説明

広分子量分布ポリマー類から製造されるナノファイバーを含有する繊維、不織布及び物品

【課題】本発明の目的は、低コストのナノファイバーを製造すること、並びに、様々な用途及び効果のために、ナノファイバーを含有する製品を形成することである。
【解決手段】本発明は、ナノファイバーを含む物品を対象とする。直径が1μm未満のナノファイバーは、物品に含有されるウェブの1つの層に相当数の繊維を含んでもよい。好ましくは、ナノファイバーは、溶融フィルムフィブリル化プロセスで製造される。物品としては、おむつ、トレーニングパンツ、成人用失禁パッド、婦人用ケアパッド及びパンティライナーのような生理用品、タンポン、パーソナルクレンジング物品、パーソナルケア物品、並びに赤ちゃん用拭き取り用品、顔用拭き取り用品及び婦人用拭き取り用品を含むパーソナルケア拭き取り用品が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互対照)
本特許出願は、2004年4月19日に出願された米国仮出願番号60/563,330の利益を主張する。本出願は、特願2007−509578号に基づく分割出願である。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、ナノファイバーから製造される繊維、不織布及び物品並びにナノファイバーの製造方法に関する。ナノファイバーは、広い分子量分布を有するポリマーから製造することができる。
【背景技術】
【0003】
ナノファイバーを含有する不織布から製造される物品の必要性が増し続けている。ナノファイバーの直径は、一般に約1000nm未満、すなわち1μm未満であると理解されている。ナノファイバーウェブは、その大きい表面積、小さい孔径、及びその他の特質のために所望されている。ナノファイバーは、一般にマイクロファイバー又は極細繊維とも呼ばれ、様々な方法によって様々な材料から製造できる。いくつかの方法が使用されてきたが、そうした方法のそれぞれに欠点があり、費用効率のよいナノファイバーを製造するのは困難であった。
【0004】
ナノファイバーを製造する方法としては、溶融フィブリル化で記述される部類の方法が挙げられる。溶融フィブリル化法の非限定例としては、メルトブロー、溶融繊維バースト(melt fiber bursting)、及び溶融フィルムフィブリル化が挙げられる。溶融物を用いずにナノファイバーを製造する方法は、フィルムフィブリル化、電界紡糸、及び溶液紡糸である。ナノファイバーを製造する他の方法としては、より大きな直径の2成分繊維を、海島型、セグメント化パイ、又は他の形体に紡糸し、次いで繊維をさらに加工し、ナノファイバーを得る方法が挙げられる。
【0005】
溶融フィブリル化は、1つ以上のポリマーを溶融して、多くの可能な形体(例えば共押出品、均質又は2成分のフィルム又はフィラメント)に押出し、次いでフィブリル化又は繊維化してフィラメントにすると定義される一般的な部類の繊維製造法である。
【0006】
メルトブローは、一般的に使用される繊維製造方法である。代表的な繊維直径は2〜8μmの範囲である。メルトブローは、より小さい直径を有する繊維を製造するためにも使用できるが、そのプロセスに多大な変更が必要とされる。一般に、再設計されたノズル及びダイが必要となる。これらの例には、特許文献1〜4[米国特許第5,679,379号及び同第6,114,017号(ファブリカント(Fabbricante)ら)並びに米国特許第5,260,003号及び同第5,114,631号(ナイセン(Nyssen)ら)]が挙げられる。これらの方法は、比較的高い圧力、温度及び速度を利用して、小さい繊維直径を達成する。
【0007】
溶融繊維バーストは、ポリマー繊維製造に適用されてきた鉱物繊維製造方法の派生物である。鉱物溶融繊維バースト方法の例としては、特許文献5〜7[米国特許第4,001,357号(ワルツ(Walz)ら)並びに米国特許第4,337,074号及び第4,533,376号(ムッシェルクナウツ(Muschelknautz)ら]が挙げられる。この方法の鍵は、溶融フィラメントを多数の微細繊維にバーストするために音速及び超音速の空気(気体)速度を使用することである。典型的な繊維直径は1μm未満〜約6μmの範囲である。ポリマー溶融物をバーストして微細繊維にする方法の例としては、特許文献8〜12[米国特許第5,075,161号(ナイセン(Nyssen)ら);欧州特許第1192301B1号及び第0724029B1号並びに欧州特許出願1358369A2(ガーキング(Gerking));並びにPCT国際公開特許WO04/020722(ソーデマン(Sodemann)ら)]が挙げられる。これらの方法は、気体速度を音速及び/又は超音速領域まで上げるためにラバルノズルを利用する。ポリマー溶融物は、こうした高速の気体速度に曝されると、バーストして多数の微細繊維になる。該方法は、所望の繊維サイズを作製するために望ましいプロセス条件並びにダイ及びノズル形状の使用によって構成される。
【0008】
溶融フィルムフィブリル化は、繊維を製造するための別の方法である。溶融フィルムを溶融物から製造し、次いで流体を使用して該溶融フィルムからナノファイバーを形成する。この方法の2つの例として、特許文献13〜18[米国特許第6,315,806号、同第5,183,670号、及び同第4,536,361号(いずれもトロビン(Torobin));並びに米国特許第6,382,526号、同第6,520,425号及び同第6,695,992号(いずれもレネカー(Reneker)、アクロン大学(the University of Akron)に譲渡)が挙げられる。
【0009】
フィルムフィブリル化は、不織布ウェブに使用するためのポリマーナノファイバーを製造するために設計されたものではないが、ナノファイバーを製造する別の方法である。特許文献19[米国特許第6,110,588号(ペレ(Perez)ら、3Mに譲渡)]には、高度に配向され、高度に結晶性の溶融処理された固化ポリマーフィルムの表面に流体エネルギーを付与してナノファイバーを形成する方法が記載されている。このフィルム及び繊維は、ポリマー用の、又はコンクリートのような鋳造構築材料用の強化繊維などの強度の高い用途に有用である。
【0010】
電界紡糸は、ナノファイバーを製造するのに一般に使用される方法である。この方法では、ポリマーを溶媒に溶解して、一方の末端が密閉され他方の末端ではネックダウン部分(necked down portion)に小さい開口部を有するチャンバーの中に配置する。次いでポリマー溶液とチャンバーの開口末端近部のコレクターとの間に高電位差をかける。このプロセスの製造速度は非常に遅く、繊維は通常少量でしか製造されない。ナノファイバーを製造するための別の紡糸技術は、溶媒を利用する溶液紡糸又はフラッシュ紡糸である。
【0011】
ナノファイバーを製造する2工程方法も知られている。第1の工程は、より大きい直径の多成分繊維を、海島型、セグメント化パイ、又はその他の形体に紡糸することである。次いで、前記のより大きい直径の多成分繊維を分割するか、又は海部分を溶解して、第2の工程でナノファイバーを得る。例えば、特許文献20〜21[米国特許第5,290,626号(ニシオ(Nishio)ら、チッソ(Chisso)に譲渡)、及び同第5,935,883号(パイク(Pike)ら、キンバリー−クラーク(Kimberly-Clark)に譲渡)]にはそれぞれ、海島型及びセグメント化パイの方法が記載されている。これらのプロセスは、繊維を製造する工程及び繊維を分割する工程の2つの連続工程を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,679,379号明細書
【特許文献2】米国特許第6,114,017号明細書(ファブリカント(Fabbricante)
【特許文献3】米国特許第5,260,003号明細書
【特許文献4】米国特許第5,114,631号明細書(ナイセン(Nyssen)ら)
【特許文献5】米国特許第4,001,357号明細書(ワルツ(Walz)ら)
【特許文献6】米国特許第4,337,074号明細書
【特許文献7】米国特許第4,533,376号明細書(ムッシェルクナウツ(Muschelknautz)ら)
【特許文献8】米国特許第5,075,161号明細書(ナイセン(Nyssen)ら)
【特許文献9】欧州特許第1192301B1号明細書
【特許文献10】欧州特許第0724029B1号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開1358369A2号明細書(ガーキング(Gerking))
【特許文献12】国際公開04/020722号(ソーデマン(Sodemann)ら)
【特許文献13】米国特許第6,315,806号明細書(トロビン(Torobin))
【特許文献14】米国特許第5,183,670号明細書(トロビン(Torobin))
【特許文献15】米国特許第4,536,361号明細書(トロビン(Torobin))
【特許文献16】米国特許第6,382,526号明細書(レネカー(Reneker)、アクロン大学(the University of Akron)に譲渡)
【特許文献17】米国特許第6,520,425号明細書(レネカー(Reneker)、アクロン大学(the University of Akron)に譲渡)
【特許文献18】米国特許第6,695,992号明細書(レネカー(Reneker)、アクロン大学(the University of Akron)に譲渡)
【特許文献19】米国特許第6,110,588号明細書(ペレ(Perez)ら、3Mに譲渡)
【特許文献20】米国特許第5,290,626号明細書(ニシオ(Nishio)ら、チッソ(Chisso)に譲渡)
【特許文献21】米国特許第5,935,883号明細書(パイク(Pike)ら、キンバリー−クラーク(Kimberly-Clark)に譲渡)
【特許文献22】米国特許第5,520,425号
【特許文献23】国際公開01/97731号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】「ポリプロピレン製の繊維の特性と熱接着不織布の特性との関係」(Relationships Between the Properties of Fibers and Thermally Bonded Nonwoven Fabrics Made of Polypropylene)、応用ポリマー科学誌(the Journal of Applied Polymer Science)、第58巻、1633〜1645(1995年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
商業的に有利なナノファイバーを含有する使い捨て物品を製造するために、ナノファイバーのコストを抑えなければならない。装置、プロセス、加工助剤、及びポリマーのコストはすべて抑えることができる。そのため、本発明の目的は低コストのナノファイバーを製造することである。様々な用途及び効果のために、ナノファイバーを含有する製品を形成することも望ましい。用途には、数ある用途の中でも、おむつ、拭き取り用品、及び吸収性材料などの実施が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
より小さい繊維直径を達成するため、狭分子量分布ポリマーのポリマーが一般的に使用される。これは、狭分子量分布ポリマーはより速く流れ、より容易に細繊化され、及びより小さい直径の繊維を形成することができるからである。ナノファイバーの作製には、狭分子量分布ポリマーと、高速の気体速度、流量及び巻取り速度(take up speeds)などの高い細繊化エネルギーとが一般的に用いられる。一般には、ナノファイバーを形成するために、これらのパラメータすべてを最適化しなければならない。それゆえ、当業者は、広分子量分布ポリマーを単一工程の溶融フィブリル化プロセスで使用してナノファイバーを形成することはないであろう。ナノファイバーのコスト削減の1つの方法は、分子量分布の広いポリマーを使用することである。広分子量分布ポリマーは、広範囲の分子量を有し、より容易に製造され、したがってより広く利用可能である。一般に、広分子量分布ポリマーは、より強く、磨耗又はリンティングがより少なく、より安定である。したがって、本発明の1つの目的は、広分子量分布ポリマーから製造されたナノファイバーを含有する物品を製造することである。
【0016】
本発明は、ナノファイバーを含む繊維、不織布及び物品を対象とする。ナノファイバーは、約3を超える分子量分布を有するポリマーを用いて、単一工程の溶融フィブリル化プロセスから製造できる。直径が1μm未満のナノファイバーは、ウェブの1つの層に相当数の繊維を含まなければならない。好ましくは、ナノファイバーは、溶融フィルムフィブリル化プロセスで製造される。好適な衛生物品としては、おむつ、トレーニングパンツ、成人用失禁パッド、婦人用ケアパッド及びパンティライナーのような生理用品、タンポン、パーソナルクレンジング物品、パーソナルケア物品、並びに赤ちゃん用拭き取り用品、顔用拭き取り用品及び婦人用拭き取り用品を含むパーソナルケア拭き取り用品が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、ナノファイバーから製造される物品に関する。ナノファイバーは、1つ以上の熱可塑性ポリマーから製造される。本発明のポリマーは、3を超える分子量分布を有するであろう。分子量分布(MWD)は、重量平均分子量を数平均分子量で除したものとして定義される。これは、ASTM D6474−99高温ゲル透過クロマトグラフィーによるポリオレフィンの分子量分布及び分子量平均値決定のための標準試験法(Standard Test Method for Determining Molecular Weight Distribution and Molecular weight Averages of Polyolefins by High Temperature Gel Permeation Chromatography)を用いて決定できる。好ましくは、MWDは約3.5を超え、より好ましくは約4.0を超え、より一層好ましくは約4.5を超え、最も好ましくは約5を超える。
【0018】
通常、ポリマーは、比較的低い流量を有するが、メルトフローレートを増大しMWDを狭くするために過酸化物などの他の物質と組み合わされる。これは、繊維、特にナノファイバーを製造する多くのプロセスがメルトフローレートの低いポリマーを使用できないためである。好ましくは、本発明のプロセスは、より厚く及び/又はポリマー含量がより高いフィルム又はより大きい構造体を製造する。このフィルム又はより大きい構造体は、続いて、ナノファイバーに形成される。
【0019】
好適な熱可塑性ポリマーとしては、溶融紡糸に好適で、広MWDを有するいかなるポリマーもが挙げられる。ポリマーがダイ中に存在するときのそのレオロジー的特性は、該ポリマーがフィルムを形成できるようなものでなければならない。ポリマーの融解温度は一般に、約25℃〜400℃である。
【0020】
広MWDを有する場合がある熱可塑性ポリマーの非限定的な例としては、ポリプロピレン及びコポリマー類、ポリエチレン及びコポリマー類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリスチレン類、熱可塑性デンプンを含む生分解性ポリマー類、PHA、PLA、ポリウレタン類、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。ホモポリマー、コポリマー類、及びそれらのブレンド類は、本明細書の範囲内に含まれる。好ましいポリマーは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン類、及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terphalate)である。
【0021】
任意に、繊維に追加の特性をもたらすために、ポリマーが追加の材料を含有してもよい。これらは、とりわけ弾性、強度、熱又は化学的安定性、外観、吸収性、臭気吸収性、表面特性、及び印刷適性のような、得られた繊維の物理的特性を変更できる。好適な親水性溶融添加剤を添加してもよい。任意の材料は、MWDが定義された範囲内に依然としてある限り、ポリマー組成物全体の50%まで存在してもよい。
【0022】
広MWDポリマー類の製造は、その場で(in situ)のプロセス又は人為的に作られたものであることができる。ポリプロピレンの広MWD製造の1つの例は、重合プロセスを早期に停止することである。これは、より高いメルトフローレート及びより広いMWDを可能にする。その場で(in situ)のプロセスの一例は、ポリプロピレンの製造中に、MWDをより広くできるように樹脂製造のための過酸化物濃度を変更することである。人為的に作製された広MWDの一例は、種々な種類のポリエステル類を一緒にブレンドすることである。ほとんどのポリエステル樹脂類は3未満のMWD比を有する。しかし、種々のMWのポリエステル樹脂類を慎重にブレンドすることで、より広いMWDを作ることができる。ブレンドは、他の高分子材料、最も好ましくはポリプロピレンでも実施できる。
【0023】
1つのウェブ内で狭MWDと広MWDとの混合物を使用するのが望ましい場合がある。より広いMWDのポリマーは、フィブリル化がより容易であり、異なる直径の繊維を生じさせる場合がある。ポリマー類をブレンドしない場合、異なるMWDのポリマー類に別々のノズルを使用してもよい。狭MWD及び広MWDポリマー類のその他の用途は、結合用、特に熱接着用である。異なるMWDポリマー類を有するウェブの別個の複数の領域は、異なる熱接着特性を有し、したがって異なる性能を有するであろう。これは、異なる複数の領域を、バリア、空気透過性、吸収性、制御された送達、不透明度、機械的特性、後処理、熱特性、及びその他の特性に適するようにできる場合がある。
【0024】
ウェブのナノファイバー層内の相当数の繊維の平均繊維直径は、1μm未満、好ましくは約0.1μm〜1μm、より好ましくは約0.3μm〜約0.9μmであることができる。ナノファイバー層の坪量は約25gsm未満、一般には約0.1〜約15gsm、好ましくは10gsm又は5gsm未満であることができる。ナノファイバー層は、不織布ウェブの用途に応じて、約0.5〜約3gsm又は約0.5〜約1.5gsmの範囲の坪量を有してもよい。いくつかの層のウェブを形成するのが望ましい場合がある。ナノファイバー層は、1、2又はそれを超える層と組み合わせてもよい。スパンボンド−ナノファイバー−スパンボンドウェブは、1つの例である。複合ウェブ全体の坪量は約5gsm〜約100の範囲であり、一般に約10〜約50gsmである。
【0025】
均一のナノファイバーウェブが一般的に望ましいが、特に低い坪量での製造が困難となりうる。ウェブの均一性は、いくつかの方法によって測定できる。均一性の評価指標の例としては、孔直径、坪量、空気透過性及び/又は不透明度の変動係数がいずれも低いことが挙げられる。均一性は、繊維束若しくはロープ化、又は目に見える孔、又はその他のこうした欠点がないことも意味することができる。均一性は、ウェブの圧力水頭(hydrohead)又はその他の液体バリア性の測定によって評価されてもよい。バリア性の評点が高いほど、より均一なウェブであることを示す。
【0026】
孔直径は、当業者に既知の方法によって測定できる。ナノファイバー層の平均孔直径は、好ましくは約15μm未満、より好ましくは約10μm未満、最も好ましくは約5μm未満である。均一ウェブに関する所望の変動係数は、20%未満、好ましくは約15%未満、より好ましくは約10%以下であることができる。ロープ化がないことは、ウェブの測定領域における繊維ロープ又は繊維束の数を数えることによって測定できる。孔がないことも、ウェブの測定領域内で特定の閾値を超える直径を有する孔の数を数えることによって測定できる。走査型電子顕微鏡又はその他の拡大手段を使用することができる。例えば、孔は、ライトボックスを用いて肉眼で見える、又は直径100μmを超える場合に、計数されてもよい。
【0027】
繊維は、単繊維又は2成分繊維のような多成分繊維であってもよい。繊維は、シース−コア若しくは並列(side-by-side)形体、又はその他の好適な幾何学的形体を有していてもよい。繊維を製造した後、繊維をウェブに形成する前に処理又はコーティングしてもよい。また、ウェブを製造した後、該ウェブを処理してもよい。任意に、添加剤をポリマー樹脂に化合してもよく、これらの添加剤は繊維が形成された後に表面に移動する。表面に移動した添加剤は、熱のような外部エネルギーを利用して硬化させなければならない場合があり、又は表面上の添加剤は、別の構成成分と化学的に反応させなければならない場合があり、又は硬化は、添加剤と共に樹脂を使用した繊維の製造中若しくは繊維の製造後に追加の構成成分をプロセスに添加できるように、別の構成成分の存在下で触媒作用を受けなければならない場合がある。好適な処理としては、親水性又は疎水性処理が挙げられる。疎水性処理の例は、ポリジメチルシロキサン類である。特定の処理は、ウェブの用途、ポリマーの種類、及びその他の要因に左右される。望ましい処理は、当業者によく知られている。
【0028】
本発明のナノファイバー製造方法は、約3を超えるMWDを有する熱可塑性ポリマーを利用できるいかなる方法でもある。好ましくは該方法は、約3を超えるMWDを有する熱可塑性ポリマーを利用できる一工程の溶融フィブリル化プロセスである。溶融フィブリル化プロセスは、単一相ポリマー溶融物を利用して繊維を形成するプロセスとして定義される。単一相は、分散液を含むことができるが、溶液紡糸又は電界紡糸に使用されるもののような溶媒ベースの溶融物を含まない。典型的な単一工程の溶融フィブリル化プロセスは、メルトブロー、溶融フィルムフィブリル化、スパンボンディング、通常の溶融/延伸プロセス(draw process)における溶融紡糸、及びこれらの組み合わせを含む。単一工程のプロセスは、まずより大きな繊維を製造し、該繊維の一部を除去するか又は該繊維を分離することによって分割するような2工程のプロセスを含まない。該プロセスは、3を超えるMWDを有する熱可塑性ポリマーの利用及び平均直径が約1μm未満の繊維の製造に適していなければならない。
【0029】
本発明のナノファイバー製造方法は、好ましくは溶融フィブリル化プロセスであり、又はより好ましくは溶融フィルムフィブリル化プロセスである。一般に、このプロセスは、ポリマー溶融物を提供し、中央の流体流を利用してポリマーフィルムを形成し、次いで流体を用いてそのフィルムから多数のナノファイバーを形成する工程を含む。好適な方法は、例えば、特許文献15及び16[米国特許第4,536,361号(トロビン(Torobin))並びに米国特許第6,382,526号]、特許文献22[同第5,520,425号]及び特許文献18[第6,695,992号(レネカー(Reneker))]に詳述されている。フィルムは、中空チューブ、比較的平坦、又はその他の好適な構造であってもよい。
【0030】
特許文献15[第4,536,361号]にさらに記載されているように、ポリマーは液体を形成し、容易に流れるまで加熱される。溶融ポリマーは、約0℃〜約400℃、好ましくは約10℃〜約300℃、より好ましくは約20℃〜約220℃の温度であってもよい。ポリマーの温度は、ポリマー又はポリマー組成物の融点に左右される。ポリマーの温度は、その融点より高くても約50℃未満であり、好ましくはその融点より高くても25℃未満であり、より好ましくはその融点より高くても15℃未満であり、またちょうどその融点若しくはそのすぐ上、又はちょうど融解範囲若しくはそのすぐ上であることができる。融点又は融解範囲は、ISO3146法を用いて測定される。溶融ポリマーは、通常は、約1Pa−s〜約1000Pa−s、典型的には約2〜約200Pa−s、より一般的には約4〜約100Pa−sの粘度を有する。これらの粘度は、約100〜約100,000/秒の範囲の剪断速度にわたって与えられる。溶融ポリマーは、およそ大気圧か又は(それよりも)わずかに高い圧力である。
【0031】
1つの方法において、繊維化流体は、吹き込み並びにフィルム上への及び続いてチューブの内表面への加圧によって、ポリマー液体フィルム内を貫通して、中空ポリマーチューブを形成してもよい。特許文献18[第6,695,992号]に詳述されている別の方法では、繊維化流体は、スリット又はスロット型のダイ設計から1枚の薄いフィルムを形成する。繊維化流体は、溶融ポリマーの温度に近い温度であってもよい。繊維化流体の非限定例は、窒素のような気体又はより好ましくは空気である。繊維化流体の温度は、ポリマーの流動と中空チューブ又は平坦なフィルムの形成とを助けるために溶融ポリマーより高い温度であってもよい。あるいは、繊維化流体温度は、ナノファイバーの形成及び固化を補助するために溶融ポリマー温度未満であることができる。繊維化流体の温度は、そのポリマーの融点より高くても約50℃未満であり、好ましくはポリマーの融点より高くても25℃未満であり、より好ましくはポリマーの融点より高くても15℃未満であり、又はちょうどポリマーの融点若しくはそのすぐ上である。繊維化流体の温度は、プロセス温度よりも低くてもよく、15℃まで低くてもよい。繊維化流体の圧力は、ナノファイバーを吹き込むのに十分であり、オリフィスから押出されたときの溶融ポリマーの圧力をわずかに超えることができる。
【0032】
繊維化流体の圧力は、一般に34.5Mpa(5000psi)より低い。好ましくは、繊維化流体の圧力は6.9MPa(1000psi)未満、より好ましくは約690kPa(100psi)未満、最も好ましくは約100〜約550kPa(約15〜約80psi)である。
【0033】
ポリマー処理量は、使用される特定のポリマー、ノズル設計、並びにポリマーの温度及び圧力に主に左右される。ポリマー処理量は、オリフィス当たり約1g/分を超える。ポリマー処理量は、好ましくはオリフィス当たり約5g/分を超え、より好ましくはオリフィス当たり約10g/分を超えることができる。おそらく一度にいくつかのオリフィスが作動するので、製造処理量全体が増大する。圧力、温度及び速度と同様に、処理量は、ダイオリフィスの出口にて測定される。処理量を表す別の方法は、押出湿潤長さという項目を使用することである。ポリマー処理量は、約0.3g/押出湿潤長さ1cmを超える。押出湿潤長さは、ナノファイバーが製造される前の溶融フィルムの直線距離として定義される。例えば、本発明が別個のノズルを用いて明示され、該ノズルのオリフィス直径が1cmであり、該ノズルの質量処理量が1g/分である場合、全体の処理量は0.318g/cm/分である。好ましくは、ポリマー処理量は、約3g/cm/分よりも多く、より好ましくは約6g/cm/分よりも多く、最も好ましくは10g/cm/分よりも多い。
【0034】
飛沫同伴又はその他の流体を、振動又は変動圧力場を誘導するために使用して、多数のナノファイバーの形成を助けてもよい。飛沫同伴流体は横方向の噴流によって提供されることができ、その噴流は同伴流体の流れをフィルム及びナノファイバー形成領域にわたって並びにそれらの周りに方向付けるように位置する。飛沫同伴流体は、約1〜約100m/秒、好ましくは約3〜約50m/秒の速度を有することができる。飛沫同伴流体の温度は、上記繊維化流体と同じであることができるが、一般的にはフィルムが形成された時点の溶融ポリマーの温度とほぼ同じである。2つ以上のノズルからのナノファイバーのスプレーパターンに影響を及ぼすために、エアカーテン又はその他の補助的な空気流も使用することができる。この空気流又はエアカーテンは、隣接するノズル間のスプレー形成の遮蔽を補助してもよく、又はスプレーパターンの圧縮を補助してもよい。エアカーテン又は空気流は、ウェブの均一性を改善する場合がある。
【0035】
別の流体流、クエンチ又は加熱流体を任意に使用できる。第3の流体流は、繊維を冷却又は加熱するために、流体をナノファイバーに方向付けるように位置することができる。流体がクエンチ流体として使用される場合、それは、約−20℃〜約100℃、好ましくは約10℃〜40℃の温度である。流体が加熱流体として使用される場合、それは、約40℃〜400℃、典型的には約100℃〜約250℃の温度である。いかなる流体流も、ポリマー溶融物の繊維化に寄与してもよく、そのため一般に繊維化流体と呼ばれることができる。流体流のいずれも、製造される繊維の表面、化学的、物理的、又は機械的特性を変更するための処理又は添加剤を含有してもよい。
【0036】
オリフィス又はノズルからコレクターまでの距離は、一般にダイ・ツー・コレクター・ディスタンス(DCD)と呼ばれ、最適化することができる。最適化は、より均一なウェブの製造を補助する場合がある。DCDの減少は、繊維の束化又はロープ化の量の減少に役立つ場合がある。この距離が短くなれば、繊維が交絡したり、互いに巻きついたり、又は束化したりする時間をなくすことができる。製造中にDCDを変化させるか、又は異なるDCDの異なるビームを有するために、1つのウェブに1を超えるDCDを利用するのが望ましい場合がある。DCDを変化させることによって、異なる均一性をもったウェブを形成させることが望ましい場合もある。
【0037】
ポリマー溶融物からナノファイバーを製造する他のプロセスの非限定例としては、溶融繊維バースト、最新式メルトブロー、並びに多成分繊維及び固体フィルムからの繊維分割が挙げられる。ポリマー溶融物の微細繊維へのバーストを利用する溶融繊維バーストプロセスの例としては、特許文献8〜12[米国特許第5,075,161号(ナイセン(Nyssen)ら);欧州特許第1192301B1号及び第0724029B1号並びに欧州特許出願1358369A2(ガーキング(Gerking));並びにPCT国際公開特許WO04/020722(ソーデマン(Sodemann)ら)]が挙げられる。これらの方法は、気体速度を音速及び/又は超音速領域まで上げるためにラバルノズルを利用する。ポリマー溶融物は、こうした高速の気体速度に曝されると、バーストして多数の微細繊維になる。
【0038】
ナイセン(Nyssen)らは、特許文献8[米国特許第5,075,161号]にポリフェニレンスルフィド溶融物を微細フィラメントにバーストする方法を開示している。この方法において、ラバルノズルは紡糸ノズルの直後に配置される。平均繊維直径が約6μm未満、好ましくは約0.2μm〜6μmのポリマー繊維は、ポリマー溶融物の流れに練条を受けさせ、またそれをポリマー溶融物の流れと本質的に平行に流れ、音速又は超音速に達しているガス状媒質内に押出すことによって、溶融温度未満に冷却することにより製造される。この同時に起こる変形及び冷却によって、有限長の非晶質微細繊維又は超極細繊維が生じる。高速繊維バーストは、繊維の表面酸化を最小にする。特許文献12[PCT国際公開特許WO04/020722(ソーデマン(Sodemann)ら)]は、音速及び超音速の流体速度を使用することによって、熱可塑性ポリマー類の繊維バーストから微細フィラメントスパンボンド不織布を製造する類似の方法を開示している。前記プロセスにおいて、ラバルノズルは紡糸ノズルのすぐ下に設置される。紡糸速度、溶融温度、及びラバルノズルの位置は、微細フィラメントの熱酸化がその表面にて部分的にのみもたらされるように適切に設定される。この方法によって製造された繊維は、1μm未満の直径を有することが開示されており、不連続の点で互いに結合されている。特許文献9及び10[欧州特許出願1192301B1及び1358369A2(ガーキング(Gerking))]に開示されている方法及び装置も、ラバルノズルを利用して、ポリマー溶融物を多数の微細フィラメントにバーストするために使用される気体を音速及び超音速に加速する。
【0039】
溶融フィルムフィブリル化プロセスは、繊維の製造方法及び微細繊維が製造される開始溶融物の形状において溶融繊維バーストプロセスと異なる。溶融フィルムフィブリル化は、中央エアジェットによって薄化されたフィルムから、場合によっては中空溶融フィルムチューブから始まり、その後多数のナノファイバーにフィブリル化される。対照的に、溶融バーストの開始溶融物の形状は、ラバルノズル内で音速及び超音速の気体速度に暴露したときに多数のナノファイバーにバーストするフィラメント溶融物である。該プロセスから製造される繊維ウェブは、繊維−繊維分離及び繊維束形成の違いから、均一性が異なる場合がある。
【0040】
様々なプロセス及びプロセスの組み合わせを使用して本発明のウェブを製造できる。好ましい方法は、均一なナノファイバー層を製造する方法である。溶融繊維バーストは単一ライン上に2つの別々のビームを用いた溶融フィルムフィブリル化と組み合わせることができる。溶融繊維バーストの様々な態様を、溶融フィルムフィブリル化に組み込んでもよい。例えば、所望の特性の組み合わせを提供するため、異なる強度及び直径の繊維を製造してもよい。あるいは、溶融フィルムフィブリル化の態様は、繊維を形成するための中空の細長いチューブを利用することによって処理量を増加させるために、他の溶融フィブリル化プロセスに含まれることができる。例えば、溶融フィルムフィブリル化プロセスは、繊維の縮小を助けるためにラバルノズルを含むように変更してもよい。縮小は、さらなる細分化を助けることができ、繊維の強度を増大できる。これは、結晶化が応力に誘発されるポリエステル類のような高Tgポリマー類に特に好ましい場合がある。
【0041】
理論に束縛されるものではないが、広MWDポリマー類の利益により、プロセスをより低いエネルギーで、したがってより効率的に行うことができると考えられる。広MWDポリマー類は、高分子量の鎖の存在により、狭MWDポリマー類よりも容易に薄く剪断する。これらの鎖は剪断流の間にそれ自体を流れ方向と平行に配向し、形が作られた(profiled)溶融押出物又は薄化領域と組み合わさって、結果としてより経済的なプロセス条件下で繊維及びナノファイバーを製造する。プロセス温度はより低くてもよく、質量処理量は増大されてもよい。さらに、数平均分子量がより高い樹脂も、流れ方向中での配向を増大させ、フィブリル化を促進することから好ましい。低MWDポリマー類はべたつく場合があり、又はフィブリル化を困難にして、より均一性の低いウェブをもたらす場合があることから、フィブリル化改善が望ましい場合もある。
【0042】
より優れたフィブリル化に加え、広MWDポリマーは、熱接着により適した繊維を製造できる。例えば、エリック・アンドレアセン(Erik Andreassen)らによる論文「ポリプロピレン製の繊維の特性と熱接着不織布の特性との関係」(Relationships Between the Properties of Fibers and Thermally Bonded Nonwoven Fabrics Made of Polypropylene)、応用ポリマー科学誌(the Journal of Applied Polymer Science)、第58巻、1633〜1645(1995年)(非特許文献1)は、繊維の熱接着について記載している。
【0043】
本発明のナノファイバーは、物品に適した不織布ウェブの製造に使用される。ウェブは、不織布複合体全体として定義される。ウェブは、熱点接着、又は強度、一体性及び特定の美的性質を達成するためのその他の手法によって圧密される、1つ又は数個の層を有してもよい。層は、別個の繊維載置(fiber lay down)又は形成工程で製造されるウェブ又はウェブの一部である。本発明のウェブは、直径が1μm未満の相当数のナノファイバーを有する1つ以上の層を含む。相当数とは、少なくとも約25%と定義される。相当数の繊維は、層中の繊維の総数の少なくとも約35%、少なくとも約50%であるか、又は約75%を超えることができる。ウェブは、直径が約1μm未満の繊維を約90%より多く又は約100%有していてもよい。ウェブの繊維直径は、走査型電子顕微鏡を用いて、約500倍を超えて約10,000倍までの倍率にて、視覚分析の必要に応じて測定される。相当数の繊維が1μm未満の直径を有するかについて判断するために、少なくとも約100本の繊維、好ましくはそれより多くの繊維を測定しなければならない。測定は、層全体にわたって種々の領域にて行わなければならない。統計学的に有意な十分なサンプリングを行わなければならない。
【0044】
ナノファイバー層における残りのより大きい繊維の繊維直径(75%まで)は、いかなる範囲の繊維直径であってもよい。通常は、より大きい繊維直径は、わずかに1μmを超え、約10μmまでである。
【0045】
好ましくは、ナノファイバー層中の相当数の繊維は、約900nm未満、より好ましくは約100nm〜約900nmの繊維直径を有する。その他の好ましい繊維直径の範囲は、約700nm未満及び約300〜約900nmである。好ましい直径は、ウェブの用途に左右される。直径が約1μm未満の相当数の繊維及び直径が約1μmを超える相当数の繊維を有することが望ましい場合がある。より大きい繊維はナノファイバーを捕捉して、不動化してもよい。これによって、ナノファイバーの凝集(clumping)又はロープ化の量を低減させるのを助け、迷走気流によってナノファイバーが運び去られるのを防ぐことができる。
【0046】
本発明のウェブ中のナノファイバーの層は、1を超えるポリマーを含有してもよい。異なるオリフィスに異なるポリマー又はポリマーブレンドを使用して、異なる繊維直径及び異なるポリマー組成を有するウェブの層を製造してもよい。
【0047】
様々な繊維直径を有する単一層の不織布を製造するのが望ましい場合がある。あるいは、各層が異なる繊維直径を有する複数の層の不織布ウェブを製造するのが望ましい場合がある。溶融フィルムフィブリル化プロセスは、小さい及び大きい直径の繊維の両方を製造して様々なウェブを製造するように変更できる。より小さい繊維直径とは、1μm未満の直径を有する相当数の繊維を有することをいう。より大きい直径の繊維は、メルトブロー範囲(通常は3〜5μm)からスパンボンド(通常は約10μm)までの繊維、又は1μmを超えるいかなる範囲の繊維直径の繊維をも含む。例えば、1つの層は、1μm未満の平均繊維直径を有するように製造し、別の層は約5μmの平均繊維直径を有するように製造することができる。この種の構造は、従来スパンボンド−メルトブロウン−スパンボンド(SMS)ウェブが使用される場所で使用してもよい。種々の繊維直径を有するウェブは、同一の設備を用いて同一ラインにて製造できる。これは、同一の設備及び構成要素を使用できるので安価な方法である。運転コスト及び設備コストが両方とも抑えられる。また所望により、同一ポリマーを使用して異なる繊維直径を製造することもできる。
【0048】
本発明の物品は、記載の不織布ウェブを含有する。ウェブは拭き取り用品のように物品全体を構成してもよく、又はウェブはおむつのように物品の1つの構成要素を構成してもよい。衛生物品が好ましい物品である。衛生物品としては、おむつ、トレーニングパンツ、成人用失禁パッド、婦人用ケアパッド及びパンティライナーのような生理用品、タンポン、パーソナルクレンジング物品、パーソナルケア物品、並びに赤ちゃん用拭き取り用品、顔用拭き取り用品、身体用拭き取り用品及び婦人用拭き取り用品を含むパーソナルケア拭き取り用品が挙げられる。パーソナルケア物品としては、創傷包帯、活性物質送達ラップ又は貼付剤、及び身体、特に皮膚に適用される他の基材が挙げられる。使い捨て下着又は衣服及び個人又は産業用保護衣も望ましい場合がある。拭き取り用品のその他の用途としては、クリーンルーム用拭き取り用品又は流出物の吸収若しくは抑制に使用するための除染拭き取り用品及びその他の産業用拭き取り用品が可能である。
【0049】
おむつにおいて、ウェブはコア上バリア(barrier-on-core)のようなバリア層として又は外側カバーとして使用されてもよい。ウェブはまた、高い静水頭部を有する高バリアカフとして使用されて、快適さ及びフィット感のために所望される薄くて股の狭いおむつの漏れ発生率を低くすることもできる。ナノファイバーを利用した典型的なウェブは、ナノファイバー層が少なくとも1つのスパンボンド層と組み合わされ、また熱点接着、水流交絡又は最終用途に好適及び適切なその他の手法を使用して圧密されたウェブである。ナノファイバー層を包囲する1又は2つのスパンボンド層があってもよい。
【0050】
おむつ又はその他の使い捨て吸収性製品において、ナノファイバーを含有する不織布ウェブは、バリア層として利用されてもよい。バリア層は、吸収性コアと衣類を含有する外側層との間に配置されてもよい。吸収性コアは、体液の獲得、移送、分配及び貯蔵のような流体処理特性に主として関与する物品の構成要素である。吸収性コアは、通常は、液体透過性の身体側の内側層と、蒸気透過性で液体不透過性の外側カバーとの間に置かれる。バックシート又は外側カバーとしても知られる外側層は、使い捨て製品の外側に位置する。おむつの場合、外側層はユーザーの衣類又は衣服と接触する。バリア層は、代わりに又はさらに、吸収性コアと内側層との間に配置されてもよい。トップシートとしても知られる内側層は、ユーザーの皮膚に最も近い側に置かれる。内側層はユーザーの皮膚に接触してもよく、又はユーザーの皮膚と接触する別個のトップシートと接触してもよい。バリア層は吸収性であってもよい。バリア層は、最も好ましくは対流空気流と吸収性バリア特性との均衡を保つ。対流空気流特性は、吸収性物品と着用者の皮膚との間の空間内の相対湿度を低減させるのに有効である。液体吸収性と液体バリア特性との組み合わせは、濡れ(wet through)問題に対する保護を提供し、これは、吸収性物品が衝撃及び/又は持続圧力下にある場合に特に有益である。バリア層のさらなる記述及び効果は、特許文献23[PCT国際公開特許WO01/97731号]に見出すことができる。
【0051】
ウェブは、拭き取り用品に使用されて、ローション処理性を改善し、液体の傾斜を低減できる。ウェブはまた、制御された物質の送達をもたらすことができる。送達される物質は、液体、ローション、活性物質、又はその他の物質であることができる。ナノファイバーの表面積が大きいので、ウェブは、拭き取り用品用の吸収性材料、又は婦人用ケア製品パッド、おむつ、トレーニングパンツ若しくは成人用失禁具のコアとして使用できる。ウェブは、流体の分配及び/又は保持を向上できる。さらに、吸収体用途のためのウェブは、吸収性を向上させるための微粒子若しくは吸収体若しくは天然繊維を添加して製造されてもよく、又はウェブの特定の層が異なる特性を有していてもよい。
【0052】
ナノファイバーウェブはまた、不透明さが所望される物品に使用されてもよい。小さい繊維直径及び均一性によって結果として不透明さが増してもよく、又は顔料をポリマー溶融物若しくはウェブに添加してもよい。該ウェブは、リンティングが低いことも見出された。これは、より長い長さの繊維又はウェブ内の繊維の絡み合いによる可能性がある。
【0053】
ナノファイバーウェブから利益を受けるその他の製品として、フィルター類が挙げられる。フィルター類は、産業用、個人用、又は家庭用であることができ、空気、液体、又は小粒子の濾過に使用できる。産業用途としては、自動車、炉、水、及びその他の種類のフィルター類が挙げられる。個人用フィルターの一種類として、外科用マスクのようなフィルターマスクが挙げられる。ナノファイバー層を含有するウェブのその他の医学的用途としては、手術着、創傷包帯、及び医療用バリア(medical barriers)が挙げられる。ウェブは、騒音及び熱の絶縁体として、屋外用具、衣服、及び伝導性繊維に使用できる。
【実施例】
【0054】
比較例1:トリクロロベンゼン中150℃にてポリスチレン標準で較正したゲル透過クロマトグラフィーで測定したときに分子量分布が3未満である公称35のメルトフローレートのポリプロピレン、バセル・プロファックス(Basell Profax)PH−835を、溶融フィルムフィブリル化プロセスに導入する。この特定のバッチの実際の分子量分布は2.63であった。プロセス温度は280℃であり、繊維化流体温度は25℃である。所望の繊維及びナノファイバーを製造するためには、流体化圧力は380kPa(55psi)よりも大きくなければならない。質量処理量も10g/cm/分に限定された。
【0055】
比較例2:トリクロロベンゼン中150℃にてポリスチレン標準で較正したゲル透過クロマトグラフィーで測定したときに分子量分布が3未満である公称100のメルトフローレートのポリプロピレン、フィナ(FINA)EOD−02−04を、溶融フィルムフィブリル化プロセスに導入する。この特定のバッチの実際の分子量分布は2.98であった。プロセス温度は240℃であり、繊維化流体温度は25℃である。所望の繊維及びナノファイバーを製造するためには、流体化圧力は380kPa(55psi)よりも大きくなければならない。質量処理量は8g/cm/分に限定された。
【0056】
実施例1:トリクロロベンゼン中150℃にてポリスチレン標準で較正したゲル透過クロマトグラフィーで測定したときに分子量分布が3を超える公称35のメルトフローレートのポリプロピレン、エクソンモービル・エスコレン(ExxonMobil Escorene)3155を、溶融フィルムフィブリル化プロセスに導入する。この特定のバッチの実際の分子量分布は3.15であった。プロセス温度は280℃であり、繊維化流体温度は25℃である。所望の繊維及びナノファイバーを製造するためには、流体化圧力は200kPa(30psi)よりも大きくなければならない。質量処理量は、15g/cm/分までであった。
【0057】
実施例2:トリクロロベンゼン中150℃にてポリスチレン標準で較正したゲル透過クロマトグラフィーで測定したときに分子量分布が3を超える公称100のメルトフローレートのポリプロピレン、フィナ(FINA)3860Xを、溶融フィルムフィブリル化プロセスに導入する。この特定のバッチの実際の分子量分布は4.6であった。プロセス温度は240℃であり、繊維化流体温度は25℃である。所望の繊維及びナノファイバーを製造するためには、流体化圧力は380kPa(55psi)よりも大きくなければならない。質量処理量は、11g/cm/分までであった。
【0058】
実施例3:トリクロロベンゼン中150℃にてポリスチレン標準で較正したゲル透過クロマトグラフィーで測定したときに分子量分布が3を超える高密度ポリエチレン、ダウケミカル社(Dow Chemical Company)の05862Nを、溶融フィルムフィブリル化プロセスに導入する。この特定のバッチの実際の分子量分布は3.27であった。プロセス温度は240℃であり、繊維化流体温度は25℃である。所望の繊維及びナノファイバーを製造するためには、流体化圧力は200kPa(30psi)よりも大きくなければならない。質量処理量は、15g/cm/分までである。
【0059】
実施例4:トリクロロベンゼン中150℃にてポリスチレン標準で較正したゲル透過クロマトグラフィーで測定したときに分子量分布が3を超える公称12のメルトフローレートのポリプロピレン、バセル(Basell)PDC1274を、溶融フィルムフィブリル化プロセスに導入する。この特定のバッチの実際の分子量分布は4.61であった。プロセス温度は290℃であり、繊維化流体温度は25℃である。所望の繊維及びナノファイバーを製造するためには、流体化圧力は240kPa(35psi)よりも大きくなければならない。質量処理量は、15g/cm/分までである。
【0060】
実施例5:トリクロロベンゼン中150℃にてポリスチレン標準で較正したゲル透過クロマトグラフィーで測定したときに分子量分布が3を超える公称18のメルトフローレートのポリプロピレン、バセル(Basell)PDC1267を、溶融フィルムフィブリル化プロセスに導入する。この特定のバッチの実際の分子量分布は3.86であった。プロセス温度は290℃であり、繊維化流体温度は25℃である。所望の繊維及びナノファイバーを製造するためには、流体化圧力は240kPa(35psi)よりも大きくなければならない。質量処理量は、15g/cm/分までである。
【0061】
引用される全ての文献は、その関連部分において参考として本明細書に組み込まれるが、いずれの文献の引用もそれが本発明に関連する先行技術であることの容認として解釈されるべきではない。
【0062】
本発明の特定の実施形態が説明及び記載されてきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を行えることが当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
15μm未満の平均孔直径を有し、直径1μm未満のナノファイバーを少なくとも50%有する少なくとも1つの層を含む不織布ウェブであって、前記ナノファイバーが約3を超える分子量分布を有するポリマーを含み、前記不織布ウェブが、それを通る対流空気流と液体バリア特性との均衡を提供する対流不織布ウェブ。
【請求項2】
前記ポリマーが3.5を超える分子量分布を有する、請求項1に記載の不織布ウェブ。
【請求項3】
前記ナノファイバー層が0.5gsm〜15gsmの坪量を有する、請求項1に記載の不織布ウェブ。
【請求項4】
前記ポリマーが4を超える分子量分布を有する、請求項1に記載の不織布ウェブ。
【請求項5】
請求項1に記載の不織布ウェブを含む物品。
【請求項6】
前記物品が、おむつ、トレーニングパンツ、成人用失禁パッド、婦人用ケアパッド及びパンティライナーから成る群から選択される生理用品、タンポン、パーソナルクレンジング物品、パーソナルケア物品、並びに赤ちゃん用拭き取り用品、顔用拭き取り用品、身体用拭き取り用品及び婦人用拭き取り用品から成る群から選択されるパーソナルケア拭き取り用品、並びにこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項5に記載の物品。
【請求項7】
前記不織布ウェブが吸収体である、請求項6に記載の物品。

【公開番号】特開2010−236174(P2010−236174A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−145306(P2010−145306)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【分割の表示】特願2007−509578(P2007−509578)の分割
【原出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】