説明

広い開口角を有する合成光ビームを生成するための光システム

【課題】光モジュールの出口で合成光ビームの開口角を広げられる光システムを提供する。
【解決手段】光源12から光軸Xに沿って、合成光ビームを生成するための光システム14であって、合成光ビームは、少なくとも1つの中央光ビームと、中央光ビームを取り囲む少なくとも1つの周辺光ビームとを含み、光軸Xに対して直交する平面において所定の方法で合成光ビームを再分布させるための光拡散器に向けられる光システム14に関する。光システムは、光軸Xを含む第2の平面において、中央光ビームおよび/または周辺光ビームを生成して、中央光ビームおよび/または周辺光ビームの光線16.1、16.2、17.1、17.2が、光軸Xの両側に、光軸Xに対して、それぞれ傾斜するように構成して、中央光ビームおよび/または周辺光ビームを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ビームを生成するための光システムと、このような光システムを備える光モジュールとに関する。
【背景技術】
【0002】
限定的ではないが、本発明による光システムおよび光モジュールは、自動車に装備するように構成されたものであり、生成される光ビームは、灯火機能(例えば、ロービーム、ハイビーム、フォグビーム)または指示機能(例えば、位置表示灯、方向指示灯、制動表示灯、後退灯、後部霧灯、昼間走行灯)の役割を果たす。
【0003】
特許文献1から、単一の信号源から光軸に沿って、複数の光ビームから構成される合成光ビームを生成するための光システムであって、複数の光ビームは、中央光ビームと、中央光ビームを取り囲む周辺光ビームとである、光システムが、すでに知られている。この目的のために、コリメータが、光源の近傍に、例えば、半空間内に均等拡散発光が可能な発光ダイオード(LED)の近傍に、設けられ、この光源は、前記光システムの光軸に設置される。
【0004】
このコリメータは、一般に、光軸を中心とした回転対称を有し、単一の一体構造部品から製造され、この単一の一体構造部品の外部輪郭は、中央ビームおよび周辺ビームを生成可能な特定の形状を有する。より正確に言えば、コリメータの外部輪郭は、光源が設けられた第1の側に、円筒状の中間部分を介して相互につながる中央部分および周辺部分を有し、第1の側と対向する第2の側に、光軸に対して垂直の平面下流部分を有する。中央部分の形状は、焦点が光源に位置する凸状である。周辺部分の形状は、同様に焦点が光源にも位置する放物状である。
【0005】
このように、中央光ビームは、光源によって放出された光線がコリメータの外部輪郭の中央部分で屈折することによって生成されが、中央光ビームの光線は、互いに平行であり、かつ、光軸に対しても平行である。周辺光ビームに関して、この周辺光ビームは、光源によって放出された光線が中間部分で屈折し、その後、これらの同じ光線がコリメータの周辺部分で全内部反射することによって生成され、周辺光ビームの光線は、中央光ビームおよび中央光ビームを取り囲む周辺光ビームの光線に平行である。
【0006】
このように生成された合成光ビームは、中央光ビームおよび周辺光ビームを含み、照明を発生するように構成された複数のマイクロ構造体が装備された光拡散器に向けられ、この照明は、コリメータの光軸に対して直交する平面において、特に、ビームの均一性および開口角に関して、照明を形成するように構成された、自動車の道路灯および/または指示灯の現行の規則に関連する一定の特徴を呈する。この光拡散器は、可能な限りコリメータの近くに配置された(マイクロ構造体を装備した)スクリーンの形をとるか、または、好ましくは、コリメータの一部として直接製造されたマイクロ構造体の形をとることができる。一体構造のシステムの場合には、マイクロ構造体は、拡散器の出口面にのみに配置できることに、留意されたい。
【0007】
前述した特許文献1に記載されたコリメータは、単一の一体構造部品として形成され、この単一の一体構造部品が、単一の一体構造部品と相補的な形状を有する型を用いて簡単に製造可能であるという点、および光源によって半空間内に放出されるすべての光強度の方向を効率的に変更可能であるという点で、特に有益である。
【0008】
しかしながら、一体構造タイプのコリメータによって生成される合成光ビームの開口角は、光拡散器を形成するマイクロ構造体の全内部反射制限角によって制限され、コリメータからの光線は、この制限角内において屈折されなければならない。特に、互いに平行であり、かつ、光軸に対して平行である光線を有する合成光ビームに関しては、この制限角は、約35°の最大開口角になる。しかしながら、自動車の灯火器のほとんどに適用可能な規則では、この制限角より小さな開口角(例えば、20°)が要求されるが、対照的に、これらの灯火器のうちのある特定のものに対しては、より広い開口角が要求される。例えば、後退灯に関しては、水平開口角は、およそ45°(45°の光強度は、全光強度に対して15〜20%に近い)でなければならず、かつ、垂直開口角は、約5°でなければならない。
【0009】
特許文献2から、この制限を解消するために、光拡散器として追加のスクリーンを使用でき、その光拡散器では、拡散器要素の入口面にマイクロ構造体が配置される、ことがさらに知られている。この構成により、光拡散器を通過した後で、凹面を有するマイクロレンズの全内部反射制限角から得られる開口制限より広い開口角を有する、灯火ビームおよび/または指示ビームが得られので、結果的に得られる光ビームの水平開口角は、例えば、45°または50°に等しい角度に達することが可能である。
【0010】
しかしながら、この解決策では、少なくとも1つの中間光要素の追加を伴うので、光モジュールの製造がより複雑になる。この場合には、これらの要素の位置合わせが必要である。このような光モジュールは、コストがさらにかかり、かつ、さらに嵩張り、その上、フレネル係数によりさらなる光損失(約15〜20%)が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】仏国特許FP2919913号
【特許文献2】欧州特許EP2230446号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のことから、本発明の目的は、広い開口角を有する灯火器および/または指示灯(例えば、後退灯)の製造を可能にすると同時に、単純なデザインの小型光モジュールを提供するために、特に、光システムおよび光拡散器を備える単一の一体構造部品の製造に重点を置くことによって、上述した光モジュールの出口で合成光ビームの開口角を広げられるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するために、本発明によれば、光源から光軸に沿って合成光ビームを生成するように構成された光システムであって、合成光ビームは、
− 少なくとも1つの中央光ビームと、前記中央光ビームを取り囲む少なくとも1つの周辺光ビームとを含み、
− 前記光軸に対して直交する第1の平面において所定の方法で前記合成光ビームを分布させるために、光拡散器に向けられており、
光システムは、前記光軸を含む第2の平面に前記中央光ビームおよび/または前記周辺光ビームを生成して、前記中央光ビームおよび/または前記周辺光ビームの光線が、前記光軸の両側に、前記光軸に対してそれぞれ傾斜するように構成される。
【0014】
このようにして、本発明によれば、合成光ビームは、少なくとも部分的に、光軸に対して非ゼロ角で予め配向できることで、中間光システムを追加する必要がなく、(光軸を含む)光ビームの伝播平面において所望の開口角に達するために、光拡散器への全内部反射制限角に対応する開口角を超過可能であり、このような開口角の超過は、上述した先行技術(光システムが、光軸に対して平行な光線で形成された光ビームを生成するコリメータである場合)には、達成できない。
【0015】
さらに、中央光ビームおよび周辺光ビームの並置から生じる合成光ビームは、中央光ビームおよび/または周辺光ビームの傾斜を再現しないが、これは、前記合成光ビーム内で、光軸に対して直交する平面において、光の分布のコントラストを実質的に減じるように構成された光拡散器を通過することによって修正されるためである。
【0016】
さらに、合成光ビームは、光拡散器によって第1の平面に再分布された後に均一でないことはあまり重要ではないが、これは、灯りを観察する使用者にとって強度レベルが高い(例えば、およそ100カンデラ)、自動車の後退灯の実装のような応用の場合に、暗い照明領域またはゼロ照明領域が存在しても不利益ではないためである。さらに、低輝度の領域の寸法が、観察者が視認できないほどに小さいものであることがわかる。
【0017】
合成光ビームが(光システム上に配置されたスクリーンであってもよく、または、好ましくは、前記光システムの一体部品を形成する)光拡散器を通過する前に、合成光ビームの少なくとも一部分がこのように予め配向されることで、本発明により、光は、円錐状に再分布され、この円錐の開口角は、前記光拡散器を通過した後に、先行技術による前記光拡散器(光拡散器内において光線の屈折の適用が望まれるもの)のマイクロ構造体の全内部反射制限角に対応するものより広い。したがって、開口角は、このように予め配向されたビームの振幅に応じて、例えば、45°などの、ビームの伝播平面において高い値に達し得る。
【0018】
本発明は、光軸を含む平面において、特定の形状の中央光ビームおよび/または周辺光ビームを生成することによって、上述した先行技術の光システムの回転対称を崩すので、生成される合成光ビームの光強度分布を可変にして、光軸を含む平面において、所望の開口角が得られるようにすることに、留意されたい。
【0019】
本発明は、上述した先行技術のコリメータを単に適応することによって実施することができ、その結果、本発明による方法を実施する光システムが、実質的に小型でありながら、(特に、単一の一体構造部品からなる)単純なデザインであることにも、留意されたい。
【0020】
好ましくは、本発明による光システムは、第2の平面において、前記中央光ビームおよび前記周辺光ビームを生成するように構成されており、中央光ビームおよび周辺光ビームの光線のすべてが、光軸の両側に、前記光軸に対して、それぞれ傾斜するように構成される。
【0021】
第2の平面において、合成光ビームの開口角が、光拡散器によって前記第1の平面に再分布された後に、少なくとも45°に等しくなければならない場合に、中央光ビームおよび/または周辺光ビームの光線は、前記光拡散器によって第1の平面に再分布される前に、光軸の両側に、前記光軸に対して5°〜15°の範囲の角度で、それぞれ、傾斜されうる。
【0022】
この場合には、好ましくは、第2の平面において、中央光ビームおよび/または周辺光ビームの光線は、光拡散器によって第1の平面に再分布される前に、光軸の両側に、前記光軸に対して、10°〜20°の範囲の角度で、それぞれ傾斜する。
【0023】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、第2の平面において、光システムは、実質的に放物面の第1の部分および第2の部分を含む周辺部分を有し、前記部分が、
− 前記光軸の両側にそれぞれ位置し、
− 共通の焦点を有し、
− 光源が前記共通の焦点に位置するときに、前記光源によって放出された光線が、前記光拡散器によって前記第1の平面に再分布される前に、前記光軸の両側で、実質的に放物面の前記部分に反射した後で、前記光軸に対して、それぞれ傾斜するように、それぞれ構成される。
【0024】
このようにして、周辺光ビームは、光軸の両側に、上述した先行技術によるコリメータと類似した実質的に放物面の部分によって得られるが、実質的に放物面のこれらの部分を、焦点が一致するように配置すると同時に、前記実質的に放物面のそれぞれの軸が、光軸に対して、傾斜するように、再配向される。このようにして、これらの部分に反射される光線は、前記部分の軸に沿ってそれぞれ伝播することにより、光軸に対して傾斜する。
【0025】
本発明は、共通の焦点に対して収束または発散する中央光ビームおよび/または周辺光ビームを生成することによって実施されうるが、拡散ビームを生成することが好ましいことに、留意されたい。この目的のために、実質的に放物面の第1および第2の部分の軸は、前記光源によって放出される光線の伝播方向に対して光源の下流で、放物面の対応する部分の側にそれぞれ位置する。
【0026】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、光システムは、単一の一体構造部品から形成されており、この一体構造部品の断面は、第2の平面において、光源が設けられた側に、中間部分を介して周辺部分につながる中央部分を含むことができ、中間部分の断面は、第2の平面における断面が直線の線分であり、前記周辺部分は、実質的に放物面の第1および第2の部分を含む。
【0027】
一体構造部品の製造を単純化するために、中間部分の断面は、光源によって放出された光線の伝播方向に対して、前記光源の下流で光軸を切り取る直線に沿って伸びる。このようにして、本発明による光システムの外部輪郭の中央部分は、製造後に容易に取り外し可能な型によって、形成されうる。
【0028】
対称的な照明を得るために、本発明による光システムは、平面に対して対称的でありうるものであり、その平面は、光軸を含み、かつ、第2の平面に直交する。
【0029】
また、本発明は、
− 単一の光源と、
− 光システムの光軸に設けられた光源から合成光ビームを生成するための、上述した実施形態の1つによる光システムと、
を備える光モジュールに関する。
【0030】
本発明の1つの有益な実施形態では、光モジュールは、前記光軸に対して直交する平面において、所定の方法で合成光ビームを再分布させるための、光拡散器をさらに備える。
【0031】
好ましくは、光拡散器は、前記光システムの一体部品を形成する。
【0032】
好ましくは、光拡散器は、また、複数のパターンを含み、その複数のパターンの形状は、光軸に対して直交する平面に所定の方法で合成光ビームを再分布するように決定される。
【0033】
添付の図面は、本発明の実施方法の理解を促す。同図において、同一の参照番号は同様の要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】先行技術による灯火装置および/または指示装置用の光モジュールの斜視図。
【図2A】図1の光モジュールに一体化された光システムの、光軸に対して横断方向の断面図。
【図2B】図1の光モジュールに一体化された光システムの、光軸に対して軸方向の断面図。
【図3】図1の光モジュールの軸方向断面図。
【図4】図2の光システムの光軸に対して直交する平面において、光拡散器によって再分布される前の、前記光システムによって生成される合成光ビームの投影図。
【図5】図2の光システムの光軸に対して直交する平面において、光拡散器によって再分布された後の、前記光システムによって生成される合成光ビームの投影図。
【図6】本発明による光システムの横断面図である。
【図7】図6の光システムが装備された、本発明による光モジュールの軸方向断面図。
【図8A】図6の光モジュールに一体化された光システムの軸方向断面図。
【図8B】図6の光モジュールに一体化された光システムの軸方向断面図。
【図9】図6の光システムの光軸に対して直交する平面において、光拡散器によって再分布される前の、前記光システムによって生成される合成光ビームの投影図。
【図10A】図6の光システムの光軸に対して直交する平面において、光拡散器によって再分布された後の、合成光ビームに対する前記光システムの2つの対向する側の一方での寄与の投影図。
【図10B】図6の光システムの光軸に対して直交する平面において、光拡散器によって再分布された後の、合成光ビームに対する前記光システムの2つの対向する側の他方での寄与の投影図。
【図11】図6の光システムの光軸に対して直交する平面において、光拡散器によって再分布された後の、前記光システムによって生成される合成光ビームの投影図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図面において、光システムは、(アセンブリおよび機械的調節要素とは対照的に)重要な光学的役割を有する要素のみを含み、縮尺を考慮せずに略図で示されている。
【0036】
図1に示す先行技術による光モジュール1は、光源2を備えており、光源2は、例えば、発光ダイオード(LED)であり、LEDは、半空間内への均等拡散発光体であり、例えば、停止灯用の赤色LEDである。この光源2は、ラジエータ3Aに関連付けられ、かつ、プリント回路3Bに既知の方法で装着される。モジュール1は、また、コリメータ4を備え、コリメータ4は、光源2に対して、中央光ビーム6と、前記中央光ビーム6を取り囲む周辺光ビーム7とを含む合成光ビーム6、7を生成するように構成されており、これらの2つのビーム6および7の光線は、互いに対して平行であり、かつ、前記モジュール1の光軸X−Xに対しても平行である。最後に、光モジュール1は、照明灯および/または指示灯に該当する対応規則に従って、合成光ビーム6、7の光を再分布するために、コリメータ4の下流に設けられた光拡散器5を備える(ただし、光拡散器5は、コリメータ4に材料を追加した形をとるものであってもよい)。
【0037】
図2に、コリメータ4がより詳細に示されている。コリメータ4は、1つの一体構造部品から構成され、光軸X−X(図2A)を中心にした回転対称を有し、コリメータ4の外部輪郭4.1〜4.4(図2B)は、中央光ビーム6および周辺光ビーム7を生成可能な形状を有する。
【0038】
より正確に言えば、光源2の側で、コリメータ4の外部輪郭は、光軸X−Xに対して実質的に平行であり、中間直線部分4.2を介してつながる、中央部分4.1および周辺部分4.3を有する。また、光源2の反対側で、コリメータ4の外部輪郭は、光軸X−Xに対して垂直である下流平面部分4.4を有する。
【0039】
中央部分4.1は、下流部分4.4の中央部分とともに、凸レンズを形成し、凸レンズの焦点は、光源2に位置し、中央光ビーム6が、光源2によって放出された光線6.1、6.2、および6.3が、コリメータ4の外部輪郭の中央部分4.1で屈折し、次いで、下流部分4.4の中央部分で屈折することによって得られ(図3)、これらの光線6.1〜6.3は、光軸X−Xに対して平行である。
【0040】
周辺部分4.3は、放物状の形状を有し、放物状の形状の対称軸は、光軸X−Xであり、焦点Fは、光源2に位置決めされるので、周辺光ビーム7が、中間部分4.2で光源2によって放出され、次いで、前記周辺部分4.3に対応する表面で全内部反射し、最終的に、下流部分4.4の周辺部で屈折することによって、得られ(図3)、これらの光線7.1および7.2は、また、(光拡散器5を通過する前に)光軸X−Xに対して平行である。加えて、周辺光ビーム7は、中央光ビーム6を隣接して取り囲む。
【0041】
このように生成された合成光ビームは、中央光ビーム6および周辺光ビーム7を含み、光拡散器5(図3)の方へ向けられるように構成され、光拡散器5は、スクリーンの形をとり、スクリーンの表面5.2は、複数のマイクロ構造体5.1を有し、かつ、スクリーンの他方の表面は、平面であり、光モジュール1の光軸X−Xに対して直交する平面(Y−Y;Z−Z)において、特に、均一性および開口角に関して、自動車の照明および/または指示灯に対して現行の規則に関連する一定の特徴を呈する照明を生成する。
【0042】
図4に、光拡散器5を通過する前に、光軸X−Xに対して直交する第1の平面(Y−Y;Z−Z)にこのように生成された合成光ビームの投影が示されている。この合成光ビームは、中央において、中央光ビーム6と、前記中央光ビーム6の周りの周辺光ビーム7との並置から生じる。図4において、2つの相互に直交する軸Y−YおよびZ−Zに沿ったこの合成光ビームの投影の寸法は、ΔYおよびΔZで示されている。
【0043】
前述したように、光拡散器5によって生成された開口角は、光拡散器5のパターン5.1内の全内部反射制限角によって制限される。図5には、光拡散器5を通過した後で、光拡散器から一定の距離に位置し、光軸X−Xに対して直交する第1の平面(Y−Y;Z−Z)(図5において、前記平面(Y−Y;Z−Z)におけるビームの投影の寸法ΔYおよびΔZが対応する面)における合成光ビームの投影が示されており、2つの軸Y−YおよびZ−Zに沿った合成光の開口角は、拡散器の入口面にマイクロ構造体を設置せずに、すなわち、拡散器がコリメータから離れた位置にあることが示唆された状態で、45°に達し得ない。
【0044】
先行技術による光モジュール1を改良し、かつ、光システムおよび光拡散器を単一の一体構造部品から形成できるようにするために、本発明の案は、光軸に対して平行な光線を有し、かつ、前記光軸X−Xを中心とした回転対称を有する光ビームではなく、光線が伝播する(光軸X−Xを含む)平面に応じて異なる特性を有するビームを生成可能な光システム14を、コリメータ4に替えて設けるというものである。
【0045】
この光システム14は、同じ平面において円形状(図2A)であるコリメータ4とは対照的に、長円形状の単一構造部品から構成され、この単一構造部品の長軸は、例えば、図6に示すような軸Z−Zに従って位置する。この光システム14は、光源12に対して、隣接した中央光ビーム16と、前記中央光ビーム16を取り囲む周辺光ビーム17とを含む合成光ビーム16、17を生成するように構成される。
【0046】
拡散器15を含む平均的な平面への光線の入射角がゼロでないため、出現する光線は、45°より大きい角度で偏向することができ、これにより、約45°の水平開口角を有する後退灯が設計可能になる。
【0047】
この目的のために、光システム14を形成する一体構造部品の外部輪郭は、光システム14の断面に応じてさまざまな形をとる。特に、平面(X−X;Y−Y)の断面の場合には、図8Aに示す光システム14の外部輪郭は、図2および図3のコリメータ4のものと実質的に同一である。
【0048】
しかしながら、前述した平面(X−X;Y−Y)に対して直交する第2の平面(X−X;Z−Z)の断面の場合には、図8Bに示す光システム14の外部輪郭は、広い開口角を有するビームの形成に適応された形状を有する。光源12の側に、光システム14の外部輪郭は、断面(X−X;Y−Y)において、図2および図3のコリメータ4の周辺部分4.3より大きい傾斜を有する、実質的に放物状の2つの部分14.31および14.32から形成された周辺部分14.3を有する。
【0049】
光システム14の外部輪郭は、また、角度α16.1およびα16.2のそれぞれに従って、光軸X−Xに対して光線16.1および16.2を偏向するように構成された2つの部分14.11および14.12から形成された中央部分14.1を有する。
【0050】
周辺部分14.3および中央部14.1は、2つの直線部分14.21および14.22から構成され、かつ、光軸X−Xに対して正の角度βをなす、中間部分14.2によってつなげられることにより、前記部分14.21および14.22は、直線に沿って伸び、その直線は、(前記光源によって放出された光線の伝播方向に対して)光源の下流の位置に定められた点Dで光軸と交差する。このようにして、これらの(正数またはゼロであってよい)角度βによって、光システム14の中央部分14.1は、容易に取り外し可能な成形ツールによって形成可能である。
【0051】
より正確には、図8Bを参照すると、上述した第2の平面(X−X;Z−Z)において、周辺部分14.3は、光軸X−Xの方側では、実質的に放物面14.31の第1の部分から形成され、光軸X−Xの反対側では、実質的に放物面14.32の第2の部分とともに形成される。実質的に放物面のこれらの2つの部分の焦点が一致することにより、実質的に放物面14.31および14.32のその前記部分が、共通の焦点Fを有する。
【0052】
加えて、本発明によれば、光軸X−Xの両側にそれぞれ位置するこれらの2つの部分14.31および14.32は、光源12が、前記部分の共通の焦点Fに位置するときに、前記光源12によって放出された光線17.1および17.2などの光線が、それぞれ、放物面14.31および14.32の前記部分でそれぞれ反射した後で、角度α17.1およびα17.2に従って、前記光軸X−Xに対して傾斜する。
【0053】
周辺光ビーム17が(周辺光ビームの伝播方向に対して)発散ビームになるように、実質的に放物面の第1の部分14.31および第2の部分14.32のそれぞれの軸B−Bおよび軸C−C(図8B)は、対応する放物面の部分の側に、(周辺光ビームの伝播方向に対して)光源12の下流にそれぞれ位置する。ここで、実質的に放物面の部分の軸は、対応する放物面がその一部分だけではなく、完全に存在している場合には、対応する放物面の対称軸を意味することを、理解されたい。
【0054】
このようにして、断面(X−X、Z−Z)において、周辺光ビーム17の光線17.1および17.2は、それぞれ、部分14.21および14.22で屈折し、次いで、実質的に放物面14.31および14.32の部分で全内部反射によって適切な態様で向けられ(図7)、これらの光線17.1および17.2は、角度α17.11(正)およびα17.21(負)に従って前記光軸X−Xに対して、光軸X−Xの両側にそれぞれ傾斜する。
【0055】
中央光ビーム16は、その一部に対して、光源12によってそれぞれ放出された光線16.1および16.2が、部分14.11および14.12で屈折することによって得られ(図7)、これらの光線16.1および16.2は、角度α16.11(正)およびα16.21(負)に従って、光軸X−Xに対して、発散および傾斜する。
【0056】
光源12の反対側では、光システム14の外部輪郭は、光拡散器15を形成するパターン15.1のセットを有する。
【0057】
2つの上述した断面(X−X;Y−Y)および(X−X;Z−Z)の間では、例えば、断面(X−X;A−A,図6)において、光システム14の外部輪郭の形成は、例えば、平面(X−X;Y−Y)(図8A)での形成から平面(X−X;Z−Z)(図8B)での形成へ連続的かつ進行的に広がり、一体構造部品は、途切れることなく光システム14を形成する。
【0058】
光拡散器15(図7)を通過した後で、このように生成された照明は、現行の規則に従った分布と、約45°の水平方向の開口角とを呈し、光線16.1、16.2、17.1、および17.2は、光拡散器15を通過する前の前記光線の角度α16.11、α16.21、α17.11、およびα17.21のそれぞれより大きい角度α16.12、α16.22、α17.12、およびα17.22のそれぞれに従って、光軸X−Xに対して傾斜する。
【0059】
この場合には、(光拡散器15を通過した後の)合成光ビームは、図10Aおよび図10Bに示す2つの寄与、すなわち、
− 正の角度(この場合には、光線16.1および17.1を含む)に従って、光軸X−Xに対して配向された合成光ビーム16、17の部分に対応する第1の寄与18.1(図10A)と、
− 正の角度(この場合には、光線16.2および17.2を含む)に従って、光軸X−Xに対して配向された合成光ビーム16、17の部分に対応する第2の寄与18.2(図10B)と、
の重なりから生じる。
【0060】
これらの2つの寄与18.1および18.2の並置から得られる合成光ビーム18が、図11に示されている。寸法ΔYおよびΔZが対応するビームの開口角は、光システムおよび光拡散器を形成する単一の一体構造部品を有する、先行技術の実施形態によって得られるものより大きな値に達しうる。
【0061】
所与の光に関する現行の規則に基づいた(それぞれ異なりうる)パターン15.1の形状および寸法の決定は、当業者の能力の範囲内で、現在の慣例の一部を形成する。
【0062】
45°の水平方向の開口角を得るためには、水平面(X−X;Z−Z)において、およそ5〜15°、好ましくは、10〜12°の範囲の、中央光ビーム16および/または周辺光ビーム17の光線の傾きが適切であることが、観察された。
【0063】
図6〜図11を参照すると、上述した本発明は、発散周辺光ビーム17の場合を表すが、本発明は、また、収束周辺光ビームで実施されてもよい点に、留意されたい。この目的のために、光システム14の外部輪郭の周辺部分14.3の形状が、角度α17.11(負)およびα17.21(正)によって、光軸に対して傾斜した光線17.1および17.2を生成するのに、適応される。この場合には、放物面の第1の部分14.31および第2の部分14.32の軸B−BおよびC−Cは、(前記光源12によって放出された光線17.1および17.2の伝播方向に対して)光源12の下流で、放物面14.31または14.32の対応する部分に対して、それぞれ両側に位置する。したがって、発散ビームの場合のように、最大45°の光の再分布を得るためには、部分14.11、14.12、14.31、14.32と光拡散器15との間の距離を主に調節するので、周辺光ビーム17が、収束せずに発散しながら、前記拡散器15に達する。しかしながら、ビームを発散させるように光拡散器15を十分に引き離す必要があり、この理由から、図6〜図11の実施形態が好ましいことに、留意されたい。
【0064】
いずれにせよ、本発明の重要な点は、光拡散器15の各パターン15.1が、光線の単一の傾斜を受けることである。
【0065】
慣例により、上述した平面および角度は、三角法の認識の下で配向される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源(12)から光軸(X−X)に沿って、合成光ビーム(16,17)を生成するための光システム(14)であって、前記合成光ビーム(16,17)は、
− 少なくとも1つの中央光ビーム(16)と、前記中央光ビーム(16)を取り囲む少なくとも1つの周辺光ビーム(17)とを含み、
− 前記光軸(X−X)に対して直交する第1の平面(Y−Y;Z−Z)において所定の方法で前記合成光ビーム(16、17)を分布させるために、光拡散器(15)に向けられるており、
前記光システム(14)は、前記光軸(X−X)を含む第2の平面(X−X;Z−Z)において、前記中央光ビーム(16)および/または前記周辺光ビーム(17)を生成して、前記中央光ビーム(16)および/または前記周辺光ビーム(17)の光線(16.1、16.2、17.1、17.2)が、前記光軸(X−X)の両側に、前記光軸(X−X)に対して、それぞれ傾斜するように構成された、
光システム。
【請求項2】
前記第2の平面(X−X;Z−Z)において、前記中央光ビーム(16)および前記周辺光ビーム(17)を生成して、前記中央光ビーム(16)および前記周辺光ビーム(17)の前記光線(16.1、16.2、17.1、17.2)のすべてが、前記光軸(X−X)の両側に、前記光軸(X−X)に対して、それぞれ傾斜するように構成された、請求項1に記載の光システム。
【請求項3】
前記第2の平面(X−X;Z−Z)において、前記合成光ビーム(16、17)の開口角が、前記光拡散器(15)によって前記第1の平面(Y−Y、Z−Z)に再分布された後に、少なくとも45°に等しくなければならないために、前記中央光ビーム(16)および/または前記周辺光ビーム(17)の光線(16.1、16.2、17.1、17.2)が、前記光拡散器(15)によって前記第1の平面(Y−Y、Z−Z)に再分布される前に、前記光軸(X−X)の両側に、前記光軸(X−X)に対して5°〜15°の範囲の角度(α16.11、α16.21、α17.11、α17.21)で、それぞれ傾斜する、請求項1または2に記載の光システム。
【請求項4】
前記第2の平面(X−X;Z−Z)において、前記中央光ビーム(16)および/または前記周辺光ビーム(17)の前記光線(16.1、16.2、17.1、17.2)が、前記光拡散器(15)によって前記第1の平面(Y−Y、Z−Z)に再分布される前に、前記光軸(X−X)の両側に、前記光軸(X−X)に対して10°〜12°の範囲の角度(α16.11、α16.21、α17.11、α17.21)で、それぞれ傾斜する、請求項3に記載の光システム。
【請求項5】
前記第2の平面(X−X;Z−Z)において、実質的に放物面の第1の部分(14.31)および第2の部分(14.32)を含む周辺部分(14.3)を有し、前記第1の部分(14.31)および前記第2の部分(14.32)が、
− 前記光軸(X−X)の両側にそれぞれ位置し、
− 共通の焦点(F)を呈し、
− 前記光源(12)が前記共通の焦点(F)に位置するとき、前記光源(12)によって放出された光線(16.1、16.2、17.1、17.2)が、前記光拡散器(15)によって前記第1の平面(Y−Y、Z−Z)に再分布される前に、前記光軸(X−X)の両側に、実質的に放物面の前記第1の部分および前記第2の部分(14.31、14.32)に反射した後で、前記光軸(X−X)に対してそれぞれ傾斜するように構成された、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光システム。
【請求項6】
実質的に放物面の前記第1の部分(14.31)および前記第2の部分(14.32)の軸(B−B、C−C)が、前記光源(12)によって放出された前記光線(16.1、16.2、17.1、17.2)の伝播方向に対して前記光源(12)の下流で、放物面の対応する部分(14.31、14.32)の側にそれぞれ位置する、請求項5に記載の光システム。
【請求項7】
単一の一体構造部品(14)から形成された光システムであって、前記単一の一体構造部品(14)の断面は、前記第2の平面(X−X;Z−Z)において、前記光源(12)が設けられる側で、中間部分(14.21、14.22)を介して前記周辺部分(14.31、14.32)につながる中央部分(14.11、14.12)を含み、前記中央部分(14.11、14.12)の前記第2の平面の断面は、直線の線分であり、前記周辺部分(14.31、14.32)は、実質的に放物面の前記第1の部分(14.31)および前記第2の部分(14.32)を含む、請求項5または6に記載の光システム。
【請求項8】
前記中間部分(14.21、14.22)の断面は、直線に沿って伸びており、前記直線は、前記光源(12)によって放出された光線(16.1、16.2、17.1、17.2)の伝播方向に対して前記光源(12)の下流で、前記光軸と交差する、請求項7に記載の光システム。
【請求項9】
− 単一の光源(12)と、
− 前記光システム(14)の光軸(X−X)に設けられた前記光源(12)から、合成光ビーム(16、17)を生成するための、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光システム(14)と、
を備える光モジュール。
【請求項10】
前記光軸(X−X)に対して直交する平面(Y−Y;Z−Z)において、所定の方法で、前記合成光ビーム(16、17)を再分布させるための光拡散器(15)をさらに備える、請求項9に記載の光モジュール。
【請求項11】
前記光拡散器(15)が、前記光システム(14)の一体部品を形成する、請求項10に記載の光モジュール。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−216542(P2012−216542A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−79394(P2012−79394)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【出願人】(391011607)ヴァレオ ビジョン (133)
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
【Fターム(参考)】