広域選択性による混合物の分析のためのセンサーおよびセンサーシステムにおける前記センサーの使用
【課題】広域選択性の概念に基づいて、より高い感度と選択性にて混合物を検出・評価する手段を提供する。
【解決手段】分析される混合物に特有の物質についての物理化学的親和性を有するメンブラン形成材料であって、(a)複合体形成性ポリマー導体、複合体形成性物質、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンブラン形成材料の少なくとも1つの単層の超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状電極もしくは微小電極、および所望により、(b)被覆されていない相互噛み合い状電極もしくは微小電極からなる少なくとも2つのセンサーユニット、を含むセンサー。
【解決手段】分析される混合物に特有の物質についての物理化学的親和性を有するメンブラン形成材料であって、(a)複合体形成性ポリマー導体、複合体形成性物質、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンブラン形成材料の少なくとも1つの単層の超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状電極もしくは微小電極、および所望により、(b)被覆されていない相互噛み合い状電極もしくは微小電極からなる少なくとも2つのセンサーユニット、を含むセンサー。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、相互噛み合い状電極もしくは微小電極により構成される各種センサーユニットによって形成される官能性システム(sensory system)に関し、それら電極もしくは微小電極の幾つかが、広域選択性の作用に基づいて物質を評価及び検出するための複合体形成性ポリマー導体(complexing polymer conductor)または他の複合体形成性物質(complexing substance)とのそれらの混合物で構成される超極薄フィルムで被覆されている。本発明の測定システムは、分析しようとする媒体中に浸漬されたセンサーシステム(sensor system)の電気信号の応答パターン〔交流(AC)を電気的に測定する手段によって得られる〕を分析することに基づいている。本発明のセンサーは、味の分析を行うために、人間が消費する物品(特に、飲料や液状食品)の品質をチェックするために、そして水の品質と環境保全を監視すべく、自然源(河川、湖、および池など)からの水に含まれる腐植物質や他の汚染物(有機物または無機物)を評価・検出するために使用することができる。本発明のセンサーは、他にも多くの用途に使用することができる。
【0002】
発明の背景
混合物中の成分を評価・検出する必要性から、人間にとって必須の物質(例えば、水や空気)および消費財(例えば、食品、飲料、および薬剤)の品質管理を可能にするようなより高感度且つ高性能の機器の開発が求められている。こうした目的に適合させるべく開発されたセンサーには種々の構造のものがあり、検出しようとする物質の種類と混合物中に存在する該物質の量を明らかにすることに重点が置かれている。しかしながら、一組の特性を取り扱う場合、それが官能刺激に反応するようなレベルであろうと汚染物のレベルであろうと、個々の成分の検出は重要ではないことが多く、むしろ結果として得られる組み合わせ〔例えば、フレーバー、香り、汚染物(すなわち、人間が消費するための水の中に存在する腐植物質)のトータル的な影響〕を評価することが重要である。所定の群に対するこうした評価は、広域選択的効果(global selectivity effect)として知られている。
【0003】
水中に有機物質(主として腐植物質で構成されている)が溶解して存在することは、水の品質に大きな影響を及ぼす因子である。なぜなら、塩素での処理中にしばしば発癌性物質〔例えばトリハロゲン化化合物(特にトリハロメタン)〕が生じるからである。腐植物質の存在によって引き起こされる水の品質悪化は、ブラジルを含めた多くの国における植樹技術や土壌管理技術が、依然として制御されていない仕方で施されている、という事実によるところが大きい(“Resk, D.V.S. in: II Encontro Brasileiro sobre Substancias Humicas, p50, Sao Sarlos, SP, 1997”を参照)。実際、天然資源を不適切に使用すると、有毒物質による土壌や水の直接的な汚染によって、あるいは森林破壊(侵食、沈泥堆積、およびその他の好ましくない事態を引き起こす)によって環境の悪化をきたす。したがって、このような悪化のレベルを監視することが極めて重要である。しかしながら、現在知られている機器は、主として使用が実験室に限定されているので用途が極めて限られており、このため行くのが困難な場所の物質を分析することは不可能であることが多い。したがって現場で直接使用することのできる、より安価で且つより取り扱いやすい機器の開発が求められている。
【0004】
したがって、腐植物質を低レベルに保持することが重要であるので;腐植物質が、種々の過程において天然水源中に(金属の錯形成により)および土壌中に(栄養素や農薬の残留により)混入するという事実から見て;、これら腐植物質を検出することが、環境悪化に歯止めをかけるために重要であるだけでなく、都市部において消費される水の処理における指針として役立たせるためにも重要である。したがって、理想的な状況は、腐植物質の存在を検出し(起源に応じたそれぞれのカテゴリーによって、および腐植特性の識別を通して腐植物質を選択する)、類別化と定量化を可能にするが、構成成分の個々の識別や正確な化学組成については問題としないセンサーを提供することであろう。極めて精巧な機器〔例えば、液体・ガスクロマトグラフィー装置、元気分析装置、および他の種々の物理化学的分析機器(“D.A.SKOOG and D.M.WEST, Principles of Instrumental Analysis. 第4版, Philadelphia: Saunders College Publishing (1992)”を参照〕は、現場で使用できないという点は別としても、分析操作が複雑であり、測定に必要とされる時間が長く、そして運用コストが高いという欠点を有する。
【0005】
腐植物質を全体として評価・検出する必要があるように、人間が消費するための、そしてさらには獣医が使用するための飲料や食品の品質管理に対しては、フレーバーを全体的に評価することが基本的に重要である。なぜならある物品の商業化可能性は、食料のフレーバーが動物によって受け入れられるかどうかに依存するからである。実際、異なった味の原因となる物質(酸っぱいフレーバー、塩からいフレーバー、甘いフレーバー、苦いフレーバー、および旨味タンパク質様フレーバー)は、舌の特殊な管(special canals)中に見られる生物学的メンブランにて検出される。言い換えると、においや味に対する人間の官能性は、フレーバーや香りの原因となっている物質のそれぞれを別々に識別することができず、むしろ前記の“広域選択性”に従って脳により認識される基本的パターンを識別する。この場合においては、唯一の満足できるセンサーシステムは、異なった種類の飲料の品質を手軽に且つ迅速に評価し、それらのフレーバーに従った別々のカテゴリーによってそれらを選択し、広域的な仕方でそれらを定量化することのできるシステムである。
【0006】
従来の化学センサーは、それ自体で特定の化合物を識別することに基づいており、従って、溶解状態の腐植物質の識別、あるいは混合物中に存在する成分の多様性によってフレーバーを構成している物質の識別に対しては役に立たないものとなる。
【0007】
土壌中および水性系中に存在する腐植物質と有機物を評価・検出する場合には、種々のセンサーを使用することができ、こうしたセンサーが特許文書中に記載されている。米国特許第5,044,756号には、有機物をリアルタイムで検出するためのセンサーが記載されており、該センサーは、有機物のレベルを評価しようとする土壌の特定エリアをスキャンすることによって使用時において動的モードにて作動する光源と検出器からなる。得られる光信号は、各タイプの土壌に対して特異的な数学的分析値が得られるような仕方で処理される。このような方法は固体サンプルに限定され、従って水中に存在する腐食物質の検出に対しては全く役に立たない。JP05079988は、化学ルミネセンスを使用することによって腐食酸を検出・定量化するための迅速な方法を開示しており、該方法は、過酸化水素とホルムアルデヒドをサンプルに加えること; アルカリ(水酸化ナトリウム)でpHを調節すること; そして最後に、腐食酸を検出・定量化するために化学ルミネセンスを測定すること(最大波長のルミネセンスを使用して)、このときルミネセンスのスペクトルを抜き取って増幅された電気信号の形で記録する; からなる。光電子増倍管と増幅器を使用することにより、得られるルミネセンスの強度を、既知濃度の腐食酸に対して得られるルミネセンスの強度(較正曲線)と比較する。これらのタイプのセンサーはコストが比較的高く、現場試験の要件とは相容れない精巧な装置と複雑な処理が必要とされる。
【0008】
味の評価に関して言うと、公知のセンサーは、フレーバーの基準の移送と識別を可能にする天然メンブランと共に使用される物質の吸収を求める生物学的検出を模倣することに基づいている。2つの主要なタイプがあり、第1のタイプは、味の自然過程において加わる脂質の特性に基づいている。第2のタイプは、溶液(すなわち、ミネラルウォーターやワイン)中に存在するイオンを測定する。第1のタイプは一般に、信号を変換する能力のある脂質化合物を、通常は非導電性のポリマーマトリックス(例えばポリ塩化ビニル)上に分散させることによって形成される〔米国特許第5,482,855号; 米国特許第5,302,262号; JP05099896; JP06174688; JP10078406; JP10267894; K.Toko, Measur. Sci. Technol. 9, p.1919(1998); K.Toko, H.Akyiama, K.Chisaki, S.Ezaki, T.Iiyota, K.Yamafuji, Sensors and Materials, Vol.9, N5, p.321(1997); S.Ezaki, H.Kunihiro, Sensors and Materials, Vol.11, N8, p.447(1999); を参照〕。このタイプのセンサーは、味を評価し(甘いフレーバー、塩からいフレーバー、酸っぱいフレーバー、および苦いフレーバー、ならびに異なった種類のビール、コーヒー、ミネラルウォーター、牛乳、ワイン、および酒の基準を区別する)、また水の品質と河川の汚染を評価する〔H.Sakai, S.Iyiama, K.Toko, Sensors and Actuators B, Vol.66, p.251(2000); 米国特許第5,482,855号; 米国特許第5,302,262号; を参照〕。しかしながら、メンブランの安定性に関連した種々の欠点があること、特定の種類の表面に対する密着性が弱いこと、およびポリマー層が比較的厚いために系を小型化するのが困難であることから、公知のセンサーは、生物学的検出の限界未満にてフレーバーを区別するには不適当である。第2のタイプのセンサーは、分散された非晶質を含有する選択性メンブラン(すなわち、これらの分散された半導体を含有するPVCメンブラン)、および従来の電極〔C.DiNatale, A.Macagnano, F.Davide, A.’Damico, ALegin, Y.Vlasov, A.Rudnitskaya, B.Selenov, Sensors and Actuators BVol.44, p.423(1997); A.Legin, A.Rudnitskaya, Y. Vlasov, C.DiNatale, E.Mazzone, A.’Damico, Electroanalysis, Vol.11, N10, p.814(1999); A.Legin, A. Rudnitskaya, Y. Vlasov, C.DiNatale, E.Mazzone, A.’Damico, Sensors and Actuators B Vol.65, p.232(2000); を参照〕を使用することによって溶液中のイオンを検出できる範囲にて動作するが、これらのセンサーは、無極性物質(例えばコーヒー)や電解質を形成しない物質(例えばサッカロース)を検出することはできない。
【0009】
ごく最近では、固有の電気導体ポリマー、簡単に言えば導電性ポリマーをベースとしたセンサーが提唱されている。電気刺激に対して電気的に能動的に応答する点は別として、これらのポリマーは、異なった物質を検出するためのセンサーにおける高感度材料および変換器材料としても使用することができる、ということが確認されている。
【0010】
導電性ポリマーを使用するセンサーは、一般には、所定の形状の金属電極または半導体電極上にこれらの材料のフィルムを形成させることによって製造される〔H.E.Endres, S.Drost, Sensors and Actuators B, Vol.4, p.95−98(1991); T.Hofmann, K.Schrode, J.Zacheja, J.Binder, Sensors and Actuators B, Vol.37, p.37−42(1996); を参照〕。現在までに開発されている機器の多くはガス系に限定されており、ポリマー導体の使用に基づいているか(米国特許第4,887,455号、米国特許第5,417,100号、および米国特許第5,536,473号を参照)、あるいは、より一般的には、有機ポリマー導体(通常はポリピロール)と、前記有機ポリマー導体とは化学組成が異なる従来のポリマーもしくは他の材料〔例えば、ポリスチレン、ポリ(A−メチルスチレン)、ポリ(スチレン−アクリロニトリル)、ポリ(スチレン−無水マレイン酸)、ポリ(スチレン−アリルアルコール)、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(4−フェノールビニリック)、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビスフェノール−カーボネート)〕との混合物を含んだ種々のセンサーのアレイで構成されている。こうした組成の違いにより、ある化学物質がこれらの機器の表面上に吸収されると電気抵抗に変化が生じ、分析される各サンプルに対して異なった応答パターンが得られる。従って、これらセンサーのほとんどは、他の材料中に分散させたのと同じポリマー導体を使用し、複数種の揮発性化学物質の純粋な蒸気とこれら蒸気の二元混合物とを識別し(米国特許第5,951,846号、米国特許第5,959,191号、および米国特許第5,571,401号を参照)、そしてさらに、異なったタイプの流体(液体もしくは気体)中に存在する分析すべき物質を識別する(米国特許第6,010,616号を参照)。
【0011】
実際、公知のセンサーは、混合物の成分を検出することはできるが、幾つかのタイプのアロマ・センサー〔電子の鼻(electronic nose)〕を除いて通常は群(group)を特性決定することはできない。こうした状況に対し、特定の種類の化学組成の検出と定量化について新しい概念が適用されつつある。すなわち広域選択性という概念である(K.Toko, Measurement Sci. Technol., v.9, p.1919, 1998; およびK.Toko, Sensors and Actuators B, v.64, p.205, 2000; を参照)。この概念は、官能性システムを形成する種々のセンサーユニットの配列体を使用することによって、異なった種類の化合物を特性決定する応答パターンを認識することに基づいている。この配列体においては、各センサーユニットが他のユニットとは異なる材料で構成され、化合物のある特定の群に対して固有の応答をもたらす。従って、このシステムは特定の化合物の“フィンガープリント”を確立する。
【0012】
しかしながら、この方法における大きな問題点は、生物学的限界を上回る感度を得るのが困難であること、および極めてよく似た特性をもった混合物の区別を可能にするのが困難であることである。
【0013】
対処すべきもう一つのポイントは、公知の官能性システムは、直流(DC)を使用する構成部品によってセンサーユニットから受け取る電気信号を取り扱うことが多いという事実である〔F.Musio, M.C.Ferrara, Sensors and Actuators B, Vol.41, p.97−103(1997); およびM.E.H.Amrani, P.A.Paine, IEE Proc. Sci. Meas. Technol. Vol.146, N2, p.95−101(1999); を参照〕。他方、気体の検出に対し、ポリマー導体をベースとしたセンサーにて交流(AC)を使用して測定することは、直流による測定と比較してより効率が高いので有利であると考えられる。DC法がもたらす欠点の1つは、実験パラメーターのシステム化された変化に対して必要とされる時間が極めて長いことである。AC変調により、より大きな実験上のフレキシビリティがもたらされる。DC法のもう1つの欠点は、ポリマー材料をベースとするシステムにおいて電気的な変化が非常に小さいということである。このような電気的変化は、ACで作動する部品によって測定できるけれども(WO98/19153)、DCにて検出することは困難である。この点は別として、ACによる測定は、イオン化された化学タイプ(ionised chemical types)がサンプル内での移動するのを防止するので非破壊的である。この後者の現象は、電気的特性の不可逆的な変化を引き起こすことができる。したがって使用するセンサーの数を、この結果デバイスのサイズを減少させることができ、さらには直流から得られる測定値よりはるかに高感度で且つ正確な測定値が得られるようになる。交流におけるこのインピーダンス分光分析法はよく知られており、味覚センサーにて電位差計による測定と比較したときに〔K.Toko, Measur. Sci. Technol. Vol.9, p.1919−1936(1998); K.Toko, Biosensors and Bioelectronics, Vol.13, p.701−709(1998); A.Legin, A.Rudnitskaya, Y.Vlasov, C.DiNatale, E.Mazzone, A.’Damico, Electroanalysis, Vol.11, N10, p.814−820(1999); K.Toko, T.Matsuno, K.Yamafuji, K.Hayashi, H.Ikezaki, K.Sato, R.Toukubo, Biosensors and Bioelectronics, Vol.9, p.359−364(1994); S.Iiyama, K.Toko, K.Yamafuji, Agric. Biol. Chem. Vol.50, N11, p.2709−2714(1986); を参照〕、また電量計による測定と比較したときに〔S.Iiyama, Y.Miyasaki, K.Hayashi, K.Toko, K.Yamafuji, H.Ikezaki, K.Sato, Sensors and Materials, Vol.4, N1, p.21−27(1992); I.Winquist, P.Wide, I.Lundstrom, Analytica Chimica Acta, Vol.357, N1/2, p.21(1997); を参照〕、実験データの収集が簡単であるだけでなく、非電解質物質によるポリマーをベースとしたデバイスにてわずかな信号変化でも検出できるのでより実行可能性の高いものとして報告されている。
【0014】
したがって、公知の官能性システムの感度と選択性を増大させる必要性は、現行センサーの低い性能に対する市場の反応によって推し量ることができる。
【0015】
発明の要旨
本発明の目的は、増強された感度と選択性を持つ広域選択性という概念に基づいて混合物を検出・評価する手段を提供することにある。
【0016】
第1の実施態様は、広域選択性による混合物の分析のためのセンサーであって、(a)分析しようとする混合物に特有の物質に対して物理化学的親和性を有するメンブラン形成物質であって、複合体形成性ポリマー導体、複合体形成性物質、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるメンブラン形成材料の少なくとも1つの単層の超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状電極もしくは微小電極; および所望により(b)被覆されていない相互噛み合い状電極もしくは微小電極; からなる少なくとも2つのセンサーユニットを含むセンサーに関する。
【0017】
第2の実施態様は、(a)複合体形成性ポリマー導体で構成される少なくとも1つの単層の超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状電極もしくは微小電極(所望により少なくとも1種の複合体形成性物質と組み合わせて); および(b)フレーバーを構成する物質に対して物理化学的親和性を有する少なくとも1種の複合体形成性物質で構成される少なくとも1の単層の超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状電極もしくは微小電極; および所望により(c)被覆されていない状態の、相互噛み合い状電極もしくは微小電極; からなる少なくとも2つのセンサーユニットを含む、広域選択性によって混合物を分析するための味覚センサーに関する。
【0018】
第3の実施態様は、(a)ある1種の複合体形成性ポリマー導体で構成される少なくとも1つの単層の超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状電極もしくは微小電極(所望により、分析しようとする物質中に存在する腐植物質に対して高い物理化学的親和性を有する少なくとも1種の複合体形成性物質と組み合わせて); および所望により(b)被覆されていない状態の、相互噛み合い状電極もしくは微小電極; からなる少なくとも2つのセンサーユニットを含む、広域選択性によって液体系を分析するための腐植物質検出用センサーに関する。
【0019】
第4の態様は、(1)(a)分析しようとする混合物に特有の物質に対して高い物理化学的親和性を有していて、複合体形成性ポリマー導体、複合体形成性物質、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるメンブラン形成物質で構成される少なくとも1つの単層の超極薄フィルムで覆われた相互噛み合い状電極もしくは微小電極; および所望により(b)被覆されていない状態の、相互噛み合い状電極もしくは微小電極; からなる、電気信号を発生する少なくとも2つのセンサーユニット; (2)分析しようとする物質と接触しているセンサーユニットによって発せられた交流電流を測定する手段によって得られる電気信号を受け取る手段; および(3)それら各種センサーユニットによって形成されるアレイの応答パターンを分析のためにそれら測定値を処理する手段; を含む官能性システムに関する。
【0020】
発明の詳細な記述
本発明の理解を容易にするために、重要な用語の定義を以下に記載する。
・“広域選択性”とは、種々のタイプの物質の組み合わせ又は混合物の複合的効果(compound effect)(例えば、それら物質間の相乗的効果または抑制的効果)を規定する定量化を意味している。フレーバー、におい、または有機物質(例えば腐植物質)による汚染などは、こうした複合的効果の幾つかの例である。超極薄フィルムは、単層(単層の厚さを、オングストロームのレベルにて測定される範囲に制御できるような条件下での堆積によって得られる薄い単層)の形で堆積させた。本発明においては、単層の厚さは5〜500Åの範囲である。
【0021】
・“複合体形成性ポリマー導体”とは、生来的に電気信号の伝導性になる当該物質の能力を表わしており、このような材料は、多共役電子π系(poly−conjugated electron−π system)(例えば、二重結合、芳香環もしくはヘテロ芳香環、または三重結合)を有する有機ポリマーを含んでおり、例えば、ポリアニリン; ポリピロール; ポリアセチレン; ポリジアセチレン; ポリチオフェン; ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT); ポリイソチオナフタレン; ヘテロアリーレン基がチオフェン、フラン、またはピロールであってよいポリヘテロアリーレンビニリン; ポリ−p−フェニレン; ポリフタロシアニンと類縁体; 前記化合物の誘導体; およびこれらの混合物; が挙げられる。
【0022】
・“複合体形成性物質”とは、複合的効果に特有の物質群と化学的に(可逆的な複合体形成)および/または物理的に(可逆的な吸着)相互作用する性質を有していて、電気変換特性(electric transductor properties)をもたらす構造を有する物質を意味している。代表的な例は、フレーバーに特有の物質群と相互作用する脂質、および有機物による水や土壌の汚染の原因となる腐植物質と相互作用するリグニンである。
【0023】
“混合物に特有の物質”とは、特定の複合的効果(例えば、フレーバー、におい、および有機物による汚染)の原因となる物質群を意味している。例としては、腐植物質(例えば、腐食酸やフルボ酸)、フレーバー(甘いフレーバー、塩からいフレーバー、苦いフレーバー、および酸っぱいフレーバー)の原因となる物質、または臭気物質(ガスや蒸気)が挙げられる。
【0024】
本発明の主要な特徴の1つは、特に液体系を分析することによってフレーバーや有機物による汚染が識別できるように、複合体形成性物質と複合体形成性ポリマー導体の両方(あるいはこれら混合物)に基づく種々の複合体形成系(complexing system)で構成される超極薄フィルムを使用することにある。薄いフィルムを使用して作動させる必要があるのは、ポリマーフィルムが厚くなるにつれてセンサーデバイスの感度が大幅に低下する、という知見によるものである〔E.Stussi, R.Stella, D.DeRossi, Sensors and Actuators B, Vol.43, N1, p.180(1997); WO98/19153; を参照〕。
【0025】
よく知られているように、導電性ポリマーは、あらゆる範囲の半導体を含めて、絶縁体から導体までの範囲にわたる種々の導電率値をもたらす。こうした融通性により、この種の材料に対し、種々の電子デバイス(例えば、トランジスタ、コンデンサ、およびダイオード)において従来の無機半導体に置き換えるのに適したものとなるだけでなく、種々の物質を検出するためのセンサーにおける高感度の変換器材料として使用するのにも適したものとなる特性が付与される。なぜなら、電気的に活性であるため、電気刺激に対して応答するからである。
【0026】
本発明において使用するのに適した導電性ポリマーが多くの文献中に記載されている(例えば、米国特許第5,494,609号、米国特許第5,368,717号、米国特許第5,356,660号、米国特許第5,290,483号、米国特許第4,877,646号、および米国特許第4,803,096号)。好ましいポリマーが、複合体形成性ポリマー導体に関する定義において記載されており、好ましいのはポリピロール、ポリアニリン、およびこれらの誘導体である。
【0027】
本発明においては、超極薄単層フィルムを形成するために、導電性ポリマーがさらに複合体形成性物質と組み合わせて使用される。
有機物による水または土壌の汚染を評価・検出する場合、好ましい複合体形成性物質としては、スルホン化リグニン、複合体形成性有機酸〔ショウノウスルホン酸(camphosulphonic acid)、トルエンスルホン酸、および複合体形成特性を有する類似化合物〕、および金属イオン(銅イオン、鉄イオン、アルミニウムイオンなど)を含有する錯体を挙げることができ、いずれも腐植物質のパターンを識別するので、これらを利用したセンサーはさらに、農業、環境制御、ならびに家庭用水および工業用水の処理(他の用途もある)において使用されている。腐植物質に類似した構造を有する物質(例えばスルホン化リグニン)を使用すると、混合物中の腐植物質の検出において生成される電気信号の変換が容易になり、したがって、例えば水や土壌の汚染レベルを測定する際にセンサーの感度がアップする、ということが最近見出された。
【0028】
目的がフレーバーを評価することにある場合、適切な複合体形成性物質は、各々のフレーバー(甘いフレーバー、苦いフレーバー、塩辛いフレーバー、および酸っぱいフレーバー)の特徴的な群に特有の物質と相互作用する複合体形成性物質である。好ましい複合体形成性物質の主なものは、脂質化合物(例えば、ステアリン酸、カプロン酸、およびカプリル酸)、ならびに金属錯体や酵素(リゾチーム等)等の他の物質である。
【0029】
このように、本発明のセンサーは、複合体形成性物質と複合体形成性ポリマー導体のそれら特性との共役性(conjutation)に基づいており、それが、これらの材料の固有な特性に起因するセンサーデバイスの応答パターンにおける有意な増強を可能とし、したがって感度と選択性が向上し(効率的なセンサーデバイスを製造するための基本的且つ本質的な要件)、さらには妨害反応の影響も取り除かれる。実際には、複合体形成性ポリマー導体は、当該物質に対して感度のよい物質として機能するだけでなく、電気刺激によって生成される電気信号の変換器としても機能する。複合体形成性ポリマー導体は室温で作動し、この点は、二酸化錫等の半導体をベースにした従来のシステムを使用する場合とは異なる。複合体形成性ポリマー導体は製造するのが簡単であり、標準的な方法(例えば、自己集合法やラングミュア・ブロジェット法)に従ってポリマーフィルムの形態で製造することができる。本発明のポリマー・メンブランはさらに、特定の当該分子(例えば、酵素、複合体形成剤、および特定の触媒特定の有する金属)を固定化するための支持体マトリックスとしても機能する。
【0030】
本発明のセンサーユニットは、相互噛み合い状微小電極上に超極薄フィルムを堆積させることによって形成される。種々の堆積法を使用することができる。これらのうちで好ましいのは、自己集合法(self−assembly technique)とラングミュア・ブロジェット(LB)法である。
【0031】
自己集合法は、操作が簡単で複雑な装置が不要であるという利点を有する。しかしながらこの方法は、操作が単純であるにも関わらず、それぞれの支持体に単層もしくは二重層として施すことのできる超極薄フィルムの厚さが限定される〔W.B.Stockton and M.F.Rubner, Macromolecules, v.30, p.2717; Cheung, W.B.Stockton and M.F.Rubner Macromolecules, v.30, p.2717; K.Ariga, Y.Lvov and T.Kunitake, J. Am. Chem. Soc., v.32, p.4309, 1998; およびL.G.Paterno, L.H.C.Mattoso and O.N.Oliveria Jr., Quimica Nova Vol.24, n.2, p.228−235, 2001; を参照〕。この方法は基本的に、化学的変性を施した固体支持体を、高分子電解質(ポリカチオンおよび/またはポリアニオン)を含有する溶液中に浸漬することを含む。高分子電解質の各溶液中に交互に浸漬を行うことにより、自己据え付けフィルム(self−mounted film)が形成され、二重層(ポリカチオン/ポリアニオン)あるいは高分子電解質の1種からの単層を作製することができる。自己集合される超極薄フィルムの形成は、固体支持体として使用される相互噛み合い状電極もしくは微小電極上で行われる。このプロセスに対しては超純水を使用することが不可欠である。固体支持体とその上の層によって形成されるユニットを、高分子電解質を含有する溶液中に浸漬する時間は、1〜30分の範囲である。好ましい浸漬時間は、1分、3分、および10分である。
【0032】
ラングミュア・ブロジェット(LB)法も本発明で使用するのに適しており、この点は当業者によく知られている〔G.G.Robert,“Langmuir−Blodgett Film”, Plenum Press Pub., New York(1990)を参照〕。簡単に言うと、この方法は、あらかじめ揮発性有機溶媒(例えばクロロホルム)中に溶解しておいた有機物質を、マイクロシリンジまたはマイクロピペットを使用して液体サブフェーズ(a liquid subphase)上に広げることを含む。このサブフェーズは、通常は超純水である。この広がりプロセスの数分後に有機溶媒が蒸発し、当該物質の単層だけが残って堆積し、水の表面全体を覆う。この段階において、このフィルムをラングミュア・フィルムと呼ぶ。特殊な装置(ラングミュア・トラフと呼ばれる)を使用することにより、これら分子によって占有された液体サブフェーズ上の有用エリアを、一対の可動バリヤーでこの単層を圧縮することによって減少させることができる。液体サブフェーズ中への固体支持体(相互噛み合い状電極であってよい)の連続的な浸漬と取り出しにより、これらフィルムの、水の表面から固体支持体の表面への移行が可能となる。超極薄フィルム(ラングミュア・ブロジェット膜と呼ばれる)の厚さと堆積を規定するのは、このプロセスの制御である。従ってこれらは、分子レベルにて作製・制御される。通常適用される圧縮速度は1〜10mm/分であるが、本方法の特徴的な堆積速度は0.5〜10mm/分である。
【0033】
単層の厚さは、薄くて5〜500Åという特徴的な厚さでなければならない、という点を強調しておく必要がある。単層によって堆積される超極薄フィルムは1〜20層で構成され、その厚さが最大で500Åであるのが好ましい。超極薄フィルムは約10層で構成され、その厚さが約20Åであるのがさらに好ましい。
【0034】
ポリマーフィルムを堆積させるのに使用される他の方法としては、例えば、所定の角振動数で回転する固体支持体上に、堆積させようとする物質を溶液の形態で広げることによって表面を被覆するという方法〔この場合、支持体の回転速度を調節することによってフィルムの厚さを制御することができる(スピンコーティングと呼ばれる)〕、電解重合による方法、および溶液の形態の物質を広げることによって固体支持体の表面を被覆するという方法〔溶媒が蒸発した後、支持体上に該物質の被膜が残る(キャスティングと呼ばれる)〕があり、「T.Skotheim, R.Elsenbaumer, J.R.Reynolds, “Handbook of Conducting Polymer”, Marcel Dekker, New York(1998)」に他の方法が記載されている。
【0035】
本発明に関するセンサーの製造において固体支持体として使用される電極もしくは微小電極は、金属、好ましくは金、白金、銅、アルミニウム、または他の導電性物質(好ましいのは金である)で作られる(好ましくは、金を相互噛み合い状の形態でガラス上に堆積させたもので、且つセンサーのための成分の詳細及びそれらの用途に応じて種々の数、幾何学形状、およびサイズを持つ)。群の特性を評価するために種々の特性をもつセンサーユニットを組み合わせるという考え方が、本発明のセンサーアッセンブリの基礎をなしている。従って、如何なる被膜も持たない金属電極もしくは金属微小電極で構成されるセンサーユニットと、複合体形成性導電性ポリマー、複合体形成性物質およびこれらの混合物の超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状金属電極もしくは金属微小電極を含む官能性ユニットとの組み合わせは、混合物が極めて類似した特性を有する場合でも、混合物間の区別を可能にする。これは、それぞれのセンサーユニットが、他のセンサーユニットとは異なる電気的応答パターンを生成し、全体的な応答を分析することによって、分析される液体の“フィンガープリント”が得られるからである。例えば、フレーバーを検出・評価するために、被覆されていない状態の、相互噛み合い状金属電極もしくは金属微小電極で構成されるセンサーユニットと、(a)複合体形成性物質(すなわち脂質物質)で構成される超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状金属電極もしくは金属微小電極; (b)複合体形成性導電性ポリマー(すなわち、ポリアニリンやポリピロール)で構成される超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状金属電極もしくは金属微小電極; および(c)複合体形成性導電性ポリマーと複合体形成性物質とを組み合わせて構成される超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状金属電極もしくは金属微小電極; を含むセンサーユニットとを組み合わせることができる。しかしながら、有機物による水の汚染を検出するのに本発明のセンサーアレイを使用する場合、被覆されていない相互噛み合い状金属電極もしくは金属微小電極で構成されるセンサーユニットと、(a)複合体形成性物質(すなわちスルホン化リグニン)で構成される超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状金属電極もしくは金属微小電極; (b)複合体形成性導電性ポリマー〔すなわち、ポリアニリン(ポリ(o−エトキシアニリン))やポリピロール〕で構成される超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状金属電極もしくは金属微小電極; および(c)複合体形成性導電性ポリマーと複合体形成性物質とを組み合わせて構成される超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状金属電極もしくは金属微小電極; を含むセンサーユニットとを組み合わせることができる。
【0036】
以下に実施例を記載して、本発明の好ましい実施態様を示す。これらの実施例に記載の手順は本発明を実施する手段を示しており、したがって、本質的な特徴を保持していて、記載されている検出方法の適用範囲内に属するような、条件、工程、または使用物質のいかなる変更も本発明の一部として含まれる、ということは当業者にとって明らかであろう。
【0037】
実施例
実施例1: 相互噛み合い状電極もしくは微小電極上へのフィルムの堆積
金電極(幅1mm、間隔1mm、金属層の厚さ70nm、2〜100ディジット(digits)の範囲で作動するよう適切な配置構成を有する)をガラス上に実装する。前述したように、センサーの使用目的に応じて他の寸法や配置構成が可能である。例えば電極は、幅が10μm、間隔が10μm、そして金属層の厚さが0.1μmであってよく、図1に示すように25対にてガラス上に実装することができ、このとき(1)は金電極を示しており、(2)はガラス基部を示しており、影付き部分(3)は、電極の有用部分のみを露出させている感光性材料の保護被膜を示している。
【0038】
(A) 自己集合法による堆積
電極をpH5.0の塩酸水溶液〔複合体形成性物質[ポリアニオン(スルホン化リグニン)とポリカチオン(ポリ(o−エトキシアニリン))]を1×10−5〜1×10−2モル/リットルの範囲の濃度で含有〕中に、1〜20の交互単層(一般には、それぞれが約20Åの厚さを有する10の単層)を有する自己装着化超極薄フィルムが得られるまで交互に浸漬して、最大500Åの厚さを有する自己装着化超極薄フィルムを得た。これらの溶液は全て、ミリポア社(Millipore)からのミリ−Q(Milli−Q)(登録商標)システムから得られる超純水を使用して調製した。浸漬時間は、ポリアニオンを含有する溶液、およびポリカチオンを含有する溶液中にそれぞれ3分であった。ポリ(o−エトキシアニリン)、ポリ(o−エトキシアニリン)+スルホン化リグニン+塩酸、ポリ(o−エトキシアニリン)+スルホン化リグニン+ショウノウスルホン酸、またはポリ(o−エトキシアニリン)+スルホン化リグニン+トルエンスルホン酸の自己据え付けフィルムの層を有する電極は、ポリ(o−エトキシアニリン)、ポリ(o−エトキシアニリン)+スルホン化リグニン+塩酸、ポリ(o−エトキシアニリン)+スルホン化リグニン+ショウノウスルホン酸、またはポリ(o−エトキシアニリン)+スルホン化リグニン+トルエンスルホン酸をそれぞれ含有するpH3.0またはpH5.0の塩酸水溶液中に、1分、3分、および10分という異なった時間にて浸漬することによって作製した。このようにして得たセンサーユニットを先ず、センサーユニットの製造において使用した複合体形成性物質含有溶液の個々のpH値に従って、pH3.0とpH5.0の塩酸水溶液中に3分浸漬することによって洗浄した。最後に、センサーユニットを、ミリポア社からのミリ−Qシステムから得られる超純水中に20分浸漬することによって洗浄した。
【0039】
(B) LB法による堆積
フィルムを形成させるための物質(複合体形成性導電性ポリマー、複合体形成性物質、またはこれらの混合物)をあらかじめ揮発性有機溶媒(この場合はクロロホルムを使用)中に溶解しておき、この溶液を、マイクロシリンジまたはマイクロピペットを使用して、ラングミュア・トラフ中の液体サブフェーズ上に広げた。数分以内に有機溶媒が蒸発し、この広がりプロセスの後に、堆積させようとする物質の単層が形成され、この単層が水の表面の広がり全体を覆った。フィルム形成物質の分子によって占有される有用エリアは、この単層を一対の可動バリヤーで圧縮することによって減少させることができた。1〜10mm/分の範囲の低い圧縮速度を使用し、これにより数種の導電性ポリマーの固体電極表面への移行が向上した。堆積速度は0.5〜10mm/分の範囲であった。
【0040】
実施例2: サンプル中に存在する腐植物質の分析に基づいて水の汚染レベルを評価するためのセンサーユニットを得ること
上記実施例1に記載の方法(自己集合法とLB法)に従ってセンサーユニットを製造し、このときポリアニリン(16量体)とポリピロール(Ppy)とのオリゴマーで構成されるピュアな5単層(5 pure monolayers)をラングミュア・ブロジェット法を使用して電極上に堆積させ、また自己集合法を使用してポリ(o−エトキシアニリン)とスルホン化リグニンの自己集合フィルムを堆積させた。これらのフィルムは、相互噛み合い状電極の露出された有用エリアだけを被覆した。金属ワイヤを上部スクウェア(これも金で構成されている)にハンダ付けし、これによりデバイスを周波数応答アナライザーに接続した。
【0041】
表1は製造されたセンサーユニットを示しており、これらを統合して腐植物質用のセンサーにすることができる。
【0042】
【表1】
【0043】
実施例3: 本発明のセンサーユニットを使用することによる、導電性ポリマーの複合体形成特性の実証
190nm〜1000nmの紫外線領域と可視光線領域(UV−Vis)において分光分析法を使用して、腐植物質と導電性ポリマーとの間に存在する相互作用を実証した。図2はUV−Vis領域におけるスペクトルを示しており、これによりポリ(o−エトキシアニリン)と腐植物質との複合体が形成されていることが確認される。
【0044】
本システムにおいては、腐植物質の分析は、pH5.0(塩酸で調節する)の水溶液中で行う。このようなシステムはさらに、腐植物質に対する光学センサーとしても使用することができる。
【0045】
腐植物質を分析するための種々の溶液を調製した: (1)pH5.0のHCl水溶液(リファレンス1); (2)それぞれ1.0×10−5モル/lおよび5.0×10−5モル/lのPOEAを含有するpH5.0のHCl水溶液; (3) それぞれ1.0×10−5モル/lおよび5.0×10−5モル/lのPOEAと異なった濃度(5、10、および30mg/l)の腐植物質とを含有するpH5.0のHCl水溶液。上記と同じ組の溶液を、塩酸をpH5.4のリン酸塩緩衝液で置き換えて調製した。3種の異なった腐食物質を分析した: アルドリッチ社市販されている腐食酸; ジャボティカバル(Jaboticabal)/SP(ブラジル)地方からのパープル・ラトソイル(purple latosoil)から抽出した腐食酸; およびカンピナス/SP(ブラジル)地方からのジストロフィック・オキシソイル(distrophic oxysoil)から抽出したフルボ酸。
【0046】
上記のように調製した溶液2と3に対し、190nm〜1000nmの紫外線領域と可視光線領域における吸収スペクトルを得ることによって、本発明の官能性システムの作動を確認した。吸収スペクトルを得るのに使用した標準溶液は、塩酸水溶液(pH5.0で作動する官能性システム用)およびリン酸塩緩衝液(pH5.4で作動するセンサーユニット用)であった。溶液2と3に対して得られたスペクトルを、溶液中に存在するポリマーのポラロニック・バンド(polaronic band)の移動に関して比較することにより、導電性ポリマーと腐植物質との間の複合体形成が明らかになり、したがって腐植物質を検出することができた。
【0047】
図2において、pH5.0で作動する官能性システムを使用して得られた結果から、3種の異なった濃度(5、10、および30mg/l)におけるアルドリッチからの腐食酸の存在が検出されたことがわかる。他の腐植物質〔アルドリッチから市販の腐食酸(HA)およびフルボ酸(FA)〕の存在に対しても同じ結果が得られ、それぞれ、POEAとHA(アルドリッチ)との複合体およびPOEAとFAとの複合体が形成されていることが実証された。これらの結果から、POEAと腐植物質との複合体が形成されていること、そして水中の腐植物質の存在をモニターする上で、この特性(すなわち、複合体の形成がPOEAフィルムの電気的性質に変化を引き起こす)を使用することが重要であることがわかる。
【0048】
実施例4: 本発明の官能性システムを使用する腐植物質の分析
実施例2において得られたセンサーユニットを、分析しようとする物質(腐植物質)と接触しているセンサーユニットから発する電気信号を受け取る(交流を測定することにより)手段、およびさらに表1に記載の種々のセンサーユニットのアレイ(実施例2を参照)についての応答パターンを分析するための測定値処理手段を含む官能性システムとして組み立てた。このようにして作製したデバイスを使用して、種々の生成源(地方)の腐植物質を分析した。図3〜6は、得られた結果を示す。
【0049】
3種の腐植物質を分析した: 2つのサンプルは腐食酸、そして1つのサンプルはフルボ酸であり、これらのサンプルは異なった地方の土壌から抽出したものである。これらのサンプルの溶液は、超純水(ミリポア社からのミリ−Qシステムから得られる)を使用して調製した。インピーダンス・アナライザー(前述)によって電気的応答を得た。これにより官能性システムは、微小電極のキャパシタンスに関して与えられる応答パターンを、周波数の関数(分析される腐植物質のそれぞれのタイプに対して特異的且つ特徴的である)にて得ることができる。図3と4はこれらの結果を示している。図から明らかなように、各センサーユニットに対して得られる応答は、溶液中に存在する腐植物質の量に比例し、定量分析が可能であることを示している。図3は、腐植物質〔15mg/l、腐食酸(アルドリッチ)〕を含む場合と含まない場合の緩衝溶液中に浸漬したセンサーユニット2、5、および6に関して、周波数の関数としてのキャパシタンスの差異を示している。この図は、腐植物質を含む場合と含まない場合の溶液間の、大きな周波数間隔での差異を明確に示している。図4は、20mg/lの腐植物質〔腐食酸(アルドリッチ)〕を含有するリン酸塩緩衝液中に浸漬したセンサーユニット2、6、8、および9に対するキャパシタンスの変化を示している。この図からわかるように、センサーユニットは、腐植物質を含有する同じ溶液に対して異なったキャパシタンスをもたらす。これらの応答は選択性があることを明確に示しており、したがって種々の腐植物質を識別することが可能となる。なぜならセンサーユニットは、腐植物質を含有する種々の溶液に対して特異的な応答を与えるからである。
【0050】
腐植物質の分析は、分析しようとする当該物質により高い選択的応答を有する範囲に対して最適化された唯一の周波数を選択することによって行うこともできる。
【0051】
図5と6は、1kHzという一定の周波数にて腐植物質を分析するための、9種のセンサーユニット(表1に示す)のアッセンブリについてのキャパシタンス応答を示している。種々のセンサーユニット間における信号の相違(図5)は、分析されるそれぞれの溶液に対して体系的かつ特徴的であり、再現性もある。図5は、pH5.4のリン酸塩緩衝液に対して、そして腐植溶液を含有する同じ緩衝液に対して1kHzにて得られたキャパシタンスの値を示している。フルボ酸(ジストロフィック・オキシソイル/SP)と腐食酸(アルドリッチ)に関して得られた値は、種々のセンサーユニットを使用することによって得られた“指紋”であり、したがって2種の異なった溶液の区別が可能となる。図6は、種々の濃度の腐植物質〔腐食酸(アルドリッチ)〕の存在下でのセンサーユニット6の異なった応答を全体的に示したものである。腐植物質の濃度は5〜20mg/lである。図6に与えられている結果は、本発明の官能性システムが腐植物質の種々の濃度を区別できること、そしてさらに、本発明の官能性システムを腐植物質の存在の定量化に使用できる、ということを示している。さらに、それぞれの濃度に対して異なった応答パターンを観察することができ、したがってそれぞれの腐植物質の異なった濃度を区別することができる。
【0052】
図7は、図5で得られたデータに対する主要成分の多変量解析(“主要成分の分析−PCA”)を示している。このシステムは、異なった腐食物質の分離(フルボ酸と腐食酸−図7aを参照)およびこれら腐植物質の種々の濃度〔市販の腐食酸(アルドリッチ)−図7bを参照〕を明確に示している。
【0053】
ある1種類の物質のみの定量分析と同様に重要なのが種々の物質間の定性分析であり、本発明のセンサーを使用すれば、極めて満足できる仕方でこれを実施することができる。この場合、デバイスは、種々のセンサーユニットから作製しなければならない。各センサーユニットのフィルムの数と組成は、分析しようとする腐植物質の特性に応じて最適化しなければならない。
【0054】
種々の腐植物質間の分離は、本発明の測定法によって全く問題なく行うことができ、また定量化は、適切なソフトウェア(例えば、神経回路網の解析に対して現在使用されているもの)を使用して簡単に行うことができる(”J.W.Gardner, E.L.Hines, H.C.Tang, Sensors and Actuators B, Vol.9, p.9−15(1992)”を参照)。なぜなら、物質の濃度が変化するということは、センサーの信号応答が変化するということを意味しているからである。さらに、分析される腐植物質に応じて、各センサーユニットに対する応答感度に差が生じる。この1つの例として、センサー4、5、6、7、および8は、フルボ酸に対してより高い感度を示すということがわかっている。
【0055】
実施例5: フレーバーを評価するためのセンサーユニットを得ること
実施例1に記載の方法(自己集合法とLB法)に従ってセンサーユニットを作製し、このときポリアニリン(16量体)とポリピロール(Ppy)とのオリゴマーのピュアな5単層を、そしてさらにこれらのポリマーとステアリン酸との混合フィルムを、ラングミュア・ブロジェット法を使用して電極上に堆積させた。これらのフィルムは、相互噛み合い状電極の露出した有用エリアだけを被覆した。金属ワイヤを上部スクウェア(これも金で構成されている)にハンダ付けし、これによりデバイスを測定機器に接続した。
【0056】
表2は、作製されたセンサーユニットを示しており、これらのセンサーユニットは“電子の舌”を組み込むことができる。
【0057】
【表2】
【0058】
実施例6: 本発明の官能性システムを使用することによるフレーバー(甘いフレーバー、塩辛いフレーバー、酸っぱいフレーバー、および苦いフレーバー)の分析
実施例5において得られたセンサーユニットを、分析しようとする飲料と接触しているセンサーユニットから発する電気信号を受け取る(交流を測定することにより)手段、および表2に記載の種々のセンサーユニットのアレイについて応答パターンを分析するための測定値処理手段をさらに含む官能性システムとして組み立てた。このようにして作製したデバイスを使用して、種々のフレーバーを分析した。
【0059】
本発明のセンサーユニットの特性を確認するために、先ず、単一の溶質を含有する溶液の電気的測定を行った。図8は、5mMのNaCl溶液に対する6センサーユニット(表2に示す)のアレイの応答を示している(微小電極のキャパシタンスが周波数の関数として示されている)。電気的応答は、インピーダンス・アナライザー(前述)を使用することによって得た。それぞれのセンサーユニットは、分析しようとする物質に対して特異で且つ特徴的な応答パターンを得ることができ、これが当該物質のフレーバーのタイプを特性決定するためのパターンとして役立つ。
【0060】
ある1種の物質のみの分析と同様に重要なのは、種々の物質間の定性的および定量的な識別であり、これは、本発明の官能性システムを使用することによって可能となる。各センサーユニットのフィルムの数と組成を、分析しようとする飲料の特性に応じて最適化しなければならない。
【0061】
図9は、分析されるそれぞれの物質に対して異なった特徴的な応答パターンが得られることを示している。NaClとKClは塩辛いフレーバーを呈し、HClは酸っぱいフレーバーを呈し、そしてサッカロースは甘いフレーバーを呈する。サッカロースは電解質を形成しないので、極性である他の物質と比較して応答信号の強度に大きな差があり、したがってサッカロースに対する結果によれば、値が他の物質よりはるかに小さい。分析する溶液は、脱イオン水または超純水を使用して作製した。このように、電気的応答の周波数を1回測定するだけでフレーバーの分析ができることから、分析時間が短縮され、また当該分野における利用が最適化される、ということがわかる。
【0062】
種々の濃度における塩辛いフレーバーと甘いフレーバーとの選別は、本発明の測定法を使用することによって何ら問題なく行うことができる。図10は、このことが可能であることを示している。
【0063】
前述したように、定量化は、適切なソフトウェア(例えば、神経回路網の解析用に現在使用されているもの)を使用して簡単に行うことができる。さらに、分析される物質の“フレーバー”特性に応じて、各センサーユニットに対する応答感度に差が生じる。この1つの例として、センサー4、5、および6が、甘いフレーバーに対してより高い感度を示している、ということがわかる。前述したように、これらのセンサーユニットの組成は、分析しようとする系に応じて最適化することができる。各センサーユニットに対して得られた応答信号は、液相(水溶液)中に存在する物質の量に比例している。100mMおよび300mMというより高い濃度でのNaCl溶液とサッカロース溶液も測定した。種々のセンサーユニット間における信号の識別は、分析される各溶液に対して系統的且つ特徴的であり、再現することができる。
【0064】
このような種々のセンサーに関する他の興味ある点は、ヒトの器官による検出の限界(5mM)未満の塩、および他の発明の文献中に記載の塩を含めて、異なる濃度での2種の塩(例えばNaClとKCl)を識別するのにも使用できるということである。C.Pfaffmanによれば(Handbook of Physiology, sec.1, Neurophysiology, Vol.1, J. Field pub. American Physiological Society, Washington DC−1959)、人体によって検出可能な水溶中のNaClの最小濃度は10mMである。図11は、この可能性を充分に示している。
【0065】
本発明のシステムのタイプだけでなく、当業者にとって明らかな調整による変形も、一般には飲料を評価するのに使用することができる。実用的な目的の1つの例として、種々のタイプのミネラルウォーター、カモミル茶、およびコーヒーの分析に対してこの官能性システムを使用することが示されている。
【0066】
図11、12、および13は、センサーを飲料中に浸漬したときの、キャパシタンス応答信号(400Hzにて)を示している。分析される飲料の各タイプに対して、極めて異なった特徴的な応答パターンが得られる、ということがわかる。このようにして得られた結果が、ミネラルウォーターの会社からの情報によって裏づけられた。なぜなら無機塩を含有する飲料は、図12に示すように、より高い強度の電気信号応答を与えたからである。図13は、分析されたカモミル茶が、ハチミツを含むか否かに応じて香りだけが異なった、ということ示している。図14は、2種類のコーヒー(一方は市販品であり、他方は家庭で焙煎したものである)の間の差異を示している。
専門でない人が分析した場合には、水のサンプル、お茶のサンプル、及びコーヒーのサンプル間におけるフレーバーの違いを区別することは実際には不可能であった(使用したセンサーの種類によってはそうではなかった)、ということを強調しておかねばならない。このことは、本発明のデバイスによってもたらされる応答の感度が高いことを強く示しており、したがって本発明のデバイスは、類似の物質を区別する上で人間の生物学的システムより感度が高いことがわかる。
【0067】
複合体形成性導電性ポリマーと複合体形成性物質で構成される種々のセンサーユニットからなるアレイを使用して、(AC)電流の測定を行う官能性システムによってこれらの実施例から得られた結果は、現行の“電子の舌”(単に、脂質と電位差読み取りだけに基づいている)より高い感度をもたらす。本発明において使用されるポリマーは、これらの物質が特定のpH値にて受けるドーピングプロセスにより、酸溶液の場合にはより正確な変化を検出することがある。このような結果から、食品を適格とするために使用できるだけでなく、化粧品、医薬品、および香水などを分析するためのシステムにおいても使用できるセンサーの製造が可能となる。
【0068】
本発明の官能性システムは、コストが低く、容易に再現できる構造を有することを特徴とする、ということも強調しておかねばならない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、本発明において使用される相互噛み合い状電極の1つのタイプを示している。
【図2】図2は、可視光線と紫外線の領域におけるスペクトルを示しており、これらのスペクトルから、ポリ(o−エトキシアニリン)と腐植物質との複合体が形成されていることがわかる。
【図3】図3は、腐植物質(15mg/l)を含んだ場合と含まない場合の緩衝液における、センサーユニット2、5、および6の周波数に対するキャパシタンスの差異を示している。
【図4】図4は、例えば、20mg/lの腐植物質を含有するリン酸塩緩衝液における、センサーユニット2、6、8、および9に対するキャパシタンスの変化を示している。
【図5】図5は、pH5.4のリン酸塩緩衝液、および腐食物質を含有する緩衝液に対する1kHzにて得られたキャパシタンス値をグラフ表示している。
【図6】図6は、種々の濃度の腐植物質の存在下での、センサーユニット6の種々の応答の全体的な結果をグラフ表示している。
【図7】図7は、図5で得られたデータに対する主要成分の多変量解析(“主要成分の分析−PCA”)を示している。(a)は、異なった腐食物質(フルボ酸と腐食酸)の分離を示しており、(b)は、これら腐植物質の種々の濃度を示している。
【図8】図8は、5mMのNaCl溶液の味に対する6種の一群のセンサーユニットの応答を示しており、周波数と微小電極のキャパシタンスとの関係として与えられている。
【図9】図9は、塩辛いフレーバー(NaClとKCl)、酸っぱいフレーバー(HCl)、およびサッカロースの甘いフレーバーに対する特徴的な応答パターンをグラフ表示している。
【図10】図10は、塩辛いフレーバー(NaCl)とサッカロースの甘いフレーバーに対する特徴的な応答パターンをグラフ表示している。
【図11】図11は、ヒトの器官による検出の限界(5mM)未満の濃度を含めた種々の濃度における、塩辛いフレーバー(NaClとKCl)に対する差別化された応答パターンをグラフ表示している。
【図12】図12は、ミネラルウォーターのサンプルに対する400Hzでのキャパシタンス応答信号をグラフ表示している。
【図13】図13は、カモミル茶のサンプルに対する400Hzでのキャパシタンス応答信号をグラフ表示している。
【図14】図14は、コーヒーのサンプルに対する400Hzでのキャパシタンス応答信号をグラフ表示している。
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、相互噛み合い状電極もしくは微小電極により構成される各種センサーユニットによって形成される官能性システム(sensory system)に関し、それら電極もしくは微小電極の幾つかが、広域選択性の作用に基づいて物質を評価及び検出するための複合体形成性ポリマー導体(complexing polymer conductor)または他の複合体形成性物質(complexing substance)とのそれらの混合物で構成される超極薄フィルムで被覆されている。本発明の測定システムは、分析しようとする媒体中に浸漬されたセンサーシステム(sensor system)の電気信号の応答パターン〔交流(AC)を電気的に測定する手段によって得られる〕を分析することに基づいている。本発明のセンサーは、味の分析を行うために、人間が消費する物品(特に、飲料や液状食品)の品質をチェックするために、そして水の品質と環境保全を監視すべく、自然源(河川、湖、および池など)からの水に含まれる腐植物質や他の汚染物(有機物または無機物)を評価・検出するために使用することができる。本発明のセンサーは、他にも多くの用途に使用することができる。
【0002】
発明の背景
混合物中の成分を評価・検出する必要性から、人間にとって必須の物質(例えば、水や空気)および消費財(例えば、食品、飲料、および薬剤)の品質管理を可能にするようなより高感度且つ高性能の機器の開発が求められている。こうした目的に適合させるべく開発されたセンサーには種々の構造のものがあり、検出しようとする物質の種類と混合物中に存在する該物質の量を明らかにすることに重点が置かれている。しかしながら、一組の特性を取り扱う場合、それが官能刺激に反応するようなレベルであろうと汚染物のレベルであろうと、個々の成分の検出は重要ではないことが多く、むしろ結果として得られる組み合わせ〔例えば、フレーバー、香り、汚染物(すなわち、人間が消費するための水の中に存在する腐植物質)のトータル的な影響〕を評価することが重要である。所定の群に対するこうした評価は、広域選択的効果(global selectivity effect)として知られている。
【0003】
水中に有機物質(主として腐植物質で構成されている)が溶解して存在することは、水の品質に大きな影響を及ぼす因子である。なぜなら、塩素での処理中にしばしば発癌性物質〔例えばトリハロゲン化化合物(特にトリハロメタン)〕が生じるからである。腐植物質の存在によって引き起こされる水の品質悪化は、ブラジルを含めた多くの国における植樹技術や土壌管理技術が、依然として制御されていない仕方で施されている、という事実によるところが大きい(“Resk, D.V.S. in: II Encontro Brasileiro sobre Substancias Humicas, p50, Sao Sarlos, SP, 1997”を参照)。実際、天然資源を不適切に使用すると、有毒物質による土壌や水の直接的な汚染によって、あるいは森林破壊(侵食、沈泥堆積、およびその他の好ましくない事態を引き起こす)によって環境の悪化をきたす。したがって、このような悪化のレベルを監視することが極めて重要である。しかしながら、現在知られている機器は、主として使用が実験室に限定されているので用途が極めて限られており、このため行くのが困難な場所の物質を分析することは不可能であることが多い。したがって現場で直接使用することのできる、より安価で且つより取り扱いやすい機器の開発が求められている。
【0004】
したがって、腐植物質を低レベルに保持することが重要であるので;腐植物質が、種々の過程において天然水源中に(金属の錯形成により)および土壌中に(栄養素や農薬の残留により)混入するという事実から見て;、これら腐植物質を検出することが、環境悪化に歯止めをかけるために重要であるだけでなく、都市部において消費される水の処理における指針として役立たせるためにも重要である。したがって、理想的な状況は、腐植物質の存在を検出し(起源に応じたそれぞれのカテゴリーによって、および腐植特性の識別を通して腐植物質を選択する)、類別化と定量化を可能にするが、構成成分の個々の識別や正確な化学組成については問題としないセンサーを提供することであろう。極めて精巧な機器〔例えば、液体・ガスクロマトグラフィー装置、元気分析装置、および他の種々の物理化学的分析機器(“D.A.SKOOG and D.M.WEST, Principles of Instrumental Analysis. 第4版, Philadelphia: Saunders College Publishing (1992)”を参照〕は、現場で使用できないという点は別としても、分析操作が複雑であり、測定に必要とされる時間が長く、そして運用コストが高いという欠点を有する。
【0005】
腐植物質を全体として評価・検出する必要があるように、人間が消費するための、そしてさらには獣医が使用するための飲料や食品の品質管理に対しては、フレーバーを全体的に評価することが基本的に重要である。なぜならある物品の商業化可能性は、食料のフレーバーが動物によって受け入れられるかどうかに依存するからである。実際、異なった味の原因となる物質(酸っぱいフレーバー、塩からいフレーバー、甘いフレーバー、苦いフレーバー、および旨味タンパク質様フレーバー)は、舌の特殊な管(special canals)中に見られる生物学的メンブランにて検出される。言い換えると、においや味に対する人間の官能性は、フレーバーや香りの原因となっている物質のそれぞれを別々に識別することができず、むしろ前記の“広域選択性”に従って脳により認識される基本的パターンを識別する。この場合においては、唯一の満足できるセンサーシステムは、異なった種類の飲料の品質を手軽に且つ迅速に評価し、それらのフレーバーに従った別々のカテゴリーによってそれらを選択し、広域的な仕方でそれらを定量化することのできるシステムである。
【0006】
従来の化学センサーは、それ自体で特定の化合物を識別することに基づいており、従って、溶解状態の腐植物質の識別、あるいは混合物中に存在する成分の多様性によってフレーバーを構成している物質の識別に対しては役に立たないものとなる。
【0007】
土壌中および水性系中に存在する腐植物質と有機物を評価・検出する場合には、種々のセンサーを使用することができ、こうしたセンサーが特許文書中に記載されている。米国特許第5,044,756号には、有機物をリアルタイムで検出するためのセンサーが記載されており、該センサーは、有機物のレベルを評価しようとする土壌の特定エリアをスキャンすることによって使用時において動的モードにて作動する光源と検出器からなる。得られる光信号は、各タイプの土壌に対して特異的な数学的分析値が得られるような仕方で処理される。このような方法は固体サンプルに限定され、従って水中に存在する腐食物質の検出に対しては全く役に立たない。JP05079988は、化学ルミネセンスを使用することによって腐食酸を検出・定量化するための迅速な方法を開示しており、該方法は、過酸化水素とホルムアルデヒドをサンプルに加えること; アルカリ(水酸化ナトリウム)でpHを調節すること; そして最後に、腐食酸を検出・定量化するために化学ルミネセンスを測定すること(最大波長のルミネセンスを使用して)、このときルミネセンスのスペクトルを抜き取って増幅された電気信号の形で記録する; からなる。光電子増倍管と増幅器を使用することにより、得られるルミネセンスの強度を、既知濃度の腐食酸に対して得られるルミネセンスの強度(較正曲線)と比較する。これらのタイプのセンサーはコストが比較的高く、現場試験の要件とは相容れない精巧な装置と複雑な処理が必要とされる。
【0008】
味の評価に関して言うと、公知のセンサーは、フレーバーの基準の移送と識別を可能にする天然メンブランと共に使用される物質の吸収を求める生物学的検出を模倣することに基づいている。2つの主要なタイプがあり、第1のタイプは、味の自然過程において加わる脂質の特性に基づいている。第2のタイプは、溶液(すなわち、ミネラルウォーターやワイン)中に存在するイオンを測定する。第1のタイプは一般に、信号を変換する能力のある脂質化合物を、通常は非導電性のポリマーマトリックス(例えばポリ塩化ビニル)上に分散させることによって形成される〔米国特許第5,482,855号; 米国特許第5,302,262号; JP05099896; JP06174688; JP10078406; JP10267894; K.Toko, Measur. Sci. Technol. 9, p.1919(1998); K.Toko, H.Akyiama, K.Chisaki, S.Ezaki, T.Iiyota, K.Yamafuji, Sensors and Materials, Vol.9, N5, p.321(1997); S.Ezaki, H.Kunihiro, Sensors and Materials, Vol.11, N8, p.447(1999); を参照〕。このタイプのセンサーは、味を評価し(甘いフレーバー、塩からいフレーバー、酸っぱいフレーバー、および苦いフレーバー、ならびに異なった種類のビール、コーヒー、ミネラルウォーター、牛乳、ワイン、および酒の基準を区別する)、また水の品質と河川の汚染を評価する〔H.Sakai, S.Iyiama, K.Toko, Sensors and Actuators B, Vol.66, p.251(2000); 米国特許第5,482,855号; 米国特許第5,302,262号; を参照〕。しかしながら、メンブランの安定性に関連した種々の欠点があること、特定の種類の表面に対する密着性が弱いこと、およびポリマー層が比較的厚いために系を小型化するのが困難であることから、公知のセンサーは、生物学的検出の限界未満にてフレーバーを区別するには不適当である。第2のタイプのセンサーは、分散された非晶質を含有する選択性メンブラン(すなわち、これらの分散された半導体を含有するPVCメンブラン)、および従来の電極〔C.DiNatale, A.Macagnano, F.Davide, A.’Damico, ALegin, Y.Vlasov, A.Rudnitskaya, B.Selenov, Sensors and Actuators BVol.44, p.423(1997); A.Legin, A.Rudnitskaya, Y. Vlasov, C.DiNatale, E.Mazzone, A.’Damico, Electroanalysis, Vol.11, N10, p.814(1999); A.Legin, A. Rudnitskaya, Y. Vlasov, C.DiNatale, E.Mazzone, A.’Damico, Sensors and Actuators B Vol.65, p.232(2000); を参照〕を使用することによって溶液中のイオンを検出できる範囲にて動作するが、これらのセンサーは、無極性物質(例えばコーヒー)や電解質を形成しない物質(例えばサッカロース)を検出することはできない。
【0009】
ごく最近では、固有の電気導体ポリマー、簡単に言えば導電性ポリマーをベースとしたセンサーが提唱されている。電気刺激に対して電気的に能動的に応答する点は別として、これらのポリマーは、異なった物質を検出するためのセンサーにおける高感度材料および変換器材料としても使用することができる、ということが確認されている。
【0010】
導電性ポリマーを使用するセンサーは、一般には、所定の形状の金属電極または半導体電極上にこれらの材料のフィルムを形成させることによって製造される〔H.E.Endres, S.Drost, Sensors and Actuators B, Vol.4, p.95−98(1991); T.Hofmann, K.Schrode, J.Zacheja, J.Binder, Sensors and Actuators B, Vol.37, p.37−42(1996); を参照〕。現在までに開発されている機器の多くはガス系に限定されており、ポリマー導体の使用に基づいているか(米国特許第4,887,455号、米国特許第5,417,100号、および米国特許第5,536,473号を参照)、あるいは、より一般的には、有機ポリマー導体(通常はポリピロール)と、前記有機ポリマー導体とは化学組成が異なる従来のポリマーもしくは他の材料〔例えば、ポリスチレン、ポリ(A−メチルスチレン)、ポリ(スチレン−アクリロニトリル)、ポリ(スチレン−無水マレイン酸)、ポリ(スチレン−アリルアルコール)、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(4−フェノールビニリック)、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビスフェノール−カーボネート)〕との混合物を含んだ種々のセンサーのアレイで構成されている。こうした組成の違いにより、ある化学物質がこれらの機器の表面上に吸収されると電気抵抗に変化が生じ、分析される各サンプルに対して異なった応答パターンが得られる。従って、これらセンサーのほとんどは、他の材料中に分散させたのと同じポリマー導体を使用し、複数種の揮発性化学物質の純粋な蒸気とこれら蒸気の二元混合物とを識別し(米国特許第5,951,846号、米国特許第5,959,191号、および米国特許第5,571,401号を参照)、そしてさらに、異なったタイプの流体(液体もしくは気体)中に存在する分析すべき物質を識別する(米国特許第6,010,616号を参照)。
【0011】
実際、公知のセンサーは、混合物の成分を検出することはできるが、幾つかのタイプのアロマ・センサー〔電子の鼻(electronic nose)〕を除いて通常は群(group)を特性決定することはできない。こうした状況に対し、特定の種類の化学組成の検出と定量化について新しい概念が適用されつつある。すなわち広域選択性という概念である(K.Toko, Measurement Sci. Technol., v.9, p.1919, 1998; およびK.Toko, Sensors and Actuators B, v.64, p.205, 2000; を参照)。この概念は、官能性システムを形成する種々のセンサーユニットの配列体を使用することによって、異なった種類の化合物を特性決定する応答パターンを認識することに基づいている。この配列体においては、各センサーユニットが他のユニットとは異なる材料で構成され、化合物のある特定の群に対して固有の応答をもたらす。従って、このシステムは特定の化合物の“フィンガープリント”を確立する。
【0012】
しかしながら、この方法における大きな問題点は、生物学的限界を上回る感度を得るのが困難であること、および極めてよく似た特性をもった混合物の区別を可能にするのが困難であることである。
【0013】
対処すべきもう一つのポイントは、公知の官能性システムは、直流(DC)を使用する構成部品によってセンサーユニットから受け取る電気信号を取り扱うことが多いという事実である〔F.Musio, M.C.Ferrara, Sensors and Actuators B, Vol.41, p.97−103(1997); およびM.E.H.Amrani, P.A.Paine, IEE Proc. Sci. Meas. Technol. Vol.146, N2, p.95−101(1999); を参照〕。他方、気体の検出に対し、ポリマー導体をベースとしたセンサーにて交流(AC)を使用して測定することは、直流による測定と比較してより効率が高いので有利であると考えられる。DC法がもたらす欠点の1つは、実験パラメーターのシステム化された変化に対して必要とされる時間が極めて長いことである。AC変調により、より大きな実験上のフレキシビリティがもたらされる。DC法のもう1つの欠点は、ポリマー材料をベースとするシステムにおいて電気的な変化が非常に小さいということである。このような電気的変化は、ACで作動する部品によって測定できるけれども(WO98/19153)、DCにて検出することは困難である。この点は別として、ACによる測定は、イオン化された化学タイプ(ionised chemical types)がサンプル内での移動するのを防止するので非破壊的である。この後者の現象は、電気的特性の不可逆的な変化を引き起こすことができる。したがって使用するセンサーの数を、この結果デバイスのサイズを減少させることができ、さらには直流から得られる測定値よりはるかに高感度で且つ正確な測定値が得られるようになる。交流におけるこのインピーダンス分光分析法はよく知られており、味覚センサーにて電位差計による測定と比較したときに〔K.Toko, Measur. Sci. Technol. Vol.9, p.1919−1936(1998); K.Toko, Biosensors and Bioelectronics, Vol.13, p.701−709(1998); A.Legin, A.Rudnitskaya, Y.Vlasov, C.DiNatale, E.Mazzone, A.’Damico, Electroanalysis, Vol.11, N10, p.814−820(1999); K.Toko, T.Matsuno, K.Yamafuji, K.Hayashi, H.Ikezaki, K.Sato, R.Toukubo, Biosensors and Bioelectronics, Vol.9, p.359−364(1994); S.Iiyama, K.Toko, K.Yamafuji, Agric. Biol. Chem. Vol.50, N11, p.2709−2714(1986); を参照〕、また電量計による測定と比較したときに〔S.Iiyama, Y.Miyasaki, K.Hayashi, K.Toko, K.Yamafuji, H.Ikezaki, K.Sato, Sensors and Materials, Vol.4, N1, p.21−27(1992); I.Winquist, P.Wide, I.Lundstrom, Analytica Chimica Acta, Vol.357, N1/2, p.21(1997); を参照〕、実験データの収集が簡単であるだけでなく、非電解質物質によるポリマーをベースとしたデバイスにてわずかな信号変化でも検出できるのでより実行可能性の高いものとして報告されている。
【0014】
したがって、公知の官能性システムの感度と選択性を増大させる必要性は、現行センサーの低い性能に対する市場の反応によって推し量ることができる。
【0015】
発明の要旨
本発明の目的は、増強された感度と選択性を持つ広域選択性という概念に基づいて混合物を検出・評価する手段を提供することにある。
【0016】
第1の実施態様は、広域選択性による混合物の分析のためのセンサーであって、(a)分析しようとする混合物に特有の物質に対して物理化学的親和性を有するメンブラン形成物質であって、複合体形成性ポリマー導体、複合体形成性物質、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるメンブラン形成材料の少なくとも1つの単層の超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状電極もしくは微小電極; および所望により(b)被覆されていない相互噛み合い状電極もしくは微小電極; からなる少なくとも2つのセンサーユニットを含むセンサーに関する。
【0017】
第2の実施態様は、(a)複合体形成性ポリマー導体で構成される少なくとも1つの単層の超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状電極もしくは微小電極(所望により少なくとも1種の複合体形成性物質と組み合わせて); および(b)フレーバーを構成する物質に対して物理化学的親和性を有する少なくとも1種の複合体形成性物質で構成される少なくとも1の単層の超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状電極もしくは微小電極; および所望により(c)被覆されていない状態の、相互噛み合い状電極もしくは微小電極; からなる少なくとも2つのセンサーユニットを含む、広域選択性によって混合物を分析するための味覚センサーに関する。
【0018】
第3の実施態様は、(a)ある1種の複合体形成性ポリマー導体で構成される少なくとも1つの単層の超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状電極もしくは微小電極(所望により、分析しようとする物質中に存在する腐植物質に対して高い物理化学的親和性を有する少なくとも1種の複合体形成性物質と組み合わせて); および所望により(b)被覆されていない状態の、相互噛み合い状電極もしくは微小電極; からなる少なくとも2つのセンサーユニットを含む、広域選択性によって液体系を分析するための腐植物質検出用センサーに関する。
【0019】
第4の態様は、(1)(a)分析しようとする混合物に特有の物質に対して高い物理化学的親和性を有していて、複合体形成性ポリマー導体、複合体形成性物質、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるメンブラン形成物質で構成される少なくとも1つの単層の超極薄フィルムで覆われた相互噛み合い状電極もしくは微小電極; および所望により(b)被覆されていない状態の、相互噛み合い状電極もしくは微小電極; からなる、電気信号を発生する少なくとも2つのセンサーユニット; (2)分析しようとする物質と接触しているセンサーユニットによって発せられた交流電流を測定する手段によって得られる電気信号を受け取る手段; および(3)それら各種センサーユニットによって形成されるアレイの応答パターンを分析のためにそれら測定値を処理する手段; を含む官能性システムに関する。
【0020】
発明の詳細な記述
本発明の理解を容易にするために、重要な用語の定義を以下に記載する。
・“広域選択性”とは、種々のタイプの物質の組み合わせ又は混合物の複合的効果(compound effect)(例えば、それら物質間の相乗的効果または抑制的効果)を規定する定量化を意味している。フレーバー、におい、または有機物質(例えば腐植物質)による汚染などは、こうした複合的効果の幾つかの例である。超極薄フィルムは、単層(単層の厚さを、オングストロームのレベルにて測定される範囲に制御できるような条件下での堆積によって得られる薄い単層)の形で堆積させた。本発明においては、単層の厚さは5〜500Åの範囲である。
【0021】
・“複合体形成性ポリマー導体”とは、生来的に電気信号の伝導性になる当該物質の能力を表わしており、このような材料は、多共役電子π系(poly−conjugated electron−π system)(例えば、二重結合、芳香環もしくはヘテロ芳香環、または三重結合)を有する有機ポリマーを含んでおり、例えば、ポリアニリン; ポリピロール; ポリアセチレン; ポリジアセチレン; ポリチオフェン; ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT); ポリイソチオナフタレン; ヘテロアリーレン基がチオフェン、フラン、またはピロールであってよいポリヘテロアリーレンビニリン; ポリ−p−フェニレン; ポリフタロシアニンと類縁体; 前記化合物の誘導体; およびこれらの混合物; が挙げられる。
【0022】
・“複合体形成性物質”とは、複合的効果に特有の物質群と化学的に(可逆的な複合体形成)および/または物理的に(可逆的な吸着)相互作用する性質を有していて、電気変換特性(electric transductor properties)をもたらす構造を有する物質を意味している。代表的な例は、フレーバーに特有の物質群と相互作用する脂質、および有機物による水や土壌の汚染の原因となる腐植物質と相互作用するリグニンである。
【0023】
“混合物に特有の物質”とは、特定の複合的効果(例えば、フレーバー、におい、および有機物による汚染)の原因となる物質群を意味している。例としては、腐植物質(例えば、腐食酸やフルボ酸)、フレーバー(甘いフレーバー、塩からいフレーバー、苦いフレーバー、および酸っぱいフレーバー)の原因となる物質、または臭気物質(ガスや蒸気)が挙げられる。
【0024】
本発明の主要な特徴の1つは、特に液体系を分析することによってフレーバーや有機物による汚染が識別できるように、複合体形成性物質と複合体形成性ポリマー導体の両方(あるいはこれら混合物)に基づく種々の複合体形成系(complexing system)で構成される超極薄フィルムを使用することにある。薄いフィルムを使用して作動させる必要があるのは、ポリマーフィルムが厚くなるにつれてセンサーデバイスの感度が大幅に低下する、という知見によるものである〔E.Stussi, R.Stella, D.DeRossi, Sensors and Actuators B, Vol.43, N1, p.180(1997); WO98/19153; を参照〕。
【0025】
よく知られているように、導電性ポリマーは、あらゆる範囲の半導体を含めて、絶縁体から導体までの範囲にわたる種々の導電率値をもたらす。こうした融通性により、この種の材料に対し、種々の電子デバイス(例えば、トランジスタ、コンデンサ、およびダイオード)において従来の無機半導体に置き換えるのに適したものとなるだけでなく、種々の物質を検出するためのセンサーにおける高感度の変換器材料として使用するのにも適したものとなる特性が付与される。なぜなら、電気的に活性であるため、電気刺激に対して応答するからである。
【0026】
本発明において使用するのに適した導電性ポリマーが多くの文献中に記載されている(例えば、米国特許第5,494,609号、米国特許第5,368,717号、米国特許第5,356,660号、米国特許第5,290,483号、米国特許第4,877,646号、および米国特許第4,803,096号)。好ましいポリマーが、複合体形成性ポリマー導体に関する定義において記載されており、好ましいのはポリピロール、ポリアニリン、およびこれらの誘導体である。
【0027】
本発明においては、超極薄単層フィルムを形成するために、導電性ポリマーがさらに複合体形成性物質と組み合わせて使用される。
有機物による水または土壌の汚染を評価・検出する場合、好ましい複合体形成性物質としては、スルホン化リグニン、複合体形成性有機酸〔ショウノウスルホン酸(camphosulphonic acid)、トルエンスルホン酸、および複合体形成特性を有する類似化合物〕、および金属イオン(銅イオン、鉄イオン、アルミニウムイオンなど)を含有する錯体を挙げることができ、いずれも腐植物質のパターンを識別するので、これらを利用したセンサーはさらに、農業、環境制御、ならびに家庭用水および工業用水の処理(他の用途もある)において使用されている。腐植物質に類似した構造を有する物質(例えばスルホン化リグニン)を使用すると、混合物中の腐植物質の検出において生成される電気信号の変換が容易になり、したがって、例えば水や土壌の汚染レベルを測定する際にセンサーの感度がアップする、ということが最近見出された。
【0028】
目的がフレーバーを評価することにある場合、適切な複合体形成性物質は、各々のフレーバー(甘いフレーバー、苦いフレーバー、塩辛いフレーバー、および酸っぱいフレーバー)の特徴的な群に特有の物質と相互作用する複合体形成性物質である。好ましい複合体形成性物質の主なものは、脂質化合物(例えば、ステアリン酸、カプロン酸、およびカプリル酸)、ならびに金属錯体や酵素(リゾチーム等)等の他の物質である。
【0029】
このように、本発明のセンサーは、複合体形成性物質と複合体形成性ポリマー導体のそれら特性との共役性(conjutation)に基づいており、それが、これらの材料の固有な特性に起因するセンサーデバイスの応答パターンにおける有意な増強を可能とし、したがって感度と選択性が向上し(効率的なセンサーデバイスを製造するための基本的且つ本質的な要件)、さらには妨害反応の影響も取り除かれる。実際には、複合体形成性ポリマー導体は、当該物質に対して感度のよい物質として機能するだけでなく、電気刺激によって生成される電気信号の変換器としても機能する。複合体形成性ポリマー導体は室温で作動し、この点は、二酸化錫等の半導体をベースにした従来のシステムを使用する場合とは異なる。複合体形成性ポリマー導体は製造するのが簡単であり、標準的な方法(例えば、自己集合法やラングミュア・ブロジェット法)に従ってポリマーフィルムの形態で製造することができる。本発明のポリマー・メンブランはさらに、特定の当該分子(例えば、酵素、複合体形成剤、および特定の触媒特定の有する金属)を固定化するための支持体マトリックスとしても機能する。
【0030】
本発明のセンサーユニットは、相互噛み合い状微小電極上に超極薄フィルムを堆積させることによって形成される。種々の堆積法を使用することができる。これらのうちで好ましいのは、自己集合法(self−assembly technique)とラングミュア・ブロジェット(LB)法である。
【0031】
自己集合法は、操作が簡単で複雑な装置が不要であるという利点を有する。しかしながらこの方法は、操作が単純であるにも関わらず、それぞれの支持体に単層もしくは二重層として施すことのできる超極薄フィルムの厚さが限定される〔W.B.Stockton and M.F.Rubner, Macromolecules, v.30, p.2717; Cheung, W.B.Stockton and M.F.Rubner Macromolecules, v.30, p.2717; K.Ariga, Y.Lvov and T.Kunitake, J. Am. Chem. Soc., v.32, p.4309, 1998; およびL.G.Paterno, L.H.C.Mattoso and O.N.Oliveria Jr., Quimica Nova Vol.24, n.2, p.228−235, 2001; を参照〕。この方法は基本的に、化学的変性を施した固体支持体を、高分子電解質(ポリカチオンおよび/またはポリアニオン)を含有する溶液中に浸漬することを含む。高分子電解質の各溶液中に交互に浸漬を行うことにより、自己据え付けフィルム(self−mounted film)が形成され、二重層(ポリカチオン/ポリアニオン)あるいは高分子電解質の1種からの単層を作製することができる。自己集合される超極薄フィルムの形成は、固体支持体として使用される相互噛み合い状電極もしくは微小電極上で行われる。このプロセスに対しては超純水を使用することが不可欠である。固体支持体とその上の層によって形成されるユニットを、高分子電解質を含有する溶液中に浸漬する時間は、1〜30分の範囲である。好ましい浸漬時間は、1分、3分、および10分である。
【0032】
ラングミュア・ブロジェット(LB)法も本発明で使用するのに適しており、この点は当業者によく知られている〔G.G.Robert,“Langmuir−Blodgett Film”, Plenum Press Pub., New York(1990)を参照〕。簡単に言うと、この方法は、あらかじめ揮発性有機溶媒(例えばクロロホルム)中に溶解しておいた有機物質を、マイクロシリンジまたはマイクロピペットを使用して液体サブフェーズ(a liquid subphase)上に広げることを含む。このサブフェーズは、通常は超純水である。この広がりプロセスの数分後に有機溶媒が蒸発し、当該物質の単層だけが残って堆積し、水の表面全体を覆う。この段階において、このフィルムをラングミュア・フィルムと呼ぶ。特殊な装置(ラングミュア・トラフと呼ばれる)を使用することにより、これら分子によって占有された液体サブフェーズ上の有用エリアを、一対の可動バリヤーでこの単層を圧縮することによって減少させることができる。液体サブフェーズ中への固体支持体(相互噛み合い状電極であってよい)の連続的な浸漬と取り出しにより、これらフィルムの、水の表面から固体支持体の表面への移行が可能となる。超極薄フィルム(ラングミュア・ブロジェット膜と呼ばれる)の厚さと堆積を規定するのは、このプロセスの制御である。従ってこれらは、分子レベルにて作製・制御される。通常適用される圧縮速度は1〜10mm/分であるが、本方法の特徴的な堆積速度は0.5〜10mm/分である。
【0033】
単層の厚さは、薄くて5〜500Åという特徴的な厚さでなければならない、という点を強調しておく必要がある。単層によって堆積される超極薄フィルムは1〜20層で構成され、その厚さが最大で500Åであるのが好ましい。超極薄フィルムは約10層で構成され、その厚さが約20Åであるのがさらに好ましい。
【0034】
ポリマーフィルムを堆積させるのに使用される他の方法としては、例えば、所定の角振動数で回転する固体支持体上に、堆積させようとする物質を溶液の形態で広げることによって表面を被覆するという方法〔この場合、支持体の回転速度を調節することによってフィルムの厚さを制御することができる(スピンコーティングと呼ばれる)〕、電解重合による方法、および溶液の形態の物質を広げることによって固体支持体の表面を被覆するという方法〔溶媒が蒸発した後、支持体上に該物質の被膜が残る(キャスティングと呼ばれる)〕があり、「T.Skotheim, R.Elsenbaumer, J.R.Reynolds, “Handbook of Conducting Polymer”, Marcel Dekker, New York(1998)」に他の方法が記載されている。
【0035】
本発明に関するセンサーの製造において固体支持体として使用される電極もしくは微小電極は、金属、好ましくは金、白金、銅、アルミニウム、または他の導電性物質(好ましいのは金である)で作られる(好ましくは、金を相互噛み合い状の形態でガラス上に堆積させたもので、且つセンサーのための成分の詳細及びそれらの用途に応じて種々の数、幾何学形状、およびサイズを持つ)。群の特性を評価するために種々の特性をもつセンサーユニットを組み合わせるという考え方が、本発明のセンサーアッセンブリの基礎をなしている。従って、如何なる被膜も持たない金属電極もしくは金属微小電極で構成されるセンサーユニットと、複合体形成性導電性ポリマー、複合体形成性物質およびこれらの混合物の超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状金属電極もしくは金属微小電極を含む官能性ユニットとの組み合わせは、混合物が極めて類似した特性を有する場合でも、混合物間の区別を可能にする。これは、それぞれのセンサーユニットが、他のセンサーユニットとは異なる電気的応答パターンを生成し、全体的な応答を分析することによって、分析される液体の“フィンガープリント”が得られるからである。例えば、フレーバーを検出・評価するために、被覆されていない状態の、相互噛み合い状金属電極もしくは金属微小電極で構成されるセンサーユニットと、(a)複合体形成性物質(すなわち脂質物質)で構成される超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状金属電極もしくは金属微小電極; (b)複合体形成性導電性ポリマー(すなわち、ポリアニリンやポリピロール)で構成される超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状金属電極もしくは金属微小電極; および(c)複合体形成性導電性ポリマーと複合体形成性物質とを組み合わせて構成される超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状金属電極もしくは金属微小電極; を含むセンサーユニットとを組み合わせることができる。しかしながら、有機物による水の汚染を検出するのに本発明のセンサーアレイを使用する場合、被覆されていない相互噛み合い状金属電極もしくは金属微小電極で構成されるセンサーユニットと、(a)複合体形成性物質(すなわちスルホン化リグニン)で構成される超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状金属電極もしくは金属微小電極; (b)複合体形成性導電性ポリマー〔すなわち、ポリアニリン(ポリ(o−エトキシアニリン))やポリピロール〕で構成される超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状金属電極もしくは金属微小電極; および(c)複合体形成性導電性ポリマーと複合体形成性物質とを組み合わせて構成される超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状金属電極もしくは金属微小電極; を含むセンサーユニットとを組み合わせることができる。
【0036】
以下に実施例を記載して、本発明の好ましい実施態様を示す。これらの実施例に記載の手順は本発明を実施する手段を示しており、したがって、本質的な特徴を保持していて、記載されている検出方法の適用範囲内に属するような、条件、工程、または使用物質のいかなる変更も本発明の一部として含まれる、ということは当業者にとって明らかであろう。
【0037】
実施例
実施例1: 相互噛み合い状電極もしくは微小電極上へのフィルムの堆積
金電極(幅1mm、間隔1mm、金属層の厚さ70nm、2〜100ディジット(digits)の範囲で作動するよう適切な配置構成を有する)をガラス上に実装する。前述したように、センサーの使用目的に応じて他の寸法や配置構成が可能である。例えば電極は、幅が10μm、間隔が10μm、そして金属層の厚さが0.1μmであってよく、図1に示すように25対にてガラス上に実装することができ、このとき(1)は金電極を示しており、(2)はガラス基部を示しており、影付き部分(3)は、電極の有用部分のみを露出させている感光性材料の保護被膜を示している。
【0038】
(A) 自己集合法による堆積
電極をpH5.0の塩酸水溶液〔複合体形成性物質[ポリアニオン(スルホン化リグニン)とポリカチオン(ポリ(o−エトキシアニリン))]を1×10−5〜1×10−2モル/リットルの範囲の濃度で含有〕中に、1〜20の交互単層(一般には、それぞれが約20Åの厚さを有する10の単層)を有する自己装着化超極薄フィルムが得られるまで交互に浸漬して、最大500Åの厚さを有する自己装着化超極薄フィルムを得た。これらの溶液は全て、ミリポア社(Millipore)からのミリ−Q(Milli−Q)(登録商標)システムから得られる超純水を使用して調製した。浸漬時間は、ポリアニオンを含有する溶液、およびポリカチオンを含有する溶液中にそれぞれ3分であった。ポリ(o−エトキシアニリン)、ポリ(o−エトキシアニリン)+スルホン化リグニン+塩酸、ポリ(o−エトキシアニリン)+スルホン化リグニン+ショウノウスルホン酸、またはポリ(o−エトキシアニリン)+スルホン化リグニン+トルエンスルホン酸の自己据え付けフィルムの層を有する電極は、ポリ(o−エトキシアニリン)、ポリ(o−エトキシアニリン)+スルホン化リグニン+塩酸、ポリ(o−エトキシアニリン)+スルホン化リグニン+ショウノウスルホン酸、またはポリ(o−エトキシアニリン)+スルホン化リグニン+トルエンスルホン酸をそれぞれ含有するpH3.0またはpH5.0の塩酸水溶液中に、1分、3分、および10分という異なった時間にて浸漬することによって作製した。このようにして得たセンサーユニットを先ず、センサーユニットの製造において使用した複合体形成性物質含有溶液の個々のpH値に従って、pH3.0とpH5.0の塩酸水溶液中に3分浸漬することによって洗浄した。最後に、センサーユニットを、ミリポア社からのミリ−Qシステムから得られる超純水中に20分浸漬することによって洗浄した。
【0039】
(B) LB法による堆積
フィルムを形成させるための物質(複合体形成性導電性ポリマー、複合体形成性物質、またはこれらの混合物)をあらかじめ揮発性有機溶媒(この場合はクロロホルムを使用)中に溶解しておき、この溶液を、マイクロシリンジまたはマイクロピペットを使用して、ラングミュア・トラフ中の液体サブフェーズ上に広げた。数分以内に有機溶媒が蒸発し、この広がりプロセスの後に、堆積させようとする物質の単層が形成され、この単層が水の表面の広がり全体を覆った。フィルム形成物質の分子によって占有される有用エリアは、この単層を一対の可動バリヤーで圧縮することによって減少させることができた。1〜10mm/分の範囲の低い圧縮速度を使用し、これにより数種の導電性ポリマーの固体電極表面への移行が向上した。堆積速度は0.5〜10mm/分の範囲であった。
【0040】
実施例2: サンプル中に存在する腐植物質の分析に基づいて水の汚染レベルを評価するためのセンサーユニットを得ること
上記実施例1に記載の方法(自己集合法とLB法)に従ってセンサーユニットを製造し、このときポリアニリン(16量体)とポリピロール(Ppy)とのオリゴマーで構成されるピュアな5単層(5 pure monolayers)をラングミュア・ブロジェット法を使用して電極上に堆積させ、また自己集合法を使用してポリ(o−エトキシアニリン)とスルホン化リグニンの自己集合フィルムを堆積させた。これらのフィルムは、相互噛み合い状電極の露出された有用エリアだけを被覆した。金属ワイヤを上部スクウェア(これも金で構成されている)にハンダ付けし、これによりデバイスを周波数応答アナライザーに接続した。
【0041】
表1は製造されたセンサーユニットを示しており、これらを統合して腐植物質用のセンサーにすることができる。
【0042】
【表1】
【0043】
実施例3: 本発明のセンサーユニットを使用することによる、導電性ポリマーの複合体形成特性の実証
190nm〜1000nmの紫外線領域と可視光線領域(UV−Vis)において分光分析法を使用して、腐植物質と導電性ポリマーとの間に存在する相互作用を実証した。図2はUV−Vis領域におけるスペクトルを示しており、これによりポリ(o−エトキシアニリン)と腐植物質との複合体が形成されていることが確認される。
【0044】
本システムにおいては、腐植物質の分析は、pH5.0(塩酸で調節する)の水溶液中で行う。このようなシステムはさらに、腐植物質に対する光学センサーとしても使用することができる。
【0045】
腐植物質を分析するための種々の溶液を調製した: (1)pH5.0のHCl水溶液(リファレンス1); (2)それぞれ1.0×10−5モル/lおよび5.0×10−5モル/lのPOEAを含有するpH5.0のHCl水溶液; (3) それぞれ1.0×10−5モル/lおよび5.0×10−5モル/lのPOEAと異なった濃度(5、10、および30mg/l)の腐植物質とを含有するpH5.0のHCl水溶液。上記と同じ組の溶液を、塩酸をpH5.4のリン酸塩緩衝液で置き換えて調製した。3種の異なった腐食物質を分析した: アルドリッチ社市販されている腐食酸; ジャボティカバル(Jaboticabal)/SP(ブラジル)地方からのパープル・ラトソイル(purple latosoil)から抽出した腐食酸; およびカンピナス/SP(ブラジル)地方からのジストロフィック・オキシソイル(distrophic oxysoil)から抽出したフルボ酸。
【0046】
上記のように調製した溶液2と3に対し、190nm〜1000nmの紫外線領域と可視光線領域における吸収スペクトルを得ることによって、本発明の官能性システムの作動を確認した。吸収スペクトルを得るのに使用した標準溶液は、塩酸水溶液(pH5.0で作動する官能性システム用)およびリン酸塩緩衝液(pH5.4で作動するセンサーユニット用)であった。溶液2と3に対して得られたスペクトルを、溶液中に存在するポリマーのポラロニック・バンド(polaronic band)の移動に関して比較することにより、導電性ポリマーと腐植物質との間の複合体形成が明らかになり、したがって腐植物質を検出することができた。
【0047】
図2において、pH5.0で作動する官能性システムを使用して得られた結果から、3種の異なった濃度(5、10、および30mg/l)におけるアルドリッチからの腐食酸の存在が検出されたことがわかる。他の腐植物質〔アルドリッチから市販の腐食酸(HA)およびフルボ酸(FA)〕の存在に対しても同じ結果が得られ、それぞれ、POEAとHA(アルドリッチ)との複合体およびPOEAとFAとの複合体が形成されていることが実証された。これらの結果から、POEAと腐植物質との複合体が形成されていること、そして水中の腐植物質の存在をモニターする上で、この特性(すなわち、複合体の形成がPOEAフィルムの電気的性質に変化を引き起こす)を使用することが重要であることがわかる。
【0048】
実施例4: 本発明の官能性システムを使用する腐植物質の分析
実施例2において得られたセンサーユニットを、分析しようとする物質(腐植物質)と接触しているセンサーユニットから発する電気信号を受け取る(交流を測定することにより)手段、およびさらに表1に記載の種々のセンサーユニットのアレイ(実施例2を参照)についての応答パターンを分析するための測定値処理手段を含む官能性システムとして組み立てた。このようにして作製したデバイスを使用して、種々の生成源(地方)の腐植物質を分析した。図3〜6は、得られた結果を示す。
【0049】
3種の腐植物質を分析した: 2つのサンプルは腐食酸、そして1つのサンプルはフルボ酸であり、これらのサンプルは異なった地方の土壌から抽出したものである。これらのサンプルの溶液は、超純水(ミリポア社からのミリ−Qシステムから得られる)を使用して調製した。インピーダンス・アナライザー(前述)によって電気的応答を得た。これにより官能性システムは、微小電極のキャパシタンスに関して与えられる応答パターンを、周波数の関数(分析される腐植物質のそれぞれのタイプに対して特異的且つ特徴的である)にて得ることができる。図3と4はこれらの結果を示している。図から明らかなように、各センサーユニットに対して得られる応答は、溶液中に存在する腐植物質の量に比例し、定量分析が可能であることを示している。図3は、腐植物質〔15mg/l、腐食酸(アルドリッチ)〕を含む場合と含まない場合の緩衝溶液中に浸漬したセンサーユニット2、5、および6に関して、周波数の関数としてのキャパシタンスの差異を示している。この図は、腐植物質を含む場合と含まない場合の溶液間の、大きな周波数間隔での差異を明確に示している。図4は、20mg/lの腐植物質〔腐食酸(アルドリッチ)〕を含有するリン酸塩緩衝液中に浸漬したセンサーユニット2、6、8、および9に対するキャパシタンスの変化を示している。この図からわかるように、センサーユニットは、腐植物質を含有する同じ溶液に対して異なったキャパシタンスをもたらす。これらの応答は選択性があることを明確に示しており、したがって種々の腐植物質を識別することが可能となる。なぜならセンサーユニットは、腐植物質を含有する種々の溶液に対して特異的な応答を与えるからである。
【0050】
腐植物質の分析は、分析しようとする当該物質により高い選択的応答を有する範囲に対して最適化された唯一の周波数を選択することによって行うこともできる。
【0051】
図5と6は、1kHzという一定の周波数にて腐植物質を分析するための、9種のセンサーユニット(表1に示す)のアッセンブリについてのキャパシタンス応答を示している。種々のセンサーユニット間における信号の相違(図5)は、分析されるそれぞれの溶液に対して体系的かつ特徴的であり、再現性もある。図5は、pH5.4のリン酸塩緩衝液に対して、そして腐植溶液を含有する同じ緩衝液に対して1kHzにて得られたキャパシタンスの値を示している。フルボ酸(ジストロフィック・オキシソイル/SP)と腐食酸(アルドリッチ)に関して得られた値は、種々のセンサーユニットを使用することによって得られた“指紋”であり、したがって2種の異なった溶液の区別が可能となる。図6は、種々の濃度の腐植物質〔腐食酸(アルドリッチ)〕の存在下でのセンサーユニット6の異なった応答を全体的に示したものである。腐植物質の濃度は5〜20mg/lである。図6に与えられている結果は、本発明の官能性システムが腐植物質の種々の濃度を区別できること、そしてさらに、本発明の官能性システムを腐植物質の存在の定量化に使用できる、ということを示している。さらに、それぞれの濃度に対して異なった応答パターンを観察することができ、したがってそれぞれの腐植物質の異なった濃度を区別することができる。
【0052】
図7は、図5で得られたデータに対する主要成分の多変量解析(“主要成分の分析−PCA”)を示している。このシステムは、異なった腐食物質の分離(フルボ酸と腐食酸−図7aを参照)およびこれら腐植物質の種々の濃度〔市販の腐食酸(アルドリッチ)−図7bを参照〕を明確に示している。
【0053】
ある1種類の物質のみの定量分析と同様に重要なのが種々の物質間の定性分析であり、本発明のセンサーを使用すれば、極めて満足できる仕方でこれを実施することができる。この場合、デバイスは、種々のセンサーユニットから作製しなければならない。各センサーユニットのフィルムの数と組成は、分析しようとする腐植物質の特性に応じて最適化しなければならない。
【0054】
種々の腐植物質間の分離は、本発明の測定法によって全く問題なく行うことができ、また定量化は、適切なソフトウェア(例えば、神経回路網の解析に対して現在使用されているもの)を使用して簡単に行うことができる(”J.W.Gardner, E.L.Hines, H.C.Tang, Sensors and Actuators B, Vol.9, p.9−15(1992)”を参照)。なぜなら、物質の濃度が変化するということは、センサーの信号応答が変化するということを意味しているからである。さらに、分析される腐植物質に応じて、各センサーユニットに対する応答感度に差が生じる。この1つの例として、センサー4、5、6、7、および8は、フルボ酸に対してより高い感度を示すということがわかっている。
【0055】
実施例5: フレーバーを評価するためのセンサーユニットを得ること
実施例1に記載の方法(自己集合法とLB法)に従ってセンサーユニットを作製し、このときポリアニリン(16量体)とポリピロール(Ppy)とのオリゴマーのピュアな5単層を、そしてさらにこれらのポリマーとステアリン酸との混合フィルムを、ラングミュア・ブロジェット法を使用して電極上に堆積させた。これらのフィルムは、相互噛み合い状電極の露出した有用エリアだけを被覆した。金属ワイヤを上部スクウェア(これも金で構成されている)にハンダ付けし、これによりデバイスを測定機器に接続した。
【0056】
表2は、作製されたセンサーユニットを示しており、これらのセンサーユニットは“電子の舌”を組み込むことができる。
【0057】
【表2】
【0058】
実施例6: 本発明の官能性システムを使用することによるフレーバー(甘いフレーバー、塩辛いフレーバー、酸っぱいフレーバー、および苦いフレーバー)の分析
実施例5において得られたセンサーユニットを、分析しようとする飲料と接触しているセンサーユニットから発する電気信号を受け取る(交流を測定することにより)手段、および表2に記載の種々のセンサーユニットのアレイについて応答パターンを分析するための測定値処理手段をさらに含む官能性システムとして組み立てた。このようにして作製したデバイスを使用して、種々のフレーバーを分析した。
【0059】
本発明のセンサーユニットの特性を確認するために、先ず、単一の溶質を含有する溶液の電気的測定を行った。図8は、5mMのNaCl溶液に対する6センサーユニット(表2に示す)のアレイの応答を示している(微小電極のキャパシタンスが周波数の関数として示されている)。電気的応答は、インピーダンス・アナライザー(前述)を使用することによって得た。それぞれのセンサーユニットは、分析しようとする物質に対して特異で且つ特徴的な応答パターンを得ることができ、これが当該物質のフレーバーのタイプを特性決定するためのパターンとして役立つ。
【0060】
ある1種の物質のみの分析と同様に重要なのは、種々の物質間の定性的および定量的な識別であり、これは、本発明の官能性システムを使用することによって可能となる。各センサーユニットのフィルムの数と組成を、分析しようとする飲料の特性に応じて最適化しなければならない。
【0061】
図9は、分析されるそれぞれの物質に対して異なった特徴的な応答パターンが得られることを示している。NaClとKClは塩辛いフレーバーを呈し、HClは酸っぱいフレーバーを呈し、そしてサッカロースは甘いフレーバーを呈する。サッカロースは電解質を形成しないので、極性である他の物質と比較して応答信号の強度に大きな差があり、したがってサッカロースに対する結果によれば、値が他の物質よりはるかに小さい。分析する溶液は、脱イオン水または超純水を使用して作製した。このように、電気的応答の周波数を1回測定するだけでフレーバーの分析ができることから、分析時間が短縮され、また当該分野における利用が最適化される、ということがわかる。
【0062】
種々の濃度における塩辛いフレーバーと甘いフレーバーとの選別は、本発明の測定法を使用することによって何ら問題なく行うことができる。図10は、このことが可能であることを示している。
【0063】
前述したように、定量化は、適切なソフトウェア(例えば、神経回路網の解析用に現在使用されているもの)を使用して簡単に行うことができる。さらに、分析される物質の“フレーバー”特性に応じて、各センサーユニットに対する応答感度に差が生じる。この1つの例として、センサー4、5、および6が、甘いフレーバーに対してより高い感度を示している、ということがわかる。前述したように、これらのセンサーユニットの組成は、分析しようとする系に応じて最適化することができる。各センサーユニットに対して得られた応答信号は、液相(水溶液)中に存在する物質の量に比例している。100mMおよび300mMというより高い濃度でのNaCl溶液とサッカロース溶液も測定した。種々のセンサーユニット間における信号の識別は、分析される各溶液に対して系統的且つ特徴的であり、再現することができる。
【0064】
このような種々のセンサーに関する他の興味ある点は、ヒトの器官による検出の限界(5mM)未満の塩、および他の発明の文献中に記載の塩を含めて、異なる濃度での2種の塩(例えばNaClとKCl)を識別するのにも使用できるということである。C.Pfaffmanによれば(Handbook of Physiology, sec.1, Neurophysiology, Vol.1, J. Field pub. American Physiological Society, Washington DC−1959)、人体によって検出可能な水溶中のNaClの最小濃度は10mMである。図11は、この可能性を充分に示している。
【0065】
本発明のシステムのタイプだけでなく、当業者にとって明らかな調整による変形も、一般には飲料を評価するのに使用することができる。実用的な目的の1つの例として、種々のタイプのミネラルウォーター、カモミル茶、およびコーヒーの分析に対してこの官能性システムを使用することが示されている。
【0066】
図11、12、および13は、センサーを飲料中に浸漬したときの、キャパシタンス応答信号(400Hzにて)を示している。分析される飲料の各タイプに対して、極めて異なった特徴的な応答パターンが得られる、ということがわかる。このようにして得られた結果が、ミネラルウォーターの会社からの情報によって裏づけられた。なぜなら無機塩を含有する飲料は、図12に示すように、より高い強度の電気信号応答を与えたからである。図13は、分析されたカモミル茶が、ハチミツを含むか否かに応じて香りだけが異なった、ということ示している。図14は、2種類のコーヒー(一方は市販品であり、他方は家庭で焙煎したものである)の間の差異を示している。
専門でない人が分析した場合には、水のサンプル、お茶のサンプル、及びコーヒーのサンプル間におけるフレーバーの違いを区別することは実際には不可能であった(使用したセンサーの種類によってはそうではなかった)、ということを強調しておかねばならない。このことは、本発明のデバイスによってもたらされる応答の感度が高いことを強く示しており、したがって本発明のデバイスは、類似の物質を区別する上で人間の生物学的システムより感度が高いことがわかる。
【0067】
複合体形成性導電性ポリマーと複合体形成性物質で構成される種々のセンサーユニットからなるアレイを使用して、(AC)電流の測定を行う官能性システムによってこれらの実施例から得られた結果は、現行の“電子の舌”(単に、脂質と電位差読み取りだけに基づいている)より高い感度をもたらす。本発明において使用されるポリマーは、これらの物質が特定のpH値にて受けるドーピングプロセスにより、酸溶液の場合にはより正確な変化を検出することがある。このような結果から、食品を適格とするために使用できるだけでなく、化粧品、医薬品、および香水などを分析するためのシステムにおいても使用できるセンサーの製造が可能となる。
【0068】
本発明の官能性システムは、コストが低く、容易に再現できる構造を有することを特徴とする、ということも強調しておかねばならない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、本発明において使用される相互噛み合い状電極の1つのタイプを示している。
【図2】図2は、可視光線と紫外線の領域におけるスペクトルを示しており、これらのスペクトルから、ポリ(o−エトキシアニリン)と腐植物質との複合体が形成されていることがわかる。
【図3】図3は、腐植物質(15mg/l)を含んだ場合と含まない場合の緩衝液における、センサーユニット2、5、および6の周波数に対するキャパシタンスの差異を示している。
【図4】図4は、例えば、20mg/lの腐植物質を含有するリン酸塩緩衝液における、センサーユニット2、6、8、および9に対するキャパシタンスの変化を示している。
【図5】図5は、pH5.4のリン酸塩緩衝液、および腐食物質を含有する緩衝液に対する1kHzにて得られたキャパシタンス値をグラフ表示している。
【図6】図6は、種々の濃度の腐植物質の存在下での、センサーユニット6の種々の応答の全体的な結果をグラフ表示している。
【図7】図7は、図5で得られたデータに対する主要成分の多変量解析(“主要成分の分析−PCA”)を示している。(a)は、異なった腐食物質(フルボ酸と腐食酸)の分離を示しており、(b)は、これら腐植物質の種々の濃度を示している。
【図8】図8は、5mMのNaCl溶液の味に対する6種の一群のセンサーユニットの応答を示しており、周波数と微小電極のキャパシタンスとの関係として与えられている。
【図9】図9は、塩辛いフレーバー(NaClとKCl)、酸っぱいフレーバー(HCl)、およびサッカロースの甘いフレーバーに対する特徴的な応答パターンをグラフ表示している。
【図10】図10は、塩辛いフレーバー(NaCl)とサッカロースの甘いフレーバーに対する特徴的な応答パターンをグラフ表示している。
【図11】図11は、ヒトの器官による検出の限界(5mM)未満の濃度を含めた種々の濃度における、塩辛いフレーバー(NaClとKCl)に対する差別化された応答パターンをグラフ表示している。
【図12】図12は、ミネラルウォーターのサンプルに対する400Hzでのキャパシタンス応答信号をグラフ表示している。
【図13】図13は、カモミル茶のサンプルに対する400Hzでのキャパシタンス応答信号をグラフ表示している。
【図14】図14は、コーヒーのサンプルに対する400Hzでのキャパシタンス応答信号をグラフ表示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
広域選択性による混合物の分析のためのセンサーであって、
(a) 分析される混合物に特有の物質についての物理化学的親和性を有するメンブラン形成材料であって、複合体形成性ポリマー導体、複合体形成性物質、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンブラン形成材料の少なくとも1つの単層の超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状電極もしくは微小電極; および所望により
(b) 被覆されていない相互噛み合い状電極もしくは微小電極;
からなる少なくとも2つのセンサーユニット;
を含むセンサー。
【請求項2】
前記相互噛み合い電極もしくは微小電極が、金、白金、銅、またはアルミニウムからなる群から選択される金属のものである、請求項1記載のセンサー。
【請求項3】
前記複合体形成性ポリマー導体が、多共役電子π系を有する有機ポリマーからなる群から選択される、請求項1記載のセンサー。
【請求項4】
前記複合体形成性ポリマー導体が、ポリアニリン; ポリピロール; ポリアセチレン; ポリジアセチレン; ポリチオフェン; ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT); ポリイソチオナフタレン; ヘテロアリーレン基がチオフェン、フラン、またはピロールであり得るポリヘテロアリーレンビニリン; ポリ−p−フェニレン; ポリフタロシアニンと類縁体; 並びに、前記化合物の誘導体; およびそれらの混合物; からなる群から選択される、請求項3記載のセンサー。
【請求項5】
前記超極薄フィルムが1〜20単層で構成されていて、各層の厚さが5〜500Åである、請求項1記載のセンサー。
【請求項6】
各単層の厚さが約20Åである、請求項5記載のセンサー。
【請求項7】
前記超極薄フィルムが約10の単層で構成されている、請求項5記載のセンサー。
【請求項8】
前記超極薄フィルムの最大厚さが500Åである、請求項5記載のセンサー。
【請求項9】
前記分析しようとする混合物が飲料もしくは液体状食品であり、前記複合体形成性物質が、脂質化合物、金属錯体、および酵素からなる群から選択される、請求項1記載のセンサー。
【請求項10】
前記脂質化合物が、ステアリン酸、カプロン酸、およびカプリル酸からなる群から選択される、請求項9記載のセンサー。
【請求項11】
前記脂質化合物がステアリン酸である、請求項10記載のセンサー。
【請求項12】
前記分析しようとする混合物が自然資源からの水であり、前記複合体形成性物質が、スルホン化リグニン、複合体形成性有機酸、金属イオンを含有する錯体、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載のセンサー。
【請求項13】
前記分析しようとする混合物が、腐植物質を含有する自然源からの水であり、前記複合体形成性物質が、スルホン化リグニン、複合体形成性有機酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項12記載のセンサー。
【請求項14】
前記複合体形成性有機酸が、ショウノウスルホン酸とトルエンスルホン酸からなる群から選択される、請求項13記載のセンサー。
【請求項15】
前記金属イオンが、銅イオン、鉄イオン、およびアルミニウムイオンからなる群から選択される、請求項12記載のセンサー。
【請求項16】
(a) 所望により少なくとも1種の複合体形成性物質と組み合わされる複合体形成性ポリマー導体の少なくとも1つの単層の超極薄フィルムで被覆された、相互噛み合い状電極もしくは微小電極;
(b) フレーバーを構成する物質についての物理化学的親和性を有する少なくとも1種の複合体形成性物質の少なくとも1つの単層の超極薄フィルムで被覆された、相互噛み合い状電極もしくは微小電極; および所望により
(c) 相互噛み合い状電極もしくは微小電極;
からなる少なくとも2つのセンサーユニットを含む、広域選択性によって液体系を分析するための味覚センサー。
【請求項17】
前記相互噛み合い状電極もしくは微小電極が、金、白金、銅、またはアルミニウムからなる群から選択される金属である、請求項16記載の味覚センサー。
【請求項18】
前記複合体形成性ポリマー導体が、ポリアニリン; ポリピロール; ポリアセチレン; ポリジアセチレン; ポリチオフェン; ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT); ポリイソチオナフタレン; ヘテロアリーレン基がチオフェン、フラン、またはピロールであってよいポリヘテロアリーレンビニリン; ポリ−p−フェニレン; ポリフタロシアニンと類縁体; 前記化合物の誘導体; およびこれらの混合物; からなる群から選択される、多共役電子π系を有する有機ポリマーである、請求項16記載の味覚センサー。
【請求項19】
前記有機ポリマーがポリアニリンおよび/またはポリピロールである、請求項18記載の味覚センサー。
【請求項20】
前記複合体形成性物質が、ステアリン酸、カプロン酸、およびカプリル酸からなる群から選択される脂質化合物である、請求項16記載の味覚センサー。
【請求項21】
前記脂質化合物がステアリン酸である、請求項20記載の味覚センサー。
【請求項22】
少なくとも6つのセンサーユニットを含む、請求項16記載の味覚センサー。
【請求項23】
相互噛み合い状電極もしくは微小電極からなる6つのセンサーユニット; 複合体形成性物質の超極薄フィルムで被覆された1個の相互噛み合い状電極もしくは微小電極; 少なくも1種の複合体形成性ポリマー導体の超極薄フィルムで被覆された2個の相互噛み合い状電極もしくは微小電極; および少なくとも1種の複合体形成性ポリマー導体と1種の複合体形成性物質との混合物の超極薄フィルムで被覆された2個の相互噛み合い状電極もしくは微小電極; を含む請求項22記載の味覚センサー。
【請求項24】
前記超極薄フィルムが1〜20の単層で構成されていて、各層の厚さが5〜500Åである、請求項16記載の味覚センサー。
【請求項25】
各単層の厚さが約20Åである、請求項24記載の味覚センサー。
【請求項26】
前記超極薄フィルムが約10の単層で構成されていることを特徴とする、請求項24記載の味覚センサー。
【請求項27】
前記超極薄フィルムの最大厚さが500Åである、請求項24記載の味覚センサー。
【請求項28】
(a) 相互噛み合い状電極もしくは微小電極; および
(b) ある1種の複合体形成性ポリマー導体で構成される少なくとも1つの単層の超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状電極もしくは微小電極、所望により、前記ある1種の複合体形成性ポリマー導体と、分析しようとする物質中に存在する腐植物質に対して高い物理化学的親和性を有する少なくとも1種の複合体形成性物質とを組み合わせる;
からなる少なくとも2つのセンサーユニットを含む、広域選択性によって液体系を分析するための腐植物質検出用センサー。
【請求項29】
前記の相互噛み合い状電極もしくは微小電極が、金、白金、銅、またはアルミニウムからなる群から選択される金属である、請求項28記載の腐植物質検出用センサー。
【請求項30】
前記複合体形成性ポリマー導体が、ポリアニリン; ポリピロール; ポリアセチレン; ポリジアセチレン; ポリチオフェン; ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT); ポリイソチオナフタレン; ヘテロアリーレン基がチオフェン、フラン、またはピロールであってよいポリヘテロアリーレンビニリン; ポリ−p−フェニレン; ポリフタロシアニンと類縁体; 前記化合物の誘導体; およびこれらの混合物; からなる群から選択される、多共役電子π系を有する有機ポリマーである、請求項16記載の腐植物質検出用センサー。
【請求項31】
前記ポリマーがポリアニリンおよび/またはポリ(o−エトキシアニリン)である、請求項18記載の腐植物質検出用センサー。
【請求項32】
前記複合体形成性物質がスルホン化リグニンと複合体形成性有機酸からなる群から選択される、請求項28記載の腐植物質検出用センサー。
【請求項33】
前記超極薄フィルムがポリアニオンとポリカチオンの自己据え付け交互層によって得られる、請求項28記載の腐植物質検出用センサー。
【請求項34】
前記ポリアニオンがスルホン化リグニンであり、前記ポリカチオンがポリ(o−エトキシアニリン)である、請求項33記載の腐植物質検出用センサー。
【請求項35】
少なくとも9つのセンサーユニットを含む、請求項28記載の腐植物質検出用センサー。
【請求項36】
相互噛み合い状電極もしくは微小電極からなる9つのセンサーユニット; 少なくも1種の複合体形成性ポリマー導体の超極薄フィルムで被覆された3個の相互噛み合い状電極もしくは微小電極; 少なくとも1種の複合体形成性ポリマー導体と少なくとも1種の複合体形成性物質との混合物の超極薄フィルムで被覆された4個の相互噛み合い状電極もしくは微小電極; および少なくとも1種の複合体形成性ポリマー導体の超極薄フィルムで被覆された1個の相互噛み合い状電極もしくは微小電極; を含む請求項35記載の腐植物質検出用センサー。
【請求項37】
前記超極薄フィルムが1〜20の単層で構成されていて、各層の厚さが5〜500Åである、請求項28記載の腐植物質検出用センサー。
【請求項38】
各単層の厚さが約20Åである、請求項28記載の腐植物質検出用センサー。
【請求項39】
前記超極薄フィルムが約10層で構成されている、請求項28記載の腐植物質検出用センサー。
【請求項40】
前記超極薄フィルムの最大厚さが500Åである、請求項28記載の腐植物質検出用センサー。
【請求項41】
(1) (a) 分析しようとする混合物に特有の物質に対して高い物理化学的親和性を有していて、複合体形成性ポリマー導体、複合体形成性物質、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるメンブラン形成物質で構成される少なくとも1つの単層の超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状電極もしくは微小電極; および所望により
(b) 相互噛み合い状電極もしくは微小電極;
からなる、電気信号を発生する少なくとも2つのセンサーユニット;
(2) 分析しようとする物質と接触しているセンサーユニットによって発せられ、交流を測定する手段によって得られる電気信号を受け取る手段; および
(3) 該異なるセンサーユニットによって形成されるアレイの応答パターンを分析するための、測定値を処理する手段;
を含む官能性システム。
【請求項1】
広域選択性による混合物の分析のためのセンサーであって、
(a) 分析される混合物に特有の物質についての物理化学的親和性を有するメンブラン形成材料であって、複合体形成性ポリマー導体、複合体形成性物質、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンブラン形成材料の少なくとも1つの単層の超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状電極もしくは微小電極; および所望により
(b) 被覆されていない相互噛み合い状電極もしくは微小電極;
からなる少なくとも2つのセンサーユニット;
を含むセンサー。
【請求項2】
前記相互噛み合い電極もしくは微小電極が、金、白金、銅、またはアルミニウムからなる群から選択される金属のものである、請求項1記載のセンサー。
【請求項3】
前記複合体形成性ポリマー導体が、多共役電子π系を有する有機ポリマーからなる群から選択される、請求項1記載のセンサー。
【請求項4】
前記複合体形成性ポリマー導体が、ポリアニリン; ポリピロール; ポリアセチレン; ポリジアセチレン; ポリチオフェン; ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT); ポリイソチオナフタレン; ヘテロアリーレン基がチオフェン、フラン、またはピロールであり得るポリヘテロアリーレンビニリン; ポリ−p−フェニレン; ポリフタロシアニンと類縁体; 並びに、前記化合物の誘導体; およびそれらの混合物; からなる群から選択される、請求項3記載のセンサー。
【請求項5】
前記超極薄フィルムが1〜20単層で構成されていて、各層の厚さが5〜500Åである、請求項1記載のセンサー。
【請求項6】
各単層の厚さが約20Åである、請求項5記載のセンサー。
【請求項7】
前記超極薄フィルムが約10の単層で構成されている、請求項5記載のセンサー。
【請求項8】
前記超極薄フィルムの最大厚さが500Åである、請求項5記載のセンサー。
【請求項9】
前記分析しようとする混合物が飲料もしくは液体状食品であり、前記複合体形成性物質が、脂質化合物、金属錯体、および酵素からなる群から選択される、請求項1記載のセンサー。
【請求項10】
前記脂質化合物が、ステアリン酸、カプロン酸、およびカプリル酸からなる群から選択される、請求項9記載のセンサー。
【請求項11】
前記脂質化合物がステアリン酸である、請求項10記載のセンサー。
【請求項12】
前記分析しようとする混合物が自然資源からの水であり、前記複合体形成性物質が、スルホン化リグニン、複合体形成性有機酸、金属イオンを含有する錯体、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載のセンサー。
【請求項13】
前記分析しようとする混合物が、腐植物質を含有する自然源からの水であり、前記複合体形成性物質が、スルホン化リグニン、複合体形成性有機酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項12記載のセンサー。
【請求項14】
前記複合体形成性有機酸が、ショウノウスルホン酸とトルエンスルホン酸からなる群から選択される、請求項13記載のセンサー。
【請求項15】
前記金属イオンが、銅イオン、鉄イオン、およびアルミニウムイオンからなる群から選択される、請求項12記載のセンサー。
【請求項16】
(a) 所望により少なくとも1種の複合体形成性物質と組み合わされる複合体形成性ポリマー導体の少なくとも1つの単層の超極薄フィルムで被覆された、相互噛み合い状電極もしくは微小電極;
(b) フレーバーを構成する物質についての物理化学的親和性を有する少なくとも1種の複合体形成性物質の少なくとも1つの単層の超極薄フィルムで被覆された、相互噛み合い状電極もしくは微小電極; および所望により
(c) 相互噛み合い状電極もしくは微小電極;
からなる少なくとも2つのセンサーユニットを含む、広域選択性によって液体系を分析するための味覚センサー。
【請求項17】
前記相互噛み合い状電極もしくは微小電極が、金、白金、銅、またはアルミニウムからなる群から選択される金属である、請求項16記載の味覚センサー。
【請求項18】
前記複合体形成性ポリマー導体が、ポリアニリン; ポリピロール; ポリアセチレン; ポリジアセチレン; ポリチオフェン; ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT); ポリイソチオナフタレン; ヘテロアリーレン基がチオフェン、フラン、またはピロールであってよいポリヘテロアリーレンビニリン; ポリ−p−フェニレン; ポリフタロシアニンと類縁体; 前記化合物の誘導体; およびこれらの混合物; からなる群から選択される、多共役電子π系を有する有機ポリマーである、請求項16記載の味覚センサー。
【請求項19】
前記有機ポリマーがポリアニリンおよび/またはポリピロールである、請求項18記載の味覚センサー。
【請求項20】
前記複合体形成性物質が、ステアリン酸、カプロン酸、およびカプリル酸からなる群から選択される脂質化合物である、請求項16記載の味覚センサー。
【請求項21】
前記脂質化合物がステアリン酸である、請求項20記載の味覚センサー。
【請求項22】
少なくとも6つのセンサーユニットを含む、請求項16記載の味覚センサー。
【請求項23】
相互噛み合い状電極もしくは微小電極からなる6つのセンサーユニット; 複合体形成性物質の超極薄フィルムで被覆された1個の相互噛み合い状電極もしくは微小電極; 少なくも1種の複合体形成性ポリマー導体の超極薄フィルムで被覆された2個の相互噛み合い状電極もしくは微小電極; および少なくとも1種の複合体形成性ポリマー導体と1種の複合体形成性物質との混合物の超極薄フィルムで被覆された2個の相互噛み合い状電極もしくは微小電極; を含む請求項22記載の味覚センサー。
【請求項24】
前記超極薄フィルムが1〜20の単層で構成されていて、各層の厚さが5〜500Åである、請求項16記載の味覚センサー。
【請求項25】
各単層の厚さが約20Åである、請求項24記載の味覚センサー。
【請求項26】
前記超極薄フィルムが約10の単層で構成されていることを特徴とする、請求項24記載の味覚センサー。
【請求項27】
前記超極薄フィルムの最大厚さが500Åである、請求項24記載の味覚センサー。
【請求項28】
(a) 相互噛み合い状電極もしくは微小電極; および
(b) ある1種の複合体形成性ポリマー導体で構成される少なくとも1つの単層の超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状電極もしくは微小電極、所望により、前記ある1種の複合体形成性ポリマー導体と、分析しようとする物質中に存在する腐植物質に対して高い物理化学的親和性を有する少なくとも1種の複合体形成性物質とを組み合わせる;
からなる少なくとも2つのセンサーユニットを含む、広域選択性によって液体系を分析するための腐植物質検出用センサー。
【請求項29】
前記の相互噛み合い状電極もしくは微小電極が、金、白金、銅、またはアルミニウムからなる群から選択される金属である、請求項28記載の腐植物質検出用センサー。
【請求項30】
前記複合体形成性ポリマー導体が、ポリアニリン; ポリピロール; ポリアセチレン; ポリジアセチレン; ポリチオフェン; ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT); ポリイソチオナフタレン; ヘテロアリーレン基がチオフェン、フラン、またはピロールであってよいポリヘテロアリーレンビニリン; ポリ−p−フェニレン; ポリフタロシアニンと類縁体; 前記化合物の誘導体; およびこれらの混合物; からなる群から選択される、多共役電子π系を有する有機ポリマーである、請求項16記載の腐植物質検出用センサー。
【請求項31】
前記ポリマーがポリアニリンおよび/またはポリ(o−エトキシアニリン)である、請求項18記載の腐植物質検出用センサー。
【請求項32】
前記複合体形成性物質がスルホン化リグニンと複合体形成性有機酸からなる群から選択される、請求項28記載の腐植物質検出用センサー。
【請求項33】
前記超極薄フィルムがポリアニオンとポリカチオンの自己据え付け交互層によって得られる、請求項28記載の腐植物質検出用センサー。
【請求項34】
前記ポリアニオンがスルホン化リグニンであり、前記ポリカチオンがポリ(o−エトキシアニリン)である、請求項33記載の腐植物質検出用センサー。
【請求項35】
少なくとも9つのセンサーユニットを含む、請求項28記載の腐植物質検出用センサー。
【請求項36】
相互噛み合い状電極もしくは微小電極からなる9つのセンサーユニット; 少なくも1種の複合体形成性ポリマー導体の超極薄フィルムで被覆された3個の相互噛み合い状電極もしくは微小電極; 少なくとも1種の複合体形成性ポリマー導体と少なくとも1種の複合体形成性物質との混合物の超極薄フィルムで被覆された4個の相互噛み合い状電極もしくは微小電極; および少なくとも1種の複合体形成性ポリマー導体の超極薄フィルムで被覆された1個の相互噛み合い状電極もしくは微小電極; を含む請求項35記載の腐植物質検出用センサー。
【請求項37】
前記超極薄フィルムが1〜20の単層で構成されていて、各層の厚さが5〜500Åである、請求項28記載の腐植物質検出用センサー。
【請求項38】
各単層の厚さが約20Åである、請求項28記載の腐植物質検出用センサー。
【請求項39】
前記超極薄フィルムが約10層で構成されている、請求項28記載の腐植物質検出用センサー。
【請求項40】
前記超極薄フィルムの最大厚さが500Åである、請求項28記載の腐植物質検出用センサー。
【請求項41】
(1) (a) 分析しようとする混合物に特有の物質に対して高い物理化学的親和性を有していて、複合体形成性ポリマー導体、複合体形成性物質、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるメンブラン形成物質で構成される少なくとも1つの単層の超極薄フィルムで被覆された相互噛み合い状電極もしくは微小電極; および所望により
(b) 相互噛み合い状電極もしくは微小電極;
からなる、電気信号を発生する少なくとも2つのセンサーユニット;
(2) 分析しようとする物質と接触しているセンサーユニットによって発せられ、交流を測定する手段によって得られる電気信号を受け取る手段; および
(3) 該異なるセンサーユニットによって形成されるアレイの応答パターンを分析するための、測定値を処理する手段;
を含む官能性システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−292780(P2007−292780A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164565(P2007−164565)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【分割の表示】特願2002−566645(P2002−566645)の分割
【原出願日】平成14年2月21日(2002.2.21)
【出願人】(502191756)エンブラパ−エンプレサ・ブラジレイラ・ジ・ペスキザ・アグロペクリア (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【分割の表示】特願2002−566645(P2002−566645)の分割
【原出願日】平成14年2月21日(2002.2.21)
【出願人】(502191756)エンブラパ−エンプレサ・ブラジレイラ・ジ・ペスキザ・アグロペクリア (1)
【Fターム(参考)】
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