説明

広告装置

【課題】広告装置本体の周辺環境に応じた広告を行うことが可能な、広告効果に優れた広告装置を提供する。
【解決手段】広告対象が表示される複数の表示パネル31〜33を有する表示媒体30と、各表示パネル31〜33を一体的に回転させる回転手段51と、広告装置本体の周辺環境をセンシングするセンサ60と、センサ60によってセンシングされた周辺環境に基づいて回転手段51の回転態様を制御する制御手段52とを備える広告装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広告装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、つぎのような画像表示装置が開示されている。すなわち、光源の2つ又はそれ以上のアレイを有する画像表示装置が開示されている。各アレイは、共通軸を中心に回転可能であり、各アレイの光源は、各光源が共通軸を中心に固有軌跡に沿って旋回するように配置されている。光源は、それを組み合わせて観察者が見ることができる所望の画像を残像によりもたらすように、そのそれぞれの固有軌跡を旋回するときに、コントローラは、各光源により発光される光の強度を調整するように構成されている。
【0003】
【特許文献1】特表2008−511034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている画像表示装置は、「所望の画像を残像によりもたらすように・・・光の強度を調整するように構成されている」ため、表示対象の画像は限定的であり、たとえば、広告表示を行うことはできない。実際に、特許文献1を見ると、画像表示装置の最小許容回転速度が周囲の明るさレベル及び光源の輝度に依存する、と記載されていて、毎秒約25回転よりも少ない回転速度では、画像フリッカが分かる程度に存在するが、装置は最低毎秒5回転の回転速度でも動作することが分かった、とされている。
【0005】
したがって、特許文献1に開示されている画像表示装置を用いて、多種多様な広告を行うことは不可能であったし、広告効果も限定的である。
【0006】
そこで、本発明は、広告装置本体の周辺環境に応じた広告を行うことが可能な、広告効果に優れた広告装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の広告装置は、
広告対象が表示される複数の表示パネルを有する表示媒体と、
前記各表示パネルを一体的に回転させる回転手段と、
広告装置本体の周辺環境をセンシングするセンサと、
前記センサによってセンシングされた周辺環境に基づいて前記回転手段の回転態様を制御する制御手段と、を備える。
【0008】
制御手段は、前記センサから出力されるセンシング結果に基づいて特定人の移動速度を割り出して、当該移動速度に基づいて前記回転手段の回転速度を変更するものとするとよい。センサは、音声、画像、温度のいずれかをセンシングするものとするとよい。複数の表示パネルは、動画又は静止画を表示可能なパネルを含むとよい。
【発明の実施の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態の広告装置の模式的な外観を示す斜視図である。図1には、以下説明する、筐体10と、載置台20と、表示媒体30と、広告展示部40と、土台50と、センサ60とを示している。
【0010】
図2は、図1の一部を切り欠いて模式的な内部構造を示す斜視図である。図2には、図1に示したもののほかに、液晶パネル31,32と、LEDパネル33と、回転手段51と、制御手段52と、メモリ53と、配線54とを示している。
【0011】
筐体10は、円筒状をしている。筐体10は、透光性を有する素材から成る。具体的には、本実施形態の筐体10は、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などからなる。厚みは、例えば5mm〜1.5mm程度とすることができる。本実施形態では、約1.0cmとしている。筐体10は、高さを2m程度、直径を1m程度としているが、これらに限定されるものではない。
【0012】
載置台20は、筐体10の円筒内に収容されている。載置台20は、上面に、表示媒体30であるところの、液晶パネル31,32およびLEDパネル33が載置される台である。載置台20は、円盤状をしていて、その径は、筐体10の内壁の径よりも1cm程度小さくしている。載置台20は、下面で、広告展示部40に連結されている。このため、後述するように、土台50内に設けられている回転手段51によって、広告展示部40を直接的に回転させると、結果的に、広告展示部40に連結されている載置台20が回転され、したがって、載置台20に載置されている表示媒体30も回転されることになる。
【0013】
もっとも、載置台20と広告展示部40とを、ギヤを介して連結することによって、載置台20と広告展示部40との回転速度を変更させたり、回転方向を異ならせたりしてもよい。さらに、回転手段51に加えて他の回転手段を設け、載置台20と広告展示部40とを別々に回転させてもよい。
【0014】
表示媒体30は、液晶パネル31,32と、LEDパネル33とを含む。もっとも、表示媒体30を構成するパネル数は3つ以外でもよい。また、すべてを液晶パネルとしてもよいし、すべてをLEDパネルとしてもよい。さらに、液晶パネルに代えて、有機ELパネル、プラズマディスプレイパネル、ブラウン管パネルなどを用いることもできる。
【0015】
液晶パネル31,32は、例えば、20インチ、32インチ、52インチなどの汎用サイズのものを用い、LEDパネル33も選択されたサイズと同様のサイズのものを用いている。液晶パネル31,32は、主として動画広告が再生される表示媒体であるが、静止画広告が再生される表示媒体として用いてもよい。LEDパネル33は、その前面に、広告が印刷等されている透光性を有するプラスチックなどが配置されている。LEDパネル33には、たとえば、パワーLEDなどのように高輝度で低消費電力のLEDが2次元状に配列されている。
【0016】
表示媒体30を、液晶パネル31,32と、LEDパネル33というように2種類のパネルから構成することによって、1種類のパネルのみによって構成するよりも広告効果が高めることができる。すなわち、人間は、変化がある物は目に入りやすいという習性があるので、液晶パネル31,32に動画を表示させると、広告装置の周辺を通る人が当該動画に注目しやすいという点で広告効果が高められる。
【0017】
一方、LEDパネル33は、相対的には液晶パネルよりも安価なランニングコストで高輝度の照明を得ることができるので、典型的には広告装置の遠方を通る人に対しても広告表示を気付かせることができるという点で広告効果が高められる。
【0018】
また、副次的な効果として、広告装置の周辺を通るか遠方を通るかに拘わらず、表示媒体を回転させることによって、輝度の異なる照明を提供することによっても、人間の目にとっては変化があるため、広告効果が高められる。
【0019】
広告展示部40は、ここでは、断面が六角形状の概形をしているが、別の形状でもよい。広告展示部40には、プラスチック製、紙製などの広告を展示することが可能である。当該展示によって、広告表示面が増えるため、より広告展示効果を高めることが可能となる。もっとも、広告展示自体は、付加的なものであり、必ずしも、広告展示部40に広告展示をしなければならないわけではない点に留意されたい。一例としては、広告展示部40の少なくとも表面を、鏡、金属などのように光反射に優れた材質のものとすることができる。
【0020】
こうすると、広告装置の外部からの光が反射可能となるので、表示媒体30とともに広告展示部40を回転させれば、広告展示部40からの光の反射角が変わることになる。したがって、広告装置の周辺を通る人に対して、あるタイミングでは光が反射し、別のタイミングでは光が反射しなくなるといった変化を与えることができる。この結果、広告装置の周辺を通る人に対して、広告装置に対して注目させることが可能となり、ひいては、表示媒体30に表示している広告に対して注目させることもできる。
【0021】
土台50は、広告展示部40に連結されている。土台50は、表示媒体30を広告展示部40と一体的に回転させる回転手段51と、センサ60によってセンシングされた周辺環境に基づいて回転手段51の回転態様を制御する制御手段52と、液晶パネル31,32に表示すべき広告画像及びその属性などが格納されているメモリ53と、表示媒体30に接続されている電源線などの各種配線54とが内蔵されている。土台50の底面には、広告装置の運搬時などに利用する、複数の車輪が設けられている。
【0022】
また、土台50に車輪の駆動手段を内蔵させ、さらに土台50等に障害物検知センサを設けてもよい。こうすると、障害物検知センサから出力されるセンシング信号に従って駆動手段をオンさせることによって、車輪を駆動させて、広告装置自体を移動式としてもよい。なお、土台50の底部に吸引手段を設けることによって、広告装置周辺のゴミ収集を行えるようにしてもよい。
【0023】
回転手段51は、広告展示部40に連結された回転テーブルに、その軸が接続されているモータ(図示せず)を備えている。回転手段51は、制御手段52からの命令に従ってモータを駆動させ、広告展示部40を通じて表示媒体30を回転させている。
【0024】
制御手段52は、メモリ53に格納されている、オペレーションシステム、各種アプリケーションプログラムなどの種々のプログラムに従って、広告装置全体の動作を司るものである。具体的には、制御手段52は、液晶パネル31,32に対する広告画像の表示命令を行い、LEDパネル33に配列されているLEDに対する発光命令を行い、センサ60に対するセンシング命令を行い、その結果得られるセンシング結果に基づいて回転手段51に対する回転命令を行うなどといった動作を行う。換言すると、上記アプリケーションプログラムは、制御手段52に、これらの各種命令を実行させるようなプログラムである。
【0025】
メモリ53には、制御手段52によって読み出される、オペレーションシステム、各種アプリケーションプログラムなどに加え、同じく制御手段52によって読み出される、音声パターン、画像パターンなどが格納されている。この種の音声パターン、画像パターンなどは、制御手段52によって表示媒体30の回転態様を制御する際に用いられる。
【0026】
画像パターン等を用いた制御手段52の具体的な動作については後述するが、画像パターンがどのようなものであるかを概説すると、当該画像パターンとは、センサ60であるところの撮像手段によって撮像される被写体の性別、被写体の年齢層、被写体の服装の嗜好等をパターンマッチングによって特定するためのマッチング画像とすることができる。
【0027】
また、メモリ53に格納されている広告画像の属性とは、たとえば、当該広告画像のターゲットとしている性別・年齢層・服装の嗜好等の情報である。広告画像の属性に、商品名・商品種別など、回転手段51に対する回転命令に用いることができる種々の情報を含めてもよい。
【0028】
各種配線54は、図示しないベアリングの環内を通されている。これにより、回転手段51によって表示媒体30が回転される際に、各種配線54が表示媒体30の回転を阻害することを回避している。
【0029】
センサ60は、広告装置本体の周辺環境をセンシングするものである。センサ60は、マイクロフォンなどの集音手段、カメラなどの撮像手段、サーミスタなどの温度測定手段等を含む。これらの各手段は、どのようなものを用いてもよいが、本実施形態では、集音手段としてたとえば無指向性マイクロフォン、撮像手段としていわゆる360度カメラを用いている。もっとも、指向性マイクロフォン及びデジタルスチルカメラなどを複数設置してもよい。
【0030】
つぎに、図1に示す広告装置の動作について説明する。図1に示す広告装置は、主電源がオンされると、制御手段52によって、既知のように、メモリ53に格納されているオペレーションシステムが起動され、次いで、広告用のアプリケーションプログラムが起動される。
【0031】
制御手段52は、広告用のアプリケーションプログラムに従って、図示しない表示制御部に対して、メモリ53に格納されている広告画像を読み出して液晶パネル31,32に出力するといった表示命令を行い、かつ、LEDパネル33に配列されているLEDの発光命令を行う。表示制御部は、これらの命令に従って、液晶パネル31,32に広告画像を表示させ、かつ、LEDパネル33を点灯させる。
【0032】
また、回転制御用のアプリケーションプログラムが起動されると、制御手段52から回転手段51に対して、所定の回転速度で例えば反時計回りに、表示媒体30を回転させるための回転命令がなされる。回転手段51は、この回転命令に従って、図示しないモータを駆動させ、回転テーブルの回転を開始する。この結果、広告展示部40を通じて表示媒体30を回転することになる。
【0033】
つぎに、センサ用のアプリケーションプログラムが起動され、制御手段52からセンサ60に対して、広告装置の周辺環境をセンシングするためのセンシング命令がなされる。センサ60は、このセンシング命令に従って、集音、撮像などを行い、センシング結果を制御手段52へ出力する。
【0034】
制御手段52は、センサ60であるところの360度カメラから出力される画像信号を入力すると、画像処理用のアプリケーションプログラムに従って、当該画像信号を円環画像から直交画像に変換するなどの処理を施す。
【0035】
つぎに、制御手段52は、メモリ53を参照して、表示中の広告に係る属性と画像パターンとを読み出す。そして、その属性にマッチする被写体が、直交画像内に含まれているか否かを判別する。
【0036】
具体的には、表示中の広告が化粧品関係の広告であったとし、その属性が、女性・20代・赤い服を好みとしている(着ている)といったものであるとする。一方、画像パターンとしては、人物写真とその人物の性別・年齢とが一対とされたものが多数用意されているとする。この仮定の下では、制御手段52は、直交画像内に赤い服を着ている被写体がいることを特定したら、その者の画像と画像パターンとのマッチング処理を施し、その者の性別・年齢層を予測する。
【0037】
制御手段52は、予測結果が、上記属性に合致する場合には、画像信号等を用いて、その者(特定人)の歩行速度を割り出し、かつ、表示中の広告がその者に長時間向けられるように、表示媒体30の回転速度を制御する。
【0038】
なお、ここでいう回転速度とは、単位時間の回転距離と回転方向とを合わせたベクトル量をいう。したがって、本実施形態の場合でいえば、当初、たとえば反時計回りに回転していた表示媒体30が、反転して、時計回りに回転するような態様、表示媒体30が静止している態様も含む。
【0039】
回転手段51に対する回転命令の開始から終了までの一連の制御は、たとえば10秒間といった所定時間行うことができる。したがって、この例の場合には、特定人となる者が画像信号に含まれていると判別されたのであれば、その後、約10秒間、表示媒体30の回転速度が制御されることになる。
【0040】
一方、特定人となる者が画像信号に含まれていると判別されない間は、たとえば、20秒当たりで1回転させるといった回転速度で、表示媒体30を回転させればよい。
【0041】
以上説明したように、表示媒体30の回転速度を制御すると、表示中の広告画像のターゲットとしている特定人に対して当該広告に対する接触機会を増加できるので、広告効果が増大する。
【0042】
その他にも、たとえば、表示媒体30の回転速度が急に速くなったり、表示媒体30の回転方向が反転したりといった現象が生じうる。人間は、変化がある物は目に入りやすいという習性があるので、上記のように、表示媒体30の回転速度を制御すると、特定人以外の者も図1に示す広告装置に注目しやすくなることから広告効果が増大する。
【0043】
ここで、上記の一連の説明では、撮像手段からのセンシング結果を利用して、表示媒体30の回転速度を制御する場合の動作を説明したが、特定人の移動速度は、マイクロフォンの集音方向の変化、サーモグラフィによる計測温度位置の変化などを用いて割り出してもよい。
【0044】
さらに、広告効果を増大させるための実施例として、以下のような手法を採用することもできる。すなわち、表示中の広告に係る属性として、商品名・商品種別などを用意するとともに、これらに対応する音声パターンをメモリ53に格納しておく。そして、集音手段からの集音結果を音声パターンと対比して、これらが一致した場合に、集音元となる特定人を判別して、その後は既述のようにその者の移動速度を割り出して、表示媒体30の回転速度を制御することができる。
【0045】
かかる場合には、たとえば広告装置の周辺の通行人が、上記の例でいえば化粧関係の会話をしていたとすると、その者(特定人)に対して、効果的に広告との接触機会を付与することができる。
【0046】
また、サーモグラフィによる計測温度結果に基づいて、特定人を判別することもできる。典型例を説明すると、表示中の広告がホットドリンクに関するものであった場合には、通行人の温度測定結果が低温を示す場合、その者を特定人とし、その者に向けて、ホットドリンクの広告を集中的に表示させるようにすることもできる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の広告装置は、従来の広告形態としては斬新な、広告表示媒体自体を回転させるという手法を採用することによって、広告装置の設置場所を通る人と広告との接触機会を設けることができる。また、本実施形態の広告装置は、表示媒体の回転態様を変化させることによって、そこに多数の人を注目させるような工夫をしている。このため、広告装置の設置場所を通る人と広告との接触機会を更に増加させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態の広告装置の模式的な外観を示す斜視図である。
【図2】図1の一部を切り欠いて模式的な内部構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
10 筐体
20 載置台
30 表示媒体
31,32 液晶パネル
33 LEDパネル
40 広告展示部
50 土台
51 回転手段
52 制御手段
53 メモリ
54 配線
60 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広告対象が表示される複数の表示パネルを有する表示媒体と、
前記各表示パネルを一体的に回転させる回転手段と、
広告装置本体の周辺環境をセンシングするセンサと、
前記センサによってセンシングされた周辺環境に基づいて前記回転手段の回転態様を制御する制御手段と、
を備える広告装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記センサから出力されるセンシング結果に基づいて特定人の移動速度を割り出して、当該移動速度に基づいて前記回転手段の回転速度を変更する、請求項1記載の広告装置。
【請求項3】
前記複数の表示パネルは、動画又は静止画を表示可能なパネルを含む、請求項1記載の広告装置。
【請求項4】
前記センサは、音声、画像、温度のいずれかをセンシングする、請求項1記載の広告装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−128110(P2010−128110A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301664(P2008−301664)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(503056584)株式会社SKRテクノロジー (2)
【出願人】(500586521)株式会社協立工機 (2)
【Fターム(参考)】