平面型ヒートパイプ
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor) 、IPM(Intelligent Power Module) 、サイリスター等のパワー素子(トランジスタ)や整流素子等の発熱電子部品を冷却するのに適した、小型で、製造が容易で、しかも伝熱性に優れた平面型ヒートパイプに関する。
【0002】
【従来の技術】 近年、電子機器や電力機器等に使用されるパワーエレクトロニクス関連の電子部品の有力な冷却手段として、ロールボンドパネルが提案されている。前記ロールボンドパネルは、図15(a) 、(b) に示すように、2枚のアルミニウムプレート80、81を熱移動用回路25とする部分に剥離剤を介在させて熱圧着し、その後、剥離剤部分を空気圧により膨らませて製造されている。このため、前記ロールボンドパネルの形状は、熱移動用回路25部分が突出したものとなり、前記ロールボンドパネルの表面は凹凸状になる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】 このため、前記ロールボンドパネルには、次のような問題があった。熱移動用回路25を空気圧で膨らませて形成するため、回路25の寸法精度を高くできない。又熱移動用回路25を薄く形成するのが困難である。熱圧着させるため、グルーブ(細溝)やウィックを設けることができず、高い熱伝導性が得られない。アルミニウムプレート80、81の表面が凹凸状のため、放熱性向上に有益なフィンの取付けが困難である。
【0004】 そこで、本発明は任意の形状の熱移動用回路を高精度に形成でき、薄型化が可能で、グルーブやウィックを設けることができ、フィンの取付けが容易な平面型ヒートパイプの提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決する手段】 第1の発明は、両面接着型のブレージングシートに複数の長穴を設け、該長穴を隔てる桟には、この桟を横断する窪みを設け、このブレージングシートの表面および裏面にアルミニウムプレートを重ねて所定温度に加熱し、三者を気密にろう付けしてなることを特徴とする平面型ヒートパイプである。
【0006】 第2の発明は、両面接着型のブレージングシートに複数の凹凸を設け、該凹凸で形成される空間をこの凹凸の壁面に設けた貫通穴で連結するように形成し、このブレージングシートの表面および裏面にアルミニウムプレートを重ね、必要により表裏のアルミニウムプレートの周縁部に周縁部材を配置して所定温度に加熱し、三者を気密にろう付けしてなることを特徴とする平面型ヒートパイプである。
【0007】 第3の発明は、裏面を構成するアルミニウムプレート上に該アルミニウムプレートの周縁部をろう付けする周縁部材と、該周縁部材により形成される窪みに設置する複数の支持部材とを両面接着型のブレージングシートにより形成して載置し、その上に表面を構成するアルミニウムプレートを重ねて所定温度に加熱し、両面接着型のブレージングシート製部材を介して表裏プレートを気密にろう付けしてなることを特徴とする平面型ヒートパイプである。
【0008】 前記第1乃至第3の発明において、表面および裏面のアルミニウムプレートの内面にグルーブを形成することにより、より熱効率に優れた平面型ヒートパイプを提供できる。
【0009】
【発明の実施の形態】 本発明の平面型ヒートパイプは、基本的に、平行に配されたアルミニウムプレートが、その間に熱移動用回路を形成するように構成された両面接着型のブレージングシートによりろう付けされており、前記熱移動用回路内に作動液が封入されている構造を有している。上記発明において、アルミニウムプレートには、例えば0.2 mm〜5mm 程度の厚さのJIS-A-1000番台の高熱伝導性のアルミニウム板材が用いられる。
【0010】 ブレージングシートには、例えば、厚さが0.5 mm〜10mmの、芯材の両側にろう材を付着させた両面接着型のものを適用する。例えば、JIS-BA12PC(芯材3003、ろう材BA4343[Al-6〜8wt %Si合金])、JIS-BA22PC(芯材6951、ろう材BA4343) 、JIS-BA24PC(芯材6951、ろう材BA4045[Al-9〜11wt%Si合金])等である。接着のためのろう付けは600℃程度の温度に加熱して行う。
【0011】 作動液には水、アルコール類、無公害フロン、不凍液、フロリナート(住友スリーエム社製のフッ素系不活性液体)等の通常の熱媒体が適用できる。作動液の種類は使用温度等に応じて適宜変更する。熱移動用回路の壁面にグルーブを形成するか、回路内にウィックを配しておくと、本発明の平面型ヒートパイプを水平に配置した場合でも、作動液の補給が迅速になされ伝熱特性が向上する。ウィックには、メッシュ、フェルト、不織布状のもの等、通常品が適用できる。
【0012】 本発明の平面型ヒートパイプは、表面がフラットなためフィンの取付けが容易である。フィンをろう付けして取り付けると、例えばシリコーン樹脂で接合するような場合に較べて、平面型ヒートパイプ本体とフィンとの間の熱伝導性がよくなり、フィンの放熱効果が一段と向上する。
【0013】 アルミニウムプレートの成形や、ブレージングシートの凹凸部の成形はプレス成形により行うことができる。ブレージングシートの孔開け等には、加工材の厚さが比較的厚い場合(1mm程度以上)は、プレス打抜き、切削加工、水噴流式カッターによる加工、レーザー加工等の方法が用いられ、薄い場合は、通常の機械式カッター、レーザー加工機等を用いることができる。
【0014】 本発明の平面型ヒートパイプの熱移動用回路は、その断面寸法を0.5mm ×0.5mm 以上又はそれに相当する断面積以上にすると、作動液が十分に循環して高い伝熱性が得られるため、好ましい。
【0015】 本発明において、少なくとも2枚のアルミニウムプレートは、両面接着型のブレージングシートを介してろう付けにより接合されて熱移動用回路が形成される。なお、アルミニウムプレートの内面にもろう材を付着させた片面ブレージングシートを用いると、ろう付けが容易に行える場合がある。ろう付けの加熱は、アルミニウムプレート間にブレージングシートを挟み、各々がずれない程度の軽い圧力を加えながら行う。加熱温度はブレージングシートの種類によって異なるが一般的には600 ℃前後の温度でろう付けを行う。加熱は、通常、加熱炉内に入れて行う。この際、フィンのろう付けも一緒に行うと効率的である。
【0016】 本発明において、熱移動用回路の少なくとも1カ所に開口部を設けておき、この開口部から作動液を注入する。開口部にアルミニウム又はアルミニウム合金等の金属製チューブを気密に取付けておくと、作動液の注入、注入後の封止が容易に行える。封止は、圧着又は溶接により行うのが簡便であるが、ろう付けで行っても良い。圧着に溶接を併用すると封止が確実に行えて好ましい。
【0017】 本発明において、熱移動用回路の内面にグルーブを形成したり、熱移動用回路内にウィックを配しておくと作動液の循環が迅速になされる。本発明では、前記グルーブはアルミニウムプレートの圧延時又はプレス成形時等に容易に形成でき、又形成されたグルーブが、後工程で消滅するようなことはない。又種々の形状のウィックを容易に配することができる。
【0018】 本発明において、アルミニウムプレートの一方に凸部を設け、他方に孔部を設け、凸部を孔部に挿入することにより両アルミニウムプレートの位置決めを行えば、形成される平面型ヒートパイプの寸法精度を向上することができる。
【0019】 図1は、本発明平面型ヒートパイプの第1の実施形態を示す組立説明図である。両面接着型のブレージングシート10には、多数の長穴13が平行に形成され、この長穴13を隔てる桟14には、桟14を横断する窪み15が桟14の表裏面に交互に形成されている。このブレージングシート10の表面および裏面にはアルミニウムプレート20、21が重ねあわされ、所定温度に加熱されて、三者は気密に一体にろう付けされている。
【0020】 前記ブレージングシート10は、先に窪み15を形成し、次に長穴13をプレス打抜きして加工すれば形成できる。また、長穴13と桟14の窪み15を1回のプレス加工で形成することもできる。この平面型ヒートパイプの特徴は下記の通りである。上下のアルミニウムプレートが両面接着型のブレージングシートで完全にろう付けされるので、高い内圧にも耐えられる。桟の幅方向に窪みが形成されているため、作動液は長穴13と窪み15部分を通って、面方向に連続して流れる。桟14の幅方向に窪みが形成されているため、アルミニウムプレートを多数枚重ねる必要がなく、2枚のアルミニウムプレートと両面接着型のブレージングシートで形成できる。
【0021】 図2は、本発明の平面型ヒートパイプの第2の実施形態を示す横断面図である。この平面型ヒートパイプは、図1に示した平面型ヒートパイプ本体の表面の一方の側にフィン70がブレージングシート11によりろう付けされている。又他方の側に発熱電子部品71がろう付けされている。図2中の40は作動液注入用のアルミニウムチューブである。
【0022】 平面型ヒートパイプを形成するためのろう付けを行う際に、フィン70を一緒にろう付けすると効率的である。フィン70をろう付けすると、平面型ヒートパイプ本体とフィンとが金属的に接合されるため両者間の熱伝導性が優れ、フィンの放熱効果が向上する。
【0023】 図3は、上記製造方法により製造したフィン付き平面型ヒートパイプの斜視図である。このようにして製造したフィン付き平面型ヒートパイプを、図3に示すように垂直に配置し、所定箇所をヒーター93で加熱して熱抵抗を測定した。該フィン付き平面型ヒートパイプの熱抵抗は、平面型ヒートパイプと同じ寸法形状のアルミニウム筐体に放熱フィンをろう付けしたものの熱抵抗の2/3であった。
【0024】 図4(a)、(b)は、本発明平面型ヒートパイプの第3の実施形態を示す平面透視図及び横断面図である。この平面型ヒートパイプは、所要箇所が断面四角状にコルゲート加工された両面接着型のブレージングシート10の上下面にアルミニウムプレート20、21が配されたものであり、アルミニウムプレート20、21の周縁部には必要により両面接着型のブレージングシートからなる周縁部材30を配置して表面と裏面のアルミニウムプレート20、21を気密にろう付けする。図4(a)の40は、作動液を注入するアルミニウムチューブである。
【0025】 図4(c)は、このブレージングシート10の斜視図である。断面四角状の凹凸部列41が、間隔を開けて複数個所に列形成されている。この凹凸部列41を形成する個々の凸部42は両端に貫通穴が設けられて開放された状態となっている。従ってこの平面型ヒートパイプでは、熱移動用回路25が面方向に連続するように形成される。このブレージングシート10は、ブレージングシート10の凸部42形成箇所の端部43に切込みを入れ、次いで凸部42形成箇所をプレス成形により突出させて加工することにより貫通穴を有する凸部42となる。なお、上記実施形態では断面四角状にコルゲート加工されたブレージングシートについて説明したが、断面形状は四角状に限らず、多角形、円形でもよいことは勿論である。
【0026】 図5(a)は、本発明の平面型ヒートパイプの第4の実施形態を示す組立説明図である。アルミニウムプレート20上に、中央部分が鍵型に打抜かれた周縁部材30が両面接着型のブレージングシートで形成されて配され、前記打抜部分の内側の所要箇所に、使用時の内圧に耐えるように両面接着型のブレージングシート製の支持部材60が配されている。
【0027】 図5(b)は、かかる平面型ヒートパイプの組み立ての一例を示すもので、図5(a)のB−B矢視図である。支持部材60の中央部に開けた孔61を、アルミニウムプレート20にあけたバーリング加工孔部23に嵌合させて、支持部材60の位置決めを行っている。支持部材の位置決めは、アルミニウムプレートの内側に窪みを設け、この窪みに支持部材を入れて行っても良い。
【0028】 このブレージングシート10及び支持部材60上にアルミニウムプレート22を配し、これらをろう付け温度に加熱して平面型ヒートパイプが形成される。バーリング加工孔部23の上面とアルミニウムプレート22の内面とは、ワイヤ状のろう材を用いて気密にろう付けする。熱移動用回路は周縁部材30の内側と支持部材60との間に形成される。この熱移動用回路は面方向に連続して形成される。図5(a)の40は作動液を注入するためのアルミニウムチューブである。
【0029】 図6(a)、(b)は、本発明平面型ヒートパイプの第4の実施形態の変形例を示す平面透視図及び横断面図である。この平面型ヒートパイプは、表面および裏面の2枚のアルミニウムプレート20と22を重ね、周縁部を両面接着型ブレージングシートで形成した周縁部材30でろう付けして、中央部に空間(熱移動用回路)が空くようにしたものである。前記空間部分の所要個所には、使用時の内圧に耐えるように支持部材50がろう付けされている。この支持部材50は使用条件によっては用いなくても良い。図5(c)、(d)、(e)、(f)には、前記支持部材50の実施形態を示す。図5(c)、(d)、(e)、(f)はそれぞれ、円柱状支持部材、バレル状支持部材、鼓状支持部材、球状支持部材の斜視図である。
【0030】 図7(a)、(b)、(c)には、平面型ヒートパイプの作動液封入部の実施形態を示す。(a)、(b)、(c)はそれぞれ平面図、側面図、及び正面図である。平面型ヒートパイプの熱移動用回路の開口部にアルミニウムチューブ40が挿入され、アルミニウムチューブ40は該開口部の周面にろう材46により気密にろう付けされている。前記アルミニウムチューブ40は、所定箇所がかしめられ、更にその先が溶接により封止されている。
【0031】 図8(a)、(b)、(c)には、作動液の注入及び封止の方法を示す。開口端94を突出させて設け(a)、この突出開口端94から作動液を注入したのち、前記突出開口端94の中間部分を上下からかしめ(b)、更に先端を溶接して封止する(c)。溶接にはTIG溶接、プラズマ溶接、レーザー溶接等が適当である。突出開口端94の先端は、図8(d)に示すように、ヒートパイプの外周より若干内側に位置させる。このようにすると封止後の突出開口端94が外力を受けて破損する恐れが少なくなり、信頼性が向上する。この平面型ヒートパイプでは、突出開口端94の両側がフリーなため(a)、上下からかしめたときにアルミニウムが横方向に自由にはみ出るのでかしめが確実に行える。
【0032】 次に、必要により設けるグルーブの形成例およびウィックの配置例について説明する。図9にはグルーブの形成例を、図10にはウィックの配置例を示す。図9(a)、(b)には、本発明の平面型ヒートパイプの第5、第6の実施形態を示す。本実施形態は、グルーブが形成された平面型ヒートパイプである。図9(a)の平面型ヒートパイプは、表裏2枚のアルミニウムプレート20、21の内面にグルーブとなる溝51を形成したものである。この溝51はエッチング法や金型プレスにより形成できる。作動液はこの溝に沿って自由に流れる。アルミニウムプレート20、21はろう材46により接合されている。
【0033】 図9(b) の平面型ヒートパイプは、表裏2枚のアルミニウムプレート20、21の内面がろう材46で形成され、前記ろう材46の表面を一旦溶融したのち凝固させて表面が凹凸状に粗面化させたもので、この表面の凹凸部52がグルーブとなる。この凹凸部52は2枚のアルミニウムプレート20、21をろう付けする際に形成してもよい。凹凸部52の形状はろう材の厚さやろう付け温度により制御される。凹凸はろう材が厚い程、ろう付け温度が高い程深くなる。
【0034】 図10(a)は、本発明の平面型ヒートパイプの第7の実施形態を示したものである。この実施形態では、表裏2枚のアルミニウムプレート20、21の間に波形プレート53をウィックとして配しており、前記波形プレート53は2枚のアルミニウムプレート20、21にろう付けされ、アルミニウムプレート20、21と波形プレート53の接合部近辺54が冷媒通路となる。図10(b)は、本発明の平面型ヒートパイプの第8の実施形態を示したものである。この実施形態では、表裏2枚のアルミニウムプレート20、21の間にウィックとして複数枚平板状金網55を配してある。前記金網55は1枚でも良い。
【0035】 図10(c)は、本発明の平面型ヒートパイプの第9の実施形態を示したものである。この実施形態では、2枚のアルミニウムプレート20、21の間にウィックとして円筒状金網56を配してある。図10(d)は、本発明の平面型ヒートパイプの第10の実施形態を示したものである。この実施形態では、表裏2枚のアルミニウムプレート20、21の間に多数個の球57を相互に隣接させて配してある。図3と同様にこの熱抵抗を測定したところ、グルーブ又はウィックを形成しないものの熱抵抗と比較して10〜20%減少した。
【0036】 図11、12、13、14には、本発明の平面型ヒートパイプの第11の実施形態を示す。この実施形態は表裏2枚のアルミニウムプレートから形成されており、一方のアルミニウムプレートには凸部を設け、他方のアルミニウムプレートには孔を設けており、この凸部を孔に挿入することによって、アルミニウムプレートの位置合わせを行う。図11は、位置合わせ用の凸部と孔を設けた平面型ヒートパイプの上視図である。平面型ヒートパイプはL字状に形成されており、位置合わせ101 は2個所設けられている。
【0037】 図12に、位置合わせの一実施形態の断面図を示す。平面型ヒートパイプは2枚のアルミニウムプレート102 、103 で形成されている。裏面側アルミニウムプレート102 に凸部104 を設け、表面側アルミニウムプレート103 に孔加工部105 を設ける。凸部104 を孔加工部105 に挿入して表裏両アルミニウムプレート102、103 の位置合わせを行う。凸部104 と孔加工部105 のクリアランスを小さくすれば寸法精度をより高くすることができる。
【0038】 図13に、位置合わせの他の実施形態の断面図を示す。本実施形態では、下側アルミニウムプレート110 の凸部112 をテーパー状にして、上側アルミニウムプレート111 の孔113 を小さ目にしており、凸部112 が孔113 に食い込む形状となるため、位置合わせの精度を高くすることができるようになっている。
【0039】 図14に、位置合わせの実施形態の斜視図を示す。本実施形態では上側アルミニウムプレート121 の外形寸法を下側アルミニウムプレート122 より0.1mm〜0.5mm程度小さくしてあり、前記位置合わせを位置合わせ部123 で行っている。このため、位置合わせに多少ずれが生じても、平面型ヒートパイプの寸法は下側アルミニウムプレート122 の外形寸法を逸脱することがなく、寸法精度が向上する。したがって、ロボットなどで自動的に平面型ヒートパイプをパワー素子等にねじを用いて装着する場合にも、寸法精度が高いためねじ孔の位置がずれにくくなる。
【0040】 なお、凸部と孔部による位置合わせは必要に応じて1個所もしくは複数個所で利用することができる。また、上側アルミニウムプレートに凸部と孔部を設け、下側アルミニウムプレートにはこれに互いに挿入できるように対応する孔部と凸部を設けることもできる。
【0041】 アルミニウムプレート又はブレージングシートを3枚以上用いて平面型ヒートパイプを形成する場合には、例えば1枚のアルミニウムプレートには凸部を設け、他の2枚のアルミニウムプレートには孔部を設けて、該凸部を該孔部に貫通させることにより3枚以上のアルミニウムプレート又はブレージングシートの位置決めを行うこともできる。また、対応する凸部と孔部を隣接するアルミニウムプレート又はブレージングシートにそれぞれ設けてもよい。
【0042】
【発明の効果】 以上に述べたように、本発明の平面型ヒートパイプは、熱移動用回路をプレス成形、打抜き、レーザー加工、切取り等の加工法により形成するので、種々形状の熱移動用回路を微細に高精度に形成できる。又薄型化が可能で柔軟な平面型ヒートパイプが得られ用途が拡大する。熱移動用回路内に必要によりグルーブやウィックを設けることで熱伝導性がより向上する。表面がフラットなのでフィンを容易に取付けられ、良好な放熱効果が得られる。アルミニウムプレートの位置合わせに孔と凸部を設けることができ寸法精度が向上する。依って工業上顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の平面型ヒートパイプの第1の実施形態を示す組立説明図である。
【図2】 本発明の平面型ヒートパイプの第8の実施形態を示す平面図である。
【図3】 本発明の平面型ヒートパイプの第9の実施形態を示す斜視図である。
【図4】 本発明の平面型ヒートパイプの第4の実施形態を示す平面透視図(a)、横断面図(b)、及び前記平面型ヒートパイプで用いる回路形成用ブレージングシートの斜視図(c)である。
【図5】 本発明の平面型ヒートパイプの第6の実施形態を示す組立説明図(a)、図5イにおけるB−B矢視断面図(b)である。
【図6】 本発明の平面型ヒートパイプの第5の実施形態を示す平面透視図(a)、図6イにおけるA−A矢視断面図(b)、前記平面型ヒートパイプで用いる支持部材の斜視図(c)である。
【図7】 本発明の平面型ヒートパイプの作動液封入部分の実施形態を示す平面図(a)、側面図(b)及び正面図(c)である。
【図8】 本発明の平面型ヒートパイプに作動液を注入し封止する方法の説明図である。
【図9】 本発明の平面型ヒートパイプの第10、11の実施形態を示す縦断面図である。
【図10】 本発明の平面型ヒートパイプの第12、13、14、15の実施形態を示す縦断面図である。
【図11】 本発明の平面型ヒートパイプの第16、17の実施形態を示す上面図である。
【図12】 本発明の平面型ヒートパイプの第16の実施形態を示す断面図である。
【図13】 本発明の平面型ヒートパイプの第17の実施形態を示す断面図である。
【図14】 本発明の平面型ヒートパイプの第16、17の実施形態を示す斜視図である。
【図15】 従来の平面型ヒートパイプの平面図(a)、図イにおけるC−C矢視断面図(b)である。
【符号の説明】
10、11 ブレ−ジングシ−ト、
13 長穴
14 桟
15 窪み
16 窓
20、21、22、23 アルミニウムプレ−ト
25 熱移動用回路
30 周縁部材
40 アルミニウムチューブ
42 凹部
46 ろう材
50 支持部材
51 溝
52 凹凸部
55 平面状金網
56 円筒状金網
57 球
60 支持部材
70 フィン
71 発熱電子部品
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor) 、IPM(Intelligent Power Module) 、サイリスター等のパワー素子(トランジスタ)や整流素子等の発熱電子部品を冷却するのに適した、小型で、製造が容易で、しかも伝熱性に優れた平面型ヒートパイプに関する。
【0002】
【従来の技術】 近年、電子機器や電力機器等に使用されるパワーエレクトロニクス関連の電子部品の有力な冷却手段として、ロールボンドパネルが提案されている。前記ロールボンドパネルは、図15(a) 、(b) に示すように、2枚のアルミニウムプレート80、81を熱移動用回路25とする部分に剥離剤を介在させて熱圧着し、その後、剥離剤部分を空気圧により膨らませて製造されている。このため、前記ロールボンドパネルの形状は、熱移動用回路25部分が突出したものとなり、前記ロールボンドパネルの表面は凹凸状になる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】 このため、前記ロールボンドパネルには、次のような問題があった。熱移動用回路25を空気圧で膨らませて形成するため、回路25の寸法精度を高くできない。又熱移動用回路25を薄く形成するのが困難である。熱圧着させるため、グルーブ(細溝)やウィックを設けることができず、高い熱伝導性が得られない。アルミニウムプレート80、81の表面が凹凸状のため、放熱性向上に有益なフィンの取付けが困難である。
【0004】 そこで、本発明は任意の形状の熱移動用回路を高精度に形成でき、薄型化が可能で、グルーブやウィックを設けることができ、フィンの取付けが容易な平面型ヒートパイプの提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決する手段】 第1の発明は、両面接着型のブレージングシートに複数の長穴を設け、該長穴を隔てる桟には、この桟を横断する窪みを設け、このブレージングシートの表面および裏面にアルミニウムプレートを重ねて所定温度に加熱し、三者を気密にろう付けしてなることを特徴とする平面型ヒートパイプである。
【0006】 第2の発明は、両面接着型のブレージングシートに複数の凹凸を設け、該凹凸で形成される空間をこの凹凸の壁面に設けた貫通穴で連結するように形成し、このブレージングシートの表面および裏面にアルミニウムプレートを重ね、必要により表裏のアルミニウムプレートの周縁部に周縁部材を配置して所定温度に加熱し、三者を気密にろう付けしてなることを特徴とする平面型ヒートパイプである。
【0007】 第3の発明は、裏面を構成するアルミニウムプレート上に該アルミニウムプレートの周縁部をろう付けする周縁部材と、該周縁部材により形成される窪みに設置する複数の支持部材とを両面接着型のブレージングシートにより形成して載置し、その上に表面を構成するアルミニウムプレートを重ねて所定温度に加熱し、両面接着型のブレージングシート製部材を介して表裏プレートを気密にろう付けしてなることを特徴とする平面型ヒートパイプである。
【0008】 前記第1乃至第3の発明において、表面および裏面のアルミニウムプレートの内面にグルーブを形成することにより、より熱効率に優れた平面型ヒートパイプを提供できる。
【0009】
【発明の実施の形態】 本発明の平面型ヒートパイプは、基本的に、平行に配されたアルミニウムプレートが、その間に熱移動用回路を形成するように構成された両面接着型のブレージングシートによりろう付けされており、前記熱移動用回路内に作動液が封入されている構造を有している。上記発明において、アルミニウムプレートには、例えば0.2 mm〜5mm 程度の厚さのJIS-A-1000番台の高熱伝導性のアルミニウム板材が用いられる。
【0010】 ブレージングシートには、例えば、厚さが0.5 mm〜10mmの、芯材の両側にろう材を付着させた両面接着型のものを適用する。例えば、JIS-BA12PC(芯材3003、ろう材BA4343[Al-6〜8wt %Si合金])、JIS-BA22PC(芯材6951、ろう材BA4343) 、JIS-BA24PC(芯材6951、ろう材BA4045[Al-9〜11wt%Si合金])等である。接着のためのろう付けは600℃程度の温度に加熱して行う。
【0011】 作動液には水、アルコール類、無公害フロン、不凍液、フロリナート(住友スリーエム社製のフッ素系不活性液体)等の通常の熱媒体が適用できる。作動液の種類は使用温度等に応じて適宜変更する。熱移動用回路の壁面にグルーブを形成するか、回路内にウィックを配しておくと、本発明の平面型ヒートパイプを水平に配置した場合でも、作動液の補給が迅速になされ伝熱特性が向上する。ウィックには、メッシュ、フェルト、不織布状のもの等、通常品が適用できる。
【0012】 本発明の平面型ヒートパイプは、表面がフラットなためフィンの取付けが容易である。フィンをろう付けして取り付けると、例えばシリコーン樹脂で接合するような場合に較べて、平面型ヒートパイプ本体とフィンとの間の熱伝導性がよくなり、フィンの放熱効果が一段と向上する。
【0013】 アルミニウムプレートの成形や、ブレージングシートの凹凸部の成形はプレス成形により行うことができる。ブレージングシートの孔開け等には、加工材の厚さが比較的厚い場合(1mm程度以上)は、プレス打抜き、切削加工、水噴流式カッターによる加工、レーザー加工等の方法が用いられ、薄い場合は、通常の機械式カッター、レーザー加工機等を用いることができる。
【0014】 本発明の平面型ヒートパイプの熱移動用回路は、その断面寸法を0.5mm ×0.5mm 以上又はそれに相当する断面積以上にすると、作動液が十分に循環して高い伝熱性が得られるため、好ましい。
【0015】 本発明において、少なくとも2枚のアルミニウムプレートは、両面接着型のブレージングシートを介してろう付けにより接合されて熱移動用回路が形成される。なお、アルミニウムプレートの内面にもろう材を付着させた片面ブレージングシートを用いると、ろう付けが容易に行える場合がある。ろう付けの加熱は、アルミニウムプレート間にブレージングシートを挟み、各々がずれない程度の軽い圧力を加えながら行う。加熱温度はブレージングシートの種類によって異なるが一般的には600 ℃前後の温度でろう付けを行う。加熱は、通常、加熱炉内に入れて行う。この際、フィンのろう付けも一緒に行うと効率的である。
【0016】 本発明において、熱移動用回路の少なくとも1カ所に開口部を設けておき、この開口部から作動液を注入する。開口部にアルミニウム又はアルミニウム合金等の金属製チューブを気密に取付けておくと、作動液の注入、注入後の封止が容易に行える。封止は、圧着又は溶接により行うのが簡便であるが、ろう付けで行っても良い。圧着に溶接を併用すると封止が確実に行えて好ましい。
【0017】 本発明において、熱移動用回路の内面にグルーブを形成したり、熱移動用回路内にウィックを配しておくと作動液の循環が迅速になされる。本発明では、前記グルーブはアルミニウムプレートの圧延時又はプレス成形時等に容易に形成でき、又形成されたグルーブが、後工程で消滅するようなことはない。又種々の形状のウィックを容易に配することができる。
【0018】 本発明において、アルミニウムプレートの一方に凸部を設け、他方に孔部を設け、凸部を孔部に挿入することにより両アルミニウムプレートの位置決めを行えば、形成される平面型ヒートパイプの寸法精度を向上することができる。
【0019】 図1は、本発明平面型ヒートパイプの第1の実施形態を示す組立説明図である。両面接着型のブレージングシート10には、多数の長穴13が平行に形成され、この長穴13を隔てる桟14には、桟14を横断する窪み15が桟14の表裏面に交互に形成されている。このブレージングシート10の表面および裏面にはアルミニウムプレート20、21が重ねあわされ、所定温度に加熱されて、三者は気密に一体にろう付けされている。
【0020】 前記ブレージングシート10は、先に窪み15を形成し、次に長穴13をプレス打抜きして加工すれば形成できる。また、長穴13と桟14の窪み15を1回のプレス加工で形成することもできる。この平面型ヒートパイプの特徴は下記の通りである。上下のアルミニウムプレートが両面接着型のブレージングシートで完全にろう付けされるので、高い内圧にも耐えられる。桟の幅方向に窪みが形成されているため、作動液は長穴13と窪み15部分を通って、面方向に連続して流れる。桟14の幅方向に窪みが形成されているため、アルミニウムプレートを多数枚重ねる必要がなく、2枚のアルミニウムプレートと両面接着型のブレージングシートで形成できる。
【0021】 図2は、本発明の平面型ヒートパイプの第2の実施形態を示す横断面図である。この平面型ヒートパイプは、図1に示した平面型ヒートパイプ本体の表面の一方の側にフィン70がブレージングシート11によりろう付けされている。又他方の側に発熱電子部品71がろう付けされている。図2中の40は作動液注入用のアルミニウムチューブである。
【0022】 平面型ヒートパイプを形成するためのろう付けを行う際に、フィン70を一緒にろう付けすると効率的である。フィン70をろう付けすると、平面型ヒートパイプ本体とフィンとが金属的に接合されるため両者間の熱伝導性が優れ、フィンの放熱効果が向上する。
【0023】 図3は、上記製造方法により製造したフィン付き平面型ヒートパイプの斜視図である。このようにして製造したフィン付き平面型ヒートパイプを、図3に示すように垂直に配置し、所定箇所をヒーター93で加熱して熱抵抗を測定した。該フィン付き平面型ヒートパイプの熱抵抗は、平面型ヒートパイプと同じ寸法形状のアルミニウム筐体に放熱フィンをろう付けしたものの熱抵抗の2/3であった。
【0024】 図4(a)、(b)は、本発明平面型ヒートパイプの第3の実施形態を示す平面透視図及び横断面図である。この平面型ヒートパイプは、所要箇所が断面四角状にコルゲート加工された両面接着型のブレージングシート10の上下面にアルミニウムプレート20、21が配されたものであり、アルミニウムプレート20、21の周縁部には必要により両面接着型のブレージングシートからなる周縁部材30を配置して表面と裏面のアルミニウムプレート20、21を気密にろう付けする。図4(a)の40は、作動液を注入するアルミニウムチューブである。
【0025】 図4(c)は、このブレージングシート10の斜視図である。断面四角状の凹凸部列41が、間隔を開けて複数個所に列形成されている。この凹凸部列41を形成する個々の凸部42は両端に貫通穴が設けられて開放された状態となっている。従ってこの平面型ヒートパイプでは、熱移動用回路25が面方向に連続するように形成される。このブレージングシート10は、ブレージングシート10の凸部42形成箇所の端部43に切込みを入れ、次いで凸部42形成箇所をプレス成形により突出させて加工することにより貫通穴を有する凸部42となる。なお、上記実施形態では断面四角状にコルゲート加工されたブレージングシートについて説明したが、断面形状は四角状に限らず、多角形、円形でもよいことは勿論である。
【0026】 図5(a)は、本発明の平面型ヒートパイプの第4の実施形態を示す組立説明図である。アルミニウムプレート20上に、中央部分が鍵型に打抜かれた周縁部材30が両面接着型のブレージングシートで形成されて配され、前記打抜部分の内側の所要箇所に、使用時の内圧に耐えるように両面接着型のブレージングシート製の支持部材60が配されている。
【0027】 図5(b)は、かかる平面型ヒートパイプの組み立ての一例を示すもので、図5(a)のB−B矢視図である。支持部材60の中央部に開けた孔61を、アルミニウムプレート20にあけたバーリング加工孔部23に嵌合させて、支持部材60の位置決めを行っている。支持部材の位置決めは、アルミニウムプレートの内側に窪みを設け、この窪みに支持部材を入れて行っても良い。
【0028】 このブレージングシート10及び支持部材60上にアルミニウムプレート22を配し、これらをろう付け温度に加熱して平面型ヒートパイプが形成される。バーリング加工孔部23の上面とアルミニウムプレート22の内面とは、ワイヤ状のろう材を用いて気密にろう付けする。熱移動用回路は周縁部材30の内側と支持部材60との間に形成される。この熱移動用回路は面方向に連続して形成される。図5(a)の40は作動液を注入するためのアルミニウムチューブである。
【0029】 図6(a)、(b)は、本発明平面型ヒートパイプの第4の実施形態の変形例を示す平面透視図及び横断面図である。この平面型ヒートパイプは、表面および裏面の2枚のアルミニウムプレート20と22を重ね、周縁部を両面接着型ブレージングシートで形成した周縁部材30でろう付けして、中央部に空間(熱移動用回路)が空くようにしたものである。前記空間部分の所要個所には、使用時の内圧に耐えるように支持部材50がろう付けされている。この支持部材50は使用条件によっては用いなくても良い。図5(c)、(d)、(e)、(f)には、前記支持部材50の実施形態を示す。図5(c)、(d)、(e)、(f)はそれぞれ、円柱状支持部材、バレル状支持部材、鼓状支持部材、球状支持部材の斜視図である。
【0030】 図7(a)、(b)、(c)には、平面型ヒートパイプの作動液封入部の実施形態を示す。(a)、(b)、(c)はそれぞれ平面図、側面図、及び正面図である。平面型ヒートパイプの熱移動用回路の開口部にアルミニウムチューブ40が挿入され、アルミニウムチューブ40は該開口部の周面にろう材46により気密にろう付けされている。前記アルミニウムチューブ40は、所定箇所がかしめられ、更にその先が溶接により封止されている。
【0031】 図8(a)、(b)、(c)には、作動液の注入及び封止の方法を示す。開口端94を突出させて設け(a)、この突出開口端94から作動液を注入したのち、前記突出開口端94の中間部分を上下からかしめ(b)、更に先端を溶接して封止する(c)。溶接にはTIG溶接、プラズマ溶接、レーザー溶接等が適当である。突出開口端94の先端は、図8(d)に示すように、ヒートパイプの外周より若干内側に位置させる。このようにすると封止後の突出開口端94が外力を受けて破損する恐れが少なくなり、信頼性が向上する。この平面型ヒートパイプでは、突出開口端94の両側がフリーなため(a)、上下からかしめたときにアルミニウムが横方向に自由にはみ出るのでかしめが確実に行える。
【0032】 次に、必要により設けるグルーブの形成例およびウィックの配置例について説明する。図9にはグルーブの形成例を、図10にはウィックの配置例を示す。図9(a)、(b)には、本発明の平面型ヒートパイプの第5、第6の実施形態を示す。本実施形態は、グルーブが形成された平面型ヒートパイプである。図9(a)の平面型ヒートパイプは、表裏2枚のアルミニウムプレート20、21の内面にグルーブとなる溝51を形成したものである。この溝51はエッチング法や金型プレスにより形成できる。作動液はこの溝に沿って自由に流れる。アルミニウムプレート20、21はろう材46により接合されている。
【0033】 図9(b) の平面型ヒートパイプは、表裏2枚のアルミニウムプレート20、21の内面がろう材46で形成され、前記ろう材46の表面を一旦溶融したのち凝固させて表面が凹凸状に粗面化させたもので、この表面の凹凸部52がグルーブとなる。この凹凸部52は2枚のアルミニウムプレート20、21をろう付けする際に形成してもよい。凹凸部52の形状はろう材の厚さやろう付け温度により制御される。凹凸はろう材が厚い程、ろう付け温度が高い程深くなる。
【0034】 図10(a)は、本発明の平面型ヒートパイプの第7の実施形態を示したものである。この実施形態では、表裏2枚のアルミニウムプレート20、21の間に波形プレート53をウィックとして配しており、前記波形プレート53は2枚のアルミニウムプレート20、21にろう付けされ、アルミニウムプレート20、21と波形プレート53の接合部近辺54が冷媒通路となる。図10(b)は、本発明の平面型ヒートパイプの第8の実施形態を示したものである。この実施形態では、表裏2枚のアルミニウムプレート20、21の間にウィックとして複数枚平板状金網55を配してある。前記金網55は1枚でも良い。
【0035】 図10(c)は、本発明の平面型ヒートパイプの第9の実施形態を示したものである。この実施形態では、2枚のアルミニウムプレート20、21の間にウィックとして円筒状金網56を配してある。図10(d)は、本発明の平面型ヒートパイプの第10の実施形態を示したものである。この実施形態では、表裏2枚のアルミニウムプレート20、21の間に多数個の球57を相互に隣接させて配してある。図3と同様にこの熱抵抗を測定したところ、グルーブ又はウィックを形成しないものの熱抵抗と比較して10〜20%減少した。
【0036】 図11、12、13、14には、本発明の平面型ヒートパイプの第11の実施形態を示す。この実施形態は表裏2枚のアルミニウムプレートから形成されており、一方のアルミニウムプレートには凸部を設け、他方のアルミニウムプレートには孔を設けており、この凸部を孔に挿入することによって、アルミニウムプレートの位置合わせを行う。図11は、位置合わせ用の凸部と孔を設けた平面型ヒートパイプの上視図である。平面型ヒートパイプはL字状に形成されており、位置合わせ101 は2個所設けられている。
【0037】 図12に、位置合わせの一実施形態の断面図を示す。平面型ヒートパイプは2枚のアルミニウムプレート102 、103 で形成されている。裏面側アルミニウムプレート102 に凸部104 を設け、表面側アルミニウムプレート103 に孔加工部105 を設ける。凸部104 を孔加工部105 に挿入して表裏両アルミニウムプレート102、103 の位置合わせを行う。凸部104 と孔加工部105 のクリアランスを小さくすれば寸法精度をより高くすることができる。
【0038】 図13に、位置合わせの他の実施形態の断面図を示す。本実施形態では、下側アルミニウムプレート110 の凸部112 をテーパー状にして、上側アルミニウムプレート111 の孔113 を小さ目にしており、凸部112 が孔113 に食い込む形状となるため、位置合わせの精度を高くすることができるようになっている。
【0039】 図14に、位置合わせの実施形態の斜視図を示す。本実施形態では上側アルミニウムプレート121 の外形寸法を下側アルミニウムプレート122 より0.1mm〜0.5mm程度小さくしてあり、前記位置合わせを位置合わせ部123 で行っている。このため、位置合わせに多少ずれが生じても、平面型ヒートパイプの寸法は下側アルミニウムプレート122 の外形寸法を逸脱することがなく、寸法精度が向上する。したがって、ロボットなどで自動的に平面型ヒートパイプをパワー素子等にねじを用いて装着する場合にも、寸法精度が高いためねじ孔の位置がずれにくくなる。
【0040】 なお、凸部と孔部による位置合わせは必要に応じて1個所もしくは複数個所で利用することができる。また、上側アルミニウムプレートに凸部と孔部を設け、下側アルミニウムプレートにはこれに互いに挿入できるように対応する孔部と凸部を設けることもできる。
【0041】 アルミニウムプレート又はブレージングシートを3枚以上用いて平面型ヒートパイプを形成する場合には、例えば1枚のアルミニウムプレートには凸部を設け、他の2枚のアルミニウムプレートには孔部を設けて、該凸部を該孔部に貫通させることにより3枚以上のアルミニウムプレート又はブレージングシートの位置決めを行うこともできる。また、対応する凸部と孔部を隣接するアルミニウムプレート又はブレージングシートにそれぞれ設けてもよい。
【0042】
【発明の効果】 以上に述べたように、本発明の平面型ヒートパイプは、熱移動用回路をプレス成形、打抜き、レーザー加工、切取り等の加工法により形成するので、種々形状の熱移動用回路を微細に高精度に形成できる。又薄型化が可能で柔軟な平面型ヒートパイプが得られ用途が拡大する。熱移動用回路内に必要によりグルーブやウィックを設けることで熱伝導性がより向上する。表面がフラットなのでフィンを容易に取付けられ、良好な放熱効果が得られる。アルミニウムプレートの位置合わせに孔と凸部を設けることができ寸法精度が向上する。依って工業上顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の平面型ヒートパイプの第1の実施形態を示す組立説明図である。
【図2】 本発明の平面型ヒートパイプの第8の実施形態を示す平面図である。
【図3】 本発明の平面型ヒートパイプの第9の実施形態を示す斜視図である。
【図4】 本発明の平面型ヒートパイプの第4の実施形態を示す平面透視図(a)、横断面図(b)、及び前記平面型ヒートパイプで用いる回路形成用ブレージングシートの斜視図(c)である。
【図5】 本発明の平面型ヒートパイプの第6の実施形態を示す組立説明図(a)、図5イにおけるB−B矢視断面図(b)である。
【図6】 本発明の平面型ヒートパイプの第5の実施形態を示す平面透視図(a)、図6イにおけるA−A矢視断面図(b)、前記平面型ヒートパイプで用いる支持部材の斜視図(c)である。
【図7】 本発明の平面型ヒートパイプの作動液封入部分の実施形態を示す平面図(a)、側面図(b)及び正面図(c)である。
【図8】 本発明の平面型ヒートパイプに作動液を注入し封止する方法の説明図である。
【図9】 本発明の平面型ヒートパイプの第10、11の実施形態を示す縦断面図である。
【図10】 本発明の平面型ヒートパイプの第12、13、14、15の実施形態を示す縦断面図である。
【図11】 本発明の平面型ヒートパイプの第16、17の実施形態を示す上面図である。
【図12】 本発明の平面型ヒートパイプの第16の実施形態を示す断面図である。
【図13】 本発明の平面型ヒートパイプの第17の実施形態を示す断面図である。
【図14】 本発明の平面型ヒートパイプの第16、17の実施形態を示す斜視図である。
【図15】 従来の平面型ヒートパイプの平面図(a)、図イにおけるC−C矢視断面図(b)である。
【符号の説明】
10、11 ブレ−ジングシ−ト、
13 長穴
14 桟
15 窪み
16 窓
20、21、22、23 アルミニウムプレ−ト
25 熱移動用回路
30 周縁部材
40 アルミニウムチューブ
42 凹部
46 ろう材
50 支持部材
51 溝
52 凹凸部
55 平面状金網
56 円筒状金網
57 球
60 支持部材
70 フィン
71 発熱電子部品
【特許請求の範囲】
【請求項1】 両面接着型のブレージングシートに複数の長穴を設け、該長穴を隔てる桟には、この桟を横断する窪みを設け、このブレージングシートの表面および裏面にアルミニウムプレートを重ねて所定温度に加熱し、三者を気密にろう付けしてなることを特徴とする平面型ヒートパイプ。
【請求項2】 両面接着型のブレージングシートに複数の凹凸を設け、該凹凸で形成される空間をこの凹凸の壁面に設けた貫通穴で連結するように形成し、このブレージングシートの表面および裏面にアルミニウムプレートを重ね、必要により表裏のアルミニウムプレートの周縁部に周縁部材を配置して所定温度に加熱し、三者を気密にろう付けしてなることを特徴とする平面型ヒートパイプ。
【請求項3】 裏面を構成するアルミニウムプレート上に該アルミニウムプレートの周縁部をろう付けする周縁部材と、該周縁部材により形成される窪みに設置する複数の支持部材とを両面接着型のブレージングシートにより形成して載置し、その上に表面を構成するアルミニウムプレートを重ねて所定温度に加熱し、両面接着型のブレージングシート製部材を介して表裏プレートを気密にろう付けしてなることを特徴とする平面型ヒートパイプ。
【請求項4】 表面および裏面のアルミニウムプレートの内面にグルーブを形成することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の平面型ヒートパイプ。
【請求項1】 両面接着型のブレージングシートに複数の長穴を設け、該長穴を隔てる桟には、この桟を横断する窪みを設け、このブレージングシートの表面および裏面にアルミニウムプレートを重ねて所定温度に加熱し、三者を気密にろう付けしてなることを特徴とする平面型ヒートパイプ。
【請求項2】 両面接着型のブレージングシートに複数の凹凸を設け、該凹凸で形成される空間をこの凹凸の壁面に設けた貫通穴で連結するように形成し、このブレージングシートの表面および裏面にアルミニウムプレートを重ね、必要により表裏のアルミニウムプレートの周縁部に周縁部材を配置して所定温度に加熱し、三者を気密にろう付けしてなることを特徴とする平面型ヒートパイプ。
【請求項3】 裏面を構成するアルミニウムプレート上に該アルミニウムプレートの周縁部をろう付けする周縁部材と、該周縁部材により形成される窪みに設置する複数の支持部材とを両面接着型のブレージングシートにより形成して載置し、その上に表面を構成するアルミニウムプレートを重ねて所定温度に加熱し、両面接着型のブレージングシート製部材を介して表裏プレートを気密にろう付けしてなることを特徴とする平面型ヒートパイプ。
【請求項4】 表面および裏面のアルミニウムプレートの内面にグルーブを形成することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の平面型ヒートパイプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図11】
【図12】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図13】
【図14】
【図9】
【図10】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図11】
【図12】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図13】
【図14】
【図9】
【図10】
【図15】
【特許番号】特許第3164518号(P3164518)
【登録日】平成13年3月2日(2001.3.2)
【発行日】平成13年5月8日(2001.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−312980
【出願日】平成8年11月8日(1996.11.8)
【公開番号】特開平10−38484
【公開日】平成10年2月13日(1998.2.13)
【審査請求日】平成11年8月18日(1999.8.18)
【前置審査】 前置審査
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【参考文献】
【文献】特開 平8−178560(JP,A)
【文献】特開 昭57−2986(JP,A)
【文献】特開 平3−247994(JP,A)
【文献】特開 平4−347492(JP,A)
【文献】実開 平1−151073(JP,U)
【登録日】平成13年3月2日(2001.3.2)
【発行日】平成13年5月8日(2001.5.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成8年11月8日(1996.11.8)
【公開番号】特開平10−38484
【公開日】平成10年2月13日(1998.2.13)
【審査請求日】平成11年8月18日(1999.8.18)
【前置審査】 前置審査
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【参考文献】
【文献】特開 平8−178560(JP,A)
【文献】特開 昭57−2986(JP,A)
【文献】特開 平3−247994(JP,A)
【文献】特開 平4−347492(JP,A)
【文献】実開 平1−151073(JP,U)
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