説明

平面入力装置

【課題】 ノイズ、温度、湿度などの環境変化の影響を受けることなく、座標位置や加重の大きさを高精度に検出できる平面入力装置を提供する。
【解決手段】 指などの操作体fが入力パネル11を加圧すると、入力パネル11と突起40を介して加圧されるプレート26とは一緒に変形する反面、共通電極23は変形しない。このため、第1の静電容量C1は増大するが、第2の静電容量C2は減少する。第1,第2の静電容量C1,C2は薄い板厚寸法内に重ねて配置されているため、温度や湿度などから受ける影響を小さくできる。またノイズは、第1,第2の静電容量C1,C2に対して同じように作用するが、直列接続された両者の容量分圧比から静電容量の変化量を求めることにより、これらの影響を無視することができる。このため、座標位置や加重の大きさを高精度に検出することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルなどの平面入力装置に係わり、特に静電容量式の平面入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、パネルの四隅に可変キャパシタを設けた力検知タッチセンサパッドに関する発明が記載されている。この力検知タッチセンサパッドでは、操作者がタッチ面を加圧すると、四隅に設けられた前記可変キャパシタの静電容量が変化する。各静電容量の変化を検出することにより、タッチ面に対する加圧の位置及び大きさを検出できるようになっている。
【特許文献1】特開平10−198503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載された発明の各可変キャパシタで形成される静電容量の変化量は、通常pF(=10−12F)ないしはfF(=10−15F)と極めて小さい。このため、ノイズや温度や湿度の変化などの影響を受けると、前記静電容量の変化量の検出精度が低下しやすいという問題がある。特に、四隅に設けられた可変キャパシタの誘電率は、温度の影響を受け易いため、同じ平面内でも場所ごとに変化しやすい。このため、従来においては温度補償回路や湿度補償回路を設ける必要があり、制御回路系が複雑化するとう問題がある。
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、異なる位置に配置された複数の可変キャパシタの静電容量の変化から座標位置や加重の大きさを検出することが可能な平面入力装置において、ノイズや温度などの環境変化の影響を受けることなく、高精度な検出を可能とした平面入力装置を提供することを目的としている。
【0005】
また本発明は、制御系の回路構成を簡易化できるようにした平面入力装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、入力された加圧力に応じて撓み変形する入力パネルと、前記入力パネルが設けられたケースと、前記入力パネルと前記ケースとの間に設けられた可変容量部と、を備えた平面入力装置において、
前記可変容量部は、前記入力パネルの下面側に設けられた上部電極と、前記ケースの上面側に設けられた下部電極と、前記上部電極と前記下部電極とが対向し合うスペースの中間位置に前記上部電極と前記下部電極の双方に対向させて配置された共通電極と、が設けられていることを特徴とするものである。
【0007】
上記においては、前記上部電極と前記共通電極との間に第1の静電容量が形成され、前記下部電極と前記共通電極との間に第2の静電容量が形成され、前記第1の静電容量と前記第2の静電容量との比から前記入力パネルに対する入力位置および加圧力の大きさが検出されるものである。
【0008】
本発明の平面入力装置では、第1の静電容量と第2の静電容量とは薄い板厚寸法内に重ねて配置されているため、温度や湿度から受ける影響を小さくできる。また温度や湿度、さらにはノイズなどの影響は、第1の静電容量と第2の静電容量に対して同じように作用するが、直列接続された第1の静電容量と第2の静電容量の容量分圧比から静電容量の変化量を求めることにより、これらの影響を無視できる程度に小さくすることが可能となる。すなわち、温度や湿度、さらにはノイズなどの影響を受け難くすることができ、従来必要とされていた温度補償回路や湿度補償回路を不要とすることができる。
【0009】
上記においては、前記ケースの上に可撓領域を介して前記下部電極を保持し、前記下部電極の上に下部絶縁層を介して前記共通電極を保持し、さらに前記共通電極上に上部絶縁層を介して前記上部電極を保持するスペーサが設けられているものが好ましい。
【0010】
上記手段では、上部電極と共通電極との間に第1の静電容量を形成し、共通電極と下部電極との間に第2の静電容量を形成することができる。
【0011】
さらに上記においては、前記共通電極には大穴が形成されており、この大穴内には前記上部電極と前記下部電極との対向距離を一定の寸法に維持する突起が配置されているものが好ましい。
【0012】
上記手段では、加圧力が与えられた入力パネルが変形すると、第1の静電容量の大きさを増大させることができるとともに第2の静電容量の大きさを減少させることができる。すなわち、第1の静電容量と第2の静電容量の大きさを相対的に変化させることができる。しかも、第1の静電容量と第2の静電容量との和については、ほぼ一定の大きさを維持することができる。よって、容量分割比から求める座標位置や加圧力の検出精度を高めることができる。
【0013】
また前記下部電極が可撓性を有するプレートに設けられているものが好ましい。
上記手段では、下部電極がプレートとともに一体となって変形することができる。
【0014】
上記においては、前記可変容量部で生成された静電容量を検出する検出回路が設けられており、前記検出回路は前記第1の静電容量からの出力と前記第2の静電容量からの出力との差動出力を検出するものが好ましい。
上記手段では、通常の出力に比較して、差動出力の大きさを2倍にすることができる。
【0015】
さらには、前記可変容量部が、前記入力パネルの周縁部に配置されているものが好ましい。
【0016】
上記手段では、入力パネルの中央部分に表示部材などを設けたときに、前記表示部材の視認性の低下を避けることができる。
【0017】
また前記入力パネルが4つの隅部を有しており、1つの前記隅部にはX方向を長手方向とするX可変容量部とY方向を長手方向とするY可変容量部が設けられているものが好ましい。
【0018】
上記手段では、操作体の互いに直交するX、Y方向への移動をそれぞれ高精度に検出することができる。
【0019】
操作体の座標位置は、例えば、前記入力パネルの、右上を第1の隅部と、右下を第2の隅部と、左下を第3の隅部と、左上を第4の隅部としたときに、
前記第1の隅部に設けられたX可変容量部の出力x1と前記第4の隅部に設けられたX可変容量部の出力x1’との比であるX方向の第1出力比と、
前記第3の隅部に設けられたX可変容量部の出力x2と前記第4の隅部に設けられたX可変容量部の出力との比x2’であるX方向の第2出力比と、
前記第1の隅部に設けられたY可変容量部の出力y1と前記第2の隅部に設けられたY可変容量部の出力y1’との比であるY方向の第1出力比と、
前記第3の隅部に設けられたY可変容量部の出力y2’と前記第4の隅部に設けられたY可変容量部の出力y2との比であるY方向の第2出力比と、
から前記入力位置の座標が検出されるものである。
【0020】
より具体的には、入力位置の座標を(X,Y)としたときに、
前記座標Xが、前記出力x1>前記出力x1’のときにはX=(x1’/x1+x2’/x2)/2として算出され、前記出力x1≦前記出力x1’のときにはX=(x1/x1’+x2/x2’)/2として算出され、
前記座標Yが、前記出力y1>前記出力y1’のときにはY=(y1’/y1+y2’/y2)/2として算出され、前記出力y1≦前記出力y1’のときにはY=(y1/y1’+y2/y2’)/2として算出される。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、薄い板厚内に第1,第2の静電容量を配置し、これら2つの静電容量の変化量から座標位置や加重の大きさを検出する構成としたことから、温度変化、湿度変化、さらには電磁ノイズなどの周囲の環境変化に強く、これらの影響を排除した検出精度の高い平面入力装置とすることができる。
【0022】
またX可変容量部およびY可変容量部を入力パネルの周辺部に配置し、中央部分への配置を避けることができるため、中央部分に表示部材を配置したときに前記表示部材の視認性の低下を避けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は本発明の実施の形態としての平面入力装置を示す斜視図、図2は図1に示す平面入力装置の平面図、図3Aおよび図3Bは図1に示す平面入力装置の一の隅部の断面図であり、図3Aは変形前の状態、図3Bは変形時の状態を示している。また図4は平面入力装置に設けられた各静電容量部の配置を示す平面図である。
【0024】
図1に本発明の実施の形態として示す平面入力装置10は、例えば携帯電話機、携帯型のオーディオプレーヤ、映像プレーヤ、PDAなどをはじめとする各種の電子機器に使用される。この平面入力装置10は、指やペンなどの操作体fを用いての座標入力は勿論のこと、前記操作体fによる加圧力の大きさをも検出することが可能とされている。
【0025】
図1および図2に示すように、平面入力装置10は最上部に入力パネル11を有している。また平面入力装置10の最下部にはケース12が設けられている。入力パネル11はPETやポリカーボネイトなど透明な合成樹脂で形成されている。また入力パネル11は可撓性を有しており、面に垂直方向の力を受けると前記図示Z方向に撓み変形する。
【0026】
本実施の形態に示す入力パネル11はX方向を長辺、Y方向に短辺を有する長方形をしている。そして、長方形からなる前記入力パネル11の四隅の領域には、第1ないし第4の隅部A,B,CおよびDが設けられている。以下の説明においては、図1において、図示右上の隅部を基準としてこれを第1の隅部Aとし、以下右回り方向に、右下を第2の隅部B、左下を第3の隅部C、左上を第4の隅部Dとして説明する。
【0027】
入力パネル11の外周側の縁部は前記ケース12の上縁端12aに支持されている。図3Aに示すように、ケース12の下端には断面L字形状で示される底部12bを有している。この底部12bの内側には開口部12Aが形成されている。そして、この開口部12Aには、後述するような複数の可変容量部20が設けられる。さらには各可変容量部20を入力パネル11の端部に配置することができるため、入力パネル11の透明性を確保することができる。よって、開口部12Aには、液晶表示装置などの表示部材を設けることも可能であり(図示せず)特に携帯電話機などに用いることが可能である。この場合には、前記表示部材の視認性の低下を避けることができる。
【0028】
図2および図3Aに示すように、前記可変容量部20は図示Z(+)方向の上層側から図示Z(−)方向の下層側へかけて順に、上部シート21、上部電極22、共通電極23、下部電極24、下部シート25およびプレート26を有している。
【0029】
上部シート21は、例えばポリイミドなどの絶縁フィルムにより平面「口」形状に形成されている。上部シート21は、接着剤などを介して入力パネル11の下面に固定されている。
【0030】
前記上部電極22は、前記上部シート21の下面に銅や銀などの導電材料により薄膜形成されている。この実施の形態では、前記上部電極22が前記上部シート21の8箇所の位置に形成されている。すなわち、図2に示すように、前記第1の隅部Aの近傍には、長手方向をX方向とする上部電極22x1と、同じく長手方向をY方向とする上部電極22y1とが設けられている。以下同様に、第2ないし第3の隅部B,C,Dの近傍には、長手方向をX方向とする上部電極22x2,22x3,22x4と、同じく長手方向をY方向とする上部電極22y2,22y3,22y4がそれぞれ設けられている。
【0031】
上部シート21の表面には複数のパターン線(図示せず)が配線されており、各パターン線の一端は各上部電極22x1,22x2,22x3,22x4,22y1,22y2,22y3,22y4にそれぞれ接続され、他端は上部シート21の一部に設けられた延出部21Aを介して外部に引き出されている。なお、入力パネル11が面と垂直な方向(Z方向)に撓み変形するときには、前記上部シート21および上部電極22も前記入力パネル11と一体となって変形することが可能である。
【0032】
共通電極23も薄い銅を主体とする導電性の板材で形成され、その外形は平面「口」形状である。共通電極23の一部には延出部23Aが形成されており、共通電極23はこの延出部23Aを介して外部の回路に接続される。
【0033】
下部電極24および下部シート25は、前記上部電極22および前記上部シート21と同様の構成である。すなわち、図2に示すように、下部電極24は、前記下部シート25の表面(図2ではZ(+)側の面)の8箇所の位置に設けられた下部電極24x1,24x2,24x3,24x4と下部部電極24y1,24y2,24y3,24y4とにより形成されている。また下部シート25には複数のパターン線(図示せず)と延出部25Aが設けられている。個々の下部電極は各パターン線および延出部25Aを介して外部に引き出されている。なお、下部電極24の面積と上部電極22の面積は等しい。
【0034】
プレート26は、面と垂直を成す方向(Z方向)に変形可能な可撓性を有する金属板または合成樹脂板なので形成され、その外形は平面「口」形状である。下部電極24を有する下部シート25は、前記プレート26の表面に接着剤などを介して固着される。このため、下部電極24はプレート26とともに一体で撓み変形することが可能な状態にある(図3B参照)。
【0035】
図3Aおよび図3Bに示すように、第1ないし第4の隅部AないしDにはスペーサ30がそれぞれ設けられている。前記スペーサ30は、直径の異なる底部31、中腹部32および頭部33が一体に形成されている。そして、底部31と前中腹部32との間には第1の段差部34が設けられ、中腹部32と頭部33との間には第2の段差部35が設けられている。
【0036】
図2に示すように、共通電極23、下部シート25およびプレート26のそれぞれ4つの隅部AないしDには、貫通孔23a、25aおよび26aがそれぞれ形成されている。第1ないし第4の隅部AないしDに設けられた各貫通孔21a,23a、25aおよび26aは、それぞれ図示Z方向に延びる同一の軸上に位置している。
【0037】
図3Aに示すように、下部シート25およびプレート26に形成された各貫通孔25a,26aの直径は、前記スペーサ30の底部31の直径より大きく且つ前記中腹部32の直径よりも小さい。また前記共通電極23に形成された各貫通孔23aの直径は、前記スペーサ30の中腹部32の直径よりも大きく且つ前記頭部33の直径よりも小さい。このため、下部シート25を有するプレート26はスペーサ30の第1の段差部34に支持され、共通電極23はスペーサ30の第2の段差部35に支持されている。
【0038】
図2および図3Bに示すように、上部電極22および下部電極24の近傍で、且つスペーサ30が設けられた位置と逆側となる位置には突起40が設けられている。前記突起40は、下部シート25の上に別体に形成された凸状の合成樹脂などを固着する構成でもよいし、前記プレート26の表面を、凸状にプレス加工することにより一体的に形成したものであってもよい。突起40がプレート26の表面に一体的に形成される構成の場合には、突起40は前記下部シート25に形成された貫通孔25bを通じて図示上方に露出される。
【0039】
図3Aに示すように、共通電極23には、突起40の直径よりも十分に大きな内径寸法を有する大穴23bが形成されている。突部40の先端側は、前記大穴23bを通じて図示上方に突出され、さらにその頂点41は前記上部シート21の下面に当接している。すなわち、上部電極22と下部電極24との間の対向距離H1、ひいては入力パネル11の下面とプレート26の上面との間の対向距離H2は、常に一定の寸法(突起40の高さ寸法)が維持される。
【0040】
この状態では、共通電極23が上部電極22および下部電極24の中間に挟み込まれた状態で対向配置される。そして、図3Aに示すように、プレート26の下部位置に空気層からなる可撓領域27が形成されている。また下部電極24と共通電極の下面との間には空気層からなる下部絶縁層28が形成され、上部電極22と共通電極23の上面との間には空気層からなる上部絶縁層29が形成される。プレート26は、可撓領域27および開口部12A内で弾性変形することが可能である(図3B参照)。
【0041】
図3Aに示す変形前の状態(初期状態)では、上部絶縁層29内に設けられた上部電極22と共通電極23の上面との間は対向距離d1に設定されている。また下部絶縁層28内に設けられた下部電極24と共通電極23の下面との間は対向距離d2に設定されている。なお、対向距離d1と対向距離d2とは、変形前の初期状態においてはd1=d2であることが好ましい。ただし、たとえd1≠d2であったとしてもキャリブレーションすることにより、d1=d2として取り扱うことが可能である。
【0042】
上部電極22と共通電極23の上面との間には第1の静電容量C1が形成され、下部電極24と共通電極23の下面との間には第2の静電容量C2が形成される。第1の静電容量C1の大きさは対向距離d1に反比例し、第2の静電容量C2の大きさは対向距離d2に反比例する。
【0043】
すなわち、前記上部絶縁層29および下部絶縁層28の誘電率(空気の誘電率)をεとし、上部電極22と共通電極23との対向面積および下部電極24と共通電極23との対向面積をそれぞれSとすると、第1,第2の静電容量C1,C2はそれぞれC1=ε(S/d1)、C2=ε(S/d2)である。
【0044】
第1の隅部Aの上部側においては、上部電極22x1と共通電極23との間に第1の静電容量C1xが形成され、上部電極22y1と共通電極23との間に第1の静電容量C1yが形成される。同様に、第1の隅部Aの下部側においては、下部電極24x1と共通電極23との間に第2の静電容量C2xが形成され、下部電極24y1と共通電極23との間に第2の静電容量C2yが形成される。すなわち、1つの隅部には第1の静電容量C1x、C1yと第2の静電容量C2xおよびC2yからなる4つの静電容量が形成される。したがって、第1ないし第4の隅部A,B,CおよびDからなる4箇所の隅部には、合計16の第1,第2の静電容量C1,C2が形成されることになる。
【0045】
そして、例えば第1の隅部Aでは、第1の静電容量C1xと第2の静電容量C2xとが1つのX可変容量部を形成し、同じく第1の静電容量C1yと第2の静電容量C2yとが1つのY可変容量部を形成している。そして、この平面入力装置10では、このようなX可変容量部およびY可変容量部が、第1ないし第4の隅部A,B,CおよびDにそれぞれ1組ずつ、合計8組設けられている。
【0046】
図3Bに示すように、入力パネル11が図示下方(Z(−)方向)に変形するとき、加圧力は入力パネル11の下面から突起40を介してプレート26に伝えられる。このため、プレート26は、前記入力パネル11の変形動作に追従して図示下方に変形させられる。突起40の周囲と貫通孔23aの縁部との間には十分な隙間余裕が形成されている。このため、前記加圧力は共通電極23には伝わらず、共通電極23は変形せずにそのままの状態が維持される。
【0047】
図5は、第1,第2の静電容量C1,C2を検出するための検出回路の原理を説明するためのブロック図である。なお、このブロック図は、複数のX可変容量部およびY可変容量部のうち、1つの可変容量部を構成する第1の静電容量C1と第2の静電容量C2の場合を示している。
【0048】
平面入力装置10は、第1ないし第4の隅部A,B,CおよびDに設けられた1組の可変容量部(第1の静電容量C1と第2の静電容量C2)20を検出するための検出回路50を有している。なお、可変容量部20を形成する個々の上部電極22、共通電極23および個々の下部電極24は、上部シート21、共通電極23、下部シート25の各延出部21A,23Aおよび25Aに形成された前記パターン線を介して前記検出回路50を構成する電子部品に接続されている。
【0049】
図5に示すように、前記検出回路50は発振部(OSC)51、可変容量部20、容量/電圧変換部(C/V)53、平滑部54およびアナログ/デジタル変換部(A/D)55を有している。
【0050】
発振部51は、所定の周波数からなるパルス信号S1を出力する発振器51Aと、パルス信号の位相を180度反転させた反転パルス信号を生成する反転回路(インバータ)51Bとを有している。この発振部51では、発振器51Aから出力されたパルス信号S1および反転回路51Bで反転させられた後の反転パルス信号S1バーの2つが生成され可変容量部20に与えられる。
【0051】
すなわち、一方のパルス信号S1は上部電極22と共通電極23との間に形成される各第1の静電容量C1の上部電極22に与えられ、他方の反転パルス信号S1バーは下部電極24と共通電極23との間に形成される各第2の静電容量C2の前記下部電極24に与えられる。
【0052】
可変容量部20は、第1の静電容量C1および第2の静電容量C2を有して形成される。なお、実際の可変容量部20は、第1ないし第4の隅部A,B,CおよびDに8組のX可変容量部とY可変容量部を有する。すなわち、図4に示すように、可変容量部20はX1可変容量部、X1’可変容量部、X2可変容量部、X2’可変容量部、Y1可変容量部、Y1’可変容量部、Y2可変容量部およびY2’可変容量部から構成される。
【0053】
容量/電圧変換部53は、第1の静電容量C1と第2の静電容量C2との容量分圧比((1/C2)/(1/C1+1/C2))を電圧に変換して出力VCとする。ここで変換後の出力VCは、図6のAおよびBに示すような前記パルス信号S1と反転パルス信号S1バーが、入力として第1の静電容量C1と第2の静電容量C2の両端にそれぞれ与えられることにより出力されるものであり、共通電極23の出力Vは例えば図6のCないしEに示すような波形となる。図6のAないしCは、容量/電圧変換部への入力と出力との関係を示す波形図であり、図6のAは一方の入力であるパルス信号S1、図6のBは他方の入力であるパルス信号S1バー、図6のCはC1=C2時における出力VC、図6のDは第1の静電容量C1と第2の静電容量C2との容量差ΔCが小さい場合(C1>C2時)における出力VC、図6のEは第1の静電容量C1と第2の静電容量C2との容量差ΔCが大きい場合(C1>>C2)における出力VCを示している。
【0054】
図6のAないしCでは最小電圧0[v]と最大電圧V[v]の中間である中点電圧V/2[v]を基準としており、後述するようにC1=C2のときに、前記出力VCが中点電圧V/2[v]となるように設定される(図6のC参照)。入力パネル11が加圧されて第1の静電容量C1と第2の静電容量C2との間に容量差(|C1−C2|)が生じると、出力VCは前記中点電圧V/2[v]を中心として上下に振れるパルス状の波形となる(図6のD参照)。そして、第1の静電容量C1と第2の静電容量C2との間の容量差(|C1−C2|)が大きくなると、出力VCは、その振幅が前記容量差(|C1−C2|)分に比例して大きくなる。
【0055】
平滑部54は、前記出力VCを積分する。これにより、測定点(検出の対象なった可変容量部)に加えられた加圧力の大きさが直流電圧(アナログ値)として算出される。
【0056】
アナログ/デジタル変換部55は、平滑部54から出力された直流電圧(アナログ値)を所定の分解能でデジタル信号D1に変換し、図示しない制御部に向けて出力する。
【0057】
ここで、図3Aに示すように、上部電極22と共通電極23との対向距離d1と下部電極24と共通電極23との対向距離d2とが一致(d1=d2)しているとして扱える変形前の初期状態においては、第1の静電容量C1と第2の静電容量C2の比が1:1の関係(C1=C2=Cの関係)が成立するため、前記共通電極23の出力VCは中点電圧V/2[v]となる。
【0058】
そして、図3Bに示すように加圧力が加えられて、前記入力パネル11とプレート26とが一緒に図示下方に変形すると、上部電極22と共通電極23との対向距離d1は狭まる反面、下部電極24と共通電極23との対向距離d2が広がる。よって、上部電極22と共通電極23との間の第1の静電容量C1は増大するが、下部電極24と共通電極23との間の第2の静電容量C2は減少する。
【0059】
前記上部電極22と下部電極24の間の対向距離H1は常に一定である。よって、第1の静電容量C1が最初の静電容量Cから変化量ΔCだけ増大すると、相対的に第2の静電容量C2は最初の静電容量Cから変化量ΔCだけ減少する。このため、共通電極23の出力VCは、直列接続されたコンデンサの容量分圧比として以下の数1で定められる。
【0060】
【数1】

【0061】
このため、上記検出回路50を用いて共通電極23の出力VCを検出することにより、第1の静電容量C1と第2の静電容量C2との変形の有無、すなわち入力パネル11に加圧力が加えられたか否かを検出することが可能である。
【0062】
次に、上記原理を用いて8組のX可変容量部およびY可変容量部を有する場合について説明する。
【0063】
図7は本発明の実施の形態に係る検出回路の構成を示すブロック図、図8のAないしEは加圧力が与えられた場合(C1>C2)における各出力を示しており、Aはパルス信号S1に対する出力VC、BはAを平滑した後の出力、Cは反転パルス信号S1バーに対する出力VC、DはCを平滑した後の出力、EはBとDとの差動出力を示す図である。
【0064】
図7に示す検出回路50Aは、図5同様の機能を有する発振部(OSC)51、可変容量部20、容量/電圧変換部(C/V)53、平滑部54およびアナログ/デジタル(A/D)変換部55を有している。
【0065】
ただし、図7に示す検出回路50Aは、以下の点で上記図5の回路と相違している。
この実施の形態は、可変容量部20が、X1可変容量部、X2可変容量部、X1’可変容量部、X2’可変容量部、およびY1可変容量部、Y2可変容量部、Y1’可変容量部、Y2’可変容量部からなる8組の可変容量部(X可変容量部とY可変容量部)を有するものとして構成されている。各可動容量部は、第1の静電容量C1と第2の静電容量C2とをそれぞれ有している。なお、X可変容量部とY可変容量部のそれぞれの配置は図4同様である。
【0066】
また各可変容量部の第1の静電容量C1を形成する各上部電極22と発振器51Aとの間に切換部材(マルチプレクサ)56Aが設けられ、各可変容量部の第2の静電容量C2を形成する各下部電極24と反転回路(インバータ)51Bとの間に切換部材56Bが設けられている。この実施の形態に示す切換部材(マルチプレクサ)56A,56Bは、1つの入力端子56aに対して8つの出力端子56bが設けられている。前記入力端子56aには発振器51Aまたは反転回路(インバータ)51Bが接続され、8つの出力端子56bには各可変容量部の第1の静電容量C1を形成する上部電極22または第2の静電容量C2を形成する上部電極24がそれぞれ接続されている。
【0067】
前記切換部材56A,56Bは制御端子(図示せず)を有している。前記切換部材56A,56Bは、図示しない制御部からの制御信号を受けると、入力端子56aと8つの出力端子56bのうちのいずれか一つとの間が前記制御信号に同期して接続される。入力端子56aと8つの出力端子56bとの間の接続の切り換えは、前記制御信号に基づいて所定の時間間隔で選択的に行われる。
【0068】
またこの実施の形態では、いずれかの可動容量部の第1の静電容量C1にパルス信号S1が入力されるときには、これと同じ可動容量部の第2の静電容量C2にパルス信号S1バーが入力されるように切換部材56Aと切換部材56Bとが同期して駆動される。さらに1つの入力端子56aと8つの出力端子56bとの間の切り換え動作は、例えばX1可変容量部、X2可変容量部、X1’可変容量部、X2’可変容量部、およびY1可変容量部、Y2可変容量部、Y1’可変容量部、Y2’可変容量部からなる順番が、所定の時間間隔で繰り返される。
【0069】
すなわち、X1可変容量部の第1の静電容量C1に一定時間T(1周期に相当)だけパルス信号S1が与えられるときには、X1可変容量部の第2の静電容量C2に反転パルス信号S1バーが同時に与えられる。そして、次の1周期にX2可変容量部の第1の静電容量C1にパルス信号S1が与えられるときには、同時に第2の静電容量C2に反転パルス信号S1バーが与えられる。さらに次の1周期にX1’可変容量部の第1の静電容量C1にパルス信号S1が与えられるときには、同時にX1’可変容量部の第1の第2の静電容量C2に反転パルス信号S1バーが与えられる。そして、このような処理動作がY2’可変容量部まで繰り返されると、再び最初に戻ってX1可変容量部に対し同様の処理動作が行われる。
【0070】
したがって、8つの可変容量部に対する出力VCが、一定時間T(1周期)ごとに共通電極23を介して容量/電圧変換部53に次々に出力される。
【0071】
また本実施の形態では、2つの容量/電圧変換部53A,53Bが設けられている。さらにこれらに続いて2つの平滑部54A,54Bがそれぞれ設けられている。平滑部54A,54Bでは、容量/電圧変換部53A,53Bで変換された変換後の電圧を、それぞれパルス信号の1周期の時間で平滑化した直流電圧にそれぞれ変換する。
【0072】
前記平滑部54A,54Bの後段には差動増幅部58が設けられている。差動増幅部58は、平滑部54Aの出力と平滑部54Bの出力との差信号を生成するとともに必要に応じて増幅して出力(差動出力)する。そして、アナログ/デジタル変換部55は前記差動出力をデジタル信号D1に変換する。
【0073】
図7に示すように、共通電極23と一方の容量/電圧変換部53Aとの間にはパルス信号S1によってオン・オフ制御されるスイッチ部57Aが設けられ、共通電極23と他方の容量/電圧変換部53Bとの間には反転パルス信号S1バーによってオン・オフ制御されるスイッチ部57Bが設けられている。前記スイッチ部57Aとスイッチ部57Bはともに、パルス信号S1又は反転パルス信号S1バーが「1」のときにオン状態に設定され、「0」のときにオフ状態に設定される。前記パルス信号S1と反転パルス信号S1バーとは、互いに位相が180度異なる。このため、前記パルス信号S1が「1」のとき(この間、反転パルス信号S1バーは「0」)にはスイッチ部57Aはオン、スイッチ部57Bはオフであり、前記パルス信号S1が「0」のとき(この間、反転パルス信号S1バーは「1」)にはスイッチ部57Aはオフ、スイッチ部57Bはオンである。すなわち、両スイッチ部57A,57Bは交互に駆動させられる。
【0074】
このため、パルス信号S1が「1」(反転パルス信号S1バーは「0」)の区間(1周期の前半T/2)、スイッチ部57Aはオン状態(スイッチ部57Bはオフ状態)に設定される。この間、前記切換部材56Aにおいて選択されたいずれかの可変容量部の出力が、一方の容量/電圧変換部53Aで電圧VC1に変換され(図8のA参照)る。さらに電圧VC1は一方の平滑部54Aにおいて前半の半周期T/2で平滑され、これを1周期T分とする直流電圧V/2+ΔV1に変換される(図8のB参照)。
【0075】
次に、パルス信号S1バーが「0」に反転(反転パルス信号S1バーは「1」に反転)した区間(1周期の後半T/2)においては、スイッチ部57Bがオン状態(スイッチ部57Aはオフ状態)に設定される。そして、この間、前記同じ可変容量部の出力が、他方の容量/電圧変換部53Bで電圧VC2に変換され(図8のC参照)。さらに電圧VC2は他方の平滑部54Bにおいて後半の半周期T/2で平滑され、1周期T分に相当する区間として直流電圧V/2−ΔV2に変換される(図8のD参照)。
【0076】
差動増幅部58では、平滑部54Aで直流電圧に変換された電圧V/2+ΔV1と、平滑部54Bで直流電圧に変換された電圧V/2−ΔV2との電圧差2ΔV(=ΔV1−(−ΔV2),ただしΔV1=ΔV2=ΔV)が求められ、さらに必要に応じて増幅される(図8E参照)。
【0077】
ここで求められた電圧差2ΔVが1つの可変容量部の変化量ΔCに相当し、これがこの可変容量部を有する測定点において検出された加圧力の大きさとなる。
【0078】
そして、前記電圧差2ΔVを、X1可変容量部、X2可変容量部、X1’可変容量部、X2’可変容量部、およびY1可変容量部、Y2可変容量部、Y1’可変容量部、Y2’可変容量部について順番に電圧差2ΔV(変化量ΔC)を検出することにより、個々の可変容量部に分散して与えられた各加圧力ΔFの大きさがそれぞれ求められる。そして、すべての測定点における加圧力ΔF、すなわち電圧差2ΔVを加算することにより、入力パネル11全体に与えられた加圧力(操作体からの加圧力)F(=ΣΔF)を求めることができる。
【0079】
このように、本願発明では各測定点の加圧力ΔFの大きさ(加圧量)を、第1の静電容量C1と第2の静電容量C2との容量分圧比と1周期内の電圧差2ΔV(差動出力)から求めることができる。このため、例えインパルス状のノイズが発生しても、これらのノイズは第1の静電容量C1と第2の静電容量C2の双方に同時に重畳することになる。そして、第1の静電容量C1と第2の静電容量C2との容量分圧比を求めることにより、前記ノイズを相殺することができる。すなわち、ノイズの影響を受け難い平面入力装置とすることができる。
【0080】
また第1の静電容量C1と第2の静電容量C2とは、数mm以内の薄い高さ寸法内に重なる状態で近接配置される。このため、1つの静電容量部内で、第1の静電容量C1と第2の静電容量C2を形成する誘電率εが温度や湿度による環境変化などの影響を受けて変化したとしても、前記第1の静電容量C1と前記第2の静電容量C2との容量差(|C1−C2|)を差動出力として求めることによってこれらの影響をキャンセルすることができる。
【0081】
しかも、本願発明では、各静電容量部における静電容量Cの変化量ΔCを検出する構成である。このため、例え前記第1ないし第4の隅部A,B,CおよびDの場所ごとに誘電率εの大きさが相違したとしても、検出される静電容量Cの変化量ΔCについては、前記場所ごとの誘電率εの相違による影響を受け難くすることができる。すなわち、温度や湿度による環境変化の影響を受け難く、検出精度の高い平面入力装置とすることができる。
【0082】
次に、上記構成の平面入力装置を用いた座標位置の検出方法について説明する。
図9は本発明における平面入力装置を用いて加重位置の中心点と4つの可変容量部に形成される静電容量C1との関係を示すグラフである。
【0083】
入力パネル11を加圧する操作体fの座標位置の検出は、上記のX1可変容量部、X2可変容量部、X1’可変容量部、X2’可変容量部、Y1可変容量部、Y2可変容量部、Y1’可変容量部およびY2’可変容量部から出力される各出力のバランス、すなわち操作体fが各可変容量部に与える加圧力ΔFのバランスを考慮して求められる。
【0084】
図9は、入力パネル11の中心点を通る縦横の2本の仮想的な中央線ML,MSを用いて4つのエリアRa、Rb、RcおよびRdに4分割したときの(図4参照)、第1の隅部Aを含むエリアRaについての結果を示している。また図9は入力パネル11の表面を、指やペン先などの操作体fを用いて一定の加重(例えば100gf)で加圧した場合である。そして、図4に示すように操作体fを移動直線sm1に沿って、X(+)側の端部から中心部OまでX(−)方向に所定のステップ(例えば5mm単位)で間欠的に移動させたときに、前記操作体fの各加重位置a0ないしanと、第1ないし第4の隅部AないしDに設けられたY1可変容量部、Y1’可変容量部、Y2可変容量部およびY2’可変容量部を構成する各第1の静電容量の大きさとの関係を示している。
【0085】
図4に示すものでは、操作体fは、エリアRa内を右端側の加重位置(始点)a0と中心部O側の加重位置(終点)anとの間をX(−)方向に移動している。図9に示すように、操作体fが加重位置(始点)a0に位置するときには、前記加重位置(始点)a0での変形量は大きく、加重位置(終点)an側の変形量は小さい。このため、加重位置(始点)a0側に位置するY1可変容量部およびY1’可変容量部の出力は大きく、加重位置(終点)an側のY2可変容量部およびY2’可変容量部の出力は小さい。
【0086】
一方、操作体fが加重位置(終点)anに近づくと、前記加重位置(始点)a0での変形量は徐々に小さくなり、加重位置(終点)anでの変形量は徐々に大きくなる。このため、加重位置(始点)a0側に位置するY1可変容量部およびY1’可変容量部の出力が徐々に小さくなる代わりに、加重位置(終点)an側のY2可変容量部およびY2’可変容量部の出力が徐々に大きくなる。
【0087】
すなわち、図9に示すように、Y1可変容量部およびY1’可変容量部の静電容量は操作体fの移動に伴って減少する傾向を示すが、Y2可変容量部およびY2’可変容量部は前記操作体fの移動に伴って静電容量が増加する傾向を示す。
【0088】
同時に、図4に示すものでは操作体fは横の中心線MSより上側(X(+))の位置で、端部側の始点a0と中心部側の終点anとの間をX(−)方向に移動している。このため、図9に示すように。このときの静電容量の大きさは、操作体fと同じ上側(X(+))に位置するY1可変容量部およびY2可変容量部の方が、操作体fとは異なる下側(X(−))に位置するY1’可変容量部およびY2’可変容量部よりも大きな値を示す。
【0089】
なお、操作体fがその他のエリアRb、RcおよびRdにおいて、上記同様に入力パネル11の端部側から中心部に向かってX方向に移動する場合には、Y1可変容量部、Y1’可変容量部、Y2可変容量部およびY2’可変容量部と検出回路50を用いて検出することによりエリアRaの場合同様の結果を得ることができる。
【0090】
また操作体fがエリアRa、Rb、RcおよびRdにおいて、入力パネル11の端部側から中心部に向かってY方向に移動する場合には、X1可変容量部、X1’可変容量部、X2可変容量部およびX2’可変容量部と検出回路50を用いて検出することにより、上記同様の結果を得る。
【0091】
このため、操作体fの座標位置は以下のように計算方法を用いることにより求めることができる。
【0092】
まず、第1の隅部Aに設けられたY1可変容量部の出力をy1、第2の隅部Bに設けられたY’1可変容量部の出力をy1’、第3の隅部Cに設けられたY’2可変容量部の出力をy’2、前記第4の隅部Dに設けられたY2可変容量部の出力をy2’とする。
【0093】
また第1の隅部Aに設けられたX1可変容量部の出力をx1、第2の隅部Bに設けられたX2可変容量部の出力をx2、第3の隅部Cに設けられたX2’可変容量部の出力をx2’、前記第4の隅部Dに設けられたX1’可変容量部の出力をx1’とする。そして、操作体fの加重位置の座標を(X,Y)とすると、前記座標(X,Y)は以下数式より求まる。
【0094】
【数2】

【0095】
【数3】

【0096】
【数4】

【0097】
【数5】

【0098】
なお、操作体fが第2の隅部Bを含むエリア内Rbにおいて、上記同様に右側の端部側から中心部に向かってX(−)方向に移動する場合のグラフは、図9のグラフにおいて、出力y1と出力y1’とを交換し、出力y2と出力y2’とを交換したものとなる。
【0099】
また操作体fが第4の隅部Dを含むエリア内Rdにおいて、上記同様に左側の端部側から中心部に向かってX(+)方向に移動する場合には、出力y1と出力y1’については端部側から中心部に向かうに伴って容量が増大する右肩上がりのグラフとなり、出力y2と出力y2’については右肩下がりのグラフとなる。さらに第3の隅部Cを含むエリア内Rcについては、前記エリアRbとエリアRdとを合わせたようなグラフとなる。
【0100】
上記実施の形態では、入力パネルの各隅部に2組の可変容量部づつ、4つの隅部に合計8の可変容量部を配置して座標位置および加圧力を検出する平面入力装置10を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、各隅部に1組の可変容量部を備える構成であってもよい。ただし、各隅部に2組の可変容量部を備えた構成の方が検出精度を高める上では有利である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施の形態としての平面入力装置を示す斜視図、
【図2】図1に示す平面入力装置の平面図、
【図3A】図1に示す平面入力装置の一の隅部の変形前の状態を示す断面図、
【図3B】図1に示す平面入力装置の一の隅部の変形後の状態を示す断面図、
【図4】平面入力装置に設けられた各静電容量部の配置を示す平面図、
【図5】第1,第2の静電容量C1,C2を検出するための検出回路の原理を説明するためのブロック図、
【図6】容量/電圧変換部への入力と出力との関係を示す波形図であり、Aは一方の入力であるパルス信号S1、Bは他方の入力であるパルス信号S1バー、CはC1=C2時における出力VC、Dは第1の静電容量C1と第2の静電容量C2との容量差ΔCが小さい場合(C1>C2時)における出力VC、Eは第1の静電容量C1と第2の静電容量C2との容量差ΔCが大きい場合(C1>>C2)における出力VC、
【図7】本発明の実施の形態に係る検出回路の構成を示すブロック図、
【図8】加圧力が与えられた場合(C1>C2)における各出力を示しており、Aはパルス信号S1に対する出力VC、BはAを平滑した後の出力、Cは反転パルス信号S1バーに対する出力VC、DはCを平滑した後の出力、EはBとDとの差動出力を示す図、
【図9】本発明における平面入力装置を用いて加重位置の中心点と4つの可変容量部に形成される静電容量C1との関係を示すグラフ、
【符号の説明】
【0102】
10 平面入力装置
11 入力パネル
12 ケース
20 可変容量部
21 上部シート
22 上部電極
23 共通電極
24 下部電極
25 下部シート
26 プレート
27 可撓領域
28 下部絶縁層
29 上部絶縁層
30 スペーサ
40 突起
50,50A 検出回路
51 発振部(OSC)
53,53A,53B 容量/電圧変換部(C/V)
54,54A,54B 平滑部
55 アナログ/デジタル変換部(A/D)
56A 切換部材(マルチプレクサ)
57A,57B スイッチ部
58 差動増幅部
A 第1の隅部
B 第2の隅部
C 第3の隅部
D 第4の隅部
f 操作体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された加圧力に応じて撓み変形する入力パネルと、前記入力パネルが設けられたケースと、前記入力パネルと前記ケースとの間に設けられた可変容量部と、を備えた平面入力装置において、
前記可変容量部は、前記入力パネルの下面側に設けられた上部電極と、前記ケースの上面側に設けられた下部電極と、前記上部電極と前記下部電極とが対向し合うスペースの中間位置に前記上部電極と前記下部電極の双方に対向させて配置された共通電極と、が設けられていることを特徴とする平面入力装置。
【請求項2】
前記上部電極と前記共通電極との間に第1の静電容量が形成され、前記下部電極と前記共通電極との間に第2の静電容量が形成され、前記第1の静電容量と前記第2の静電容量との比から前記入力パネルに対する入力位置および加圧力の大きさが検出される請求項1記載の平面入力装置。
【請求項3】
前記ケースの上に可撓領域を介して前記下部電極を保持し、前記下部電極の上に下部絶縁層を介して前記共通電極を保持し、さらに前記共通電極上に上部絶縁層を介して前記上部電極を保持するスペーサが設けられている請求項1または2記載の平面入力装置。
【請求項4】
前記共通電極には大穴が形成されており、この大穴内には前記上部電極と前記下部電極との対向距離を一定の寸法に維持する突起が配置されている請求項1ないし3のいずれかに記載の平面入力装置。
【請求項5】
前記下部電極が可撓性を有するプレートに設けられている請求項3または4記載の平面入力装置。
【請求項6】
前記可変容量部で生成された静電容量を検出する検出回路が設けられており、前記検出回路は前記第1の静電容量からの出力と前記第2の静電容量からの出力との差動出力を検出するものである請求項2ないし5のいずれかに記載の平面入力装置。
【請求項7】
前記可変容量部が、前記入力パネルの周縁部に配置されている請求項1ないし6のいずれかに記載の平面入力装置。
【請求項8】
前記入力パネルが4つの隅部を有しており、1つの前記隅部にはX方向を長手方向とするX可変容量部とY方向を長手方向とするY可変容量部が設けられている請求項1ないし7記載の平面入力装置。
【請求項9】
前記入力パネルの、右上を第1の隅部と、右下を第2の隅部と、左下を第3の隅部と、左上を第4の隅部としたときに、
前記第1の隅部に設けられたX可変容量部の出力x1と前記第4の隅部に設けられたX可変容量部の出力x1’との比であるX方向の第1出力比と、
前記第3の隅部に設けられたX可変容量部の出力x2と前記第4の隅部に設けられたX可変容量部の出力との比x2’であるX方向の第2出力比と、
前記第1の隅部に設けられたY可変容量部の出力y1と前記第2の隅部に設けられたY可変容量部の出力y1’との比であるY方向の第1出力比と、
前記第3の隅部に設けられたY可変容量部の出力y2’と前記第4の隅部に設けられたY可変容量部の出力y2との比であるY方向の第2出力比と、
から前記入力位置の座標が検出される請求項2ないし8のいずれかに記載の平面入力装置。
【請求項10】
入力位置の座標を(X,Y)としたときに、
前記座標Xが、前記出力x1>前記出力x1’のときにはX=(x1’/x1+x2’/x2)/2として算出され、前記出力x1≦前記出力x1’のときにはX=(x1/x1’+x2/x2’)/2として算出され、
前記座標Yが、前記出力y1>前記出力y1’のときにはY=(y1’/y1+y2’/y2)/2として算出され、前記出力y1≦前記出力y1’のときにはY=(y1/y1’+y2/y2’)/2として算出される請求項9記載の記載の平面入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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