広角ベーンレスフルコーンスプレーノズル
【課題】 ベーンレス構成で流路の充分な異物通過径を保ち、効果的乱流作成で100〜130゜の広角フルコーンスプレーパターンを生成するスプレーノズルを提供する。
【解決手段】 ノズルボディの一端側に開口する有底のスプレー液導入口と、他端側に導入口と直交する側方に開口する有底の乱流室とを設け、導入口の底壁と乱流室の周壁とを導入口軸線に対し偏心かつ傾斜する小径の連通路で連通し、乱流室の底面に少なくとも3本の直線状の溝または突起を放射状に交差させてなる乱流手段を設け、乱流室の開口に螺合するノズルキャップのノズル口は外方に向け曲線的に径を漸増するラッパ面を含む。圧力下で導入口から連通路で加速されて乱流室に入るスプレー液は連通路の偏心傾斜による旋回流と乱流手段による部分的高速化と低速化をうけた軸流が干渉し合う乱流となり、ノズル口のラッパ面で広角化されたフルコーンスプレーパターンとなる。
【解決手段】 ノズルボディの一端側に開口する有底のスプレー液導入口と、他端側に導入口と直交する側方に開口する有底の乱流室とを設け、導入口の底壁と乱流室の周壁とを導入口軸線に対し偏心かつ傾斜する小径の連通路で連通し、乱流室の底面に少なくとも3本の直線状の溝または突起を放射状に交差させてなる乱流手段を設け、乱流室の開口に螺合するノズルキャップのノズル口は外方に向け曲線的に径を漸増するラッパ面を含む。圧力下で導入口から連通路で加速されて乱流室に入るスプレー液は連通路の偏心傾斜による旋回流と乱流手段による部分的高速化と低速化をうけた軸流が干渉し合う乱流となり、ノズル口のラッパ面で広角化されたフルコーンスプレーパターンとなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広角噴霧を形成しうるベーンレスフルコーンスプレーノズルに関し、特に、広範囲対象の水によるスプレー冷却やスプレー洗浄、或いは異物を多く含む不良水質の水等の広範囲の散布等の多様な目的に用いるスプレーノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の広角スプレーノズルには、例えば図4Aおよび図4Bに示すものがあり、このスプレーノズル10は図示しないスプレー液供給管と接続される導入口を軸線上の一端に持つ筒状のノズルボディ11と、このノズルボディ11の軸線上他端の内面に、一端で螺結され他端中央に円形のノズル口13を持つ筒状のノズルキャップ12とでなる。このノズルキャップ12の一端の内周面には軸線に向けて突き出るベーン14が設けられ、ノズルボディ11の導入口から送られてここを通過するスプレー液に乱流が生じ、ノズル口13から噴出される噴霧はこの乱流によって円形のスプレーパターンを形成する。スプレー液流路に突き出るベーン14は流路径の実寸を減じることとなるため、スプレー液に異物が混入している場合には異物通過径が小さくなり、異物含有量が多ければベーン設置個所に異物が容易に堆積して目詰まりを起こす危惧があり、円滑なスプレー作業の支障となるという問題がある。
【0003】
そこで、ベーンを用いることなく乱流を発生させることを図るベーンレススプレーノズルが提案されている。図5A、図5Bおよび図5Cにその一例が示される(特許文献1参照)。このベーンレススプレーノズル20は、第1の軸線の一端側に開いて冷却水等のスプレー液の供給管(図示しない)が螺結される導入口23を設けたノズルボディ21と、このノズルボディ21の第1の軸線の他端側においてこの軸線と直交する第2の軸線に沿って設けた円筒形の乱流室25の、第1の軸線から見て側方となる第2の軸線の一端の開口に螺合するノズルキャップ22とでなる。第2の軸線の他端において乱流室25は閉鎖された底壁を有し、この底壁表面と円筒状の周壁の間は円弧面26による曲面をもって連続する。乱流室25は周壁の一部において、第1の軸線から乱流室25の底壁側に偏位させた比較的小径の連通路24を介して導入口23に連通する。ノズルキャップ22は中央に第2の軸線に沿うノズル口27を有し、その内周面28は、図5Aの断面図に見られるように、内面の外周近くから中央部にかけて径を直線的に漸減する斜面部28aと、ほぼ中央の曲面状の喉部28bと、再び外面にかけて径を曲線的に漸増するラッパ部28cが連続してなる。このベーンレススプレーノズル20は、特に、ノズルキャップ22の外面においてノズル口27を囲繞してほぼ十字形に盛り上がるランド部29を備え、ラッパ部28cの表面に連続するランド部29の表面はラッパ部28cの曲面をほぼ十字方向に延長する。
【0004】
この構成において、図示しないスプレー液供給管から導入口23に所定圧力下で供給されたスプレー液は、小径の連通路24で加速されて乱流室25に送られる。乱流室25に送られた液流は連通路と反対側の周壁に当たって方向転換し、渦流を形成し、そのノズルキャップ22側の一部は液圧によってノズル口27に向かうことになるが、底壁側の一部は円弧面26の曲面に沿って第2の軸線方向において渦流に干渉する流れとなり、全体としてノズル口27方向に方向付けられた乱流が形成される。連通路24を乱流室25の底壁側に偏位させる構成は、この乱流の方向付けに有効である。
【0005】
ノズル口27に達した乱流スプレー液は斜面部28aと喉部28bで加速され、ラッパ部28cで拡散され、広角のスプレーパターンを形成するが、ほぼ十字形に設けたランド部29はラッパ部28cの表面を十字方向に延長させるため、本来は円形のスプレーパターンを十字方向に、つまり、四角形の対角線方向にスプレーを拡張することにより、広角で四角形のスプレーパターンを得ることができる。
【0006】
図6は、上記した図5の構成のベーンレススプレーノズルからノズルキャップ外面のランド部を省略して、ベーンレスでフルコーンスプレーパターンを生成する従来のスプレーノズル30を示す。従ってこのベーンレススプレーノズル30のノズルボディ31も、第1の軸線の一端で開口するスプレー液導入口33と、第1の軸線の他端側でこの軸線と直交する第2の軸線に沿い一端を開口とし他端を底壁として設けた乱流室35と、図5Aと同じ曲面38でなるノズル口37を有して乱流室35の開口に螺合されるノズルキャップ32と、乱流室35の周壁と底壁を曲面でつなぐ円弧部36と、乱流室35の周壁の一部と導入口33の底壁の間を連通する連通路34とでなる。つまり、ノズルキャップ32がノズル口37の外面に十字形のランド部を備えていない点以外は図5の構成と同じ構成を有し、生成されるスプレーパターンは円形のフルコーン型である。
【特許文献1】特公平5−5541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上図4について述べた従来のスプレーノズルは円形のスプレーパターン生成を目的とする乱流発生手段としてベーンを用いるが、ベーンによるスプレー液流路の異物通過径の減少に起因して異物が堆積し、目詰まり発生と円滑なスプレー作業中断の危惧を伴う。図5の特許文献1が開示するスプレーノズルは、四角形のスプレーパターン生成のために先ず円形のスプレーをベーンレス構成で生成すべく、乱流発生手段の使用を試みている。図6のスプレーノズルは図5のものを円形スプレーパターン専用の構成としている。これら従来のスプレーノズルにおける乱流発生手段は、しかし、その効果が不十分であるため、生成するスプレー角度が90゜以下に限られ、それ以上の広角度をもって広範囲にスプレーすることができないと言う問題があった。
【0008】
本発明はこのような従来のスプレーノズルが有していた課題を解決しようとするものであり、ベーンレス構成において流路の充分な異物通過径を維持しつつ、高い乱流効果を発揮してスプレー角度が90゜以上、望ましくは100〜130゜の範囲となるような広角のフルコーンスプレーパターンを生成し得るスプレーノズルの実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の広角ベーンレスフルコーンスプレーノズルは、第1の軸線上の一端側で開口する液導入口を有しスプレー液供給管と螺結される接続部と、第1の軸線とはその他端側において直交する第2の軸線の一端側を開口とし他端側を閉鎖底壁としかつ周壁の一部において第1の軸線から偏位する小径の連通路を介して液導入口と連通する筒状の乱流室を備えるノズルボディと、内周面を外方に向け径を曲線的に漸増するラッパ状のオリフィス面としたノズル口を中央に有し外周面において乱流室の開口に螺合するノズルキャップとを備えてなり、乱流室の底壁はその内面に一体に形成され、第2の軸線を中心として互いに交差して放射方向に伸びる複数の直線状の部材でなる乱流手段を備えることを特徴とする。
本発明による広角ベーンレスフルコーンスプレーノズルはまた、乱流手段が互いに等角度で交差する少なくとも3本の溝または突起でなることを特徴とする。
また、本発明による広角ベーンレスフルコーンスプレーノズルは、第1の軸線から偏位する連通路の軸線を乱流室側において第1の軸線からの偏位を増す方向に傾斜させて設けられることを特徴とする。
更に、本発明による広角ベーンレスフルコーンスプレーノズルは、スプレー角度が100〜130゜の広角フルコーンスプレーパターンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記の本発明による広角ベーンレスフルコーンスプレーノズルの効果は次の通りである。すなわち、接続部に接続したスプレー液供給管から液導入口に適宜圧力で供給されたスプレー液は連通路を介して加速されて乱流室に流入し、連通路出口に対向する乱流室の円筒状周壁に衝突して方向を転じ、主として乱流室の第2の軸線について旋回する旋回流となる。その間、ノズル口側の一部の旋回流はその圧力でノズル口に押し出されるが、乱流室の底壁側の旋回流は底壁内面に設けた乱流手段の放射状直線部材に衝突し、第2の軸線方向、つまり、乱流室の底壁からノズル口に向けて方向付けられると共に、一部は高速化され、一部は低速化された軸流となって旋回流に干渉し、全体としてノズル口に向かう複雑な乱流が形成される。外方に向けて円形ラッパ状に開くノズル口は、噴出する乱流状態のスプレー液を全周方向に広い角度で拡散させ、広角フルコーン状のスプレーパターンが実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施例を添付図面に沿って説明する。
【実施例1】
【0012】
図1及び2に本発明による広角ベーンレスフルコーンスプレーノズルの実施例を示す。このスプレーノズル40は、乱流室の底壁以外は、基本的に図6について述べた従来のスプレーノズル30と同様に構成される。従ってノズルボディ41はその長手方向の第1の軸線の一端側に、図示しないスプレー液供給管の先端に接続される接続部44を備え、その端面に開口する有底の液導入口45が形成される。スプレー液供給管との螺合のための螺条は、円筒状とした接続部44の外周面と液導入口45の内周面の一方又は双方に設けられる。
【0013】
ノズルボディ41は、第1の軸線とはその他端側において直交する第2の軸線上の一方の側方端に開口し、他方端側を閉鎖して底壁とした乱流室42を備え、周面に螺条を設けた開口にノズルキャップ43の外周が螺合する。第2の軸線と整合するノズルキャップ43の中心に沿ってノズル口48が設けられ、ノズル口48の内周面は乱流室42に面して直線的に径を漸減する斜面部48aと、ほぼ中央で縮径した喉部48bと、喉部48bから外方へ曲線的に径を漸増するラッパ部48cとでなる。
【0014】
乱流室42は円筒状の周壁の一部において、第1の軸線から偏位して設けた小径の連通路46を介して液導入口45と連通する。望ましくは、図1Aに点線で、図1Cに実線で示す様に、連通路46の軸線を乱流室42の側において第1の軸線からの偏位が増す方向に傾斜させることにより、連通路46の軸線が第2に軸線、つまり乱流室42の中心線からずれるようにする。もちろん、連通路46の軸線の第2の軸線からの偏位を大きく取って互いに平行となるようにしても良い。このように偏位させ、ないしは傾斜させた連通路46によって、連通路46から乱流室42に流入したスプレー液は第1の軸線から外れた位置で周壁に当たるため、乱流室内には主として旋回流が発生することとなる。
【0015】
乱流室42は、更に、その底壁の表面に乱流手段47を備える。この実施例では、図2A及び図2Bに見られるように、それぞれ乱流室42の直径とほぼ等しい長さの直線状の3本の溝が、第2の軸線を中心として互いに等角度で交差する6角形に配置される。従って、乱流室の円周方向に対して放射方向に交差する6個の壁面が底壁に設けられることになる。そしてこれらの放射状壁面に乱流室の底壁側の旋回流が衝突し、第2の軸線方向、つまり、乱流室の底壁からノズル口に向けて方向付けられると共に、一部は高速化され、一部は低速化された軸流となって旋回流に干渉し、全体としてノズル口48に向かう複雑な乱流が形成される。外方に向けて円形ラッパ状に開くノズル口は、噴出する乱流状態のスプレー液を全周方向に広い角度100〜130゜の完全な円錐形で拡散噴霧させ、広角フルコーン状のスプレーパターンが実現される。
【0016】
ここでは断面をほぼU字形とする溝が乱流手段47の最良の実施形態として示されているが、断面をV字形とする溝としても良く、又、溝に代えて逆U字形または逆V字形の断面の突起とすることもできる。突起とする場合には、更に、断面I字形でも良い。放射方向に交差する直線状の部材の数については、2本、つまり十字状では乱流の形成が弱く、噴霧角度が100゜に満たない。また、4本、つまり米字状以上の本数でも、3本の場合に匹敵するか、それ以上の効果が認められるが、実用上は3本で充分と認められる。
【0017】
表1に、乱流手段47の直線状部材を3本の溝とした上記実施例における本発明のスプレーノズルと、図6に示す従来例のスプレーノズルの、接続部の接続ネジ径を3/8インチ(約9.5mm)、スプレー液圧力が0.2MPaの時の流量(噴霧量)が3種となるように連通路径(最大異物通路径)を変えたものを比較した実験結果を示す。
表1
この表1から判るように、図6に示す従来のスプレーノズルと比較して、本発明によるスプレーノズルは同流量でも最大異物通過径を大きくでき、スプレー角度は120°となり、スプレーパターンは円形全面噴霧の広角フルコーンスプレーパターンを示した。
【0018】
図3に、上記実施例の3本交差溝による乱流手段を用いた本発明によるスプレーノズルで、圧力0.2MPaの時の噴霧量が13L/minのものの圧力/流量、圧力/スプレー角度の性能図を示し、圧力が0.1MPaでスプレー角度117°、0.7MPaでも113°を示し、十分に広角なスプレーパターンが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】この発明に係る広角ベーンレスフルコーンスプレーノズルの一実施例の上面図。
【図1B】図1Aの広角ベーンレスフルコーンスプレーノズルの、一部を切欠いて内部構成を示す正面図。
【図1C】図1Aの広角ベーンレスフルコーンスプレーノズルの右側面図。
【図2A】図1BのA−A線に沿う断面斜視図。
【図2B】図1CのB−B線に沿う断面斜視図。
【図3】図1A−図1Cの広角ベーンレスフルコーンスプレーノズルの圧力/流量及び圧力/スプレー角度の性能図。
【図4A】従来のベーン付きスプレーノズルの上面図。
【図4B】図4Aのスプレーノズルの、一部を切欠いて内部構成を示す正面図。
【図5A】従来の広角ベーンレススプレーノズルの一例の正面断面図。
【図5B】図5Aのスプレーノズルの上面図。
【図5C】図5Aのスプレーノズルの右側面図。
【図6】従来の広角ベーンレススプレーノズルの他例の一部を切欠いた正面図。
【符号の説明】
【0020】
40 スプレーノズル
41 ノズルボディ
42 乱流室
43 ノズルキャップ
44 接続部
45 液導入口
46 連通路
47 乱流手段
48 ノズル口
【技術分野】
【0001】
本発明は広角噴霧を形成しうるベーンレスフルコーンスプレーノズルに関し、特に、広範囲対象の水によるスプレー冷却やスプレー洗浄、或いは異物を多く含む不良水質の水等の広範囲の散布等の多様な目的に用いるスプレーノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の広角スプレーノズルには、例えば図4Aおよび図4Bに示すものがあり、このスプレーノズル10は図示しないスプレー液供給管と接続される導入口を軸線上の一端に持つ筒状のノズルボディ11と、このノズルボディ11の軸線上他端の内面に、一端で螺結され他端中央に円形のノズル口13を持つ筒状のノズルキャップ12とでなる。このノズルキャップ12の一端の内周面には軸線に向けて突き出るベーン14が設けられ、ノズルボディ11の導入口から送られてここを通過するスプレー液に乱流が生じ、ノズル口13から噴出される噴霧はこの乱流によって円形のスプレーパターンを形成する。スプレー液流路に突き出るベーン14は流路径の実寸を減じることとなるため、スプレー液に異物が混入している場合には異物通過径が小さくなり、異物含有量が多ければベーン設置個所に異物が容易に堆積して目詰まりを起こす危惧があり、円滑なスプレー作業の支障となるという問題がある。
【0003】
そこで、ベーンを用いることなく乱流を発生させることを図るベーンレススプレーノズルが提案されている。図5A、図5Bおよび図5Cにその一例が示される(特許文献1参照)。このベーンレススプレーノズル20は、第1の軸線の一端側に開いて冷却水等のスプレー液の供給管(図示しない)が螺結される導入口23を設けたノズルボディ21と、このノズルボディ21の第1の軸線の他端側においてこの軸線と直交する第2の軸線に沿って設けた円筒形の乱流室25の、第1の軸線から見て側方となる第2の軸線の一端の開口に螺合するノズルキャップ22とでなる。第2の軸線の他端において乱流室25は閉鎖された底壁を有し、この底壁表面と円筒状の周壁の間は円弧面26による曲面をもって連続する。乱流室25は周壁の一部において、第1の軸線から乱流室25の底壁側に偏位させた比較的小径の連通路24を介して導入口23に連通する。ノズルキャップ22は中央に第2の軸線に沿うノズル口27を有し、その内周面28は、図5Aの断面図に見られるように、内面の外周近くから中央部にかけて径を直線的に漸減する斜面部28aと、ほぼ中央の曲面状の喉部28bと、再び外面にかけて径を曲線的に漸増するラッパ部28cが連続してなる。このベーンレススプレーノズル20は、特に、ノズルキャップ22の外面においてノズル口27を囲繞してほぼ十字形に盛り上がるランド部29を備え、ラッパ部28cの表面に連続するランド部29の表面はラッパ部28cの曲面をほぼ十字方向に延長する。
【0004】
この構成において、図示しないスプレー液供給管から導入口23に所定圧力下で供給されたスプレー液は、小径の連通路24で加速されて乱流室25に送られる。乱流室25に送られた液流は連通路と反対側の周壁に当たって方向転換し、渦流を形成し、そのノズルキャップ22側の一部は液圧によってノズル口27に向かうことになるが、底壁側の一部は円弧面26の曲面に沿って第2の軸線方向において渦流に干渉する流れとなり、全体としてノズル口27方向に方向付けられた乱流が形成される。連通路24を乱流室25の底壁側に偏位させる構成は、この乱流の方向付けに有効である。
【0005】
ノズル口27に達した乱流スプレー液は斜面部28aと喉部28bで加速され、ラッパ部28cで拡散され、広角のスプレーパターンを形成するが、ほぼ十字形に設けたランド部29はラッパ部28cの表面を十字方向に延長させるため、本来は円形のスプレーパターンを十字方向に、つまり、四角形の対角線方向にスプレーを拡張することにより、広角で四角形のスプレーパターンを得ることができる。
【0006】
図6は、上記した図5の構成のベーンレススプレーノズルからノズルキャップ外面のランド部を省略して、ベーンレスでフルコーンスプレーパターンを生成する従来のスプレーノズル30を示す。従ってこのベーンレススプレーノズル30のノズルボディ31も、第1の軸線の一端で開口するスプレー液導入口33と、第1の軸線の他端側でこの軸線と直交する第2の軸線に沿い一端を開口とし他端を底壁として設けた乱流室35と、図5Aと同じ曲面38でなるノズル口37を有して乱流室35の開口に螺合されるノズルキャップ32と、乱流室35の周壁と底壁を曲面でつなぐ円弧部36と、乱流室35の周壁の一部と導入口33の底壁の間を連通する連通路34とでなる。つまり、ノズルキャップ32がノズル口37の外面に十字形のランド部を備えていない点以外は図5の構成と同じ構成を有し、生成されるスプレーパターンは円形のフルコーン型である。
【特許文献1】特公平5−5541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上図4について述べた従来のスプレーノズルは円形のスプレーパターン生成を目的とする乱流発生手段としてベーンを用いるが、ベーンによるスプレー液流路の異物通過径の減少に起因して異物が堆積し、目詰まり発生と円滑なスプレー作業中断の危惧を伴う。図5の特許文献1が開示するスプレーノズルは、四角形のスプレーパターン生成のために先ず円形のスプレーをベーンレス構成で生成すべく、乱流発生手段の使用を試みている。図6のスプレーノズルは図5のものを円形スプレーパターン専用の構成としている。これら従来のスプレーノズルにおける乱流発生手段は、しかし、その効果が不十分であるため、生成するスプレー角度が90゜以下に限られ、それ以上の広角度をもって広範囲にスプレーすることができないと言う問題があった。
【0008】
本発明はこのような従来のスプレーノズルが有していた課題を解決しようとするものであり、ベーンレス構成において流路の充分な異物通過径を維持しつつ、高い乱流効果を発揮してスプレー角度が90゜以上、望ましくは100〜130゜の範囲となるような広角のフルコーンスプレーパターンを生成し得るスプレーノズルの実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の広角ベーンレスフルコーンスプレーノズルは、第1の軸線上の一端側で開口する液導入口を有しスプレー液供給管と螺結される接続部と、第1の軸線とはその他端側において直交する第2の軸線の一端側を開口とし他端側を閉鎖底壁としかつ周壁の一部において第1の軸線から偏位する小径の連通路を介して液導入口と連通する筒状の乱流室を備えるノズルボディと、内周面を外方に向け径を曲線的に漸増するラッパ状のオリフィス面としたノズル口を中央に有し外周面において乱流室の開口に螺合するノズルキャップとを備えてなり、乱流室の底壁はその内面に一体に形成され、第2の軸線を中心として互いに交差して放射方向に伸びる複数の直線状の部材でなる乱流手段を備えることを特徴とする。
本発明による広角ベーンレスフルコーンスプレーノズルはまた、乱流手段が互いに等角度で交差する少なくとも3本の溝または突起でなることを特徴とする。
また、本発明による広角ベーンレスフルコーンスプレーノズルは、第1の軸線から偏位する連通路の軸線を乱流室側において第1の軸線からの偏位を増す方向に傾斜させて設けられることを特徴とする。
更に、本発明による広角ベーンレスフルコーンスプレーノズルは、スプレー角度が100〜130゜の広角フルコーンスプレーパターンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記の本発明による広角ベーンレスフルコーンスプレーノズルの効果は次の通りである。すなわち、接続部に接続したスプレー液供給管から液導入口に適宜圧力で供給されたスプレー液は連通路を介して加速されて乱流室に流入し、連通路出口に対向する乱流室の円筒状周壁に衝突して方向を転じ、主として乱流室の第2の軸線について旋回する旋回流となる。その間、ノズル口側の一部の旋回流はその圧力でノズル口に押し出されるが、乱流室の底壁側の旋回流は底壁内面に設けた乱流手段の放射状直線部材に衝突し、第2の軸線方向、つまり、乱流室の底壁からノズル口に向けて方向付けられると共に、一部は高速化され、一部は低速化された軸流となって旋回流に干渉し、全体としてノズル口に向かう複雑な乱流が形成される。外方に向けて円形ラッパ状に開くノズル口は、噴出する乱流状態のスプレー液を全周方向に広い角度で拡散させ、広角フルコーン状のスプレーパターンが実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施例を添付図面に沿って説明する。
【実施例1】
【0012】
図1及び2に本発明による広角ベーンレスフルコーンスプレーノズルの実施例を示す。このスプレーノズル40は、乱流室の底壁以外は、基本的に図6について述べた従来のスプレーノズル30と同様に構成される。従ってノズルボディ41はその長手方向の第1の軸線の一端側に、図示しないスプレー液供給管の先端に接続される接続部44を備え、その端面に開口する有底の液導入口45が形成される。スプレー液供給管との螺合のための螺条は、円筒状とした接続部44の外周面と液導入口45の内周面の一方又は双方に設けられる。
【0013】
ノズルボディ41は、第1の軸線とはその他端側において直交する第2の軸線上の一方の側方端に開口し、他方端側を閉鎖して底壁とした乱流室42を備え、周面に螺条を設けた開口にノズルキャップ43の外周が螺合する。第2の軸線と整合するノズルキャップ43の中心に沿ってノズル口48が設けられ、ノズル口48の内周面は乱流室42に面して直線的に径を漸減する斜面部48aと、ほぼ中央で縮径した喉部48bと、喉部48bから外方へ曲線的に径を漸増するラッパ部48cとでなる。
【0014】
乱流室42は円筒状の周壁の一部において、第1の軸線から偏位して設けた小径の連通路46を介して液導入口45と連通する。望ましくは、図1Aに点線で、図1Cに実線で示す様に、連通路46の軸線を乱流室42の側において第1の軸線からの偏位が増す方向に傾斜させることにより、連通路46の軸線が第2に軸線、つまり乱流室42の中心線からずれるようにする。もちろん、連通路46の軸線の第2の軸線からの偏位を大きく取って互いに平行となるようにしても良い。このように偏位させ、ないしは傾斜させた連通路46によって、連通路46から乱流室42に流入したスプレー液は第1の軸線から外れた位置で周壁に当たるため、乱流室内には主として旋回流が発生することとなる。
【0015】
乱流室42は、更に、その底壁の表面に乱流手段47を備える。この実施例では、図2A及び図2Bに見られるように、それぞれ乱流室42の直径とほぼ等しい長さの直線状の3本の溝が、第2の軸線を中心として互いに等角度で交差する6角形に配置される。従って、乱流室の円周方向に対して放射方向に交差する6個の壁面が底壁に設けられることになる。そしてこれらの放射状壁面に乱流室の底壁側の旋回流が衝突し、第2の軸線方向、つまり、乱流室の底壁からノズル口に向けて方向付けられると共に、一部は高速化され、一部は低速化された軸流となって旋回流に干渉し、全体としてノズル口48に向かう複雑な乱流が形成される。外方に向けて円形ラッパ状に開くノズル口は、噴出する乱流状態のスプレー液を全周方向に広い角度100〜130゜の完全な円錐形で拡散噴霧させ、広角フルコーン状のスプレーパターンが実現される。
【0016】
ここでは断面をほぼU字形とする溝が乱流手段47の最良の実施形態として示されているが、断面をV字形とする溝としても良く、又、溝に代えて逆U字形または逆V字形の断面の突起とすることもできる。突起とする場合には、更に、断面I字形でも良い。放射方向に交差する直線状の部材の数については、2本、つまり十字状では乱流の形成が弱く、噴霧角度が100゜に満たない。また、4本、つまり米字状以上の本数でも、3本の場合に匹敵するか、それ以上の効果が認められるが、実用上は3本で充分と認められる。
【0017】
表1に、乱流手段47の直線状部材を3本の溝とした上記実施例における本発明のスプレーノズルと、図6に示す従来例のスプレーノズルの、接続部の接続ネジ径を3/8インチ(約9.5mm)、スプレー液圧力が0.2MPaの時の流量(噴霧量)が3種となるように連通路径(最大異物通路径)を変えたものを比較した実験結果を示す。
表1
この表1から判るように、図6に示す従来のスプレーノズルと比較して、本発明によるスプレーノズルは同流量でも最大異物通過径を大きくでき、スプレー角度は120°となり、スプレーパターンは円形全面噴霧の広角フルコーンスプレーパターンを示した。
【0018】
図3に、上記実施例の3本交差溝による乱流手段を用いた本発明によるスプレーノズルで、圧力0.2MPaの時の噴霧量が13L/minのものの圧力/流量、圧力/スプレー角度の性能図を示し、圧力が0.1MPaでスプレー角度117°、0.7MPaでも113°を示し、十分に広角なスプレーパターンが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】この発明に係る広角ベーンレスフルコーンスプレーノズルの一実施例の上面図。
【図1B】図1Aの広角ベーンレスフルコーンスプレーノズルの、一部を切欠いて内部構成を示す正面図。
【図1C】図1Aの広角ベーンレスフルコーンスプレーノズルの右側面図。
【図2A】図1BのA−A線に沿う断面斜視図。
【図2B】図1CのB−B線に沿う断面斜視図。
【図3】図1A−図1Cの広角ベーンレスフルコーンスプレーノズルの圧力/流量及び圧力/スプレー角度の性能図。
【図4A】従来のベーン付きスプレーノズルの上面図。
【図4B】図4Aのスプレーノズルの、一部を切欠いて内部構成を示す正面図。
【図5A】従来の広角ベーンレススプレーノズルの一例の正面断面図。
【図5B】図5Aのスプレーノズルの上面図。
【図5C】図5Aのスプレーノズルの右側面図。
【図6】従来の広角ベーンレススプレーノズルの他例の一部を切欠いた正面図。
【符号の説明】
【0020】
40 スプレーノズル
41 ノズルボディ
42 乱流室
43 ノズルキャップ
44 接続部
45 液導入口
46 連通路
47 乱流手段
48 ノズル口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軸線上の一端側で開口する液導入口を有しスプレー液供給管と螺結される接続部と、第1の軸線とはその他端側において直交する第2の軸線の一端側を開口とし他端側を閉鎖底壁としかつ周壁の一部において第1の軸線から偏位する小径の連通路を介して液導入口と連通する筒状の乱流室を備えるノズルボディと、内周面を外方に向け径を曲線的に漸増するラッパ状のオリフィス面としたノズル口を中央に有し外周面において乱流室の開口に螺合するノズルキャップとを備えてなる広角ベーンレスフルコーンスプレーノズルにおいて、
乱流室の底壁はその内面に一体に形成され、第2の軸線を中心として互いに交差して放射方向に伸びる複数の直線状の部材でなる乱流手段を備えることを特徴とする広角ベーンレスフルコーンスプレーノズル。
【請求項2】
乱流手段は互いに等角度で交差する少なくとも3本の溝または突起でなることを特徴とする請求項1記載の広角ベーンレスフルコーンスプレーノズル。
【請求項3】
第1の軸線から偏位する連通路の軸線を乱流室側において第1の軸線からの偏位を増す方向に傾斜させて設けられることを特徴とする請求項1記載の広角ベーンレスフルコーンスプレーノズル。
【請求項4】
スプレー角度が100〜130゜の広角フルコーンスプレーパターンであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の広角ベーンレスフルコーンスプレーノズル。
【請求項1】
第1の軸線上の一端側で開口する液導入口を有しスプレー液供給管と螺結される接続部と、第1の軸線とはその他端側において直交する第2の軸線の一端側を開口とし他端側を閉鎖底壁としかつ周壁の一部において第1の軸線から偏位する小径の連通路を介して液導入口と連通する筒状の乱流室を備えるノズルボディと、内周面を外方に向け径を曲線的に漸増するラッパ状のオリフィス面としたノズル口を中央に有し外周面において乱流室の開口に螺合するノズルキャップとを備えてなる広角ベーンレスフルコーンスプレーノズルにおいて、
乱流室の底壁はその内面に一体に形成され、第2の軸線を中心として互いに交差して放射方向に伸びる複数の直線状の部材でなる乱流手段を備えることを特徴とする広角ベーンレスフルコーンスプレーノズル。
【請求項2】
乱流手段は互いに等角度で交差する少なくとも3本の溝または突起でなることを特徴とする請求項1記載の広角ベーンレスフルコーンスプレーノズル。
【請求項3】
第1の軸線から偏位する連通路の軸線を乱流室側において第1の軸線からの偏位を増す方向に傾斜させて設けられることを特徴とする請求項1記載の広角ベーンレスフルコーンスプレーノズル。
【請求項4】
スプレー角度が100〜130゜の広角フルコーンスプレーパターンであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の広角ベーンレスフルコーンスプレーノズル。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【公開番号】特開2009−101266(P2009−101266A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273498(P2007−273498)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000107767)スプレーイングシステムスジャパン株式会社 (17)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000107767)スプレーイングシステムスジャパン株式会社 (17)
【Fターム(参考)】
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