説明

床マット

【課題】 切断時にずれが少なく、貼着時にゆがみや歪が生じにくい布帛を用い、商品価値のある床マットを提供する。
【解決手段】 この床マットは、床マット本体1の上面に、接着剤2によって布帛3が貼着されてなる。布帛3は、表地と裏地、及び表地と裏地とを繋ぐ連結糸で構成され、表地と裏地の両方が、略六角形状又は略菱形状の透かし目6を持つメッシュ状組織であるダブルラッセル編地である。そして、表地及び/又は裏地を構成している編糸中に、バインダー繊維が混入されている。バインダー繊維は、その溶融又は軟化により、編糸を構成しているフィラメント間を融着している。床マット本体1には、貫通孔4が設けられている。この貫通孔4の径は、透かし目6の径よりも大きく、布帛3表面からの雨水等の水は、床マット本体1を通って、良好に床に流下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保育園や幼稚園の廊下、浴場の廊下、プールサイド、ベランダ、ビルや住居の玄関口等に敷設して使用する床マットに関し、その表面にクッション性の良好な布帛が貼着した床マットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、保育園等の廊下には、大径の貫通孔を多数設けると共に、この貫通孔以外の足裏と接する面に、滑り防止のための小さな凹凸を設けた合成樹脂製床マットが敷設されている。また、浴場の廊下やプールサイドにも、このような合成樹脂製床マットが敷設されている(特許文献1)。これは、雨水等の水が貫通孔を通って床に流れ落ちるようにして、床マット表面に水が滞留しないようにし、人が歩いたときの滑りを防止するために敷設されるものである。
【0003】
このような合成樹脂製床マットは、滑り防止のためには優れているが、表面は比較的硬い合成樹脂が露出しているため、園児が転ぶと怪我をすることがあったり、裸足で人が歩いたりするには、足裏が痛いということがあった。また、合成樹脂製床マットに直射日光が当たると、足裏が熱いということもあった。
【0004】
【特許文献1】特開2000−110332公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このため、本発明者は、床マット本体表面に布帛を貼着することとし、布帛の中でもクッション性に優れているダブルラッセル編地を貼着することとした。タブルラッセル編地とは、表地と裏地、及び表地と裏地とを繋ぐ連結糸で構成されているもので、立体編物と呼称されるものであり、クッション性に優れている。しかしながら、ダブルラッセル編地は、このクッション性のゆえに、カッターできれいに切断できないということがあった。すなわち、表地及び/又は裏地にカッターを当接して圧力を負荷すると、連結糸が倒れることにより、当接箇所がずれて、きれいに切断できないということがあった。
【0006】
床マット本体は、一般的に四角形状となっており、それを連結して一定の大きさとすることが多い。したがって、床マット本体の形状に合致させるよう、ダブルラッセル編地を切断しなければならない。したがって、きれいに切断できないと、商品価値のある床マットが提供できないのである。
【0007】
そこで、本発明者は、ダブルラッセル編地を良好に切断しうる方法を検討していたところ、表地及び/又は裏地を硬くして形態安定性を付与する方法に想い至った。そして、表地及び/又は裏地を構成している編糸中に、熱融着繊維を混入させ、編糸を構成しているフィラメント同士を融着させたところ、形態安定性が向上し、良好な切断が可能になることが判明した。さらにまた、形態安定性に優れているため、床マット本体に接着剤で貼着するときに、ゆがみや歪が生じにくいことも判明した。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、床マット本体の上面に、接着剤によって布帛が貼着されてなる床マットにおいて、該布帛は、表地と裏地、及び該表地と該裏地とを繋ぐ連結糸で構成され、該表地と該裏地の両方が、略六角形状又は略菱形状の透かし目を持つメッシュ状組織であるダブルラッセル編地であって、該表地及び/又は該裏地を構成している編糸中に、バインダー繊維が混入されており、該バインダー繊維によって編糸を構成しているフィラメント間が融着されていることを特徴とする床マットに関するものである。
【0009】
本発明に係る床マットは、床マット本体1の上面に、接着剤2によって、布帛3が貼着されてなるものである。床マット本体1としては、従来から用いられている床マットを用いることができる。たとえば、スノコ状のものや、多数の貫通孔を持つ合成樹脂成型品が用いられる。本発明においては、床マット本体1は、雨水等の水を下方に流下させるための貫通孔4が設けられているものが好ましい。また、床マット本体1が床と密着して通気性を阻害しないように、脚部5が間隔を置いて設けられているものが好ましい。貫通孔4の形状は任意であって、たとえば、四角形状や円形状等のものが用いられる。貫通孔4の径は、本発明で用いる布帛3に設けられている透かし目6の径よりも大きい方が好ましい。貫通孔4の径が小さいと、布帛3表面からの雨水等が、床マット本体1を通って流下しにくい傾向となる。なお、本発明でいう径とは、貫通孔4及び透かし目6が円形のときは、その直径のことを意味し、その他の形状のときは、その面積を持つ仮想円の直径のことを意味している。
【0010】
本発明においては、布帛3として、ダブルラッセル編地が採用される。ダブルラッセル編地は、ダブルラッセル編機によって編成され、表地と裏地、及びこの両者を繋ぐ連結糸で構成されてなるものである。このようなダブルラッセル編地は、従来周知のものであるが、表地及び裏地の組織としては種々のものが存在する。本発明においては、表地と裏地の両方が、略六角形状又は略菱形状の透かし目6を持つメッシュ状組織のものが採用される。透かし目6を持つものを採用する理由は、布帛3表面の水及び細かなゴミを、床マット本体1に流下させるためである。そして、上記したように、床マット本体1に流下してきた水及び細かなゴミは、貫通孔4を通って、床表面に流下してゆくのである。このようなメッシュ状組織は、後述する実施例にあるように、たとえば、隣り合う二本の編糸を左右に振らしながら、編成することによって、容易に得ることができる。
【0011】
本発明においては、表地及び/又は裏地を構成している編糸中には、バインダー繊維が混入されている。表地及び/又は裏地の編糸の素材としては、一般的に、ポリエステルマルチフィラメントやナイロンマルチフィラメント等の合成マルチフィラメントが用いられる。なお、連結糸としては、一般的に、ポリエステルモノフィラメントやナイロンモノフィラメントが用いられる。バインダー繊維は、編糸や連結糸が溶融しない温度で、少なくともその表面が溶融又は軟化するものである。たとえば、低融点成分を鞘とし、高融点成分を芯とした芯鞘型バインダー繊維が用いられる。低融点成分及び高融点成分の組み合わせとしては、低融点ポリエステル/高融点ポリエステルや低融点ナイロン/高融点ナイロン等が用いられる。具体的には、商品名「メルティ」(ユニチカファイバー株式会社製)、フロールM(同前)又は「コルネッタ」(同前)等が用いられる。このバインダー繊維を編糸に混入させた後、加熱処理することによって、表地又は裏地の編糸を構成する各フィラメント相互間を融着させる。これによって、表地又は裏地の形態安定性が向上し、ひいてはダブルラッセル編地全体の形態安定性も向上して、カッターできれいに切断できるのである。
【0012】
本発明で用いる布帛3(ダブルラッセル編地)を所定の大きさに、カッターで切断した後、これを床マット本体1表面に接着剤2で貼着することによって、本発明に係る床マットを得ることができる。接着剤2としては、従来公知のものを採用でき、特に、合成マルチフィラメントからなる編糸で構成された表地及び/又は裏地を持つダブルラッセル編地と、合成樹脂製床マット本体とを貼着する場合には、ポリウレタン樹脂よりなる反応型ホットメルト接着剤を採用するのが好ましい。床マット本体1の合成樹脂とダブルラッセル編地の編糸の両者に親和性があり、反応型であるため、強固な貼着が可能となるからである。
【0013】
床マット本体1として四角形状のものを採用したときは、布帛3もその形状に合致するよう、四角形状に切断して、接着剤2によって貼合して、本発明に係る床マットを得る。また、床マット本体1の少なくとも一辺、好ましくは全ての辺に繋ぎ片7を設けておくのも好ましい。繋ぎ片7を設けておくことにより、四角形状やその他の形状の床マットを、平面方向に連結して、所定の大きさ及び所定の形状の床マットとして使用しうるからである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る床マットは、床マット本体の上面に、特定の布帛が貼着されてなるものである。すなわち、透かし目を持つメッシュ状組織であるダブルラッセル編地であって、表地及び/又は裏地を構成している編糸中に、バインダー繊維が混入され、このバインダー繊維によって編糸を構成しているフィラメント間が融着されている特定の布帛を用いるものである。この布帛は、表地及び/又は裏地の編糸がバインダー繊維の融着によって、剛直化して、形態安定性が向上している。したがって、ダブルラッセル編地よりなるものであるにも拘わらず、それをカッターで切断する際に、ずれにくくなって、きれいに切断しうるという効果を奏する。また、切断後、床マット本体に接着剤で貼着する際にも、形態安定性が向上しているので、ゆがみや歪が少なく、きれいに貼着しうるという効果を奏する。
【実施例】
【0015】
実施例
[ダブルラッセル編地の準備]
6枚筬を具備したダブルラッセル編機を用いて、L1〜L6筬に、下記糸条を供給した。
1:470デシテックス/48フィラメントの緑原着のポリエステルマルチフィラメント
2:470デシテックス/48フィラメントの緑原着のポリエステルマルチフィラメント
3:240デシテックスの緑原着のナイロンモノフィラメント
4:240デシテックスの緑原着のナイロンモノフィラメント
5:470デシテックス/48フィラメントの緑原着のポリエステルマルチフィラメント
6:30番手のポリエステル紡績糸の双糸(ユニチカファイバー社製、商品名「コルネッタ」品番「CL10」。このポリエステル紡績糸は、芯鞘型ポリエステル繊維よりなるもので、鞘成分が融点160℃の低融点ポリエステル成分であって、バインダー繊維として機能するものである。)
【0016】
そして、図2に示す組織で編成した。図2に示す組織を4テンポ表示すると、以下のとおりである。
1:2111/1222/1011/1211/1011/1211/1011/1222/2122/2322/2122/2322/2122/2322
2:1222/2122/2322/2122/2322/2122/2322/2111/1211/1011/1211/1011/1211/1011
3:2110/1210/1210/1210/1210/1210/1210/1223/1223/2123/2123/2123/2123/2123
4:1223/2123/2123/2123/2123/2123/2123/2110/1210/1210/1210/1210/1210/1210
5:1112/1110/1112/1110/1112/1101/1112/2221/2223/2221/2223/2221/2223/2221
6:2221/2223/2221/2223/2221/2223/2221/1112/1110/1112/1110/1112/1110/1112
【0017】
得られたダブルラッセル編地は、表地及び裏地が略六角形状の透かし目を持つメッシュ状組織で構成された緑色の布帛であり、この表地及び裏地が連結糸(緑原着のナイロンモノフィラメント)で連結されたものであった。そして、これを160℃の条件で加熱処理し、200cm巾にプレセットした。この加熱処理によって、30番手のポリエステル紡績糸の双糸の鞘成分が溶融又は軟化し、緑原着のポリエステルマルチフィラメントが融着した。この結果、裏地の形態安定性が向上し、そのため、ダブルラッセル編地全体も、形態安定性が向上した。
【0018】
このダブルラッセル編地を、鋏で切断したところ、ずれが少なく、きれいに切断することができた。そして、切断したダブルラッセル編地の片面に、ポリウレタン樹脂よりなる反応型ホットメルト接着剤(ノーテープ工業社製、商品名「RHC−500」)を、ロールコーターで500g/m2塗布した後、この塗布面に、合成樹脂製で貫通孔を多数持つ床マット本体の表面が当接するようにして積層した。この結果、床マット本体に、ダブルラッセル編地が貼着された床マットが得られ、ダブルラッセル編地の端縁もきれいであり、またその表面にゆがみや歪もなく、きれいな床マットが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一例に係る床マットの断面図を示したものである。
【図2】実施例で採用したタブルラッセル編地の編組織図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床マット本体の上面に、接着剤によって布帛が貼着されてなる床マットにおいて、該布帛は、表地と裏地、及び該表地と該裏地とを繋ぐ連結糸で構成され、該表地と該裏地の両方が、略六角形状又は略菱形状の透かし目を持つメッシュ状組織であるダブルラッセル編地であって、該表地及び/又は該裏地を構成している編糸中に、バインダー繊維が混入されており、該バインダー繊維によって編糸を構成しているフィラメント間が融着されていることを特徴とする床マット。
【請求項2】
床マット本体が、大径の貫通孔を多数設けた合成樹脂製床マット本体である請求項1記載の床マット。
【請求項3】
床マット本体の貫通孔の径は、透かし目の径よりも大きい請求項2記載の床マット。
【請求項4】
床マット本体が、四角形状である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の床マット。
【請求項5】
床マット本体同士を平面方向に連結するための繋ぎ片が、床マット本体の少なくとも一辺に設けられている請求項4記載の床マット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−237624(P2008−237624A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83115(P2007−83115)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(592197315)ユニチカ通商株式会社 (84)
【Fターム(参考)】