説明

平版印刷版用現像処理装置

【課題】長期間にわたって現像槽内の現像促進手段を交換せずとも安定した現像処理が可能であり、メンテナンスにかかる時間的・労力的負担を軽減した平版印刷版用現像処理装置を提供することである。
【解決手段】処理される版材が平版印刷版であるか捨て版であるかの情報を受信する手段と、現像槽内の現像促進手段が捨て版の版面と接触しないように現像促進手段を退避させる手段とを備えた平版印刷版用現像処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版用現像処理装置に関するものであり、特に、画像を形成する平版印刷版と、画像を形成しない捨て版を処理する現像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、平版印刷版によるカラー印刷は、同一紙材上に墨(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色ごとの印刷版を準備し、印刷処理を重ねることで形成するのが一般的である。また、上記4色に加え、特別色を加える場合もある。
【0003】
近年、新聞におけるカラー印刷紙面の需要が増大しているが、墨色単色での印刷紙面もいまだ多数を占める。そこで実際の印刷現場では、カラー紙面と墨単色紙面が混在する印刷を実施している。
【0004】
図7は新聞を平版印刷版によってカラー印刷する際の紙面レイアウトの一例を示す説明図である。図8は、図7に示した紙面を印刷する際に使用する印刷版及び捨て版の使用例の説明図である。図7のように印刷紙面右側がカラー紙面、左側が墨単色紙面の印刷を実施する場合、新聞用カラー印刷機の各色用の版胴には、図8に示すように、墨(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色に対応するように、印刷版a1〜a8がそれぞれ使用される。図8において墨単色印刷を行う部分の印刷版a1〜a4のうち、Y,M,Cの各色に相当する部分であるa2〜a4には、全面に画像の存在しない版、通称捨て版といわれる版を印刷機に装着することで対応している。捨て版システムについては、例えば特開平3−175090号公報(特許文献1)に記述されている。
【0005】
上記特許文献1に記載されているように、新聞カラー印刷に使用する捨て版として、金属製の支持体に表面粗面化処理、親水性処理のいずれかを単独または複合して行う版材が提案されている。また、特開平11−240266号公報(特許文献2)に示される、親水性表面を有する金属製支持体に水溶性化合物からなる下塗層、及び水不溶性の非感光性樹脂層を設けた版材が提案されている。
【0006】
使用する前の捨て版表面には、塗布されている下塗層等以外に、保存しているうちにほこりや汚れなどが付着している。このため捨て版を何の処置も行わずに印刷に使用した場合、印刷汚れを発生する。よって捨て版は使用する寸前に版表面の下塗層、及び付着したほこりや汚れを現像処理により除去する必要がある。このため捨て版は画像を形成する必要はないものの、通常の平版印刷版と同様に現像処理装置による現像処理及びガム引き処理が実施される。
【0007】
捨て版に塗布されている下塗層、水不溶性の非感光性樹脂層、付着しているほこりや汚れは現像液への浸漬またはシャワー処理などにより、速やかに溶解され、親水性向上のために施されている粗面化表面が露出する。このとき現像処理部内でのブラシロールやモルトンロールなどの現像促進手段による擦り処置を行うと、露出した粗面化表面により、平版印刷版の処理時と比較すると著しく大きな抵抗を示す。これにより現像部のブラシロールまたはモルトンロールなどの現像促進手段は通常の平版印刷版のみを現像処理している場合に比べ、著しく摩耗が速く、交換までに使用できる期間が短くなり、メンテナンスにかかる時間的・労力的負担が大きくなる問題があった。ことにモルトンロールを現像促進手段に用いた場合、版面とこすれあうモルトンの毛先部分の摩耗が著しくなり、現像効果の安定のため、頻繁なモルトン部材交換が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3−175090号公報
【特許文献2】特開平11−240266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明の課題は、長期間にわたって現像槽内の現像促進手段を交換せずとも安定した現像処理が可能であり、メンテナンスにかかる時間的・労力的負担を軽減した平版印刷版用現像処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下に記載する平版印刷版用現像処理装置によって達成できることを見出した。
1.処理される版材が平版印刷版であるか捨て版であるかの情報を受信する手段と、現像槽内の現像促進手段が捨て版の版面と接触しないように現像促進手段を退避させる手段とを備えた平版印刷版用現像処理装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、長期間にわたって現像槽内の現像促進手段を交換せずとも安定した現像処理が可能となり、メンテナンスにかかる時間的・労力的負担の軽減された平版印刷版用現像処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の平版印刷版用現像処理装置の一例を示す概略側面図である。
【図2】露光前に版種別を受信した場合の平版印刷版用現像処理装置内部での処理手順を示すフローチャートである。
【図3】現像処理前に版種別を受信した場合の平版印刷版用現像処理装置内部での処理手順を示すフローチャートである。
【図4】回転する現像促進手段及びバックアップロールにより構成される一対の現像部ロールの軸受け構造であり、現像促進手段の位置を回転カムの位置により規制する方式の模式図である。
【図5】回転する現像促進手段及びバックアップロールにより構成される一対の現像部ロールの軸受け構造であり、現像促進手段の位置をピストンの押し出し位置により規制する方式の模式図である。
【図6】回転する現像促進手段及びバックアップロールにより構成される一対の現像部ロールの軸受け構造であり、現像促進手段の位置をクサビ板の挿入位置により規制する方式の模式図である。
【図7】新聞を平版印刷版によってカラー印刷する際の紙面レイアウトの一例を示す説明図である。
【図8】図7に示した紙面を印刷する際に使用する印刷版及び捨て版の使用例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の平版印刷版用現像処理装置を詳しく説明する。一般に、平版印刷版の現像処理は現像処理装置を用いて処理が行われる。現像処理装置は、処理される工程順に現像処理部、水洗処理部、ガム処理部、及び図示しない乾燥部からなり、露光済みの印刷版、または捨て版を水平または各処理槽に浸漬しつつ搬送しながら、あるいは各処理槽からポンプでくみ上げた各処理液をスプレー手段などにより版面に吹き付けて各処理を行った後、図示しない乾燥部により乾燥処置を行うものである。
【0014】
本発明による現像処理装置は、処理動作開始前に処理される版の種類が平版印刷版であるか、捨て版であるかの識別情報を受信する手段を有する。この手段としては、露光するセッターからの版種類識別情報を受信する方法、現像処理装置の挿入口前に処理版の上面の光沢度を測定し、得られた情報から平版印刷版であるか、捨て版であるかの識別情報を受信する方法、作業者が平版印刷版であるか、捨て版であるかを識別した情報を受信する方法などがある。
【0015】
図2は、露光前に版種別を受信した場合の平版印刷版用現像処理装置内部での処理手順を示すフローチャートである。版種類の識別情報は、版の露光処理前に現像処理装置が受信する。このときの手段としては、露光するセッターからの版種類識別情報を受信する方法、作業者が平版印刷版であるか、捨て版であるかを識別した情報を入力し受信する方法などがある。現像処理装置が受信した版材種類情報は、現像処理装置内部の制御機構により適宜に処理され、平版印刷版である場合は現像促進手段を用いた現像処理、水洗処理、ガム引き処理、乾燥処理を順に行う。捨て版である場合は現像槽内の現像促進手段の退避、現像促進手段を用いない現像処理、水洗処理、ガム引き処理、乾燥処理を順に行い、少なくとも現像処理終了後に現像槽内の現像促進手段の復帰処置を行う。
【0016】
図3は、現像処理前に版種別を受信した場合の平版印刷版用現像処理装置内部での処理手順を示すフローチャートである。版種類の識別情報は、版の現像処理前に現像処理装置が受信する。このときの手段としては、現像処理装置の挿入口前に処理版の上面の光沢度を測定し、得られた情報から平版印刷版であるか、捨て版であるか識別した情報を受信する方法、作業者が平版印刷版であるか、捨て版であるかを識別した情報を入力し受信する方法などがある。現像処理装置が受信した版材種類情報は、現像処理装置内部の制御機構により適宜に処理され、平版印刷版である場合は現像促進手段を用いた現像処理、水洗処理、ガム引き処理、乾燥処理を順に行う。捨て版である場合は現像槽内の現像促進手段の退避、現像促進手段を用いない現像処理、水洗処理、ガム引き処理、乾燥処理を順に行い、少なくとも現像処理終了後に現像槽内の現像促進手段の復帰処置を行う。
【0017】
以下に本発明における版の処理手順について図1の本発明の平版印刷版用現像処理装置の一例を示す概略側面図を用いて説明する。図1において図示されない露光装置で露光処理された平版印刷版、または捨て版は、図1中の通過ルート100を経過して処理される。現像機の挿入口より挿入された版は、画像形成層面または捨て版用粗面化面を上側にして搬送ロール1及び2によって現像処理部内に搬送され、液中搬送ロール3及び4を介して一定温度に温度管理された現像液中に浸漬される。
【0018】
現像液中に浸漬された平版印刷版の画像形成層は、非画像部が現像液によって膨潤し、溶出されやすい状態になりながら、搬送ロール1,2,10,11及び液中搬送ロール3,4,8,9によって現像液中を搬送される。膨潤した非画像部は現像促進手段6によって擦られることで溶出が促進される。一方、画像部は現像槽(A)中で溶出されず画像として残存する。
【0019】
一方、捨て版が現像液中に浸漬されると、版面上の下塗層及び水不溶性の非感光性樹脂層、及びほこりや汚れが速やかに溶解あるいは除去されながら、搬送ロール1,2,10,11及び液中搬送ロール3,4,8,9によって現像液中を搬送される。現像促進手段6はあらかじめ得られた版識別情報により、捨て版上面より上側に退避されるため、版面に接触せずに現像処理部での処理を終える。
【0020】
現像液をためた現像槽(A)には、貯留する現像液が版の処理により劣化しないように図示せぬ現像補充原液槽及び給水槽から現像補充原液及び希釈水の補充が適宜になされることが望ましい。また、現像処理装置の電源をONにしている場合やOFFにしている場合に、現像液が空気などと接触することにより劣化しないように補充液槽及び給水槽から補充液及び希釈水の補充が適宜になされることも望ましい。また、現像処理装置の電源をONにしている場合やOFFにしている場合に自然に蒸発する分を補うように、現像槽に蒸発する水分と同量の希釈水を補充してもよい。
【0021】
図1では現像槽(A)にためた現像液に処理する版を挿入する浸漬方式による現像方法を示したが、これに代わり、処理する版を水平に搬送し、シャワーパイプなどを使用して現像液を噴射処理する現像方法や、処理する版上に現像液を塗布して処理する現像方法を用いてもよい。
【0022】
図1に示した現像装置では、現像促進手段6を一つ設置した例を示したが、複数の現像促進手段を設置してもよい。また、超音波発生装置等の、別の現像促進手段と組み合わせて設置してもよい。
【0023】
現像処理部で処理された平版印刷版または捨て版は、水洗処理部にて現像後の版面に残っているアルカリ現像液を除去し、また次工程のガム部へのアルカリ液持ち込みを減少させる目的で、版面をシャワーパイプ14から噴射される水で洗浄する。図1ではシャワーパイプ14から噴射する水による洗浄方法を示したが、これに代わり、水洗槽(B)内へ複数の搬送ロール及び液中搬送ロールを利用して浸漬する洗浄方法などを用いてもよい。
【0024】
ガム処理部では、シャワーパイプ20よりガム液を噴射し、ガム部搬送兼絞りロール22,23により適正な分量のガム液を版の表面に塗布し、アルカリ性となった平版印刷版の画像部を酸性に戻して現像による画像部のダメージを抑制するとともに、非画像部の汚れや傷を防止する。図1ではガム部シャワーパイプ20とガム部搬送兼絞りロール22,23によるガム液塗布方法を示したが、これに代わり、ガム液供給パイプとドクターブレード及び塗布用ロールによるガム液塗布方法などを用いてもよい。液は、画像部と非画像部に関係なく全面に塗布されるため、塗布するガムを貯留するガム槽(C)には、平版印刷版及び捨て版を区別することなく、版の処理量に応じてガム補充原液及び希釈水を適宜補充する。または、版の処理ごとに適正な分量のガム補充原液及び希釈水を混合し供給してもよい。
【0025】
図1に図示しない乾燥部は、ブロワーなどの温風供給手段や発熱手段等の乾燥手段が設けられており、温風を平版印刷版及び捨て版に吹き付けて、版材に塗布されたガム液を乾燥させる。乾燥部により乾燥された印刷版及び捨て版は排出口から排出される。
【0026】
次に本発明の現像処理装置が有する、現像槽内の現像促進手段が捨て版の版面と接触しないように現像促進手段を退避させる手段について説明する。現像槽内の現像促進手段が捨て版の版面と接触しないように退避する手段としては現像促進手段の位置を回転カムの位置により規制する方式、現像促進手段の位置をピストンの押し出し位置により規制する方式、現像促進手段の位置をクサビ板の挿入位置により規制する方式を例示することができる。
【0027】
図4は、本発明の現像処理装置において回転する現像促進手段及びバックアップロールにより構成される一対の現像部ロールの軸受け構造であり、現像促進手段の位置を回転カムの位置により規制する方式の模式図である。図4−aは軸受け部及び回転カムを現像処理装置の側面側から見た図である。図4−bは軸受け部及び回転カムを現像処理装置の挿入口方向から見た図である。図4−cは軸受け部及び回転カムを現像処理装置の上側から見た図である。図4−bに示されるように、現像促進手段6の回転軸32は、軸受け部材31により支持される。平版印刷版あるいは捨て版を支持するバックアップロール33の回転軸35は、軸受け部材34により支持される。
【0028】
軸受け部材31は現像促進手段6の回転軸32を回転可能に支持し、軸受け部材34はバックアップロール33の回転軸35を回転可能に支持する。また図4−cに示されるように、軸受け部材31は外形が方形に形成され、現像部の側板に形成された溝部に勘合する凸部46を有して位置を規制できるように嵌め入れされる。
【0029】
図4−aに示されるように、軸受け部材31の上部と現像処理部側板41の隙間部には、位置規制用のコイルばねまたは弾性ゴム36が挿入される。これと後述するカム板37により現像促進手段6は位置の規制及び所定の押し圧が与えられる。
【0030】
図4−bに示されるように、軸受け部材31の外側部は、現像処理部側板41の外側面よりやや突き出す大きさに成形される。図4−aに示されるように、軸受け部材31の下側には後述するカム板37が装着される。
【0031】
図4−aに示されるようにカム板37は回転軸38によって支持される。カム板37の位置は、現像処理装置の制御装置40及びその指示を受信したモーター39により決定される。現像処理装置の制御装置40が、被処理版材を平版印刷版と認識した場合、制御装置40からの指示によりモーター39は印刷版の上面に現像促進手段6が所定の押し圧で接触回転し、画像形成層の非画像部分を擦り落とすようにカム板37の位置を制御する。
【0032】
現像処理装置の制御装置40が、被処理版材を捨て版と認識した場合、制御装置40からの指示によりモーター39は回転軸38を図4−aにおいて右側に回転させてカム板37の位置を制御し、捨て版の上面に現像促進手段6が接触しないように退避する位置まで軸受け部材31を押し上げる(図4−aの点線の位置)。現像促進手段6と捨て版が接触しないために必要な退避距離は、版面と現像促進手段6が接触しないだけの量で充分であり、具体的には2〜5mmである。2mmより短い場合、版が搬送される際の振動などにより接触する可能性があるため好ましくない。捨て版の処理が終了すると、制御装置40からの指示によりモーター39は回転軸38を左側に回転させてカム板37の位置を制御し、軸受け部材31を元の位置に復帰させ、現像促進手段6の退避を解除する。
【0033】
また、カム板37と回転軸38、現像処理装置の制御装置40及びその指示を受信したモーター39による軸受け部材31と現像促進手段6及び回転軸32の位置制御は、現像促進手段6の押し圧の制御にも用いられる。現像処理装置の制御装置40に好ましい押し圧を入力することにより、版材の種類及び異なる厚さの版が処理される場合に有効な押し圧が選択できる。
【0034】
図5は、本発明の現像処理装置において、回転する現像促進手段及びバックアップロールにより構成される一対の現像部ロールの軸受け構造であり、現像促進手段の位置をピストンの押し出し位置により規制する方式の模式図である。図5−aは軸受け部及び回転カムを現像処理装置の側面側から見た図である。図5−bは軸受け部及び回転カムを現像処理装置の挿入口方向から見た図である。図5−cは軸受け部及び回転カムを現像処理装置の上側から見た図である。図5−bに示されるように、現像促進装置6の回転軸32は、軸受け部材31により支持される。バックアップロール33の回転軸35は、軸受け部材34により支持される。軸受け部材31、現像促進手段6、回転軸32、軸受け部材34、バックアップロール33、回転軸35、軸受け部材31の凸部46、位置規制用のコイルばねまたは弾性ゴム36の機能については、先述の例と同一のため、重複を避けるために説明を省略する。
【0035】
図5−bに示されるように、軸受け部材31の外側部は、現像処理部側板41の外側面よりやや突き出す大きさに成形される。軸受け部材31の下側には後述するピストン42とシリンダー43が装着される。
【0036】
ピストン42の押し出し量は、現像処理装置の制御装置40の指示を受信したシリンダー43により決定される。現像処理装置の制御装置40が、被処理版材を平版印刷版と認識した場合、制御装置40からの指示によりシリンダー43は印刷版の上面に現像促進手段6が所定の押し圧で接触回転し、画像形成層の非画像部分を擦り落とすようにピストン42の押し出し量を制御する。
【0037】
現像処理装置の制御装置40が、被処理版材を捨て版と認識した場合、制御装置40の指示によりシリンダー43はピストン42から押し出しされ、捨て版の上面に現像促進手段6が接触しないように退避する位置まで軸受け部材31を押し上げる(図5−aの点線の位置)。現像促進手段6と捨て版が接触しないために必要な退避距離は、版面と現像促進手段6が接触しないだけの量で充分であり、具体的には2〜5mmである。2mmより短い場合、版が搬送される際の振動などにより接触する可能性があるため好ましくない。捨て版の処理が終了すると、制御装置40の指示によりシリンダー43はピストン42を下げて軸受け部材31を元の位置に復帰させ、現像促進手段6の退避を解除する。
【0038】
また、現像処理装置の制御装置40及びその指示を受信したシリンダー43とピストン42の突出量制御による軸受け部材31と現像促進手段6及び回転軸32の位置制御は、現像促進手段6の押し圧の制御にも用いられる。現像処理装置の制御装置40に好ましい押し圧を入力することにより、版材の種類及び異なる厚さの版が処理される場合に有効な押し圧が選択できる。
【0039】
図6は、本発明の現像処理装置において、回転するブラシロールまたはモルトンロール及びバックアップロールにより構成される一対の現像部ロールの軸受け構造であり、ブラシロールまたはモルトンロールの位置をクサビ板の挿入位置により規制する方式の模式図である。図6−aは軸受け部及び回転カムを現像処理装置の側面側から見た図である。図6−bは軸受け部及び回転カムを現像処理装置の挿入口方向から見た図である。図6−cは軸受け部及び回転カムを現像処理装置の上側から見た図である。図6−bに示されるように、現像促進手段6の回転軸32は、軸受け部材31により支持される。版を支持するバックアップロール33の回転軸35は、軸受け部材34により支持される。軸受け部材31、現像促進手段6、その回転軸32、軸受け部材34、バックアップロール33、その回転軸35、軸受け部材31の凸部46、位置規制用のコイルばねまたは弾性ゴム36の機能については、先述の例と同一のため、重複を避けるために説明を省略する。
【0040】
図6−bに示されるように、軸受け部材31の外側部は、現像部側板41の外側面よりやや突き出す大きさに成形される。図6−aに示されるように、軸受け部材31の下側には後述するクサビ板44が装着される。
【0041】
クサビ板44の位置は、現像処理装置の制御装置40及びその指示を受信したクサビ板制御部45により決定される。現像処理装置の制御装置40が、被処理版材を平版印刷版と認識した場合、制御装置40からの指示によりクサビ板制御部45は印刷版の上面に現像促進手段6が所定の押し圧で接触回転し、画像形成層の非画像部分を擦り落とすようにクサビ板44の位置を制御する。
【0042】
現像処理装置の制御装置40が、被処理版材を捨て版と認識した場合、制御装置40からの指示によりクサビ板制御部45はクサビ板44を、図6−aの場合、右側に移動制御し、捨て版の上面に現像促進手段6が接触しないように退避する位置まで軸受け部材31を押し上げる(図6−aの点線の位置)。現像促進手段6と捨て版が接触しないために必要な退避距離は、版面と現像促進手段6が接触しないだけの量で充分であり、具体的には2〜5mmである。2mmより短い場合、版が搬送される際の振動などにより接触する可能性があるため好ましくない。捨て版の処理が終了すると、再び制御装置40からの指示によりクサビ板制御部45はクサビ板44を、図6−aの場合、左側に移動制御し、軸受け部材31を元の位置に復帰させ、現像促進手段6の退避を解除する。
【0043】
また、現像処理装置の制御装置40及びその指示を受信したクサビ板制御部とクサビ板44の位置制御による軸受け部材31と現像促進装置6及び回転軸32の位置制御は、現像促進装置6の押し圧の制御にも用いられる。現像処理装置の制御装置40に好ましい押し圧を入力することにより、版材の種類及び異なる厚さの版が処理される場合に有効な押し圧が選択できる。
【0044】
なお、本発明の説明のため、3種類の位置制御方法を例示したが、位置制御についてはこれらに限定されるものではない。また、説明に使用した図中における各部材の形状についても図中の形状に限定されるものではなく、同様の効果を持つ別の形状にすることができる。また、本制御方式は現像促進手段1基につき両端部の軸受けに各1基ずつ装備される。
【0045】
次に、本発明の現像処理装置において処理される平版印刷版について説明する。本発明の現像処理装置を適用することができる平版印刷版は、支持体上に感光層、感熱層などの画像形成層を設けた種々の平版印刷版を挙げることができる。 例えば、そのような平版印刷版としてコンベンショナルポジタイプ、コンベンショナルネガタイプ、フォトポリマータイプ、サーマルポジタイプ、サーマルネガタイプなどの感光性または感熱性組成物が塗布された画像形成層が好適に挙げられる。ここでいうコンベンショナルとは、透明陽画または透明陰画を通して、画像様露光をする従来型の平版印刷版をさす。
【0046】
以下、これらの種々の画像記録層について説明する。
<コンベンショナルポジタイプ>
コンベンショナルポジタイプの感光性樹脂組成物の好ましいものとして、o−キノンジアジド化合物とアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する組成物が挙げられる。o−キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとフェノール・ホルムアルデヒド樹脂またはクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂とのエステルや、米国特許第3,635,709号明細書に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとピロガロール・アセトン樹脂とのエステルがある。アルカリ可溶性高分子化合物は例えば、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂、フェノール・クレゾール・ホルムアルデヒド共縮合樹脂、ポリヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、特開平7−36184号公報に記載されているカルボキシ基含有ポリマー等が挙げられる。また、特開昭51−34711号公報に記載されているようなフェノール性ヒドロキシ基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号公報に記載されているスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂や、ウレタン系の樹脂等、種々のアルカリ可溶性の高分子化合物も用いることができる。さらに感光性樹脂組成物には、特開平7−92660号公報の段落番号0024〜0027で示されている感度調節剤、焼出剤、染料等の化合物や同公報の段落番号0031で示されているような塗布性を良化するための界面活性剤を加えることが好ましい。
【0047】
<コンベンショナルネガタイプ>
コンベンショナルネガタイプの感光性樹脂組成物としては、ジアゾ樹脂とアルカリ可溶性または膨潤性の高分子化合物(結合剤)とを含有するものが挙げられる。ジアゾ樹脂としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩とホルムアルデヒド等の活性カルボニル基含有化合物との縮合物が挙げられ、さらに例えば、p−ジアゾフェニルアミン類とホルムアルデヒドとの縮合物とヘキサフルオロリン酸塩またはテトラフルオロホウ酸塩との反応生成物である有機溶媒可溶性ジアゾ樹脂無機塩が挙げられる。特に、特開昭59−78340号公報に記載されている6量体以上を20モル%以上含んでいる高分子量ジアゾ化合物が好ましい。好適な結合剤としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸またはマレイン酸を必須成分として含む共重合体、例えば、特開昭50−118802号公報に記載されているような2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸等のモノマーの多元共重合体や、特開昭56−4144号公報に記載されているようなアルキルアクリレート、(メタ)アクリロニトリル、及び不飽和カルボン酸からなる多元共重合体を挙げることができる。さらに感光性樹脂組成物には、特開平7−281425号公報の段落番号0014〜0015で示されている焼出剤、染料、塗膜の柔軟性や耐摩耗性を付与するための可塑剤、現像促進剤等の化合物、塗布性を良化するための界面活性剤を加えることが好ましい。上述したコンベンショナルタイプのポジ型もしくはネガ型感光層の下層としては、特開2000−105462号公報に記載されている、酸基を有する構成成分とオニウム基を有する構成成分とを有する高分子化合物を含有する中間層を設けることが好ましい。
【0048】
<フォトポリマータイプ>
(感光層)
フォトポリマータイプの光重合型感光性組成物(以下「光重合性組成物」という)は、付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物(以下、単に「エチレン性不飽和結合含有化合物」という)と、光重合開始剤と、高分子結合剤とを必須成分として含有し、必要に応じて、着色剤、可塑剤、熱重合禁止剤等の種々の化合物を含有する。光重合性組成物に含有されるエチレン性不飽和結合含有化合物は、光重合性組成物が活性光線の照射を受けた場合に、光重合開始剤の作用により付加重合し、架橋し硬化するようなエチレン性不飽和結合を有する化合物である。エチレン性不飽和結合含有化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物の中から任意に選択することができ、例えば、モノマー、プレポリマー(即ち、2量体、3量体及びオリゴマー)、これらの混合物、これらの共重合体等の化学的形態を有する。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドが挙げられる。またウレタン系付加重合性化合物も好適である。
【0049】
光重合性組成物に含有される開始剤としては、使用する光源の波長により、種々の光重合開始剤または2種以上の光重合開始剤の併用系(光開始系)を適宜選択して用いることができ、例えば、特開2001−22079号公報の段落番号0021〜0023で示されている開始系が好ましい。光重合性組成物に含有される高分子結合剤は、光重合性組成物の皮膜形成剤として機能するだけでなく、感光層をアルカリ現像液に溶解させる必要があるため、アルカリ水に可溶性または膨潤性である有機高分子重合体が使用される。上記高分子としては同公報の段落番号0036〜0063で示されているものが有用である。その他光重合性組成物には、同公報の段落番号0079〜0088で示されている添加剤(例えば塗布性を良化するための界面活性剤)を加えることも好ましい。
【0050】
また、上記感光層の上に、酸素の重合禁止作用を防止するために酸素遮断性保護層を設けることも好ましい。酸素遮断性保護層に含有される重合体としては、ポリビニルアルコールその共重合体が挙げられる。さらにフォトポリマータイプの感光層の下層として特開2001−228608号公報の段落番号0124〜0165で示されているような中間層もしくは接着層を設けるのも好ましい。
【0051】
<サーマルポジタイプ>
(感熱層)
サーマルポジタイプの感熱層は、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有する。このアルカリ可溶性高分子化合物は、高分子中に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体、及びこれらの混合物を包含し、特に下記(1)や(2)のような酸性基を有するものが、アルカリ現像液に対する溶解性の点で好ましい:(1)フェノール性ヒドロキシ基(−Ar−OH)、(2)スルホンアミド基(−SONH−R)。とりわけ、赤外線レーザー等による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性ヒドロキシ基を有することが好ましく、例えば、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−及びm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂;ピロガロール・アセトン樹脂が好ましく挙げられる。さらに詳しくは特開2001−305722号公報の段落番号0023〜0042で示されている高分子が好ましく用いられる。光熱変換物質は、露光エネルギーを熱に変換して感熱層の露光部領域の相互作用解除を効率よく行うことを可能とする。記録感度の観点から、波長700〜1200nmの赤外域に光吸収域がある顔料または染料が好ましい。
【0052】
染料としては、具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体(例えば、ニッケルチオレート錯体)等の染料を用いることができる。中でも、シアニン染料が好ましく、特開2001−305722号公報の一般式(I)で示されたシアニン染料を挙げることができる。サーマルポジタイプの組成物中には、前記コンベンショナルポジタイプで記述したものと同様の感度調節剤、焼出剤、染料等の化合物や塗布性を良化するための界面活性剤を加えることが好ましく、詳しくは特開2001−305722号公報の段落番号0053〜0059で示されている化合物が好ましい。
【0053】
サーマルポジタイプの感熱層は単層でもよいし、特開平11−218914号公報に記載されているような2層構造として設けてもよい。
【0054】
サーマルポジタイプの感熱層と支持体との間には、下塗層を設けることが好ましい。下塗層に含有される成分としては特開2001−305722号公報の段落番号0068で示された種々の有機化合物が挙げられる。
【0055】
<サーマルネガタイプ>
(感熱層)
サーマルネガタイプの感熱層は、赤外線レーザー照射部が硬化して画像部を形成するネガ型の感熱層である。
【0056】
このようなサーマルネガタイプの感熱層の一つとして、重合型の層が好適に挙げられる。重合層は、(A)赤外線吸収剤と、(B)ラジカル発生剤(ラジカル重合開始剤)と、発生したラジカルにより重合反応を起こして硬化する(C)ラジカル重合性化合物と、(D)バインダーポリマーとを含有する。
重合層においては、赤外線吸収剤が吸収した赤外線を熱に変換し、この際発生した熱により、オニウム塩等のラジカル重合開始剤が分解し、ラジカルが発生する。ラジカル重合性化合物は、末端エチレン性不飽和結合を有する化合物から選ばれ、発生したラジカルにより連鎖的に重合反応が生起し、硬化する。(A)赤外線吸収剤としては、例えば、前述したサーマルポジタイプの感熱層に含有される前記光熱変換物質が挙げられるが、特にシアニン色素の具体例としては特開2001−133969号公報の段落番号0017〜0019に記載されたものを挙げることができる。(B)ラジカル発生剤としては、オニウム塩が挙げられ、好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号0030〜0033に記載されたものを挙げることができる。(C)ラジカル重合性化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。(D)バインダーポリマーとしては線状有機ポリマーを用いることが好ましく、水または弱アルカリ水に可溶性または膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。特にこれらの中で、ベンジル基またはアリル基と、カルボキシ基とを側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂が、膜強度、感度及び現像性のバランスに優れており好適である。(C)ラジカル重合性化合物及び(D)バインダーポリマーに関しては同公報の段落番号0036〜0060に詳しく記載されたものが使用できる。その他の添加物としては、同公報の段落番号0061〜0068で示されている添加剤(例えば塗布性を良化するための界面活性剤)を加えることも好ましい。
【0057】
また、重合型のほかに、サーマルネガタイプの感熱層の一つとして、酸架橋型の層が好適に挙げられる。酸架橋層は、(E)光または熱により酸を発生する化合物(以下「酸発生剤」という)と、(F)発生した酸により架橋する化合物(以下「架橋剤」という)とを含有し、さらに、酸の存在下で架橋剤と反応しうる(G)アルカリ可溶性高分子化合物を含有する。赤外線レーザーのエネルギーを効率よく使用するため、酸架橋層には(A)赤外線吸収剤が配合される。(E)酸発生剤としては、光重合の光開始剤、色素類の光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている酸発生剤等の、熱分解して酸を発生しうる化合物が挙げられる。(F)架橋剤には、(i)ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物、(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基またはN−アシルオキシメチル基を有する化合物、または(iii)エポキシ化合物が挙げられる。(G)アルカリ可溶性高分子化合物としては、ノボラック樹脂、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマー等が挙げられる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、効果は元より本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0059】
(実施例)
以下に本実施例における現像処理装置について図1を用いて説明する。図1は本発明に用いる現像処理装置の一例を示す断面概略図である。本実施例に使用した現像装置の現像促進手段6の軸受け部分には、捨て版処理時に現像促進手段を退避するための手段として、図4に示す現像促進手段の位置を回転カムの位置により規制する方式の装置及び制御機構を設置した。また版種別の入力手段は作業者による情報入力方法とした。受信した版材種類情報は、現像処理装置内部の制御機構により適宜に処理され、平版印刷版である場合は現像促進手段を用いた現像処理、水洗処理、ガム引き処理、乾燥処理を順に行う。捨て版である場合は現像槽内の現像促進手段の退避、現像促進手段を用いない現像処理、水洗処理、ガム引き処理、乾燥処理を順に行い、少なくとも現像処理終了後に現像槽内の現像促進手段の復帰処置を行う。
【0060】
捨て版が現像処理装置に挿入されると、版は現像処理部に搬送され、液温30度に保たれた現像液中に浸漬される。あらかじめ得られた版種類情報により現像促進手段6は版面との接触を避けるために版面より上方に退避される。版上面の下塗層やほこり、汚れなどは現像液に浸漬さることで速やかに溶解あるいは除去される。なお上方に退避した現像促進装置6は、後述される版の乾燥処理ののちに元の位置に復帰する。
【0061】
次に処理された版は、現像液の絞り機能を兼ねる搬送ロール10,11により版面上の余剰の現像液を絞りつつ、次工程である水洗処理部に搬送される。水洗処理部では搬送ロール12,13により搬送されつつ、シャワーパイプ14から吐出される水洗水により版表面の洗浄がなされる。さらに水洗水の絞り機能を兼ねる搬送ロール16,17により版面上の余剰の水洗水を絞りつつ、次工程であるガム処理部に搬送される。
【0062】
ガム処理部では搬送ロール18,19により搬送されつつ、シャワーパイプ20から吐出されるガム液が版面全体に付与される。これにより版面の酸化によるアルカリ成分中和と、非画像部の不感脂化がなされる。さらにガム液の絞り機能を兼ねるガム部搬送兼絞りロール22,23により版面上の余剰のガム液を絞りつつ、図中に示されていない次工程である乾燥処理部に搬送される。乾燥処理部では版面全体の乾燥処理が行われ、ガム液成分による版面の保護膜形成がなされる。
【0063】
三菱製紙(株)製の平版印刷版PD−Newsと、捨て版として東京応化工業(株)製の捨て版GAプレートを用いて、以下の実験を行った。
【0064】
平版印刷版PD−Newsについては、830nm半導体レーザーを搭載した外面ドラム方式プレートセッター(大日本スクリーン製造(株)製PT−R4000)を使用して、ドラム回転数1000rpm・レーザー照射エネルギー50mJ/cmに設定して露光処理を行い、引き続いて上記の自動現像機にて現像処理を行った。
【0065】
現像液には三菱製紙(株)製現像液PD−NewsDVを、水との希釈倍率1:3で使用した。水洗水は通常の水道水を用いた。ガム液については三菱製紙(株)製ガム液PD−NewsGumを、水との希釈倍率1:1で使用した。
【0066】
平版印刷版PD−Newsと、捨て版GAプレートの処理比率は、一般的な新聞工場でよく使用される比率である印刷版3:捨て版1で処理を行った。
【0067】
現像促進手段として、(有)兆治製のモルトンスリーブ「アクアノート」を用い、1000枚処理ごとに摩耗状態を確認した。この結果を表1に示す。
【0068】
(比較例)
現像促進装置の退避機構を設けない以外、上記実施例と同等の構造の現像処理装置を用いて、1000枚処理ごとに現像促進手段の摩耗状態を確認した。この結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
現像促進手段の退避機構を持たない比較例では平版印刷版1万5000枚、捨て版5000枚を処理した時点で現像促進粗手段の摩耗が実用に耐えられなくなり、これ以降は平版印刷版の非画像部の感光層の均一な溶解が困難となった。モルトンロールの退避機構を有する実施例では、平版印刷版3万枚、捨て版1万枚を処理するまで平版印刷版の非画像部の感光層は均一に溶解されており、モルトンロールの著しい長寿命化が確認された。
【符号の説明】
【0071】
1 搬送ロール
2 搬送ロール
3 液中搬送ロール
4 液中搬送ロール
5 循環用シャワーパイプ
6 現像促進手段
7 バックアップロール
8 液中搬送ロール
9 液中搬送ロール
10 搬送ロール
11 搬送ロール
12 搬送ロール
13 搬送ロール
14 シャワーパイプ
15 バックアップロール
16 搬送ロール
17 搬送ロール
18 搬送ロール
19 搬送ロール
20 シャワーパイプ
21 バックアップロール
22 ガム部搬送兼絞りロール
23 ガム部搬送兼絞りロール
31 軸受け部材
32 回転軸
33 バックアップロール
34 バックアップロール用軸受け部材
35 回転軸
36 現像促進手段位置規制用のコイルばねまたは弾性ゴム
37 カム板
38 回転軸
39 モーター
40 制御装置
41 現像処理部側板
42 ピストン
43 シリンダー
44 クサビ板
45 クサビ板制御装置
46 凸部
100 通過ルート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理される版材が平版印刷版であるか捨て版であるかの情報を受信する手段と、現像槽内の現像促進手段が捨て版の版面と接触しないように現像促進手段を退避させる手段とを備えた平版印刷版用現像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−39171(P2011−39171A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184824(P2009−184824)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】