説明

幾何学的な管のデータを備えた試料管の操作

【課題】改良された試料管および試料管操作システムを提供する。
【解決手段】試料管214には管ラベルが取り付けられ、管ラベルは、試料管の少なくとも1つの幾何学的特性を表す幾何学的な管のデータを少なくとも備える。試料管操作システム200は、読み取り装置202により管ラベルから幾何学的なデータを読み取り、制御装置204へ伝送し、少なくとも1つの幾何学的特性に応じて、試料管を操作する処理装置218を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外診断の分野に関するものであり、より詳細には、生体試料の自動操作システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査室では、試料から得られる分析結果が再現可能かつ正確であることを保証する一方で、1日あたりの処理量を増やさなければならないという課題に直面している。高度に複雑な試料処理ワークフローとなる可能性のある分析前、分析中、分析後の段階のいずれにおいても、エラーが起きる可能性がある。さらなる課題は、膨大な種類の異なる試料のタイプが存在し、試料の操作および自動処理をより複雑にしていることである。一面では、試料管の多様性は、様々な診断、分析、または他の目的のために開発されてきた試料処理ワークフローおよび検査の多様性に起因している。
【0003】
他の面では、様々な種類の生体試料(たとえば、血液、尿、血清、または血漿試料)を収集および処理するため、および/または、様々な種類の分析検査(凝固検査、臨床化学検査、血液学的検査など)のために、様々な材料、試料管寸法、キャップカラーコードを用いる様々な試料製造者に、前述の多様性は起因している。
【0004】
分析品質およびコスト効率についての要求を満たすために、自動試料操作装置の分野において、賢明な解決手段が求められている。
【0005】
現在の分析前、分析後のシステムおよび分析器は、試料管を正確に操作および処理するために、管の形状、試料タイプ、ターゲット容量、キャップタイプなどについての情報を必要とする。現在のシステムでは、この情報は、カメラおよび/またはセンサにより収集されるか、または、ユーザーにより手動で決定されなければならない。しかしながら、手動で実行されるどのような工程も、エラーの元となり、時間がかかり、したがって、高品質な試料処理ワークフローを実行するには適していない。画像分析をベースとした手法は、時間がかかることが多く、エラーの元となる可能性がある。表面が凍っていたり、結露水を含んでいる、凍結または強く冷却された試料を処理する必要がある場合に、エラーが起きる可能性がある。氷や水は試料管の形状や光学的パラメータを変化させる可能性があり、画像分析用のそのような試料から画像が得られたときにエラーを引き起こす可能性がある。また、管がラック内で垂直ではなく、傾いて置かれることにより、管または管のキャップの色を信頼性をもってカメラが検知するのに充分ではないほど弱すぎる光源により、エラーが生じる可能性があり、または、管のラックから突出する管や、他のエラーの原因によりエラーが引き起こされる可能性がある。たとえば、特許文献1には、カメラを備えた試料容器操作装置が開示されている。このカメラは、入れられた試料から写真を撮り、搭載された試料容器の管のタイプを判定するために、イメージライブラリーの試料管の画像と、撮影された写真とを比較する。
【0006】
特許文献2は、診断プロセスにおいて用いる流体物質を含むコンテナを保持するように構成された、複数のキャリアを搭載する搭載ベイを備えたアッセイ検査診断アナライザーシステムを開示している。システム内のバーコードリーダーは、ロボット装置がキャリアをリーダーの近くに通すときに、キャリアおよび試料管または試薬ボトルに付されたバーコード付ラベルを読み取る。動作時には、ロボットアームは搭載ラックからキャリアを持ち上げて、バーコードリーダーを通過して移動させ、キャリアおよび試料を識別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6599476号明細書
【特許文献2】米国特許第7458483号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施形態の目的は、改良された方法、試料管および試料管操作システムを提供することである。この目的は独立請求項の特徴により解決される。本発明の実施形態は、従属請求項により与えられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
「試料」または「生体試料」は、人体または他の生物から得られた、どのような種類の組織または体液をも含む。特に、生体試料は、全血、血清、血漿、尿、脳脊髄液、または唾液試料、またはそれらの派生物であり得る。
【0010】
本明細書において「管」とも呼ばれる「試料管」は、本発明によると、患者から血液試料のような試料を受け取り、その内部に収容された試料を診断目的で分析検査室へ移送するために用いられる、「第1の管」とも呼ばれる試料収集試験管、または、第1の管から分注分を受け取るために用いることができる「第2の管」のいずれかである。第1の試料管は、典型的にはガラスまたは樹脂によりできており、閉鎖端部および開放端部を有し、開放端部はキャップにより閉鎖される。キャップは、異なる材料、形状、色とすることができる。キャップの形状および/または色、および/または、管の形状および/または色は、管の種類、その中に収容された生体試料の種類を示すことができ、および/または試料において実行される分析前、分析中、または、分析後のどの手順かを示すことができる。たとえば、抗凝固剤または凝固誘導剤を含む管や、血漿分離促進ゲルを含む管等がある。異なる種類の第1の管は、単に異なる第1の管の製造業者によるカスタマイズの結果であることもよくある。特に、異なる量の試料を入れるために異なる直径および/または異なる深さを有する第1の管がある。第2の管は典型的には樹脂でできており、第1の管に対して、大きさおよびタイプの変化の程度が小さくてよい。特に、第2の管は第1の管よりも小さくしてもよく、同様の閉止部材のタイプ、たとえばネジタイプの閉止部材で閉止されるようにデザインしてもよい。
【0011】
本明細書で用いられる「キャップ」という用語は、押し引き動作および/またはネジ動作によりそれぞれ開放および/または閉鎖することができる、ネジタイプのキャップおよびゴムストッパを含むどのようなタイプの閉止部材も含む。
【0012】
本明細書で用いられる「ロボットユニット」は、試料管において試料ワークフローステップを自動的に実行できるどのような種類の装置または装置部品であってもよい。
【0013】
「管のタイプ」という表現は、特に、キャップおよび/または管の幅、幾何学的形状および/または高さなどの、共通の幾何学的な構造により特徴付けられる試料管のカテゴリーをいう。必ずではないが一般に、試料管の共通の幾何学的な構造は、その試料管タイプにより運ばれる共通の試料のタイプに対応し、および/または、その管タイプの試料において実行される、分析中、分析前または分析後のワークフローステップの共通のタイプに対応する。たとえば臨床化学分析、血液学的分析または凝固分析など、特定の分析またはワークフローステップの分析前、分析後、分析中の異なる条件に、典型的には異なる管のタイプが適合される。試料管のタイプの混同は、予定された分析用に試料を使うことができなくなる可能性がある。試料の収集および操作におけるエラーを防ぐために、多くの管の製造業者の試料キャップは、一定の同一のカラースキームによりコード化されている。
【0014】
「処理装置」または「ワークセル」は、ユーザーの試料処理をアシストする、単独型の装置または大型の装置内のモジュールである。「試料処理」は、たとえば診断目的のための試料の定性的および/または定量的な評価など、試料の検出、および/または、検出前の試料の分類および/または調製、または、検出後の試料の保管および/または廃棄を含む。特に、ワークセルは、分析試料処理ステップおよび/または分析前試料処理ステップおよび/または分析後試料処理ステップに関連する可能性があり、本明細書ではこれらのステップをまとめて「体外(イン・ビトロ)」ステップという。ワークセルは互いに接続することができ、少なくとも部分的に互いに依存する。たとえば、次のワークセルに進む前の必要条件となり得る、試料処理ワークフローにおける専用の役割をそれぞれが実行する。あるいは、ワークセルは互いに独立して動作してもよく、たとえば、異なるタイプの分析など個別の役割をそれぞれが実行してもよい。「処理装置」は、たとえば、キャップユニット、キャップ除去ユニット、分注器、遠心分離機などであってもよい。
【0015】
一形態において、本発明は、生体試料が収容された試料管を操作する方法に関する。管ラベルが試料管に取り付けられ、管ラベルは管のデータを保持している。管のデータは、試料管の少なくとも1つの幾何学的特性を表す少なくとも幾何学的なデータを含んでいる。この方法は、読み取り装置により管ラベルから少なくとも幾何学的な管のデータを読み取る工程、読み取り装置から処理装置へ少なくとも幾何学的な管のデータを送信する工程、読み取られた幾何学的なデータにより表された少なくとも1つの幾何学特性に応じて試料管を操作する処理装置を制御する工程とを備えている。
【0016】
生体試料の管の幾何学的な管のデータを試料管に設けることにより、試料処理ワークフロー全体を通じて幾何学的なデータが利用可能であることが確実となるので、これらの特徴は有利である。試料管のタイプを識別するためにカラーコード化されたキャップを用いた従来技術のシステムにおいては、試料管からキャップが外されたときに管のタイプの情報が失われてしまう可能性がある。試料管に幾何学的なデータを設けることにより、完全に自動化された試料の処理が確保され、キャップされていない管から幾何学的特性についての情報が失われない。したがって、試料操作ワークフローの速度およびコスト効率が向上し、試料操作プロセスのエラーの生じやすさを低減する。
【0017】
言い換えると、完全に自動化された処理のために実際に必要とされるデータとしての幾何学的なデータは、管の固有の部分であり決して失われない。別の実施形態によると、管タイプ識別子が幾何学的なデータに加えて管ラベル上に設けられ、および/または、管ラベルから読み取られた幾何学的なデータから第2のステップにおいて得られる。幾何学的なデータから管のタイプを得ることにより(従来技術のシステムのように、検出された管のタイプから幾何学的なデータを得ることによるのではなく)、たとえば管のチューブからキャップが除去されたときに、管のタイプの情報が失われないことが保証される。いくつかの実施形態による管のタイプは幾何学的なデータから派生するものであり、その逆ではなく、幾何学的な管のデータが、そのキャップの状態にかかわらず、いつでも利用できるという、格別な安全レベルがシステムに追加される。
【0018】
別の有利な態様において、本発明の実施形態は、第1のステップにおいて、特定の試料のタイプを識別する(たとえば、カラータイプに基づいて、または試料管に印刷された管タイプ識別子に基づいて)ステップを飛ばすことができ、第2ステップにおいて試料管のタイプを識別するための幾何学的なデータを集めることができる。管ラベルから幾何学的特性を直接読み取ることによって、試料操作ユニットに必要とされる幾何学的なデータを集めるのに必要な処理時間が減少する。さらに、幾何学的なデータの獲得によってさらにエラーに強くなる。なぜなら、幾何学的な情報は、試料管識別子に関連する幾何学的なデータを格納している外部記憶装置から間接的にではなく、試料管から直接得られるからである。したがって、本発明の実施形態は、対応する幾何学的なデータを有する試料タイプ識別子を格納したデータベースを維持する必要、または、そのデータベースの接続を維持する必要がない。試料の採取および検査は異なる場所で、異なる機関によって行われるため、そのようなデータベースを維持することは、そもそも不可能であることが多い。
【0019】
別の有利な態様において、本発明の実施形態は、大多数の試料管の幾何学的特性を動的に判定することができ、より一層柔軟である。したがって、汎用的な試料操作ワークセル部品を用いることができ、特定のタイプの試料管や特定の試料製造業者のものに限られない。したがって、汎用的な試料管操作部品は、どのような種類の分析前試料操作ワークセル、分析試料操作ワークセル、分析後試料操作ワークセルやそれらの部品とも組み合わせることができる。なぜなら、試料管が試料管の幾何学的なデータを特定するラベルを備えている場合は、これらの部品は、どのような種類の試料管とも作動することができるからである。
【0020】
別の有利な態様において、本発明の実施形態は、特定の生体試料が試料操作装置の入力位置に到達したときはいつでも、試料を操作する装置により必要とされる幾何学的なデータが利用可能であることを保証する。従来技術のシステムでは、間違ったまたは不明な試料タイプの試料が誤って試料処理パイプラインに置かれてしまったときは、複雑な自動試料ワークセルの動作は中断される場合があった。それは、不明な試料タイプの試料用の幾何学的なデータが見つけ出せなかったからである。それぞれの幾何学的なデータをラベル上に備えた試料管を用いることにより、試料管が特定の試料操作装置により操作されるべきか、そしてどのように操作されるべきかを決定するために必要なすべての情報が、いつでも利用可能となることを保証する。したがって、識別されていない管タイプにより生じる処理ワークフローにおける障害を防ぐことができる。
【0021】
さらに、カメラベースのシステムのデメリット、特に、管の構造の不正確な判定、管の内部構造がわからないことによる試料の容量の不正確な判定、および試料の不透明性による管の回転または非回転状態の不正確な判定を防ぐことができる。管の構造の判定に用いられる、管タイプを判定するためのカメラベースのキャップカラーの判定は、エラーを生じやすいことがわかってきており、キャップが除去されると管タイプの情報が失われる。
【0022】
別の有利な態様において、本発明の実施形態によると、定期的な管タイプライブラリーの更新は不要となる。もし、たとえば管製造業者が、その直径などの幾何学的特性が管ラベルに格納またはコード化された完全に新しい種類の管を製造した場合、本発明の実施形態による処理装置は、新しい管のタイプを「識別する」ために再プログラムされる必要がない。なぜなら、試料管の処理に実際に使用される幾何学的なデータは、管ラベルから直接的に得られるからである。したがって、処理装置は、管タイプライブラリーにアクセスし、識別された試料タイプに関連して格納された幾何学的なデータを検索する必要がなく、ゆえにそのような管タイプライブラリーを定期的に更新する必要がない。要するに、本発明の実施形態は、管タイプライブラリーを維持し、検索(照会)せずに、いかなる管タイプの必要とされる幾何学的特性をも自動的に判定することができる、試料操作システムを開発および作動させることができる。読み取り装置がデータを読み取ることができるようにコード化された幾何学的な管のデータを備えた管ラベルを、管の製造業者が取り付けた場合または別の例により取り付けた場合、どのような種類の新しい試料管のタイプも直ちにそして自動的に、試料操作システムにより認識可能および処理可能となる。管の製造業者により開発された新たな管タイプで、試料管タイプライブラリーを更新する必要はない。
【0023】
本明細書で用いられる「幾何学的な管のデータ」という用語は、管の全体または管の部分の幾何学的特性を示すどのようなデータも含み、特に、管シャフトおよび/または管のキャップ、またはこれらの組み合わせの幾何学的特性を示すデータを含む。
【0024】
実施形態によると、幾何学的特性は、PDF417、Codebloc等、バーコードエンコーディング規格によりコード化される。このことは、管タイプの製造業者および試料処理装置の製造業者が同じエンコーディング/デコーディング規格を使用する場合、そのエンコーディングスキームに基づくワークセルはその管の製造業者または他の管の製造業者のどのような管のタイプも処理することができるという点で、有利である。唯一の要件は、管の幾何学的特性がこの規格に従ってコード化されることである(および管の寸法が、処理装置の物理的な実現性の範囲内にあることである)。
【0025】
実施形態によると、管のデータは、以下の試料管の幾何学的特性の1つまたは2つ以上を含む。管の外径、管の内径、上げ底(false bottom)の位置および形状、管の長さ、管のキャップの直径、管のキャップの自由高さ。
【0026】
幾何学的特性はいろいろな方法で規定することができる。一実施形態によると、幾何学的特性は、たとえば、インクリメント方式で規定することができる。幾何学的特性の上限または下限(すなわち、システムにより処理するために管タイプが有することが可能な幾何学的特性の最大値または最小値。たとえば、管の内径または管の長さ)は、管ラベルから幾何学的特性を読み取ることができる試料管処理システムの読み取り器によりわかる。代わりに、この限度は、試料処理システムに接続され、読み取り器から幾何学的特性を含む管のデータを受け取る処理装置または計算ユニットに知られている。本明細書において用いられる、部材に「知られている(to be known)」とは、このデータが、その部材によりアクセス可能かつ読み取り可能であるデータ記憶装置に格納されていることを意味する。幾何学的特性のインクリメントは管ラベルにコード化される。個々の管のための幾何学的特性の値は、読み取り器、計算ユニット、または処理装置により、リミットにインクリメントを加算(下限の場合)またはリミットからインクリメントを減算(上限の場合)することにより判定される。
【0027】
他の実施形態では、幾何学的なデータの値それ自体は、管ラベルに数値として格納される。この数値は、管のデータ内に単位を与えず、この数字は読み取り器により読み取られた後、特定の単位の値、たとえばミリメートルとして読み取られる。同様に、この数値の単位もまた管ラベル上に格納することができる。
【0028】
さらに、管ラベル内にコード化された幾何学的特性のタイプのための約束事があり得る。このタイプの幾何学的特性は、たとえば、管ラベル内のデータ値の位置に基づいて、および/または、管ラベルに含まれる文字列またはデータパターン内の位置に基づいていてよい。たとえば、連続した数字内の第1位置は、幾何学的特性の値のタイプである「内径」を特定する値を含んでいてよく、第2位置は、幾何学的特性の値のタイプである「管の長さ」などを特定する値を含んでいてよい。また、幾何学的特性のタイプが、幾何学的特性の値とともに、管ラベルに与えられる。
【0029】
表1は、上述したコードスキームの一例を示している。Var2は、いくつかの幾何学的特徴の最小値と最大値が与えられたインクリメント方式の幾何学的特性である。管ラベルは管ラベルが取り付けられる管のインクリメントを保有し、実際の構造は、最小値にインクリメントを加算することにより判定される。示された例では、インクリメントは1であるが、1の整数倍となり得る。Var3は整数値としての幾何学的パラメータを与えており、読み取り器は、数値が示す幾何学的特性のタイプを、連続した数字内の数値の位置により判定する。Var4において、対応する数値により示される幾何学的特性のタイプを表す数値に加えて、英数字ヘッダーが与えられる。表1はまた、それぞれの情報をコード化するのに必要なビット数を示している。Var2では、21ビット(3バイト)が必要であり、一方、Var3では10ビット、Var4では15バイトがラベル上に必要である。
【0030】
【表1】

【0031】
表2は、上記変形例のデータをコード化するのに必要な二次元バーコード用のラベルサイズを示している。幾何学的なデータに加えて、固有の管のIDに必要なスペースもまた考慮される。結果的に生じるラベルサイズは、試料管上の利用できるスペースとよく対応していることがわかる。これらのサイズのラベルは、たとえ円筒状の試料管に適用されたとしても、従来の二次元バーコードリーダーにより読み取ることが可能である。
【0032】
【表2】

【0033】
実施形態によると、処理装置は、試料管または試料のキャップを受け取るかまたは解放する開放位置、および、試料管または試料のキャップをグリップするグリップ位置を有するグリッパーを備え、少なくともグリップ位置は少なくとも1つの幾何学的特性に応じて調整される。いくつかの実施形態では、グリッパーは管グリッパーまたはキャップグリッパーである。システムは、管ラベルにおいて特定された幾何学的なデータに応じて制御される、1つまたは2つ以上の管グリッパー、キャップグリッパー、またはグリップ装置の他の形態をどのように組み合わせたものも含むことができる。たとえば、開放位置はロボットグリップアームの初期位置としてもよい。いくつかの実施形態によると、開放位置およびグリップ位置の両方は、幾何学的特性に応じて調整される。管を解放するために、グリップアームの径が管のキャップの径よりもわずかだけ大きい開放位置を用いることは有利であろう。処理される次の試料管が前に処理された管と同一または類似したキャップの径を有する場合、グリップアームはグリップ径の調整をより迅速に行うことができるであろう。本明細書において使用される「位置」という用語は、試料管と相互作用しおよび/または試料管を処理するのに使用されるロボット装置または装置構成要素の任意の配置または状態としても見なされるべきであり、「グリップ位置」は処理ステップを実行できる状態または配置であり、一方、「開放位置」は他の装置構成要素により別の処理をするために試料管を解放することができる状態または配置である。
【0034】
管データは、グリッパーが管のどこをどのようにグリップするのかを自動的に決定することを可能にするであろうし、キャップをする部材(capper)またはキャップ除去部材(de-capper)がどんなキャップが管についているのかを決定すること、および、それに応じてキャップ機構またはキャップ除去機構を調整することを可能にするであろう。
【0035】
実施形態によると、処理装置は、管グリッパーおよびキャップグリッパーを備えた、キャップ除去部材または再キャップ部材(re-capper)である。管グリッパーは試料管の形状の幾何学的特性に応じて制御され、キャップグリッパーは、管のキャップの幾何学的特性に応じて制御される。
【0036】
実施形態によると、管グリッパーは、第1管グリップ具と、第2管グリップ具とを備え、第1管グリップ具は第2管グリップ具についてバイアスをかけることが可能であり、第2管グリップ具と協働する。たとえば、第2管グリップ具がグリップする前に、第1管グリップ具はたとえばコンベアベルトまたはラックからその管をグリップして持ち上げる。そのような順序により、第1グリップ具の力および接触面よりも大きな力および接触面で第2グリッパーがグリップすることが達成できる。このダブルグリップ機構により、よくある管キャリアと閉止部材との間の狭いスペースにおいて、管の側壁をより小さなグリップ手段によりグリップすることを可能にし、より安全なグリップのためにより大きくより強いグリップ具が側壁のより長い部分をグリップできる高さまで管を持ち上げることができる。
【0037】
実施形態によると、処理装置は、試料管を遠心分離機に載せる搭載ステーションを有する自動遠心分離機である。搭載ステーションはグリッパーを備え、グリッパーは、読み取られた幾何学的な管のデータに応じて、試料管を遠心分離バケット内に置くために制御される。これは、いくつかのケースで、異なる管のタイプに収容された多数の異なる生体試料に類似または同一の遠心分離プログラムを適用できるので、有利であろう。それぞれの試料を含む異なる試料管の直径および重量がほぼ等しい場合、共通する幾何学的な管のデータに基づいて、それらをともに1つの同じ遠心分離機に搭載することにより、遠心分離ステップを備えた試料操作ワークフローの効率を向上させることができる。
【0038】
本発明の実施形態によると、幾何学的なデータは搭載された試料の重量を判定するのに用いられる。判定された重量は、ほぼ等しい重量の試料を互いに対向する位置にある遠心分離バケット内に搭載するために再び用いられる。言い換えると、複数の試料管の管ラベルにより特定された幾何学的なデータは、試料管を遠心分離機のバケット内でバランスされるように自動的に分配するために評価される。遠心分離機にバランスされるように搭載することは、遠心分離ロータにおける対向するバケット内に入れられた試料管が大体同じ場合を含み、したがって、遠心分離機がアンバランスになることを防ぐことができる。この実施形態によると、重量は、試料を含んだ管の測定された重量と組み合わされた、管の内径を特定する幾何学的なデータにより得ることができる。
【0039】
別の実施形態によると、バランスされるように遠心分離機に搭載することは以下のステップを実行することにより、はかりの助けを借りることさえなく達成することができる。この工程は、センサまたは他の光学式読み取り装置により試料管内の試料の充填レベルを判定する工程と、読み取り装置により、試料の管ラベルから、少なくとも管の内部容量を計算することができる管の幾何学的特性を示す幾何学的なデータを読み取る工程とを有している。この特性は、たとえば、管の径、好ましくは管の内径とすることができる。外径によってもまたおおよその管の内部容量を計算することができる。判定された充填レベルと、幾何学的な特性を示す読み取られた幾何学的なデータは、試料管内に収容された試料の実際の容量を計算するための入力として使用される。全てのサンプルの密度が、全てのサンプルで同一またはほぼ同一であると仮定すると、ほぼ等しい容量の試料はほぼ等しい重量のサンプルとして扱われて、遠心分離ロータの対向するバケット内に自動的に搭載される。著しく異なる密度の試料の集合的な遠心分離が予定される場合は、追加のステップにおいて、それらそれぞれの容積および密度から試料の重量を計算するため、および、遠心分離機の対向するバケット内にほぼ等しい重量の試料を搭載するために、追加の入力パラメータとして密度が用いられる。密度情報は、いくつかの実施形態によると、管ラベルにおいて特定されてよい。この特徴は、追加の装置構成要素(はかり(scale))を必要とせず、物理的な重量を測るステップを実行するために時間を無駄にすることなく、バランスされた、完全に自動化された方法での遠心分離機の搭載を可能にする。
【0040】
実施形態によると、試料管はネジ式キャップを有する。管のデータは、試料管からネジ式キャップを取り外すのに必要な回転数を示す、管のキャップのデータを含む。処理装置は、キャップグリッパーを備えたキャップ除去部材であり、キャップグリッパーは、読み取られた管のキャップのデータにより示された回転数でネジ式キャップを回転するために制御される。
【0041】
実施形態によると、この方法はさらに、読み取られた幾何学的特性を用いることにより、または、読み取り装置により管ラベルから空の試料管の重量を読み取ることにより、空の試料管のおおよその重量を判定する工程と、生体試料が収容された試料管の重量を測定する工程と、空の試料管と生体試料を収容する試料管との間の重量の差を判定する工程とを備える。
【0042】
読み取られた幾何学的特性を用いた空の試料管のおおよその重量の判定には、たとえば試料管の内径と外径、そして管の高さを入力として用いることにより、試料管の材料であるガラスまたは樹脂材料の容積を計算する工程を含んでいてもよい。計算された容積が与えられ、ガラスまたは使用された樹脂製品の密度が与えられると、管の重量が計算される。他の実施形態によると、試料管の重量は、管のデータ内で特定してもよい。たとえば、空の試料管の重量を示す第1重量情報が管のデータから読み取られる。そして、全血試料を含む管の重量が測定され、第2重量情報が得られる。第1および第2重量情報の差が、試料の重量を示す。
【0043】
いくつかの好ましい実施形態によると、その方法は、試料管の重量の差および幾何学的特性を用いることにより、試料管の充填レベルを判定するステップをさらに備える。たとえば、全血などの特定の試料のタイプのわかっている密度から、および、判定された試料の重量から、全血試料の容量が、たとえば、ミリリットルの単位で、計算され得る。試料管の別の幾何学的特性、特にその内径を読み取ることにより、試料管の充填レベルが計算され得る。この特徴は、画像分析に基づく充填レベル判定の障害となる水分、氷、または他の物質により試料管表面が覆われた場合であっても、自動的に信頼性のある判定をすることができ、有利である。判定された充填レベルにより、別の試料処理ユニットが、遠心分離ペレットの要素を吸い込むことなく、誤って試料のメニスカス上に位置付けられたピペットチップにより空気を吸い込むことなく、試料の分注をすることができる。
【0044】
実施形態によると、読み取り器は光学式リーダーまたはRFIDリーダーである。
【0045】
実施形態によると、管ラベルはバーコード、特に二次元バーコードなど、光学的に読み取り可能なパターンを備えている。
【0046】
「バーコード」は機械読み取り可能な光学的なデータの表示である。バーコードは、たとえば、一次元バーコードまたは二次元バーコードであってよい。リニアバーコードは、幅および間隔が変えられた一連の平行な線を備えている。二次元バーコードは、二次元内に長方形、多角形、または他の幾何学パターンを含んでいてよい。バーコード内に格納されたデータは、スキャナとも呼ばれる光学的読み取り装置により読み取られる。
【0047】
二次元バーコードを用いることは、情報密度、すなわち、試料管の表面積あたりの情報の量が、特定の試料管のタイプを適切に処理するために必要な情報の全てを格納することができるので、有利である。たとえば、試料管の正確な高さおよび壁厚を特定する二次元バーコードにより、無駄容量(デッドボリューム)を大幅に減らすことができる。別の有利な態様では、製造され、典型的には既に包装された試料管を殺菌するために管の製造業者により一般的に用いられているガンマ線照射の点で、二次元バーコードは特に強い。実施形態では、5mm×5mmの大きさのバーコードは、キャップ除去ユニットまたはキャップユニットが自動的に、かつ正確に試料管のキャップ除去または再キャップをするのに必要な全ての幾何学的なデータを備えている。
【0048】
いくつかの実施形態によると、二次元バーコードはデータマトリックスコードである。データマトリックスコードは、正方形状の領域上に散らばった複数の正方形状のコードエレメントを備えた正方形状の二次元バーコードであり、この散らばったコードエレメントがデータマトリックスコードのデータの内容を特定する。
【0049】
実施形態によると、スキャナは、光学的に読み取り可能なパターンを読み取り、このパターンを画像データ、たとえば、jpgまたは他の画像フォーマットの形で画像分析コンポーネントに伝送する。この伝送は、プッシュ型であっても、プル型であってもよい。画像分析コンポーネントは、スキャナの一部(すなわち、読み取り装置の一部)、処理装置の一部、またはスキャナおよび/または処理システムに接続されたソフトウェアコンポーネントの一部であってよい。このソフトウェアコンポーネントは、検査室のミドルウェアコンポーネントでもよいし、または検査室のラボ情報システム(LIS)のモジュールであってもよい。画像分析はその中にコード化された管の幾何学的特性を判定するためにこのパターンを評価する。
【0050】
実施形態によると、試料管にアンテナが取り付けられる。管ラベルはアンテナを介して管のデータを送る送信機を備える。
【0051】
実施形態によると、管ラベルはRFID回路、特に高分子印刷電気回路を備える。RFID回路を用いることは、そのチップからのデータの読み取りが、試料を凍結させることにより生じる、または凍結または冷却された試料を暖かく湿気のある環境に移動させることにより生じる、表面の氷や結露水など、光学的に歪める影響に対して特に強いので、有利である。高分子電子回路を用いることは、そのような種類の回路が、光学的に歪める影響に対して強く、試料管の殺菌の間に適用されるガンマ線照射により生じるダメージに対してもまた強いため、特に有利である。
【0052】
実施形態によると、管のデータは、製造工程が完了し、かつ管の殺菌の前に、管の製造業者により試料管に印刷されるか、または取り付けられる。
【0053】
実施形態によると、試料管は上げ底の管であり、管の幾何学的な管のデータはさらに、上げ底の幾何学的特性、特に管シャフト内の上げ底の存在および/または位置を含む。上げ底は、管の外側の形状が、通常の処理具に適合すべきときに、より少ない液体容量用によく用いられる。液体をそのような上げ底管内にピペット操作する、または、上げ底管から液体を吸い上げる処理ユニットは、底に穴があくのを避けるため、また、無駄容量(デッドボリューム)を最小化するために、自動的にそのような底の位置を自動的に考慮に入れる。したがって、上げ底管の幾何学的特性を特定することは、「従来の底管」に加えて、そのデータにより上げ底管の完全な自動化および安全な操作を可能にするので、有利である。実施形態によると、読み取り装置は、上げ底の幾何学的特性のどのような仕様についての管のデータも評価する。読み取り装置、制御装置または他のあらゆるシステムコンポーネントが幾何学的なデータから充填レベルを自動的に判定する場合、その上げ底の幾何学的特性は、上げ底に対する充填レベルを正確に計算するために、追加情報として採用される。
【0054】
実施形態によると、管のデータは分離ゲル層の存在についての情報および任意には位置についての情報、キャップデザイン(ヘモガード(Hemogard(登録商標))、ザルスタット(Sarstedt(登録商標))、ネジ式キャップなど)および/または管タイプ識別子についての情報をさらに備えている。
【0055】
別の実施形態によると、管ラベルは、最小の期間にわたって加速力(g−force)が加わると、および/または最小の加速力の強さを越えると変化するパターンをさらに備えている。この実施形態によると、存在する加速力を感知可能なパターン、たとえば、管ラベルの別のバーコードセクションが、加速力が加えられる結果として破壊されてもよい。代わりに、新しいパターンが、加速力が加わると事前に均一に着色された管ラベルの領域において見えるようになるか、または、その領域において事前に存在するパターンが変わってもよい。このような加速力感知可能な管ラベル領域は、たとえば、欧州特許出願公開第2397225号明細書に記載されており、これによりその全体が参照として本明細書に援用される。この加速力感知可能なパターンは、同様に二次元コードの他の形態、たとえばマトリックスコードも表すことができる。
【0056】
これらの特徴は、試料管の回転/非回転状態についてのカメラベースの判定が、エラーを生じやすい傾向にあるので有利であろう。試料管に加速力感知可能ラベル領域を含むことにより、静的な管の幾何学的特性が、管の状態(回転/非回転)についての情報の動的な変化と組み合わされ、完全な自動試料操作のために、両方の種類のデータがバーコードリーダーのような読み取り装置にアクセス可能にされる。これによって、回転および非回転の試料が手動で、またはカメラにより事前に分類されるときに、従来技術のシステムで生じるエラーを防止する。別の有利な態様では、既にバーコードスキャナのような光学式読み取り装置を備えたシステムは、管の回転/非回転状態を判定するための別のハードウェアコンポーネントを必要としない。
【0057】
実施形態によると、複数の試料管は処理装置により操作され、所定の試料管のタイプに関わりなく、試料管のタイプのそれぞれの少なくとも1つの幾何学的特性は、所定の範囲内の任意の値を有する。
【0058】
これは、いくつかの試料管処理ステップは、予定された試料処理ステップ(たとえば、特定の分析)または試料のタイプに依存するのではなく、いくつかの幾何学的特性のみに依存するので、有利であろう。たとえば、特定の試料管の径またはキャップの径が、特定のキャップをする部材またはキャップを除去する部材により処理可能な管の径またはキャップの径の範囲内にあるかどうかを判定するために、試料分類ユニットは、読み取られた試料の幾何学的特性を用いることができる。したがって、全ての試料が径の範囲に基づいて試料のグループに分類され得る。これにより、それぞれのグループ内の全ての試料が特定のキャップをする部材またはキャップを除去する部材により処理可能である。多くのキャップをする部材またはキャップを除去する部材は、試料管をキャップするおよび/またはキャップを除去するためのロボットグリップアームを備え、最小および最大のグリップアーム径により特徴付けられる。上述の分類ユニットは、利用できるキャップをする部材またはキャップを除去する部材の要求に応じて、異なる管の径またはキャップの径を有する複数の試料管をフレキシブルに分類するために使用することができ、それにより、完全な自動化された、および同時に高い柔軟性を有する試料処理とすることができる。
【0059】
別の態様では、本発明は管ラベルを有する試料管に関する。試料管は、管データを保持し、その管データは、試料管の少なくとも1つの幾何学的特性を表す少なくとも幾何学的な管のデータを備えている。
【0060】
別の態様では、本発明は試料管を処理するシステムに関し、試料管は生体試料を収容する。少なくとも1つの試料管は試料管に取り付けられた管ラベルを有し、管ラベルは管のデータを保持する。管のデータは、試料管の少なくとも1つの幾何学的特性を表す少なくとも幾何学的な管のデータを備えている。システムは、管ラベルから少なくとも幾何学的な管のデータを読み取る読み取り装置と、制御装置を備えた試料管を操作する処理装置とを備え、読み取り装置は幾何学的な管のデータを制御装置に入力する処理装置に連結され、制御装置は幾何学的な管のデータに応じて処理装置を制御できる。
【0061】
実施形態によると、処理装置はキャップを除去する装置、再キャップ装置、キャップホルダまたは自動遠心分離機である。
【0062】
実施形態によると、システムはさらに試料管を備える。試料管のそれぞれは、管のデータを保有する管ラベルが取り付けられ、それぞれの試料管の管のデータは、試料管の少なくとも1つの幾何学的特性を表す幾何学的な管のデータを少なくとも備えている。
【0063】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して例示によりさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】生体試料を収容した試料管を自動的に操作する方法のフローチャートを示す。
【図2】複数の試料管と、読み取り装置と、処理装置を備えたシステムを概略的に示す。
【図3a】バーコードラベルを含む試料管を示す。
【図3b】RFID回路を含む試料管を示す。
【図4】試料管の様々なパーツを示す。
【図5】複数の試料管、読み取り装置および他の処理装置を備えたシステムを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1は生体試料を収容した試料管212を自動的に操作する方法のフローチャートを示している。第1のステップ102では、少なくとも幾何学的な管のデータ210が読み取り装置202により管ラベルから読み取られる。管ラベルは試料管に取り付けられる。たとえば、管ラベルは製造過程の間に試料管の表面に印刷されたインプリントでもよい。同様に、管ラベルは試料管が製造された後に、たとえば被着剤により試料管の表面に付けることもできる。管ラベルは、試料管の少なくとも1つの幾何学的特性を表す、少なくとも幾何学的な管のデータを含む管のデータを保持している。さらなるステップ104では、読み取り装置により読み取られた幾何学的な管のデータは、読み取り装置から処理装置218へと伝送される。ステップ106では、処理装置は、読み取られた幾何学的なデータに表された少なくとも1つの幾何学的特性に応じて制御される。たとえば、この制御ステップは、読み取られた幾何学的なデータにおいて特定されたキャップの直径に基づいて、試料管のキャップを除去するために、ロボットグリッパー216がどのグリップ位置を用いるべきかを決定することができる。
【0066】
図2は、試料操作システム200を概略的に示し、このシステムは複数の試料管214と、読み取り装置202と処理装置218とを備えている。異なる管のタイプの複数の試料管は、異なる試料タイプの生体試料を含んでいる。試料管は処理装置に対して移動される。試料管は選択的に管キャリア上に保持され、管キャリアは、単一管キャリア、いわゆる「パクス(puks)」であってもよく、また複数管のキャリア、いわゆる「管ラック(tube racks)」であってもよい。複数管のキャリアは、たとえば5つまで、または6つ以上の管を受け入れる複数の受容部を備えており、典型的に異なる管のタイプ、すなわち多様な直径および高さを有する管を受け入れるように構成されている。図示された実施形態によると、処理システム(キャップ除去装置)は、単一管キャリアおよび/または管ラック(図示せず)上の試料管を移動させるように構成された管用コンベアベルトを備えている。このコンベアベルトは、モータによって駆動され、管を一度にキャップ除去ステーションと並ぶように動かすために管を段階的に移動させるように配置された、補助用移送バンドや補助用移送ガイドのような移送ユニットを備えてもよい。この移送ユニットは特別なキャリア上の管を移動させるように構成してもよいし、逆に処理装置の要求に応じてカスタマイズされてもよい。ある実施形態(示していない)では、パクスおよび/または管ラック用の試料管をこれらの特別なキャリアに移送する再フォーマット装置が、処理装置に動作可能に連結されていてもよい。
【0067】
複数の試料はシステムの入力位置に到達し、コンベアベルト208により、それぞれの試料のラベルが読み取り装置202によって読み取られ得る「読み取り位置」へと移送される。読み取り装置202は、管ラベル上に表示された少なくとも幾何学的な管のデータを読み取り、処理装置218の一部である制御装置204に読み取った管のデータを送る。実施形態によると、読み取り装置は、試料管212の管ラベル210から、たとえば二次元コードなどの光学的データを読み取ることができるスキャナとすることができる。他の実施形態によると、読み取り装置202は、試料管のラベル210の一部であるRFID回路308.2からデータを読み取ることができるRFIDリーダーとすることもできる。処理装置218は試料管212でワークフローステップを実行するロボットユニット216を備えている。実施形態に応じて、処理装置218は、分析前試料操作システム、分析試料操作システムまたは分析後試料操作システムのユニットとしてもよいし、完全な分析前ワークセル、分析ワークセル、分析後ワークセルとしてもよい。ロボットユニットは、制御装置によって読み取り装置202から受け取られた管のデータに応じて、制御装置204により制御されるグリッパーであってもよい。グリッパーはグリップユニットの一部としてもよい。
【0068】
図示された実施形態によると、処理装置は搭載された試料管を自動的にキャップ除去するキャップ除去装置である。たとえば、グリッパー216は異なる直径、キャップ高さ、表面の質感のキャップなどを有する異なる複数の管のキャップを除去することができる。
【0069】
図示された実施形態では、グリッパーはロボットアームであり、試料管を受け取るおよび/または解放する開放位置と、試料管をグリップするグリップ位置とを備えている。少なくともグリップ位置は、試料管の少なくとも1つの幾何学的特性に応じて調整される。
【0070】
実施形態によると、グリッパー216は、グリップアームの直径を、受け取った管のデータにより特定された管のキャップの直径に動的に調整することができるロボットグリップアームである。グリップアームは、「開放位置」においては、特定の初期直径を有しており、直径が、グリッパー216の物理的な既定の最大直径または最小直径を越えない前提で、試料管のキャップの直径となるまで拡大、縮小が可能である。読み取られたキャップの直径までグリップアームの直径を調整することにより、グリッパー216は異なるキャップの直径を有する複数の異なる試料管214のそれぞれを処理することができる。実施形態によっては、試料管の幾何学的なデータに動的に応じて、グリッパーはグリップユニット216内で、その垂直位置および/または水平位置を動的に調整することができる。したがって、異なる管の高さ、異なる管のキャップの高さ、異なるキャップの質感(滑らかか、溝付きかなど)、異なるキャップの形状(円形か、多角形か)などに対して動的に調整することができる。
【0071】
試料管にキャップをする、またはキャップを除去するのに必要な回転数の情報をラベルが含む実施形態によると、管ラベルの幾何学的なデータにおいて特定された回転数を管のキャップに適用することによりキャップ除去ステップを実行するために、グリッパー216はこの情報を使用することができる。
【0072】
図3aはバーコード308.1を有する管ラベル306を備えた試料管212を示している。この試料管は、たとえばプレスロック式またはネジ式キャップとすることができるキャップ302を備えている。このラベル306はバーコード308.1に加えて人が読み取り可能なラベルセクションを備えている。この管ラベル306は試料管の表面304にインプリントされるか取り付けることができる。バーコードは、スキャナのような光学式読み取り装置により読み取りが可能な二次元コードである。図示された試料管の管シャフトは、他の管のタイプにはない管ネック312を備えている。
【0073】
図3bは図3aの試料管に対応する試料管212を図示しているが、管ラベルとしてバーコードの代わりにRFID回路308.2を備えている。好ましくは、RFID回路308.2は、試料管およびRFID回路に取り付けられたアンテナ314を介してエネルギーを受け取る受動的なRFID回路である。対応する読み取り装置はRFIDリーダーである。RFIDリーダーまたは他の装置はRFID回路のエネルギー源として作用する電磁場を発生させる。RFID回路が電磁場内に移動したとき、RFID回路は、RFID回路内に格納された管のデータをアンテナを介してRFIDリーダーへ送るのに充分なエネルギーを、そのアンテナ314を介して得ることができる。
【0074】
図4は、試料管の様々なパーツを図示している。試料管は管の内径404および管の外径406を有している。管の外部から視認できる管のキャップの高さ(管のシャフトのいくつかの部分を覆う可能性がある)は、管のキャップの自由高さ408という。キャップは全ての管のタイプにあるわけではないが、全ての管は特定の管シャフト長さを有する管シャフトから構成されている、または備えている。管の底から管のキャップの頂部(または、キャップがない管の場合は、管シャフトの頂部)までの距離の長さは、本明細書において管長さ414という。キャップがない管の管シャフト長さ410は、その管長さと同一である。鳥瞰したときに見える管のキャップの外径は「キャップの径」412という。
【0075】
図5は、別の自動試料操作システム500を概略的に図示している。このシステムは、複数の試料管214と、読み取り装置202と、他の処理装置514とを備えている。処理装置は、管グリッパー502を有する管グリップユニット522と、管キャップグリッパー508を有するキャップ除去ユニット524と、ピペッタ516を有するピペットユニットと、再キャップ部518を有する再キャップユニット528とを備えている。処理装置514は完全に自動化された試料ワークセルであり、コンベアベルト208または他のロボット移送設備により複数の試料214を移送することができる。管グリッパー502は、管のキャップ(もしあった場合)の幾何学的特性ではなく、試料管の形状、たとえば管の外径または管の高さなどの幾何学特性に応じて制御されるロボットアームである。制御装置は、読み取り装置202から受け取った幾何学的な管のデータに従って管グリッパーのグリップアームの位置を特定することができる。グリップアームの2つの異なる位置である開放位置506およびグリップ位置504は、2つの点線矢印により示されている。キャップ除去ユニット522のキャップグリッパー508および再キャップユニット528のキャップグリッパー518はそれぞれ、たとえば、キャップの直径または管のキャップの自由高さなど、試料管のキャップの幾何学特性に応じて制御されるロボットアームである。管のいくつかの幾何学的特性、特にその高さはキャップグリッパーにより用いられることもでき、キャップグリッパーの垂直位置を管のキャップの高さに動的に調整する。実施形態によると、管グリッパー502が管を位置付け、キャップグリッパー508が位置付けられた試料管のキャップを除去することができる。キャップが試料管からうまく取り除かれると、ピペッタ516は試料から分注分を吸い上げるか、試薬をピペット操作し試料内に入れることができる。実施形態によると、管の底に触れることなく、また、液体を試料管に入れすぎることなく、試料管212''から吸引することができる容量または試料管212''へ加えることができる容量を計算するために、制御装置204は、試料管ラベル210から読み取られた少なくともいくつかの幾何学的データを用いる。その後試料管はピペットユニット526から再キャップユニット528へ自動的に送られ、そこで異なるグリップ径530、532に適合可能なキャップグリッパー518は試料管212''へ新たなキャップを付ける。最後の試料管212'''はコンベアベルトにより保管ユニット(図示せず)へ移動することができる。様々な試料処理ユニット522、524、526および528は同一のまたは複数の異なるハードウェアモジュールまたは検査装置の一部とすることができる。管グリッパーとキャップグリッパーとの間の相互作用は、たとえば米国特許第6599476号明細書および米国特許第5819508号明細書においてより詳細に説明されており、これらはその全体が本明細書において参照により援用される。管グリッパーの一例は米国特許第5819508号明細書の図3および対応する記載箇所により与えられている。キャップグリッパーの一例は前述の文献の図5および対応する記載箇所により与えられている。
【符号の説明】
【0076】
102 ステップ
104 ステップ
106 ステップ
200 試料管処理システム
202 読み取り装置
204 制御装置
206 グリップユニット
208 コンベアベルト
210 管ラベル
212 試料管
214 複数の試料管
216 グリッパー
218 第1の処理装置
220 開放位置
222 グリップ位置
302 管のキャップ
304 管の表面
306 管ラベル
308.1 バーコード
308.2 RFID回路
310 人が読み取り可能なデータセクション
312 管ネック
404 管の内径
406 管の外径
408 管のキャップの自由高さ
410 管シャフト長さ
412 管のキャップの径
414 管長さ
500 試料管処理システム
502 管グリッパー
504 管のキャップユニットの管グリッパーのグリップ位置
506 管のキャップユニットの管グリッパーの開放位置
508 キャップ除去ユニットのキャップグリッパー
510 キャップ除去ユニットのキャップグリッパーの開放位置
512 キャップ除去ユニットのキャップグリッパーのグリップ位置
514 第2の処理装置
516 ピペッタ
518 再キャップユニットのキャップグリッパー
522 管グリップユニット
524 キャップ除去ユニット
526 ピペットユニット
528 再キャップユニット
530 キャップ除去ユニットのキャップグリッパーの開放位置
532 キャップ除去ユニットのキャップグリッパーのグリップ位置
212’ 様々な処理ステージにおける試料管212
212'' 様々な処理ステージにおける試料管212
212''' 様々な処理ステージにおける試料管212

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料を収容する試料管(212)を操作する方法であって、前記試料管には管ラベル(210、306)が取り付けられ、前記管ラベルは管のデータを保有し、前記管のデータは、前記試料管の少なくとも1つの幾何学的特性を表す幾何学的な管のデータを少なくとも備え、
前記方法が、
読み取り装置(202)により前記管ラベル(210、306)から少なくとも前記幾何学的な管のデータを読み取る工程(102)と、
前記読み取り装置から処理装置(218)へ、少なくとも前記幾何学的な管のデータを送信する工程(104)と、
読み取られた幾何学的なデータにより表された少なくとも1つの幾何学的特性に応じて、前記試料管(212)を操作する前記処理装置(218)を制御する工程(106)と
を備えている方法。
【請求項2】
前記管のデータが、
管の外径(406)、管の内径(404)、管の長さ(414)、管のキャップの径(412)、管のキャップ(302)の自由高さ(408)、上げ底の位置および/または形状のうちの1つまたは2つ以上の試料管の幾何学的特性を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記処理装置が、グリッパー(216、502、508、518)を備え、前記グリッパーが、前記試料管または前記試料管のキャップを受け取るかまたは解放するための開放位置(220、506、510、530)、および前記試料管または前記試料管のキャップをグリップするグリップ位置(222、504、512、532)を有し、少なくとも前記グリップ位置が前記少なくとも1つの幾何学的特性に応じて調整される請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記処理装置が、管グリッパー(502)およびキャップグリッパー(508、518)を備えたキャップを除去する部材または再キャップ部材であり、前記管グリッパーが前記試料管の形状についての幾何学的特性に応じて制御され、前記キャップグリッパーが前記管のキャップの幾何学的特性に応じて制御される請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記処理装置が、試料管を遠心分離機に搭載する搭載ステーションを備えた自動遠心分離機であり、前記搭載ステーションがグリッパーを備え、前記グリッパーが、読み取られた幾何学的な管のデータに応じて前記試料管を遠心分離バケットに置くために制御され、前記幾何学的なデータが、搭載された試料の容量および/または重量を判定するために用いられ、判定された容量または重量が、ほぼ等しい重量またはほぼ等しい容量の試料を互いに対向して位置する遠心分離バケットに搭載するために用いられる請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記試料管がネジ式キャップを有し、前記管のデータが、前記試料管からネジ式キャップを取り外すのに必要な回転数を示す管のキャップのデータを含み、前記処理装置がキャップグリッパーを備えたキャップを除去する部材であり、前記キャップグリッパーが、読み取られた管のキャップのデータにより示された回転数で、前記ネジ式キャップを回転するために制御される請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法がさらに、
読み取られた前記幾何学的特性を用いることにより、または、前記読み取り装置により前記管ラベルから空の試料管の重量を読み取ることにより、空の試料管のおおよその重量を判定する工程と、
生体試料を収容した試料管の重量を測定する工程と、
前記空の試料管と前記生体試料を収容した試料管の間の重量差を判定する工程とを備え
る請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法がさらに、前記重量差および前記幾何学的特性を用いて、前記試料管の充填レベルを判定する工程を備える請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記読み取り装置が光学式リーダーまたはRFIDリーダーである請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記管ラベルが、光学的に読み取り可能なパターンである請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記光学的に読み取り可能なパターンが、バーコードである請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記バーコードが、二次元バーコードである請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記試料管にアンテナ(314)が取り付けられ、前記管ラベルが前記アンテナを介して前記管のデータを送信する送信機を備える請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記管ラベルがRFID回路(310)を備える請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記管ラベルが、高分子印刷電気回路である請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記処理装置により複数の試料管が操作され、前記試料管のタイプのそれぞれの少なくとも1つの幾何学的特性が、試料管のタイプに関わらず所定の範囲内の任意の値を有する請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
管ラベル(210、306)を有する試料管(212)であって、前記管ラベルが管のデータを保有し、前記管のデータが前記試料管の少なくとも1つの幾何学的特性を表す幾何学的な管のデータを少なくとも備える試料管(212)。
【請求項18】
試料管(214、212)を処理するシステム(200、500)であって、前記試料管が生体試料を収容し、前記試料管の少なくとも1つが前記試料管に取り付けられた管ラベル(306)を有し、前記管ラベルが管のデータを保有し、前記管のデータが、前記試料管の少なくとも1つの幾何学的特性を表す幾何学的な管のデータを少なくとも備え、
前記システムが、
前記管ラベルから少なくとも幾何学的な管のデータを読み取る読み取り装置(202)と、
制御装置(204)を備えた、前記試料管を操作する処理装置(218、514)とを備え、
前記幾何学的な管のデータを前記制御装置に入力するために、前記読み取り装置が前記処理装置に連結され、前記制御装置が、前記幾何学的な管のデータに応じて前記処理装置を制御可能であるシステム。
【請求項19】
試料管(214、212−212''')をさらに備え、前記試料管のそれぞれに前記管ラベルが取り付けられ、前記管ラベルが管のデータを保有し、前記試料管のそれぞれの管のデータが、前記試料管の少なくとも1つの幾何学的特性を表す幾何学的な管のデータを少なくとも備える請求項18記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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