説明

床 材

【課題】 表面硬度を高めて耐クラック性、耐傷性、表面平滑性を保ちながら、温湿度に対する寸法安定性を向上させることができる耐水性の高い床材を提供する。
【解決手段】 基材2の表面側に木粉樹脂複合材4を介して表面化粧材3が積層されている床材1である。木粉樹脂複合材4の厚さDを少なくとも0.1mm以上とした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般に住宅の建物の床に使用される木質の床材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に直貼り床材は、床材を建築物上に直接貼り付ける工法で施工されるものであり、主に軽量床衝撃音を低減することを目的としており、床表面に加わる衝撃力を緩和し、階下に伝わる衝撃音を低減するために用いられる。
【0003】従来より、図5に示すように、軟質発泡ウレタン製のクッション材10の表面に、裏面側に凹溝11が複数形成された溝入り合板12を水性ビニルウレタン接着材で接着し、その上に表面化粧単板13をアミノ系メラミン樹脂接着剤で接着した水質直貼り木質床材1′が知られている。ここで、軟質発泡ウレタン製のクッション材10の厚みd1は例えば4mm、表面化粧単板13の厚みは例えば0.25mm、溝入り合板12と表面化粧単板13との総厚d2は例えば9mmとされる。
【0004】ところが、従来の木質床材1′にあっては、合板12の表面硬度では、例えばエアコン、電気カーペット、床暖房などの使用による床材表面のクラックの発生が生じ易く、またキャスター付き家具の使用や、物の落下などの衝撃による傷付きや凹みの発生も生じ易く、さらに合板12の表面に化粧溝8を形成した場合、ケバ立ちが生じ易く、ストッキング、靴下の引掛かりが生じ易くなるという問題があった。
【0005】また現行では、木質床材の表層にMDF(中比重木質繊維板)などの表層材を設けると共に、表層に樹脂を含浸するなどの方策により、耐クラック性、耐傷性、表面平滑性を向上させている。
【0006】しかしながら、この種の木質床材においても、合板、MDF(中比重木質繊維板)などの木質材料を基材に使用しているため、温湿度による寸法変化を生じ易く、反りや目隙、表面化粧単板のクラックの発生が生じ易く、また表面もあまり平滑でないため、表面のV溝(化粧溝)へのストッキング、靴下の引掛かりなども生じ易いという問題もある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、表面硬度を高めて耐クラック性、耐傷性、表面平滑性を保ちながら、温湿度に対する寸法安定性を向上させることができる耐水性の高い床材を提供するにあり、他の目的とするところは、化粧溝を深くしたにもかかわらず、化粧溝へのストッキング、靴下の引掛かりをなくすことができ、外観向上を図りながら歩行感を良くすることができる床材を提供するにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために本発明は、基材2の表面側に木粉樹脂複合材4を介して表面化粧材3が積層されている床材であって、木粉樹脂複合材4の厚さDを少なくとも0.1mm以上としたことを特徴としており、このように構成することで、木粉樹脂複合材4を用いることで、表面硬度が高く且つ平滑な表面が得られるようになり、耐クラック性、耐傷性を向上させることができる。しかも、木粉樹脂複合材4の厚さDを少なくとも0.1mm以上としたことにより、木粉樹脂複合材4の層厚方向Aにおいて、0.1mm以上の径dの木粉4aが少なくとも1個が存在することとなり、従って、木粉樹脂複合材4による効果である耐クラック性、耐傷性等を保ちながら、温湿度に対する寸法安定性を向上させることができる。
【0009】また上記表面化粧材3から木粉樹脂複合材4に達する化粧溝8が設けられているのが好ましく、このように構成することで、化粧溝8が基材2に達してないので、化粧溝8内に従来のような木質板に化粧溝8を形成した場合のようなケバ立ちが生じなくなり、従って、化粧溝8の深さを深くしたにもかかわらず、化粧溝8へのストッキング、靴下の引掛かりを生じにくくすることができる。
【0010】また上記表面化粧材3を天然木突き板であるのが好ましく、このように構成することで、天然木突き板によって木質の外観を有しながら寸法安定性、耐クラック性、耐傷性を確保できる。
【0011】また上記表面化粧材3は突き板シートであるのが好ましく、このように構成することで、例えば塗装を施した突き板にポリプロピレンなどのシートをラミネートした突き板シートを表面化粧材3に用いることにより、突き板が破れにくくなり、従って、突き板表面への研磨、塗装工程なしに、天然木突き板に塗装を施したものと同様の木質の外観が得ることが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明すると、床材1は、図1に示すように、基材2の表面側に、剛性を有する木粉樹脂複合材4を介して表面化粧材3を積層一体化して構成されている。
【0013】基材2として、例えば合板が用いられる。この合板はコンクリートスラブなどの下地9(図4)上に接着固定される。この基材2の両側面部には、隣合う床材1同士を接続するための雄実部5aと雌実部5bとからなる実部5が設けられている。
【0014】木粉樹脂複合材4は、木粉4aと熱可塑性樹脂4bとが配合されたものであり、例えば木粉樹脂複合材4の全量に対する木粉4aの配合比は20〜70%(重量比)が望ましく、このような配合比で押し出し又はプレスすることにより木粉樹脂複合材4が形成されるものである。また木粉4aの粒径d(図3)は100メッシュ以下が望ましい。さらに十分な表面硬度を得るために、木粉樹脂複合材4の厚さは少なくとも2mm以上が望ましいが、もちろん、これら数値に限定されるものではない。また、配合される熱可塑性樹脂4bとしては、例えば塩化ビニル樹脂、ABS樹脂などと比較して安価で、しかも耐熱性に優れたポリプロピレン樹脂のようなオレフィン系熱可塑性合成樹脂が望ましい。もちろん、ポリプロピレン樹脂に限らず、ポリエチレン樹脂或いはそれ以外の樹脂であってもよい。なお、木粉樹脂複合材4中には、上記木粉4a、熱可塑性合成樹脂4bの他に、酸無水物で変成した熱可塑性合成樹脂が添加してあってもよく、また必要に応じてこれに加えて無機物を添加してあってもよい。
【0015】ここで、押し出し成形を可能とするために、図3(a)に示すように、木粉樹脂複合材4の厚さDは0.1mm以上とされている。0.1mm以上とすることで押し出し成形可能となり、また、木粉4aの径dは0.1mm以上あるため、木粉樹脂複合材4の厚みDが0.1mm以下だと、押し出し成形不可となるからである。さらに木粉樹脂複合材4の層厚方向Aにおいて0.1mm以上の径dの木粉4aが少なくとも1個が存在することによって、木粉樹脂複合材4の特有の寸法安定性等の性質が得られるものである。図3(b)は木粉4aが層厚方向Aにおいて複数個存在している場合を示している。
【0016】さらに床材1の表面には、V溝状の化粧溝8が間隔をあけて複数本凹設されている。各化粧溝8は、図2に示すように、表面化粧材3から木粉樹脂複合材4に達する深さcを有しており、この化粧溝8は床材1表面にアクセントをつけて外観デザインを向上させる働きをする。なお、化粧溝8は必ずしもV溝に限らず、U溝或いはその他の溝形状であってもよいものである。
【0017】しかして、表層に木粉樹脂複合材4を用いることによって、表面硬度が高く耐荷重性を確保できるので、耐クラック性、耐傷性を向上させることができ、例えばキャスター付き家具の使用や、物の落下などの衝撃による傷付きや凹みの発生が生じにくくなる上に、木粉樹脂複合材4は合板と比較して、温湿度に対する寸法安定性が高い材料であり、従って、表面化粧材3の吸湿による突き上げ、反り、或いは乾燥による目隙、表面化粧材3のクラック発生などを防止できるようになる。
【0018】また、木粉樹脂複合材4の厚さDを0.1mm以上としたことにより、押し出し成形が可能となり、生産性が向上し、さらに図3(a)のように木粉樹脂複合材4の層厚方向Aにおいて0.1mm以上の径dの木粉4aが少なくとも1個が存在することとなり、従って、木粉樹脂複合材4による特有の効果である耐クラック性、耐傷性等を保ちながら、温湿度に対する寸法安定性向上が得られるようになる。さらに、床材1の表面には、表面化粧材3から木粉樹脂複合材4に達する深さのV溝状の化粧溝8が形成されているので、化粧溝8によって外観デザイン性を向上させることができ、しかも化粧溝8は表面化粧材3から木粉樹脂複合材4に達する深さc(基材2の表面に達しない深さ)を有しているため、化粧溝8を深くしたものであるにもかかわらず、ケバ立ち等が生じなくなり、従って、外観デザイン性を向上させながら、化粧溝8へのストッキング、靴下の引掛かりをなくして歩行感を良くすることができるという利点がある。
【0019】ここで、表面化粧材3としては、天然木突き板を用いるのが望ましい。天然木突き板を表面化粧材3に用いることにより、木質の外観を有しながら寸法安定性、耐クラック性、耐傷性に優れた耐水性の高い床材1が得られるようになる。
【0020】さらに、表面化粧材3として突き板シートを用いてもよい。この突き板シートとしては、例えば塗装を施した突き板にポリプロピレンなどのシートをラミネートしたものを用いるのが望ましく、この場合、突き板が破れにくくなり、従って、突き板表面への研磨、塗装工程なしに、天然木突き板に塗装を施したものと同様の外観を得ることができるようになる。つまり、突き板シートを表面化粧材3に用いることで、木質の外観を有しながら寸法安定性、耐クラック性、対傷性に優れた耐水性の高い床材1を得ることができるようになる。
【0021】
【実施例】以下、本発明の実施例1,2とその比較例を説明する。
(実施例1)10.5mm厚の合板の表面に、0.5mm厚の木粉ポリプロピレン複合材と、0.25mm厚の表面化粧単板とを積層一体化する。木粉ポリプロピレン複合材の配合比は、木粉:ポリプロピレン=50:50(重量比)とする。また表面化粧単板と木粉ポリプロピレン複合材とは、SBR系接着剤、メラミン系接着剤で接着し、一方、木粉ポリプロピレン複合材と合板とは、ウレタン変性ビニル樹脂接着剤で接着する。さらに床材表面は現行商品と同様のウレタン塗装仕上げとする。
(実施例2)10.5mm厚の合板の表面に、0.5mm厚の木粉ポリプロピレン複合材と、紙間強度を向上させた強化紙(厚さ70μm、目付50g/m2)と、0.25mm厚の表面化粧単板とを積層一体化した。ここで、木粉ポリプロピレン複合材の配合比は、木粉:ポリプロピレン=50:50(重量比)とする。また表面化粧単板と強化紙と木粉ポリプロピレン複合材とは、SBR系接着剤、メラミン樹脂で接着する。また木粉ポリプロピレン複合材は強化紙に熱融着で貼り合わせる。木粉ポリプロピレン複合材と合板とは、ウレタン変性ビニル樹脂接着剤で接着する。さらに実施例1と同様、床材表面は現行商品と同様のウレタン塗装仕上げとする。
(比較例)MDF複合合板に、表面化粧単板を貼り、総厚12mmの木質床材を形成する。
【0022】以下、上記本発明の実施例1,2の床材と比較例1の床材との評価を以下の表1に示す。
【0023】
【表1】


上記表1により、本発明の実施例1,2の床材では、MDFやスライス単板に比して、耐水性、耐クラック性、耐傷性が良く、寸法安定性が良く、優れた寸法精度が得られることがわかった。
【0024】
【発明の効果】上記のように本発明のうち請求項1記載の発明に係る床材は、基材の表面側に木粉樹脂複合材を介して表面化粧材が積層されているので、表層に木粉樹脂複合材を用いることによって、表面硬度が高く且つ平滑な表面が得られるようになり、耐クラック性、耐傷性を向上させることができ、例えばキャスター付き家具の使用や、物の落下などの衝撃による傷付きや凹みの発生が生じにくくなると共に、表面の平滑化によって化粧溝へのストッキング、靴下の引掛かりを生じにくくすることができ、さらに、木粉樹脂複合材は合板と比較して、温湿度に対する寸法安定性が高い材料であるので、反りや目隙、表面化粧材のクラックの発生などの低減を図ることができる。また、木粉樹脂複合材の厚さを少なくとも0.1mm以上としたので、押し出し成形が可能となり、そのうえ木粉樹脂複合材の層厚方向において、0.1mm以上の径の木粉が少なくとも1個が存在することになり、従って、耐クラック性、耐傷性等を保ちながら、温湿度に対する寸法安定性を向上させることができる耐水性の高い床材を得ることができる。
【0025】また請求項2記載の発明は、請求項1記載の効果に加えて表面化粧材から木粉樹脂複合材に達する化粧溝が設けられているので、化粧溝が基材まで達しないので、従来のような木質板に化粧溝を形成した場合のようなケバ立ち等が生じなくなり、従って、化粧溝の深さを深くしたにもかかわらず、化粧溝へのストッキング、靴下の引掛かりをなくすことができ、外観を向上させながら、歩行感を良くすることができるものである。
【0026】また請求項3記載の発明は、請求項1記載の効果に加えて、表面化粧材は天然木突き板であるので、天然木突き板を表面化粧材に用いることによって、木質の外観を有しながら寸法安定性、耐クラック性、耐傷性に優れた耐水性の高い床材を得ることができる。
【0027】また請求項4記載の発明は、請求項1記載の効果に加えて、表面化粧材は突き板シートであるので、例えば塗装を施した突き板にポリプロピレンなどのシートをラミネートした突き板シートを表面化粧材に用いることにより、突き板が破れにくくなり、従って、突き板表面への研磨、塗装工程なしに、天然木突き板に塗装を施したものと同様の木質の外観を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す一部省略断面図である。
【図2】図1のイ部の拡大断面図である。
【図3】(a)(b)は木粉樹脂複合材の厚みと木粉の径との関係を説明する概略図である。
【図4】同上の床材の施工状態を説明する斜視図である。
【図5】従来の床材の断面図である。
【符号の説明】
1 床材
2 基材
3 表面化粧材
4 木粉樹脂複合材
4a 木粉
4b 樹脂
8 化粧溝
D 木粉樹脂複合材の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基材の表面側に木粉樹脂複合材を介して表面化粧材が積層されてなる床材であって、木粉樹脂複合材の厚さが少なくとも0.1mm以上であることを特徴とする床材。
【請求項2】 表面化粧材から木粉樹脂複合材に達する化粧溝が設けられていることを特徴とする請求項1記載の床材。
【請求項3】 表面化粧材は天然木突き板であることを特徴とする請求項1記載の床材。
【請求項4】 表面化粧材は突き板シートであることを特徴とする請求項1記載の床材。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2000−64569(P2000−64569A)
【公開日】平成12年2月29日(2000.2.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−240885
【出願日】平成10年8月26日(1998.8.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】