説明

幹細胞培養用の無血清培地

【課題】幹細胞の効率的かつ安定な培養に用いうる無血清培地の提供。
【解決手段】本発明は、インスリントランスフェリン亜セレン酸塩と、ヒト子宮頸部扁平上皮癌細胞由来の胚栄養因子とを含んでなる、無血清培地を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率的かつ安定な幹細胞の培養および増殖に有用な無血清培地に関する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞は、一般的には、自己再生能と、多系統への分可能とを有するクローン化可能細胞として知られており、骨髄、神経組織、皮膚、網膜、口腔上皮などの様々な生体組織由来の体性幹細胞が単離されている (非特許文献1:Gronthos S, et al., J Dent Res 2002; 81(8): 531-535.)。
【0003】
また、近年、ヒト歯髄由来の幹細胞が単離され、その再生医療への利用のための保存方法や処理方法が検討されている(非特許文献2:Woods EJ et al., Cryobiology 2009; 59: 150-157.)。
【0004】
幹細胞は、通常、血清が添加された培地で培養される。例えば、ウシ胎仔血清 (FBS) は、細胞増殖に重要な添加物として細胞培養に汎用されている。しかしながら、FBSは遅延型過敏症の原因となり、また、プリオン感染を誘発するベクターを含んでいる可能性があることが報告されている (非特許文献3:Kuznetsov SA et al., Transplantation 2000; 70(12): 1780-1787.)。
【0005】
また、幹細胞の培養の別の手法として、再生医療を受ける患者自身の血清を用いる手法が知られている。しかしながら、自己ヒト血清(autologous human serum ;AHS)を用いたとしても、未知の抗原抗体反応、感染、細胞増殖停止や細胞死等が生じうることが問題となる(非特許文献4:Agata H et al., Biochemical and Biophysical Research Communication 2009; 382: 353-358.)。
【0006】
一方、 細胞培養において、無血清培地(serum free-medium ;SFM) を用い、病原体、異種物質、アレルギー性物質等によるリスクを低減することが報告されている。(非特許文献5:Ullmann U et al., Molecular Human Reproduction 2007; 13(1): 21-32.)。
【0007】
しかしながら、ヒト歯髄由来幹細胞等をはじめとする幹細胞の効率的かつ安定な培養・増殖に用いうる無血清培地は報告されていない。再生医療分野においては、種々の幹細胞を効率的かつ安定に培養・増殖しうる無血清培地が依然として求められているといえる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Gronthos S, et al., J Dent Res 2002; 81(8): 531-535.
【非特許文献2】Woods EJ et al., Cryobiology 2009; 59: 150-157.
【非特許文献3】Kuznetsov SA et al., Transplantation 2000; 70(12): 1780-1787.
【非特許文献4】Agata H et al., Biochemical and Biophysical Research Communication 2009; 382: 353-358.
【非特許文献5】Ullmann U et al., Molecular Human Reproduction 2007; 13(1): 21-32.
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、今般、インスリントランスフェリン亜セレン酸塩と、ヒト子宮頸部扁平上皮癌細胞由来の胚栄養因子とを含んでなる無血清培地中で、幹細胞が安定に生存し、かつ顕著に増殖することを見出した。本発明は、かかる知見に基づくものである。
したがって、本発明は、幹細胞の効率的かつ安定な培養および増殖に用いうる新規な無血清培地の提供をその目的とする。
【0010】
そして、本発明による無血清培地は、インスリントランスフェリン亜セレン酸塩と、ヒト子宮頸部扁平上皮癌細胞由来の胚栄養因子とを含んでなる。
【0011】
本発明によれば、幹細胞を無血清培地中で安定に生存させ、かつ顕著に増殖させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】試験例1における、無血清培地(実施例1、参考例1〜3)またはポジティブコントロール(血清培地)を用いた乳歯歯髄(DTPC)の生存試験の結果を示すグラフである。
【図2】試験例1における、無血清培地(実施例1、参考例1〜3)またはポジティブコントロール(血清培地)を用いた、智歯歯髄(WTPC)の生存試験の結果を示すグラフである。
【図3】試験例2における、無血清培地(実施例1、参考例1〜3)を用いた乳歯歯髄(DTPC)の細胞増殖試験の結果を示すグラフである。
【図4】試験例2における、無血清培地(実施例1、参考例1〜3)を用いた智歯歯髄(WTPC)の細胞増殖試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の無血清培地は、インスリントランスフェリン亜セレン酸塩と、ヒト子宮頸部扁平上皮癌細胞由来の胚栄養因子とを含んでなることを一つの特徴としている。インスリントランスフェリン亜セレン酸塩と、ヒト子宮頸部扁平上皮癌細胞由来の胚栄養因子とを共に培地中に添加した場合の幹細胞の増殖率が、インスリントランスフェリン亜セレン酸塩または胚栄養因子を単独で添加した場合と比較して顕著に高いことは意外な事実である。
【0014】
本発明の胚栄養因子(embryotrophic factor)とは、ヒト胚細胞の増殖および分化を促進する、サイトカインおよび成長因子の混合物であって、ヒト子宮頸部扁平上皮癌細胞から産生されるものを意味する。胚栄養因子は、ヒト子宮頸部扁平上皮癌細胞を培養した培養培地から好適に分離することができる。
【0015】
ヒト子宮頸部扁平上皮癌細胞の培養培地は、特に限定されないが、病原体、異種物質、アレルギー性物質等の混入リスクを勘案すれば、無血清培地であることが好ましい。かかる無血清培地の好適な例としては、ハムF12培地等が挙げられる。
【0016】
また、ヒト子宮頸部扁平上皮癌細胞の培養温度は、好ましくは36〜38℃であり、より好ましくは37℃である。また、培養期間は、好ましくは3〜4日間であり、より好ましくは4日間である。
【0017】
また、胚栄養因子は、ヒト子宮頸部扁平上皮癌細胞の培養培地を凍結乾燥し、培養培地から分離することができる。また、凍結乾燥の前または後に、胚栄養因子の濃縮または透析を行ってもよい。
また、胚栄養因子は、ヒト子宮頸部扁平上皮癌細胞の培養培地を採取し、そのまま後述する基礎培地中に添加することもでき、本発明にはかかる態様も包含される。
【0018】
また、上記胚栄養因子は、好ましくは1L-1β、1L-6、1L-8、1L-10、1L-12、EGF、IGF、GH、PDGF-AB、IGF-BP-3、FGF-BASIC、VEGFおよびLIFを含んでなり、より好ましくは1L-1α、1L-1β、1L-2、1L-3、1L-4、1L-5、1L-6、1L-8、1L-10、1L-12、EGF、TNF-α、TGF-α、IGF、GH、PDGF-AB、IGF-BP-3、FGF-BASIC、VEGFおよびLIFを含んでなる。
【0019】
また、胚栄養因子の産生に用いられるヒト子宮頸部扁平上皮癌細胞は、特に限定されないが、SKG-I、SKG-II、SKG-II-SF、OMC-1およびSKG-IIIb等が挙げられ、好ましくはSKG-II-SFである。SKG-II-SF細胞等のヒト子宮頸部扁平上皮癌細胞は、例えば、理研バイオリソースセンターセルバンク等の公知のセルバンクから取得することが可能である。
【0020】
また、本発明のインスリントランスフェリン亜セレン酸塩は、インスリン、トランスフェリンおよび亜セレン酸塩を含んでなる培養添加物であり、例えば、ITS-X (インスリン−トランスフェリン−セレニウム−X;Invitrogen(商標)、 Eugene、USA)等の公知の培養添加物を適用することができる。
【0021】
また、本発明における基礎培地は、無血清培地に適用しうる限り特に限定されないが、好ましくは最小必須培地(MEM)およびダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)であり、より好ましくはDMEMである。
【0022】
本発明の無血清培地における、胚栄養因子およびインスリントランスフェリン亜セレン酸塩の添加量は、幹細胞の種類、性質、細胞生存率、増殖率、分化マーカーの発現等に応じて当業者が適宜決定してよい。
【0023】
また、胚栄養因子の添加量は、その乾燥質量を基準として、好ましくは無血清培地の0.1〜0.001%(w/v) であり、より好ましくは0.01%(w/v)である。
また、インスリントランスフェリン亜セレン酸塩の添加量は、その乾燥質量を基準として、好ましくは無血清培地の0.1〜5%(w/v) であり、より好ましくは1%(w/v)である。
また、本発明の無血清培地における、インスリントランスフェリン亜セレン酸塩と、前記胚栄養因子との質量比は、乾燥質量を基準として、好ましくは1000:1〜10:1であり、より好ましくは100:1である。
【0024】
本発明の無血清培地は、インスリントランスフェリン亜セレン酸塩、ヒト子宮頸部扁平上皮癌細胞由来の胚栄養因子および基礎培地を公知の手法によって添加・混合することにより調製することができる。
【0025】
また、本発明の無血清培地は、幹細胞の培養に適用することが好ましい。したがって、本発明の別の態様によれば、インスリントランスフェリン亜セレン酸塩、ヒト子宮頸部扁平上皮癌細胞由来の胚栄養因子、および基礎培地を含んでなる無血清培地中で、幹細胞を培養する方法が提供される。
【0026】
無血清培地中における幹細胞の培養温度は、特に限定されないが、好ましくは36〜38℃であり、より好ましくは37℃である。
また、幹細胞の培養期間は、特に限定されないが、例えば、3〜7日間とすることができる。
【0027】
また、上記幹細胞は、好ましくは哺乳動物細胞であり、より好ましくはヒト細胞である。また、上記幹細胞は、好ましくは間葉系幹細胞であり、より好ましくは歯髄由来細胞である。ヒト歯髄由来幹細胞は、本発明の無血清培地において安定に生存させ、効率的に増殖する上で特に有利である。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
また、以下の実験は、日本歯科大学研究倫理委員会の審理および承認を得て行われた。また、乳歯および智歯(いずれも上歯)は、被験者の承認の下で、以下の実験に用いられた。また、以下の実験結果は、5回の独立試験の結果を平均± SDで示している。また、統計解析手法は、one-way analysis of variance (ANOVA) およびBonferroni Multiple Comparison testを用い、有意差は* p < 0,05; ** p < 0,001; *** p <0,0005で示している。
【0029】
実施例1:無血清培地
胚栄養因子(ETF)の取得
胚栄養因子(ETF)は、HUMAN CELL 13(4):185-195, 2000 (pressed by Japan human cell society)に記載の方法に準じて以下のようにして取得した。
まず、ヒト子宮頸部扁平上皮癌由来のSKG-II-SF細胞を、ハムF12培地中、37℃にて3〜7日培養して培養液を得、この培養液を凍結乾燥し、得られた物質を生理食塩水で4℃で3日間透析した。次に、透析液を回収後に凍結乾燥し、得られた粉末を回収し、ETFを得た。ETFの組成は、表1に示される通りであった。
【0030】
【表1】

【0031】
調製
ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM) (Invitrogen(商標)、Eugene、USA)に、1% ITS-X (Invitrogen(商標)、 Eugene、USA) および 100 μg/ml のETF)を補足し、無血清培地を得た。
【0032】
参考例1:無血清培地
DMEMに、1% ITS-Xを補足し、無血清培地を得た。
参考例2:無血清培地
DMEMに、100 μg/ml のETFを補足し、無血清培地を得た。
参考例3:無血清培地
DMEMに、 100 μg/ml ETF、1mM ピルビン酸ナトリウム (Invitrogen(商標)、Eugene、USA)、25μg/ml アスコルビン酸 (和光純薬工業(株)、大阪、日本) および4ng/ml FGF-a (Biomedical Technologies Inc., Stoughton, MA)を補足し、無血清培地を得た。
ポジティブコントロール:血清培地
DMEMに10% FBS(Hyclone、Utah、USA) を補足し、ポジティブコントロールとして血清培地を得た。
【0033】
試験例1:生存試験
乳歯歯髄(DTPC)および智歯歯髄(WTPC)の単離
乳歯歯髄細胞(DTPC)を、吸収を起こした歯根管を通じて、滅菌した抜髄針を用いて得た。
また、智歯表面を洗浄し、滅菌したデンタル・フィッシャーバー(dental fissure burs)を用いてそのセメント-エナメル境界周囲部を切断して智歯の髄室を開いた。次に、智歯歯髄細胞(WTPC)を、抜髄針を用いて歯冠および歯根から採取した。
上記歯髄は、3 mg/ml コラーゲンI 型(和光純薬工業(株)、大阪、日本) 溶液中で、37°Cにて 1時間インキュベートした。次に、得られた細胞懸濁液を、25 cm2 フラスコ (TPP(商標)、トラサディンゲン(Trasadingen)、スイス) 中において、 10% FCS (HyClone, Road Logan, USA), 100U/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシンおよび0.25μg/ml アンホテリシン (Invitrogen, Eugene, USA)を補足した ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM) (Invitrogen(商標)、 Eugene、USA)で培養した。4〜10代継代培養のDTPCまたはWTPCを1 × 105 細胞個/ 25 cm2 フラスコの濃度に調製して以下の実験に用いた。
【0034】
DTPCまたはWTPCを、実施例1、参考例1、2、3または4の培地中で48時間37℃にてインキュベートし、それらの生存率をGuava(商標) ViaCount test (Guava Technologies, Massachusetts, USA)を用いて測定した。すなわち、細胞ペレットを、200ulのGuava(商標) ViaCount 試薬中10分間インキュベートし、得られたサンプルをGuava EasyCyte flow cytometry (GE Healthcare Bioscience Co., 東京、日本)で測定した。データの取得および分析には、Guava CytoSoft software (Guava Technologies, Massachusetts, USA)を用いた。
【0035】
DTPCについての結果は、図1に示される通りであった。実施例1における生存率は85,54 ± 10.32%であった。また、参考例1〜3およびポジティブコントロールおける生存率の平均値は、実施例1と同様、いずれも80%を超えていた。
【0036】
また、WTPCについての結果は、図2に示される通りであった。実施例1における生存率は、93.16±2.43%であった。また、参考例1〜3およびポジティブコントロールおける生存率の平均値は、実施例1と同様、いずれも80%を超えていた。
【0037】
試験例2:細胞増殖試験
増殖細胞におけるDNA合成中のBrdU取り込み量を指標とした細胞増殖率(%;ポジティブコントロール比)を以下の手法により測定した。
まず、単離したDTPCまたはWTPCの単核細胞(1 × 104 細胞/ウェル)を、96ウェルプレート (Iwaki, Tokyo, Japan)に播種し、48時間37℃にてインキュベートし、BrdU ラベリング溶液 (Cell Proliferation ELISA BrdU, Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)でラベリングを行った。次に、マイクロプレートリーダー (Bio-Rad Benchmark Plus、Bio-Rad Japan、東京、日本)を用いて、 データの取得および分析を行った。
【0038】
DTPCについての結果は、図3に示される通りであった。実施例1の無血清培地における細胞増殖率20.42±4.03(%)であった。一方、参考例1では12.23±1.13(%)であり、参考例2では12.12±1.28(%)であり、参考例3では13.71±1.79(%)であった。
実施例1の細胞増殖率は参考例1〜3と比較して有意に高い値を示し、実施例1の細胞増殖率の平均値は、参考例1〜3の1.5〜1.7倍であった。
【0039】
WTPCについての結果は、図4に示される通りであった。実施例1の無血清培地における細胞増殖率37.45±4.61(%)であった。一方、参考例1では25.11±4.65(%)であり、参考例2では22.72 ±5.62(%)であり、参考例3では24.76±2.30(%)であった。
実施例1の細胞増殖率は参考例1〜3と比較して有意に高い値を示し、実施例1の細胞増殖率の平均値は、参考例1〜3の1.5〜1.6倍であった。
【0040】
試験例3:細胞マーカー確認試験
DTPCまたはWTPCを 1 x 104細胞/ウェルの濃度で4-チャンバースライド(Nalge Nunc Int., Naperville, USA)に配置した。次に、DTPCまたはWTPCを4% パラホルムアルデヒドで固定し、それら細胞における幹細胞マーカー、CD44H、ネスチン、サイトケラチン19(CK19)、およびP63 の発現を、免疫蛍光染色により検出した。ここで、CD44Hは、間葉系幹細胞のタイプを同定する指標となる1型膜貫通糖蛋白質であり、ネスチンは、中枢神経系(CNS)の幹細胞の有するクラスVI中間径フィラメント蛋白質であり、CK19は島細胞および導管細胞の前駆細胞である内胚葉細胞の特異的マーカー蛋白質であり、P63は上皮幹細胞における転写因子である。
【0041】
免疫蛍光染色における一次抗体としては、抗CD44H抗体、抗Nestin抗体および抗CK19抗体(AbCam, Cambridge, MA, USA) ならびに抗P63抗体 (Santa Cruz Biotechnology Inc., Santa Cruz, CA, USA)を用いた。また、一次抗体を検出するための二次抗体としてAlexa fluor(商標)568-結合ロバ抗マウスIgG (Invitrogen(商標)、Eugene、Oregon、USA) を用いた。
また、核染色にはSYBR Green 1 (Trevigen)は用いた。
【0042】
染色細胞は、共焦点スキャニングレーザー蛍光顕微鏡で観察した。 まず、5つのハイパワーフィールド(×10 倍)を無作為に選択した。次に、染色強度を、Abdel-Latif et al, Clin Exp, Dermatol 2008; 34: 390-395.およびGronthos et al, PNAS 2000; 97(25): 13625-13630.の記載に準じて測定した。次に、ポジティブコントロールと比較して染色が確認された細胞数をカウントし、染色細胞のカウント数を各ハイパワーフィールド中の総細胞数で除した。各パワーフィールドの染色細胞の割合が1%以上25%以下の場合は+と判定し、25%超過50%未満の場合は++と判定し、50%超過75%未満の場合は+++と判定し、75%以上の場合は++++と判定した。
【0043】
DTPCについての結果は、表2に示される通りであった。
【表2】

【0044】
WTPCについての結果は、表3に示される通りであった。
【表3】

【0045】
表1および表2に示される通り、DTPC およびWTPCにおけるすべての幹細胞マーカーに関して、実施例1の無血清培地を用いた場合の発現レベルは、参考例1〜3の無血清培地を用いた場合の発現レベルと比較して同等以上のレベルであった。また、実施例1におけるCD44H、CK19およびネスチンの発現レベルは、ポジティブコントロール(血清培地)と比較しても同等以上のレベルであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリントランスフェリン亜セレン酸塩、ヒト子宮頸部扁平上皮癌細胞由来の胚栄養因子、および基礎培地を含んでなる、無血清培地。
【請求項2】
前記胚栄養因子が、ヒト子宮頸部扁平上皮癌細胞の培養培地から得られる、請求項1に記載の無血清培地。
【請求項3】
前記胚栄養因子が、1L-1β、1L-6、1L-8、1L-10、1L-12、EGF、IGF、GH、PDGF-AB、IGF-BP-3、FGF-BASIC、VEGFおよびLIFを含んでなる、請求項1に記載の無血清培地。
【請求項4】
前記胚栄養因子が、1L-1α、1L-1β、1L-2、1L-3、1L-4、1L-5、1L-6、1L-8、1L-10、1L-12、EGF、TNF-α、TGF-α、IGF、GH、PDGF-AB、IGF-BP-3、FGF-BASIC、VEGFおよびLIFを含んでなる、請求項1に記載の無血清培地。
【請求項5】
前記培養培地が、ヒト子宮頸部扁平上皮癌細胞を36〜38℃で培養した培地である、請求項3に記載の無血清培地。
【請求項6】
前記培養が3〜5日間行われる、請求項5に記載の無血清培地。
【請求項7】
前記基礎培地がダルベッコ改変イーグル培地である、請求項1に記載の無血清培地。
【請求項8】
前記インスリントランスフェリン亜セレン酸塩の添加量が、前記無血清培地の0.1〜5%(w/v)である、請求項1に記載の無血清培地。
【請求項9】
前記胚栄養因子の添加量が、前記無血清培地の0.001〜 0.1%(w/v)である、請求項1に記載の無血清培地。
【請求項10】
前記インスリントランスフェリン亜セレン酸塩と、前記胚栄養因子との質量比が、1000:1〜10:1である、請求項1に記載の無血清培地。
【請求項11】
幹細胞の培養に用いられる、請求項1に記載の無血清培地。
【請求項12】
前記幹細胞が歯髄由来細胞である、請求項11に記載の無血清培地。
【請求項13】
前記幹細胞がヒト細胞である、請求項11に記載の幹細胞。
【請求項14】
インスリントランスフェリン亜セレン酸塩、ヒト子宮頸部扁平上皮癌細胞由来の胚栄養因子および基礎培地を含んでなる無血清培地中で、幹細胞を培養することを含んでなる、幹細胞の培養方法。
【請求項15】
前記培養が36〜38℃で行われる、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−177140(P2011−177140A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46730(P2010−46730)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(502397369)学校法人 日本歯科大学 (20)
【Fターム(参考)】