグメント(3)ならびに同様に多数であって前記導体セグメントとインタロック式かつ導電的に結合されているモノカーボンから形成されブラシ滑走面(5)を定義する炭素材セグメント(4)とからなる平型整流子において、各炭素材セグメント(4)はブラシ滑走面(5)に対向して配置された環状の突起部(13)を備え、その環状の端面(15)がこれに該当する導体セグメント(3)の対応する環状の接触面(16)に接合する。この環状の接触面(16)はいずれも対応する環状の突起部(13)とその外周面(23)の領域で隙間無く接触する該当する導体セグメント(3)の接触リング(24)によって包囲されている。各導体セグメント上で環状の接触面によって被包された接触ピン(17)が突出しており、これは該当する炭素材セグメント(4)の対応する環状突起部(13)の同等な孔部(14)内に隙間無く嵌合する。それによって炭素材セグメントがいずれも環状突起部(13)の外周面(23)と環状端面(15)と内周面(19)とを介して導体セグメント(3)と導電的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、絶縁性の成形材料から形成された支持部材と、整流子軸を中心にして均等配置された複数の導体セグメントならびに同様に多数であって前記導体セグメントとインタロック式かつ導電的に結合されているモノカーボン(Monocarbon)から形成されブラシ滑走面を定義する炭素材セグメントとからなる平型整流子に関する。
【0002】
ブラシ滑走面が炭素材セグメントによって定義される平型整流子は、例えば自動車の燃料ポンプの駆動モータ等の、特に腐食が生じやすい環境下において金属製のブラシ滑走面を有する整流子に代えて使用される。この種の平型整流子は従来から多様な構成が知られている。この点に関して、例えばドイツ国実用新案登録第8908077U1号明細書、欧州特許第583892B1号明細書、欧州特許第1001501B1号明細書、米国特許第5175463A1号明細書、ドイツ国実用新案登録第9807045U1号明細書、ドイツ国特許出願公開第19752626A1号明細書、米国特許第5255426A1号明細書、ドイツ国特許出願公開第19652840A1号明細書、国際公開第97/03486号パンフレット、ドイツ国特許出願公開第19601863A1号明細書、ドイツ国特許出願公開第4028420A1号明細書、欧州特許出願公開第0667657A1号パンフレット、米国特許第5442849A1号明細書、国際公開第92/01321号パンフレット、米国特許第5637944A1号明細書、およびドイツ国特許出願公開第19713936A1号明細書等が参照として挙げられる。さらに、関連する従来技術を形成するものとして、米国特許第5629576A1号明細書、ドイツ国特許第19903921号明細書、ならびに欧州特許第0935331号明細書が挙げられる。炭素材摺動面を有する平型整流子に関する権利件数が多いことは実用上においてこの種の構造の整流子の需要が多いことを示している。同時に多くの交換文献が存在することは、現在まで完全には解決されていない多くの問題点が存在することを示している。
【0003】
このことには、特に既知の平型整流子において異なった種々の要件が部分的に互いに相反することが関連しており;その例として特に平型整流子において小さな寸法と安価な製造コストとならびに長い寿命を同時に目標とすることが挙げられる。前述した相反関係のうち特に重大なものは、平型整流子の寸法の低減と寿命の向上との関係であり;これは回転子コイルが一般的に導体セグメントに溶接されており、ここで超小型の平型整流子の場合、導体セグメントと炭素材セグメントとの導電性接続が過熱によって破損することにつながる。このため、例えば、炭素材セグメントと導体セグメントとを結合するために耐熱性の硬質ハンダを使用するか(例えば欧州特許出願公開第0935331A1号明細書参照)、または導体セグメントと炭素材セグメントとの間の接触点を回転子コイルの端子から大きく離間して配置する(ドイツ国特許出願公開第19903921A1号明細書参照)ことが提案されているが、最初の提案はコストの増加につながり、2番目の提案は導体セグメントと炭素材セグメントとの間の接触点の縮小につながり、それによって炭素材セグメント内の不良な電流分布につながる。この問題を解決するためのその他の提案として、接続ラグから導体セグメントと炭素材セグメントとの間の接続点への熱伝導を低減する(ドイツ国特許出願公開第19956844A1号明細書)か、または炭素材セグメントとこれに割り当てられた導体セグメントとを専らインタロック式で結合するか、あるいは少なくとも部分的にハンダ付けに加えてインタロック式に結合することが挙げられる。この点に関して、例えばドイツ国特許出願公開第19713936A1号明細書および米国特許出願公開第2001/0024074A1号明細書においては、炭素材セグメントがそのブラシ滑走面と反対側の端面上にタップ形状の突起部を備えており、これがいずれも対応する導体セグメントの割れ目内に嵌合している、前述した種類の平型整流子が提案されている。全般的に比較可能な欧州特許第1001501B1号明細書によれば、導体セグメントから突出している突起部の末端部分が圧縮によって機械的に変形され、それによって可能な限り強固な炭素材セグメントの導体セグメントへの接合を達成する。このため、炭素材セグメントは異なった材料の組み合わせからなる2つの層によって形成されており、すなわち、突起部とそれに隣接した炭素材セグメントの領域がブラシ滑走面に隣接した領域と異なって金属を含有した炭素材から形成されている。このことによって、突起部の変形特性ばかりでなく炭素材セグメント内の電流密度分布にも良好な効果をもたらす。しかしながら、この種の二層式炭素材セグメントの製造は比較的高コストなものとなる。この問題点は、既知の“モノカーボン”製の炭素材セグメントを備えた平型整流子だけに存在するものではない。しかしながら、炭素材セグメントと導体セグメントとの間の極小さな有効接触面のために不良な電流配分が生じ、それによって接触部の過負荷が発生する。
【0004】
従って、本発明の目的は、前述した問題点を克服することができる、冒頭に述べた種類の平型整流子を提供することである。該当する平型整流子はその製造容易性にもかかわらず、比較的小さな寸法ならびに比較的小さな製造コストをもって導体セグメントと炭素材セグメントとの間の移行部分における良好な電流密度配分と長い寿命を達成することができる。
【0005】
前記の課題は、請求項1に従って、以下の特徴からなる冒頭に述べた種類の平型整流子によって解決され、すなわち:
各炭素材セグメントはブラシ滑走面に対向して配置された環状の突起部を備え、その環状の端面が該当する導体セグメントの相応する環状の接触面に接合し;
この環状の接触面はいずれも対応する環状の突起部と外周面の領域で隙間無く接触する該当する導体セグメントの接触リングによって被包されており;
各導体セグメント上で環状の接触面によって被包された接触ピンが突出しており、これは該当する炭素材セグメントの対応する環状突起部の適合する孔部内に隙間無く嵌合し、炭素材セグメントがいずれも外周面と環状の端面と環状突起部の内周面とを介して導体セグメントと導電的に接続され;
炭素材セグメントへの接続のために作用する接触リングの接触面と環状の接触面と接触ピンの外周面は酸化ならびに腐食を防止するよう形成される。
【0006】
別の解決手段が請求項19に示されており、これは請求項1と同様な基本構造に従った平型整流子を対象としているが、炭素材セグメントの環状突起部の外周面領域においてこれと接触する導体セグメントの部分が請求項1の解決方式と異なって構成されており、すなわち導体セグメントは周回状に閉鎖された接触リングに代えて互いに離間して配置された複数の接触突起部を備えてなり、ここで互いに隣接する2つの接触突起部間の隙間領域においていずれも支持部材の成形材が炭素材セグメントの環状突起部の外周面に接合している。本発明は請求項1に示された解決手段に関連して説明する限りは平形整流子に限定されるものではなく;むしろ以下に記述する好適な追加構成を含む特徴は請求項19の解決方式に適用することもできる。
【0007】
本発明に係る平型整流子の典型的な特徴は、前述した各炭素材セグメントの少なくとも3つの面、すなわち外周面、環状端面、内周面、ならびに場合によってはさらに炭素材セグメントの孔部の基底面における該当する導体セグメントとの接触である。これによって、一方で炭素材セグメントと導体セグメントとの間の極めて大面積の接触を可能にし;その結果炭素材セグメントを低コストのいわゆる“モノカーボン(Monocarbon)で製造しても、すなわち特に多層にせずに全体的あるいは部分的にも金属粒子を添加していない炭素から製造したとしても、導体セグメントと炭素材セグメント内側との間に極めて良好な電流密度分布が形成される。他方、導体セグメントの接触ピンはいずれも該当する炭素材セグメントの環状突起部の対応する孔部内に、必要に応じて先頭面が単素材セグメントの基礎面と接合するまで嵌合し、炭素材セグメントと導体セグメントのインタロック式結合のために備えられたその他の特徴との組み合わせにおいて、極めて効率的、恒久的、導電性、かつ高い機械的負荷に耐久可能な炭素材セグメントと導体セグメントの間の嵌合を達成する。(未だ)互いに結合している導体セグメントを包合している導体加工用部材と(未だ)互いに結合している炭素材セグメントを包合している炭素材環状盤との接合に際して炭素材セグメントの環状突起部がその外周および内周面領域において可塑的に変形され、さらに、環状突起部の内側に弾力性の高い嵌合圧力と確実な接触をもたらす予荷重が形成されることが、炭素材セグメントと導体セグメントの恒久的な嵌合に対して効果的である。ここで炭素材セグメントの環状突起部の弾力的な変形は、特に導体セグメントの接触リングならびに接触ピンの縁部領域の環状突起部の元々の輪郭内への進入を含むことができ、ここで考えられる炭素材セグメントの表面金属化はここで接触リングと接触ピンによって削ることができ、従って炭素材料が該当する接触リングおよび接触ピンに直接接触することが可能になる。この弾力的な予荷重は、硬化された炭素材と予め硬化された炭素材セグメントの環状突起部の弾力性モジュールを利用する。予荷重の形成のために、炭素材セグメントの突起部が整流子の製造に際して対応する導体セグメントの接触面に前面で圧接されることが重要であり;これはそれによって環状突起部内で前述した予荷重が形成されるためであり、これによって変化の大きい温度下(−40℃ないし120℃)においても炭素材セグメントと導体セグメントの確実な接触が保持される。実用上においてこの予荷重は2段階で形成され、すなわちまず導体セグメントと炭素材セグメントの接合に際と、その後支持部材の射出の前に該当する型上に全出力が形成された際に形成される。前述した関係によって可能となった接合力によって炭素部材が隙間無くかつ導電的に隣接する導体セグメントの接触リングおよび接触ピンの面に着合するよう炭素材セグメントの突起部が予荷重され、これはそれどころか炭素材料の強度をも上回り従って導体セグメントから突起部を引き抜くことは不可能である。
【0008】
本発明の好適な追加構成によれば、炭素材セグメントは表面金属化を備えておらず、従って突起部の弾力的な変形(前述参照)によって突起部の端面の領域においても炭素材セグメントの炭素材料と対応する導体セグメントとの間の隙間が無くかつ予荷重された直接的な接触が可能となる。この炭素材セグメントの突起部の端面と導体セグメントの接触面との間の隙間の無い接触は重要な意味を有している。この点に関して、本発明請求項1に係る平型整流子において、突起部の端面領域における炭素材セグメントと導体セグメントとの接触は支持部材の成形材料によって拡散し得る侵食性の媒体に対しても極めて効果的に防護を成すことが示されており;これは該当する接触部が、場合によって生じ得る細い成形材流路(下記参照)を除いて、炭素材セグメントの環状突起部の外面に着合しているかあるいは突起部内に進入している導体セグメントの接触リングによって支持部材に対して全方位的に遮蔽されているためである。
【0009】
本発明によって可能となる機械的に恒久的で、全く隙間が無く、かつ導電性の予荷重された炭素材セグメントの突起部と導体セグメントとの嵌合の結果、炭素材セグメントの導体セグメントに対するハンダ付けを省略することができる。この方式によって、この結合による後の回転子巻線の整流子への溶接への影響を防止することができる。ハンダ付けの省略によって本発明に係る整流子を低コストに製造することができる。
【0010】
導体セグメントが対応する炭素材セグメントに接触する面を耐酸化および耐腐食性に形成することが、例えばメタノールおよびエタノールを含んだ燃料と接触する等の極めて過酷な使用条件においても整流子の高い信頼性を保持する点に関して重要である。この点に関して好適な本発明に係る平型整流子の追加構成は、炭素材セグメントとの接触の機能を果たす導体セグメントの接触リングの面、その環状接触面および外周面ならびに必要に応じて接触ピンの端面を銀または錫等の耐酸化および耐腐食性の金属によって被覆する。ここで、既知の実証済みの被覆方法を使用することができる。勿論、該当する面を耐酸化および耐腐食性に形成するためのその他の方式も同様に使用可能である。
【0011】
本発明の別の好適な構成形態は、環状突起部の端面ならびにこの環状突起部を包囲している炭素材セグメントの表面が互いに結合している金属化部、特に電食による金属化部を有することを特徴とする。この種の金属化部は特に銅製の下地(例えば4ないし12μm)および錫製の被覆層(例えば2ないし6μm)からなる二層式に形成することができる。この金属化部がいずれも環状突起部を包囲している炭素材セグメントの表面上に延在していることによって、炭素材セグメントへの大面積の電流誘導が実施され、従って炭素材セグメント内部の極めて効率的な電流分布が達成される。
【0012】
さらに別の本発明に係る平型整流子の好適な構成形態は、各接触リングが対応する炭素材セグメントへの接続の機能を果たす面の領域内に少なくとも1つの成形材流路を有し、これが該当する面と環状接触面とによって形成される縁部の領域で終端となっていることを特徴とする。この成形材流路によって支持部材の射出成形時に成形材が前記の縁部の領域に到達しその部分で場合によって導体セグメントと炭素材セグメントの突起部との間に形成される空洞部に充填される。さらに、この種の、炭素材環状盤の炭素材セグメントの表面が環状突起部の領域ならびにそれを包囲する領域が金属化される平型整流子において、この金属化部が炭素材環状盤と導体加工用材料との接合に際して成形材流路に沿って損傷無く保持され;この方式によって成形材流路の領域に金属化部から生じた導電性の帯路が形成され、これが環状突起部の端面上の金属化部をこの突起部を包囲している炭素材セグメントの表面上の金属化部と結合する。この結果として、極めて信頼性の高い、二重の機能を有する導体セグメントと炭素材セグメントとの間の接触が形成される。最初の接触は接触リングの内面と炭素材環状盤と導体加工用部材との間の接合に際して環状突起部の炭素材料内に進入する接触ピンの外面との間において形成され;炭素材セグメントの金属化部はそこで進入する接触リングあるいは接触ピンによって剪断される。第2の接触は導体セグメントの接触面と導電性の中間層を介して結合される炭素材セグメントの環状突起部の端面によって形成され、ここから前述した導電性の帯路と突起部を包囲している炭素材セグメントの領域の金属化部を介して炭素材セグメントに大面積で電流が誘導される。
【0013】
前述した追加構成によって示された本発明の概念において、表面が金属化された炭素材セグメントの環状突起部の端面とこれに対応する導体セグメントの接触面の間に導電性の中間部材が設けられる。その機能は特に炭素材セグメントの突起部の端面ならびに導体セグメントの接触面の表面粗性を均質化することであり、この方式によって実用性に適合した導体セグメントと炭素材セグメントの製造誤差においても、(表面金属化部の領域では実質的に変形不可能な)炭素材セグメントの導体セグメントとの大面積の接触に寄与する。さらに、この中間部材を介して炭素材セグメントの環状突起部の金属化された端面とこれに対応する導体セグメントの接触面との間のハンダ付を形成することができる。また前記中間部材は両面の表面粗性を均一化することによって支持部材の射出成形中に成形材が該当する接触ゾーンに浸入することを防止する。導電性の中間部材は、この作用の観点から、最初は粉末あるいはペースト状であり炭素材環状盤と導体加工用部材の接合に際して圧縮される、導電性材料、特にこのように圧縮される形態の錫等の金属粉、圧縮された黒鉛粉、金属と黒鉛の混合粉末、または硬化されたハンダペースト材から形成される。この中間部材の厚みは、本発明の一般的な用途においては0.03ないし0.1mmとなる。この後の中間部材を形成する材料を炭素材セグメントの突起部の端面上に例えば綿球を使用して塗付すれば製造技術上極めて好適である。
【0014】
本発明のさらに別の好適な追加構成によれば、炭素材セグメントを導体セグメントと導電性に結合する接続領域はいずれも炭素材セグメントと導体セグメントとの間に配置された環状の成形材層によって包囲されている。この環状の成形材層は炭素材セグメントと導体セグメントの接続領域を外部から遮蔽し、これを侵食性の物質との直接的な接触から防護する。この追加構成も過酷な環境下における整流子の使用に際して極めて効果的なものとなる。
【0015】
本発明に係る平型整流子のさらに別の好適な追加構成は、導体セグメントが環状の接触面に対向して配置され支持部材内に進入する環状隆起部を備えることを特徴としている。このことは、整流子の製造の点ならびにその使用方法の点の両方に関して効果的である。製造の点においては、この整流子の追加構成によって、導体セグメントの材料が未だ導体加工用部材として互いに結合している間に、反対側において前記の環状隆起部を形成するように軸方向に圧接されることにより、導体セグメントの環状接触面を極めて低コストかつ効率的に製造することができる。この環状隆起部はその後の製造工程中において支持部材の成形材内に埋封され、これは機械的に極めて強固な導体セグメントの支持部材内への固定のために効果的であるとともに、それによって整流子の寿命を向上させる。
【0016】
本発明のさらに別の追加構成によれば、環状突起部は実質的に台形状の基本形状を有し、ここでこの概念には半径方向外側の境界が実質的に弧形の輪郭を有する突起部も含まれる。これによって、炭素材セグメント導体セグメントの機械的結合および導電性の接触のために作用する面を極めて良好な結合強度を達成しながら非常に効果的に利用することができる。
【0017】
勿論、本発明の枠内において環状突起部ならびにこれと接触する導体セグメントの面を多様な構成で適用することができ、ここで個々における構造は、例えば整流子の大きさおよび炭素材セグメントすなわち突起部の製造に使用される材料の成分に依存するものとすることができる。従って、例えば炭素材セグメントへの接続の作用を成す接触リングの面を特に環状接触面に向かって先細になることによって錐形に形成することができるが;シリンダ形状に形成することも好適である。炭素材セグメントの環状突起部は錐台形の外郭を有することが好適であるが;シリンダ形状の構成することもできる。接触ピンは実質的に円形の断面を有しているが;環状の窪み部の外周面が著しく円形から逸脱している場合は、その他の断面形も可能である。接触ピンは好適にはシリンダ形状に形成されるが;これに限定されるものではない。
【0018】
前述した前述した特徴をもたらす変更点を除いて、本発明に係る平型整流子製造に使用される方法は既知の方法(例えばドイツ国特許出願公開第19956844A1号明細書に相当するものである。ここで重要な工程は、最終的な構成において互いに結合されている接触リングと環状接触面と接触ピントを有する導体セグメントと、前述した環状突起部を備えた炭素材環状盤とを個別に製造する点である。続いて、導体セグメントと炭素材環状盤が軸方向に接合され、この際一方で炭素材環状盤の環状突起部と他方で導体加工用部材の導体セグメントの接触リングと接触ピンとが機械的に互いに嵌合し、恒久的な結合を形成するために軸方向に相互に圧接される(上記参照)。このユニットはその後支持部材を形成する成形材によって被包成形される。最後に、機械的加工によって炭素材環状盤が個々の炭素材セグメントに分割され、導体加工用部材の個々の導体セグメントの結合が分離される。
【0019】
以上の本発明の説明から、前述した課題の解決のために炭素材セグメントの突起部の端面における対応する導体セグメントの接触面との接触が極めて重要であることが明らかであり、これはそれが良好な導電性接触、特に前述した二重機能の接触ならびに前述した炭素材の機械的固定のために重要な突起部内における圧力形成の双方に対して重要であるためである。少なくとも好適な適用分野(例えば極めて小寸法の整流子)においては、前述した課題は請求項1および請求項19に記載した特徴から接触ピンのみが省略される構造によって有効に解決することができる。出願人は、その種の平型整流子の法的な保護も特に分割特許の方式によって請求するものである。
【0020】
次に、本発明に係る平型整流子の実施例につき、添付図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0021】
図1ないし4に示されている平型整流子は絶縁性の成形材から形成された支持部材1と、軸2の周りに均等に配置された8個の導体セグメント3ならびに8個の炭素材セグメント4とを含んでおり、各炭素材セグメントはそれぞれ1つの導体セグメント3と導電性に結合されている。炭素材セグメント4は全体で整流子軸2に対して垂直に延在しているブラシ滑走面5を定義している。支持部材1は中央孔部6を有している。
【0022】
銅製の導体セグメント3は共通の導体加工用部材から形成される。これはいずれも接続領域7と接触領域8とを備えている。接続領域7上にはいずれも接触ラグ9が設けられている。これは、回転子コイルのコイル線と該当する導体セグメント3との間の導電性接続を成すように作用する。導体セグメント3を支持部材1内に良好に固定するために、各導体セグメント3の接続領域7から内側に向かってそれぞれ1つの固定爪10が突出している。
【0023】
炭素材セグメント4はその半径方向外側周囲面上においていずれも支持部材1の成形材層11によって被覆されている。ここで、炭素材セグメント4の外周面の段形成によって成形材層11へのインタロック式結合が形成される。支持部材1の成形材は成形材フランジ12の形状でさらに炭素材セグメント4の半径方向内側面も被覆している。ここでも、炭素材セグメント4の半径方向内側面の段形成によってインタロック式結合が形成される。炭素材セグメントの内周および外周面領域における支持部材1とのインタロック式結合によって、支持部材1内における炭素材セグメントの恒久的な固定が保持される。
【0024】
この概念においては図示された平型整流子は従来の技術に準じたものであり(例えばドイツ国特許出願公開第19956844A1号明細書)、従って基本的な構造の詳細な説明は省略する。
【0025】
各炭素材セグメント4は、ブラシ滑走面5に対向して配置され孔部14を有する環状突起部13を備えている。各突起部13はその環状端面15によって該当する導体セグメント3の対応する環状接触面16に接合している。ここで、環状接触面16によって包囲されている円形かつシリンダ状の導体セグメント3の接触ピン17が該当する炭素材セグメント4の環状突起部13の孔部14に嵌合し、この際接触ピン17の周囲面18の領域内において環状突起部13の内周面19に対する導電性の結合が、接触ピン17の端面20の領域において孔部14の基底面21に対する導電性の結合が形成される。外側において接触面16はいずれも閉式の接触リング24によって包囲されており、これは該当する環状突起部13の外周面23に対して導電性に接合するかあるいは部分的にその中に嵌合している。
【0026】
環状突起部13ならびにこれに対応する接触リング24(図3参照)は、いずれも実質的に台形状の基本形状を有している。整流子の製造に際して環状突起部13内に形成される圧力のため、各炭素材セグメント4は4つの面、すなわち環状突起部13の外周面23、環状端面15および内周面19、ならびに接触ピン17の端面20と接触している孔部14の基底面21を介して隙間無くかつ導電性に対応する導体セグメント3に接続される。
【0027】
前述した炭素材セグメントとの接触を成すよう作用する導体セグメント3の4つの面はいずれも、例えば錫または銀等の、耐酸化および耐腐食性の材料からなる層25によって被覆されている。
【0028】
いずれも炭素材セグメント4を導体セグメント3と導電性に接続している接続領域26は、それぞれ炭素材セグメントと導体セグメントとの間に配置された環状の成形材層27によって包囲されている。同様に、いずれも接触リング24の内面29と環状接触面16とによって形成された縁部30の領域内の導体セグメント3と、ここでは丸み付けられている(図4と比較)、炭素材セグメント4の突起部13との間に形成された空洞部28も成形材によって充填される。このため、導体セグメント3の接触リング24の内面29はその半径方向外側部分にいずれも2つの成形材流路32を備えており、これらはいずれも縁部28の領域で終端となっている。
【0029】
導体セグメント3は該当する炭素材セグメント4から逆側の面上に環状接触面16と対向するとともにこれと一致する環状の隆起部33を備えている。この環状隆起部はいずれも対応する環状接触面16の製造のために圧縮成形された材料の軸方向の移動によって形成されたもので、支持部材1内に嵌合している。
【0030】
平型整流子の製造の過程内で最初は一体的の炭素材環状盤35(図4参照)を個々の炭素材セグメント4に分割する半径方向切断部34も図示されている。
【0031】
図4には、さらに炭素材環状盤35の環状突起部13の外周面が導体加工用部材との接合の前にこの突起部が端面15に向かって緩やかに先細になるように傾斜していることが示されている。この炭素材環状盤35の導体加工用部材との接合前の図と完成した平型整流子の図、特に図2との比較によって、接触リング24の環状突起部13内の外周面23の領域への部分的な嵌合と、これによって生じるこの領域内における突起部の可塑性の変形が示されている。接触ピン17も孔部14を包囲している炭素材料内に緩やかに進入している。
【0032】
図5および図7に示されている平型整流子の第2の実施例は殆どの構造について図1ないし図4の実施例の特徴と一致している。従って、前述した説明の繰り返しは省略する。相違点は実質的に以下に記述する3つの点に限定される:
炭素材セグメント4はいずれも表面に電食金属化部37を備えている。炭素材環状盤の導体加工用部材との接合の前にこの金属化部は、孔部14の基底面と、環状突起部13の表面全体と、ならびに突起部13に隣接している該当する炭素材セグメントの表面とにわたって延在している。この金属化部37は銅製の下地と錫製の被覆層の二層から形成されている。しかしながら、炭素材環状盤と導体加工用部材との接合に際して、いずれも接触リング24と接触ピン17が金属化部37を剪断するとともに、金属化されていない炭素材料内に進入する。しかしながら、成形材流路32の領域においては炭素材セグメント4の金属化部37が無傷に存在し、従っていずれも突起部13の外側に延在する金属化部37の領域39が、成形材流路32内を延在するとともにそこに残っている金属化部から形成されている導電性の帯路40を介して、金属化部37に端面13の領域で接続されている。従って、接触リング24の突起部13内への部分的な進入による金属化部37の破断は炭素材セグメント内における電流分布の観点において全く問題とならない。
【0033】
さらに、図6および図7に導電性中間部材38が拡大して示されており、これはいずれも炭素材セグメント4の突起部13の端面15と導体セグメント3の接触面16との間に配置されており、両方の該当する面の表面粗性を平滑化することによって炭素材セグメント4と導体セグメント3との間に空気および/または成形材の滞留が生じることなく大表面の接触ゾーンが形成される。
【0034】
次に、図5ないし図7の平型整流子において、各環状突起部13に対して合計5本の成形材流路32が設けられており、これらは半径方向外側、半径方向内側、いずれも半径方向断部34に対して平行に延在している両方の接触リング24の面上に配置されている。このことは、そこに延在している導電性帯路40(上記参照)の機能に相関するものである。
【0035】
図8に示されている平型整流子の第3の実施例は、導体セグメント3′がいずれも1つの接触リングに代えて4つの接触突起部22を備えている点において実質的に図5ないし図7の実施例と異なっている。これは環状突起部13′を包囲し、環状突起部13′の外周面23′の領域内において炭素材料に導電性に嵌合し、破断部36によって互いに分離している。前述した破断部36の領域の各2つの互いに隣接する接触突起部22′の間において支持部材1′の成形材が該当する炭素材セグメント4′の環状突起部13′の(金属化された)外周面23′に着合する。ここでも、両方の成形材流路の領域と同様に、残留している金属化部が導電性の帯路40′を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る平型整流子の第1の実施例を示す軸方向端面図である。
【図2】図1の整流子の炭素材セグメントと導体セグメントとの間の接続領域を示す拡大図である。
【図3】図1および図2の整流子の炭素材セグメントと導体セグメントの接続領域を線III−IIIに沿って整流子軸に対して垂直に切断した断面図である。
【図4】図1の平型整流子を製造するために使用される炭素材環状盤の軸方向断面図である。
【図5】本発明に係る平型整流子の第2の実施例の炭素材セグメントと導体セグメントの接続領域を整流子軸に対して垂直に切断した断面図である。
【図6】図5に示された整流子の線VI−VIに沿った接続領域の断面図である。
【図7】図5および6に示された整流子の線VII−VIIに沿った接続領域の断面図である。
【図8】本発明に係る平型整流子の第3の実施例の炭素材セグメントと導体セグメントの接続領域を整流子軸に対して垂直に切断した断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の成形材料から形成された支持部材(1)と、整流子軸(2)を中心にして均等配置された複数の導体セグメント(3)ならびに同様に多数であって前記導体セグメントとインタロック式かつ導電的に結合されているモノカーボンから形成されブラシ滑走面(5)を定義する炭素材セグメント(4)とからなる平型整流子であり:
各炭素材セグメント(4)はブラシ滑走面(5)に対向して配置された環状の突起部(13)を備え、その環状の端面(15)がこれに該当する導体セグメント(3)の対応する環状の接触面(16)に接合し;
この環状の接触面(16)はいずれも対応する環状の突起部(13)とその外周面(23)の領域で隙間無く接触する該当する導体セグメント(3)の接触リング(24)によって包囲されており;
各導体セグメント上で環状の接触面によって被包された接触ピン(17)が突出しており、これは該当する炭素材セグメント(4)の対応する環状突起部(13)の同等な孔部(14)内に隙間無く嵌合し、それによって炭素材セグメントがいずれも環状突起部(13)の外周面(23)と環状端面(15)と内周面(19)とを介して導体セグメント(3)と導電的に接続され;
炭素材セグメント(4)への接続のために作用する接触リング(24)の面と環状の接触面(16)と接触ピン(17)の外周面(18)は耐酸化ならびに耐腐食性に形成されることを特徴とする平型整流子。
【請求項2】
炭素材セグメント(4)は予め成形および硬化された環状突起部(13)を備え、これは硬化された炭素材料の弾力性モジュールを利用しながら接触ピン(17)の外周面(18)および接触リング(24)の内周面への隙間の無い接触のために弾力的に予荷重されていることを特徴とする請求項1記載の平型整流子。
【請求項3】
炭素材セグメント(4)の環状突起部(13)は表面金属化部を備えておらず、環状突起部(13)の端面(15)が硬化された炭素材料の弾力性モジュールを利用しながら導体セグメント(3)の接触面(16)への隙間の無い接触のために弾力的に予荷重されていることを特徴とする請求項1または2記載の平型整流子。
【請求項4】
導体セグメントはさらに接触ピン(17)の端面(20)と接触している孔部(14)の基底面(21)を介して導体セグメント(3)と導電的に結合されることを特徴とする請求項3記載の平型整流子。
【請求項5】
環状突起部(13)の端面(15)ならびにこの環状突起部を包囲している炭素材セグメント(4)の表面が金属化部を備えていることを特徴とする請求項1または2記載の平型整流子。
【請求項6】
金属化部は電食金属化部(37)として形成することを特徴とする請求項5記載の平型整流子。
【請求項7】
炭素材セグメント(4)の環状突起部(13)の端面(15)とこれに対応する導体セグメント(3)の接触面(16)との間に導電性の中間部材(38)を設けることを特徴とする請求項5または6記載の平型整流子。
【請求項8】
中間部材(38)は炭素材セグメント(4)の環状突起部(13)の金属化された端面(15)とこれに対応する導体セグメント(3)の接触面(16)との間にハンダ付結合が形成することを特徴とする請求項7記載の平型整流子。
【請求項9】
中間部材(38)は圧縮された金属粉、圧縮された黒鉛粉、圧縮された金属と黒鉛の混合粉、または硬化されたハンダペースト材から形成されることを特徴とする請求項8記載の平型整流子。
【請求項10】
中間部材(38)の厚みは0.03ないし0.1mmであることを特徴とする請求項7ないし9のいずれかに記載の平型整流子。
【請求項11】
各接触リング(24)が対応する炭素材セグメント(4)の突起部(13)への接続の機能を果たす面の領域内に少なくとも1つの成形材流路(32)を有し、これが該当する接触リング(24)の面と環状接触面(16)とによって形成される縁部(30)の領域で終端となっていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の平型整流子。
【請求項12】
成形材流路(32)に沿って金属化部(37)から形成された導電性の帯路(40)が延在し、これが環状突起部(13)の端面(15)上の金属化部(37)をこの突起部を包囲している炭素材セグメント(4)の表面上の金属化部(39)と結合することを特徴とする請求項5ないし11のいずれかに記載の平型整流子。
【請求項13】
炭素材セグメント(4)を導体セグメント(3)と導電性に結合する接続領域(26)はいずれも炭素材セグメント(4)と導体セグメント(3)との間に配置された環状の成形材層(27)によって包囲されていることを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の平型整流子。
【請求項14】
炭素材セグメント(4)との接触の機能を果たす接触リング(24)の面、環状接触面(16)および接触ピン(17)の外周面(18)を耐酸化および耐腐食性の金属によって被覆することを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の平型整流子。
【請求項15】
接触ピン(17)の端面(20)を耐酸化および耐腐食性の金属によって被覆することを特徴とする請求項14記載の平型整流子。
【請求項16】
環状突起部(13)は実質的に台形状の基本形状を有することを特徴とする請求項1ないし15のいずれかに記載の平型整流子。
【請求項17】
炭素材セグメント(4)への接続のために作用する接触リング(24)の面はシリンダ形状に形成することを特徴とする請求項1ないし16のいずれかに記載の平型整流子。
【請求項18】
接触ピン(17)は実質的に円形の断面を有することを特徴とする請求項1ないし17のいずれかに記載の平型整流子。
【請求項19】
接触ピン(17)はシリンダ形状に構成されることを特徴とする請求項1ないし18のいずれかに記載の平型整流子。
【請求項20】
導体セグメント(3)が環状の接触面(16)に対向して配置され支持部材(1)内に噛合する環状隆起部(33)を備えることを特徴とする請求項1ないし19のいずれかに記載の平型整流子。
【請求項21】
絶縁性の成形材料から形成された支持部材(1′)と、整流子軸(2)を中心にして均等配置された複数の導体セグメント(3′)ならびに同様に多数であって前記導体セグメントとインタロック式かつ導電的に結合されているモノカーボンから形成されブラシ滑走面を定義する炭素材セグメントとからなる平型整流子であり:
各炭素材セグメントはブラシ滑走面に対向して配置された環状の突起部(13′)を備え、その環状の端面がこれに該当する導体セグメント(3′)の対応する環状の接触面に接合し;
この環状の接触面はいずれも該当する導体セグメントの互いに離間して配置され、対応する環状突起部(13′)に対してその外周面(23′)の領域において直接炭素材料と隙間無く接触している複数の接触端子(22)によって包囲されており;
各導体セグメント上で環状の接触面によって被包された接触ピン(17′)が突出しており、これは該当する炭素材セグメントの対応する環状突起部(13′)の同等な孔部内に隙間無く嵌合し、それによって炭素材セグメントがいずれも環状突起部(13′)の外周面(23′)と環状端面と内周面とを介して導体セグメント(3′)と導電的に接続され;
各2つの互いに隣接する接触突起部(22)の間に形成された破断部(36)の領域において支持部材(1′)の成形材が炭素材セグメントの環状突起部(13′)の外周面(23′)に着合し;
炭素材セグメントへの接続のために作用する導体セグメントの接触突起部(22)の面と環状の接触面と接触ピン(17′)の外周面は耐酸化ならびに耐腐食性に形成され;
環状突起部(13′)の端面ならびにこの環状突起部を包囲している炭素材セグメントの表面が金属化部を備え;
この炭素材セグメントの環状突起部(13′)の金属化された端面と対応する導体セグメント(3′)の接触面との間に導電性の中間部材を設けることを特徴とする平型整流子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−515145(P2007−515145A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544230(P2006−544230)
【出願日】平成16年10月24日(2004.10.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012020
【国際公開番号】WO2005/062431
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(505039424)コレクトール グループ デー.オー.オー. (8)
【Fターム(参考)】