説明

平面アンテナ

【課題】より広い周波数帯で動作可能な小型の平面アンテナを提供すること。
【解決手段】低周波帯放射素子110は、第1の方向に延伸する第1の延伸部112と、第1の延伸部112の終端部から、第1の方向に略直交する第2の方向に延伸する第2の延伸部114と、第2の延伸部114の終端部から、第1の方向とは反対の第3の方向に延伸する第3の延伸部116とを有し、第2の延伸部114の幅は、他の延伸部よりも広い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信のための平面アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機等の通信端末が急速に普及しており、通信端末における通信機能の多様化等の理由から、複数の周波数帯で動作する通信端末が求められている。このような要求に応じて、従来、通信端末に搭載されることを目的とした、複数の周波数帯での動作が可能な様々なアンテナが考案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、モノポールアンテナによる動作帯域を広帯域化するための2つの放射素子、および使用する周波数帯に応じてこれら放射素子の容量性結合を制御する構成を備えたマルチバンドアンテナが開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、モノポールアンテナの広帯域化を図るために放射素子以外に無給電電極を装荷しかつその電極と放射素子間の距離を最適化したマルチバンドアンテナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−510900号公報
【特許文献2】特開2010−87752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年においては、携帯電話向けの無線通信規格の周波数帯がさらに多様化しており、それに伴い、通信端末においては、動作帯域を広帯域化および複数化することが要求されてきている。それだけでなく、通信端末本体が小型化してきているため、その構成部品も小型化せざるを得ない。
【0007】
また、上述したように動作帯域を広帯域化および複数化するためには、アンテナのサイズを大型化する必要があり、このようなアンテナの大型化は、小型の通信端末に搭載できなくなったり、コストが増加したりする等の問題が生じる要因となっている。
【0008】
例えば、上記特許文献2に開示されているマルチバンドアンテナは、使用する周波数帯を切り換えるためのスイッチや周波数選択回路等が設けられている。また、上記特許文献2には、無給電電極が放射素子以外にグラウンドから延伸していることが記載されている。
【0009】
このように、従来のアンテナは、動作帯域を広帯域化および複数化する等の目的のために、追加の構成要素を使用したり、少なくとも一部のサイズを大きくしたりする必要があるので、必然的に、その全体のサイズが大型なものとなる。換言すると、従来のアンテナでは、そのサイズを大型化せずには、動作帯域を広帯域化および複数化することができない。
【0010】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、より広い周波数帯で動作することができる小型の平面アンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するため、本発明に係る平面アンテナは、地板と、放射素子とを備えた平面アンテナであって、前記放射素子は、給電点から前記地板の外縁に沿って第1の方向に延伸する第1の延伸部と、前記第1の延伸部の終端部から、前記第1の方向に略直交する第2の方向に延伸する第2の延伸部と、前記第2の延伸部の終端部から、前記第1の方向とは反対の第3の方向に延伸する第3の延伸部とを有し、前記第2の延伸部の幅は、前記第1の延伸部の幅および前記第3の延伸部の幅よりも広いことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、第2の延伸部の幅を広くすることにより、動作帯域の帯域幅を拡大することができる。特に、第2の延伸部の幅を15mm以上とすることにより、700MHz〜970MHz帯のVSWRを3.5よりも小さくし、この周波数帯を動作帯域とすることができる。これにより、700MHz〜970MHz帯に含まれる、第3世代の携帯電話向けの各無線通信規格(GSM、E−GMS900等)の周波数帯、および第3.9世代の携帯電話向けの無線通信規格(LTE等)の周波数帯の各々で動作することができる。
【0013】
上記平面アンテナにおいて、前記第3の延伸部の長さをLとし、前記第2の延伸部の幅をWとする場合、W/Lが、0.18以上0.24以下に設定されていることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、特に、W/Lを0.18以上0.24以下とすることにより、動作帯域の中心周波数のシフトを±10%以内に抑え、かつ700MHz〜970MHz帯を動作帯域とするために必要な比帯域幅である、32%以上の比帯域幅を得ることができる。
【0015】
上記平面アンテナにおいて、前記地板は、前記放射素子と対向する部分に切り欠き部を有することが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、放射素子と地板とが互いに離間し、これらが必要以上に容量性結合をしてしまうことを防止することができる。この結果、インピーダンス整合を十分に取ることができる。
【0017】
上記平面アンテナにおいて、前記切り欠き部は、前記地板の前記切り欠き部における外縁が円弧状をなしていることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、切り欠き部の外縁の形状を円弧状とすることにより、動作帯域の帯域幅をより拡大することができる。
【0019】
上記平面アンテナにおいて、前記地板の前記切り欠き部における外縁と前記放射素子の対向する外縁との最大間隔をdとし、動作帯域の中心波長をλcとする場合、d/λcが、0.05〜0.4に設定されていることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、平面アンテナの種類、構造、形状、および寸法等問わず、d/λcが、0.05〜0.4に設定されていることにより、広い比帯域幅を得ることができる。すなわち、少なくともd/λcを0.05〜0.4とすれば、平面アンテナの種類、構造、形状、または寸法等の少なくともいずれか一つが異なる、様々な平面アンテナにおいて、動作帯域の帯域幅を拡大することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る平面アンテナによれば、放射素子の外形寸法に影響しない第2の延伸部の幅を広くすることによって、動作帯域を広帯域化することができる。特に、上記第2の延伸部の幅の拡大は、平面アンテナの外径寸法を大型化することなく実現できるので、本発明を採用することにより、より広い周波数帯で動作することができる小型の平面アンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に係る平面アンテナの構成を示す正面図である。
【図2】比較用に用いた平面アンテナの構成を示す正面図である。
【図3】図1に示した平面アンテナおよび図2に示した比較用の平面アンテナの各々のVSWR特性を示すグラフである。
【図4】図1に示した平面アンテナおよび図2に示した比較用の平面アンテナの各々の、入力インピーダンス特性を示すグラフである。
【図5】図1に示した平面アンテナおよび図2に示した比較用の平面アンテナの各々の、入力インピーダンス特性を示すグラフである。
【図6】図1に示した平面アンテナにおいて、第2の延伸の幅Wとして様々な寸法を適用した場合について、その各々のVSWR特性を示したグラフである。
【図7】図1に示した平面アンテナにおいて、第2の延伸部の幅Wとして様々な寸法を適用した場合について、その各々の低周波数帯側の動作帯域を示した表である。
【図8】図1に示した平面アンテナにおけるW/L比と比帯域幅との関係を示したグラフである。
【図9】図1に示した平面アンテナにおけるW/L比と動作帯域の中心周波数との関係を示したグラフである。
【図10】本実施形態の平面アンテナおよび比較用に用いた平面アンテナの構成を示す正面図である。
【図11】図10に示した平面アンテナの各々のVSWR特性を示すグラフである。
【図12】試験用に用いた平面アンテナの構成を示す正面図である。
【図13】図12に示した平面アンテナの各々の、規格化距離と動作帯域幅との関係を示すグラフである。
【図14】本実施形態に係る平面アンテナの放射指向性を示す表である。
【図15】本実施形態に係る平面アンテナの放射指向性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る実施形態について、図面を参照して以下に説明する。
【0024】
(平面アンテナ100の概要)
まず、実施形態に係る平面アンテナ100の概要について説明する。図1は、実施形態に係る平面アンテナ100の構成を示す正面図である。
【0025】
この平面アンテナ100は、高周波数帯と低周波数帯との双方の無線通信機能を有する携帯電話機等の通信端末において、これらの機能を実現するために搭載されるいわゆる平面逆F型アンテナである。
【0026】
この平面アンテナ100は、2つの放射素子を備えており、マルチバンドでの動作が可能となっている。
【0027】
特に、本実施形態の平面アンテナ100は、低周波数帯に関しては、700MHz〜970MHz帯での動作をカバーしており、この周波数帯に含まれる、例えば、第3世代の携帯電話向けの無線通信規格の各周波数帯、第3.9世代の携帯電話向けの無線通信規格の周波数帯(704〜777MHz帯)等の、各々の無線通信規格の周波数帯での動作が可能となっている。
【0028】
さらに、本実施形態の平面アンテナ100は、高周波数帯に関しては、1500MHz〜2200MHz帯での動作をカバーしており、この周波数帯に含まれる、例えば、第3世代の携帯電話向けの無線通信規格の各周波数帯、GPSの周波数帯(1550MHz)等の、各々の無線通信規格の周波数帯での動作が可能となっている。
【0029】
本実施形態の平面アンテナ100は、このように複数かつ広帯域の周波数帯での動作が可能であるにも関わらず、その寸法は、横83mm、縦64mm、厚さ(t)0.25mmとなっており、非常に小型かつ薄型なものとなっている。特に、この平面アンテナ100は、薄膜状の各構成要素が同一平面上に形成されているので、このように非常に薄型にすることが可能となっている。
【0030】
(平面アンテナ100の構成)
以下、図1を参照して、実施形態に係る平面アンテナ100の構成について具体的に説明する。なお、本明細書の説明における「横」、「右」、「左」、「上」、および「下」等の方向を示す各表現は、図1に示したとおりに、平面アンテナ100のx−y平面を正面視したときの方向を示すものである。例えば、左右方向(横方向)は、図1に示すx方向に対応し、上下方向(縦方向)は、図1に示すy方向に対応する。
【0031】
図1に示すように、この平面アンテナ100は、グラウンド板(地板)102、短絡部104、給電部106、低周波帯放射素子110、および高周波帯放射素子120を備えている。
【0032】
これら各構成要素は、薄膜状かつ導電性を有する第1の部材から形成されており、薄膜状の第2の部材(図示を省略する)によってその両面から挟み込まれることによって、平面アンテナ100を構成している。特に、本実施形態の平面アンテナ100は、上記第1の部材の一例として銅箔を採用しており、上記第2の部材の一例として誘電率がおよそ3のポリイミドフィルムを採用している。もちろん、同様の機能を実現することができるのであれば、これらの部材に他のどのような素材を用いてもよい。
【0033】
(グラウンド板102)
グラウンド板102は、概ね横長の長方形状を有している。特に、本実施形態の平面アンテナ100は、グラウンド板102の右上角部に切り欠き部102Aを有している。そして、この切り欠き部102Aは、円弧状の外縁を有する。切り欠き部とは、“矩形状のグラウンド板の角が切り欠かれたような形状をなしている”という意味であり、その形成方法を切り欠く方法に限定するものではない。
【0034】
(給電部106)
給電部106は、低周波帯放射素子110および高周波帯放射素子120に対して給電線からの給電をおこなうために設けられている。具体的には、給電部106は、給電点106Aおよび給電点106Bを有しており、これらを含む近傍の領域一帯を、給電部106と呼ぶ。
【0035】
給電点106Bは、グラウンド板102の横方向おいては、その中央付近に設けられており、グラウンド板102の縦方向においては、その上端部近傍に設けられている。一方、給電点106Aは、グラウンド板102の上方に位置する、短絡部104、低周波帯放射素子110、および高周波帯放射素子120が一体的に形成されている部材において、給電点106Bと対向する位置に設けられている。
【0036】
給電点106Aからは、以下に説明するとおり、低周波帯放射素子110および高周波帯放射素子120が延伸している。そして、給電点106Aには、給電線の一方の導線(例えば、同軸ケーブルの内側導体)が半田付け等によって接続される。さらに、給電点106Bには、給電線の他方の導線(例えば、同軸ケーブルの外側導体)が半田付け等によって接続される。
【0037】
(短絡部104)
短絡部104は、グラウンド板102と給電部106とを短絡し、平面アンテナ100の入力インピーダンスを変更(すなわち、リアクタンス成分をキャンセル)することにより、インピーダンス整合を容易に取ることを可能とするためのものである。具体的には、短絡部104は、グラウンド板102の左上角部から、上方向に略直線状に延伸した後に右方向に折れ曲がり、さらに、グラウンド板102の上辺と沿って、給電部106まで略直線状に延伸している。
【0038】
(低周波帯放射素子110)
低周波帯放射素子110は、主に低周波数帯で動作することを目的とした放射素子である。特に、本実施形態の低周波帯放射素子110は、700MHz〜970MHz帯での動作をカバーしており、この周波数帯に含まれる、例えば、第3世代の携帯電話向けの無線通信規格の各周波数帯、第3.9世代の携帯電話向けの無線通信規格の周波数帯(704〜777MHz帯)等の、各々の無線通信規格の周波数帯での動作が可能となっている。
【0039】
具体的には、低周波帯放射素子110は、第1の延伸部112、第2の延伸部114、および第3の延伸部116を有している。
【0040】
第1の延伸部112は、給電部106から、グラウンド102の上辺(外縁)に沿って右方向(第1の方向)に略直線状に延伸する部分である。
【0041】
第2の延伸部114は、第1の延伸部112の右端部(終端部)から上方向(第2の方向)に略直線状に延伸する部分である。この第2の延伸部は、低周波帯放射素子110の延伸する方向を右方向から左方向へ折り返す、折り返し部として機能する。
【0042】
第3の延伸部116は、第2の延伸部の上端部(終端部)から左方向(第3の方向)に略直線状に延伸する部分である。
【0043】
このように、低周波帯放射素子110は、第1の延伸部112によって給電部106から右方向に延伸した後に、第2の延伸部114によって上方向および左方向に折れ曲がり、さらに第3の延伸部116によって左方向に延伸することにより、いわゆる折り返し構造(横U字状)を成している。
【0044】
これにより、限られたスペース内で、低周波数帯での動作に必要な低周波帯放射素子110の長さ(概ね、波長λの1/4の長さ)を稼ぐことが可能となっている。また、2つの放射素子間の電磁結合により、高周波帯における動作帯域を所望の周波数帯へシフトすることが可能となっている。
【0045】
(高周波帯放射素子120)
高周波帯放射素子120は、主に高周波数帯で動作することを目的とした放射素子である。特に、本実施形態の高周波帯放射素子120は、1500MHz〜2200MHz帯での動作をカバーしており、この周波数帯に含まれる、例えば、第3世代の携帯電話向けの無線通信規格の各周波数帯、GPSの周波数帯(1550MHz)等の、各々の無線通信規格の周波数帯での動作が可能となっている。
【0046】
この高周波帯放射素子120は、低周波帯放射素子110の第3の延伸部116と、短絡部104の横方向に延伸する部分との間において、これらと略平行に、給電部106から左方向に略直線状に延伸している。
【0047】
この高周波帯放射素子120は、低周波帯放射素子110のような折り返し部を有しておらず、低周波帯放射素子110よりもその長さが短い。この長さは、上記高周波帯での動作に必要な長さ(概ね、波長λの1/4)となっている。
【0048】
(各構成要素の寸法)
本実施形態の平面アンテナ100が備える上記各構成要素の寸法は以下のとおりである。
【0049】
グラウンド板102は、概ね長方形状をなしており、その寸法は、縦48mm、横80mmとなっている。
【0050】
短絡部104は、所望の周波数でインピーダンス整合させるべく、横方向に直線状に延伸している部分の長さが45mmとなっている。
【0051】
低周波帯放射素子110において、第1の延伸部112は、長さが36mm、幅が6mmとなっている。また、第2の延伸部114は、長さが12mm、幅が15mmとなっている。そして、第3の延伸部116は、長さが83mm、幅が4mmとなっている。これにより、低周波帯放射素子110は、第3世代および第3.9世代の携帯電話向けの無線通信規格の周波数帯(704〜777MHz帯)での動作に対応すべく、その最大長が131mmとなっている。
【0052】
高周波帯放射素子120は、GSM、PCS、UMTS等の周波数帯(1550〜2200MHz)での動作に対応すべく、長さが28mm、幅が1.5mmとなっている。
【0053】
上記において、低周波帯放射素子110の第1の延伸部112は、その長さが36mmであると説明したが、これは第2の延伸部114の幅15mm分を含めた寸法であり、これを含めないのであれば、言うまでも無く、第1の延伸部112は、その長さが21mmとなる。
【0054】
同様に、第3の延伸部116は、その長さが83mmであるが、第2の延伸部114の幅15mm分を含めた寸法であり、これを含めないのであれば、第3の延伸部116は、言うまでも無く、その長さが68mmとなる。
【0055】
(形状および寸法の工夫)
ここで、本実施形態の平面アンテナ100は、複数かつ広帯域の周波数帯での動作を実現することを主目的として、その形状および寸法について、以下のような工夫をさらに施している。
【0056】
(1)低周波帯放射素子110が有する第2の延伸部114の幅Wが、低周波帯放射素子110が有する他の延伸部の幅よりも広くなっている。具体的には、第2の延伸部114の幅Wは、第1の延伸部112の幅(6mm)および第3の延伸部の幅(4mm)よりも広い、15mmとなっている。
【0057】
(2)グラウンド板102において、低周波帯放射素子110に対向する角部である右上角部に切り欠き部102Aを有する。
【0058】
(平面アンテナ100の特性)
ここで、図2〜5を参照して、本実施形態に係る平面アンテナ100の特性について説明する。ここでは、試験的に、図1に示した平面アンテナ100に加え、この平面アンテナ100とは一部の形状が異なる比較用の平面アンテナ302,304をそれぞれ用意した。そして、これらの平面アンテナを用いて、形状や寸法の違いにより、特性がどのように変化するかを観察した。
【0059】
図2は、比較用に用いた平面アンテナ302,304の構成を示す正面図である。図2(a)に示すように、平面アンテナ302は、第2の延伸部114に相当する部分の幅Wが15mmから2mmへと変更されている点で、本実施形態に係る平面アンテナ100と相違し、その他の点については本実施形態に係る平面アンテナ100と同一である。一方、図2(b)に示すように、平面アンテナ304は、グラウンド板の右上角部に切り欠き部が設けられていない点で、本実施形態に係る平面アンテナ100と相違し、その他の点については本実施形態に係る平面アンテナ100と同一である。
【0060】
図3は、図1に示した平面アンテナ100および図2に示した比較用の平面アンテナ302,304の各々のVSWR(Voltage Standing Wave Ratio:電圧定在波比)特性を示すグラフである。
【0061】
図4および図5は、図1に示した平面アンテナ100および図2に示した比較用の平面アンテナ302,304の各々の、入力インピーダンス特性を示すグラフである。
【0062】
特に、図4は、低周波数帯における入力インピーダンス特性を示し、図5は、高周波数帯における入力インピーダンス特性を示す。
【0063】
また、図4(a)および図5(a)は、入力インピーダンス特性のうちの抵抗成分Rinを示し、また、図4(b)および図5(b)は、入力インピーダンス特性のうちのリアクタンス成分Xinを示す。
【0064】
図3〜5に示す周波数帯のうち、特に、700MHz〜970MHz帯および1500MHz〜2200MHz帯は、本実施形態の平面アンテナ100が目的とする周波数帯である。これらの周波数帯が動作帯域となるためには、VSWRが所定の上限値よりも低くなる必要がある。本実施形態では、この上限値として「3.5」を用いている。すなわち、本実施形態の平面アンテナ100は、700MHz〜970MHz帯および1500MHz〜2200MHz帯の各々が動作帯域となるように、これらの周波数帯のVSWRが3.5以下となることが要求されている。
【0065】
これに応じて、本実施形態の平面アンテナ100は、図3に示すように、比較的その帯域幅が広い、700MHz〜970MHz帯の全域、および1500MHz〜2200MHz帯の全域において、VSWRが3.5よりも低く、すなわち、これらの各周波数帯が動作帯域となっている。
【0066】
これにより、この平面アンテナ100は、第3世代の携帯電話向けの無線通信規格の周波数帯としては、GSM方式の周波数帯(860MHz〜970MHz帯)、DCS方式の周波数帯(1710MHz〜1880MHz帯)、PCS(Personal Communication Service)方式の周波数帯(1859MHz〜1990MHz帯)、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)方式の周波数帯(1900MHz〜2170MHz帯)の各々を、動作帯域としてカバーすることが可能となっている。さらに、この平面アンテナ100は、第3.9世代の携帯電話向けの無線通信規格の周波数帯(704〜777MHz)、およびGPSの周波数帯(1550MHz)の各々についても、動作帯域としてカバーすることが可能となっている。
【0067】
一方、図3〜5によれば、比較用の平面アンテナ302は、本実施形態の平面アンテナ100に比べ、特に低周波数側において、動作帯域の帯域幅が極端に狭くなっていることが分かる。
【0068】
また、図3〜5によれば、比較用の平面アンテナ304は、本実施形態の平面アンテナ100に比べ、動作帯域が、本実施形態の平面アンテナ100が目的とする周波数帯よりも大きく高周波数側にシフトしていることが分かる。これは、平面アンテナ304が、本実施形態の平面アンテナ100のような切り欠き部をグラウンド板に有してなく、グラウンド板が必要以上に容量性結合してしまった結果、図4,5に示すように、リアクタンス成分Xinが大きくなり、インピーダンス整合が十分に取れなくなってしまったためである。
【0069】
図6は、図1に示した平面アンテナ100において、第2の延伸部114の幅Wとして様々な寸法を適用した場合について、その各々のVSWR特性を示したグラフである。
【0070】
図6に示す例では、第2の延伸部114の幅Wとして、1mm、5mm、10mm、15mm、および20mmを適用した場合のそれぞれについての、500MHz〜1000MHz帯、特に、本実施形態の平面アンテナ100が目的とする700MHz〜970MHz帯のVSWR特性を示している。
【0071】
図6に示すように、第2の延伸部114の幅Wとして、1mm、5mm、および10mmを適用した場合は、いずれも、本実施形態の平面アンテナ100が目的とする700MHz〜970MHz帯のうちの多くの帯域においてVSWRが3.5よりも大きくなっている。
【0072】
一方、平面アンテナ100の幅Wとして、15mm、および20mmを適用した場合は、いずれも、本実施形態の平面アンテナ100が目的とする700MHz〜970MHz帯の全域において、VSWRが3.5よりも低くなっている。
【0073】
このことから、第2の延伸部114の幅Wをより広くするほど、動作帯域の帯域幅がより広くなることが分かる。特に、第2の延伸部114の幅Wを15mm以上とすることで、所望の低周波数帯(700MHz〜970MHz帯)の全域を動作帯域とすることができることが分かる。
【0074】
(幅Wの規定および切り欠き部による効果)
以上説明したように、本実施形態の平面アンテナ100は、低周波帯放射素子110が有する第2の延伸部114の幅Wを、低周波帯放射素子110が有する他の延伸部の幅よりも広くし、特に、この幅Wを15mmとした。これにより、その帯域幅が比較的広い700MHz〜970MHz帯を、動作帯域とすることが可能となっている。
【0075】
また、本実施形態の平面アンテナ100は、低周波帯放射素子110とグラウンド板102とを離間させるべく、グラウンド板102の右上角部を切り欠いた。これにより、放射素子とグラウンド板102とが必要以上に容量性結合してしまうことを防止し、特に高周波数帯において、インピーダンス整合を十分に取ることができ、結果的に、その帯域幅が比較的広い1500MHz〜2200MHz帯を、さらに動作帯域とすることが可能となっている。
【0076】
これにより、本実施形態の平面アンテナ100は、今後、需要の増加が見込まれる、第3世代(GSM、DCS、E−GMS900、GSM1800、PCS1900、等)、第3.9世代(LTE等)、およびGPS等の様々な通信規格での動作をカバーすることが可能となっている。
【0077】
特に、本実施形態の平面アンテナ100は、第2の延伸部114の幅Wを拡大し、グラウンド板102に切り欠き部102Aを設けることによって、上記各周波数帯の動作帯域化を実現している。これにより、放射素子の数を増やしたり、追加の構成要素(例えば、使用する周波数帯を切り換えるためのスイッチや制御回路)を設けたり、上記幅W以外のサイズを大きくしたりする必要がないため、その外径寸法を大型化することなく、上記各周波数帯の動作帯域化を実現することができる。
【0078】
(W/L比の規定)
上記のとおり、本実施形態の平面アンテナ100は、第2の延伸部114の幅Wと、グラウンド板102の右上角部に切り欠き部102Aを設けることとが、それぞれ規定されている。本実施形態の平面アンテナ100は、さらに、動作帯域の帯域幅の拡大と、その中心周波数のシフトの抑制を目的として、低周波帯放射素子110の第3の延伸部116の長さLと、第2の延伸部114の幅Wとの比率(以下、「W/L比」と示す)が規定されている。
【0079】
図1に示したとおり、本実施形態の平面アンテナ100は、第3の延伸部の長さLが83mmとなっており、第2の延伸部114の幅Wが15mmとなっている。したがって、本実施形態の平面アンテナ100は、W/L比がおよそ0.18となっている。
【0080】
(W/L比の規定による効果)
図7は、図1に示した平面アンテナ100におけるW/L比と比帯域幅との関係を示したグラフである。図7において、L、W、W/L、fbw、fc/fc0は、それぞれ、第3の延伸部116の長さ、第2の延伸部114の幅、W/L比、比帯域幅、中心周波数のシフトの割合を示す。
【0081】
図8は、図1に示した平面アンテナ100におけるW/L比と比帯域幅との関係を示したグラフである。図8において、縦軸は比帯域幅を示し、横軸はW/L比を示す。
【0082】
図9は、図1に示した平面アンテナ100におけるW/L比と動作帯域の中心周波数との関係を示したグラフである。図9において、縦軸は中心周波数のシフトの割合を示し、横軸はW/L比を示す。
【0083】
ここでは、試験的に、図1に示した平面アンテナ100に対し、第2の延伸部114の幅Wのみを、変化させることによりW/L比を変化させ、比帯域幅および動作帯域の中心周波数のシフトの割合がどのように変化するかを観察した。図7、図8、および図9は、その結果を示すものである。比帯域幅は、以下数式(1)によって求められる。動作帯域の中心周波数のシフトの割合は、以下数式(2)によって求められる。
【0084】
比帯域幅=((動作帯域の上限周波数)−(動作帯域の下限周波数)/動作帯域の中心周波数)・・・(1)
あるW/L比の中心周波数のシフトの割合=(あるW/L比の動作帯域の中心周波数)/(所望の動作帯域の中心周波数)・・・(2)
図7および図8によれば、W/L比が大きくなるほど、比帯域幅が広がることが分かる。すなわち、第3の延伸部116の長さLを変えずに、第2の延伸部114の幅Wを広くするほど、比帯域幅が広がるということになる。
【0085】
例えば、本実施形態の平面アンテナ100(W/L比:およそ0.18)は、動作帯域の上限周波数が「990(MHz)」であり、動作帯域の下限周波数が「700(MHz)」であり、動作帯域の中心周波数(fc)が「845(MHz)」である。したがって、上記数式(1)より、その比帯域幅は、およそ「0.34」すなわち34%となる。
【0086】
すなわち、本実施形態の平面アンテナ100は、第2の延伸部114の幅Wを15mmとし、W/L比をおよそ0.18としたことによって、700MHz〜990MHz帯を動作帯域とし、34%という非常に大きな比帯域幅が得られているのである。
【0087】
一方、図9によれば、基準の中心周波数(fc0)を、LTEおよびGSMの周波数帯(704MHz〜970MHz帯)の中心周波数である「837(MHz)」とした場合、W/L比が概ね0.12〜0.29であれば、基準の中心周波数からのシフトの割合が±10%以内に収まることが分かる。
【0088】
例えば、本実施形態の平面アンテナ100は、W/L比をおよそ0.18としたことによって、動作帯域の中心周波数が845MHzである、700MHz〜990MHz帯を動作帯域化することが可能となっている。
【0089】
ここで、第2の延伸部114の幅Wを15mmから増加または減少した場合であっても、W/L比が概ね0.12〜0.29の範囲内であれば、基準の中心周波数からのシフトの割合を±10%以内に収めることができる。
【0090】
但し、W/L比が小さくなるほど比帯域幅が狭くなることが図8から分かるので、比帯域幅を減らしたくない場合は、W/L比が概ね0.18〜0.29の範囲内となるように、第2の延伸部114の幅Wの増加のみを認めることが好ましい。
【0091】
例えば、第2の延伸部114の幅Wを15mmから20mmへ変更し、W/L比が0.18から0.24へ変更された場合、動作帯域の中心周波数は845MHzから830MHzへ変更されるだけであり、中心周波数のシフトがほとんど発生しないうえに、比帯域幅は、660MHz〜1000MHz帯と広くなるので、700MHz〜970MHz帯を確実に動作帯域とすることができる。
【0092】
したがって、700MHz〜970MHz帯を確実に動作帯域とすることを望むのであれば、このように、W/L比を概ね0.18以上0.24以下の範囲内とすればよい。
【0093】
(切り欠き部の形状および寸法の変形例)
実施形態の平面アンテナ100においては、グラウンド板102の右上角部を円弧状に切り欠くこととしたが、他の形状に切り欠くようにしてもよい。以下、切り欠き部の形状および寸法を異ならせる変形例について説明する。
【0094】
ここでは、試験的に、図1に示した平面アンテナ100に加え、切り欠き部の形状および寸法が異なる比較用の平面アンテナ1004,1006,1008をそれぞれ用意した。そして、これらの平面アンテナを用いて、切り欠き部の形状および寸法の違いにより、特性がどのように変化するかを観察した。
【0095】
図10は、本実施形態の平面アンテナ100、および比較用に用いた平面アンテナ1004,1006,1008の構成を示す正面図である。平面アンテナ1004,1006,1008のそれぞれに関し、切り欠き部以外の形状および寸法は、本実施形態の平面アンテナ100と同一である。
【0096】
平面アンテナ100,1004,1006,1008は、いずれも、給電部よりも右側(低周波帯放射素子110が設けられている側)に切り欠き部が設けられている。そして、いずれの切り欠き部も、給電部から右側に離れるにしたがって、その外縁と低周波帯放射素子110の外縁との間隔が離間する形状を有している。
【0097】
特に、平面アンテナ100,1002,1004は、切り欠き部の外縁の形状が円弧状となっており、平面アンテナ1006は、切り欠き部の外縁の形状が直線状となっている。
【0098】
グラウンド板102と低周波帯放射素子110との最大間隔(具体的には、グラウンド板102の切り欠き部の外縁の下端部と、低周波帯放射素子110の対向する外縁との最大間隔)をdとすると、この最大間隔dは、各平面アンテナで異なっている。具体的には、各平面アンテナの最大間隔dを大きい順に示すと、平面アンテナ100、平面アンテナ1006、平面アンテナ1004、平面アンテナ1002となる。
【0099】
図11は、図10に示した平面アンテナの各々のVSWR特性を示すグラフである。
【0100】
ここで、本実施形態の平面アンテナ100が目的としている低周波数帯(700MHz〜970MHz帯)、高周波数帯(1500MHz〜2200MHz帯)について着目すると、本実施形態の平面アンテナ100においては、これらの周波数帯のVSWRが3.5以下となっているのはもちろんであるが、他の平面アンテナ1002,1004,1006のいずれにおいても、これらの周波数帯のVSWRが3.5以下となっている。
【0101】
このような結果から、上記各周波数帯に関していえば、いずれの平面アンテナにおいても、これらの周波数帯を動作帯域とするために、最大間隔dとして適切な値が設定されているといえる。また、切り欠き部の外縁の形状が直線状となっている平面アンテナ1006についても、これらの周波数帯を動作帯域とすることができていることから、切り欠き部の形状を円弧状にしなくとも、最大間隔dを適切な値にさえすれば、これらの周波数帯を動作帯域とすることができるといえる。
【0102】
一方、所望の高周波数帯(1500MHz〜2200MHz帯)よりもさらに高周波数側の2200MHz〜2500MHz帯について着目すると、切り欠き部を円弧状とした平面アンテナ100,1002,1004においては、VSWRが概ね3.5以下となっている。しかしながら、切り欠き部を直線状とした平面アンテナ1006においては、VSWRが3.5よりも大きくなっている。
【0103】
このことから、将来的に2200MHz〜2500MHz帯についても動作帯域とすることが望まれるような場合は、切り欠き部を円弧状とすることが好ましいといえる。すなわち、単に切り欠き部を設けるだけではなく、本実施形態の平面アンテナ100のように、切り欠き部を円弧状とすることによって、動作帯域の帯域幅を、さらに拡大することできるといえる。
【0104】
(他の種類のアンテナへの適用例)
実施形態では、本発明を適用する平面アンテナ100として逆F型アンテナを用いたが、本発明は、逆F型アンテナへの適用に限らない。以下、本発明を逆F型アンテナ以外のアンテナに適用した場合の適用例について説明する。
【0105】
ここでは、試験用の平面アンテナ1202,1204,1206,1208,1210をそれぞれ用意した。そして、これらの平面アンテナを用いて、アンテナの種類、寸法、および切り欠き部の形状の違いにより、特性がどのように変化するかを観察した。
【0106】
図12は、試験用に用いた平面アンテナ1202,1204,1206,1208,1210の構成を示す正面図である。図12(a)に示す平面アンテナ1202は、いわゆる逆F型アンテナであり、本実施形態の平面アンテナ100と概ね同様の形状および寸法を有している。一方、図12(b),(c),(d),(e)に示す平面アンテナ1204,1206,1208,1210は、いわゆるモノポールアンテナであり、それぞれ、寸法および/または切り欠き部の形状が異なる。
【0107】
平面アンテナ1202,1204,1206,1208,1210は、いずれも、給電部よりも右側に切り欠き部が設けられている。各々の切り欠き部は、給電部から右側に離れていくにしたがって、低周波帯放射素子110とグラウンド板102との間隔が広がっていく形状、または、低周波帯放射素子110とグラウンド板102との間隔が広がったまま一定の間隔を保つ形状を有している。
【0108】
例えば、平面アンテナ1202は、放射素子の横幅が85mm、グラウンド板の横幅が83mmとなっている。そして、切り欠き部の外縁の形状が円弧状となっている。
【0109】
また、平面アンテナ1204は、放射素子の横幅およびグラウンド板の横幅がともに45mmとなっている。そして、切り欠き部の外縁の形状が右下がりの斜め直線状となっており、切り欠き部によって切り欠かれた部分(すなわち、隙間部分)が略直角三角形状となっている。
【0110】
また、平面アンテナ1206は、放射素子の横幅およびグラウンド板の横幅がともに85mmとなっている。そして、切り欠き部の外縁の形状がL字状となっており、切り欠き部によって切り欠かれた部分(すなわち、隙間部分)の形状が略横長の長方形状となっている。
【0111】
また、平面アンテナ1208は、放射素子の横幅およびグラウンド板の横幅がともに45mmとなっている。そして、切り欠き部の外縁の形状がL字状となっており、切り欠き部によって切り欠かれた部分(すなわち、隙間部分)が略正方形状となっている。
【0112】
また、平面アンテナ1210は、放射素子の横幅が85mm、グラウンド板の横幅が83mmとなっている。そして、切り欠き部の外縁の形状が円弧状となっている。
【0113】
図13は、図12に示した平面アンテナの各々の、規格化距離と比帯域幅との関係を示すグラフである。規格化距離とは、d/λcによって求められる値であり、dは、切り欠き部の外縁と放射素子の対向する外縁との最大間隔を示し、λcは、これによって得られる動作帯域の中心波長を示す。例えば、本実施形態では、VSWRが3.5よりも低い周波数帯を動作帯域としているから、λcは、VSWRが3.5よりも低い周波数帯の中心波長となる。動作帯域とするVSWRの上限値は、「3.5」に限らず、当然、平面アンテナの仕様等によって異なる。したがって、λcは、VSWRが3.5よりも低い周波数帯の中心波長以外にもなり得る。例えば、動作帯域とするVSWRの上限値が「3.0」の場合、λcは、VSWRが3.0よりも低い周波数帯の中心波長となり、動作帯域とするVSWRの上限値が「2.5」の場合、λcは、VSWRが2.5よりも低い周波数帯の中心波長となる。
【0114】
図13によれば、図12に示したいずれの平面アンテナにおいても、規格化距離0.05〜0.4において、比帯域幅として概ね15%以上が得られていることが分かる。
【0115】
すなわち、本実施形態の平面アンテナ100は、平面アンテナの種類、各部の形状、および寸法などを変更したとしても、規格化距離が0.05〜0.4となるように上記最大間隔dを規定すれば、この変更の影響を大きく受けることなく、上記したように比較的広い比帯域幅を得られることができるということである。
【0116】
図14は、本実施形態に係る平面アンテナ100の放射指向性を示す表である。図15は、本実施形態に係る平面アンテナ100の放射指向性を示すグラフである。
【0117】
図14および図15のうち、(a)は、824MHzにおけるx−y平面の放射指向性を示す。また、(b)は、1575.4MHzにおけるx−y平面の放射指向性を示す。また、(c)は、2110MHzにおけるx−y平面の放射指向性を示す。特に、(a)〜(c)において、破線はx−y平面がなす角度方向φの電界成分Eφを表し、実線はz−x平面もしくはy−z平面がなす角度方向θの電界成分EΘを表し、点線はEφ,Eθ両成分の合成した電界(合成成分)を表す。
【0118】
図14および図15によれば、本実施形態の平面アンテナ100は、例えば、824MHzにおいては、上記合成成分において、最低でおよそ「−4.10(dbi)」、最高でおよそ「2.02(dbi)」の利得を得られることが分かる。
【0119】
また、1575.4MHzにおいては、上記合成成分において、最低でおよそ「−13.00(dbi)」、最高でおよそ「2.04(dbi)」の利得を得られることが分かる。
【0120】
また、2110MHzにおいては、上記合成成分において、最低でおよそ「−7.36(dbi)」、最高でおよそ「1.35(dbi)」の利得を得られることが分かる。
【0121】
このように、図14および図15によれば、本実施形態の平面アンテナ100は、824MHz、1575.4MHz、および2110MHzの各々の無線通信規格において、無指向に動作し、かつ十分な利得を得られることが分かる。
【0122】
(補足説明)
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0123】
実施形態では、本発明を、700MHz〜970MHz帯および1500MHz〜2200MHz帯の各々を目的の周波数帯とする平面アンテナ100に適用する例を説明した。そして、実施形態では、これらの周波数帯を動作帯域とするために、平面アンテナ100において、第2の延伸部114の幅W、切り欠き部102Aの形状、W/L比、規格化距離等を規定する例を説明した。
【0124】
本発明は、目的とする周波数帯が実施形態と異なる平面アンテナに対しても適用することができる。この場合、必要に応じて、上記パラメータのうちの少なくともいずれか一つを適切に変更することによって、目的とする周波数帯を動作帯域とするとよい。
【0125】
また、本発明は、アンテナの種類、構造、形状、寸法等が実施形態と異なる平面アンテナに対しても適用することができる。
【0126】
例えば、実施形態では、本発明を逆F型アンテナに適用する例を説明したが、これに限らず、本発明は、少なくとも折り返し構造を有する放射素子を備えた平面アンテナであれば、モノポールアンテナ等、様々な平面アンテナに適用することができる。
【0127】
また、実施形態では、本発明を2つの放射素子を備えた平面アンテナに適用する例を説明したが、これに限らず、本発明は、少なくとも折り返し構造を有する放射素子を含む1つ以上の放射素子を備えた平面アンテナであれば、様々な平面アンテナに適用することができる。
【0128】
いずれの場合も、必要に応じて、上記パラメータのうちの少なくともいずれか一つを適切に変更することによって、動作帯域を広帯域化しつつ、目的とする周波数帯を動作帯域とするとよい。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明に係る平面アンテナは、当該平面アンテナを介して無線通信をおこなう各種通信端末に利用可能であり、特に、利用可能な周波数帯が広帯域化しており、かつ小型化が要求される携帯電話機等の通信端末への利用が適している。
【符号の説明】
【0130】
100 平面アンテナ
102 グラウンド板(地板)
102A 切り欠き部
104 短絡部
106 給電部
106A 給電点
106B 給電点
110 低周波帯放射素子
112 第1の延伸部
114 第2の延伸部
116 第3の延伸部
120 高周波帯放射素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地板と、放射素子とを備えた平面アンテナであって、
前記放射素子は、
給電点から前記地板の外縁に沿って第1の方向に延伸する第1の延伸部と、
前記第1の延伸部の終端部から、前記第1の方向に略直交する第2の方向に延伸する第2の延伸部と、
前記第2の延伸部の終端部から、前記第1の方向とは反対の第3の方向に延伸する第3の延伸部と
を有し、
前記第2の延伸部の幅は、
前記第1の延伸部の幅および前記第3の延伸部の幅よりも広い
ことを特徴とする平面アンテナ。
【請求項2】
前記第3の延伸部の長さをLとし、前記第2の延伸部の幅をWとする場合、W/Lが、0.18以上0.24以下に設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の平面アンテナ。
【請求項3】
前記地板は、前記放射素子と対向する部分に切り欠き部を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の平面アンテナ。
【請求項4】
前記切り欠き部は、前記地板の前記切り欠き部における外縁が円弧状をなしている
ことを特徴とする請求項3に記載の平面アンテナ。
【請求項5】
前記地板の前記切り欠き部における外縁と前記放射素子の対向する外縁との最大間隔をdとし、動作帯域の中心波長をλcとする場合、d/λcが、0.05以上0.4以下に設定されている
ことを特徴とする請求項3または4に記載の平面アンテナ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2013−46394(P2013−46394A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185246(P2011−185246)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】