説明

平版印刷版原版及び平版印刷版の作製方法

【課題】耐刷性、耐汚れ性、および現像性に優れた平版印刷版原版を提供する。
【解決手段】 支持体上に、画像記録層と、支持体と画像記録層の間に設けられた下塗り層を有し、前記下塗り層が、(D)主鎖末端に親水性基およびラジカル重合性エチレン性不飽和基から選択される基を1つ以上有する基を、側鎖に支持体吸着基を1つ以上有する繰り返し単位を有する高分子化合物を含有する、平版印刷版原版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピューター等のデジタル信号から各種レーザーを用いて直接製版できる、いわゆるダイレクト製版可能な平版印刷版原版及び平版印刷版の作製方法、特に簡易処理に適した平版印刷版原版及び平版印刷版の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波長300nm〜1200nmの紫外光、可視光、赤外光を放射する固体レーザー、半導体レーザー、ガスレーザーは高出力かつ小型のものが容易に入手できるようになっており、これらのレーザーはコンピューター等のデジタルデータから直接製版する際の記録光源として、非常に有用である。これら各種レーザー光に感応する記録材料については種々研究されており、代表的なものとして、第一に、画像記録波長760nm以上の赤外線レーザーで記録可能な材料として、ポジ型記録材料や酸触媒架橋型のネガ型記録材料等がある。第二に、300nm〜700nmの紫外光または可視光レーザー対応型の記録材料として、ラジカル重合型のネガ型記録材料等がある。
【0003】
また、従来の平版印刷版原版(以下、PS版ともいう)では、画像露光の後、強アルカリ性水溶液を用いて非画像部を溶解除去する工程(現像処理)が不可欠であり、現像処理された印刷版を水洗したり、界面活性剤を含有するリンス液で処理したり、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で処理する後処理工程も必要であった。これらの付加的な湿式の処理が不可欠であるという点は、従来のPS版の大きな検討課題となっている。前記のデジタル処理によって製版工程の前半(画像露光)が簡素化されても、後半(現像処理)が煩雑な湿式処理では、簡素化による効果が不充分である。
特に近年は、地球環境への配慮が産業界全体の大きな関心事となっており、環境への配慮からも、より中性域に近い現像液での処理や廃液の低減が課題として挙げられている。特に湿式の後処理は、簡素化するか、乾式処理に変更することが望ましい。
【0004】
このような観点から、処理工程を簡略化する方法として、現像とガム液処理を同時に行う1液処理あるいは1浴処理による方法がある。すなわち、前水洗工程を行わずに印刷版原版を画像露光後、保護層の除去、非画像部の除去、ガム液処理を1液あるいは1浴で同時に行い、後水洗工程を行わずに乾燥し、印刷工程に入る簡易現像方式である。このような簡易現像に適した平版印刷版原版は、後水洗工程を省略するため、強アルカリ性でない処理液に可溶な画像記録層を有し、しかも非画像部の耐汚れ性を良化するために、親水性の支持体表面が必要とされる。
このような平版印刷版原版として、特許文献1が知られている。特許文献1は、平版印刷版原版に、支持体吸着性基を有する高分子化合物を含有する層を設けることが記載されている。また、特許文献2に記載の平版印刷版原版も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−237377号公報
【特許文献2】特開2006−215263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記特許文献1について、本発明者が検討を行ったところ、かかる層は、支持体との密着性が弱く、現像条件や印刷条件によっては、支持体から高分子化合物が脱離してしまい、汚れ性が不十分で、耐刷性が劣ってしまうことがあることが分かった。この理由として、吸着性基の種類が関係していることが分かった。すなわち、特許文献1に記載されている吸着性基を用いても、十分な耐刷性を達成できないことが分かった。
一方、特許文献2には、本発明の下塗り層に用いる高分子化合物に相当するバインダーポリマを画像形成層に用いることについて記載されているが、下塗り層に用いることについては記載がない。さらに、特許文献1には、バインダーポリマの中には疎水性置換基を有するものも記載されている。そのような疎水性バインダーポリマを下塗り層に用いた場合、特に弱アルカリ処理や機上現像型の平版印刷版においては現像不良や耐汚れ性劣化の要因となりうるため、下塗り層に用いることは当業者であれば通常は行わないものである。
すなわち、従来のPS版では、このような耐汚れ性(特に、経時後の耐汚れ性)の要求を満たしながら高い耐刷性および現像性を実現することは実質的に不可能であった。
従って、本発明の目的は、紫外光、可視光、赤外光を放射する固体レーザーおよび半導体レーザー光など各種レーザーを用いて記録することによりコンピューター等のデジタルデータから直接製版可能、特に、印刷機上現像やpH11以下の水溶液による現像が可能であり、高耐刷かつ耐汚れ性(5万枚以上印刷した後の汚れ性も含む)が良好な平版印刷版を提供できる平版印刷版原版を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる状況のもと、本願発明者が鋭意検討を行った結果、下塗り層に、主鎖末端に、親水性基および/またはラジカル重合性エチレン性不飽和基から選択される基を採用し、かつ、側鎖に特定の支持体吸着基を有する繰り返し単位を有する高分子化合物を採用することにより、上記課題を解決しうることを見出した。具体的には、以下の<1>により、上記課題は解決された。好ましくは、下記<2>〜<18>の手段により達成された。
【0008】
<1>支持体上に、画像記録層と、支持体と画像記録層の間に設けられた下塗り層を有し、前記下塗り層が、(D)主鎖末端に親水性基およびラジカル重合性エチレン性不飽和基から選択される基を1つ以上有する基を、側鎖に式(b1)〜(b13)で表される支持体吸着基から選択される基を1つ以上有する繰り返し単位を有する高分子化合物を含有する、平版印刷版原版。
【化1】

(式(b1)〜(b13)中、M1〜M10は、それぞれ、プロトン、金属カチオン、アンモニウム、ホスホニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ジアゾニウム、アジニウムを表し、R1〜R44は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキニル基、アルケニル基を表し、R29〜R44は、少なくとも一つは高分子化合物主鎖へ連結する基への結合であり、残りは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、もしくは1価の有機残基を表し、X-は対アニオンを表す。点線は、高分子化合物主鎖へ連結する基への結合を表す。)
<2>前記親水性基およびラジカル重合性エチレン性不飽和基から選択される基を1つ以上有する基が、下記一般式(1)で表される、<1>に記載の平版印刷版原版。
一般式(1)
【化2】

(一般式(1)中、Eは、高分子化合物主鎖と親水性基をつなぎ合わせる連結残基を表す。点線は高分子主鎖への連結を表す。Y1およびY2は、それぞれ、単結合または2価の連結基を表す。(n+m)は1以上の整数を表す。Wは、それぞれ親水性基を表す。R1〜R3は、それぞれ、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。Xは、−O−、または−(NR4)−を表す。R4は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。)
<3>前記親水性基およびラジカル重合性エチレン性不飽和基から選択される基を1つ以上有する基が、下記一般式(2)で表される、<1>に記載の平版印刷版原版。
一般式(2)
【化3】

(一般式(2)中、Wは、それぞれ、親水性基を表す。Aは、高分子化合物の主鎖と親水性基をつなぎ合わせる連結残基を表す。点線は高分子主鎖への連結を表す。Y1は、単結合または2価の連結基を表す。nは1以上の整数を表す。)
<4>前記親水性基およびラジカル重合性エチレン性不飽和基から選択される基を1つ以上有する基に含まれる親水性基が、下記式(a1)〜(a11)で表される基のいずれかである、<2>または<3>に記載の平版印刷版原版。
【化4】

(式(a1)〜(a11)中、M1、M2およびM3は、それぞれ、水素原子、または金属イオンを表す。R1〜R15は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基を表し、任意の2つの基が互いに結合して環を形成しても良い。L1〜L4は、炭素数1〜6のアルキレン基を表す。nは、1〜100の整数を表す。X-は、カウンターアニオンを表す。点線は、一般式(1)中、Y1へ連結する基への結合を表す。)
<5>前記親水性基およびラジカル重合性エチレン性不飽和基から選択される基を1つ以上有する基に含まれる親水性基が、式(a2)、(a3)、(a4)、(a6)、(a7)、(a8)、(a9)、(10)、(a11)で表される基のいずれかである、<4に記載の平版印刷版原版。
<6>前記一般式(2)中、Aが3価以上の連結残基であり、nが2以上の整数である、<3>〜<5>のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
<7>前記親水性基およびラジカル重合性エチレン性不飽和基から選択される基を1つ以上有する基が、下記一般式(3)で表されることを特徴とする、<1>、<4>、または<5>に記載の平版印刷版原版。
一般式(3)
【化5】

(一般式(3)中、Bは、高分子化合物主鎖と親水性基をつなぎ合わせる連結残基を表す。R1〜R3は、それぞれ、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。点線は高分子主鎖への連結を表す。Y2は、単結合または2価の連結基を表す。nは1以上の整数を表す。−X−は、−O−、または−(NR4)−を表す。R4は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。)
<8>前記エチレン性不飽和基が、(メタ)アクリロイルオキシ基である、<1>、<4>、<5>に記載の平版印刷版原版。
<9>前記一般式(3)中、Bが3価以上の連結残基であり、nが2以上の整数である、<7>に記載の平版印刷版原版。
<10>(D)高分子化合物が、下記一般式(D−1)で表される繰り返し単位を有する、<1>〜<9>のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
一般式(D−1)
【化6】

(一般式(D−1)中、R101〜R103はそれぞれ、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、またはハロゲン原子を表す。Y3は、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、2価の脂肪族基、2価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を表す。Qは上述の一般式(b1)〜(b13)から選ばれる支持吸着基を表す。)
<11>前記画像記録層が、(A)重合開始剤、(C)重合性化合物および(E)バインダを含有する、<1>〜<10>のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
<12>前記画像形成層が、さらに(B)増感色素を含有する、<1>〜<11>のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
<13>前記(E)バインダが、親水性基を有する、<11>または<12>に記載の平版印刷版原版。
<14>画像記録層が、pHが7〜10の水溶液により除去可能である、<1>〜<13>のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
<15>画像記録層が、印刷インキおよび湿し水の少なくとも一方により除去可能である、<1>〜<13>のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
<16><1>〜<15>のいずれか1項に記載の平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、露光した前記平版印刷版原版を、pHが7〜10の現像液の存在下で、非露光部の画像記録層を除去する工程とを含むことを特徴とする平版印刷版の製造方法。
<17>画像記録層の前記支持体とは反対側の表面上に、保護層を形成する工程を含み;
現像工程において、さらに界面活性剤を含有する前記現像液の存在下、非露光部の画像記録層と前記保護層とを同時に除去する工程を含む(但し、水洗工程を含まない)、ことを特徴とする<16>に記載の平版印刷版の製造方法。
<18><1>〜<15>のいずれかに記載の平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
印刷機上で印刷インキと湿し水を供給して非露光部の前記画像記録層を除去する工程とを含むことを特徴とする平版印刷版の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、耐刷性、耐汚れ性、および現像性に優れた平版印刷版原版および平板印刷版の製造方法を提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】自動現像処理機の構造の一例を示す説明図である。
【図2】自動現像処理機の構造の他の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書中、一般式で表される化合物における基の表記に関して、置換あるいは無置換を記していない場合、当該基が更に置換基を有することが可能な場合には、他に特に規定がない限り、無置換の基のみならず置換基を有する基も包含する。例えば、一般式において、「Rはアルキル基、アリール基または複素環基を表す」との記載があれば、「Rは無置換アルキル基、置換アルキル基、無置換アリール基、置換アリール基、無置換複素環基または置換複素環基を表す」ことを意味する。
【0012】
[平版印刷版原版]
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、画像記録層と、支持体と画像記録層の間に設けられた下塗り層を有し、前記下塗り層が、(D)主鎖末端に、親水性基およびラジカル重合性エチレン性不飽和基から選択される基を1つ以上有する基を、側鎖に式(b1)〜(b13)で表される支持体吸着基から選択される基を1つ以上有する繰り返し単位を有する高分子化合物を含有することを特徴とする。
【化7】

(式(b1)〜(b13)中、M1〜M10は、それぞれ、プロトン、金属カチオン、アンモニウム、ホスホニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ジアゾニウム、アジニウムを表し、R1〜R44は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキニル基、アルケニル基を表し、R29〜R44は、少なくとも一つは高分子化合物主鎖へ連結する基への結合であり、残りは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、もしくは1価の有機残基を表し、X-は対アニオンを表す。点線は、高分子化合物主鎖へ連結する基への結合を表す。)
【0013】
本発明の効果は、以下の理由により発現できていると推測している。本発明の平版印刷版の下塗り層に用いる高分子化合物は、主鎖末端に、親水性基および/またはラジカル重合性エチレン性不飽和基有し、かつ、特定の支持体吸着基を側鎖に有する。主鎖末端は、側鎖に比べて立体障害が少ないため、主鎖末端にラジカル重合性基がある場合は、画像記録層の重合性化合物と効率的に重合でき、高耐刷性を達成する。一方、主鎖末端に親水性基がある場合は、湿し水に対する応答性が高いため、親水性基が支持体表面に配向することで親水性がより高まり、優れた耐汚れ性が発現できる。また、側鎖に支持体吸着基があると、高分子主鎖による立体障害によって、高分子化合物とアルミ支持体の密着性を低下させる化合物の接近を抑制することができ、現像後や印刷中に、支持体との密着性を低下することがなく、高耐刷性かつ優れた耐汚れ性を発現できる。
【0014】
最初に、高分子化合物(D)について説明する。
本発明で用いる高分子化合物は、耐刷性および耐汚れ性を発現するために、主鎖末端に親水性基およびラジカル重合性エチレン性不飽和基から選択される基を1つ以上有する基を有することを特徴とする。本発明では、主鎖末端と、親水性基およびラジカル重合性エチレン性不飽和基から選択される基を1つ以上有する基の硫黄原子とが、結合していることが好ましい。
主鎖末端に親水性基およびラジカル重合性エチレン性不飽和基から選択される基を1つ以上有する基としては、一般式(1)で表される基であることが好ましい。
【0015】
一般式(1)
【化8】

(一般式(1)中、Eは、高分子化合物主鎖と親水性基をつなぎ合わせる連結残基を表す。点線は高分子主鎖への連結を表す。Y1およびY2は、それぞれ、単結合または2価の連結基を表す。(n+m)は1以上の整数を表す。Wは、それぞれ親水性基を表す。R1〜R3は、それぞれ、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。Xは、−O−、または−(NR4)−を表す。R4は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。)
【0016】
前記一般式(1)中、Y1およびY2で表される2価の連結基としては、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、2価の脂肪族基、2価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を表す。
【0017】
前記一般式(1)中、−X−は、−O−、または−(NR4)−を表す。R4は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。アルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。炭素数1〜6のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。
アリール基としては、炭素数1〜12のアリール基が好ましい。炭素数1〜12のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。
本発明では、R4は、水素原子が好ましい。
【0018】
n+mは、1〜20の整数であることが好ましく、1〜10の整数であることがより好ましく、2〜10であることがさらに好ましい。
【0019】
前記一般式(1)中の親水性基Wは、下記式(a1)〜(a11)で表される基であることが好ましい。
【化9】

(式(a1)〜(a11)中、M1、M2およびM3は、それぞれ、水素原子、または金属イオンを表す。R1〜R15は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基を表し、任意の2つの基が互いに結合して環を形成しても良い。L1〜L4は、炭素数1〜6のアルキレン基を表す。nは、1〜100の整数を表す。X-は、カウンターアニオンを表す。点線は、一般式(1)中、Y1へ連結する基への結合を表す。)
【0020】
金属イオンの具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、アルミニウム、銀、ジルコニウム等の金属から形成されるカチオンが挙げられ、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウムから形成されるカチオンが好ましく、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、銅、ニッケル、コバルト、鉄から形成されるカチオンがより好ましく、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムから形成されるカチオンが特に好ましい。
【0021】
炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキソエチル基、2−オキソプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノヘキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0022】
炭素数1〜12のアルケニル基としては、例えばビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられる。
1〜R15は、2つが互いに結合して環を形成していてもよいが、形成していない方が好ましい。
【0023】
1〜L4で表される炭素数1〜6のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、t−ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。
nは、2〜100が好ましく、31〜100が最も好ましい。
【0024】
カウンターアニオンとしては、陰イオンであれば何れも好適に使用することができる。具体的には、ハロゲンイオン(F-、Cl-、Br-、I-)、硝酸イオン(NO3-)、硫酸イオン(SO42-)、硫酸水素イオン(HSO4-)、リン酸イオン(PO43-)、リン酸水素イオン(HPO42-)、リン酸2水素イオン(H2PO4-)、次亜ハロゲン酸イオン(ClO-、BrO-等)、亜ハロゲン酸イオン(ClO2-、BrO2-等)、ハロゲン酸イオン(ClO3-、BrO3-等)、過ハロゲン酸イオン(ClO4-、BrO4-、IO4-等)、テトラハロゲンボレートイオン(BF4-等)、テトラアリールボレートイオン(Ph4-等)、ヘキサハロゲンホスフェートイオン(PF6-等)、カルボン酸イオン、安息香酸アニオン、炭酸アミドイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、スルホンイミドイオン、硫酸エステルイオン、硫酸アミドイオン、リン酸エステルイオン、リン酸ジエステルイオン、ホスホン酸イオン、ホスホン酸エステルイオンが挙げられる。この中で、過ハロゲン酸イオン、ヘキサハロゲンホスフェートイオン、テトラハロゲンボレートイオン、テトラアリールボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオン、ハロゲンイオン、硝酸イオン、硫酸イオン、スルホンイミドイオンが好ましく、スルホン酸イオン、カルボン酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、スルホンイミドイオンがより好ましい。
【0025】
耐汚れ性の観点から、(a2)、(a3)、(a4)、(a6)、(a7)、(a8)、(a9)、(a10)、(a11)で表される基であることがより好ましく、(a2)、(a3)、(a4)、(a8)、(a9)、(a10)、(a11)がさらに好ましい。
【0026】
一般式(1)中、Eは、高分子化合物主鎖と、親水性基およびラジカル重合性エチレン性不飽和基から選択される基を1つ以上有する基とをつなぎ合わせる有機残基であり、少なくとも2価以上の有機残基であることが好ましく、少なくとも3価以上の有機残基であることがより好ましく、少なくとも4価以上の有機残基であることが特に好ましい。上限値は特に定めるものではないが、10価以下である。
かかる有機残基は、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、ハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、シリコン原子、ナトリウム原子、カリウム原子、リチウム原子、マグネシウム原子、カルシウム原子、アルミニウム原子、鉄原子、銅原子、亜鉛原子、コバルト原子、錫原子、マンガン原子、ニッケル原子、チタン原子、バナジウム原子、クロム原子、ゲルマニウム原子、銀原子、鉛原子のいずれか1以上からなることが好ましく、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、ハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、シリコン原子、ナトリウム原子、カリウム原子、リチウム原子、マグネシウム原子、カルシウム原子、アルミニウム原子のいずれか1以上からなることがより好ましく、製造上の観点から、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、ハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、シリコン原子、ナトリウム原子、カリウム原子、リチウム原子、マグネシウム原子、カルシウム原子、アルミニウム原子のいずれか1以上からなり、かつ、硫黄原子を少なくとも一つ有することが好ましい。特に、主鎖とは、Eの硫黄原子で結合していることが好ましい。本発明では特に、Eは、水素原子、炭素原子、酸素原子、硫黄原子のみからなることが好ましい。
【0027】
本発明で用いる高分子化合物は、一般式(1)中、n=0、mが1以上の整数の場合も、好ましく使用できる。すなわち、主鎖末端に一般式(2)で表される基を有する。
【化10】

(一般式(2)中、Wは、それぞれ、親水性基を表す。Aは、高分子化合物の主鎖と親水性基をつなぎ合わせる連結残基を表す。点線は高分子主鎖への連結を表す。Y1は、単結合または2価の連結基を表す。nは1以上の整数を表す。)
【0028】
一般式(2)中、Y1の好ましい例は、前述した一般式(1)中のY1と同じであり、Wは前述した一般式(1)中のWと同じであり、好ましい例も一般式(1)中のWと同じである。また、Aの好ましい例は、前述した一般式(1)中のEと同じである。nは、1〜20の整数であることが好ましく、1〜10の整数であることがより好ましく、2〜10であることが最も好ましい。
【0029】
一般式(2)中、nが1以上の整数、m=0の場合も、好ましく適用できる。すなわち、主鎖末端に一般式(3)で表される基を有する。
一般式(3)
【化11】

(一般式(3)中、Bは、高分子化合物主鎖と親水性基をつなぎ合わせる連結残基を表す。R1〜R3は、それぞれ、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。点線は高分子主鎖への連結を表す。Y2は、単結合または2価の連結基を表す。nは1以上の整数を表す。−X−は、−O−、または−(NR4)−を表す。R4は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。)
【0030】
一般式(3)中、R1、R2、R3の好ましい例は、前述した一般式(1)中のR1、R2、R3と同じであり、好ましい範囲も同義である。
2の好ましい例は、前述した一般式(1)中のY2と同じである。Bの好ましい例は、前述した一般式(1)中のEと同じである。nは、1〜20の整数であることが好ましく、1〜10の整数であることがより好ましく、2〜10であることが最も好ましい。
【0031】
(1)支持体吸着性基を有する繰り返し単位
本発明では、(d)高分子化合物の側鎖に式(b1)〜(b13)で表される支持体吸着基から選択される基を1つ以上有する。
【化12】

(式(b1)〜(b13)中、M1〜M10は、それぞれ、プロトン、金属カチオン、アンモニウム、ホスホニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ジアゾニウム、アジニウムを表し、R1〜R44は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキニル基、アルケニル基を表し、R29〜R44は、少なくとも一つは高分子化合物主鎖へ連結する基への結合であり、残りは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、もしくは1価の有機残基を表し、X-は対アニオンを表す。点線は、高分子化合物主鎖へ連結する基への結合を表す。)
【0032】
式(b1)〜(b13)中、R1〜R44で表されるアルキル基としては、具体的には炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、上述したアルキル基の好ましい例として使用できる。
アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。
【0033】
アルケニル基としては、例えばビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられる。
【0034】
アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
【0035】
1〜M10は、それぞれ、プロトン、金属カチオン、アンモニウム、ホスホニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ジアゾニウム、アジニウムを表し、それぞれ、プロトン、金属カチオン、アンモニウムであることが好しく、プロトンがさらに好ましい。
金属カチオンとしては、前述した金属イオンの例が好ましく使用できる。
【0036】
-は、前述したカウンターアニオンが好ましく使用できる。
【0037】
支持体吸着基としては、(b1)、(b2)、(b3)、(b4)、(b5)、(b7)、(b9)、(b11)が好ましく、(b1)、(b2)、(b3)、(b4)がより好ましく、(b1)、(b2)、(b3)がさらに好ましい。
【0038】
(b1)〜(b13)を有する繰り返し単位は、具体的には下記一般式(D−1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
一般式(D−1)
【化13】

(一般式(D−1)中、R101〜R103はそれぞれ、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、またはハロゲン原子を表す。Y3は、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、2価の脂肪族基、2価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を表す。Qは上述の一般式(b1)〜(b13)から選ばれる支持吸着基を表す。)
一般式(D−1)中、R101〜R103はそれぞれ、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、またはハロゲン原子を表す。Y3は、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、2価の脂肪族基、2価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を表す。Qは上述の一般式(b1)〜(b13)から選ばれる支持吸着基を表し、好ましい態様も上述の支持体吸着基の好ましい態様と同じである。
【0039】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、オクチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
【0040】
3で表される2価の連結基としては、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、2価の脂肪族基、2価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を表す。
【0041】
上記の組み合わせからなるY3の具体例を以下に挙げる。なお、下記例において左側が主鎖に、右側がQと結合する。
1:−CO−O−2価の脂肪族基−
2:−CO−O−2価の芳香族基−
3:−CO−NH−2価の脂肪族基−
4:−CO−NH−2価の芳香族基−
5:−CO−2価の脂肪族基−
6:−CO−2価の芳香族基−
7:−CO−2価の脂肪族基−CO−O−2価の脂肪族基−
8:−CO−2価の脂肪族基−O−CO−2価の脂肪族基−
9:−CO−2価の芳香族基−CO−O−2価の脂肪族基−
10:−CO−2価の芳香族基−O−CO−2価の脂肪族基−
11:−CO−2価の脂肪族基−CO−O−2価の芳香族基−
12:−CO−2価の脂肪族基−O−CO−2価の芳香族基−
13:−CO−2価の芳香族基−CO−O−2価の芳香族基−
14:−CO−2価の芳香族基−O−CO−2価の芳香族基−
15:−CO−O−2価の芳香族基−O−CO−NH−2価の脂肪族基−
16:−CO−O−2価の脂肪族基−O−CO−NH−2価の脂肪族基−
【0042】
ここで2価の脂肪族基とは、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、置換アルキニレン基またはポリアルキレンオキシ基を意味する。なかでもアルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、および置換アルケニレン基が好ましく、アルキレン基および置換アルキレン基がさらに好ましい。
2価の脂肪族基は、環状構造よりも鎖状構造の方が好ましく、さらに分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造の方が好ましい。2価の脂肪族基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜12であることがさらに好ましく、1〜10であることがさらにまた好ましく、1〜8であることがよりさらに好ましく、1〜4であることが特に好ましい。
2価の脂肪族基の置換基の例としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、シアノ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基およびジアリールアミノ基等が挙げられる。
【0043】
2価の芳香族基の例としては、フェニレン基、置換フェニレン基、ナフタレン基および置換ナフタレン基が挙げられ、フェニレン基が好ましい。
2価の芳香族基の置換基の例としては、上記2価の脂肪族基の置換基の例に加えて、アルキル基が挙げられる。
【0044】
3として好ましくは、単結合、2価の芳香族基、前記L1〜L4が好ましく、単結合、L1およびL2がより好ましい。
【0045】
本発明で用いる(D)高分子化合物中の(1)支持体吸着基を少なくとも一つ有する繰り返し単位の割合は、耐汚れ性および耐刷性の観点から、全繰り返し単位の5〜100mol%の範囲であることが好ましく、5〜90mol%の範囲であることがより好ましく、10〜80mol%の範囲であることがさらに好ましい。
【0046】
(2)ラジカル重合性反応性基を側鎖に有する繰り返し単位
本発明における高分子化合物は、耐刷性の向上の観点から、ラジカル重合性反応性基を側鎖に有する繰り返し単位を有することが好ましい。ここで、ラジカル重合性反応性基として好ましい例としては、付加重合可能な不飽和結合基(例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、アリル基、ビニル基、ビニルオキシ基、アルキニル基等)、連鎖移動が可能な官能基(メルカプト基等)が挙げられる。中でも、耐刷性の点から、付加重合可能な不飽和結合基であることが好ましく、メタクリル基を有することが特に好ましい。なお、ここで(メタ)アクリル基とは、アクリル基またはメタクリル基を表す。
【0047】
ラジカル重合性反応性基は、(a)ポリマー側鎖のヒドロキシ基と、ラジカル重合反応性基を有するイソシアネート類を用いたウレタン化反応、(b)ポリマー側鎖のヒドロキシ基と、ラジカル重合反応性基を有するカルボン酸、カルボン酸ハライド、スルホン酸ハライド、またはカルボン酸無水物を用いたエステル化反応、(c)ポリマー側鎖のカルボキシ基またはその塩と、ラジカル重合反応性基を有するイソシアネート類を用いた反応、(d)ポリマー側鎖のハロゲン化カルボニル基、カルボキシ基またはその塩と、ラジカル重合反応性基を有するアルコール類を用いたエステル化反応、(e)ポリマー側鎖のハロゲン化カルボニル基、カルボキシ基またはその塩と、ラジカル重合反応性基を有するアミン類を用いたアミド化反応、(f)ポリマー側鎖のアミノ基と、ラジカル重合反応性基を有するカルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、スルホン酸ハロゲン化物、またはカルボン酸無水物を用いたアミド化反応、(g)ポリマー側鎖のエポキシ基と、ラジカル重合反応性基を有する各種求核性化合物との開環反応、(h)ポリマー側鎖のハロアルキル基と、ラジカル重合反応性基を有するアルコール類とのエーテル化反応、により導入することができる。
【0048】
ラジカル重合性反応性基を有する側鎖としては、下記一般式(c1)で表される構造が好ましい。
一般式(c1)
【化14】

一般式(c1)中、R1〜R3は、それぞれ、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。点線は、高分子化合物主鎖へ連結する基への結合を表す。
アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、オクチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。アリール基の例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが挙げられる。R41〜R43はとしては、なかでも、水素原子またはメチル基が好ましい。
【0049】
ラジカル重合性反応性基を少なくとも一つ有する繰り返し単位は、下記一般式(D−2)で表される繰り返し単位がより好ましい。
一般式(D−2)
【化15】

一般式(D−2)において、R201〜R203は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはハロゲン原子を表す。Tはラジカル重合性反応基を有する側鎖の構造を表す。Tは上述の一般式(c1)で表されるラジカル重合性反応性基を表し、好ましい態様も上述のラジカル重合性反応性基の好ましい態様と同じである。
【0050】
一般式(D−2)中、Y4は、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、2価の脂肪族基、2価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を表す。組み合わせからなるY4の具体例を以下に挙げる。なお、下記例において左側が主鎖に結合し、右側がエチレン性不飽和結合に結合する。
【0051】
18:−CO−NH−2価の脂肪族基−O−CO−NH−2価の脂肪族基−O−CO−
19:−CO−NH−2価の脂肪族基−O−CO−
20:−CO−2価の脂肪族基−O−CO−
23:−CO−O−2価の脂肪族基−O−CO−
24:−2価の脂肪族基−O−CO−
25:−CO−NH−2価の芳香族基−O−CO−
26:−CO−2価の芳香族基−O−CO−
27:−2価の芳香族基−O−CO−
28:−CO−O−2価の脂肪族基−CO−O−2価の脂肪族基−O−CO−
29:−CO−O−2価の脂肪族基−O−CO−2価の脂肪族基−O−CO−
30:−CO−O−2価の芳香族基−CO−O−2価の脂肪族基−O−CO−
31:−CO−O−2価の芳香族基−O−CO−2価の脂肪族基−O−CO−
32:−CO−O−2価の脂肪族基−CO−O−2価の芳香族基−O−CO−
33:−CO−O−2価の脂肪族基−O−CO−2価の芳香族基−O−CO−
34:−CO−O−2価の芳香族基−CO−O−2価の芳香族基−O−CO−
35:−CO−O−2価の芳香族基−O−CO−2価の芳香族基−O−CO−
36:−CO−O−2価の芳香族基−O−CO−NH−2価の脂肪族基−O−CO−
37:−CO−O−2価の脂肪族基−O−CO−NH−2価の脂肪族基−O−CO−
2価の脂肪族基、および2価の芳香族基は前述したものと同じである。
【0052】
本発明で用いる高分子化合物において、このような(2)ラジカル重合性反応性基を側鎖に有する繰り返し単位は、特定高分子化合物の単位質量あたり0〜50mol%含まれることが好ましく、1〜30mol%含まれることがより好ましく、1〜20mol%含まれることがさらに好ましい。
【0053】
(3)親水性基を側鎖に有する繰り返し単位
本発明における高分子化合物は、耐刷性の向上の観点から、親水性基を側鎖に有する繰り返し単位を有することが好ましい。
側鎖に有する親水性基としては、具体的には前述した(a1)〜(a11)が挙げられる。また、好ましい態様も、前述した(a1)〜(a11)と同じである。
【0054】
親水性基を側鎖に少なくとも一つ有する繰り返し単位は、下記一般式(D−3)で表される繰り返し単位が好ましい。
一般式(D−3)
【化16】

一般式(D−3)において、R301〜R33は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはハロゲン原子を表す。Wは親水性基を表す。Wは、前述した(a1)〜(a11)が好ましく、より好ましい態様も、前述した(a1)〜(a11)と同じである。
5は、前述したY3と同じであり、好ましい態様も同じである。
【0055】
特定高分子化合物において、このような親水性基に有する繰り返し単位は、特定高分子化合物の単位質量あたり0〜90mol%含まれることが好ましく、1〜80mol%含まれることがより好ましく、1〜70mol%含まれることが最も好ましい。
【0056】
すなわち、特定高分子化合物は、主鎖末端に、前述の一般式(1)、一般式(2)、または一般式(3)で表される少なくとも一つの親水性基またはラジカル重合性エチレン性不飽和基から選択される基を少なくとも一つ有し、側鎖に、前述の(D−1)で表される支持体吸着性基を有する繰り返し単位を有する高分子化合物であることが好ましく、(D−2)または(D−3)で表される繰り返し単位をさらに有する高分子化合物であることがより好ましく、(D−2)および(D−3)で表される繰り返し単位をさらに有することが最も好ましい。
【0057】
本発明における特定高分子化合物の質量平均モル質量(Mw)は、平版印刷版原版の性能設計により任意に設定できる。耐刷性および耐汚れ性の観点からは、質量平均モル質量として、2,000〜1,000,000が好ましく、2,000〜500,000であることがより好ましく、10,000〜500,000であることが最も好ましい。
【0058】
以下に、特定高分子化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、ポリマー構造の組成比はモル百分率を表す。なお、以下に記載した高分子化合物の親水性基およびラジカル重合性エチレン性不飽和基は、主鎖末端の少なくとも一方に有しており、特定高分子化合物を構成する繰り返し単位のいずれかに連結していていることを表す。
【化17】

【0059】
【化18】

【0060】
【化19】

【0061】
【化20】

【0062】
【化21】

【0063】
【化22】

【0064】
【化23】

【0065】
【化24】

【0066】
【化25】

【0067】
【化26】

【0068】
【化27】

【0069】
【化28】

【0070】
【化29】

【0071】
【化30】

【0072】
【化31】

【0073】
【化32】

【0074】
【化33】

【0075】
【化34】

【0076】
【化35】

【0077】
【化36】

【0078】
【化37】

【0079】
【化38】

【0080】
【化39】

【0081】
【化40】

【0082】
<(D)高分子化合物の製造方法>>
(D)高分子化合物は、既知の方法によっても合成可能であるが、その合成には、ラジカル重合法が好ましく用いられる。一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3(高分子学会編、共立出版、1996年3月28日発行)、高分子の合成と反応1(高分子学会編、共立出版、1992年5月発行)、新実験化学講座19、高分子化学(I)(日本化学会編、丸善、昭和55年11月20日発行)、物質工学講座高分子合成化学(東京電気大学出版局、1995年9月発行)等に記載されており、これらを適用することができる。
【0083】
好ましくは、特開2009−237377号公報に記載の方法で、本発明の高分子化合物を合成することができる。また、同様の方法で、ラジカル重合性エチレン性不飽和基を側鎖に有する高分子化合物の前駆体を合成した後に、高分子反応を行い、本発明のラジカル重合性エチレン性不飽和基を側鎖に有する高分子化合物を合成することも好ましく利用できる。ラジカル重合性エチレン性不飽和基を有する高分子化合物を合成する高分子反応には、(a)ポリマー側鎖のヒドロキシ基と、ラジカル重合反応性基を有するイソシアネート類を用いたウレタン化反応、(b)ポリマー側鎖のヒドロキシ基と、ラジカル重合反応性基を有するカルボン酸、カルボン酸ハライド、スルホン酸ハライド、又はカルボン酸無水物を用いたエステル化反応、(c)ポリマー側鎖のカルボキシ基又はその塩と、ラジカル重合反応性基を有するイソシアネート類を用いた反応、(d)ポリマー側鎖のハロゲン化カルボニル基、カルボキシ基又はその塩と、ラジカル重合反応性基を有するアルコール類を用いたエステル化反応、(e)ポリマー側鎖のハロゲン化カルボニル基、カルボキシ基又はその塩と、ラジカル重合反応性基を有するアミン類を用いたアミド化反応、(f)ポリマー側鎖のアミノ基と、ラジカル重合反応性基を有するカルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、スルホン酸ハロゲン化物、又はカルボン酸無水物を用いたアミド化反応、(g)ポリマー側鎖のエポキシ基と、ラジカル重合反応性基を有する各種求核性化合物との開環反応、(h)ポリマー側鎖のハロアルキル基と、ラジカル重合反応性基を有するアルコール類とのエーテル化反応、が利用できる。
【0084】
以下、本発明の平版印刷版原版の好ましい態様について詳細に説明する。
【0085】
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、下塗り層と、画像記録層とをこの順に有する。さらに、本発明の平版印刷版原版は、前記支持体と前記画像記録層との間にその他の層が任意に設けられてもよい。
また、本発明の平版印刷版原版は、前記画像記録層の前記支持体とは反対側の表面上に、保護層を含むことが好ましい。
また、本発明の平版印刷版原版は、必要に応じて、支持体の裏面にバックコート層を設けることができる。
【0086】
本発明の平版印刷版原版は、コンピューター等のデジタル信号から各種レーザーを用いて直接製版できる、いわゆるダイレクト製版可能であることが好ましい。また、好ましくは、pHが3.5〜13であり、さらに好ましくは、6〜13であり、最も好ましくは7〜10の水溶液や印刷機上においても現像可能であることが好ましい。
【0087】
以下、本発明の平版印刷版原版を構成する構成層について順に説明し、本発明の平版印刷版原版を形成する方法を説明する。
【0088】
<下塗り層>
本発明の平版印刷版原版の下塗り層は(D)高分子化合物を含有する。
下塗り層は、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤若しくはそれらの混合溶剤に上記化合物を溶解させた溶液を支持体上に塗布、乾燥する方法、又は、水、あるいは、メタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤若しくはそれらの混合溶剤に上記化合物を溶解させた溶液に、支持体を浸漬して上記化合物を吸着させ、しかる後、水などによって洗浄、乾燥する方法によって設けることができる。前者の方法では、上記化合物の濃度0.005〜10質量%の溶液を種々の方法で塗布できる。
例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布などいずれの方法を用いてもよい。また、後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜5質量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。
前記下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/m2であるのが好ましく、1〜30mg/m2であるのがより好ましい。固形分の90質量%以上が(D)高分子化合物であることが好ましい。
【0089】
下塗り層の厚さは、0.1〜100nmであることが好ましく、1〜30nmであることがより好ましい。
【0090】
<画像記録層>
本発明の平版印刷版原版の前記画像記録層は、(A)重合開始剤および(C)重合性化合物を含むことが好ましく、(A)重合開始剤、(C)重合性化合物および(E)バインダを含むことがより好ましく、(A)重合開始剤、(C)重合性化合物、(E)バインダおよび(E)増感色素を含有することがさらに好ましい。
【0091】
(A)重合開始剤
本発明の画像記録層は重合開始剤(以下、開始剤化合物とも称する)を含有することが好ましい。本発明においては、ラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。
【0092】
前記開始剤化合物としては、当業者間で公知のものを制限なく使用でき、具体的には、例えば、トリハロメチル化合物、カルボニル化合物、有機過酸化物、アゾ化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ素化合物、ジスルホン化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩、鉄アレーン錯体が挙げられる。なかでも、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、オニウム塩、トリハロメチル化合物およびメタロセン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、特にヘキサアリールビイミダゾール化合物、オニウム塩が好ましい。重合開始剤は、2種以上を適宜併用することもできる。
【0093】
前記ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、欧州特許24629号、欧州特許107792号、米国特許4、410、621号に記載のロフィンダイマー類、例えば2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(o,o′−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−トリフルオロメチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。ヘキサアリールビイミダゾール化合物は、300〜450nmの波長域に極大吸収を有する増感色素と併用して用いられることが特に好ましい。
【0094】
前記オニウム塩としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)、特開平5-158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号公報等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号、米国特許出願公開第2008/0311520号の各明細書、特開平2−150848号、特開2008−195018号の各公報又はJ.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)に記載のヨードニウム塩、欧州特許第370,693号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩、特開2008−195018号公報に記載のアジニウム塩等が挙げられる。
【0095】
上記の中でもより好ましいものとして、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びアジニウム塩が挙げられる。以下に、これらの化合物の具体例を示すが、これに限定されない。
【0096】
前記ヨードニウム塩の例としては、ジフェニルヨードニウム塩が好ましく、特に電子供与性基、例えばアルキル基またはアルコキシル基で置換されたジフェニルヨードニウム塩が好ましく、さらに好ましくは非対称のジフェニルヨードニウム塩が好ましい。具体例としては、ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−メトキシフェニル−4−(2−メチルプロピル)フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−(2−メチルプロピル)フェニル−p−トリルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4−ジエトキシフェニルヨードニウム=テトラフルオロボラート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=1−ペルフルオロブタンスルホナート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム=テトラフェニルボラートが挙げられる。
【0097】
前記スルホニウム塩の例としては、トリフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)フェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)−4−メチルフェニルスルホニウム=テトラフルオロボラート、トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム=3,5−ビス(メトキシカルボニル)ベンゼンスルホナート、トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0098】
前記アジニウム塩の例としては、1−シクロヘキシルメチルオキシピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−シクロヘキシルオキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−エトキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−クロロ−1−シクロヘキシルメチルオキシピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−エトキシ−4−シアノピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、3,4−ジクロロ−1−(2−エチルヘキシルオキシ)ピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−ベンジルオキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−フェネチルオキシ−4−フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=p−トルエンスルホナート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=ペルフルオロブタンスルホナート、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=ブロミド、1−(2−エチルヘキシルオキシ)−4−フェニルピリジニウム=テトラフルオロボラートが挙げられる。
オニウム塩は、750〜1400nmの波長域に極大吸収を有する赤外線吸収剤と併用して用いられることが特に好ましい。
【0099】
その他、特開2007−206217号の段落番号〔0071〕〜〔0129〕に記載の重合開始剤も好ましく用いることができる。
【0100】
前記重合開始剤は単独もしくは2種以上の併用によって好適に用いられる。
前記画像記録層中の重合開始剤の含有量は、前記画像記録層全固形分に対し、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは1.0〜10質量%である。
【0101】
(C)重合性化合物
前記画像記録層に用いる重合性化合物は、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物などの化学的形態をもつ。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル類、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類或いはアミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、および単官能もしくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類或いはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類或いはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、上記の不飽和カルボン酸を、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。これらは、特表2006−508380号公報、特開2002−287344号公報、特開2008−256850号公報、特開2001−342222号公報、特開平9−179296号公報、特開平9−179297号公報、特開平9−179298号公報、特開2004−294935号公報、特開2006−243493号公報、特開2002−275129号公報、特開2003−64130号公報、特開2003−280187号公報、特開平10−333321号公報等に記載されている。
【0102】
前記多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド(EO)変性トリアクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。また、多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0103】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(P)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0104】
CH2=C(R104)COOCH2CH(R105)OH (P)
(ただし、R104およびR105は、HまたはCH3を示す。)
【0105】
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報、特開2003−344997号公報、特開2006−65210号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報、特開2000-250211号公報、特開2007−94138号公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類や、米国特許7、153、632号明細書、特表平8−505958号公報、特開2007−293221号公報、特開2007−293223号公報に記載の親水基を有するウレタン化合物類も好適である。
【0106】
上記の中でも、機上現像を適用する平版印刷版原版の場合は、機上現像性に関与する親水性と耐刷性に関与する重合能のバランスに優れる点から、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ビス(アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどのイソシアヌル酸エチレンオキシド変性アクリレート類が特に好ましい。
【0107】
前記(C)重合性化合物の構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な平版印刷版原版の性能設計にあわせて任意に設定できる。前記(C)重合性化合物は、前記画像記録層の全固形分に対して、好ましくは5〜75質量%、更に好ましくは25〜70質量%、特に好ましくは30〜60質量%の範囲で使用される。
【0108】
(E)バインダ
本発明の平版印刷版原版の前記画像記録層に含有される(E)バインダは、前記画像記録層成分を支持体上に担持可能であり、現像液により除去可能であるものが用いられる。前記(E)バインダとしては、(メタ)アクリル系重合体、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などが用いられる。特に、(メタ)アクリル系重合体、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が好ましく用いられ、より好ましくは(メタ)アクリル系重合体、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂である。
【0109】
本発明において、「(メタ)アクリル系重合体」とは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル(アルキルエステル、アリールエステル、アリルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体を重合成分として有する共重合体のことをいう。「ポリウレタン樹脂」とは、イソシアネート基を2つ以上有する化合物とヒドロキシル基を2つ以上有する化合物の縮合反応により生成されるポリマーのことをいう。「ポリビニルブチラール樹脂」とは、ポリ酢酸ビニルを一部又は全て鹸化して得られるポリビニルアルコールとブチルアルデヒドを酸性条件下で反応(アセタール化反応)させて合成されるポリマーのことをいい、さらに、残存したヒドロキシ基と酸基等有する化合物を反応させる方法等により酸基等を導入したポリマーも含まれる。
前記(メタ)アクリル系重合体の好適な一例としては、酸基を含有する繰り返し単位を有する共重合体が挙げられる。酸基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基等が挙げられるが、特にカルボン酸基が好ましい。酸基を含有する繰り返し単位としては、(メタ)アクリル酸由来の繰り返し単位や下記一般式(I)で表されるものが好ましく用いられる。
【0110】
【化41】

【0111】
前記一般式(I)中、R211は水素原子又はメチル基を表し、R212は単結合又はn211+1価の連結基を表す。A211は酸素原子又は−NR213−を表し、R213は水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基を表す。n211は1〜5の整数を表す。
【0112】
前記一般式(I)におけるR212で表される連結基は、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及びハロゲン原子から構成されるもので、その原子数は好ましくは1〜80である。具体的には、アルキレン基、置換アルキレン基、アリーレン基、置換アリーレン基などが挙げられ、これらの2価の基がアミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、エステル結合の何れかで複数連結された構造を有していてもよい。R212としては、単結合、アルキレン基、置換アルキレン基及びアルキレン基及び/又は置換アルキレン基がアミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、エステル結合のいずれかで複数連結された構造であることが好ましく、単結合、炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数1〜5の置換アルキレン基及び炭素数1〜5のアルキレン基及び/又は炭素数1〜5の置換アルキレン基がアミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、エステル結合のいずれかで複数連結された構造であることがより好ましく、単結合、炭素数1〜3のアルキレン基、炭素数1〜3の置換アルキレン基、及び炭素数1〜3のアルキレン基及び/又は炭素数1〜3の置換アルキレン基がアミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、エステル結合の少なくともいずれかで複数連結された構造であることが特に好ましい。
前記R212で表される連結基が有していてもよい置換基としては、水素原子を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、シアノ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルボキシル基及びその共役塩基基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
【0113】
213は水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基が好ましく、水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基がより好ましく、水素原子又はメチル基が特に好ましい。
211は1〜3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0114】
(メタ)アクリル系重合体の全重合成分に占めるカルボン酸基を有する重合成分の割合(モル%)は、現像性の観点から、1〜70%が好ましい。現像性と耐刷性の両立を考慮すると、1〜50%がより好ましく、1〜30%が特に好ましい。
本発明に用いられる(メタ)アクリル系重合体はさらに架橋性基を有することが好ましい。ここで架橋性基とは、平版印刷版原版を露光した際に画像記録層中で起こるラジカル重合反応の過程で前記(E)バインダを架橋させる基のことである。このような機能の基であれば特に限定されないが、例えば、付加重合反応し得る官能基としてエチレン性不飽和結合基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。また光照射によりラジカルになり得る官能基であってもよく、そのような架橋性基としては、例えば、チオール基、ハロゲン基等が挙げられる。なかでも、エチレン性不飽和結合基が好ましい。エチレン性不飽和結合基としては、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基が好ましい。
【0115】
前記(E)バインダは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカルまたは重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接にまたは重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。または、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
【0116】
(メタ)アクリル系重合体中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、前記(E)バインダ1g当たり、好ましくは0.01〜10.0mmol、より好ましくは0.05〜9.0mmol、特に好ましくは0.1〜8.0mmolである。
【0117】
本発明に用いられる(メタ)アクリル系重合体は、上記酸基を有する重合単位、架橋性基を有する重合単位の他に、(メタ)アクリル酸アルキルまたはアラルキルエステルの重合単位、(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体の重合単位、α-ヒドロキシメチルアクリレートの重合単位、スチレン誘導体の重合単位を有していてもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜8の前述の置換基を有するアルキル基であり、メチル基がより好ましい。(メタ)アクリル酸アラルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。(メタ)アクリルアミド誘導体としては、N−イソプロピルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−(4−メトキシカルボニルフェニル)メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、モルホリノアクリルアミド等が挙げられる。α−ヒドロキシメチルアクリレートとしては、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。スチレン誘導体としては、スチレン、4−tertブチルスチレン等が挙げられる。
【0118】
また、機上現像を適用する平版印刷版原版の場合、前記(E)バインダは親水性基を有することが好ましい。親水性基は前記画像記録層に機上現像性を付与するのに寄与する。特に、架橋性基と親水性基を共存させることにより、耐刷性と機上現像性の両立が可能になる。
【0119】
前記(E)バインダが有していてもよい前記親水性基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルキレンオキシド構造、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、スルホ基、リン酸基等などがあり、なかでも、炭素数2または3のアルキレンオキシド単位を1〜9個有するアルキレンオキシド構造が好ましい。バインダに親水性基を付与するには、例えば、親水性基を有するモノマーを共重合することにより行われる。
【0120】
前記ポリウレタン樹脂の好適な一例としては、特開2007−187836号の段落番号〔0099〕〜〔0210〕、特開2008−276155号の段落番号〔0019〕〜〔0100〕、特開2005−250438号の段落番号〔0018〕〜〔0107〕、特開2005−250158号の段落番号〔0021〕〜〔0083〕に記載のポリウレタン樹脂を挙げることが出来る。
【0121】
前記ポリビニルブチラール樹脂の好適な一例としては、特開2001−75279号の段落番号〔0006〕〜〔0013〕に記載のポリビニルブチラール樹脂を挙げることができる。
前記(E)バインダ中の酸基の一部が、塩基性化合物で中和されていてもよい。塩基性化合物としては、塩基性窒素を含有する化合物やアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属の4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0122】
前記(E)バインダは、質量平均分子量5000以上が好ましく、1万〜30万がより好ましく、また、数平均分子量1000以上が好ましく、2000〜25万がより好ましい。多分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10が好ましい。
前記(E)バインダは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
前記(E)バインダの含有量は、良好な画像部の強度と画像形成性の観点から、前記画像記録層の全固形分に対して、5〜75質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましく、10〜60質量%が更に好ましい。
また、前記(C)重合性化合物及び前記(E)バインダの合計含有量は、前記画像記録層の全固形分に対して、90質量%以下が好ましい。90質量%を超えると、感度の低下、現像性の低下を引き起こす場合がある。より好ましくは35〜80質量%である。
【0123】
(E)増感色素
前記画像記録層は、(E)増感色素を含むことが好ましい。前記色素は、増感色素であることがより好ましい。
本発明の平版印刷版原版の前記画像記録層に用いられる増感色素は、画像露光時の光を吸収して励起状態となり、前記重合開始剤に電子移動、エネルギー移動又は発熱などでエネルギーを供与し、重合開始機能を向上させるものであれば特に限定せず用いることができる。特に、300〜450nm又は750〜1400nmの波長域に極大吸収を有する増感色素が好ましく用いられる。
【0124】
前記350〜450nmの波長域に極大吸収を有する増感色素としては、メロシアニン類、ベンゾピラン類、クマリン類、芳香族ケトン類、アントラセン類、スチリル類、オキサゾール類等の色素を挙げることができる。
【0125】
前記350〜450nmの波長域に吸収極大を持つ増感色素のうち、高感度の観点からより好ましい色素は下記一般式(IX)で表される色素である。
【0126】
【化42】

【0127】
一般式(IX)中、A221は置換基を有してもよいアリール基またはヘテロアリール基を表し、X221は酸素原子、硫黄原子または=N(R223)を表す。R221、R222およびR223は、それぞれ、1価の非金属原子団を表し、A221とR221またはR222とR223は、それぞれ互いに結合して、脂肪族性または芳香族性の環を形成してもよい。
【0128】
一般式(IX)について更に詳しく説明する。R221、R222またはR223で表される1価の非金属原子団は、好ましくは、水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のヘテロアリール基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアルキルチオ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子を表す。
【0129】
221で表される置換基を有してもよいアリール基およびヘテロアリール基は、各々R221、R222およびR223で記載した置換もしくは非置換のアリール基および置換もしくは非置換のヘテロアリール基と同様である。
【0130】
このような増感色素の具体例としては、特開2007−58170号の段落番号〔0047〕〜〔0053〕、特開2007−93866号の段落番号〔0036〕〜〔0037〕、特開2007−72816号の段落番号〔0042〕〜〔0047〕に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0131】
また、特開2006−189604号、特開2007−171406号、特開2007−206216号、特開2007−206217号、特開2007−225701号、特開2007−225702号、特開2007−316582号、特開2007−328243号に記載の増感色素も好ましく用いることができる。
【0132】
続いて、前記750〜1400nmの波長域に極大吸収を有する増感色素(以降、赤外線吸収剤と称することもある)について記載する。赤外線吸収剤は染料又は顔料が好ましく用いられる。
【0133】
前記染料としては、市販の染料および例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい例として下記一般式(a)で示されるシアニン色素が挙げられる。
【0134】
【化43】

【0135】
一般式(a)中、X131は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、−X132−L131または以下に示す基を表す。なお、Phはフェニル基を表す。
【0136】
【化44】

ここで、X132は酸素原子、窒素原子または硫黄原子を示し、L131は炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子(N、S、O、ハロゲン原子、Se)を有するアリール基、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。Xa-は後述するZa-と同義である。R141は、水素原子またはアルキル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0137】
131およびR132は、それぞれ、炭素数1〜12の炭化水素基を示す。画像記録層塗布液の保存安定性から、R131およびR132は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましい。またR131およびR132は互いに連結し環を形成してもよく、環を形成する際は5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
【0138】
Ar131、Ar132は、それぞれ同じでも異なってもよく、置換基を有していてもよいアリール基を示す。好ましいアリール基としては、ベンゼン環基およびナフタレン環基が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素数12以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数12以下のアルコキシ基が挙げられる。Y131、Y132は、それぞれ同じでも異なってもよく、硫黄原子または炭素数12以下のジアルキルメチレン基を示す。R133、R134は、それぞれ同じでも異なってもよく、置換基を有していてもよい炭素数20以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R135、R136、R137およびR138は、それぞれ同じでも異なってもよく、水素原子または炭素数12以下の炭化水素基を示す。原料の入手容易性から、好ましくは水素原子である。また、Za-は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。好ましいZa-は、画像記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオンおよびスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオンおよびアリールスルホン酸イオンである。
【0139】
前記一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号の段落番号〔0017〕〜〔0019〕に記載の化合物、特開2002−023360号の段落番号〔0016〕〜〔0021〕、特開2002−040638号の段落番号〔0012〕〜〔0037〕に記載の化合物、好ましくは特開2002−278057号の段落番号〔0034〕〜〔0041〕、特開2008−195018号の段落番号〔0080〕〜〔0086〕に記載の化合物、特に好ましくは特開2007−90850号の段落番号〔0035〕〜〔0043〕に記載の化合物が挙げられる。
【0140】
また特開平5−5005号の段落番号〔0008〕〜〔0009〕、特開2001−222101号の段落番号〔0022〕〜〔0025〕に記載の化合物も好ましく使用することが出来る。
【0141】
前記赤外線吸収染料は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、顔料等の赤外線吸収染料以外の赤外線吸収剤を併用してもよい。顔料としては、特開2008−195018号公報の段落番号〔0072〕〜〔0076〕に記載の化合物が好ましい。
【0142】
前記(E)増感色素の含有量は、前記画像記録層の全固形分100質量部に対し、好ましくは0.05〜30質量部、更に好ましくは0.1〜20質量部、特に好ましくは0.2〜10質量部である
【0143】
(F)低分子親水性化合物
前記画像記録層は、耐刷性を低下させることなく機上現像性を向上させるために、低分子親水性化合物を含有してもよい。
前記低分子親水性化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテルまたはエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のポリオール類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等の有機アミン類及びその塩、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類及びその塩、アルキルスルファミン酸等の有機スルファミン酸類及びその塩、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等の有機硫酸類及びその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類及びその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類及びその塩、ベタイン類等が挙げられる。
【0144】
本発明においてはこれらの中でも、ポリオール類、有機硫酸塩類、有機スルホン酸塩類、ベタイン類から選ばれる少なくとも一つを含有させることが好ましい。
【0145】
前記有機スルホン酸塩の具体的な化合物としては、n−ブチルスルホン酸ナトリウム、n−ヘキシルスルホン酸ナトリウム、2−エチルヘキシルスルホン酸ナトリウム、シクロヘキシルスルホン酸ナトリウム、n−オクチルスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸塩;5,8,11−トリオキサペンタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、5,8,11−トリオキサヘプタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、13−エチル−5,8,11−トリオキサヘプタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、5,8,11,14−テトラオキサテトラデコサン−1−スルホン酸ナトリウムなどのエチレンオキシド鎖を含むアルキルスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム、1−ナフチルスルホン酸ナトリウム、4−ヒドロキシナフチルスルホン酸ナトリウム、1,5−ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸トリナトリウムなどのアリールスルホン酸塩、特開2007−276454号の段落番号〔0026〕〜〔0031〕、特開2009−154525号の段落番号〔0020〕〜〔0047〕に記載の化合物などが挙げられる。塩は、カリウム塩、リチウム塩でもよい。
【0146】
前記有機硫酸塩としては、ポリエチレンオキシドのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたは複素環モノエーテルの硫酸塩が挙げられる。エチレンオキシド単位は1〜4であるのが好ましく、塩は、ナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩が好ましい。これらの具体例としては、特開2007−276454号の段落番号〔0034〕〜〔0038〕に記載の化合物が挙げられる。
【0147】
前記ベタイン類としては、窒素原子への炭化水素置換基の炭素原子数が1〜5である化合物が好ましく、具体例としては、トリメチルアンモニウムアセタート、ジメチルプロピルアンモニウムアセタート、3−ヒドロキシ−4−トリメチルアンモニオブチラート、4−(1−ピリジニオ)ブチラート、1−ヒドロキシエチル−1−イミダゾリオアセタート、トリメチルアンモニウムメタンスルホナート、ジメチルプロピルアンモニウムメタンスルホナート、3−トリメチルアンモニオ−1−プロパンスルホナート、3−(1−ピリジニオ)−1−プロパンスルホナートなどが挙げられる。
【0148】
前記低分子親水性化合物は、疎水性部分の構造が小さくて界面活性作用がほとんどないため、湿し水が画像記録層露光部(画像部)へ浸透して画像部の疎水性や皮膜強度を低下させることがなく、画像記録層のインキ受容性や耐刷性を良好に維持できる。
【0149】
前記低分子親水性化合物の、前記画像記録層中の含有量は、前記画像記録層全固形分に対して0.5〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、2〜10質量%がさらに好ましい。この範囲で良好な機上現像性と耐刷性が得られる。低分子親水性化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0150】
(G)感脂化剤
前記画像記録層には、着肉性を向上させるために、ホスホニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマーなどの感脂化剤を含有させることができる。特に、保護層が無機質の層状化合物を含有する場合、感脂化剤は、無機質の層状化合物の表面被覆剤として機能し、無機質の層状化合物による印刷途中の着肉性低下を防止する。
【0151】
好適なホスホニウム化合物としては、特開2006−297907号公報及び特開2007−50660号公報に記載のホスホニウム化合物を挙げることができる。具体例としては、テトラブチルホスホニウムヨージド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、1,4−ビス(トリフェニルホスホニオ)ブタン=ジ(ヘキサフルオロホスファート)、1,7−ビス(トリフェニルホスホニオ)ヘプタン=スルファート、1,9−ビス(トリフェニルホスホニオ)ノナン=ナフタレン−2,7−ジスルホナートなどが挙げられる。
【0152】
前記含窒素低分子化合物としては、アミン塩類、第4級アンモニウム塩類が挙げられる。またイミダゾリニウム塩類、ベンゾイミダゾリニウム塩類、ピリジニウム塩類、キノリニウム塩類も挙げられる。なかでも、第4級アンモニウム塩類及びピリジニウム塩類が好ましい。具体例としては、テトラメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、テトラブチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ドデシルトリメチルアンモニウム=p−トルエンスルホナート、ベンジルトリエチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルオクチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、特開2008−284858号の段落番号〔0021〕〜〔0037〕、特開2009−90645号の段落番号〔0030〕〜〔0057〕に記載の化合物などが挙げられる。
【0153】
前記アンモニウム基含有ポリマーとしては、その構造中にアンモニウム基を有すれば如何なるものでもよいが、側鎖にアンモニウム基を有する(メタ)アクリレートを共重合成分として5〜80モル%含有するポリマーが好ましい。具体例としては、特開2009−208458号の段落番号〔0089〕〜〔0105〕に記載のポリマーが挙げられる。
【0154】
前記アンモニウム塩含有ポリマーは、下記の測定方法で求められる還元比粘度(単位:ml/g)の値が、5〜120の範囲のものが好ましく、10〜110の範囲のものがより好ましく、15〜100の範囲のものが特に好ましい。上記還元比粘度を質量平均分子量に換算すると、10000〜150000が好ましく、17000〜140000がより好ましく、20000〜130000が特に好ましい。
【0155】
<<還元比粘度の測定方法>>
30%ポリマー溶液3.33g(固形分として1g)を、20mlのメスフラスコに秤量し、N−メチルピロリドンでメスアップする。この溶液を30℃の恒温槽で30分間静置し、ウベローデ還元粘度管(粘度計定数=0.010cSt/s)に入れて30℃にて流れ落ちる時間を測定する。なお測定は同一サンプルで2回測定し、その平均値を算出する。同様にブランク(N−メチルピロリドンのみ)の場合も測定し、下記式から還元比粘度(ml/g)を算出する。
【0156】
【数1】

【0157】
以下に、アンモニウム基含有ポリマーの具体例を示す。
(1)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p−トルエンスルホナート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比10/90 質量平均分子量4.5万)
(2)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80 質量平均分子量6.0万)
(3)2−(エチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p−トルエンスルホナート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比30/70 質量平均分子量4.5万)
(4)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/2−エチルヘキシルメタクリレート共重合体(モル比20/80 質量平均分子量6.0万)
(5)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=メチルスルファート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比40/60 質量平均分子量7.0万)
(6)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比 25/75 質量平均分子量6.5万)
(7)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルアクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80 質量平均分子量6.5万)
(8)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=13−エチル−5,8,11−トリオキサ−1−ヘプタデカンスルホナート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80 質量平均分子量7.5万)
(9)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート/2−ヒドロキシ−3−メタクロイルオキシプロピルメタクリレート共重合体(モル比15/80/5 質量平均分子量6.5万)
【0158】
前記感脂化剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して0.01〜30.0質量%が好ましく、0.1〜15.0質量%がより好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。
【0159】
(H)疎水化前駆体
前記画像記録層には、機上現像性を向上させるため、疎水化前駆体を含有させることができる。疎水化前駆体とは、熱が加えられたときに前記画像記録層を疎水性に変換できる微粒子を意味する。微粒子としては、疎水性熱可塑性ポリマー微粒子、熱反応性ポリマー微粒子、重合性基を有するポリマー微粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル及びミクロゲル(架橋ポリマー微粒子)から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。なかでも、重合性基を有するポリマー微粒子及びミクロゲルが好ましい。
【0160】
前記疎水性熱可塑性ポリマー微粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure、No.333003、特開平9−123387号公報、特開平9−131850号公報、特開平9−171249号公報、特開平9−171250号公報及び欧州特許第931647号明細書などに記載の疎水性熱可塑性ポリマー微粒子を好適なものとして挙げることができる。
このようなポリマー微粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、ポリアルキレン構造を有するアクリレートまたはメタクリレートなどのモノマーのホモポリマーもしくはコポリマーまたはそれらの混合物を挙げることができる。その中で、より好適なものとして、ポリスチレン、スチレンおよびアクリロニトリルを含む共重合体、ポリメタクリル酸メチルを挙げることができる。
【0161】
本発明に用いられる疎水性熱可塑性ポリマー微粒子の平均粒径は0.01〜2.0μmが好ましい。
【0162】
本発明に用いられる熱反応性ポリマー微粒子としては、熱反応性基を有するポリマー微粒子が挙げられ、これらは、熱反応による架橋及びその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
【0163】
本発明に用いる熱反応性基を有するポリマー微粒子における熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよいが、重合性基であることが好ましく、その例として、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基など)、付加反応を行うイソシアナト基またはそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基及び反応相手であるヒドロキシ基またはアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基またはヒドロキシ基などを好適なものとして挙げることができる。
【0164】
本発明に用いられるマイクロカプセルとしては、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分の全てまたは一部をマイクロカプセルに内包させたものである。なお、画像記録層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。さらに、マイクロカプセルを含有する画像記録層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有することが好ましい態様である。
【0165】
本発明に用いられるミクロゲルは、その中または表面の少なくとも一方に、画像記録層の構成成分の一部を含有することができる。特に、ラジカル重合性基をその表面に有することによって反応性ミクロゲルとした態様が、画像形成感度や耐刷性の観点から特に好ましい。
【0166】
前記画像記録層の構成成分をマイクロカプセル化もしくはミクロゲル化するには、公知の方法が適用できる。
【0167】
マイクロカプセルあるいはミクロゲルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましく、0.05〜2.0μmがさらに好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
【0168】
前記疎水化前駆体の含有量は、前記画像記録層全固形分の5〜90質量%が好ましい。
【0169】
(I)その他の画像記録層成分
前記画像記録層は、連鎖移動剤を含有することが好ましい。連鎖移動剤は、例えば高分子辞典第三版(高分子学会編、2005年)683−684頁に定義されている。連鎖移動剤としては、例えば、分子内にSH、PH、SiH、GeHを有する化合物群が用いられる。これらは、低活性のラジカル種に水素供与して、ラジカルを生成するか、もしくは、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成しうる。前記画像記録層には、特に、チオール化合物(例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール類、2−メルカプトベンズチアゾール類、2−メルカプトベンズオキサゾール類、3−メルカプトトリアゾール類、5−メルカプトテトラゾール類等)を好ましく用いることができる。
【0170】
連鎖移動剤の好ましい含有量は、前記画像記録層の全固形分100質量部に対し、好ましくは0.01〜20質量部、更に好ましくは1〜10質量部、特に好ましくは1〜5質量部である。
【0171】
前記画像記録層には、さらに、必要に応じて種々の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、現像性の促進や塗布面状の向上のための界面活性剤、現像性の向上やマイクロカプセルの分散安定性の向上のための親水性ポリマー、画像部と非画像部を視認するための着色剤や焼き出し剤、前記画像記録層の製造中または保存中における重合性化合物の不要な熱重合を防止するための重合禁止剤、酸素による重合阻害を防止するための高級脂肪誘導体などの疎水性低分子化合物、画像部の硬化皮膜強度向上のための無機微粒子、有機微粒子、感度の向上の為の共増感剤、可塑性の向上のための可塑剤等を挙げることができる。これの化合物はいずれも公知のもの、例えば、特開2007−206217号の段落番号〔0161〕〜〔0215〕、特表2005−509192号の段落番号〔0067〕、特開2004−310000号の段落番号〔0023〕〜〔0026〕及び〔0059〕〜〔0066〕に記載の化合物を使用することができる。界面活性剤については、後述の現像液に添加してもよい界面活性剤を使用することもできる。
【0172】
(画像記録層の形成)
本発明の平版印刷版原版における前記画像記録層は、形成方法に特に制限はなく、公知の方法で形成されることができる。前記画像記録層は、必要な上記各画像記録層成分を溶剤に分散または溶解して塗布液を調製し、塗布して形成される。使用する溶剤としては、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、γ−ブチルラクトン等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。溶剤は、単独または混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0173】
前記画像記録層の塗布量(固形分)は、0.3〜3.0g/m2が好ましい。塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等が挙げられる。
前記(A)共重合体を画像記録層又は下塗り層に含有させるには、前記(A)共重合体を画像記録層用塗布液又は下塗り層用塗布液に添加することにより行うことができる。前記(A)共重合体が前記画像記録層に含まれる場合、前記(A)共重合体の含有量(固形分)は、0.1〜100mg/m2が好ましく、1〜30mg/m2がより好ましく、5〜24mg/m2がさらに好ましい。
【0174】
[支持体]
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状の親水性支持体であればよい。支持体としては、特に、アルミニウム板が好ましい。アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すことが好ましい。アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理( 電気化学的に表面を溶解させる粗面化処理) 、化学的粗面化処理( 化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理) が挙げられる。これらの処理については、特開2007−206217号の段落番号〔0241〕〜〔0245〕に記載された方法を好ましく用いることができる。
前記支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであることが好ましい。この範囲で、前記画像記録層との良好な密着性、良好な耐刷性と良好な汚れ難さが得られる。
また、前記支持体の色濃度は、反射濃度値で0.15〜0.65が好ましい。この範囲で、画像露光時のハレーション防止による良好な画像形成性と現像後の良好な検版性が得られる。
前記支持体の厚さは0.1〜0.6mmであるのが好ましく、0.15〜0.4mmであるのがより好ましく、0.2〜0.3mmであるのが更に好ましい。
【0175】
<親水化処理>
本発明の平版印刷版原版においては、非画像部領域の親水性を向上させ印刷汚れを防止するために、支持体表面の親水化処理を行うことも好適である。
支持体表面の親水化処理としては、支持体をケイ酸ナトリウム等の水溶液に浸漬処理又は電解処理するアルカリ金属シリケート処理、フッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、ポリビニルホスホン酸で処理する方法等が挙げられるが、ポリビニルホスホン酸水溶液に浸漬処理する方法が好ましく用いられる。
【0176】
[保護層]
本発明の平版印刷版原版には、露光時の重合反応を妨害する酸素の拡散侵入を遮断するため、前記画像記録層上に保護層(酸素遮断層)を設けることが好ましい。前記保護層の材料としては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができ、必要に応じて2種類以上を混合して使用することもできる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース誘導体、ポリ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これらの中で、比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが好ましい。具体的には、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的に特に良好な結果を与える。
【0177】
前記保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するために必要な未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテルあるいはアセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の共重合成分を有していてもよい。ポリビニルアルコールはポリ酢酸ビニルを加水分解することにより得られる。ポリビニルアルコールの具体例としては加水分解度が69.0〜100モル%、重合繰り返し単位数が300から2400の範囲のものを挙げることができる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−102、PVA−103、PVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−235、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−403、PVA−405、PVA−420、PVA−424H、PVA−505、PVA−617、PVA−613、PVA−706、L−8等が挙げられる。ポリビニルアルコールは単独または混合して使用できる。ポリビニルアルコールの保護層中の含有量は、好ましくは20〜95質量%、より好ましくは30〜90質量%である。
【0178】
また、変性ポリビニルアルコールも好ましく用いることができる。特に、カルボン酸基又はスルホン酸基を有する酸変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。具体的には、特開2005−250216号、特開2006−259137号に記載のポリビニルアルコールが好適に挙げられる。
【0179】
ポリビニルアルコールと他の材料を混合して使用する場合、混合する成分としては、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはその変性物が、酸素遮断性、現像除去性といった観点から好ましく、保護層中その含有率は3.5〜80質量%、好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは15〜30質量%である。
【0180】
前記保護層には、グリセリン、ジプロピレングリコール等を上記ポリマーに対して数質量%相当量添加して可撓性を付与することができる。また、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤、アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルアミノジカルボン酸塩等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤を上記ポリマーに対して数質量%相当量添加することができる。
【0181】
さらに、前記保護層には、酸素遮断性や画像記録層表面保護性を向上させる目的で、無機質の層状化合物を含有させることも好ましい。無機質の層状化合物の中でも、合成の無機質の層状化合物であるフッ素系の膨潤性合成雲母が特に有用である。具体的には、特開2005−119273号に記載の無機質の層状化合物が好適に挙げられる。
【0182】
前記保護層の塗布量は、0.05〜10g/m2が好ましく、無機質の層状化合物を含有する場合には、0.1〜5g/m2がさらに好ましく、無機質の層状化合物を含有しない場合には、0.5〜5g/m2がさらに好ましい。
【0183】
[バックコート層]
本発明の平版印刷版原版は、必要に応じて、前記支持体の裏面にバックコート層を設けることができる。前記バックコート層としては、例えば、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されている有機金属化合物または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好適に挙げられる。中でも、Si(OCH34 、Si(OC254 、Si(OC374 、Si(OC494等のケイ素のアルコキシ化合物を用いることが、原料が安価で入手しやすい点で好ましい。
【0184】
[平版印刷版の製造方法]
本発明の平版印刷版原版を画像露光して現像処理を行うことで平版印刷版を製造することができる。
本発明の平版印刷版の製造方法は、本発明の平版印刷版原版を、画像様に露光する露光工程と;露光した前記平版印刷版原版を、pHが2〜14の現像液で現像する現像工程を含み;前記現像工程において、前記現像液の存在下、前記画像記録層の非露光部と前記保護層とを同時に除去する工程を含むことを特徴とする。
本発明の平版印刷版の製造方法は、前記画像記録層の前記支持体とは反対側の表面上に、保護層を形成する工程を含み;前記現像工程において、さらに界面活性剤を含有する前記現像液の存在下、非露光部の画像記録層と前記保護層とを同時に除去する工程を含む(但し、水洗工程を含まない)、ことが好ましい
本発明の平版印刷版の製造方法の第二の態様は、本発明の平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、印刷機上で印刷インキと湿し水を供給して非露光部の前記画像記録層を除去する工程とを含むことを特徴とする。
以下、本発明の平版印刷版の製造方法について、各工程の好ましい態様を順に説明する。なお、本発明の平版印刷版の製造方法によれば、本発明の平版印刷版原版は前記現像工程において水洗工程を含む場合も平板印刷版を製造することができる。
【0185】
<露光工程>
本発明の平版印刷版の製造方法は、本発明の平版印刷版原版を、画像様に露光する露光工程を含む。本発明の平版印刷版原版は、線画像、網点画像等を有する透明原画を通してレーザー露光するかデジタルデータによるレーザー光走査等で画像様に露光される。
光源の波長は300〜450nm又は750〜1400nmが好ましく用いられる。300〜450nmの光源の場合は、この波長領域に吸収極大を有する増感色素を画像記録層に有する平版印刷版原版が好ましく用いられ、750〜1400nmの光源の場合は、この波長領域に吸収を有する増感色素である赤外線吸収剤を画像記録層に含有する平版印刷版原版が好ましく用いられる。300〜450nmの光源としては、半導体レーザーが好適である。750〜1400nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。赤外線レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20マイクロ秒以内であるのが好ましく、また照射エネルギー量は10〜300mJ/cm2であるのが好ましい。また、露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いることが好ましい。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式等の何れでもよい。
画像露光は、プレートセッターなどを用いて常法により行うことができる。機上現像の場合には、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光を行ってもよい。
【0186】
<現像工程>
現像処理は、pHが2〜14の現像液にて現像する方法(現像液処理方式)、又は(2)印刷機上で、湿し水及び/又はインキを加えながら現像する方法(機上現像方式)で行うことができる。
【0187】
(現像液処理方式)
現像液処理方式においては、画像露光された平版印刷版原版は、pHが2〜14の現像液により処理され、非露光部の画像記録層が除去されて平版印刷版が作製される。
高アルカリ性現像液(pH12以上)を用いる現像処理においては、通常、前水洗工程により保護層を除去し、次いでアルカリ現像を行い、後水洗工程でアルカリを水洗除去し、ガム液処理を行い、乾燥工程で乾燥して平版印刷版が作製される。
本発明の第一の好ましい態様によれば、pHが2〜12の現像液が使用され、好ましくは、pHが3.5〜13であり、さらに好ましくは、6〜13であり、最も好ましくは7〜10が使用される。
この態様においては、現像液中に界面活性剤又は水溶性高分子化合物を含有させることが好ましく、これにより現像とガム液処理を同時に行うことが可能となる。よって後水洗工程は特に必要とせず、1液で現像−ガム液処理を行うことができる。
さらに、前水洗工程も特に必要とせず、保護層の除去も現像−ガム液処理と同時に行うことができる。本発明の平板印刷版の製造方法では、現像−ガム処理の後に、例えば、スクイズローラーを用いて余剰の現像液を除去した後、乾燥を行うことが好ましい。
【0188】
本発明における平版印刷版原版の現像液処理は、常法に従って、0〜60℃、好ましくは15〜40℃程度の温度で、例えば、露光処理した平版印刷版原版を現像液に浸漬してブラシで擦る方法、スプレーにより現像液を吹き付けてブラシで擦る方法等により行うことができる。
【0189】
前記現像液による現像処理は、現像液の供給手段および擦り部材を備えた自動現像処理機により好適に実施することができる。擦り部材として、回転ブラシロールを用いる自動現像処理機が特に好ましい。また、自動現像処理機は現像処理手段の後に、スクイズローラー等の余剰の現像液を除去する手段や、温風装置等の乾燥手段を備えていることが好ましい。さらに、自動現像処理機は現像処理手段の前に、画像露光後の平版印刷版原版を加熱処理するための前加熱手段を備えていてもよい。
【0190】
本発明の平版印刷版の作製方法に使用される自動現像処理機の1例について、図1を参照しながら簡単に説明する。
図1に示す自動現像処理機100は、機枠202により外形が形成されたチャンバーからなり、平版印刷版原版の搬送路11の搬送方向(矢印A)に沿って連続して形成された前加熱(プレヒート)部200、現像部300及び乾燥部400を有している。
前加熱部200は、搬入口212及び搬出口218を有する加熱室208を有し、その内部には串型ローラー210とヒーター214と循環ファン216とが配置されている。
【0191】
現像部300は、外板パネル310により前加熱部200と仕切られており、外板パネル310にはスリット状挿入口312が設けられている。
現像部300の内部には、現像液で満たされている現像槽308を有する処理タンク306と、平版印刷版原版を処理タンク306内部へ案内する挿入ローラー対304が設けられている。現像槽308の上部は遮蔽蓋324で覆われている。
【0192】
現像槽308の内部には、搬送方向上流側から順に、ガイドローラー344及びガイド部材342、液中ローラー対316、ブラシローラー対322、ブラシローラー対326、搬出ローラー対318が並設されている。現像槽308内部に搬送された平版印刷版原版は、現像液中に浸漬され、回転するブラシローラー対322、326の間を通過することにより非画像部が除去される。
ブラシローラー対322、326の下部には、スプレーパイプ330が設けられている。スプレーパイプ330はポンプ(不図示)が接続されており、ポンプによって吸引された現像槽308内の現像液がスプレーパイプ330から現像槽308内へ噴出するようになっている。
【0193】
現像槽308側壁には、第1の循環用配管C1の上端部に形成されたオーバーフロー口51が設けられており、超過分の現像液がオーバーフロー口51に流入し、第1の循環用配管C1を通って現像部300の外部に設けられた外部タンク50に排出される。
外部タンク50は第2の循環用配管C2が接続され、第2の循環用配管C2中には、フィルター部54及び現像液供給ポンプ55が設けられている。現像液供給ポンプ55によって、現像液が外部タンク50から現像槽308へ供給される。また、外部タンク50内には上限液レベル計52、下限液レベル計53が設けられている。
現像槽308は、第3の循環用配管C3を介して補充用水タンク71に接続されている。第3の循環用配管C3中には水補充ポンプ72が設けられており、この水補充ポンプ72によって補充用水タンク71中に貯留される水が現像槽308へ供給される。
液中ローラー対316の上流側には液温センサ336が設置されており、搬出ローラー対318の上流側には液面レベル計338が設置されている。
【0194】
現像300と乾燥部400との間に配置された仕切り板332にはスリット状挿通口334が設けられている。また、現像部300と乾燥部400との間の通路にはシャッター(不図示)が設けられ、平版印刷版原版11が通路を通過していないとき、通路はシャッターにより閉じられている。
乾燥部400は、支持ローラー402、ダクト410、412、搬送ローラー対406、ダクト410、412、搬送ローラー対408がこの順に設けられている。ダクト410、412の先端にはスリット孔414が設けられている。また、乾燥部400には図示しない温風供給手段、発熱手段等の乾燥手段が設けられている。乾燥部400には排出口404が設けられ、乾燥手段により乾燥された平版印刷版は排出口404から排出される。
【0195】
本発明において現像液処理に用いられる現像液は、pHが2〜14の水溶液、または界面活性剤を含む。前記現像液は、水を主成分(水を60質量%以上含有)とする水溶液が好ましく、特に、界面活性剤(アニオン系、ノニオン系、カチオン系、両性イオン系等)を含有する水溶液や、水溶性高分子化合物を含有する水溶液が好ましい。界面活性剤と水溶性高分子化合物の両方を含有する水溶液も好ましい。現像液のpHは、より好ましくは3.5〜13、さらに好ましくは6〜13、特に好ましくは7〜10.0である。特に、pH2.0〜10.0の現像液を使用する方式において、耐汚れ性、耐刷性、経時での耐汚れ性低下の抑制を共に満足させることは極めて難しい。この理由は以下のように説明できる。すなわち、同一の平版印刷版原版用素材を用いて現像液の種類を変更する場合、pH2.0〜10.0の現像液では、従来用いられてきたpH12〜13のアルカリ現像液に比べ、未露光部の耐汚れ性が悪化する。そこでpH2.0〜10.0の現像液の耐汚れ性を良化させようとして素材の親水性を上げると、耐刷性が悪化する傾向にあるためである。本発明の平版印刷版原版を用いることで、このようなpH2.0〜10.0の現像液を好ましく用いることができる。さらに、pHが7以上では、支持体から高分子化合物が脱離しやすいが、本願の高分子化合物は側鎖に支持体吸着基を有していることから、高分子化合物の脱離をすることない。そのため、本発明の平版印刷版は、pH7〜10.0の現像液を最も好ましく使用できる。
【0196】
本発明において前記現像液に用いられるアニオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンアルキルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−アルキル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。この中で、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0197】
本発明において前記現像液に用いられるカチオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、アルキルイミダゾリニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
【0198】
本発明において前記現像液に用いられるノニオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトールエチレンオキサイド付加物、フェノールエチレンオキサイド付加物、ナフトールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。この中で、芳香環とエチレンオキサイド鎖を有するものが好ましく、アルキル置換又は無置換のフェノールエチレンオキサイド付加物又はアルキル置換又は無置換のナフトールエチレンオキサイド付加物がより好ましい。
【0199】
本発明において前記現像液に用いられる両性イオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、アルキルジメチルアミンオキシドなどのアミンオキシド系、アルキルベタインなどのベタイン系、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウムなどのアミノ酸系が挙げられる。特に、置換基を有してもよいアルキルジメチルアミンオキシド、置換基を有してもよいアルキルカルボキシベタイン、置換基を有してもよいアルキルスルホベタインが好ましく用いられる。具体的には、特開2008−203359号の段落番号〔0256〕の式(2)で示される化合物、特開2008−276166号の段落番号〔0028〕の式(I)、式(II)、式(VI)で示される化合物、特開2009−47927号の段落番号〔0022〕〜〔0029〕で示される化合物を用いることができる。
【0200】
前記界面活性剤は現像液中に2種以上用いてもよい。前記現像液中に含有される前記界面活性剤の量は、0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
【0201】
本発明において前記現像液に用いられる水溶性高分子化合物としては、大豆多糖類、変性澱粉、アラビアガム、デキストリン、繊維素誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース等)およびその変性体、プルラン、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドおよびアクリルアミド共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリビニルスルホン酸およびその塩、ポリスチレンスルホン酸およびその塩などが挙げられる。
【0202】
前記大豆多糖類は、公知のものが使用でき、例えば市販品として商品名ソヤファイブ(不二製油(株)製)があり、各種グレードのものを使用することができる。好ましく使用できるものは、10質量%水溶液の粘度が10〜100mPa/secの範囲にあるものである。
【0203】
前記変性澱粉も、公知のものが使用でき、例えば、トウモロコシ、じゃがいも、タピオカ、米、小麦等の澱粉を酸または酵素等で1分子当たりグルコース残基数5〜30の範囲で分解し、更にアルカリ中でオキシプロピレンを付加する方法等で作ることができる。
【0204】
前記水溶性高分子化合物は前記現像液中に2種以上併用することもできる。前記水溶性高分子化合物の前記現像液中における含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0205】
本発明で使用する現像液には、pH緩衝剤を含ませることができる。本発明の現像液には、pH2〜14に緩衝作用を発揮する緩衝剤であれば特に限定なく用いることができる。本発明においては弱アルカリ性の緩衝剤が好ましく用いられ、例えば(a)炭酸イオン及び炭酸水素イオン、(b)ホウ酸イオン、(c)水溶性のアミン化合物及びそのアミン化合物のイオン、及びそれらの併用などが挙げられる。すなわち、例えば(a)炭酸イオン-炭酸水素イオンの組み合わせ、(b)ホウ酸イオン、又は(c)水溶性のアミン化合物-そのアミン化合物のイオンの組み合わせなどが現像液においてpH緩衝作用を発揮し、現像液を長期間使用してもpHの変動を抑制でき、従ってpHの変動による現像性低下、現像カス発生等を抑制できる。本発明の平版印刷版の製造方法では、特に好ましくは、炭酸イオン及び炭酸水素イオンの組み合わせである。
【0206】
炭酸イオン及び炭酸水素イオンを現像液中に存在させるには、炭酸塩と炭酸水素塩を現像液に加えてもよいし、炭酸塩又は炭酸水素塩を加えた後にpHを調整することで、炭酸イオンと炭酸水素イオンを発生させてもよい。炭酸塩及び炭酸水素塩は、特に限定されないが、アルカリ金属塩であることが好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。アルカリ金属は単独でも、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0207】
炭酸イオン及び炭酸水素イオンの総量は、現像液に対して0.05〜5mol/Lが好ましく、0.07〜2mol/Lがより好ましく、0.1〜1mol/Lが特に好ましい。
【0208】
本発明において現像液は、有機溶剤を含有してもよい。含有可能な有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、アイソパーE、H、G(エッソ化学(株)製)等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭化水素(メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、トリクレン、モノクロルベンゼン等)、極性溶剤が挙げられる。極性溶剤としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n−アミルアルコール、メチルアミルアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、エチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ベンジル、乳酸メチル、乳酸ブチル、エチレングリコールモノブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアセテート、ジエチルフタレート、レブリン酸ブチル等)、その他(トリエチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)等が挙げられる。
【0209】
前記現像液に含有される前記有機溶剤は、2種以上を併用することもできる。前記有機溶剤が水に不溶な場合は、界面活性剤等を用いて水に可溶化して使用することも可能である。現像液が有機溶剤を含有する場合、安全性、引火性の観点から、有機溶剤の濃度は40質量%未満が望ましい。
【0210】
本発明において前記現像液には上記成分の他に、防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機酸、無機酸、無機塩などを含有させることができる。具体的には、特開2007−206217号の段落番号〔0266〕〜〔0270〕に記載の化合物を好ましく用いることができる。
【0211】
本発明において前記現像液は、露光された平版印刷版原版の現像液および現像補充液として用いることができる。また、前述のような自動現像処理機に好ましく適用することができる。自動現像処理機を用いて現像する場合、処理量に応じて現像液が疲労してくるので、補充液または新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。
【0212】
<機上現像方式>
機上現像方式においては、画像露光された平版印刷版原版は、印刷機上で油性インキと水性成分とを供給し、非画像部の画像記録層が除去されて平版印刷版が作製される。
すなわち、平版印刷版原版を画像露光後、なんらの現像処理を施すことなくそのまま印刷機に装着するか、あるいは、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光し、ついで、油性インキと水性成分とを供給して印刷すると、印刷途上の初期の段階で、非画像部においては、供給された油性インキ及び/または水性成分によって、未硬化の画像記録層が溶解または分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。一方、露光部においては、露光により硬化した画像記録層が、親油性表面を有する油性インキ受容部を形成する。最初に版面に供給されるのは、油性インキでもよく、水性成分でもよいが、水性成分が除去された画像記録層成分によって汚染されることを防止する点で、最初に油性インキを供給することが好ましい。このようにして、平版印刷版原版は印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。油性インキ及び水性成分としては、通常の平版印刷用の印刷インキと湿し水が好適に用いられる。
【0213】
本発明の平版印刷版原版からの平版印刷版の製造方法においては、現像方式を問わず、必要に応じて、露光前、露光中、露光から現像までの間に、平版印刷版原版の全面を加熱してもよい。この様な加熱により、画像記録層中の画像形成反応が促進され、感度や耐刷性の向上や感度の安定化等の利点が生じ得る。また、現像液処理方式の場合、画像強度や耐刷性の向上を目的として、現像処理後の画像に対し、全面後加熱もしくは全面露光を行うことも有効である。通常、現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行う事が好ましい。温度が高すぎると、非画像部が硬化してしまう等の問題を生じることがある。現像後の加熱には非常に強い条件を利用する。通常は100〜500℃の範囲である。温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じることがある。
【実施例】
【0214】
以下、実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0215】
<合成例1:特定高分子化合物P−11の合成>
(1)ライトエステルP−1Mの分液精製
ライトエステルP−1M(共栄社化学(株)製)(60.0g)を蒸留水(150g)に溶解させて得られた水溶液を、ジエチレングリコールジブチルエーテル(150g)で2回、分液精製を行い、ライトエステルP−1M水溶液(濃度10.5質量%)(165.0g)を得た。
【0216】
(2)重合工程
コンデンサー、攪拌器を取り付けた500mlの3口フラスコに、蒸留水(135g)を入れ、窒素気流下、55℃まで加熱した。上記で精製したライトエステルP−1M水溶液(143.8g)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)(14.90g)、2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社品)(0.079g)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシルフリーラジカル(東京化学工業株式会社製)(45mg)重合開始剤(VA046B、和光純薬工業(株)製)(0.69g)、蒸留水(6.3g)からなる溶液を、500mlの3口フラスコに、2時間かけて滴下した。滴下終了後、55℃で2時間撹拌し、重合開始剤(VA046B、和光純薬工業(株)製)(0.69g)を加え、55℃のまま2時間さらに撹拌し、特定高分子化合物(P−11)を得た。
得られた特定高分子化合物(P−11)を、ポリエチレングリコールを標準物質としたゲルバミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均モル質量(Mw)を測定した結果、50,000であった。
【0217】
<合成例2:特定高分子化合物P−104の合成>
(1)末端親水基を有する連鎖移動剤P−104Aの合成
コンデンサー、攪拌器を取り付けた200mlの3口フラスコに、テトラキス(3−メルカプトプロピオン酸)ペンタエリスリトール(13.2g)、3−メトキシ−2−プロパノール(23.3g)を入れ、窒素気流下55℃まで加熱した。2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)(16.80g)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシルフリーラジカル(東京化学工業株式会社製)(25mg)、重合開始剤(VA046B、和光純薬工業(株)製)(1.04g)、蒸留水(46.7g)からなる溶液を、200mlの3口フラスコに、2時間かけて滴下した。滴下終了後、55℃で2時間撹拌し、末端親水基を有する連鎖移動剤P−104Aを得た。
【0218】
(2)重合工程
コンデンサー、攪拌器を取り付けた300mlの3口フラスコに、蒸留水(63g)を入れ、窒素気流下、55℃まで加熱した。上記合成例1と同様の方法で精製したライトエステルP−1M水溶液(67.1g)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)(7.40g)、上記で合成した連鎖移動剤P−104A(0.62g)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシルフリーラジカル(東京化学工業株式会社製)(25mg)、重合開始剤(VA046B、和光純薬工業(株)製)(0.32g)、蒸留水(2.5g)からなる溶液を、300mlの3口フラスコに、2時間かけて滴下した。滴下終了後、55℃で2時間撹拌し、重合開始剤(VA046B、和光純薬工業(株)製)(0.32g)を加え、55℃のまま2時間さらに撹拌し、特定高分子化合物(P−104)を得た。
得られた特定高分子化合物(P−104)を、ポリエチレングリコールを標準物質としたゲルバミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均モル質量(Mw)を測定した結果、80,000であった。
【0219】
<合成例3:特定高分子化合物P−133の合成>
(1)末端親水基を有する連鎖移動剤P−133Aの合成
コンデンサー、攪拌器を取り付けた200mlの3口フラスコに、ヘキサキス(3−メルカプトプロピオン酸)ジペンタエリスリトール(14.4g)、N−メチル−2−ピロリドン(23.3g)を入れ、窒素気流下75℃まで加熱した。2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(東京化成工業株式会社製、11.4g)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(東京化成工業株式会社製)(4.2g)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシルフリーラジカル(東京化学工業株式会社製)(25mg)、重合開始剤(V−601、和光純薬工業(株)製)(0.51g)、N−メチル−2−ピロリドン(46.7g)からなる溶液を、200mlの3口フラスコに、2時間かけて滴下した。滴下終了後、75℃で2時間撹拌し、末端親水基を有する連鎖移動剤P−133Aを得た。
【0220】
(2)重合工程
コンデンサー、攪拌器を取り付けた300mlの3口フラスコに、N−メチル−2−ピロリドン(63g)を入れ、窒素気流下、75℃まで加熱した。ライトエステルP−1M(共栄社化学製)(7.1g)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)(7.4g)、上記で合成した連鎖移動剤P−133A(0.92g)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシルフリーラジカル(東京化学工業株式会社製)(25mg)、重合開始剤(V−601、和光純薬工業(株)製)(0.15g)、N−メチル−2−ピロリドン(63g)からなる溶液を、300mlの3口フラスコに、2時間かけて滴下した。滴下終了後、75℃で2時間撹拌し、重合開始剤(V−601、和光純薬工業(株)製)(0.15g)を加え、75℃のまま2時間さらに撹拌した。反応液中に、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシルフリーラジカル(東京化学工業株式会社製)(25mg)、カレンズMOI(昭和電工(株)製)(0.5g)を加え、ネオスタンU−600(20mg)を加えて、55℃で6時間撹拌した。その後、メタノール(1.00g)を加えて、55℃で2時間撹拌し、特定高分子化合物(P−133)を得た。得られた特定高分子化合物(P−133)を、ポリエチレングリコールを標準物質としたゲルバミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均モル質量(Mw)を測定した結果、88,000であった。
【0221】
(B)平版印刷版
平版印刷版原版の作成
〔アルミニウム支持体1の作製〕
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質:JIS A1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ナトリウム水溶液を用いて50℃で30秒間脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm3)を用いアルミニウム表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20質量%硝酸水溶液に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。
【0222】
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0223】
次に、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dm2の条件で、硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。この板を15質量%硫酸水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dm2で2.5g/m2の直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥し、アルミニウム支持体1を作製した。
このようにして得られた支持体の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
【0224】
〔アルミニウム支持体2の作製〕
アルミニウム支持体1を、珪酸ナトリウム1質量%水溶液にて20℃で10秒処理し、アルミニウム支持体2を作製した。その表面粗さを測定したところ、0.54μm(JIS B0601によるRa表示)であった。
【0225】
〔アルミニウム支持体3の作製〕
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を65℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、1分間の脱脂処理を行った後、水洗した。このアルミニウム板を、25℃に保たれた10%塩酸水溶液中に1分間浸漬して中和した後、水洗した。次いで、このアルミニウム板を、0.3質量%の塩酸水溶液中で、25℃、電流密度100A/dm2の条件下に交流電流により60秒間電解粗面化を行った後、60℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液中で10秒間デスマット処理を行った。このアルミニウム板を、15%硫酸水溶液溶液中で、25℃、電流密度10A/dm2、電圧15Vの条件下に1分間陽極酸化処理を行い、アルミニウム支持体を作製した。その表面粗さを測定したところ、0.44μm(JIS B0601によるRa表示)であった。
【0226】
〔下塗り層の形成〕
以下の組成を有する下塗り層塗布液をバーコーターで塗布し、100℃にて1分間乾燥して下塗り層を形成した。下塗り層の乾燥塗布量は12mg/m2であった。
【0227】
<下塗り層塗布液>
・表に記載の高分子化合物または下記比較用高分子化合物 0.50g
・メタノール 90.0g
・純水 10.0g
【0228】
<下塗り層塗布液>
・下記表に記載の重合体または比較用重合体 0.50g
・メタノール 90.0g
・水 10.0g
〔画像記録層1の形成〕
下記組成の画像記録層塗布液1をバー塗布した後、90℃で60秒間オーブン乾燥し、乾燥塗布量1.3g/m2の画像記録層1を形成した。
【0229】
<画像記録層塗布液1>
・下記バインダポリマー(1) (質量平均分子量:80,000) 0.34g
・下記重合性化合物(1) 0.68g
(PLEX6661−O、デグサジャパン製)
・下記増感色素(1) 0.06g
・下記重合開始剤(1) 0.18g
・下記連鎖移動剤(1) 0.02g
・ε―フタロシアニン顔料の分散物 0.40g
(顔料:15質量部、分散剤(アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(質量平均分子量:6万、共重合モル比:83/17)):10質量部、シクロヘキサノン:15質量部)
・熱重合禁止剤(N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩)0.01g
・下記フッ素系界面活性剤(1) (質量平均分子量:10,000) 0.001g
・ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物 0.02g
((株)ADEKA製、プルロニックL44)
・黄色顔料の分散物 0.04g
(黄色顔料Novoperm Yellow H2G(クラリアント製):15質量部、分散剤(アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 (質量平均分子量:6万、共重合モル比83/17)):10質量部、シクロヘキサノン:15質量部)
・1−メトキシ−2−プロパノール 3.5g
・メチルエチルケトン 8.0g
【0230】
【化45】

【0231】
【化46】

【0232】
〔画像記録層2の形成〕
下記組成の画像記録層塗布液2をバー塗布した後、90℃で60秒間オーブン乾燥し、乾燥塗布量1.3g/m2の画像記録層を形成した。
<画像記録層塗布液2>
・上記バインダポリマー(1)(質量平均分子量:5万) 0.04g
・下記バインダポリマー(2)(質量平均分子量:8万) 0.30g
・上記重合性化合物(1) 0.17g (PLEX6661−O、デグサジャパン製)
・下記重合性化合物(2) 0.51g
・下記増感色素(2) 0.03g
・下記増感色素(3) 0.015g
・下記増感色素(4) 0.015g
・上記重合開始剤(1) 0.13g
・連鎖移動剤:メルカプトベンゾチアゾール 0.01g
・ε―フタロシアニン顔料の分散物 0.40g
(顔料:15質量部、分散剤(アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体
(質量平均分子量:6万、共重合モル比:83/17)):10質量部、シクロヘキサノン:15質量部)
・熱重合禁止剤(N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩)
0.01g
・上記フッ素系界面活性剤(1)(質量平均分子量:1万) 0.001g
・1−メトキシ−2−プロパノール 3.5g
・メチルエチルケトン 8.0g
【0233】
バインダポリマー(2) (酸価=66mgKOH/g)
【化47】

重合性化合物(2)
【化48】

【0234】
増感色素(2)
【化49】

増感色素(3)
【化50】

増感色素(4)
【化51】

【0235】
〔画像記録層3の形成〕
下記組成の画像記録層塗布液3をバー塗布した後、100℃で60秒間オーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/m2の画像記録層を形成した。画像記録層塗布液3は下記感光液(1)および疎水化前駆体液(1)を塗布直前に混合し攪拌することにより調製した。
【0236】
<感光液(1)>
・下記バインダポリマー(3) 0.162g
・下記赤外線吸収剤(1) 0.030g
・下記重合開始剤(3) 0.162g
・重合性化合物(アロニックスM215、東亞合成(株)製) 0.385g
・パイオニンA−20(竹本油脂(株)製) 0.055g
・下記感脂化剤(1) 0.044g
・上記フッ素系界面活性剤(1) 0.008g
・メチルエチルケトン 1.091g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.609g
【0237】
<疎水化前駆体液(1)>
・下記疎水化前駆体水分散液(1) 2.640g
・蒸留水 2.425g
【0238】
バインダポリマー(3)
【化52】

赤外線吸収剤(1)
【化53】

重合開始剤(3)
【化54】

感脂化剤(1)
【化55】

【0239】
(疎水化前駆体水分散液(1)の製造)
1000mlの4つ口フラスコに撹拌機、温度計、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を施し、窒素ガスを導入して脱酸素を行いつつ蒸留水(350mL)を加えて内温が80℃となるまで加熱した。分散剤としてドデシル硫酸ナトリウム(1.5g)を添加し、さらに開始剤として過硫化アンモニウム(0.45g)を添加し、次いでグリシジルメタクリレート(45.0g)とスチレン(45.0g)との混合物を滴下ロートから約1時間かけて滴下した。滴下終了後5時間そのまま反応を続けた後、水蒸気蒸留で未反応単量体を除去した。その後冷却しアンモニア水でpH6に調整し、最後に不揮発分が15質量%となるように純水を添加してポリマー微粒子からなる疎水化前駆体水分散液(1)を得た。このポリマー微粒子の粒子サイズ分布は、粒子サイズ60nmに極大値を有していた。
【0240】
粒子サイズ分布は、ポリマー微粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、写真上で微粒子の粒子サイズを総計で5000個測定し、得られた粒子サイズ測定値の最大値から0の間を対数目盛で50分割して各粒子サイズの出現頻度をプロットして求めた。なお非球形粒子については写真上の粒子面積と同一の粒子面積を持つ球形粒子の粒子サイズ値を粒子サイズとした。
【0241】
粒子サイズ分布は、ポリマー微粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、写真上で微粒子の粒子サイズを総計で5000個測定し、得られた粒子サイズ測定値の最大値から0の間を対数目盛で50分割して各粒子サイズの出現頻度をプロットして求めた。なお非球形粒子については写真上の粒子面積と同一の粒子面積を持つ球形粒子の粒子サイズ値を粒子サイズとした。
【0242】
〔保護層1の形成〕
以下の組成を有する保護層塗布液1を乾燥塗布量が0.75g/m2となるようにバーを用いて塗布した後、125℃で70秒間乾燥して保護層を形成した。
【0243】
〔保護層塗布液1〕
・ポリビニルアルコール(ケン化度:98モル%、重合度:500) 40g
・ポリビニルピロリドン(分子量:5万) 5g
・ポリ〔ビニルピロリドン/酢酸ビニル(1/1)〕(分子量:7万) 0.5g
・界面活性剤(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製) 0.5g
・水 950g
【0244】
〔保護層2の形成〕
以下の組成を有する保護層塗布液2を乾燥塗布量が0.75g/m2となるようにバーを用いて塗布した後、125℃で70秒間乾燥して保護層を形成した。
【0245】
〔保護層塗布液2〕
・下記の無機質層状化合物分散液(1) 1.5g
・スルホン酸変性ポリビニルアルコールの6質量%水溶液 0.55g
(日本合成化学工業(株)製CKS50、ケン化度99モル%以上、重合度300)
・ポリビニルアルコール6質量%水溶液 0.03g
((株)クラレ製PVA−405、ケン化度81.5モル%、重合度500)6質量%水溶液
・界面活性剤の1質量%水溶液
(日本エマルジョン(株)製エマレックス710) 0.86g
・イオン交換水 6.0g
【0246】
(無機質層状化合物分散液(1)の調製)
イオン交換水193.6gに合成雲母ソマシフME−100(コープケミカル(株)製)6.4gを添加し、混合物をホモジナイザーを用いて平均粒子サイズ(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散し、無機質層状化合物分散液(1)を調製した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
【0247】
アルミニウム支持体、下塗り層、画像記録層、保護層を下記表に示すように組み合わせて、実施例及び比較例の平版印刷版原版を作製した。尚、比較例に用いた重合体は下記のとおりである。
【0248】
【化56】

【0249】
【表1】

【表2】

【0250】
【表3】

【0251】
【表4】

【0252】
(2)平版印刷版原版の評価
(実施例1〜138、比較例1〜15)
〔露光、現像および印刷〕
下記表に示す各平版印刷版原版を、FUJIFILM Electronic Imaging Ltd.(FFEI社)製、Violet半導体レーザープレートセッターVx9600(InGaN系半導体レーザー(発光波長405nm±10nm/出力30mW)を搭載)により画像露光した。画像露光は、解像度2、438dpiで、富士フイルム(株)製FMスクリーン(TAFFETA 20)を用い、網点面積率が50%となるように、版面露光量0.05mJ/cm2で行った。
次いで、100℃、30秒間のプレヒートを行った後、下記の各現像液を用い、図1に示すような構造の自動現像処理機にて現像処理を実施した。自動現像処理機は、ポリブチレンテレフタレート製の繊維(毛の直径200μm、毛の長さ17mm)を植え込んだ外径50mmのブラシロールを1本有し、搬送方向と同一方向に毎分200回転(ブラシの先端の周速0.52m/sec)させた。現像液の温度は30℃であった。平版印刷版原版の搬送は、搬送速度100cm/minで行った。現像処理後、乾燥部にて乾燥を行った。乾燥温度は80℃であった。但し、現像液2を用いた際は、現像後乾燥工程を行う前に、水洗を行った。
【0253】
以下に、現像液1〜5の組成を示す。下記組成においてニューコールB13(日本乳化剤(株)製)は、ポリオキシエチレン β−ナフチルエーテル(オキシエチレン平均数n=13)であり、アラビアガムは、質量平均分子量が20万のものである。
【0254】
<現像液1>
・炭酸ナトリウム 13.0g
・炭酸水素ナトリウム 7.0g
・ニューコールB13 50.0g
・第一リン酸アンモニウム 2.0g
・2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール 0.01g
・2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.01g
・クエン酸三ナトリウム 15.0g
・蒸留水 913.98g
(pH:9.8)
【0255】
<現像液2>
・水酸化カリウム 0.15g
・ニューコールB13 5.0g
・キレスト400(キレート剤) 0.1g
・蒸留水 94.75g
(pH:12.05)
【0256】
<現像液3>
・アラビアガム 25.0g
・酵素変性馬鈴薯澱粉 70.0g
・ジオクチルスルホコハク酸エステルのナトリウム塩 5.0g
・第一リン酸アンモニウム 1.0g
・クエン酸 1.0g
・2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール 0.01g
・2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.01g
・下記両性界面活性剤(W−1) 70.0g
・下記アニオン性界面活性剤(AN−1) 3.0g
・蒸留水 824.98g
(リン酸および水酸化ナトリウムを添加し、pHを4.5に調整)
【化57】

【0257】
<現像液4>
・水 937.2g
・下記アニオン系界面活性剤(W−2) 23.8g
・リン酸 3g
・フェノキシプロパノール 5g
・トリエタノールアミン 6g
・ポテトデキストリン 25g
【0258】
【化58】

【0259】
<現像液5>
・水 88.6g
・下記ノニオン系界面活性剤(W−3) 2.4g
・下記ノニオン系界面活性剤(W−4) 2.4g
・ノニオン系界面活性剤 1.0g
(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製)
・フェノキシプロパノール 1.0g
・オクタノール 0.6g
・N−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン 1.0g
・トリエタノールアミン 0.5g
・グルコン酸ナトリウム 1.0g
・クエン酸3ナトリウム 0.5g
・エチレンジアミンテトラアセテート4ナトリウム 0.05g
・ポリスチレンスルホン酸 1.0g
(Versa TL77(30%溶液)、Alco Chemical社製)
(リン酸を添加し、pHを7.0に調整)
【0260】
ノニオン系界面活性剤(W−3)
【化59】

ノニオン系界面活性剤(W−4)
【化60】

【0261】
得られた平版印刷版を、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mに取り付け、湿し水(EU−3(富士フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、毎時6000枚の印刷速度で印刷を行った。
【0262】
〔評価〕
各平版印刷版原版について、耐刷性、耐汚れ性、経時後の耐汚れ性および現像性を下記のように評価した。結果を下記表に示す。
<耐刷性>
印刷枚数の増加にともない、徐々に画像記録層が磨耗しインキ受容性が低下するため、印刷用紙におけるインキ濃度が低下した。同一露光量で露光した印刷版において、インキ濃度(反射濃度)が印刷開始時よりも0.1低下したときの印刷枚数により、耐刷性を評価した。印刷枚数が大きいほど耐刷性が高いことを表す。
【0263】
<耐汚れ性>
印刷開始後20枚目の印刷物を抜き取り、非画像部に付着しているインキ濃度により耐汚れ性を評価した。非画像部のインキ付着は、必ずしも均一に発生するわけではないため、75cm2当りの目視評価の点数で表示した。目視評価の点数は、非画像部のインキ付着面積率が0%の場合を10点、0%を超え10%以下を9点、10%を超え20%以下を8点、20%を超え30%以下を7点、30%を超え40%以下を6点、40%を超え50%以下を5点、50%を超え60%以下を4点、60%を超え70%以下を3点、70%を超え80%以下を2点、80%を超え90%以下を1点、90%を超え100%以下を0点とした。点数の高い程、耐汚れ性が良好であることを表す。
【0264】
<現像性>
種々の搬送速度に変更して上記現像処理を行い、得られた平版印刷版の非画像部のシアン濃度をマクベス濃度計により測定した。非画像部のシアン濃度がアルミニウム支持体のシアン濃度と同等になった搬送速度を求め、現像性とした。現像性評価は、実施例1〜102および比較例1〜5については比較例1を、実施例103〜120よび比較例6〜10については比較例6を、実施例121〜138および比較例11〜15については比較例11を基準(1.0)として、以下のように定義した相対現像性で表した。相対現像性の数値が大きい程、高現像性であり、性能が良好であることを表す。
相対現像性=(対象平版印刷版原版の搬送速度)/(基準平版印刷版原版の搬送速度)
相対現像性=(対象平版印刷版原版の搬送速度)/(基準平版印刷版原版の搬送速度)
【0265】
【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【0266】
(実施例139〜166、比較例16〜25)
〔露光、現像および印刷〕
下記表に示す各平版印刷版原版を、Creo社製、Trendsetter3244VX(水冷式40W赤外線半導体レーザー(830nm)搭載)にて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、解像度2、400dpiの条件で50%平網の画像露光を行った。次いで、現像液1または4を用い、図2に示す構造の自動現像処理機にて、プレヒート部での版面到達温度が100℃となるヒーター設定、現像液中への浸漬時間(現像時間)が20秒となる搬送速度にて現像処理を実施した。
【0267】
得られた平版印刷版を、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mに取り付け、湿し水(EU−3(富士フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、毎時6000枚の印刷速度で印刷を行った。
【0268】
各平版印刷版原版について、耐刷性、耐汚れ性、経時後の耐汚れ性、現像性を実施例1と同様にして評価した。現像性の評価は、実施例139〜152および比較例16〜20については比較例16を、実施例153〜166および比較例21〜25については、比較例21を基準(1.0)として行った。
【0269】
【表9】

【0270】
【表10】

【0271】
[実施例167〜180、比較例26〜30]
〔露光、現像および印刷〕
下記表に示す各平版印刷版原版を、赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製、Luxel PLATESETTER T−6000IIIにて、外面ドラム回転数1000rpm、レーザー出力70%、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像にはベタ画像および20μmドットFMスクリーンの50%網点チャートを含むようにした。露光済み平版印刷版原版を現像処理することなく、(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity−2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とValues−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給して機上現像した後、毎時10000枚の印刷速度で、特菱アート(76.5kg)紙に印刷を100枚行った。
【0272】
〔評価〕
各平版印刷版原版について、機上現像性を下記のように評価した。耐刷性、耐汚れ性および経時後の耐汚れ性については実施例1と同様にして評価した。結果を下記表に示す。
【0273】
<機上現像性>
画像記録層の非画像部の印刷機上での機上現像が完了し、非画像部にインキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数を機上現像性として計測した。
【0274】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、画像記録層と、支持体と画像記録層の間に設けられた下塗り層を有し、前記下塗り層が、(D)主鎖末端に親水性基およびラジカル重合性エチレン性不飽和基から選択される基を1つ以上有する基を、側鎖に式(b1)〜(b13)で表される支持体吸着基から選択される基を1つ以上有する繰り返し単位を有する高分子化合物を含有する、平版印刷版原版。
【化1】

(式(b1)〜(b13)中、M1〜M10は、それぞれ、プロトン、金属カチオン、アンモニウム、ホスホニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ジアゾニウム、アジニウムを表し、R1〜R44は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキニル基、アルケニル基を表し、R29〜R44は、少なくとも一つは高分子化合物主鎖へ連結する基への結合であり、残りは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、もしくは1価の有機残基を表し、X-は対アニオンを表す。点線は、高分子化合物主鎖へ連結する基への結合を表す。)
【請求項2】
前記親水性基およびラジカル重合性エチレン性不飽和基から選択される基を1つ以上有する基が、下記一般式(1)で表される、請求項1に記載の平版印刷版原版。
一般式(1)
【化2】

(一般式(1)中、Eは、高分子化合物主鎖と親水性基をつなぎ合わせる連結残基を表す。点線は高分子主鎖への連結を表す。Y1およびY2は、それぞれ、単結合または2価の連結基を表す。(n+m)は1以上の整数を表す。Wは、それぞれ親水性基を表す。R1〜R3は、それぞれ、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。Xは、−O−、または−(NR4)−を表す。R4は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。)
【請求項3】
前記親水性基およびラジカル重合性エチレン性不飽和基から選択される基を1つ以上有する基が、下記一般式(2)で表される、請求項1に記載の平版印刷版原版。
一般式(2)
【化3】

(一般式(2)中、Wは、それぞれ、親水性基を表す。Aは、高分子化合物の主鎖と親水性基をつなぎ合わせる連結残基を表す。点線は高分子主鎖への連結を表す。Y1は、単結合または2価の連結基を表す。nは1以上の整数を表す。)
【請求項4】
前記親水性基およびラジカル重合性エチレン性不飽和基から選択される基を1つ以上有する基に含まれる親水性基が、下記式(a1)〜(a11)で表される基のいずれかである、請求項2または3に記載の平版印刷版原版。
【化4】

(式(a1)〜(a11)中、M1、M2およびM3は、それぞれ、水素原子、または金属イオンを表す。R1〜R15は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基を表し、任意の2つの基が互いに結合して環を形成しても良い。L1〜L4は、炭素数1〜6のアルキレン基を表す。nは、1〜100の整数を表す。X-は、カウンターアニオンを表す。点線は、一般式(1)中、Y1へ連結する基への結合を表す。)
【請求項5】
前記親水性基およびラジカル重合性エチレン性不飽和基から選択される基を1つ以上有する基に含まれる親水性基が、式(a2)、(a3)、(a4)、(a6)、(a7)、(a8)、(a9)、(10)、(a11)で表される基のいずれかである、請求項4に記載の平版印刷版原版。
【請求項6】
前記一般式(2)中、Aが3価以上の連結残基であり、nが2以上の整数である、請求項3〜5のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項7】
前記親水性基およびラジカル重合性エチレン性不飽和基から選択される基を1つ以上有する基が、下記一般式(3)で表されることを特徴とする、請求項1、4、または5に記載の平版印刷版原版。
一般式(3)
【化5】

(一般式(3)中、Bは、高分子化合物主鎖と親水性基をつなぎ合わせる連結残基を表す。R1〜R3は、それぞれ、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。点線は高分子主鎖への連結を表す。Y2は、単結合または2価の連結基を表す。nは1以上の整数を表す。−X−は、−O−、または−(NR4)−を表す。R4は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。)
【請求項8】
前記エチレン性不飽和基が、(メタ)アクリロイルオキシ基である、請求項1、4、5に記載の平版印刷版原版。
【請求項9】
前記一般式(3)中、Bが3価以上の連結残基であり、nが2以上の整数である、請求項7に記載の平版印刷版原版。
【請求項10】
(D)高分子化合物が、下記一般式(D−1)で表される繰り返し単位を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
一般式(D−1)
【化6】

(一般式(D−1)中、R101〜R103はそれぞれ、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、またはハロゲン原子を表す。Y3は、単結合、または、−CO−、−O−、−NH−、2価の脂肪族基、2価の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を表す。Qは上述の一般式(b1)〜(b13)から選ばれる支持吸着基を表す。)
【請求項11】
前記画像記録層が、(A)重合開始剤、(C)重合性化合物および(E)バインダを含有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項12】
前記画像形成層が、さらに(B)増感色素を含有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項13】
前記(E)バインダが、親水性基を有する、請求項11または12に記載の平版印刷版原版。
【請求項14】
画像記録層が、pHが7〜10の水溶液により除去可能である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項15】
画像記録層が、印刷インキおよび湿し水の少なくとも一方により除去可能である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、露光した前記平版印刷版原版を、pHが7〜10の現像液の存在下で、非露光部の画像記録層を除去する工程とを含むことを特徴とする平版印刷版の製造方法。
【請求項17】
画像記録層の前記支持体とは反対側の表面上に、保護層を形成する工程を含み;
現像工程において、さらに界面活性剤を含有する前記現像液の存在下、非露光部の画像記録層と前記保護層とを同時に除去する工程を含む(但し、水洗工程を含まない)、ことを特徴とする請求項16に記載の平版印刷版の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれかに記載の平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
印刷機上で印刷インキと湿し水を供給して非露光部の前記画像記録層を除去する工程とを含むことを特徴とする平版印刷版の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−44934(P2013−44934A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182534(P2011−182534)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】