説明

広帯域波長板および光ヘッド装置

【課題】複数の異なる波長の光が入射してそれらの光に対する偏光状態を制御して出射させる広帯域波長板および光ヘッド装置を提供する。
【解決手段】平行に第1の波長板13a、第2の波長板13bを備え、2枚の波長板のリタデーション値Rd、Rd、入射する直線偏光の方向と入射側の液晶分子の長軸方向とがなす角度であるプレツイスト角α、α、2枚の波長板の液晶分子のツイスト角β、βを調整することによって、異なる3つの波長λ、λ、λの直線偏光(λ<λ<λ)に対して、波長λの光、波長λの光を円偏光、波長λの光を直線偏光として出射させる帯域波長板10が実現でき、光ヘッド装置の小型化、および記録・再生の高品質化を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域で入射する光の偏光状態を制御するための広帯域波長板であり、とくに、光ストレージを扱う光学系として、CD、DVD、光磁気ディスクなどの光記録媒体および、「Blu−ray」(登録商標:以下BD)のような高密度光記録媒体に情報の記録および再生を行う光ヘッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば光ストレージを扱う光学系として、CD、DVD、光磁気ディスクなどの光記録媒体だけでなく、BDなどのような高密度光記録媒体(以下、「光ディスク」という)に情報の記録および再生を行う光ヘッド装置の開発が進んでいる。使用されるレーザ光の波長は、短波長であるほど記録密度を向上できるため光源の短波長化が進められている。一方、これまでに普及している多くの光ディスク用の長波長(赤色域、近赤外域)のレーザ光による再生または記録(以下、「記録・再生」という)もできるようにする必要があり、従来のDVDのような赤色域(660nm波長帯)、CDのような近赤外域(785nm波長帯)のレーザ光と、短波長(405nm波長帯)のレーザ光との互換性を有する様々な方式が提案されている。
【0003】
このように、高密度記録媒体だけでなく、従来の光ディスクに対してこの互換性を確保するために、短波長を発する光源に加えて、赤色域、近赤外域の光源を併せて設置する方式がある。このため、3つの異なる波長を含む広帯域の波長に対して一定の特性を有する光学部品のニーズも高まっている。したがって、BD、DVD、CDなどを記録・再生できる光ヘッド装置は少ない光学部品で構成できるような小型化が要求されている。
【0004】
図21に一例として3つの異なる波長のレーザ光を使用した従来の光ヘッド装置100の構成を示す。半導体レーザ等の光源101から出射される405nm波長帯の光は、偏光ビームスプリッタ107で反射され、コリメータレンズ110で平行光となって1/4波長板112によって円偏光となる。円偏光となった光は、ミラー114で反射し、対物レンズ116によってBD等の光ディスク118の情報記録面に集光される。情報記録面に形成されたピットの情報を含んだ反射光は上記の経路を逆方向に進行する。ここで、光源から光ディスクに到達するまでの光路を「往路」、光ディスクから光検出器に到達するまでの光路と「復路」として説明する。復路の光は往路の円偏光とは逆方向の円偏光となって1/4波長板112を出射する復路の光は往路の直線偏光に対して直交する直線偏光となり、偏光ビームスプリッタ107を直進透過して光検出器119に到達する。光検出器119では、光ディスクで反射された光からピット情報を検出することで光ディスク118に記録された情報の読み出しを行っている。
【0005】
同様に、半導体レーザ等の光源102から出射される660nm波長帯の光はダイクロイックプリズム108を透過し、光源103から出射される785nm波長帯の光は、ダイクロイックプリズム108で反射され、それぞれの光は偏光ビームスプリッタ109を透過する。そして、コリメータレンズ111で平行光となって、1/4波長板113で円偏光となって、ミラー115で反射され対物レンズ117で光ディスク118に集光される。復路の光は、それぞれ往路の直線偏光と直交する直線偏光となって、偏光ビームスプリッタ109で反射され、光検出器120に到達する。また、回折素子104、105、106は、光源からの光をメインビームと、例えばトラッキングサーボ信号となる2つのサブビームの3ビームを発現させるための光学素子であって、それぞれの往路の光源と偏光ビームスプリッタまたはダイクロイックプリズムとの間の光路中に配置することができる。
【0006】
このように、図21に示した光ヘッド装置100は、偏光ビームスプリッタや光検出器などの光学素子をそれぞれ2セット配置しており、部品点数が多く装置の小型化や、組立調整に時間がかかるといった問題がある。これに対し、例えば、図22に3つの異なる波長のレーザ光を使用した他の構成例となる光ヘッド装置200が報告されている(特許文献1)。
【0007】
図22に示す光ヘッド装置200は、光ヘッド装置100に対して、3つの異なる波長の光に対して共通して使用するコリメータレンズ210および1/4波長板211が採用されるものである。405nm波長帯の光源201、660nm波長帯の光源202、785nm波長帯の光源203から発する光の光路中にダイクロイックプリズム208を配置し、光源202および光源203の光路中にダイクロイックプリズム207を配して各波長の光を透過または反射させる。なお、ダイクロイックプリズム207は、660nm波長帯の光を透過するとともに785nm波長帯の光を反射する機能を有し、ダイクロイックプリズム208は、660nm波長帯および785nm波長帯の光を透過するとともに405nm波長帯の光を反射する機能を有する。さらに、3つの波長の光はコリメータレンズ210と1/4波長板211を透過する。ダイクロイックプリズム212は、405nm波長帯の光を反射させ、660nm波長帯および785nm波長帯の光を透過させる機能を有し、405nm波長帯の光は、対物レンズ214により、BD等の光ディスク216の情報記録面に集光する。
【0008】
一方、660nm波長帯、785nm波長帯の光は、ダイクロイックプリズム212を直進透過し、ミラー213で反射し、対物レンズ215により、DVD、CD等の光ディスク216の情報記録面に集光する。それぞれの光ディスクで反射された405nm波長帯、660nm波長帯および785nm波長帯の復路の光は、1/4波長板211にて往路の直線偏光に対して直交する直線偏光に変換され、偏光ビームスプリッタ209で反射し光検出器217に到達する。特許文献1において、とくに405nm波長帯、660nm波長帯および785nm波長帯それぞれに1/4波長板として機能する、広帯域波長板を特徴とする光ヘッド装置として報告されている。
【0009】
また、図23に3つの異なる波長のレーザ光を使用した別の構成を有する光ヘッド装置300が報告されている(特許文献2)。光ヘッド装置300は、405nm波長帯の光源301、660nm波長帯の光源302、785nm波長帯の光源303から発する光の光路中にダイクロイックプリズム308、309、無偏光回折格子307を配し、コリメータレンズ310と対物レンズ313の間の光路中に偏光回折格子311と(広帯域)波長板312を有するものである。また、それぞれの波長帯の光に対して、光検出器304、305、306が配され、光ディスク315で反射された光が検出される。
【0010】
ここで、いずれの波長帯の光も直線偏光で波長板312に入射するが、波長板312は、405nm波長帯、660nm波長帯の光は、円偏光で出射し、785nm波長帯の光は直線偏光のまま出射させる機能を有し、波長板312を出射した光は、光ディスク315の情報記録面に集光する。
【0011】
【特許文献1】特開2006−114080号公報
【特許文献2】特開2006−236549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
3つの異なる波長の光が入射して、BD、DVD、CD等の異なる規格の光ディスクの情報の記録・再生が可能な、互換性を有する光ヘッド装置を実現する上で、特許文献1のように3つの異なる波長の光を円偏光として集光させるとき、とくにCDの記録・再生が良好にできないという問題がある。つまり、CDは、BD、DVDに比べて情報記録面を保護する樹脂材料として大きな複屈折材料を有するものがあるため、集光して入射する円偏光に対し反射される光が逆回りの円偏光とならないことがある。例えば、この樹脂材料の複屈折の影響で反射する光が入射する光と同じ円偏光になると、偏光ビームスプリッタに入射する復路の光の偏光状態が、往路の偏光状態に近い状態となって、反射された光のうち光検出器に到達する光の光量が大きく低減し、情報の再生が良好にできなくなる。このため、このような光ディスクに対しても良好に記録・再生を行うためには、この複屈折の影響を低減するためにCD用の波長(785nm波長帯)の光を直線偏光の状態でCDの情報記録面に集光させる手段がとられている。
【0013】
また、特許文献2の光ヘッド装置の波長板は、405nmの波長の光、660nmの波長の光、785nmの波長の光に対しては、それぞれ所望の位相差を得ることができるが、入射する光の波長をλとするとき、405nmの光に対して(9/4)λの位相差を与える9λ/4板、660nmの光に対して(5/4)λの位相差を与える5λ/4板、785nmの光に対してλの位相差を与えるλ板となるように設計しており、使用温度および半導体レーザの個別素子のばらつきなどで、発振する光の波長が変動すると所望の位相差に対して大きく変動するため、出射する光の偏光状態が安定しないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、所定の異なる帯域を有する3種の波長λ、λ、λ(λ<λ<λ)で入射する直線偏光について偏光状態を変える広帯域波長板において、前記広帯域波長板は、光が入射する側から順に第1の波長板と第2の波長板が備えられ、前記第1の波長板および前記第2の波長板は、液晶分子の長軸方向が厚さ方向に対してツイストされてなり、前記第1の波長板に入射する前記直線偏光の方向を基準としたとき、前記第1の波長板に入射する直線偏光側の液晶分子の長軸方向とがなす角度、前記第1の波長板に入射する前記直線偏光の方向と前記第2の波長板の前記第1の波長板側にある液晶分子の長軸方向とがなす角度、との組み合わせまたは、前記第1の波長板に入射する直線偏光側の液晶分子の短軸方向とがなす角度、前記第1の波長板に入射する前記直線偏光の方向と前記第2の波長板の前記第1の波長板側にある液晶分子の短軸方向とがなす角度、との組み合わせをそれぞれ第1のプレツイスト角α[°]、第2のプレツイスト角をα[°]とし、前記広帯域波長板から出射する波長λの楕円率κおよび波長λの光の楕円率κが0.65以上となるとともに波長λの光の楕円率κが0.5以下となるように前記α、前記α、0とは異なる値の前記β、0とは異なる値の前記β、および、前記第1の波長板のリタデーション値Rdおよび前記第2の波長板のリタデーション値Rdが設定されている広帯域波長板を提供する。
【0015】
また、前記波長λで入射する直線偏光の方向と前記波長λで出射する光の方位角とがなす角度をλ出射角2φ[°]とするとき、前記λ出射角2φは、いずれの値にも設定できる上記の広帯域波長板を提供する。
【0016】
また、前記波長λは390〜420nmの波長範囲である405nm波長帯、前記波長λは640〜680nmの波長範囲である660nm波長帯、前記波長λは765〜805nmの波長範囲である785nm波長帯であり、
390〜805nmの帯域を有する波長をλとし、前記波長λにおける前記第1の波長板のリタデーション値をRd(λ)、前記波長λにおける前記第2の波長板のリタデーション値をRd(λ)とし、前記波長λに含まれる特定の波長を波長λ、波長λとするとき、
Rd(λ)=3λ/4 ・・・(1)
Rd(λ)=λ/2 ・・・(2)
1.0<Rd(λ)/Rd(λ)<2.0 ・・・(3)
の全てを満たす上記の広帯域波長板を提供する。
【0017】
また、光が入射する側からみて、前記第1の波長板に入射する前記直線偏光の方向を基準に反時計方向をプラスとするとき、前記λ出射角2φ、前記第1の波長板のプレツイスト角α、前記第1の波長板のツイスト角β、前記第2の波長板のプレツイスト角α、前記第2の波長板のツイスト角βの関係が、
46<α<2φ×0.25+125 ・・・(4a)
2φ×0.25−5<β<2φ×0.6+60 ・・・(5a)
2φ×0.54+27<α<2φ×0.45+105 ・・・(6a)
0.8<(α+β)/(α+β)<1.4 ・・・(7)
2φ×0.33−20<β<2φ×0.33+50 ・・・(8a)
2φ×0.25−125<α<−46 ・・・(4b)
2φ×0.6−60<β<2φ×0.25+5 ・・・(5b)
2φ×0.45−105<α<2φ×0.54−27 ・・・(6b)
2φ×0.33−50<β<2φ×0.33+20 ・・・(8b)
のうち、(4a)、(5a)、(6a)、(7)、(8a)の全てを満たすかまたは、(4b)、(5b)、(6b)、(7)、(8b)の全てを満たす上記の広帯域波長板を提供する。
【0018】
また、前記波長λ、前記波長λおよび前記波長λで入射する直線偏光の方向が互いに平行である上記の広帯域波長板を提供する。
【0019】
さらに、異なる3種の波長の光を出射する少なくとも一つの光源と、前記光源から出射する光を光記録媒体上に集光する対物レンズと、前記光記録媒体から反射される光を検出する光検出器と、を備えた光ヘッド装置であって、前記光源と前記対物レンズとの間の光路中、または前記対物レンズと前記光検出器との間の光路中に、上記の広帯域波長板が配される光ヘッド装置を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、異なる複数の波長の光が入射してそれぞれの光の偏光状態を変えることができる広帯域波長板を提供するとともに、3つの異なる波長の光を使用する光ヘッド装置において光学素子の部品点数の削減による小型化、記録・再生の高品質化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態にかかる広帯域波長板10の構成を示す模式図である。このうち、図1(a)は、広帯域波長板10の断面模式図であり、2枚の波長板13aと13bとが、透明基板11a、11bおよび接着剤11cを介して一体化されてなるものである。また、後述するように波長板13a、13bが高分子液晶からなる場合は、それぞれ配向膜12a、12bを配してもよい。図1(b)および図1(c)は、それぞれ波長板13a、13bの液晶分子の厚さ方向(Z方向)のツイスト方向と入射する光の偏光方向との関係を示す平面模式図である。
【0022】
透明基板11a、11bおよび接着剤11cは入射する光に対して透明であれば、樹脂板、樹脂フィルムなど種々の材料を用いることができるが、ガラスや石英ガラスなどの光学的等方性材料を用いると、透過光に複屈折性の影響を与えないため好ましい。波長板13a、13bは、光学的に複屈折性を有する材料からなり、液晶を高分子化した高分子液晶を用いると、液晶の配向方向を制御して波長板13a、13bの光学軸方向を設定しやすく好ましい。また、波長板13a、13bを構成する高分子液晶の液晶分子の長軸方向は厚さ方向(Z方向)に捩れるようにツイスト配向されている。
【0023】
2つの波長板13a、13bの接着には、粘着フィルム、UV硬化型や熱硬化型の接着剤を使用できる。広帯域波長板の波面収差の低減、温度特性や信頼性の向上のためには、できるだけ薄い接着層として貼り合わせることが望ましく、接着層の厚さを10μm以下にすることが特に望ましい。また、広帯域波長板は、透過光の波面収差の劣化を回避するために、表面の平滑化処理や基板による接着保持が望ましい。具体的には、少なくとも1枚の透明基板に広帯域波長板を接着して使用することが望ましい。他の光学素子と積層一体化せずに広帯域波長板を単独で用いる場合には、2枚の透明基板11a、11bにより挟み込む構成が波面収差低減、強度確保の点から特に望ましい。
【0024】
次に、2つの波長板の各パラメータについて説明する。まず、広帯域波長板10には、X方向の直線偏光の光が透明基板11a側からZ方向に進行しながら入射するものとする。なお、X方向の直線偏光の方向を、X方向の直線偏光の振動方向ともいう。図1(b)は、波長板13aに関する平面模式図であり、広帯域波長板10に入射する直線偏光14の方向(=X方向)と、波長板13aの光の入射面上の液晶分子の長軸方向または長軸方向と直交する短軸方向とがなす角度(以下、プレツイスト角という)をα[°]とする。なお、図1(b)の15aは以下、液晶分子の長軸方向を示す方向として説明する。
【0025】
ここで、プレツイスト角αの符号は、波長板13aの光入射面(X−Y平面)において、X方向を基準に反時計回り方向をプラス(+)、時計回り方向をマイナス(−)とする。次に、波長板13aの液晶分子のツイスト角β[°]を考える。ツイスト角βは、波長板13aの光入射面(X−Y平面)の液晶分子の長軸方向と、波長板13aの光出射面(X−Y平面)の液晶分子の長軸方向とがなす角度である。ツイスト角βの符号は、波長板13aの光の入射面上の液晶分子の長軸方向15aを基準として、光の入射側からみて反時計回り方向をプラス(+)、時計回り方向をマイナス(−)とする。このことから、図1(b)に示すαおよびβはプラスの方向を表すものである。
【0026】
図1(c)は、波長板13bに関する平面模式図であり、同様に広帯域波長板10(透明基板11a)に入射する直線偏光14の方向(=X方向)と、波長板13bの光の入射面上の液晶分子の長軸方向または短軸方向とがなすプレツイスト角をα[°]とする。なお、図1(c)の15bは以下、液晶分子の長軸方向を示す方向として説明する。また、波長板13bの液晶分子のツイスト角をβ[°]として表したものである。なお、α、βの符号の正負の考え方は、上記波長板13aと同様である。ここで、15aと15bの組み合わせは互いに液晶分子の長軸方向どうし、または短軸方向どうしの組み合わせであり、一方が長軸方向で一方が短軸方向という組み合わせはないものとする。つまり、αおよびαに与えられるパラメータ値の範囲は、液晶分子の長軸方向どうしの組み合わせ、液晶分子の短軸方向どうしの組み合わせいずれにおいても成立するものであるが、とくに指定がない場合は、αおよびαは液晶分子の長軸方向どうしの組み合わせであるものとして説明する。
【0027】
次に、本発明の広帯域波長板の機能について説明する。広帯域波長板10は、405nm波長帯の光、660nm波長帯の光、785nm波長帯の光が同じ方向の直線偏光で入射し、405nm波長帯、660nm波長帯の光に対して1/4波長板としての機能を有し、785nm波長帯の光に対して1/2波長板としての機能を実現するため、上記2枚の波長板のパラメータを与える。ここで、具体的に405nm波長帯は、390〜420nmの範囲、660nm波長帯は、640〜680nmの範囲、785nm波長帯は、765〜805nmの範囲を示すものとする。
【0028】
1/4波長板としての機能は、直線偏光で入射する光を円偏光に変換して出射するものまたは、円偏光で入射する光を直線偏光に変換して出射するものである。直線偏光の光が入射して出射する光の偏光状態は楕円率によって示すことができ、この楕円率が1に近いほど光は円偏光に近い偏光状態となる。本発明の広帯域波長板により得られる楕円率としては、405nm波長帯の光に対する楕円率κおよび660nm波長帯の光に対する楕円率κがそれぞれ0.65以上であれば好ましく、0.75以上であればより好ましく、0.8以上であればさらに好ましい。このように高い楕円率を得ることによって、対応する波長の光が入射したとき、広帯域波長板を往復する光が互いに直交する方向に近づくので、往路と復路の光を良好に分離でき、光利用効率を高めることができる。
【0029】
例えば、楕円率κおよびκが0.65以上である場合、A方向の直線偏光の光が入射して広帯域波長板で円偏光となり、光ディスクで反射して再度、広帯域波長板に入射すると、A方向と直交するB方向の直線偏光となるが、このB方向の直線偏光のB方向の偏光強度が0.8以上となる。この場合、入射するA方向の直線偏光の光強度(=1)に対して、反射して戻るB方向の直線偏光が0.8、つまり光利用効率が80%以上となるので、好ましい。
【0030】
一方、1/2波長板としての機能は、直線偏光で入射する光に対して、同じく直線偏光の光で出射するものである。図2は、光学軸が厚さ方向に揃った(光学軸がツイストしない)1/2波長板に入射する直線偏光と出射する直線偏光の状態を示す平面模式図である。1/2波長板20に入射する直線偏光の方向を21とし、直線偏光の方向21を基準に光学軸(ここでは例として遅相軸)とがなす角度をφとすると、出射する直線偏光の方向は、直線偏光の方向21を基準に2φの角度となる。例えば、このφの値を45°に設定すると、入射する直線偏光と出射する直線偏光とは直交する関係となる。
【0031】
また、図2を用いて、入射する直線偏光の方向を第1の偏光方向21、第1の偏光方向に対して2φの角度をなして出射する方向を第2の偏光方向22とするとき、出射する光の方位角は、第2の偏光方向22を基準に±5°の範囲内にあれば好ましく、±2°の範囲内であればより好ましい。これより、第1の偏光方向21に対し、2φ±5°の範囲内にあれば好ましく、2φ±2°の範囲内であればより好ましい。
【0032】
また、本発明の広帯域波長板10において、785nm波長帯の光に対して1/2波長板として機能させることにより得られる出射光を楕円率κとすると、κは0.5以下であれば好ましく、0.35以下であればより好まく、0.25以下であればさらに好ましい。これは、楕円率κを0.5以下として、出射光の楕円の長軸方向となる上記2φに相当する方位角の方向と、CDの複屈折が小さくなる方向であるCDの半径方向またはそれと直交するCDの接線方向、を合わせることによって、複屈折による方位角方向の光量の変動を低減できるからである。なお、出射する光が直線偏光(κ=0)の場合、直線偏光方向が方位角に相当する。
【0033】
図2は、光学軸が厚さ方向に揃う1/2波長板を説明するものであり、第1の偏光方向21に対して第2の偏光方向としたい角度2φを決定すると、φを調整することによって容易に実現することができる。しかし、広帯域波長板10は、液晶分子が厚さ方向にツイストして構成される波長板であるので、上記角度2φに相当する第2の偏光方向を得るためには、後述するように2枚の波長板のリタデーション値、プレツイスト角およびツイスト角を適切に設定する必要がある。なお、785nm波長帯の光において得られる角度2φを以下、「λ出射角」という。λ出射角は、光の入射面からみて入射する直線偏光の方向を基準に反時計回りをプラス方向とする。
【0034】
また、1/2波長板の指標となるパラメータとして、楕円率κのほかに偏光子強度ηを用いて表現することもできる。偏光子強度とは、本発明の広帯域波長板10を透過した光がそのまま偏光子に入射するように配置したとき、偏光子を透過する前後の光強度の比で表されるものである。例えば、楕円偏光の長軸方向の光強度をa、短軸方向の光強度をbとすると、楕円率κはb/aで与えられ、偏光子強度ηは、a/(a+b)で与えられる。つまり、楕円率κの好ましい範囲が0.5以下、より好ましい範囲が0.35以下、さらに好ましい範囲が0.25以下というのは、偏光子強度ηは0.75以上が好ましく、0.89以上であればより好ましく、0.94以上であればさらに好ましいと言い換えることもできる。
【0035】
次に、これらの波長板13a、13bの各パラメータの設定条件について説明する。ここでは、光が入射する順番に便宜的に第1の波長板(=波長板13a)、第2の波長板(=波長板13b)とする。
【0036】
1. 波長板のリタデーション値の設定
まず、第1の波長板は、390〜805nmの帯域を有する波長λにおいて、波長λに含まれる特定の波長を波長λとするとき、位相差が3λ/4となる条件が得られるようにする。具体的には、第1の波長板を構成する複屈折性材料の常光屈折率をn、異常光屈折率をnとしたときの屈折率異方性Δn(=|n−n|)と第1の波長板の厚さdとの積で表される第1のリタデーション値Rd(=Δn・d)が3λ/4となる点を有するように、Δnおよびdを調整する。また、屈折率異方性Δnについては波長分散性、つまり同じ複屈折性材料であっても入射する光の波長によって異なるΔnについて考慮して設計する。
【0037】
次に、第2の波長板は、390〜805nmの帯域を有する波長λにおいて、波長λに含まれる特定の波長を波長λとするとき、位相差がλ/2となる条件が得られるようにする。具体的には、第2の波長板を構成する複屈折性材料の屈折率異方性Δnと第2の波長板の厚さdとの積で表される第2のリタデーション値Rd(=Δn・d)がλ/2となる点を有するように、Δnおよびdを調整する。なお、第1の波長板と第2の波長板を構成する複屈折性材料は同じものとして説明しているが、異なる材料の組合せであってもよい。これらが同じ材料であると、使用温度変化に対する熱膨張係数が同じであるため、素子の歪みを少なくすることができるなどの理由で好ましい。
【0038】
また、390〜805nmの帯域を有する波長λにおける第1のリタデーション値をRd(λ)、波長λにおける第2のリタデーション値をRd(λ)として、上記と同様に波長λに含まれる特定の波長λにおける第1の波長板のリタデーション値をRd(λ)、上記と同様に波長λに含まれる特定の波長λにおける第2の波長板のリタデーション値をRd(λ)とするとき、Rd(λ)/Rd(λ)が1.0より大きく2.0より小さい値となるようにリタデーション値を調整する。波長λおよび波長λは、上記と同様に390〜805nmの波長範囲における少なくとも1点の任意の値で成立すればよい。
【0039】
ここで、2枚の波長板が有するリタデーション値の条件について整理する。390〜805nmの帯域を有する波長λに含まれる特定の波長を波長λ、波長λとするとき、
Rd(λ)=3λ/4 ・・・(1)
Rd(λ)=λ/2 ・・・(2)
1.0<Rd(λ)/Rd(λ)<2.0 ・・・(3)
がすべて成立するようにするとよい。
【0040】
2. プレツイスト角(α,α)およびツイスト角(β,β)の設定(1)
次に、上記(1)〜(3)を満たすリタデーション条件において、さらに、第1の波長板のプレツイスト角(α)およびツイスト角(β)、第2の波長板のプレツイスト角(α)およびツイスト角(β)の条件を設定する。これら4つのパラメータは、1つのパラメータの値を固定して他の3つのパラメータを変化させる。そして、少なくとも本発明の広帯域波長板において必要な機能である以下、
(A)405nm波長帯の楕円率κおよび660nm波長帯の楕円率κが0.65以上、
(B)785nm波長帯の楕円率κが0.5以下、
となる2つ条件を設定する。
【0041】
上記4つのパラメータについて(A)、(B)の条件に基づいてそれぞれ考える。また、これら4つのパラメータはプラス(+)の値となるものとして説明する。まず、第1の波長板13aのプレツイスト角α[°]は、
46<α<2φ×0.25+125 ・・・(4a)
となるようにし、所望のλ出射角2φを与えたとき、第1の波長板13bのツイスト角β[°]は、
2φ×0.25−5<β<2φ×0.6+60 ・・・(5a)
となるようにする。
【0042】
次いで、第2の波長板13bのプレツイスト角α[°]は、
2φ×0.54+27<α<2φ×0.45+105 ・・・(6a)
となるようにする。そして、第2の波長板13bのツイスト角β[°]は、
0.8<(α+β)/(α+β)<1.4 ・・・(7)
の関係を満たすようにすることによって、
2φ×0.33−20<β<2φ×0.33+50 ・・・(8a)
が得られる。
【0043】
なお、上記で各パラメータα、α、β、βは、すべて符号をプラス(+)として説明したが、これらのパラメータはすべてマイナス(−)であってもよい。そのとき、上記(4a)、(5a)、(6a)および(8a)はそれぞれ、
2φ×0.25−125<α<−46 ・・・(4b)
2φ×0.6−60<β<2φ×0.25+5 ・・・(5b)
2φ×0.45−105<α<2φ×0.54−27 ・・・(6b)
2φ×0.33−50<β<2φ×0.33+20 ・・・(8b)
と表すことができ、(4b)、(5b)、(6b)、(7)および(8b)が満足するパラメータ値を与えるとよい。つまり、(4a)、(5a)、(6a)、(7)および(8a)全てを満足するかまたは、(4b)、(5b)、(6b)、(7)および(8b)全てを満足するように設計する。
【0044】
また、第1の波長板13aのリタデーション値Rdに関係する位相差(θ)が270[°]を中心とした値、第1の波長板13aのリタデーション値Rdに関係する位相差(θ)が180[°]を中心とした値であって、これらの位相差とλ出射角2φとの関係は、上記(1)〜(3)、(5a)、(6a)、(8)より、
|α−(A・θ+B・θ+C・θ+D・θ+E)|<30 ・・・(9a)
を満たすものである。ただし、
A=−4.26×10−3+1.32×10−6×(2φ−102)
B=5.78×10−2−2.39×10−7×(2φ−553)
C=2.17−7.67×10−4×(2φ−99)
D=−1.05×10+2.03×10−4×(2φ−285)
E=30.0+0.083×(2φ−56)
である。
【0045】
なお、αがマイナス(−)となる場合、
|α+(A・θ+B・θ+C・θ+D・θ+E)|<30 ・・・(9b)
を満たす。ただし、このときのA、B、C、DおよびEは、上記の値と同じである。
【0046】
図3は、上記(9a)および(9b)の関係式について、θとθの組み合わせに対して、A・θ+B・θ+Cθ+D・θ+Eの値を示す分布図である。λ出射角2φが決まってθおよびθが決まることによって、A・θ+B・θ+Cθ+D・θ+Eの値が決まり、(9a)または(9b)を満たすように第1の波長板のプレツイスト角度αを決定する。例えば、(θ,θ)=(270,180)、2φ=90°に設定する場合、A・θ+B・θ+Cθ+D・θ+Eの値が約113[°]であり、これより79<α<139の範囲でαを設定するとよい。なお、このときの位相差θとθを決定する波長は533nmとしたものである。
【0047】
3. λ出射角2φ=90[°]とするときの設定例(1)
次に、具体的に、これらの条件の一つである(1)〜(3)、(4a)、(5a)、(6a)、(7)、(8a)、(9a)を満たす、プレツイスト角α、α、およびツイスト角β、β、がいずれもプラス(+)となる場合について例示して説明する。また、(1)〜(3)、(4b)、(5b)、(6b)、(7)、(8b)、(9b)を満たす、プレツイスト角α、α、およびツイスト角β、β、がいずれもマイナス(−)となる場合は、下記説明の好ましいパラメータ範囲の符号をそれぞれマイナス(−)にするとよい。まず、図4は、第1の波長板13aのプレツイスト角αを変化させたとき、上記(A)、(B)の条件を満たす範囲を示す分布図である。なお、このときλ出射角2φを90[°]とする。この条件を満たす広帯域波長板は、光ヘッド装置に適用する場合、BDおよびDVD用の波長の直線偏光で入射する光に対し円偏光に近い偏光状態となって出射するとともに、CD用の波長の直線偏光で入射する光に対して直線偏光に近い偏光状態となって出射する。
【0048】
図4の横軸は、第1の波長板13aの厚さd(単位[μm])であり、縦軸は第2の波長板13bの厚さd(単位[μm])を示すものである。また、前述のように屈折率異方性Δnとの積によってそれぞれの条件におけるリタデーション値RdおよびRdを求めることができる。ここで、まず、プレツイスト角αを80.0〜120.0[°]の範囲で変化させる。プレツイスト角αおよびλ出射角2φ(=90[°])が決まると、(5a)、(6a)、(7)、(8a)の条件によりプレツイスト角α、およびツイスト角β、βの取り得る範囲が決まる。そして、これらα、βおよびβの取り得る全ての範囲における各条件によって、上記(A)、(B)を満たすプレツイスト角αは、図4の座標(d,d)上つまり、図4に示す厚さdと厚さdの任意の組み合わせにおいて、それぞれ取り得るαの範囲が異なってくる。なお、厚さdと厚さdとから得られるリタデーション値Rd、Rdが(1)〜(3)の条件を満たさないと上記(A)、(B)は得られない。
【0049】
また、図4において各領域は、各厚さの座標(d,d)におけるαの取り得る範囲のうちの中心値(α1cとする)の分布を示すものである。また、この中心値α1cが、90〜120[°]の範囲では、αの取り得る値の範囲が、α1c±20[°]程度と比較的、広い角度のマージンを有する。しかし、それ以外の中心値α1cの領域はαの取り得る値の範囲が、α1c±10[°]程度と、比較的狭い角度のマージンとなるかまたは、αの解が得られない。ここでは、少なくともαの解が得られない厚さdと厚さdとの組合せの領域について「解なし」とする。
【0050】
このように、図4に示す範囲のうち、4隅の座標(d,d)に近づくにつれてα1cの角度のマージンが狭くなるとともに上記(A)および(B)を満たすα、βおよびβの値が狭い範囲に限られる。そして、4隅、つまり(d,d)=(7.6,5.3)、(7.6,7.1)、(10.2,5.3)、(10.2,7.1)を含む領域ではα、βおよびβにいずれの値を与えても上記(A)および(B)の条件を満たさない。したがって、図4において解が得られるように厚さdおよび厚さdを設定するとよい。
【0051】
図5は、第1の波長板13aのツイスト角βを変化させたとき、上記(A)、(B)の条件を満たす範囲を示す分布図である。同様に、λ出射角2φを90[°]とする。図5の横軸および縦軸は、図4と同様に厚さd(単位[μm])厚さd(単位[μm])を示すものである。ここで、まず、ツイスト角βを30.0〜80.0[°]の範囲で変化させる。そして、(4a)、(6a)、(7)、(8a)の条件によりプレツイスト角α、α、およびツイスト角βの取り得る範囲が決まる。そして、これらα、αおよびβの取り得る全ての範囲における各条件によって、上記(A)、(B)を満たすツイスト角βは、図5の座標(d,d)上において、それぞれ取り得るβの範囲が異なってくる。
【0052】
また、図5において各領域は、各厚さの座標(d,d)におけるβの取り得る範囲のうちの中心値(β1cとする)の分布を示すものである。また、この中心値β1cが、35〜70[°]の範囲では、βの取り得る値の範囲が、β1c±20[°]程度と比較的、広い角度のマージンを有する。しかし、それ以外の中心値β1cの領域はβの取り得る値の範囲が、β1c±10[°]程度と、比較的狭い角度マージンとなるかまたは、βの解が得られない。ここでは、少なくともβの解が得られない厚さdと厚さdとの組合せの領域について「解なし」とする。
【0053】
このように、図5に示す範囲のうち、4隅の座標(d,d)に近づくにつれてβ1cの角度のマージンが狭くなるとともに上記(A)および(B)を満たすα、αおよびβの値が狭い範囲に限られる。そして、4隅、つまり(d,d)=(7.6,5.3)、(7.6,7.1)、(10.2,5.3)、(10.2,7.1)を含む領域ではα、αおよびβにいずれの値を与えても上記(A)および(B)の条件を満たさない。したがって、図5において解が得られるように厚さdおよび厚さdを設定するとよい。
【0054】
図6は、第2の波長板13bのプレツイスト角αを変化させたとき、上記(A)、(B)の条件を満たす範囲を示す分布図である。同様に、λ出射角2φを90[°]とする。図6の横軸および縦軸は、図4と同様に厚さd(単位[μm])厚さd(単位[μm])を示すものである。ここで、まず、プレツイスト角αを80.0〜120.0[°]の範囲で変化させる。そして、(4a)、(5a)、(7)、(8a)の条件によりプレツイスト角α、およびツイスト角β、βの取り得る範囲が決まる。そして、これらα、βおよびβの取り得る全ての範囲における各条件によって、上記(A)、(B)を満たすプレツイスト角αは、図6の座標(d,d)上において、それぞれ取り得るαの範囲が異なってくる。
【0055】
また、図6において各領域は、各厚さの座標(d,d)におけるαの取り得る範囲のうちの中心値(α2cとする)の分布を示すものである。また、この中心値α2cが、100〜120[°]の範囲では、αの取り得る値の範囲が、α2c±20[°]程度と比較的、広い角度のマージンを有する。しかし、それ以外の中心値α2cの領域はαの取り得る値の範囲が、α2c±10[°]程度と、比較的狭い角度マージンとなるかまたは、αの解が得られない。ここでは、少なくともαの解が得られない厚さdと厚さdとの組合せの領域について「解なし」とする。
【0056】
このように、図6に示す範囲のうち、4隅の座標(d,d)に近づくにつれてα2cの角度のマージンが狭くなるとともに上記(A)および(B)を満たすα、βおよびβの値が狭い範囲に限られる。そして、4隅、つまり(d,d)=(7.6,5.3)、(7.6,7.1)、(10.2,5.3)、(10.2,7.1)を含む領域ではα、βおよびβにいずれの値を与えても上記(A)および(B)の条件を満たさない。したがって、図6において解が得られるように厚さdおよび厚さdを設定するとよい。
【0057】
図7は、第2の波長板13bのツイスト角βを変化させたとき、上記(A)、(B)の条件を満たす範囲を示す分布図である。なお、同様にλ出射角2φを90[°]とする。図7の横軸および縦軸は、図4と同様に厚さd(単位[μm])厚さd(単位[μm])を示すものである。ここで、まず、ツイスト角βを30.0〜70.0[°]の範囲で変化させる。そして、(4a)、(5a)、(6a)の条件によりプレツイスト角α、αおよびツイスト角βの取り得る範囲が決まる。そして、これらα、αおよびβの取り得る全ての範囲における各条件によって、上記(A)、(B)を満たすプレツイスト角βは、図7の座標(d,d)上において、それぞれ取り得るβの範囲が異なってくる。
【0058】
また、図7において各領域は、各厚さの座標(d,d)におけるβの取り得る範囲のうちの中心値(β2cとする)の分布を示すものである。また、この中心値β2cが、15〜65[°]の範囲では、βの取り得る値の範囲が、β2c±20[°]程度と比較的、広い角度のマージンを有する。しかし、それ以外の中心値β2cの領域はβの取り得る値の範囲が、β2c±10[°]程度と、比較的狭い角度マージンとなるかまたは、βの解が得られない。ここでは、少なくともβの解が得られない厚さdと厚さdとの組合せの領域について「解なし」とする。
【0059】
このように、図7に示す範囲のうち、4隅の座標(d,d)に近づくにつれてβ2cの角度のマージンが狭くなるとともに上記(A)および(B)を満たすα、αおよびβの値が狭い範囲に限られる。そして、4隅、つまり(d,d)=(7.6,5.3)、(7.6,7.1)、(10.2,5.3)、(10.2,7.1)を含む領域ではα、αおよびβにいずれの値を与えても上記(A)および(B)の条件を満たさない。したがって、図7において解が得られるように厚さdおよび厚さdを設定するとよい。
【0060】
4. 785nm波長帯の楕円率κが0.5(以下)のときのλ出射角範囲(1)
設計例1では、λ出射角2φを90[°]として各パラメータを調整したが、λ出射角2φは任意の値に設定することができる。表1は、例として、λ出射角2φを変化させたとき、785nm波長帯の楕円率が0.5つまり、上記(B)の条件を満たす最大値とし、さらに上記(A)の条件を満たすα、α、βおよびβの値を示すものである。
【0061】
【表1】

【0062】
表1より、λ出射角2φが0〜180[°]では、各パラメータの値を設定することによって上記(A)の条件を満足することができる。なお、λ出射角2φが0〜180[°]から外れる場合、上記(A)の条件を満足することができない。ここで、プレツイスト角α、αおよび、ツイスト角度β、βは、それぞれプラス(+)の符号としたが、いずれもマイナス(−)の符号であっても成立はする。このようにいずれもマイナス(−)の符号とするとき、λ出射角2φもマイナス(−)となるので、0〜−180[°]の範囲に設定しても上記(A)、(B)の条件を満足する。つまり、(A)の条件を満たすとともに、どのような値のλ出射角2φを設定したとしても、この2枚の波長板の各パラメータを調整することで(B)の条件も満たすことができる。
【0063】
5. 785nm波長帯の楕円率κが0.5(以下)のときのλ出射角範囲(2)
表2は、例として、λ出射角2φを変化させたとき、785nm波長帯の楕円率が0.5つまり、上記(B)の条件を満たす最大値とし、さらに上記(A)の条件を満たすα、α、βおよびβの値を示す、表1とは異なる設計例を示すものである。
【0064】
【表2】

【0065】
表2より、λ出射角2φが−30〜165[°]では、各条件の値を設定することによって上記(A)を満足することができる。なお、λ出射角2φが−30〜165[°]から外れる場合、上記(A)の条件を満足することができない。ここで、プレツイスト角α、αおよび、ツイスト角度β、βは、それぞれプラス(+)の符号としたが、いずれもマイナス(−)の符号であっても成立はする。このようにいずれもマイナス(−)の符号とするとき、λ出射角2φもマイナス(−)となるので、−165〜30[°]の範囲に設定しても上記(A)、(B)の条件を満足する。つまり、(A)の条件を満たすとともに、どのような値のλ出射角2φを設定したとしても、この2枚の波長板の各パラメータを調整することで(B)の条件も満たすことができる。
【0066】
6. プレツイスト角(α,α)およびツイスト角(β,β)の設定(2)
これまで、上記(A)の条件で楕円率κ、κが0.65以上としたが、好ましい範囲として、0.8以上である条件を考える。これらを整理して、
(C)405nm波長帯の楕円率κおよび660nm波長帯の楕円率κが0.8以上、
(D)785nm波長帯の楕円率κが0.5以下、
となる2つ条件を設定する。なお、(D)は上記(B)と同じ条件である。
【0067】
次に、具体的に、これらの条件(C)、(D)に基づいて各パラメータを設定する。このうち、上記(5a)のツイスト角βの範囲を変えて、
2φ×0.66<β<2φ×0.66+25 ・・・ (5c)
とし、上記(5c)に加え、(4a)、(6a)、(7)、(8a)は同じ範囲で(C)、(D)が成立する。また、第1の波長板13aのリタデーション値Rdに関係する位相差(θ)が270[°]を中心とした値、第1の波長板13aのリタデーション値Rdに関係する位相差(θ)が180[°]を中心とした値であって、これらの位相差とλ出射角2φとの関係は、上記(1)〜(3)、(5c)、(6a)、(8a)より、
|α−(F・θ+G・θ+H)|<10 ・・・(9c)
を満たすものである。ただし、
F=3.3×10−3×2φ−1.4×10−1
G=−1.4×10−4×(2φ−85)−3.0×10−1
H=2.1×10−2×(2φ−103)+126.0、
である。
【0068】
なお、αがマイナス(−)となる場合、
|α+(F・θ+G・θ+H)|<10 ・・・(9d)
を満たす。ただし、このときのF、GおよびHは、上記の値と同じである。
【0069】
図8は、上記(9c)および(9d)の関係式について、θとθの組み合わせに対して、F・θ+G・θ+Hの値を示す分布図である。λ出射角2φが決まってθおよびθが決まることによって、F・θ+G・θ+Hの値が決まり、(9c)および(9d)を満たすように第1の波長板のプレツイスト角度αを決定する。例えば、(θ,θ)=(270,180)に設定する場合、F・θ+G・θ+Hの値が約113[°]であり、これより103<α<123の範囲でαを設定するとよい。なお、このときの位相差θとθを決定する波長は533nmとしたものである。
【0070】
なお、上記で各パラメータα、α、β、βは、すべて符号をプラス(+)として説明したが、これらのパラメータはすべてマイナス(−)であってもよい。そのとき、上記(5c)は、
2φ×0.66−25<β<2φ×0.66 ・・・(5d)
と表すことができ、(4b)、(5d)、(6b)、(7)および(8b)が満足するパラメータ値を与えるとよい。つまり、(4a)、(5c)、(6a)、(7)および(8a)全てを満足するかまたは、(4b)、(5d)、(6b)、(7)および(8b)全てを満足するように設計する。
【0071】
7. λ出射角2φ=90[°]とするときの設定例(2)
次に、具体的に、これらの条件(1)〜(3)、(4a)、(5c)、(6a)、(7)、(8a)、(9c)を満たすプレツイスト角α、α、およびツイスト角β、β、について例示して説明する。まず、図9は、第1の波長板13aのプレツイスト角αを変化させたとき、上記(C)、(D)の条件を満たす範囲を示す分布図である。なお、このときλ出射角2φを90[°]とする。この条件を満たす広帯域波長板は、光ヘッド装置に適用する場合、BDおよびDVD用の波長の光に対し円偏光に近い偏光状態を示すとともに、CD用の波長の光に対して直線偏光に近い偏光状態となる。
【0072】
図9の横軸は、第1の波長板13aの厚さd(単位[μm])であり、縦軸は第2の波長板13bの厚さd(単位[μm])を示すものである。また、前述のように屈折率異方性Δnとの積によってそれぞれの条件におけるリタデーション値RdおよびRdを求めることができる。ここで、まず、プレツイスト角αを80.0〜120.0[°]の範囲で変化させる。プレツイスト角αおよびλ出射角2φ(=90[°])が決まると、(5c)、(6a)、(7)、(8a)の条件によりプレツイスト角α、およびツイスト角β、βの取り得る範囲が決まる。そして、これらα、βおよびβの取り得る全ての範囲における各条件によって、上記(C)、(D)を満たすプレツイスト角αは、図9の座標(d,d)上つまり、図9に示す厚さdと厚さdの任意の組み合わせにおいて、それぞれ取り得るαの範囲が異なってくる。なお、厚さdと厚さdとから得られるリタデーション値Rd、Rdが(1)〜(3)の条件を満たさないと上記(C)、(D)は得られない。
【0073】
また、図9において各領域は、各厚さの座標(d,d)におけるαの取り得る範囲のうちの中心値(α1cとする)の分布を示すものである。また、この中心値α1cが、105.0〜117.5[°]の範囲では、αの取り得る値の範囲が、α1c±15[°]程度と比較的、広い角度のマージンを有する。しかし、それ以外の中心値α1cの領域はαの取り得る値の範囲が、α1c±5[°]程度と、比較的狭い角度のマージンとなるかまたは、αの解が得られない。ここでは、少なくともαの解が得られない厚さdと厚さdとの組合せの領域について「解なし」とする。
【0074】
このように、図9に示す範囲のうち、4隅の座標(d,d)に近づくにつれてα1cの角度のマージンが狭くなるとともに上記(A)および(B)を満たすα、βおよびβの値が狭い範囲に限られる。そして、4隅、つまり(d,d)=(8.4,5.8)、(8.4,6.8)、(9.6,5.8)、(9.6,6.8)を含む領域ではα、βおよびβにいずれの値を与えても上記(A)および(B)の条件を満たさない。したがって、図9において解が得られるように厚さdおよび厚さdを設定するとよい。
【0075】
図10は、第1の波長板13aのツイスト角βを変化させたとき、上記(C)、(D)の条件を満たす範囲を示す分布図である。なお、同様にλ出射角2φを90[°]とする。図10の横軸および縦軸は、図9と同様に厚さd(単位[μm])厚さd(単位[μm])を示すものである。ここで、まず、ツイスト角βを30.0〜60.0[°]の範囲で変化させる。そして、(4a)、(6a)、(7)、(8a)の条件によりプレツイスト角α、α、およびツイスト角βの取り得る範囲が決まる。そして、これらα、αおよびβの取り得る全ての範囲における各条件によって、上記(C)、(D)を満たすツイスト角βは、図10の座標(d,d)上において、それぞれ取り得るβの範囲が異なってくる。
【0076】
また、図10において各領域は、各厚さの座標(d,d)におけるβの取り得る範囲のうちの中心値(β1cとする)の分布を示すものである。また、この中心値β1cが、42.5〜60.0[°]の範囲では、βの取り得る値の範囲が、β1c±15[°]程度と比較的、広い角度のマージンを有する。しかし、それ以外の中心値β1cの領域はβの取り得る値の範囲が、β1c±5[°]程度と、比較的狭い角度マージンとなるかまたは、βの解が得られない。ここでは、少なくともβの解が得られない厚さdと厚さdとの組合せの領域について「解なし」とする。
【0077】
このように、図10に示す範囲のうち、4隅の座標(d,d)に近づくにつれてβ1cの角度のマージンが狭くなるとともに上記(C)および(D)を満たすα、αおよびβの値が狭い範囲に限られる。そして、4隅、つまり(d,d)=(8.4,5.8)、(8.4,6.8)、(9.6,5.8)、(9.6,6.8)を含む領域ではα、αおよびβにいずれの値を与えても上記(C)および(D)の条件を満たさない。したがって、図10において解が得られるように厚さdおよび厚さdを設定するとよい。
【0078】
図11は、第2の波長板13bのプレツイスト角αを変化させたとき、上記(C)、(D)の条件を満たす範囲を示す分布図である。なお、同様にλ出射角2φを90[°]とする。図11の横軸および縦軸は、図9と同様に厚さd(単位[μm])厚さd(単位[μm])を示すものである。ここで、まず、プレツイスト角αを80.0〜110.0[°]の範囲で変化させる。そして、(4a)、(5c)、(7)、(8a)の条件によりプレツイスト角α、およびツイスト角β、βの取り得る範囲が決まる。そして、これらα、βおよびβの取り得る全ての範囲における各条件によって、上記(C)、(D)を満たすプレツイスト角αは、図6の座標(d,d)上において、それぞれ取り得るαの範囲が異なってくる。
【0079】
また、図11において各領域は、各厚さの座標(d,d)におけるαの取り得る範囲のうちの中心値(α2cとする)の分布を示すものである。また、この中心値α2cが、95.0〜110.0[°]の範囲では、αの取り得る値の範囲が、α2c±15[°]程度と比較的、広い角度のマージンを有する。しかし、それ以外の中心値α2cの領域はαの取り得る値の範囲が、α2c±5[°]程度と、比較的狭い角度マージンとなるかまたは、αの解が得られない。ここでは、少なくともαの解が得られない厚さdと厚さdとの組合せの領域について「解なし」とする。
【0080】
このように、図11に示す範囲のうち、4隅の座標(d,d)に近づくにつれてα2cの角度のマージンが狭くなるとともに上記(C)および(D)を満たすα、βおよびβの値が狭い範囲に限られる。そして、4隅、つまり(d,d)=(8.4,5.8)、(8.4,6.8)、(9.6,5.8)、(9.6,6.8)を含む領域ではα、βおよびβにいずれの値を与えても上記(C)および(D)の条件を満たさない。したがって、図11において解が得られるように厚さdおよび厚さdを設定するとよい。
【0081】
図12は、第2の波長板13bのツイスト角βを変化させたとき、上記(C)、(D)の条件を満たす範囲を示す分布図である。なお、同様にλ出射角2φを90[°]とする。図12の横軸および縦軸は、図9と同様に厚さd(単位[μm])厚さd(単位[μm])を示すものである。ここで、まず、ツイスト角βを30.0〜70.0[°]の範囲で変化させる。そして、(4a)、(5c)、(6a)の条件によりプレツイスト角α、αおよびツイスト角βの取り得る範囲が決まる。そして、これらα、αおよびβの取り得る全ての範囲における各条件によって、上記(C)、(D)を満たすプレツイスト角βは、図12の座標(d,d)上において、それぞれ取り得るβの範囲が異なってくる。
【0082】
また、図12において各領域は、各厚さの座標(d,d)におけるβの取り得る範囲のうちの中心値(β2cとする)の分布を示すものである。また、この中心値β2cが、40.0〜65.0[°]の範囲では、βの取り得る値の範囲が、β2c±15[°]程度と比較的、広い角度のマージンを有する。しかし、それ以外の中心値β2cの領域はβの取り得る値の範囲が、β2c±5[°]程度と、比較的狭い角度マージンとなるかまたは、βの解が得られない。ここでは、少なくともβの解が得られない厚さdと厚さdとの組合せの領域について「解なし」とする。
【0083】
このように、図12に示す範囲のうち、4隅の座標(d,d)に近づくにつれてβ2cの角度のマージンが狭くなるとともに上記(C)および(D)を満たすα、αおよびβの値が狭い範囲に限られる。そして、4隅、つまり(d,d)=(8.4,5.8)、(8.4,6.8)、(9.6,5.8)、(9.6,6.8)を含む領域ではα、αおよびβにいずれの値を与えても上記(C)および(D)の条件を満たさない。したがって、図12において解が得られるように厚さdおよび厚さdを設定するとよい。
【0084】
次に、λ出射角2φを変化させ、2φが取り得る範囲について説明する。上記では、2φ=90[°]と固定して計算した例を示したが、上記(C)および(D)の条件を満たすとともに、一定の範囲のλ出射角2φを与えることができる。
【0085】
8. 785nm波長帯の楕円率κが0.5(以下)のときのλ出射角範囲(3)
表3は、例として、λ出射角2φを変化させたとき、785nm波長帯の楕円率が0.5つまり、上記(D)の条件を満たす最大値とし、さらに上記(C)の条件を満たすα、α、βおよびβの値を示すものである。
【0086】
【表3】

【0087】
表3より、λ出射角2φが30〜135[°]では、各条件の値を設定することによって上記(C)を満足することができる。しかし、λ出射角2φが30[°]より小さい値とするかまたは、135[°]より大きい値にしようとすると、660nm波長帯の光に対する楕円率が低くなり、上記(C)および(D)を同時に満足する特性を得ることができなくなる。したがって、λ出射角2φは30〜135[°]の範囲に設定するとよい。ここで、プレツイスト角α、αおよび、ツイスト角度β、βは、それぞれプラス(+)の符号としたが、いずれもマイナス(−)の符号であっても成立はする。このようにいずれもマイナス(−)の符号とするとき、λ出射角2φもマイナス(−)となるので、−135〜−30[°]の範囲に設定しても上記(C)、(D)の条件を満足する。
【0088】
(第2の実施形態)
第2の実施形態として、第1の実施形態にかかる広帯域波長板10を用いた光ヘッド装置について説明する。図13は、第1の実施形態にかかる光ヘッド装置30の模式図である。半導体レーザ等の光源31から出射される405nm波長帯の光は、回折素子34、ダイクロイックプリズム37、偏光ビームスプリッタ38、ダイクロイックプリズム39を透過し、コリメータレンズ40で平行光となって、本願発明の広帯域波長板10によって円偏光となる。円偏光となった光は、ダイクロイックプリズム41を透過し、ミラー42で反射され、対物レンズ44によってBD等の光ディスク45の情報記録面に集光される。復路の光は往路の円偏光とは逆方向の円偏光となって広帯域波長板10を出射する復路の光は往路の直線偏光に対して直交する直線偏光となり、偏光ビームスプリッタ38で反射して光検出器46に到達する。光検出器46では、光ディスク45で反射された光からピット情報を検出することで光ディスク45に記録された情報の読み出しを行う。
【0089】
同様に、半導体レーザ等の光源32から出射される660nm波長帯の光は、回折素子
35を透過し、ダイクロイックプリズム37で反射され、偏光ビームスプリッタ38、ダイクロイックプリズム39を透過し、コリメータレンズ40で平行光となって、本願発明の広帯域波長板10によって円偏光となる。円偏光となった光は、ダイクロイックプリズム41で反射され、対物レンズ43によってDVD等の光ディスク45の情報記録面に集光される。復路の光は往路の円偏光とは逆方向の円偏光となって広帯域波長板10を出射する復路の光は往路の直線偏光に対して直交する直線偏光となり、偏光ビームスプリッタ38で反射して光検出器46に到達する。
【0090】
そして、半導体レーザ等の光源32から出射される785nm波長帯の光は、回折素子36を透過し、入射光の一部を透過、一部を反射するハーフミラー等を含むビームスプリッタ47を透過し、ダイクロイックプリズム39で反射され、コリメータレンズ40で平行光となって、本願発明の広帯域波長板10によってλ出射角2φの角度をなした直線偏光となる。直線偏光の光は、ダイクロイックプリズム41で反射され、対物レンズ43によってDVD等の光ディスク45の情報記録面に直線偏光の状態で集光される。復路の光は広帯域波長板10に入射する往路と同じ方向の直線偏光となり、ダイクロイックプリズム39で反射され、ビームスプリッタ47で反射され光検出器48に到達する。
【0091】
このように、広帯域波長板10を用いることで、405nm波長帯、660nm波長帯の光に対して良好な円偏光を得ることができ、785nm波長帯の光に対して直線偏光とすることができる光ヘッド装置を実現できるので、光ディスクに対する記録・再生の品質が高く、かつ小型化された光ヘッド装置を実現することができる。
【0092】
(実施例)
広帯域波長板10の作製方法について説明する。透明基板11aとして厚さ0.5mmの石英ガラス基板の一面にポリイミドを塗布し、ラビングにより水平配向処理をして配向膜12aを得る。次に、配向膜12aの上に図示しない直径8.7μmのSiOビーズを10個/mmの密度でスペーサとして散布する。その後、同様に図示しないポリイミド配向膜付き石英ガラス基板を用意する。このとき、配向膜12aの水平配向方向と図示しないポリイミド配向膜付き石英ガラス基板の水平配向方向とがなす角度(=ツイスト角度β)が90°となるように対向させる。そして、図示しないポリイミド配向膜付き石英ガラス基板のポリイミド配向膜上を離散化処理する。
【0093】
さらに、ポリイミド配向膜付き石英ガラスの外周部に図示しない熱硬化型のエポキシシール材を印刷する。対向させた配向膜付ガラス基板と離散化処理されたポリイミド配向膜付き石英ガラス基板をエポキシシール材で固定し、2枚のガラス基板間のギャップが8.7μmの液晶セルを形成する。このように対向させた2枚のガラス基板の8.7μmのスペースに液晶分子が90°のツイストするように調整されたコレスティック液晶モノマーを注入し、挟持させる。
【0094】
液晶材料は、光重合開始剤としてベンゾインニソプロピルエーテルが1%添加されたUV硬化性の液晶モノマー組成物である。また、注入した高分子液晶モノマーは重合後のポリマーにおける屈折率異方性Δnが405nmの波長の光で0.047、660nmの波長の光で0.039、そして785nmの波長の光で0.038である。
【0095】
波長365nmのUV光を液晶材料全体に照射し、液晶モノマー組成物全体を重合・固化する。30分間140℃の熱処理をして、厚さ8.7μmの水平配向した高分子液晶層を形成する。その後、上記の離型化処理されたポリイミド配向膜付き石英ガラス基板を除去する。これより、石英ガラス基板11a上の配向膜12aの上に水平配向した8.7μmの厚さでツイスト角β=90°の高分子液晶からなる第1の波長板13aが形成される。
【0096】
上記と同様のプロセスにより、石英ガラス基板11b上の配向膜12bの上に6.2μmの厚さで、ツイスト角β=43°の高分子液晶からなる第2の波長板13bを形成する。
【0097】
作製した第1の波長板13aに入射する直線偏光の方向14を基準として直線偏光の入射する側にある第1の波長板13a液晶分子の長軸方向15aとなす角度であるプレツイスト角αを110°とする。第1の波長板13aに入射する直線偏光方向14を基準として第2の波長板13bの第1の波長板13a側にある液晶分子の長軸方向15bとなす角度αが90°となるように配置する。波長板13aの上にUV接着剤を滴下し、1000rpmの回転速度で20秒間、5000rpmで100秒間回転させ、UV接着剤の厚さを5μmとする。石英ガラス基板11bと一体化された波長板13bを積層し、挟持されたUV接着剤領域に5000mJ、365nmのUV光を照射することにより接着剤11cとし、広帯域波長板10を形成する。
【0098】
上記各パラメータの条件における実施例を実施例1とし、整理して表4に示す、また、同じ製造方法を用いて、d、d、α、β、αおよびβを変化された実施例として、同様に実施例2〜実施例4として表4に示す。なお、実施例1〜3は、ポリマーの屈折率異方性Δnが上記に示す特性を有する材料を用い、実施例4は、ポリマーの屈折率異方性Δnが405nmの波長の光で0.040、660nmの波長の光で0.035、そして785nmの波長の光で0.034となる材料を用いる。
【0099】
【表4】

【0100】
実施例1について、405nm波長帯、660nm波長帯および785nm波長帯の直線偏光を入射したときの楕円率、および785nm波長帯における方位角(λ出射角)の結果を図14に示す。なお、このときのλ出射角2φの設定値は、60[°]である。図14(a)、図14(b)に示すように405nm波長帯および660nm波長帯においていずれも楕円率が0.8以上となるとともに、図14(c)に示すように785nm波長帯において楕円率が0.5以下となる。さらに図14(d)に示すように785nm波長帯においてλ出射角2φの設定が60[°]に対して60±5[°]の範囲となり、それぞれの波長帯において所望の偏光状態が得られていることが確認できる。
【0101】
実施例2について、405nm波長帯、660nm波長帯および785nm波長帯の直線偏光を入射したときの楕円率、および785nm波長帯における方位角(λ出射角)の結果を図15に示す。なお、このときのλ出射角2φの設定値は、90[°]である。図15(a)、図15(b)に示すように405nm波長帯および660nm波長帯においていずれも楕円率が0.8以上となるとともに、図15(c)に示すように785nm波長帯において楕円率が0.5以下となる。さらに図15(d)に示すように785nm波長帯においてλD出射角2φの設定が90[°]に対して90±1[°]の範囲となり、それぞれの波長帯において所望の偏光状態が得られていることが確認できる。λD出射角が、90°となっているため、ディスクの複屈折が、ディスクの円周方向、もしくは、直径方向に発生している場合に、特に複屈折対策として有効となる。
【0102】
実施例3について、405nm波長帯、660nm波長帯および785nm波長帯の直線偏光を入射したときの楕円率、および785nm波長帯における方位角(λ出射角)の結果を図16に示す。なお、このときのλ出射角2φの設定値は、90[°]である。図16(a)、図16(b)に示すように405nm波長帯および660nm波長帯においていずれも楕円率が0.65以上となるとともに、図16(c)に示すように785nm波長帯において楕円率が0.5以下となる。さらに図16(d)に示すように785nm波長帯においてλ出射角2φの設定が90[°]に対して90±1[°]の範囲となり、それぞれの波長帯において所望の偏光状態が得られていることが確認できる。λ出射角が、90°となっており、実施例1、2の波長板と比較して、さらに、785nmの楕円率が低下しているため、ディスクの複屈折対策としての有効性が向上する。
【0103】
実施例4について、405nm波長帯、660nm波長帯および785nm波長帯の直線偏光を入射したときの楕円率、および785nm波長帯における方位角(λ出射角)の結果を図17に示す。なお、このときのλ出射角2φの設定値は、90[°]である。図17(a)、図17(b)に示すように405nm波長帯および660nm波長帯においていずれも楕円率が0.65以上となるとともに、図17(c)に示すように785nm波長帯において楕円率が0.5以下となる。さらに図17(d)に示すように785nm波長帯においてλ出射角2φの設定が90[°]に対して90±1[°]の範囲となり、それぞれの波長帯において所望の偏光状態が得られていることが確認できる。
【0104】
また、実施例3および実施例4は、とくに785nm波長帯の光に対する楕円率を0.35以下にすることができる。これにより、広帯域波長板を光ヘッド装置に配置した場合、CDの複屈折性による記録再生の品質の劣化を抑制する場合において効果的である。さらに、405nm波長帯および660nm波長帯の光に対する楕円率を0.65以上とすることができるので、BDなどの高密度光記録媒体、DVDにおいても良好に記録再生ができ、さらに小型化となる光ヘッド装置を実現することができる。
【0105】
(比較例)
比較例として、405nm波長帯に対して9λ/4板、660nm波長帯に対して5λ/4板、785nm波長帯に対してλ板の機能を有する、ツイストしない(ツイスト角β,β=0[°])1枚または2枚の波長板を用いた広帯域波長板の特性を示す。具体的に、比較例1〜3それぞれに分散特性の異なる材料を用いて、表5に示し、各材料における最適な条件を表6に示す。なお、作製方法は、石英ガラス基板を対向させるとき、配向膜の配向方向が同じ方向となるように調整する以外は実施例と同じである。
【0106】
【表5】

【0107】
【表6】

【0108】
比較例1〜3の条件について、405nm波長帯、660nm波長帯および785nm波長帯の直線偏光を入射したときの楕円率、および785nm波長帯における方位角(λ出射角)の比較例の結果をそれぞれ図18〜図20に示す。図18(a)、図19(a)および図20(a)は、それぞれ比較例1〜3における405nm波長帯の楕円率、図18(b)、図19(b)および図20(b)は、それぞれ比較例1〜3における660nm波長帯の楕円率、図18(c)、図19(c)および図20(c)は、それぞれ比較例1〜3における785nm波長帯の楕円率を示すグラフである。また、図18(d)、図19(d)および図20(d)は、それぞれ比較例1〜3における785nm波長帯の方位角を示すグラフである。
【0109】
この結果より、比較例では、とくに405nm波長帯において楕円率0.65以上の特性を得ることができない。このため、この広帯域波長板を光ヘッド装置に配置したとき、CDの記録再生においてディスクの複屈折の影響を低減することはできても、BDのような高密度光記録媒体の記録再生の際、405nm波長帯の偏光状態が良好な円偏光とならないため、光利用効率が低下し、安定したな記録再生ができなくなる。また、785nm波長帯では、λ板の機能を有するため、方位角(λ出射角)は、0[°]近辺に固定されるものであって、本願発明の広帯域波長板のように自由にλ出射角を設定することはできない。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上のように、2枚の波長板を配して構成される広帯域波長板として各波長板のリタデーション値、プレツイスト角、ツイスト角をそれぞれ調整することにより、異なる波長帯域を有する波長λ、λおよびλ(λ<λ<λ)で入射する直線偏光に対し、λ、λの光は楕円率を高く円偏光に近い偏光状態にすることができ、λの光は楕円率が低い直線偏光に近い偏光状態で出射させることができる。さらに、この広帯域波長板を規格が異なる光ディスクの記録・再生をする光ヘッド装置に配置することで記録・再生の品質を高めた光ヘッド装置を実現することができ、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の広帯域波長板の断面模式図および波長板の各光学軸の角度など関係を示す平面模式図。
【図2】1/2波長板の機能を示す模式図。
【図3】λ出射角2φが90°となるときのθ,θの変化によるA・θ+B・θ+C・θ+D・θ+Eの分布図。
【図4】第1の波長板のプレツイスト角αが取り得る範囲の中間値(平均値)を示す分布図。
【図5】第1の波長板のツイスト角βが取り得る範囲の中間値(平均値)を示す分布図。
【図6】第1の波長板のプレツイスト角αが取り得る範囲の中間値(平均値)を示す分布図。
【図7】第1の波長板のツイスト角βが取り得る範囲の中間値(平均値)を示す分布図。
【図8】λ出射角2φが90°となるときのθ,θの変化によるF・θ+G・θ+Hの分布図。
【図9】第1の波長板のプレツイスト角αが取り得る範囲の中間値(平均値)を示す分布図。
【図10】第1の波長板のツイスト角βが取り得る範囲の中間値(平均値)を示す分布図。
【図11】第1の波長板のプレツイスト角αが取り得る範囲の中間値(平均値)を示す分布図。
【図12】第1の波長板のツイスト角βが取り得る範囲の中間値(平均値)を示す分布図。
【図13】本発明の広帯域波長板を用いた光ヘッド装置の模式図。
【図14】実施例1における各波長帯における楕円率または方位角(λ出射角)の特性。
【図15】実施例2における各波長帯における楕円率または方位角(λ出射角)の特性。
【図16】実施例3における各波長帯における楕円率または方位角(λ出射角)の特性。
【図17】実施例4における各波長帯における楕円率または方位角(λ出射角)の特性。
【図18】比較例1における各波長帯における楕円率または方位角(λ出射角)の特性。
【図19】比較例2における各波長帯における楕円率または方位角(λ出射角)の特性。
【図20】比較例3における各波長帯における楕円率または方位角(λ出射角)の特性。
【図21】従来の3波長の光を扱う光ヘッド装置の構成を示す模式図。
【図22】3波長の光を扱う光ヘッド装置の構成を示す模式図(特許文献1)。
【図23】3波長の光を扱う光ヘッド装置の構成を示す模式図(特許文献2)。
【符号の説明】
【0112】
10 広帯域波長板(本発明)
11a、11b 透明基板
11c 接着剤
12a、12b 配向膜
13a 第1の波長板
13b 第2の波長板
14 入射する光の偏光方向
15a 第1の波長板の光入射側の液晶分子の長軸方向
15b 第1の波長板の光出射側の液晶分子の長軸方向
16a 第2の波長板の光入射側の液晶分子の長軸方向
16b 第2の波長板の光出射側の液晶分子の長軸方向
20 1/2波長板
21 1/2波長板に入射する直線偏光の方向(第1の偏光方向)
22 1/2波長板か出射する直線偏光の方向(第2の偏光方向)
30、100、200、300 光ヘッド装置
31、101、201、301 光源(405nm波長帯)
32、102、202、302 光源(660nm波長帯)
33、103、203、303 光源(785nm波長帯)
34、35、36、104、105、106、204、205、206 回折素子
37、39、41、108、207、208、212、308、309 ダイクロイックプリズム
38、47、107、109、209 (偏光)ビームスプリッタ
40、110、111、210、310 コリメータレンズ
41、114、115、213 ミラー
43、44、116、117、214、215、313 対物レンズ
45、118、216、315 光ディスク
46、48、119、120、217、304、305、306 光検出器
112、113、211 1/4波長板
307 無偏光回折格子
311 偏光回折格子
312 (広帯域)波長板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の異なる帯域を有する3種の波長λ、λ、λ(λ<λ<λ)で入射する直線偏光について偏光状態を変える広帯域波長板において、
前記広帯域波長板は、光が入射する側から順に第1の波長板と第2の波長板が備えられ、
前記第1の波長板および前記第2の波長板は、液晶分子の長軸方向が厚さ方向に対してツイストされてなり、
前記第1の波長板に入射する前記直線偏光の方向を基準としたとき、前記第1の波長板に入射する直線偏光側の液晶分子の長軸方向とがなす角度、前記第1の波長板に入射する前記直線偏光の方向と前記第2の波長板の前記第1の波長板側にある液晶分子の長軸方向とがなす角度、との組み合わせまたは、前記第1の波長板に入射する直線偏光側の液晶分子の短軸方向とがなす角度、前記第1の波長板に入射する前記直線偏光の方向と前記第2の波長板の前記第1の波長板側にある液晶分子の短軸方向とがなす角度、との組み合わせをそれぞれ第1のプレツイスト角α[°]、第2のプレツイスト角をα[°]とし、
前記第1の波長板の液晶分子の厚さ方向に捩れるツイスト角をβ[°]、前記第2の波長板の液晶分子の厚さ方向に捩れるツイスト角をβ[°]とするとき、
前記広帯域波長板から出射する波長λの楕円率κおよび波長λの光の楕円率κが0.65以上となるとともに波長λの光の楕円率κが0.5以下となるように前記α、前記α、0とは異なる値の前記β、0とは異なる値の前記β、および、前記第1の波長板のリタデーション値Rdおよび前記第2の波長板のリタデーション値Rdが設定されている広帯域波長板。
【請求項2】
前記波長λで入射する直線偏光の方向と前記波長λで出射する光の方位角とがなす角度をλ出射角2φ[°]とするとき、
前記λ出射角2φは、いずれの値にも設定できる請求項1に記載の広帯域波長板。
【請求項3】
前記波長λは390〜420nmの波長範囲である405nm波長帯、前記波長λは640〜680nmの波長範囲である660nm波長帯、前記波長λは765〜805nmの波長範囲である785nm波長帯であり、
390〜805nmの帯域を有する波長をλとし、前記波長λにおける前記第1の波長板のリタデーション値をRd(λ)、前記波長λにおける前記第2の波長板のリタデーション値をRd(λ)とし、前記波長λに含まれる特定の波長を波長λ、波長λとするとき、
Rd(λ)=3λ/4 ・・・(1)
Rd(λ)=λ/2 ・・・(2)
1.0<Rd(λ)/Rd(λ)<2.0 ・・・(3)
の全てを満たす請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の広帯域波長板。
【請求項4】
光が入射する側からみて、前記第1の波長板に入射する前記直線偏光の方向を基準に反時計方向をプラスとするとき、
前記λ出射角2φ、前記第1の波長板のプレツイスト角α、前記第1の波長板のツイスト角β、前記第2の波長板のプレツイスト角α、前記第2の波長板のツイスト角βの関係が、
46<α<2φ×0.25+125 ・・・(4a)
2φ×0.25−5<β<2φ×0.6+60 ・・・(5a)
2φ×0.54+27<α<2φ×0.45+105 ・・・(6a)
0.8<(α+β)/(α+β)<1.4 ・・・(7)
2φ×0.33−20<β<2φ×0.33+50 ・・・(8a)
2φ×0.25−125<α<−46 ・・・(4b)
2φ×0.6−60<β<2φ×0.25+5 ・・・(5b)
2φ×0.45−105<α<2φ×0.54−27 ・・・(6b)
2φ×0.33−50<β<2φ×0.33+20 ・・・(8b)
のうち、(4a)、(5a)、(6a)、(7)、(8a)の全てを満たすかまたは、(4b)、(5b)、(6b)、(7)、(8b)の全てを満たす請求項3に記載の広帯域波長板。
【請求項5】
前記波長λ、前記波長λおよび前記波長λで入射する直線偏光の方向が互いに平行である請求項1〜4のいずれか1項に記載の広帯域波長板。
【請求項6】
異なる3種の波長の光を出射する少なくとも一つの光源と、
前記光源から出射する光を光記録媒体上に集光する対物レンズと、
前記光記録媒体から反射される光を検出する光検出器と、を備えた光ヘッド装置であって、前記光源と前記対物レンズとの間の光路中、または前記対物レンズと前記光検出器との間の光路中に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の広帯域波長板が配される光ヘッド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−67310(P2010−67310A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232236(P2008−232236)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】