説明

広帯域複数周波共用アンテナ

本発明は、UWBシステム等の広帯域をカバーできると共に、他のシステムとの干渉を抑制できる複数周波共用型のアンテナを提供することを目的としたものである。解決手段として、複数のエレメント部導体と、それらを電気的に連結する連結導体と、1つのエレメント部導体とこれに給電可能な給電部とを電気的に連結する給電線とを備え、各エレメント部導体を、連結導体によって順次ひとつなぎに連結する。とくに、エレメント部導体が、連結導体または給電線が連結された連結部を結ぶ線に対しておよそ対称な形状であり、各連結導体がおよそ直線状に配置されるものとし、また、各平板状導体の面部がおよそ鉛直に配置されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域特性を示し複数周波共用できるアンテナに関し、特に広帯域であって周波数帯域の一部にノッチを有した特性を示す広帯域複数周波共用アンテナに係る技術である。
【背景技術】
【0002】
基本的なアンテナとしては、ダイポールアンテナ、モノポールアンテナ、逆L型アンテナ、スリットアンテナなどが挙げられる。
ダイポールアンテナは、1/4波長の導体の棒を2本連結したものであり、FM放送や地上波TV用のアンテナなどに利用されている。
モノポールアンテナは、ダイポールアンテナの半分を切り出したものと見なせ、AM放送やトランシーバーや携帯電話用のアンテナなどに利用されている。
逆L型アンテナは、モノポールアンテナの変形であり、アンテナ素子を根元で折り曲げ、幅を広くしたものと見なせ、電波の波長に対し形状を小さく、かつ広帯域化しやすいため、コードレスホンや携帯電話用のアンテナに応用される。
スリットアンテナは、導体の途中に空いた細長い穴もアンテナを構成し、その穴の長さによってアンテナ特性が左右される特徴をもつ。
【0003】
UWB(ウルトラワイドバンド)システムで用いられる広帯域アンテナとしては、ダブルリッジガイドホーンアンテナなどに代表される立体構造のアンテナや、円板モノポールアンテナや各種形状の平面ダイポールアンテナが、非特許文献1などに提案されている。
一方で、UWBは3.1〜10.6[GHz]と広帯域の周波数帯をカバーするシステムであるために、5[GHz]帯などの他のシステムとの干渉を抑制する必要がある。
【非特許文献1】N.P.Agrawall, et.al., IEEE Trans. Ant. Prop., Vol.46, No.2, 1998
【0004】
ところで、複数の周波数を共用できるアンテナとするには、例えばそれぞれの共振周波数を有するアンテナを複数用意すればよい。しかしながら、これではアンテナ構成が比較的複雑になるなどの不便がある。そこで、1つのアンテナでありながら複数の周波数を共用できるのであれば、このような不便は解消されるが、各共振周波数での帯域は通常広帯域とはいえないものである。
【0005】
つまり、UWBシステムなどで用いられる広帯域をカバーすると共に、他のシステムとの干渉を抑制できる複数周波共用型の簡易構造のアンテナは、これまでなかった。
【0006】
例えば、スリットを設けた単純な構造のモノポールアンテナに関連しては、特許文献1、2などに開示があるが、広帯域特性と複数周波共用性については、従来技術では提供されていない。
【特許文献1】特開2002−290139号
【特許文献2】特開2003−37431号
【0007】
また、特許文献3には、UWBシステムを想定した広帯域アンテナ装置が開示されている。該開示では複数の異なる共振周波数を有する要素アンテナパターンを設ける構成が開示されているが、本構成は、本来ならば狭帯域であるアンテナを、多重共振を用いることでアンテナ広帯域化を図るものである。
すなわち、2つ以上の狭帯域の共振を重ねて広帯域化を図っているので、他のシステムとの干渉抑制やフィルタの機能を備えたものではない。また、給電構成が各要素アンテナパターンに必要であり、構造が複雑になる問題がある。
【特許文献3】特開2003−101342号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、UWBシステムなどの広帯域をカバーできると共に、他のシステムとの干渉を抑制できる複数周波共用型のアンテナを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、広帯域特性を有して、所望の複数周波数帯をカバーすると共に干渉する周波数帯を抑制可能なアンテナであって、複数のエレメント部導体と、エレメント部導体同士を電気的に連結する連結導体と、1つのエレメント部導体とこれに給電可能な給電部とを電気的に連結する給電線とを備え、各エレメント部導体が、仮想平面上で連結導体によって順次ひとつなぎに連結されたことを特徴とする平面モノポールアンテナ構造の広帯域複数周波共用アンテナを提供する。
【0010】
上記広帯域複数周波共用アンテナにおいて、エレメント部導体が、連結導体または給電線が連結された連結部を結ぶ線に対しておよそ対称な形状であり、各連結導体がおよそ直線状に配置されるように構成してもよい。
このようにすることによって、上記直線とは垂直な平面内においておよそ無指向性のアンテナ特性を有するようになる。
【0011】
また、エレメント部導体が、平板状又は線状であって、該平板状又は線状導体が互いに平行に、かつ線状導体は連結導体に対して略直角に配設されるように構成してもよい。エレメント部導体の構成を多様に変化させることにより、様々な周波数特性を有するアンテナの提供に寄与する。
【0012】
本発明は、上記の平板状導体がおよそ方形状であり、各平板状導体の面部がおよそ鉛直に配置される広帯域複数周波共用アンテナを提供することもできる。
このようにすることによって、簡易かつシンプルな構造となり、およそ水平面内無指向性のアンテナ特性を有するものとなる。
【0013】
上記広帯域複数周波共用アンテナにおいて、各エレメント部導体の間隔が調節可能としてもよい。このようにすることによって、簡単にアンテナ特性を変えることができる。
【0014】
また、前記仮想平面が少なくとも1枚の基板により実体的に構成されて、少なくともエレメント部導体又は連結導体のいずれかが該基板上の導体パターンにより形成してもよい。本構成は、製造が容易であり、耐久性、安定性に優れ、また小型化にも寄与する。
【0015】
連結部を軸中心にして、エレメント部導体を複数組み合わせることもできる。特に、広帯域複数周波共用平面モノポールアンテナを、連結部を軸中心にして前記仮想平面が直交するように2個組み合わせ、直交平面モノポールアンテナ構造を構成してもよい。
このようにすることによって、より良い無指向性を得ることができる。
【0016】
本発明では、前記広帯域複数周波共用平面モノポールアンテナにおいて、1つの仮想平面上のエレメント部導体及び連結導体を1枚の導体平板で構成し、該連結導体部位は導体平板に切り込み部を形成して構成することもできる。本構成は、製造が容易であり、低コスト化にも寄与する。
【0017】
さらに、本発明は、前記広帯域複数周波共用平面モノポールアンテナを2個配置して構成し、それぞれに給電線を備えて給電し、平面ダイポール構造の広帯域複数周波共用アン
テナを提供してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の広帯域複数周波共用平面モノポールアンテナの正面図である。
【図2】同、別実施例である。
【図3】同、別実施例である。
【図4】同、別実施例である。
【図5】共振特性を示すグラフである。
【図6】放射特性を示すグラフである。
【図7】本発明の広帯域複数周波共用平面モノポールアンテナの一実施例である。
【図8】同、他実施例である。
【図9】上部エレメント部導体を線状に構成した本発明の広帯域複数周波共用平面モノポールアンテナの正面図である。
【図10】本発明のアンテナを基板上に配置する構成の正面図である。
【図11】モノポールアンテナを直交させて構成した広帯域複数周波共用直交平面モノポールアンテナの斜視図である。
【図12】本発明のモノポールアンテナを1つの導体平板により構成する実施例である。
【図13】モノポールアンテナを2個配置して構成した広帯域複数周波共用平面ダイポールアンテナの正面図である。
【符号の説明】
【0019】
10:大板状導体、20:小板状導体、30:連結導体、41:給電線
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参考に説明する。
本発明の構成は、その主旨から逸脱しない限り適宜設計変更可能であり、細部については、上記文献の記載事項など従来公知の技術を適用できる。
また、一般的にアンテナは、その使用目的に応じた帯域や共振特性などを有するように設計するのが最適な実施となるので、以下に示す実施例が普遍的に最良な実施例であるとは限らない。
【0021】
図1は、本発明の広帯域複数周波共用平面モノポールアンテナの一例の正面図である。
ここでは、無限地板上にある広帯域複数周波共用平面モノポールアンテナを示している。例示する図1においてエレメント部導体として平板状導体を用い、その数は2つであるが、必ず2つでなければならないものではない。例えば図3に示すように、共振周波数が3つの場合を目的にする場合に、平板状導体の枚数を3つとするものでもよい。同様にして、所望の目的に応じたアンテナ特性を得られるように、平板状導体の枚数を4枚以上としてもよい。
一般的には、所望の共振周波数と同数の平板状導体を備えるのがよいが、平板状導体の数に応じて、共振周波数の数を自在に設定することができる。
これらの各平板状導体は、仮想平面上に配置され、全体として平面モノポールアンテナを構成している。
【0022】
なお、平板状導体の大きさや形状、とくに平板状導体が方形状の場合には高さ方向または/および幅方向の長さを変化させることで、共振周波数や帯域を変化でき、それにより所望の目的に応じたアンテナ設計を自在に行うことが可能である。具体的には、一般的に方形状の場合には、高さ方向の長さの変更で共振周波数を、幅方向の長さの変更で帯域を変更することができるが、平板状導体の枚数や配置の仕方によっても自在に変更できることを付言しておく。
【0023】
従って、複数の板状導体の形状や大きさは、通常それぞれ異なるものとなる。しかしながら、必ず異なる形状や大きさにしなければならないものではなく、およそ同じ形状・大きさの平板状導体を複数設けるものでもよい。
このような場合でも、広帯域特性を有しつつ複数周波共用が可能である。本発明の広帯域複数周波共用平面モノポールアンテナは、モノポールアンテナに設ける平板状導体によって、広帯域特性と複数周波共用性を両立させているといっても過言ではない。
【0024】
複数の平板状導体は、各平板状導体を数珠繋ぎのように、順次ひとつなぎのようにして連結する。各平板状導体は連結導体で電気的に連結される。平板状導体に連結導体が連結される部位は、平板状導体の面部ではなく辺部である。面部に連結導体を連結させると、所望の広帯域特性を得られないなど、アンテナ特性(放射特性など)に影響を及ぼすので通常好ましくはない。
【0025】
順次ひとつなぎになった複数の平板状導体のうち、一方端部に位置する1つの平板状導体には、平板状導体に給電可能な給電部から給電を受け得るように、これらを電気的に連結する給電線が設けられる。複数の平板状導体に給電することを排除するものではないが、モノポールアンテナ、特に本発明のような平面モノポールアンテナの各平板状導体に生じる電流分布に多大な影響を及ぼすので、通常は、一方端部に位置する1つの平板状導体に給電するようにする。
そして、本実施例では図示のように給電部の一端を接地している。
【0026】
本発明のような平面モノポールアンテナでは、平板状導体とはおよそ垂直方向の平面内において無指向性のアンテナ特性を有するものとするために、既述のように各平板状導体を順次ひとつづきにして連結するのに加えて、それらをおよそ直線状に連結するのがよい。さらには、給電部と各平板状導体がおよそ直線状に連結されるのがよい。これによってある程度の平面内無指向性が見込めるが、よりよい平面内無指向性を得るためには次のような構成とするのが好適である。
【0027】
即ち、各平板状導体は、既述のとおり順次ひとつなぎに連結されているので、末端の平板状導体以外の平板状導体においては、連結部が2つ存在する。そこでまず、各平板状導体の形状を、連結導体が連結される連結部を結ぶ直線に対して対称な形状とする。
給電線が連結される下部の平板状導体では、給電線の連結部と連絡導体の連結部とを結ぶ直線に対して対称とする。末端の平板状導体は連結部が1つであるが、他の平板状導体と同様の対称形状にすれば足りる。このような形状とすることで、平板状導体において連結部間に生じる電流分布が、連結部を結ぶ直線に対しておよそ対称となることが期待できるのである。
【0028】
そして、各平板状導体を連結する各連結導体は、およそ直線状に配置されるようにする。ここで、「直線状に配置」とは、概念的には、仮想直線上に破線を引くのと同じと説明できる。このように配置することは、概念的には電流があたかも直線的に流れることを意味するものであって、各平板状導体に生じる電流分布が、各連結導体の配置される仮想直線に対して対称となることが期待できるのである。以上のような形状・配置とすることで、より良い平面内無指向性のアンテナ特性を得られる。
【0029】
平板状導体は、連結部を軸中心にして、平板状導体を複数組み合わせるようにしてもよい。例えば、連結部を軸中心にして、2枚の平板状導体をおよそ90度ずらして組み合わせたものとしてもよい。そして、この組み合わせたものを複数設け、既述したように順次ひとつなぎにしてもよいのである。(図7参照)
図7においては、接地した給電線(41)を最下端に設けて、連結導体(30)で複数
つなげていく。給電線(41)及び連結導体(30)が軸となる。
本構成は、上記の平面モノポールアンテナにおいて仮想平面上に配置された平板状導体を直交させた構成であり、直交平面モノポールアンテナ構造をなしている。
【0030】
また、各平板状導体の面部は、それぞれがおよそ平行になるように配置するのが好ましいが、各平板状導体の面部の向く方向がそれぞれ、例えばおよそ90度ずつずれるように配置するものでもよい。(図8参照)
【0031】
さらに、各平板状導体の面部をおよそ鉛直になるように配置すれば、およそ水平面内において無指向性のアンテナ特性が得られるようになる。
【0032】
平板状導体の形状は、とくに方形、例えば正方形や長方形とするものでもよい。このような形状であればアンテナの製作が容易になる上、辺部の中間に連結部を設けることで既述の対称形状となる。勿論、方形状に限定するものではなく、楕円形状でもよい(図4参照)。
【0033】
さらに、本発明では、エレメント部導体としては平板状の他、ワイヤ等により線状で構成することもできる。例えば図9ないし図11は上部導体を線状に構成した例である。図9及び図11ではウルトラワイドバンドにおける複数周波で共用する際のアンテナ寸法を図中に示している。
【0034】
図9において、上部エレメント部導体(50)はワイヤであり、上記の構成と同様に連結導体(30)により下部の平板状導体(10)と連結されている。線状導体(50)は平板状導体(10)と平行で仮想平面上に位置するように配設されている。
【0035】
また、図10は、本発明の平面モノポールアンテナを、基板(60)上で構成した実施例を示しており、例えば樹脂基板上の導体をエッチング処理して、線状導体(61)及び連結導体(62)、下部の平板状導体(63)、給電線(64)をそれぞれ基板表面の導体で形成している。給電線(64)は別に接地(65)されている。
原理としては上記構成と全く同一であるが、本構成はアンテナを簡便に構成することができ、小型化、耐久性の向上、製造コストの抑制などに寄与する。
【0036】
図11は、図7に示した直交平面モノポールアンテナの別実施例であり、上部導体(50)を線状とした構成であり、本構成でも水平無指向性の向上が図られる。
【0037】
図12は、上記平面モノポールアンテナの変形例であり、連結導体を別個に導体で構成するのではなく、上部導体、連結導体、下部導体を1枚の導体平板(70)で構成する。導体平板(70)には切り込み部(71)を例えば3角形に設けて、連結部(72)を形成すると共に、上部導体(70a)と下部導体(70b)を分離する。該平板には給電線(73)により給電し、該給電線(73)は接地(74)させる。切り込み部の形状は任意に設定可能である。
本構成によっても、上記同様の効果を有する平面モノポールアンテナを提供することができる。
【0038】
さらに、図13は本発明による広帯域複数周波共用アンテナを平面ダイポールアンテナ構造にする場合の正面図である。周知のように、ダイポールアンテナでは接地をせずにモノポールアンテナを2個配置して構成し、それぞれに給電を行う。
【0039】
図において、基板(80)の両面にそれぞれ導体のアンテナパターン(81)(82)を、図のように一方のアンテナパターン(81)の左端を対称軸として対称形のアンテナ
パターン(82)を形成している。該パターンは図12の構成を基板上に形成したものであり、それぞれに給電線(83)(84)を設けて給電する。
このような構成でも、本発明による干渉を抑制した広帯域のアンテナを実現することができる。
なお、ダイポールアンテナの構成は上記に限らず、例えば、基板の同一面にアンテナパターンを左右対称形に配置し、給電線はその間から下方に向けて設ける等の任意の構成をとることができる。
【0040】
ところで、本発明の実施において、各エレメント部導体の間隔は可変式にすることもできる。具体的には後述するが、各エレメント部導体の間隔が変えられることで、アンテナ特性を変化させることができる。
【0041】
以下に、図1に例示する本発明の実施態様である広帯域複数周波共用平面モノポールアンテナを具体的に説明する。
図1では、板状導体の一方をおよそ正方形の大板状導体(10)とし、他方の板状導体を、大板状導体のいずれか一辺(11)(12)とおよそ等しい長さの長辺(21)と、その長辺より短い短辺(22)とからなる小板状導体(20)としている。これは例えば、アンテナの高さH[mm]、幅W[mm]のおよそ方形の平面モノポールアンテナに幅z[mm]のスリットを加えるか、または、2枚のおよそ方形の平板状導体を長さz[mm]の連結導体で連結して構成することができる。
【0042】
なお、ここでは後述する実施例の検証との関連から、大板状導体(10)と小板状導体(20)との対向する一辺(11)(21)とは、およそ等しい長さとしたが、上述のとおり、所望のアンテナ特性を得るために、異なる長さにすることは差し支えない(図2、図3参照)。勿論、大板状導体が正方形である必要はなく、長方形でもよい。
【0043】
そして、その大板状導体(10)と小板状導体(20)とを、小板状導体(20)の長辺(21)と大板状導体(10)のいずれか一辺(11)(12)とをおよそ平行に離隔して配置すると共に、大板状導体(10)と小板状導体(20)の各面(13)(23)をおよそ平行かつおよそ鉛直とし、大板状導体(10)を下にして配設する。より好ましくは、大板状導体(10)において後述の給電線(41)が連結される側とは対向する反対側に、小板状導体(20)を配置するのである。さらに、3つ以上の板状導体の場合も同様である。なお、大板状導体(10)が小板状導体(20)の上側に配置されるものでもよい。
【0044】
小板状導体(20)の長辺(21)と、それに対向する側の大板状導体(10)の一辺(11)との間に、大板状導体(10)と小板状導体(20)とを電気的に連結する連結導体(30)を設ける。連結導体(30)が連結される連結部は、各辺(11)(21)のおよそ等分に中間の位置とする。
連結導体(30)は、小板状導体(20)を支持する強度を備えたポール状でも、強固な管を付設された柔軟な線でもよい。また、小板状導体(20)を支持する部材(図示しない)を、連結導体(30)とは関係なく別途付設してもよい。
【0045】
ここで、各大小板状導体(10)(20)の間隔を調節する機構の一例について説明する。
上記の強固な管を伸縮自在な構造、例えば、外管の中空部分に、この中空分に収まる径の内管を挿通させて、この内管を引き出したり押し込んだりすることで伸縮自在な構造とし、この外管に連結導体を付設するのである。連結導体は柔軟な線で、管の伸縮に合わせて撓んだり伸張したりする。つまり、管が短く縮められた場合には連結導体は撓み、管が長く伸ばされた場合には、連結導体は、撓みが引っ張られるようにして伸びるのである。
このような機構を設けることで、平板状導体の間隔を調整できるのである。
【0046】
このような実施例では、撓み量が大きいと、撓んだ連結導体が平板状導体の面部にオーバーラップしアンテナ特性に影響を及ぼしかねないという場合もあるので、これを解決する他の実施例を次に説明する。
それは、上記説明した外管と内管が、それぞれ電気的に導体である部材とするのである。そして、外管と内管が、その内部で接触することなどにより電気的に連絡するようにすればよい。このようにすれば、連絡導体の撓みが生じない。
【0047】
モノポールアンテナに給電可能な給電部(40)と、連結導体(30)が連結される連結側辺である一辺(11)に対向する側の大板状導体(10)の一辺、即ち給電側辺(14)とは、給電線(41)によって電気的に連結される。この給電線(41)が連結される連結部は、大板状導体(10)の給電側辺(14)のおよそ等分の中間に位置する。
【0048】
図1に示す広帯域複数周波共用平面モノポールアンテナ以外の実施例として、図2〜4、7〜13を示す。図2は、大板状導体(10)が小板状導体(20)の上側に配置した場合を示す。図3は、3枚の平板状導体が備わる場合で、且つ、それぞれの平板状導体の大きさや形状が異なる場合である。図4は、2枚の平板状導体がそれぞれおよそ楕円形状の場合を示す。なお、図示しないが、複数の平板状導体において、楕円形状の平板状導体と方形状の平板状導体とを組み合わせてもよい。
【0049】
各図に図示する実施例からもわかるとおり、連結導体(30)は、およそ直線状に配置される。そしてこの例では、給電線(41)も連結導体(30)が配置される直線状の上に配置される。この直線状の部分を仮想的に直線と見なせば、この直線に対してアンテナ全体がおよそ対称となっている。このため、安定した水平面内無指向性が実現できる。
【0050】
<検証>
図1の実施例において、具体的なサイズとして、給電部(40)の給電線(41)の長さg=1[mm]とし、小板状導体(20)はHu×Wu[mm]、大板状導体(10)はHl×Wl [mm]とし、H=20、W=12[mm]、小板状導体(20)と大板状導体(10)との間隔すなわち連結導体(30)の長さz=4[mm]で検証を行った。
【0051】
Hu=2、Hl=13、Wu=Wl=12[mm]として、共振特性をFDTD法を用いて解析した。
解析結果を図5に示す。UWBシステムの周波数帯域をほぼカバーし、かつ、特定の周波数帯の共振を抑制している。なお、ここで、比較対照しているのは、モノポールアンテナを広帯域化した平面モノポールアンテナである。
これにより、本発明の一例である実施例の構成を採ることで、モノポールアンテナが2周波共用の特性を示すことが確認された。また、ここには検証結果を示さないものの、発明者らによって、3つの板状導体の場合には、3つの共振周波数を有することが確認された。
【0052】
UWBシステムは3.1〜10.6[GHz]の超広帯域で用いられる。そこで、3.0、9.0[GHz]における水平面内の放射特性の解析結果を図6に示す。
これより、各周波数において、無指向性に近いアンテナ特性が得られていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のアンテナは、簡易な構造でありながら、広帯域をカバーできると共に、他のシステムとの干渉を抑制できる複数周波共用型なので、安価にUWBシステムなどに利用でき、産業上利用価値が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広帯域特性を有して、所望の複数周波数帯をカバーすると共に干渉する周波数帯を抑制可能な広帯域複数周波共用アンテナであって、
複数のエレメント部導体と、
エレメント部導体同士を電気的に連結する連結導体と、
1つのエレメント部導体とこれに給電可能な給電部とを電気的に連結する給電線とを備え、
各エレメント部導体が、仮想平面上で連結導体によって順次ひとつなぎに連結された
ことを特徴とする平面モノポールアンテナ構造の広帯域複数周波共用アンテナ。
【請求項2】
エレメント部導体が、連結導体または給電線が連結された連結部を結ぶ線に対しておよそ対称な形状であり、
各連結導体がおよそ直線状に配置される、
請求項1に記載の広帯域複数周波共用アンテナ。
【請求項3】
エレメント部導体が、平板状又は線状であって、該平板状又は線状導体が互いに平行に、かつ線状導体は連結導体に対して略直角に配設される
請求項1又は2に記載の広帯域複数周波共用アンテナ。
【請求項4】
平板状導体がおよそ方形状であり、
各平板状導体の面部がおよそ鉛直に配置される、
請求項3に記載の広帯域複数周波共用アンテナ。
【請求項5】
各エレメント部導体の間隔が調節可能である、
請求項1ないし4に記載の広帯域複数周波共用平面モノポールアンテナ。
【請求項6】
前記仮想平面が少なくとも1枚の基板により実体的に構成されて、少なくともエレメント部導体又は連結導体のいずれかが該基板上の導体パターンにより形成される
請求項1ないし5に記載の広帯域複数周波共用平面モノポールアンテナ。
【請求項7】
連結部を軸中心にして、エレメント部導体を複数組み合わせる
請求項1ないし6に記載の広帯域複数周波共用アンテナ。
【請求項8】
前記広帯域複数周波共用平面モノポールアンテナを、連結部を軸中心にして前記仮想平面が直交するように2個組み合わせた
ことを特徴とする請求項7に記載の直交平面モノポールアンテナ構造の広帯域複数周波共用アンテナ。
【請求項9】
前記広帯域複数周波共用平面モノポールアンテナにおいて、1つの仮想平面上のエレメント部導体及び連結導体を1枚の導体平板で構成し、該連結導体部位は導体平板に切り込み部を形成して構成する
請求項1ないし8に記載の広帯域複数周波共用アンテナ。
【請求項10】
前記広帯域複数周波共用平面モノポールアンテナを2個配置して構成し、それぞれに給電線を備えて給電する
ことを特徴とする平面ダイポール構造の広帯域複数周波共用アンテナ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【国際公開番号】WO2005/027267
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【発行日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513898(P2005−513898)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013161
【国際出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 1.発行所:社団法人電子情報通信学会 主催:電子情報通信学会 刊行物名:2004年総合大会講演論文集 発行年月日:平成16年3月10日 備考:添付書類上、「2004年3月8日発行」となっているが、本刊行物の実際の発行日は上記日付である。(国立国会図書館にも同日受入れられている) 2.発行所:IEEE 主催:IEEE、電子情報通信学会他 刊行物名:Joint UWBST&IWUWBS 2004 発行年月日:平成16年5月18日
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】