平行型耐屈曲性ケーブル及びイヤホンアンテナ
【課題】 編組シールドの切れ易さを改善するとともに、アンテナ特性、引っ張り強度、屈曲特性の向上を図る。
【解決手段】 アラミッド繊維で形成された補強繊維線11の周辺に複数本の銅線12を巻き付けて導体16とし、この導体16の周辺に絶縁層13を構成し、この絶縁層13の周辺に編組シールド14を配し、この編組シールド14の周辺にジャケット材15を被覆した第一電線10と、アラミッド繊維で形成された補強繊維線21の周辺に複数本の銅線22を巻き付けて導体26とし、この導体26の周辺に絶縁層23を構成して芯絶縁電線とし、この芯絶縁電線を複数配した状態の周辺にシールドを配し、このシールドの周辺にジャケット材25を被覆した第二電線20とを平行に並べて平行型耐屈曲性ケーブルAを構成した。
【解決手段】 アラミッド繊維で形成された補強繊維線11の周辺に複数本の銅線12を巻き付けて導体16とし、この導体16の周辺に絶縁層13を構成し、この絶縁層13の周辺に編組シールド14を配し、この編組シールド14の周辺にジャケット材15を被覆した第一電線10と、アラミッド繊維で形成された補強繊維線21の周辺に複数本の銅線22を巻き付けて導体26とし、この導体26の周辺に絶縁層23を構成して芯絶縁電線とし、この芯絶縁電線を複数配した状態の周辺にシールドを配し、このシールドの周辺にジャケット材25を被覆した第二電線20とを平行に並べて平行型耐屈曲性ケーブルAを構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の電線を有して構成された平行型耐屈曲性ケーブル、及び、この平行型耐屈曲性ケーブルを用いたイヤホンアンテナに関し、特に、編組シールドによりアンテナ特性を高めるとともに、編組シールドの切れ易さを改善するのに好適な平行型耐屈曲性ケーブル及びイヤホンアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化が進む中、アンテナの収容スペースの削減にともなって、アンテナの機能を有したイヤホンが多く使用されるようになってきている。
このイヤホンアンテナは、電子機器から出力された音声を視聴者の耳に直接伝えるイヤホンとしての機能と、電波を受信するアンテナとしての機能とを有している(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
このイヤホンアンテナに使用されるケーブルの従来の構造を、図9〜図11を参照して説明する。
図9に示すように、従来のケーブル100は、ポリアミドや綿糸などの補強繊維線110の周辺に複数本の銅線120を巻き付けて導体130とし、この導体130の周辺に絶縁層140を構成し、さらにこの絶縁層140の周辺に、導体として銅線あるいは合金線に錫メッキ又は銀鍍金等を施した線材、又は、導体130の表面にエナメル被覆を施した線を用いた横巻シールド150を配し、横巻シールド150の周辺に、ポリオレフィンやスチレン系樹脂を成分として構成するジャケット材(ジャケット)160を被覆して構成した電線をシールド線としたものである。
【0004】
また、図10に示すように、他の従来のケーブル200は、ポリアミドや綿糸の補強繊維線210の周辺に複数本の銅線220を巻き付けて導体230とし、この導体230の周辺に絶縁層240を構成して芯絶縁電線250とし、この芯絶縁電線250を複数本配した状態の周辺に横巻シールド260を配し、この横巻シールド260の周辺に、ポリオレフィンやスチレン系樹脂を成分として構成するジャケット材270を被覆して構成したものである。
【0005】
さらに、図11に示すように、図9に示したケーブル100と図10に示したケーブル200をそれぞれ一ずつ一組又はそれぞれ複数を組み合わせて平行に配置して、平行型のケーブル300を構成したものがある。
なお、一般には、ケーブル100とケーブル200とを各一ずつで、二本とし平行型のケーブル300を構成する。
【特許文献1】特開2005−086701号公報
【特許文献2】特開2005−333459号公報
【特許文献3】特開2006−287720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のケーブルは、アンテナ特性、引っ張り強度、屈曲特性に問題があった。
例えば、アンテナ特性については、電波の周波数とゲインとの関係を示した波形を見ると、その波形全体に高調波による歪みと思われる波形の乱れが多く発生し、不安定となっていた。
特に、約470MHzから約770MHzの、ワンセグ地上波デジタルテレビ放送の領域において感度の低下が測定された。
これは、従来技術によるシールド線のシールド部分を、ホイップアンテナとして使用する場合、シールド部分が横巻シールドであるため、アンテナ特性においては、全体としてVSWRの波形が不安定になり高周波領域でも減衰するためであった。
【0007】
また、引っ張り強度については、荷重特性試験の結果、約3kg付近から伸びの前兆が発生し、5kgの荷重をかけたときに、全体に伸びが発生し、場合によって断線することもあった。
【0008】
さらに、屈曲特性については、断面の方向に屈曲させた場合であって、荷重200gをかけ、左右90度屈曲させたときに断線し易かった。これは、従来の電線の内部の中心部にある電線の材質がナイロンや綿糸を用いているため、伸びを生じるためであった。
【0009】
このように、従来のケーブルは、アンテナ特性、引っ張り強度、屈曲特性についてそれぞれ問題があった。このため、それらを改善する技術の提供が求められていた。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決すべくなされたものであり、アンテナ特性の向上を図るとともに、相当量以上の引っ張り荷重を有し、かつ、相当回数以上の屈曲試験にも耐えることができる平行型耐屈曲性ケーブル及びイヤホンケーブルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するため、本発明の平行型耐屈曲性ケーブルは、二本の電線を平行に配した平行型耐屈曲性ケーブルであって、第一の電線が、補強繊維線の周辺に複数本の銅線を巻き付けて導体とし、この導体の周辺に絶縁層を形成して、この絶縁層の外方に編組シールドを配し、この編組シールドの外方にジャケット材を被覆し、第二の電線が、補強繊維線の周辺に複数本の銅線を巻き付けて導体とし、この導体の周辺に絶縁層を形成して芯絶縁電線とし、この芯絶縁電線を複数本配した状態の外方にシールドを配し、このシールドの外方にジャケット材を被覆した構成としてある。
【0012】
平行型耐屈曲性ケーブルをこのような構成とすると、外部導体に編組シールドを用いたため、横巻シールドに比べて格段にアンテナ特性を向上させることができる。
また、この平行型耐屈曲性ケーブルをイヤホンアンテナに用いれば、芯絶縁電線を一本配した電線をアンテナ用、芯絶縁電線を複数本配した電線を音声用とすることができる。
【0013】
また、本発明の平行型耐屈曲性ケーブルは、補強繊維線の材料として、アラミッド繊維を含むことができる。
平行型耐屈曲性ケーブルをこのような構成とすると、アラミッド繊維という高強度、高弾性の材料で補強繊維線を形成したため、屈曲特性や引っ張り荷重特性を改善できる。なお、補強繊維線は、アラミッド繊維のみで形成することもでき、また、アラミッド繊維と他の繊維(例えば、カーボン繊維等)とを組み合わせて形成することもできる。
【0014】
さらに、外部導体を編組シールドで構成した場合の切れ易さを改善してアンテナ特性を向上できる。
編組シールドは、従来では比較的径の太いケーブルに使用されており、径の細いケーブルには使用されなかった。これは、太いケーブルの場合には、曲げ伸ばしが頻繁に行なわれることがないため、アンテナ特性を重視して編組シールドを採用できるのに対し、細いケーブルの場合には、曲げ伸ばしが頻繁に行なわれる可能性が高いため、切れ易さを理由に採用されず、この場合は横巻シールドが用いられていた。
【0015】
しかし、編組シールドは横巻シールドに比べてアンテナ特性が非常に良い。例えばイヤホンアンテナなどでは、横巻シールドよりも編組シールドを採用した方が感度が高くなる。ところが、イヤホンアンテナは、通常細いケーブルを採用するものであり、使用しないときは束ねておくなど曲げ伸ばしが頻繁に行なわれることから編組シールドを採用しにくい状況にある。
そこで、芯絶縁電線の中心に補強繊維線を配し、これをアラミッド繊維で形成することとした。アラミッド繊維は、従来のポリアミドや綿糸に比べて弾性が高い。このため、曲げ伸ばしによるケーブル内の負担がアラミッド繊維で吸収されて編組シールドにはかからない。これにより、編組シールドの切れ易さが解消されることから、外部導体を編組シールドで構成してアンテナ特性を高めることができる。
【0016】
また、本発明の平行型耐屈曲性ケーブルは、ジャケット材を、ポリオレフィン及び/又はスチレン系樹脂を成分とすることができる。
平行型耐屈曲性ケーブルをこのような構成とすれば、ポリオレフィンが、ハロゲンや重金属を含まない難燃性の材料であるため、処分時の有害物質の発生を防ぎ、銅を導体等に使用しているケーブルについては、リサイクル促進の効果が期待される。
【0017】
また、本発明のイヤホンアンテナは、一方の端部にコネクタ部を備え、他方の端部にスピーカ部を備え、これら両端部をケーブルで接続したイヤホンアンテナであって、ケーブルの一部又は全部に上述の平行型耐屈曲性ケーブルのいずれかを用い、この平行型耐屈曲性ケーブルを構成する電線の一つをアンテナ用電線とすることができる。
イヤホンアンテナをこのような構成とすると、アンテナ特性の良好なイヤホンアンテナを得ることができる。しかも、引っ張り強度が高く、屈曲特性に優れたイヤホンアンテナを提供できる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、外部導体として編組シールドを用いたため、従来の横巻シールドに比べて、優れたアンテナ特性を得ることができる。
また、芯絶縁電線の中心にアラミッド繊維で形成された補強繊維線を配したため、編組シールドの切れ易さを解消できるとともに、引っ張り強度を高めることができ、しかも、屈曲特性に優れたケーブルを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る平行型耐屈曲性ケーブル及びイヤホンケーブルの好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
[平行型耐屈曲性ケーブル]
まず、本発明の平行型耐屈曲性ケーブルの実施形態について、図1(i),(ii)を参照して説明する。
同図(i)は、本実施形態の平行型耐屈曲性ケーブルの構造を示す断面図、同図(ii)は、側面図である。
【0021】
同図(i),(ii)に示すように、平行型耐屈曲性ケーブルAは、第一電線10と、第二電線20とを有している。そして、それぞれに補強繊維線11,21と、銅線12,22と、絶縁層13,23と、編組シールド14,24と、ジャケット材15,25とを有している。
補強繊維線11,21は、アラミッド繊維を材料とする。
アラミッド繊維は、芳香族ポリアミド系の長繊維素材で、高強度、高弾性の性質に加え、低密度と適度な内部損失を兼ね備えている。
このアラミッド繊維を補強繊維線11,21として用いることで、編組シールド14,24の切れ易さを解消できるとともに、引っ張り特性や屈曲特性を向上できる。
【0022】
シールドには、編組シールド14,24を用いる。
編組シールド14,24は、銅線の編組によってシールドを構成したものである。
この編組シールド14,24は、横巻シールドのようにコイルを形成するものでないため、アンテナ特性に優れているものの、切れ易いという問題がある。そこで、本発明は、アラミッド繊維を補強繊維線11,21として電線の中心に配した。これにより、切れ易いという問題を解消できる。
【0023】
ジャケット材15,25は、機械的損傷を防ぐために被覆された層である。このジャケット材15,25は、ポリオレフィンやスチレン系樹脂を成分とすることができる。ポリオレフィンは、ハロゲンや重金属を含まない難燃性の材料である。これにより、処分時の有害物質の発生を防ぎ、銅を導体等に使用しているケーブルについては、リサイクル促進の効果が期待される。
【0024】
第一電線(第一の電線)10は、補強繊維線11の周辺に複数本の銅線12を巻き付けて導体16とし、この導体16の周辺に絶縁層13を構成(形成)して芯絶縁電線とし、その絶縁層13の周辺に編組シールド14を配し、この編組シールド14の周辺にジャケット材15を被覆して構成してある。
第二電線(第二の電線)20は、補強繊維線21の周辺に複数本の銅線22を巻き付けて導体26とし、この導体26の周辺に絶縁層23を構成(形成)して芯絶縁電線とし、この芯絶縁電線を複数本配した状態の周辺に編組シールド24を配し、この編組シールド24の周辺にジャケット材25を被覆して構成してある。
【0025】
このような構造により、編組シールドを用いたことで、アンテナ特性を向上させることができる。また、補強繊維線にアラミッド繊維を用いたことで、編組シールドの採用による切れ易さを解消できる。
なお、第二電線20のシールドは、本実施形態では編組シールド24を用いているが、第一電線10をアンテナ用、第二電線20を音声用とした場合、第二電線20のシールドは編組シールドであることを要しない。これは、編組シールドの採用が、アンテナ特性の向上を目的としているためである。この場合、第二電線20のシールドとして横巻シールドを用いることができる。
【0026】
[イヤホンアンテナ]
次に、本実施形態のイヤホンアンテナの構造について、図2を参照して説明する。
同図に示すように、イヤホンアンテナBは、コネクタ部30と、スピーカ部40と、コード部50とを備えている。
【0027】
コネクタ部30は、イヤホンアンテナBの一方の端部に取り付けられており、音声を出力する装置(例えば、携帯電話機など)のコネクタ(受側)に接続(差し込み)される部分である。
スピーカ部40(第一スピーカ41、第二スピーカ42)は、イヤホンアンテナBの他方の端部に取り付けられており、音声が出力される部分である。
【0028】
コード部50は、コネクタ部30とスピーカ部40とを接続(両端部を接続)する。
このコード部50は、アンテナ部51と、中継部52と、接合コード53と、分岐部54と、分岐コード55とを有している。
アンテナ部51は、図1に示す平行型耐屈曲性ケーブルAを使用した部分である。
ここで、平行型耐屈曲性ケーブルAの第一電線10の導体16は、高周波信号を通す(高周波用)。第二電線20の一の導体26は、第一スピーカ41の音声信号を通す(第一音声用)。第二電線20の他の一の導体26は、第二スピーカ42の音声信号を通す(第二音声用)。第二電線20のさらに他の導体26は、接地線である。
【0029】
中継部52は、アンテナ部51と接合コード53とを接続する部分である。具体的には、アンテナ部51の第二電線20の一の導体26と接合コード53の一のコードとを接続し、アンテナ部51の第二電線20の他の導体26と接合コード53の他のコードとを接続する。また、アンテナ部51の第一電線10は、この中継部52で終端する。
接合コード53は、分岐部54で各分岐コード55(第一分岐コード55−1、第二分岐コード55−2)に分けられる。第一分岐コード55−1は、第一スピーカ41に接続され、第二分岐コード55−2は、第二スピーカ42に接続される。
【0030】
イヤホンアンテナをこのような構造とすることで、アンテナ部51に平行型耐屈曲性ケーブルAが用いられるため、アンテナ特性や引っ張り強度、屈曲特性に優れたイヤホンアンテナを得ることができる。
【0031】
[平行型耐屈曲性ケーブルに関する試験]
次に、平行型耐屈曲性ケーブルに関する試験について、図3〜図7を参照して説明する。
ここでは、アンテナ特性試験、引っ張り強度試験、屈曲特性試験について説明する。
【0032】
(I)アンテナ特性試験
図3に示すような構成の測定装置群を用いて、平行型耐屈曲性ケーブルA及びイヤホンアンテナBのアンテナ特性を測定した。
(i)測定装置群及び被測定アンテナ
アンテナ特性試験を行なうための装置群500として、送信機510と、送信アンテナ520と、受信機530とを用意した。
【0033】
(ii)被測定アンテナ
被測定アンテナとして、次のものを用意した。
・平行型耐屈曲性ケーブルA(図1参照)
・従来のケーブル300(図11参照)
・平行型耐屈曲性ケーブルAを用いたイヤホンアンテナB1
・アンテナ部の長さが150mmのイヤホンアンテナB11
・アンテナ部の長さが500mmのイヤホンアンテナB12
・アンテナ部の長さが1000mmのイヤホンアンテナB13
・従来のケーブル300を用いたイヤホンアンテナB2
・アンテナ部の長さが150mmのイヤホンアンテナB21
・アンテナ部の長さが500mmのイヤホンアンテナB22
・アンテナ部の長さが1000mmのイヤホンアンテナB23
【0034】
(iii)測定方法
測定は、電波暗室内で行なった。
送信機510と送信アンテナ520とを接続するとともに、受信機530と被測定アンテナ(又はイヤホンアンテナ)とを接続し、送信アンテナ520から送信された電波を被測定アンテナで受信するようにした。
送信機510を操作して、送信する電波の周波数を0.1MHzごとに増やしていき、その都度、受信機530にて、ゲイン[dBm]を測定した。
【0035】
(iv)測定結果
測定結果を、図4及び図5に示す。図4は、ケーブル300及びイヤホンアンテナB21〜B23についての測定結果を示すグラフである。図5は、平行型耐屈曲性アンテナA及びイヤホンアンテナB11〜B13についての測定結果を示すグラフである。
【0036】
・図4
波形全体に高調波による歪みと思われる波形の乱れが多く生じており不安定であった。
特に、約470MHzから約770MHzの、ワンセグ地上波デジタルテレビ放送の領域において感度の低下が測定された。
これは、従来技術によるシールド線のシールド部分を、ホイップアンテナとして使用する場合、シールド部分が横巻シールドであるため、アンテナ特性を示すVSWRの波形が全体として不安定になり高周波領域でも減衰していた。
【0037】
・図5
「山」や「谷」がはっきりしており、しかも、どの被測定アンテナも、山となる周波数と谷となる周波数がほぼ一致していた。つまり、波形全体が安定しており、感度の低下した部分がほとんど見られなかった。
このように、横巻シールドに代えて編組シールドを用いることで、アンテナ特性が向上したことがわかった。
【0038】
なお、このアンテナ特性試験においては、送信機510から送信される電波の周波数を0.1MHzごとに増やしてゲインを測定したが、0.1MHzに限るものではなく、0.05MHzや0.5MHzなどとすることができる。これら周波数の増分は、測定データの精度に関係するものであり、被測定アンテナのアンテナ特性自体に直接影響を与えるものではない。
【0039】
(II)引っ張り強度試験
図6に示すような構成の引っ張り強度試験装置を用いて、平行型耐屈曲性ケーブルの引っ張り強度を測定した。
【0040】
(i)測定装置及び被測定ケーブル
引っ張り強度試験を行なうために、引っ張り強度測定機を用意した。
また、被測定ケーブルとして、図1に示す平行型耐屈曲性ケーブルAと、図11に示すケーブル300とを用意した。
(ii)測定結果
ケーブル300については、約3kg付近から伸びの前兆が発生した。そして、5kgの荷重をかけた時に、全体に伸びが発生した。この試験を複数本について行なうと、中には5kgで断線するものもあった。
一方、平行型耐屈曲性ケーブルAについては、5kgの荷重をかけても、伸びが発生しなかった。
このように、補強繊維線をアラミッド繊維で形成することで、引っ張り強度を向上させることができる。
【0041】
(III)屈曲特性試験
図7に示すような構成の屈曲試験装置700を用いて、平行型耐屈曲性ケーブルAの屈曲特性を測定した。
【0042】
(i)測定装置及び被測定ケーブル
屈曲特性試験を行なうために、屈曲試験装置700を用意した。
また、被測定ケーブルとして、図1に示す平行型耐屈曲性ケーブルAと、図11に示す従来のケーブル300と、図8に示すケーブルCとを用意した。
ケーブルCは、シールドに編組シールド14,24を用いるとともに、補強繊維線17,27にナイロンを用いた電線である。
【0043】
(ii)測定方法
この屈曲特性試験は、被測定ケーブルごとに行なった。
被測定ケーブルの上端は支持部材710で固定し、末端には重り720(荷重200g)を繋げた。回転体730を動かしながら、被測定ケーブルの断面の方向に左右90度に複数回屈曲させた。そして、断線に到るまでの屈曲回数を測定した。
【0044】
(iii)測定結果
断線に到るまでの屈曲回数は、次の通りとなった。(全回路を直列に接続して測定したとき)
従来のケーブル300 : 7000回
ケーブルC : 3000回
平行型耐屈曲性ケーブルA : 20000回
【0045】
従来のケーブル300は、内部の中心部にある電線の材質にポリアミドや綿糸を用いているため、伸びを生じ、断線し易かった。
ケーブルCは、編組シールドを用いているため、横巻シールドを用いた従来のケーブル300に比べて屈曲特性が悪くなった。
これらに対し、平行型耐屈曲性ケーブルAは、屈曲特性が非常に優れていることがわかった。これは、平行型耐屈曲性ケーブルAが、編組シールドを用いているものの、補強繊維線の材質がアラミッド繊維であるため、切れ易さが大幅に改善されたからである。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の平行型耐屈曲性ケーブル及びイヤホンアンテナによれば、編組シールドを用いたことで、アンテナ特性を向上できる。
また、補強繊維線にアラミッド繊維を用いたことで、編組シールドの切れ易さを解消できる。
さらに、アラミッド繊維を補強繊維とすることで、引っ張り強度を高めることができる。
【0047】
以上、本発明の平行型耐屈曲性ケーブル及びイヤホンアンテナの好ましい実施形態について説明したが、本発明に係る平行型耐屈曲性ケーブル及びイヤホンアンテナは上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、第一電線と第二電線とを組み合わせた平行型ケーブルを示したが、それら二本の電線の組み合わせに限るものではなく、一本又は三本以上の電線の組み合わせであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、絶縁電線の構造に関する発明であるため、絶縁電線やこれを用いた各種電線に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の平行型耐屈曲性ケーブルの構造を示す図であって、(i)は断面図、(ii)は側面図である。
【図2】本発明のイヤホンアンテナの構成を示す正面図である。
【図3】アンテナ特性を特性するための装置群の構成を示す概略図である。
【図4】従来のケーブルのアンテナ特性を示すグラフである。
【図5】本発明の平行型耐屈曲性ケーブルやイヤホンアンテナのアンテナ特性を示すグラフである。
【図6】引っ張り強度測定装置の構成を示す正面図である。
【図7】屈曲試験装置の構成を示す正面図である。
【図8】他のケーブルの構造を示す図であって、(i)は断面図、(ii)は側面図である。
【図9】従来のケーブルの構造を示す断面図である。
【図10】従来の他のケーブルの構造を示す断面図である。
【図11】従来の平行型ケーブルの構造を示す図であって、(i)は断面図、(ii)は側面図である。
【符号の説明】
【0050】
A 平行型耐屈曲性ケーブル
10 第一電線
11 補強繊維線(アラミッド繊維)
12 銅線
13 絶縁層
14 編組シールド
15 ジャケット材
16 導体
20 第二電線
21 補強繊維線(アラミッド繊維)
22 銅線
23 絶縁層
24 編組シールド
25 ジャケット材
26 導体
B イヤホンアンテナ
51 アンテナ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の電線を有して構成された平行型耐屈曲性ケーブル、及び、この平行型耐屈曲性ケーブルを用いたイヤホンアンテナに関し、特に、編組シールドによりアンテナ特性を高めるとともに、編組シールドの切れ易さを改善するのに好適な平行型耐屈曲性ケーブル及びイヤホンアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化が進む中、アンテナの収容スペースの削減にともなって、アンテナの機能を有したイヤホンが多く使用されるようになってきている。
このイヤホンアンテナは、電子機器から出力された音声を視聴者の耳に直接伝えるイヤホンとしての機能と、電波を受信するアンテナとしての機能とを有している(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
このイヤホンアンテナに使用されるケーブルの従来の構造を、図9〜図11を参照して説明する。
図9に示すように、従来のケーブル100は、ポリアミドや綿糸などの補強繊維線110の周辺に複数本の銅線120を巻き付けて導体130とし、この導体130の周辺に絶縁層140を構成し、さらにこの絶縁層140の周辺に、導体として銅線あるいは合金線に錫メッキ又は銀鍍金等を施した線材、又は、導体130の表面にエナメル被覆を施した線を用いた横巻シールド150を配し、横巻シールド150の周辺に、ポリオレフィンやスチレン系樹脂を成分として構成するジャケット材(ジャケット)160を被覆して構成した電線をシールド線としたものである。
【0004】
また、図10に示すように、他の従来のケーブル200は、ポリアミドや綿糸の補強繊維線210の周辺に複数本の銅線220を巻き付けて導体230とし、この導体230の周辺に絶縁層240を構成して芯絶縁電線250とし、この芯絶縁電線250を複数本配した状態の周辺に横巻シールド260を配し、この横巻シールド260の周辺に、ポリオレフィンやスチレン系樹脂を成分として構成するジャケット材270を被覆して構成したものである。
【0005】
さらに、図11に示すように、図9に示したケーブル100と図10に示したケーブル200をそれぞれ一ずつ一組又はそれぞれ複数を組み合わせて平行に配置して、平行型のケーブル300を構成したものがある。
なお、一般には、ケーブル100とケーブル200とを各一ずつで、二本とし平行型のケーブル300を構成する。
【特許文献1】特開2005−086701号公報
【特許文献2】特開2005−333459号公報
【特許文献3】特開2006−287720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のケーブルは、アンテナ特性、引っ張り強度、屈曲特性に問題があった。
例えば、アンテナ特性については、電波の周波数とゲインとの関係を示した波形を見ると、その波形全体に高調波による歪みと思われる波形の乱れが多く発生し、不安定となっていた。
特に、約470MHzから約770MHzの、ワンセグ地上波デジタルテレビ放送の領域において感度の低下が測定された。
これは、従来技術によるシールド線のシールド部分を、ホイップアンテナとして使用する場合、シールド部分が横巻シールドであるため、アンテナ特性においては、全体としてVSWRの波形が不安定になり高周波領域でも減衰するためであった。
【0007】
また、引っ張り強度については、荷重特性試験の結果、約3kg付近から伸びの前兆が発生し、5kgの荷重をかけたときに、全体に伸びが発生し、場合によって断線することもあった。
【0008】
さらに、屈曲特性については、断面の方向に屈曲させた場合であって、荷重200gをかけ、左右90度屈曲させたときに断線し易かった。これは、従来の電線の内部の中心部にある電線の材質がナイロンや綿糸を用いているため、伸びを生じるためであった。
【0009】
このように、従来のケーブルは、アンテナ特性、引っ張り強度、屈曲特性についてそれぞれ問題があった。このため、それらを改善する技術の提供が求められていた。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決すべくなされたものであり、アンテナ特性の向上を図るとともに、相当量以上の引っ張り荷重を有し、かつ、相当回数以上の屈曲試験にも耐えることができる平行型耐屈曲性ケーブル及びイヤホンケーブルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するため、本発明の平行型耐屈曲性ケーブルは、二本の電線を平行に配した平行型耐屈曲性ケーブルであって、第一の電線が、補強繊維線の周辺に複数本の銅線を巻き付けて導体とし、この導体の周辺に絶縁層を形成して、この絶縁層の外方に編組シールドを配し、この編組シールドの外方にジャケット材を被覆し、第二の電線が、補強繊維線の周辺に複数本の銅線を巻き付けて導体とし、この導体の周辺に絶縁層を形成して芯絶縁電線とし、この芯絶縁電線を複数本配した状態の外方にシールドを配し、このシールドの外方にジャケット材を被覆した構成としてある。
【0012】
平行型耐屈曲性ケーブルをこのような構成とすると、外部導体に編組シールドを用いたため、横巻シールドに比べて格段にアンテナ特性を向上させることができる。
また、この平行型耐屈曲性ケーブルをイヤホンアンテナに用いれば、芯絶縁電線を一本配した電線をアンテナ用、芯絶縁電線を複数本配した電線を音声用とすることができる。
【0013】
また、本発明の平行型耐屈曲性ケーブルは、補強繊維線の材料として、アラミッド繊維を含むことができる。
平行型耐屈曲性ケーブルをこのような構成とすると、アラミッド繊維という高強度、高弾性の材料で補強繊維線を形成したため、屈曲特性や引っ張り荷重特性を改善できる。なお、補強繊維線は、アラミッド繊維のみで形成することもでき、また、アラミッド繊維と他の繊維(例えば、カーボン繊維等)とを組み合わせて形成することもできる。
【0014】
さらに、外部導体を編組シールドで構成した場合の切れ易さを改善してアンテナ特性を向上できる。
編組シールドは、従来では比較的径の太いケーブルに使用されており、径の細いケーブルには使用されなかった。これは、太いケーブルの場合には、曲げ伸ばしが頻繁に行なわれることがないため、アンテナ特性を重視して編組シールドを採用できるのに対し、細いケーブルの場合には、曲げ伸ばしが頻繁に行なわれる可能性が高いため、切れ易さを理由に採用されず、この場合は横巻シールドが用いられていた。
【0015】
しかし、編組シールドは横巻シールドに比べてアンテナ特性が非常に良い。例えばイヤホンアンテナなどでは、横巻シールドよりも編組シールドを採用した方が感度が高くなる。ところが、イヤホンアンテナは、通常細いケーブルを採用するものであり、使用しないときは束ねておくなど曲げ伸ばしが頻繁に行なわれることから編組シールドを採用しにくい状況にある。
そこで、芯絶縁電線の中心に補強繊維線を配し、これをアラミッド繊維で形成することとした。アラミッド繊維は、従来のポリアミドや綿糸に比べて弾性が高い。このため、曲げ伸ばしによるケーブル内の負担がアラミッド繊維で吸収されて編組シールドにはかからない。これにより、編組シールドの切れ易さが解消されることから、外部導体を編組シールドで構成してアンテナ特性を高めることができる。
【0016】
また、本発明の平行型耐屈曲性ケーブルは、ジャケット材を、ポリオレフィン及び/又はスチレン系樹脂を成分とすることができる。
平行型耐屈曲性ケーブルをこのような構成とすれば、ポリオレフィンが、ハロゲンや重金属を含まない難燃性の材料であるため、処分時の有害物質の発生を防ぎ、銅を導体等に使用しているケーブルについては、リサイクル促進の効果が期待される。
【0017】
また、本発明のイヤホンアンテナは、一方の端部にコネクタ部を備え、他方の端部にスピーカ部を備え、これら両端部をケーブルで接続したイヤホンアンテナであって、ケーブルの一部又は全部に上述の平行型耐屈曲性ケーブルのいずれかを用い、この平行型耐屈曲性ケーブルを構成する電線の一つをアンテナ用電線とすることができる。
イヤホンアンテナをこのような構成とすると、アンテナ特性の良好なイヤホンアンテナを得ることができる。しかも、引っ張り強度が高く、屈曲特性に優れたイヤホンアンテナを提供できる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、外部導体として編組シールドを用いたため、従来の横巻シールドに比べて、優れたアンテナ特性を得ることができる。
また、芯絶縁電線の中心にアラミッド繊維で形成された補強繊維線を配したため、編組シールドの切れ易さを解消できるとともに、引っ張り強度を高めることができ、しかも、屈曲特性に優れたケーブルを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る平行型耐屈曲性ケーブル及びイヤホンケーブルの好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
[平行型耐屈曲性ケーブル]
まず、本発明の平行型耐屈曲性ケーブルの実施形態について、図1(i),(ii)を参照して説明する。
同図(i)は、本実施形態の平行型耐屈曲性ケーブルの構造を示す断面図、同図(ii)は、側面図である。
【0021】
同図(i),(ii)に示すように、平行型耐屈曲性ケーブルAは、第一電線10と、第二電線20とを有している。そして、それぞれに補強繊維線11,21と、銅線12,22と、絶縁層13,23と、編組シールド14,24と、ジャケット材15,25とを有している。
補強繊維線11,21は、アラミッド繊維を材料とする。
アラミッド繊維は、芳香族ポリアミド系の長繊維素材で、高強度、高弾性の性質に加え、低密度と適度な内部損失を兼ね備えている。
このアラミッド繊維を補強繊維線11,21として用いることで、編組シールド14,24の切れ易さを解消できるとともに、引っ張り特性や屈曲特性を向上できる。
【0022】
シールドには、編組シールド14,24を用いる。
編組シールド14,24は、銅線の編組によってシールドを構成したものである。
この編組シールド14,24は、横巻シールドのようにコイルを形成するものでないため、アンテナ特性に優れているものの、切れ易いという問題がある。そこで、本発明は、アラミッド繊維を補強繊維線11,21として電線の中心に配した。これにより、切れ易いという問題を解消できる。
【0023】
ジャケット材15,25は、機械的損傷を防ぐために被覆された層である。このジャケット材15,25は、ポリオレフィンやスチレン系樹脂を成分とすることができる。ポリオレフィンは、ハロゲンや重金属を含まない難燃性の材料である。これにより、処分時の有害物質の発生を防ぎ、銅を導体等に使用しているケーブルについては、リサイクル促進の効果が期待される。
【0024】
第一電線(第一の電線)10は、補強繊維線11の周辺に複数本の銅線12を巻き付けて導体16とし、この導体16の周辺に絶縁層13を構成(形成)して芯絶縁電線とし、その絶縁層13の周辺に編組シールド14を配し、この編組シールド14の周辺にジャケット材15を被覆して構成してある。
第二電線(第二の電線)20は、補強繊維線21の周辺に複数本の銅線22を巻き付けて導体26とし、この導体26の周辺に絶縁層23を構成(形成)して芯絶縁電線とし、この芯絶縁電線を複数本配した状態の周辺に編組シールド24を配し、この編組シールド24の周辺にジャケット材25を被覆して構成してある。
【0025】
このような構造により、編組シールドを用いたことで、アンテナ特性を向上させることができる。また、補強繊維線にアラミッド繊維を用いたことで、編組シールドの採用による切れ易さを解消できる。
なお、第二電線20のシールドは、本実施形態では編組シールド24を用いているが、第一電線10をアンテナ用、第二電線20を音声用とした場合、第二電線20のシールドは編組シールドであることを要しない。これは、編組シールドの採用が、アンテナ特性の向上を目的としているためである。この場合、第二電線20のシールドとして横巻シールドを用いることができる。
【0026】
[イヤホンアンテナ]
次に、本実施形態のイヤホンアンテナの構造について、図2を参照して説明する。
同図に示すように、イヤホンアンテナBは、コネクタ部30と、スピーカ部40と、コード部50とを備えている。
【0027】
コネクタ部30は、イヤホンアンテナBの一方の端部に取り付けられており、音声を出力する装置(例えば、携帯電話機など)のコネクタ(受側)に接続(差し込み)される部分である。
スピーカ部40(第一スピーカ41、第二スピーカ42)は、イヤホンアンテナBの他方の端部に取り付けられており、音声が出力される部分である。
【0028】
コード部50は、コネクタ部30とスピーカ部40とを接続(両端部を接続)する。
このコード部50は、アンテナ部51と、中継部52と、接合コード53と、分岐部54と、分岐コード55とを有している。
アンテナ部51は、図1に示す平行型耐屈曲性ケーブルAを使用した部分である。
ここで、平行型耐屈曲性ケーブルAの第一電線10の導体16は、高周波信号を通す(高周波用)。第二電線20の一の導体26は、第一スピーカ41の音声信号を通す(第一音声用)。第二電線20の他の一の導体26は、第二スピーカ42の音声信号を通す(第二音声用)。第二電線20のさらに他の導体26は、接地線である。
【0029】
中継部52は、アンテナ部51と接合コード53とを接続する部分である。具体的には、アンテナ部51の第二電線20の一の導体26と接合コード53の一のコードとを接続し、アンテナ部51の第二電線20の他の導体26と接合コード53の他のコードとを接続する。また、アンテナ部51の第一電線10は、この中継部52で終端する。
接合コード53は、分岐部54で各分岐コード55(第一分岐コード55−1、第二分岐コード55−2)に分けられる。第一分岐コード55−1は、第一スピーカ41に接続され、第二分岐コード55−2は、第二スピーカ42に接続される。
【0030】
イヤホンアンテナをこのような構造とすることで、アンテナ部51に平行型耐屈曲性ケーブルAが用いられるため、アンテナ特性や引っ張り強度、屈曲特性に優れたイヤホンアンテナを得ることができる。
【0031】
[平行型耐屈曲性ケーブルに関する試験]
次に、平行型耐屈曲性ケーブルに関する試験について、図3〜図7を参照して説明する。
ここでは、アンテナ特性試験、引っ張り強度試験、屈曲特性試験について説明する。
【0032】
(I)アンテナ特性試験
図3に示すような構成の測定装置群を用いて、平行型耐屈曲性ケーブルA及びイヤホンアンテナBのアンテナ特性を測定した。
(i)測定装置群及び被測定アンテナ
アンテナ特性試験を行なうための装置群500として、送信機510と、送信アンテナ520と、受信機530とを用意した。
【0033】
(ii)被測定アンテナ
被測定アンテナとして、次のものを用意した。
・平行型耐屈曲性ケーブルA(図1参照)
・従来のケーブル300(図11参照)
・平行型耐屈曲性ケーブルAを用いたイヤホンアンテナB1
・アンテナ部の長さが150mmのイヤホンアンテナB11
・アンテナ部の長さが500mmのイヤホンアンテナB12
・アンテナ部の長さが1000mmのイヤホンアンテナB13
・従来のケーブル300を用いたイヤホンアンテナB2
・アンテナ部の長さが150mmのイヤホンアンテナB21
・アンテナ部の長さが500mmのイヤホンアンテナB22
・アンテナ部の長さが1000mmのイヤホンアンテナB23
【0034】
(iii)測定方法
測定は、電波暗室内で行なった。
送信機510と送信アンテナ520とを接続するとともに、受信機530と被測定アンテナ(又はイヤホンアンテナ)とを接続し、送信アンテナ520から送信された電波を被測定アンテナで受信するようにした。
送信機510を操作して、送信する電波の周波数を0.1MHzごとに増やしていき、その都度、受信機530にて、ゲイン[dBm]を測定した。
【0035】
(iv)測定結果
測定結果を、図4及び図5に示す。図4は、ケーブル300及びイヤホンアンテナB21〜B23についての測定結果を示すグラフである。図5は、平行型耐屈曲性アンテナA及びイヤホンアンテナB11〜B13についての測定結果を示すグラフである。
【0036】
・図4
波形全体に高調波による歪みと思われる波形の乱れが多く生じており不安定であった。
特に、約470MHzから約770MHzの、ワンセグ地上波デジタルテレビ放送の領域において感度の低下が測定された。
これは、従来技術によるシールド線のシールド部分を、ホイップアンテナとして使用する場合、シールド部分が横巻シールドであるため、アンテナ特性を示すVSWRの波形が全体として不安定になり高周波領域でも減衰していた。
【0037】
・図5
「山」や「谷」がはっきりしており、しかも、どの被測定アンテナも、山となる周波数と谷となる周波数がほぼ一致していた。つまり、波形全体が安定しており、感度の低下した部分がほとんど見られなかった。
このように、横巻シールドに代えて編組シールドを用いることで、アンテナ特性が向上したことがわかった。
【0038】
なお、このアンテナ特性試験においては、送信機510から送信される電波の周波数を0.1MHzごとに増やしてゲインを測定したが、0.1MHzに限るものではなく、0.05MHzや0.5MHzなどとすることができる。これら周波数の増分は、測定データの精度に関係するものであり、被測定アンテナのアンテナ特性自体に直接影響を与えるものではない。
【0039】
(II)引っ張り強度試験
図6に示すような構成の引っ張り強度試験装置を用いて、平行型耐屈曲性ケーブルの引っ張り強度を測定した。
【0040】
(i)測定装置及び被測定ケーブル
引っ張り強度試験を行なうために、引っ張り強度測定機を用意した。
また、被測定ケーブルとして、図1に示す平行型耐屈曲性ケーブルAと、図11に示すケーブル300とを用意した。
(ii)測定結果
ケーブル300については、約3kg付近から伸びの前兆が発生した。そして、5kgの荷重をかけた時に、全体に伸びが発生した。この試験を複数本について行なうと、中には5kgで断線するものもあった。
一方、平行型耐屈曲性ケーブルAについては、5kgの荷重をかけても、伸びが発生しなかった。
このように、補強繊維線をアラミッド繊維で形成することで、引っ張り強度を向上させることができる。
【0041】
(III)屈曲特性試験
図7に示すような構成の屈曲試験装置700を用いて、平行型耐屈曲性ケーブルAの屈曲特性を測定した。
【0042】
(i)測定装置及び被測定ケーブル
屈曲特性試験を行なうために、屈曲試験装置700を用意した。
また、被測定ケーブルとして、図1に示す平行型耐屈曲性ケーブルAと、図11に示す従来のケーブル300と、図8に示すケーブルCとを用意した。
ケーブルCは、シールドに編組シールド14,24を用いるとともに、補強繊維線17,27にナイロンを用いた電線である。
【0043】
(ii)測定方法
この屈曲特性試験は、被測定ケーブルごとに行なった。
被測定ケーブルの上端は支持部材710で固定し、末端には重り720(荷重200g)を繋げた。回転体730を動かしながら、被測定ケーブルの断面の方向に左右90度に複数回屈曲させた。そして、断線に到るまでの屈曲回数を測定した。
【0044】
(iii)測定結果
断線に到るまでの屈曲回数は、次の通りとなった。(全回路を直列に接続して測定したとき)
従来のケーブル300 : 7000回
ケーブルC : 3000回
平行型耐屈曲性ケーブルA : 20000回
【0045】
従来のケーブル300は、内部の中心部にある電線の材質にポリアミドや綿糸を用いているため、伸びを生じ、断線し易かった。
ケーブルCは、編組シールドを用いているため、横巻シールドを用いた従来のケーブル300に比べて屈曲特性が悪くなった。
これらに対し、平行型耐屈曲性ケーブルAは、屈曲特性が非常に優れていることがわかった。これは、平行型耐屈曲性ケーブルAが、編組シールドを用いているものの、補強繊維線の材質がアラミッド繊維であるため、切れ易さが大幅に改善されたからである。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の平行型耐屈曲性ケーブル及びイヤホンアンテナによれば、編組シールドを用いたことで、アンテナ特性を向上できる。
また、補強繊維線にアラミッド繊維を用いたことで、編組シールドの切れ易さを解消できる。
さらに、アラミッド繊維を補強繊維とすることで、引っ張り強度を高めることができる。
【0047】
以上、本発明の平行型耐屈曲性ケーブル及びイヤホンアンテナの好ましい実施形態について説明したが、本発明に係る平行型耐屈曲性ケーブル及びイヤホンアンテナは上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、第一電線と第二電線とを組み合わせた平行型ケーブルを示したが、それら二本の電線の組み合わせに限るものではなく、一本又は三本以上の電線の組み合わせであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、絶縁電線の構造に関する発明であるため、絶縁電線やこれを用いた各種電線に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の平行型耐屈曲性ケーブルの構造を示す図であって、(i)は断面図、(ii)は側面図である。
【図2】本発明のイヤホンアンテナの構成を示す正面図である。
【図3】アンテナ特性を特性するための装置群の構成を示す概略図である。
【図4】従来のケーブルのアンテナ特性を示すグラフである。
【図5】本発明の平行型耐屈曲性ケーブルやイヤホンアンテナのアンテナ特性を示すグラフである。
【図6】引っ張り強度測定装置の構成を示す正面図である。
【図7】屈曲試験装置の構成を示す正面図である。
【図8】他のケーブルの構造を示す図であって、(i)は断面図、(ii)は側面図である。
【図9】従来のケーブルの構造を示す断面図である。
【図10】従来の他のケーブルの構造を示す断面図である。
【図11】従来の平行型ケーブルの構造を示す図であって、(i)は断面図、(ii)は側面図である。
【符号の説明】
【0050】
A 平行型耐屈曲性ケーブル
10 第一電線
11 補強繊維線(アラミッド繊維)
12 銅線
13 絶縁層
14 編組シールド
15 ジャケット材
16 導体
20 第二電線
21 補強繊維線(アラミッド繊維)
22 銅線
23 絶縁層
24 編組シールド
25 ジャケット材
26 導体
B イヤホンアンテナ
51 アンテナ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本の電線を平行に配した平行型耐屈曲性ケーブルであって、
第一の電線が、
補強繊維線の周辺に複数本の銅線を巻き付けて導体とし、この導体の周辺に絶縁層を形成して、この絶縁層の外方に編組シールドを配し、この編組シールドの外方にジャケット材を被覆し、
第二の電線が、
補強繊維線の周辺に複数本の銅線を巻き付けて導体とし、この導体の周辺に絶縁層を形成して芯絶縁電線とし、この芯絶縁電線を複数本配した状態の外方にシールドを配し、このシールドの外方にジャケット材を被覆した
ことを特徴とする平行型耐屈曲性ケーブル。
【請求項2】
前記補強繊維線の材料が、アラミッド繊維を含む
ことを特徴とする請求項1記載の平行型耐屈曲性ケーブル。
【請求項3】
前記ジャケット材が、ポリオレフィン及び/又はスチレン系樹脂を成分とする
ことを特徴とする請求項1又は2記載の平行型耐屈曲性ケーブル。
【請求項4】
一方の端部にコネクタ部を備え、他方の端部にスピーカ部を備え、これら両端部をケーブルで接続したイヤホンアンテナであって、
前記ケーブルの一部又は全部に、前記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の平行型耐屈曲性ケーブルを用い、この平行型耐屈曲性ケーブルを構成する電線の一つをアンテナ用電線とする
ことを特徴とするイヤホンアンテナ。
【請求項1】
二本の電線を平行に配した平行型耐屈曲性ケーブルであって、
第一の電線が、
補強繊維線の周辺に複数本の銅線を巻き付けて導体とし、この導体の周辺に絶縁層を形成して、この絶縁層の外方に編組シールドを配し、この編組シールドの外方にジャケット材を被覆し、
第二の電線が、
補強繊維線の周辺に複数本の銅線を巻き付けて導体とし、この導体の周辺に絶縁層を形成して芯絶縁電線とし、この芯絶縁電線を複数本配した状態の外方にシールドを配し、このシールドの外方にジャケット材を被覆した
ことを特徴とする平行型耐屈曲性ケーブル。
【請求項2】
前記補強繊維線の材料が、アラミッド繊維を含む
ことを特徴とする請求項1記載の平行型耐屈曲性ケーブル。
【請求項3】
前記ジャケット材が、ポリオレフィン及び/又はスチレン系樹脂を成分とする
ことを特徴とする請求項1又は2記載の平行型耐屈曲性ケーブル。
【請求項4】
一方の端部にコネクタ部を備え、他方の端部にスピーカ部を備え、これら両端部をケーブルで接続したイヤホンアンテナであって、
前記ケーブルの一部又は全部に、前記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の平行型耐屈曲性ケーブルを用い、この平行型耐屈曲性ケーブルを構成する電線の一つをアンテナ用電線とする
ことを特徴とするイヤホンアンテナ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−269799(P2008−269799A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106934(P2007−106934)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(507123958)LTKテクノロジーズ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(507123958)LTKテクノロジーズ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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