床下暖房システム
【課題】基礎断熱住宅に空気対流式の床下暖房システムを適用する場合において、さほどコストアップを伴うことなく効果的に熱効率を向上させる。
【解決手段】床下を閉鎖空間とした基礎断熱住宅における床下暖房システムS1であって、床下空間10内に、温風の吹き出しダクト21を備えるヒートポンプエアコン2を設置し、ダクト21の吹き出し口22から吹き出される温風を床下空間10に対流させることで、床上の室内空間を暖房するよう構成されている。このような床下暖房システムS1において、ダクト21の温風吹き出し口22の近傍に位置する土間コンクリート102の表面に、断熱板4を局所的に敷設する。これにより、吹き出された温風が保有する熱が地盤へ流出することを規制し、もってヒートポンプエアコン2のエネルギー効率を向上させる。
【解決手段】床下を閉鎖空間とした基礎断熱住宅における床下暖房システムS1であって、床下空間10内に、温風の吹き出しダクト21を備えるヒートポンプエアコン2を設置し、ダクト21の吹き出し口22から吹き出される温風を床下空間10に対流させることで、床上の室内空間を暖房するよう構成されている。このような床下暖房システムS1において、ダクト21の温風吹き出し口22の近傍に位置する土間コンクリート102の表面に、断熱板4を局所的に敷設する。これにより、吹き出された温風が保有する熱が地盤へ流出することを規制し、もってヒートポンプエアコン2のエネルギー効率を向上させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床下を閉鎖空間とした基礎断熱住宅において、床下空間内に温風を対流させることで床上の室内空間を暖房する床下暖房システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に比較的温暖な地域の住宅では、床下に換気口を設けて床下空間を開放した床裏断熱工法が採用されている。しかし、床裏断熱式の住宅では、夏期において高温高湿な空気が低温環境の床下に侵入することで床下結露が発生し、躯体寿命を縮めてしまうという危惧がある。このため、専ら寒冷地で採用されていた高断熱・高気密住宅、すなわち住宅の床下換気口を閉鎖して床下外周部を断熱することで床下を閉鎖空間とした基礎断熱住宅が、温暖地でも採用されつつある。
【0003】
一方、このような基礎断熱住宅において、例えば特許文献1に開示されているように、閉鎖された床下空間内に放熱器を設置し、前記床下空間を加温することで床上の室内空間を暖房する床下暖房システムが知られている。かかる床下暖房システムとして、温風の吹き出しダクトを備えるヒートポンプエアコン(暖房設備)を用い、前記ダクトから吹き出される温風を床下空間に対流させる空気対流式のシステムが、設備規模やコスト面、安全面において優れていることから注目されている。
【特許文献1】特開2001−201075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
床下暖房システムを採用する場合においては、熱効率を向上させるには、土間コンクリート(地盤)への熱流出を可及的に抑制することが不可欠となる。このことは、上述の空気対流式の床下暖房システムを採用する場合においても同様であるが、ダクトから温風を吹き出すという態様に即した最適な熱効率向上対策を施与することが求められる。
【0005】
しかしながら、基礎断熱住宅に空気対流式の床下暖房システムを適用する場合において、さほどコストアップを伴うことなく効果的に熱効率を向上させる施策は特段提案されていないのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる床下暖房システムは、床下を閉鎖空間とした基礎断熱住宅における床下暖房システムであって、床下空間内に、温風の吹き出しダクトを備える暖房設備を設置し、前記ダクトから吹き出される温風を前記床下空間に対流させることで、床上の室内空間を暖房するよう構成された床下暖房システムにおいて、前記ダクトの温風吹き出し口の近傍に位置する土間表面に、吹き出された温風が保有する熱が地盤へ流出することを規制する断熱板を局所的に敷設したことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、ダクトの温風吹き出し口の近傍に位置する土間から地盤への熱流出が断熱板により抑止される。本発明者らの研究によれば、空気対流式の床下暖房システムにおいては、床下空間全体において地盤への熱の流出は避けられないが、かかる熱流出はダクトの温風吹き出し口の近傍に位置する土間部分において特に顕著であることが判明した。そこで、温風吹き出し口の近傍に位置する土間表面に局所的に断熱板を敷設することで、熱流出抑止効果を効率的に発揮させることができるようになる。
【0008】
上記構成において、前記ダクトの温風吹き出し口が、前記床下空間の高さ方向の略中間部に設置されると共に、床面と略水平な方向に温風が吹き出されるよう構成されてなり、前記吹き出し口から吹き出される温風が土間表面に直接的に吹き当たる部位を覆うように、前記断熱板が土間表面上に敷設されることが望ましい(請求項2)。この構成によれば、床下空間に最適な態様で温風を供給できると共に、そのようなダクトから吹き出される温風が有する熱の地盤への流出が、当該温風が直接的に吹き当たる土間表面部位に敷設された断熱板により極めて効果的に抑止されるようになる。
【0009】
また、上記構成において、前記床下空間は複数の床下空間に区画されたものであり、それぞれの床下空間区画は所定の連通部を介して互いに連通状態とされてなり、1の床下空間区画内に前記温風の吹き出しダクトを備える暖房設備並び断熱板が設置され、他の床下空間区画へ前記連通部を通して温風が対流されるよう構成されていることが望ましい(請求項3)。この構成によれば、床下空間が複数の床下空間に区画されている場合でも、1の床下空間区画内に設置されている暖房設備により、他の床下空間区画内にも温風を対流させることができる。しかも、1の床下空間区画内に敷設された断熱板により、地盤への熱流出が抑制されるようになる。
【0010】
このような構成において、前記連通部に、前記温風の対流を促進するための補助ファンを配置することが望ましい(請求項4)。この構成によれば、1の床下空間区画から他の床下空間区画への連通部を介した温風の対流が補助ファンにより促進され、暖房設備が備えられていない他の床下空間区画についても積極的に加温できるようになる。
【0011】
ここで、前記連通部が複数設けられ、複数の床下空間区画を循環する空気流路が形成可能とされている場合において、前記空気流路を構成する連通部に補助ファンが各々設けられ、各補助ファンの送風方向が、前記空気流路に沿って前記複数の床下空間内に温風を循環させ得る方向とされている構成とすることができる(請求項5)。この構成によれば、補助ファンの運転により前記空気流路に沿って温風が循環され、床下空間全体に温風を行き渡らせることができる。
【0012】
また、前記連通部が複数設けられ、複数の床下空間区画を循環する空気流路が複数形成可能とされている場合において、前記複数の空気流路を構成可能な連通部に補助ファンが各々設けられ、各補助ファンの送風方向を制御することで、前記複数の空気流路のいずれかに沿って温風を循環させ得るよう構成することができる(請求項6)。この構成によれば、ニーズに応じて温風の循環経路を設定することができ、例えば所望の室内空間を選択的に暖房することも可能となる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1にかかる床下暖房システムによれば、断熱板の敷設により、地盤への熱流出を規制できる。しかも、ダクトの温風吹き出し口の近傍に位置する土間表面という必要最小限の部位に断熱板を敷設するだけで熱効率を大きく改善することができる。従って、さほどコストアップを招来することなく、当該床下暖房システムのエネルギー効率を向上させることができる。
【0014】
請求項2にかかる床下暖房システムによれば、ダクトから吹き出される温風が直接的に吹き当たる土間表面部位に敷設された断熱板により、地盤への熱流出が抑止される。すなわち、最も熱が奪われ易い温風の吹き出し部分において地盤への熱流出が抑止されるので、効果的に熱効率を向上させることができる。
【0015】
請求項3にかかる床下暖房システムによれば、床下空間が複数の床下空間に区画されている住宅であっても、同様にエネルギー効率を向上させることができる。
【0016】
請求項4にかかる床下暖房システムによれば、補助ファンの運転により連通部を介した温風の対流が促進されるので、温風吹き出しダクトから吹き出される温風の利用効率が高くなると共に、温風の吹き出しダクトを備えた床下空間区画と備えていない床下空間区画との温度のバラツキを抑制できるようになる。
【0017】
請求項5にかかる床下暖房システムによれば、補助ファンの運転により床下空間全体に温風を行き渡らせることができるので、床下空間上の各室内空間を満遍なく暖房することができる。
【0018】
請求項6にかかる床下暖房システムによれば、温風の循環経路を自在に設定することができ、所望の室内空間を選択的に暖房することも可能であるので、ユーザの生活スタイルに合わせた暖房設定が容易に、しかも別段の工事等を要することなく行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本発明の具体的な実施形態につき説明する。
図1は、本発明にかかる床下暖房システムS1の構成を示す模式図であって、住宅の床板部分を取り外して見た基礎構造体100の上面図である。また図2は、基礎構造体100の側断面図である。この基礎構造体100は、基礎コンクリート101及び土間コンクリート102にて構築されており、前記基礎コンクリート101の高さに応じた床下空間10が形成されている。床下空間10は、居室のサイズ等に合わせて複数の床下空間に区画されている。ここでは、住宅の中心からみて、北西〜西方位の第1床下空間11、南西方位の第2床下空間12、南東方位の第3床下空間13、東方位の第4床下空間14及び北東方位の第5床下空間15が備えられている例を示している。
【0020】
また、この基礎構造体100は、いわゆる基礎断熱工法が採用されたもので、外周部を構成する基礎コンクリート101には換気口が備えられておらず、床下空間10は閉鎖空間とされている。そして、図2に示すように、外周部を構成する基礎コンクリート101の周囲にも断熱材103が施与されており、躯体部分だけでなく、基礎部分も断熱されている。一方、第1〜第5床下空間11〜15を区画する基礎コンクリート101には連通部W1〜W6が設けられており、この連通部W1〜W6を介して第1〜第5床下空間11〜15は互いに連通状態とされている。なお、前記連通部W1〜W6は、床下空間10のメンテナンス等の際における作業員の通路としても活用されるものである。
【0021】
このような基礎構造体100において、第1床下空間11には、ヒートポンプエアコン2(暖房設備)が据え付けられている。このヒートポンプエアコン2は、床下空間10に温風Hを供給して床下空間10を加温するためのもので、前記温風を吹き出すダクト21を備えている。なお、当該ヒートポンプエアコン2には、図示省略の室外機も備えられている。
【0022】
ヒートポンプエアコン2は、床板5の下面に組み付けられている大引き51、51(根太であっても良い)を利用して吊止め支持されている。すなわち、大引き51、51に吊り具23、23が取り付けられ、前記吊り具23、23の下端に平板状の支持台24が水平方向に架け渡されている。そして、前記支持台24上に、ヒートポンプエアコン2が載置されている。なお、ヒートポンプエアコン2は、このような吊止め支持を行わず、土間コンクリート102上に据え付けるようにしても良い。
【0023】
ダクト21は蛇腹構造を備えた筒体からなり、ヒートポンプエアコン2にて生成された温風を床下空間10に吹き出す温風吹き出し口22を有している。この温風吹き出し口22は、図2に示すように、第1床下空間11(床下空間10)の高さ方向の略中間部に配置され、これにより床板5と略水平な方向に温風Hが吹き出されるようになっている。このようなダクト21から吹き出される温風Hは、第1床下空間11において対流されると共に、連通部W1〜W6を通して他の床下空間、すなわち第2〜第5床下空間12〜15へも対流(循環)される。
【0024】
なお、温風Hの対流を促進するために、温風吹き出し口22の位置に合わせ、連通部W1、W2には、小型の扇風機等からなる補助ファン31、32が配置されている。ここで、補助ファン31の送風方向は、第1床下空間11から第2床下空間12へ温風Hを向かわせる方向とされ、また補助ファン32の送風方向は、第1床下空間11から第4床下空間14へ温風Hを向かわせる方向とされている。
【0025】
これにより、図1に矢印Fで示すように、温風Hが第1〜第5床下空間11〜15へ強制的に対流されるようになる。つまり、連通部W1〜W6を介した自然対流に比べて、積極的に温風Hが第1床下空間11から第2〜第5床下空間12〜15に向けて対流されるようになる。かかる温風Hの対流により第1〜第5床下空間11〜15が加温され、当該加温により上昇された第1〜第5床下空間11〜15の熱により床板5の上の室内空間Rが暖房されるものである。また、第1床下空間11で温風Hが長い時間滞留しないことから、第1床下空間11の土間コンクリート102(後述の断熱材4敷設部分を除いた箇所)から土中へ逃げる熱流出を抑止できるようになる。
【0026】
以上の通り構成された床下暖房システムS1において、本発明では、前記ダクト21の吹き出し口22から吹き出される温風Hが土間コンクリート102の表面に直接的に吹き当たる部位を覆うように、断熱板4が土間コンクリート102上に敷設される。すなわち断熱板4は、第1床下空間11の土間コンクリート102の全域に敷設されるのではなく、温風吹き出し口22の近傍に位置する土間コンクリート102の表面に局所的に敷設される。これにより、吹き出された温風Hが保有する熱が土間コンクリート102を通して地盤Gへ流出することが効率的に規制される。
【0027】
図3は、断熱板4の土間コンクリート102上への敷設状態を説明するための上面図である。図2で説明したように、温風Hはダクト21の吹き出し口22から床板5と略水平な方向へ吹き出されるが、吹き出し口22から吹き出された後は風速等のパラメータに応じて拡散する。この拡散により、土間コンクリート102の表面に直接的に温風Hの一部が吹き当たるようになる。図3に示す楕円スポット201は、このような温風Hの直接的な吹き当たり部分を示している。
【0028】
一般に、床下暖房システムにおいては、前記楕円スポット201部分からの熱流出、つまり温風吹き出し口22の近傍に位置する土間表面から地盤Gへの熱流出が最も大きいことから、当該部分における熱損失低減対策を施すことでエネルギー効率を高めることができる。換言すると、前記楕円スポット201部分にさえ熱損失低減対策を施せば、相当のエネルギー効率の改善を図ることができる。このような知見に鑑みて、断熱板4は、前記楕円スポット201をカバーするように土間コンクリート102上へ局所的に敷設されている。
【0029】
このような断熱板4を設けない場合、図4に示すように、土間コンクリート102の表面に直接的に温風Hの一部が吹き当たる部分(図4に符合102aで示す部分)から、温風Hが保有する熱が、地盤Gへ熱損失rとして吸熱(熱交換)される。このことは、床下暖房システムが所定時間稼動し、土間コンクリート102が暖められるまでのイニシャル段階において顕著となる。しかし、図1〜図3に示すように、土間コンクリート102の表面に直接的に温風Hの一部が吹き当たる部分に断熱板4を設けることで、上述のような熱損失rが効果的に抑止されるようになる。
【0030】
なお、図5に示すように、ダクト210の吹き出し口220を床板5側(上側)に配向させ、吹き出し口220から吹き出される温風Hが土間コンクリート102へ直接的に吹き当たらないようにすることも考えられる。しかし、このように吹き出し口220を設定すると、床板5への温風Hの吹き当たり量が多くなりすぎ、床板5が過剰に加温されてしまい床下空間10と床板5との温度差が大きくなり、結果として結露が発生してしまうため好ましくない。
【0031】
断熱板4としては、各種の断熱作用を有する部材を用いることができ、例えばグラスウール等の繊維系断熱材や、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート等のプラスチック材料を発泡させた発泡材料系断熱材等を用いることができる。なお断熱板4としては、長期間に亘る温風Hの吹き当たり対する耐性を有するよう、硬質部材からなる断熱材を用いることが望ましく、例えば押出発泡ポリスチレンボードからなる断熱材(幅1m×長さ2m×厚さ25〜50mm程度の平板)を好適に用いることができる。
【0032】
以上のように構成された床下暖房システムS1の動作について説明する。ヒートポンプエアコン2の電源が投入され暖房運転が開始されると、ダクト21の吹き出し口22から第1床下空間11内へ温風Hが吹き出される。この温風Hは、第1床下空間11内において対流し、これにより当該第1床下空間11内は加温されるようになる。この際、断熱板4により、吹き出し口22の近傍における土間コンクリート102から地盤Gへの熱流出が規制される。なお、ヒートポンプエアコン2の運転開始と同時に、補助ファン31、32の運転も開始される。
【0033】
補助ファン31の回転駆動により、第1床下空間11内に存在する暖気は、連通部W1を通して第2床下空間12へ、続いて連通部W3を通して第3床下空間13へ強制的に対流される。同様に、連通部W2を通して第4床下空間14へ、続いて連通部W5を通して第5床下空間15へ強制的に対流される。
【0034】
このようにヒートポンプエアコン2及び補助ファン31、32が運転されることで、床下空間10全体が昇温される。そして、床下空間10の温度が上昇することで、床板5上の室内空間Rが暖房されるものである。なお、ヒートポンプエアコン2が連続的に運転されることで、土間コンクリート102の温度が徐々に上昇し、これにより断熱板4が敷設されていない領域からの熱損失も少なくなる。
【0035】
以下、ダクト21の吹き出し口22の近傍に断熱板4を局所的に敷設した場合と、敷設しない場合とにおける各種の比較データについて説明する。図6は、図1に示すように、第1床下空間11における吹き出し口22の近傍に断熱板4を敷設する前と敷設した後とにおける(敷設日は、図中の点線で示す某年「12月6日」である)、ヒートポンプエアコン2運転後の第1床下空間11の温度(気温)を、敷設日の前後1週間において計測して作成したグラフである。ここでは、暖房能力が6.0kWのヒートポンプエアコン2を1台用い、運転条件は2週間に亘り一定とした。
【0036】
図6において、符号601の曲線は、図1に示す第1床下空間11内の「北西」ポイント、符号602の曲線は、第1床下空間11内の「西」ポイントにおいてそれぞれ計測した温度である。また、符号603の曲線は、外気温を示すものである。図6から判るように、断熱板4を敷設する前に比べて、断熱板4の敷設後は、「北西」ポイント及び「西」ポイントのいずれにおいても、ヒートポンプエアコン2の運転条件を変更していないにもかかわらず全般的に温度が1〜3℃程度上昇しており、断熱板4の敷設により床下空間の通風性状が改善されたことが確認された。
【0037】
次に、図7は、第1床下空間11における吹き出し口22の近傍に断熱板4を敷設する前と敷設した後とにおける、土間コンクリート102の熱流を、熱流計を用いて計測して作成したグラフである。図6と同様に、計測ポイントは、図1に示す第1床下空間11内の「北西」ポイント及び「西」ポイントとした。図7において、符号611の曲線は、前記「北西」ポイントにおける土間コンクリート102の熱流、符号612の曲線は、「西」ポイントにおける土間コンクリート102の熱流をそれぞれ示している。なお、符号613で示す熱流の0レベルは、土間コンクリート102の熱レベルに相当するもので、前記0レベルを下回る熱流が観測されている時間帯は、地盤G側へ熱が流出している状態を示している。
【0038】
この図7からも明らかな通り、断熱板4の敷設後は、「北西」ポイント及び「西」ポイントのいずれにおいても、熱流が0レベルを下回る度合いが少なくなり、断熱板4により熱流出が抑止されていることが判る。また、「西」ポイントにおける熱損失も低減されていることが判る。
【0039】
続いて、ダクト21の温風吹き出し口22の近傍に断熱板4を敷設する場合と敷設しない場合とにおける、効果確認のためのシミュレーション結果について説明する。ここでは、図1に示す間取り条件(床下面積:70m2)を前提にして、
(1)床板5の、裏面の表面温度の推移(図8、図9)
(2)土間コンクリート102の、表面温度の推移(図10、図11)
(3)床板5及び地盤Gへの熱流の推移(図12、図13)
についてのシミュレーション結果を示す。ヒートポンプエアコン2は、床下設定温度:30℃、吹き出し口22における温風Hの吹き出し設定温度:46℃、温風Hの流量:300m3/hで運転するものとした。また、断熱板4は、幅1m×長さ2m×厚さ25mmの押出発泡ポリスチレンボードを温風吹き出し口22の近傍における土間コンクリート102上に敷設するものとした。
【0040】
(1)床板5の、裏面の表面温度の推移について
図8は、断熱板4を敷設しない場合の、前述の「北西」ポイント及び「西」ポイントにおける床板5の、2ヶ月スパンでみた裏面表面温度の推移の計算結果を示すグラフである。図8において、符号621の曲線は、前記「北西」ポイントにおける床板5の裏面表面温度、符号622の曲線は、「西」ポイントにおける床板5の裏面表面温度の推移をそれぞれ示している。図8のグラフに示すように、「北西」ポイントにおいては床板5の裏面表面温度は、概ね24℃〜28℃の範囲で推移し、また「西」ポイントにおいては、概ね29℃〜32℃の範囲で推移することが判る。
【0041】
一方、図9は、断熱板4を敷設した場合の、「北西」ポイント及び「西」ポイントにおける床板5の、2ヶ月スパンでみた裏面表面温度の推移の計算結果を示すグラフである。図9において、符号631の曲線は、前記「北西」ポイントにおける床板5の裏面表面温度、符号632の曲線は、「西」ポイントにおける床板5の裏面表面温度の推移をそれぞれ示している。図9のグラフに示すように、「北西」ポイントにおいては床板5の裏面表面温度は、概ね25℃〜28℃の範囲で推移し、また「西」ポイントにおいては、概ね29℃〜33℃の範囲で推移することが判る。このように、断熱板4を敷設しない場合に比べ、断熱板4を敷設することで床板5の裏面表面温度を全体的に1℃程度上昇させることができるようになる。
【0042】
(2)土間コンクリート102の、表面温度の推移について
図10は、断熱板4を敷設しない場合の、「北西」ポイント及び「西」ポイントにおける土間コンクリート102の、2ヶ月スパンでみた表面温度の推移の計算結果を示すグラフである。図10において、符号641の曲線は、前記「北西」ポイントにおける土間コンクリート102の表面温度、符号642の曲線は、「西」ポイントにおける土間コンクリート102の表面温度の推移をそれぞれ示している。図10のグラフに示すように、「北西」ポイントにおいては土間コンクリート102の表面温度は、概ね17℃〜24℃の範囲で推移し、また「西」ポイントにおいては、概ね17℃〜28℃の範囲で推移することが判る。
【0043】
一方、図11は、断熱板4を敷設した場合の、「北西」ポイント及び「西」ポイントにおける土間コンクリート102の、2ヶ月スパンでみた表面温度の推移の計算結果を示すグラフである。図11において、符号651の曲線は、前記「北西」ポイントにおける土間コンクリート102の表面温度、符号652の直線は、「西」ポイントにおける土間コンクリート102の表面温度の推移をそれぞれ示している。なお、ここでの「西」ポイントは、断熱板4の裏面に設定されたものとして算出を行っている。図11のグラフに示すように、「北西」ポイントにおいては床板5の裏面表面温度は、概ね17℃〜24℃の範囲で推移しており、図10の場合と同等であるが、「西」ポイントにおいては、17℃で一定である。このように、断熱板4を敷設しない場合に比べ、断熱板4を敷設することで「西」ポイントにおいて地盤Gへの熱流出を規制できるようになる。
【0044】
(3)床板5及び地盤Gへの熱流の推移
図12は、断熱板4を敷設しない場合の、吹き出しダクト21直近部(断熱板4の敷設領域部分)における床板5及び地盤Gへの、2ヶ月スパンでみた熱流の推移の計算結果を示すグラフである。図12において、符号661の曲線は床板5への熱流、符号662の曲線は地盤Gへの熱流の推移をそれぞれ示している。図12のグラフに示すように、床板5への熱流は2ヶ月の期間中に1000kcal/hから1600kcal/h程度まで上昇し、逆に地盤Gへの熱流は400kcal/hから150kcal/h程度まで下降していることが判る。
【0045】
一方、図13は、断熱板4を敷設した場合の、吹き出しダクト21直近部(断熱板4の敷設領域部分)における床板5及び地盤Gへの、2ヶ月スパンでみた熱流の推移の計算結果を示すグラフである。図13において、符号671の曲線は床板5への熱流、符号672の曲線は地盤Gへの熱流の推移をそれぞれ示している。図13のグラフに示すように、床板5への熱流は2ヶ月の期間中に1100kcal/hから1600kcal/h程度まで上昇し、逆に地盤Gへの熱流は300kcal/hから100kcal/h程度まで下降していることが判る。すなわち、床板5への熱流は、イニシャル期間において断熱板4を敷設しない場合に比べて100kcal/h程度多く、逆に地盤Gへの熱流は100kcal/h程度少なくなっている。つまり、イニシャル期間においてヒートポンプエアコン2のエネルギー効率を向上させることができるものである。
【0046】
以上、本発明の一実施形態に係る床下暖房システムS1を詳述したが、この床下暖房システムS1につき各種の変形実施が可能である。例えば、床下暖房システムS1においては、図1に示すように2つの補助ファン31、32を用いる例を示しているが、例えば第1床下空間11上の室内空間がユーザの主な居住空間であるような場合にあっては、補助ファン31、32の設置を省略しても良い。
【0047】
逆に、連通部W1〜W6の全てに補助ファンを設けるようにしても良い。図14は、そのような床下暖房システムS2の構成を示す模式図である。この床下暖房システムS2では、連通部W1〜W6に補助ファン31〜36が各々設けられている。図14に示すように、基礎コンクリート101に連通部W1〜W6が備えられている場合、第1床下空間11〜第5床下空間15のうちの複数を循環する空気流路としては、連通部W1−W3−W4−W5−W6を経由する第1空気流路A1と、連通部W2−W5−W6を経由する第2空気流路A2とが代表的なものとして挙げられる。補助ファン31〜36各々の送風方向は、第1空気流路A1若しくは第2空気流路A2に沿って、前記複数の床下空間内に温風を循環させ得る方向とされている。
【0048】
具体的には、補助ファン31の送風方向は第1床下空間11から第2床下空間12へ向けた方向、補助ファン33の送風方向は第2床下空間12から第3床下空間13へ向けた方向、補助ファン34の送風方向は第3床下空間13から第4床下空間14へ向けた方向、補助ファン35の送風方向は第4床下空間14から第5床下空間15へ向けた方向、補助ファン36の送風方向は第5床下空間15から第1床下空間11へ向けた方向とされており、これら補助ファンを運転することで第1空気流路A1に沿って温風を循環させ得るようになっている。また、補助ファン32の送風方向は第1床下空間11から第4床下空間14へ向けた方向とされており、補助ファン32、35、36を運転することで第2空気流路A2に沿って温風を循環させ得るようになっている。
【0049】
このように構成することで、補助ファン31〜36の運転により第1、第2空気流路A1、A2に沿って温風Hが循環され、第1床下空間11〜第5床下空間15の全体に温風を行き渡らせることができる。つまり、住宅の1階部分全体の床下空間10を加温できるようになる。これにより、第1床下空間11〜第5床下空間15の各室内空間を満遍なく暖房することができ、室内空間の温度のバラツキを抑制できるようになる。或いは、補助ファン32、35、36のみを運転することで、第2空気流路A2に沿った第1、第4、第5床下空間11、14、15を重点的に加温し、その床上の室内空間を選択的に暖房して熱効率を上げることも可能となる。
【0050】
また、補助ファン31〜36の送風方向を変更制御する制御部を設け、送風方向を暖房ニーズに応じて適宜変更できるようにすることが望ましい。この場合、補助ファン31〜36の各々に、その送風方向を変更させる駆動機構を付設し、前記制御部を備えたリモコン装置等により前記駆動機構に送風方向変更信号を送信する構成とすれば良い。このように構成することで、温風の循環経路を自在に設定することが可能となる。例えば、図14に示す補助ファン34、35の送風方向を略180度反転させることで、温風を第3床下空間13へ集中させることが可能となり、第3床下空間13の床上の室内空間を重点的に暖房することができるようになる。このような床下暖房システムS2によれば、所望の室内空間を選択的に暖房することも可能となるので、ユーザの生活スタイルに合わせた暖房設定が容易に、しかも補助ファン31〜36の送風方向を変更するだけで済むことから別段の工事等を要することなく行えるようになる。
【0051】
なお、連通部W1〜W6は、上述した通り床下空間10のメンテナンス等の際において作業員の通路として利用されることから、補助ファン31〜36は通行時の妨げとならないよう取り外し自在な固定部を具備させることが望ましい。例えば、連通部W1〜W6の周辺の根太や大引きに対して簡易に固定可能なクリップ固定部を、各補助ファン31〜36に具備させることが望ましい。
【0052】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、暖房設備の一例としてヒートポンプエアコン2を例示したが、この他に温風Hを輻射可能な各種の放熱器を用いることができる。また、断熱板4の形態として、上面視で長方形状のものを用いる例を示したが、ダクト21の吹き出し口22の形状に合わせ、例えば楕円形、扇状に形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明にかかる床下暖房システムS1の構成を示す模式図であって、住宅の床板部分を取り外して見た基礎構造体の上面図である。
【図2】図1に示した基礎構造体の側断面図である。
【図3】断熱板の土間コンクリート上への敷設状態を説明するための上面図である。
【図4】断熱板を設けない、従来の床下暖房システムの構成を示す模式図である。
【図5】ダクトの吹き出し口を床板側(上側)に配向させた床下暖房システムの構成を示す模式図である。
【図6】吹き出し口の近傍に断熱板を敷設する前と敷設した後とにおける、床下空間の温度(気温)推移を示すグラフである。
【図7】吹き出し口の近傍に断熱板を敷設する前と敷設した後とにおける、土間コンクリートへの熱流を、熱流計を用いて計測して作成したグラフである。
【図8】断熱板を敷設しない場合(従来)の、床板の裏面表面温度の推移の計算結果を示すグラフである。
【図9】断熱板を敷設した場合(本発明)の、床板の裏面表面温度の推移の計算結果を示すグラフである。
【図10】断熱板を敷設しない場合(従来)の、土間コンクリートの表面温度の推移の計算結果を示すグラフである。
【図11】断熱板を敷設した場合(本発明)の、土間コンクリートの表面温度の推移の計算結果を示すグラフである。
【図12】断熱板を敷設しない場合(従来)の、吹き出しダクト直近部における床板及び地盤への熱流の推移の計算結果を示すグラフである。
【図13】断熱板を敷設した場合(本発明)の、吹き出しダクト直近部における床板及び地盤への熱流の推移の計算結果を示すグラフである。
【図14】本発明の他の実施形態にかかる床下暖房システムS2の構成を示す模式図であって、住宅の床板部分を取り外して見た基礎構造体の上面図である。
【符号の説明】
【0054】
10 床下空間
11〜15 第1〜第5床下空間
100 基礎構造体
101 基礎コンクリート
102 土間コンクリート(土間)
2 ヒートポンプエアコン(暖房設備)
21 ダクト
22 (温風の)吹き出し口
31〜36 補助ファン
4 断熱板
A1、A2 空気流路
H 温風
G 地盤
S1 床下暖房システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、床下を閉鎖空間とした基礎断熱住宅において、床下空間内に温風を対流させることで床上の室内空間を暖房する床下暖房システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に比較的温暖な地域の住宅では、床下に換気口を設けて床下空間を開放した床裏断熱工法が採用されている。しかし、床裏断熱式の住宅では、夏期において高温高湿な空気が低温環境の床下に侵入することで床下結露が発生し、躯体寿命を縮めてしまうという危惧がある。このため、専ら寒冷地で採用されていた高断熱・高気密住宅、すなわち住宅の床下換気口を閉鎖して床下外周部を断熱することで床下を閉鎖空間とした基礎断熱住宅が、温暖地でも採用されつつある。
【0003】
一方、このような基礎断熱住宅において、例えば特許文献1に開示されているように、閉鎖された床下空間内に放熱器を設置し、前記床下空間を加温することで床上の室内空間を暖房する床下暖房システムが知られている。かかる床下暖房システムとして、温風の吹き出しダクトを備えるヒートポンプエアコン(暖房設備)を用い、前記ダクトから吹き出される温風を床下空間に対流させる空気対流式のシステムが、設備規模やコスト面、安全面において優れていることから注目されている。
【特許文献1】特開2001−201075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
床下暖房システムを採用する場合においては、熱効率を向上させるには、土間コンクリート(地盤)への熱流出を可及的に抑制することが不可欠となる。このことは、上述の空気対流式の床下暖房システムを採用する場合においても同様であるが、ダクトから温風を吹き出すという態様に即した最適な熱効率向上対策を施与することが求められる。
【0005】
しかしながら、基礎断熱住宅に空気対流式の床下暖房システムを適用する場合において、さほどコストアップを伴うことなく効果的に熱効率を向上させる施策は特段提案されていないのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる床下暖房システムは、床下を閉鎖空間とした基礎断熱住宅における床下暖房システムであって、床下空間内に、温風の吹き出しダクトを備える暖房設備を設置し、前記ダクトから吹き出される温風を前記床下空間に対流させることで、床上の室内空間を暖房するよう構成された床下暖房システムにおいて、前記ダクトの温風吹き出し口の近傍に位置する土間表面に、吹き出された温風が保有する熱が地盤へ流出することを規制する断熱板を局所的に敷設したことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、ダクトの温風吹き出し口の近傍に位置する土間から地盤への熱流出が断熱板により抑止される。本発明者らの研究によれば、空気対流式の床下暖房システムにおいては、床下空間全体において地盤への熱の流出は避けられないが、かかる熱流出はダクトの温風吹き出し口の近傍に位置する土間部分において特に顕著であることが判明した。そこで、温風吹き出し口の近傍に位置する土間表面に局所的に断熱板を敷設することで、熱流出抑止効果を効率的に発揮させることができるようになる。
【0008】
上記構成において、前記ダクトの温風吹き出し口が、前記床下空間の高さ方向の略中間部に設置されると共に、床面と略水平な方向に温風が吹き出されるよう構成されてなり、前記吹き出し口から吹き出される温風が土間表面に直接的に吹き当たる部位を覆うように、前記断熱板が土間表面上に敷設されることが望ましい(請求項2)。この構成によれば、床下空間に最適な態様で温風を供給できると共に、そのようなダクトから吹き出される温風が有する熱の地盤への流出が、当該温風が直接的に吹き当たる土間表面部位に敷設された断熱板により極めて効果的に抑止されるようになる。
【0009】
また、上記構成において、前記床下空間は複数の床下空間に区画されたものであり、それぞれの床下空間区画は所定の連通部を介して互いに連通状態とされてなり、1の床下空間区画内に前記温風の吹き出しダクトを備える暖房設備並び断熱板が設置され、他の床下空間区画へ前記連通部を通して温風が対流されるよう構成されていることが望ましい(請求項3)。この構成によれば、床下空間が複数の床下空間に区画されている場合でも、1の床下空間区画内に設置されている暖房設備により、他の床下空間区画内にも温風を対流させることができる。しかも、1の床下空間区画内に敷設された断熱板により、地盤への熱流出が抑制されるようになる。
【0010】
このような構成において、前記連通部に、前記温風の対流を促進するための補助ファンを配置することが望ましい(請求項4)。この構成によれば、1の床下空間区画から他の床下空間区画への連通部を介した温風の対流が補助ファンにより促進され、暖房設備が備えられていない他の床下空間区画についても積極的に加温できるようになる。
【0011】
ここで、前記連通部が複数設けられ、複数の床下空間区画を循環する空気流路が形成可能とされている場合において、前記空気流路を構成する連通部に補助ファンが各々設けられ、各補助ファンの送風方向が、前記空気流路に沿って前記複数の床下空間内に温風を循環させ得る方向とされている構成とすることができる(請求項5)。この構成によれば、補助ファンの運転により前記空気流路に沿って温風が循環され、床下空間全体に温風を行き渡らせることができる。
【0012】
また、前記連通部が複数設けられ、複数の床下空間区画を循環する空気流路が複数形成可能とされている場合において、前記複数の空気流路を構成可能な連通部に補助ファンが各々設けられ、各補助ファンの送風方向を制御することで、前記複数の空気流路のいずれかに沿って温風を循環させ得るよう構成することができる(請求項6)。この構成によれば、ニーズに応じて温風の循環経路を設定することができ、例えば所望の室内空間を選択的に暖房することも可能となる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1にかかる床下暖房システムによれば、断熱板の敷設により、地盤への熱流出を規制できる。しかも、ダクトの温風吹き出し口の近傍に位置する土間表面という必要最小限の部位に断熱板を敷設するだけで熱効率を大きく改善することができる。従って、さほどコストアップを招来することなく、当該床下暖房システムのエネルギー効率を向上させることができる。
【0014】
請求項2にかかる床下暖房システムによれば、ダクトから吹き出される温風が直接的に吹き当たる土間表面部位に敷設された断熱板により、地盤への熱流出が抑止される。すなわち、最も熱が奪われ易い温風の吹き出し部分において地盤への熱流出が抑止されるので、効果的に熱効率を向上させることができる。
【0015】
請求項3にかかる床下暖房システムによれば、床下空間が複数の床下空間に区画されている住宅であっても、同様にエネルギー効率を向上させることができる。
【0016】
請求項4にかかる床下暖房システムによれば、補助ファンの運転により連通部を介した温風の対流が促進されるので、温風吹き出しダクトから吹き出される温風の利用効率が高くなると共に、温風の吹き出しダクトを備えた床下空間区画と備えていない床下空間区画との温度のバラツキを抑制できるようになる。
【0017】
請求項5にかかる床下暖房システムによれば、補助ファンの運転により床下空間全体に温風を行き渡らせることができるので、床下空間上の各室内空間を満遍なく暖房することができる。
【0018】
請求項6にかかる床下暖房システムによれば、温風の循環経路を自在に設定することができ、所望の室内空間を選択的に暖房することも可能であるので、ユーザの生活スタイルに合わせた暖房設定が容易に、しかも別段の工事等を要することなく行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本発明の具体的な実施形態につき説明する。
図1は、本発明にかかる床下暖房システムS1の構成を示す模式図であって、住宅の床板部分を取り外して見た基礎構造体100の上面図である。また図2は、基礎構造体100の側断面図である。この基礎構造体100は、基礎コンクリート101及び土間コンクリート102にて構築されており、前記基礎コンクリート101の高さに応じた床下空間10が形成されている。床下空間10は、居室のサイズ等に合わせて複数の床下空間に区画されている。ここでは、住宅の中心からみて、北西〜西方位の第1床下空間11、南西方位の第2床下空間12、南東方位の第3床下空間13、東方位の第4床下空間14及び北東方位の第5床下空間15が備えられている例を示している。
【0020】
また、この基礎構造体100は、いわゆる基礎断熱工法が採用されたもので、外周部を構成する基礎コンクリート101には換気口が備えられておらず、床下空間10は閉鎖空間とされている。そして、図2に示すように、外周部を構成する基礎コンクリート101の周囲にも断熱材103が施与されており、躯体部分だけでなく、基礎部分も断熱されている。一方、第1〜第5床下空間11〜15を区画する基礎コンクリート101には連通部W1〜W6が設けられており、この連通部W1〜W6を介して第1〜第5床下空間11〜15は互いに連通状態とされている。なお、前記連通部W1〜W6は、床下空間10のメンテナンス等の際における作業員の通路としても活用されるものである。
【0021】
このような基礎構造体100において、第1床下空間11には、ヒートポンプエアコン2(暖房設備)が据え付けられている。このヒートポンプエアコン2は、床下空間10に温風Hを供給して床下空間10を加温するためのもので、前記温風を吹き出すダクト21を備えている。なお、当該ヒートポンプエアコン2には、図示省略の室外機も備えられている。
【0022】
ヒートポンプエアコン2は、床板5の下面に組み付けられている大引き51、51(根太であっても良い)を利用して吊止め支持されている。すなわち、大引き51、51に吊り具23、23が取り付けられ、前記吊り具23、23の下端に平板状の支持台24が水平方向に架け渡されている。そして、前記支持台24上に、ヒートポンプエアコン2が載置されている。なお、ヒートポンプエアコン2は、このような吊止め支持を行わず、土間コンクリート102上に据え付けるようにしても良い。
【0023】
ダクト21は蛇腹構造を備えた筒体からなり、ヒートポンプエアコン2にて生成された温風を床下空間10に吹き出す温風吹き出し口22を有している。この温風吹き出し口22は、図2に示すように、第1床下空間11(床下空間10)の高さ方向の略中間部に配置され、これにより床板5と略水平な方向に温風Hが吹き出されるようになっている。このようなダクト21から吹き出される温風Hは、第1床下空間11において対流されると共に、連通部W1〜W6を通して他の床下空間、すなわち第2〜第5床下空間12〜15へも対流(循環)される。
【0024】
なお、温風Hの対流を促進するために、温風吹き出し口22の位置に合わせ、連通部W1、W2には、小型の扇風機等からなる補助ファン31、32が配置されている。ここで、補助ファン31の送風方向は、第1床下空間11から第2床下空間12へ温風Hを向かわせる方向とされ、また補助ファン32の送風方向は、第1床下空間11から第4床下空間14へ温風Hを向かわせる方向とされている。
【0025】
これにより、図1に矢印Fで示すように、温風Hが第1〜第5床下空間11〜15へ強制的に対流されるようになる。つまり、連通部W1〜W6を介した自然対流に比べて、積極的に温風Hが第1床下空間11から第2〜第5床下空間12〜15に向けて対流されるようになる。かかる温風Hの対流により第1〜第5床下空間11〜15が加温され、当該加温により上昇された第1〜第5床下空間11〜15の熱により床板5の上の室内空間Rが暖房されるものである。また、第1床下空間11で温風Hが長い時間滞留しないことから、第1床下空間11の土間コンクリート102(後述の断熱材4敷設部分を除いた箇所)から土中へ逃げる熱流出を抑止できるようになる。
【0026】
以上の通り構成された床下暖房システムS1において、本発明では、前記ダクト21の吹き出し口22から吹き出される温風Hが土間コンクリート102の表面に直接的に吹き当たる部位を覆うように、断熱板4が土間コンクリート102上に敷設される。すなわち断熱板4は、第1床下空間11の土間コンクリート102の全域に敷設されるのではなく、温風吹き出し口22の近傍に位置する土間コンクリート102の表面に局所的に敷設される。これにより、吹き出された温風Hが保有する熱が土間コンクリート102を通して地盤Gへ流出することが効率的に規制される。
【0027】
図3は、断熱板4の土間コンクリート102上への敷設状態を説明するための上面図である。図2で説明したように、温風Hはダクト21の吹き出し口22から床板5と略水平な方向へ吹き出されるが、吹き出し口22から吹き出された後は風速等のパラメータに応じて拡散する。この拡散により、土間コンクリート102の表面に直接的に温風Hの一部が吹き当たるようになる。図3に示す楕円スポット201は、このような温風Hの直接的な吹き当たり部分を示している。
【0028】
一般に、床下暖房システムにおいては、前記楕円スポット201部分からの熱流出、つまり温風吹き出し口22の近傍に位置する土間表面から地盤Gへの熱流出が最も大きいことから、当該部分における熱損失低減対策を施すことでエネルギー効率を高めることができる。換言すると、前記楕円スポット201部分にさえ熱損失低減対策を施せば、相当のエネルギー効率の改善を図ることができる。このような知見に鑑みて、断熱板4は、前記楕円スポット201をカバーするように土間コンクリート102上へ局所的に敷設されている。
【0029】
このような断熱板4を設けない場合、図4に示すように、土間コンクリート102の表面に直接的に温風Hの一部が吹き当たる部分(図4に符合102aで示す部分)から、温風Hが保有する熱が、地盤Gへ熱損失rとして吸熱(熱交換)される。このことは、床下暖房システムが所定時間稼動し、土間コンクリート102が暖められるまでのイニシャル段階において顕著となる。しかし、図1〜図3に示すように、土間コンクリート102の表面に直接的に温風Hの一部が吹き当たる部分に断熱板4を設けることで、上述のような熱損失rが効果的に抑止されるようになる。
【0030】
なお、図5に示すように、ダクト210の吹き出し口220を床板5側(上側)に配向させ、吹き出し口220から吹き出される温風Hが土間コンクリート102へ直接的に吹き当たらないようにすることも考えられる。しかし、このように吹き出し口220を設定すると、床板5への温風Hの吹き当たり量が多くなりすぎ、床板5が過剰に加温されてしまい床下空間10と床板5との温度差が大きくなり、結果として結露が発生してしまうため好ましくない。
【0031】
断熱板4としては、各種の断熱作用を有する部材を用いることができ、例えばグラスウール等の繊維系断熱材や、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート等のプラスチック材料を発泡させた発泡材料系断熱材等を用いることができる。なお断熱板4としては、長期間に亘る温風Hの吹き当たり対する耐性を有するよう、硬質部材からなる断熱材を用いることが望ましく、例えば押出発泡ポリスチレンボードからなる断熱材(幅1m×長さ2m×厚さ25〜50mm程度の平板)を好適に用いることができる。
【0032】
以上のように構成された床下暖房システムS1の動作について説明する。ヒートポンプエアコン2の電源が投入され暖房運転が開始されると、ダクト21の吹き出し口22から第1床下空間11内へ温風Hが吹き出される。この温風Hは、第1床下空間11内において対流し、これにより当該第1床下空間11内は加温されるようになる。この際、断熱板4により、吹き出し口22の近傍における土間コンクリート102から地盤Gへの熱流出が規制される。なお、ヒートポンプエアコン2の運転開始と同時に、補助ファン31、32の運転も開始される。
【0033】
補助ファン31の回転駆動により、第1床下空間11内に存在する暖気は、連通部W1を通して第2床下空間12へ、続いて連通部W3を通して第3床下空間13へ強制的に対流される。同様に、連通部W2を通して第4床下空間14へ、続いて連通部W5を通して第5床下空間15へ強制的に対流される。
【0034】
このようにヒートポンプエアコン2及び補助ファン31、32が運転されることで、床下空間10全体が昇温される。そして、床下空間10の温度が上昇することで、床板5上の室内空間Rが暖房されるものである。なお、ヒートポンプエアコン2が連続的に運転されることで、土間コンクリート102の温度が徐々に上昇し、これにより断熱板4が敷設されていない領域からの熱損失も少なくなる。
【0035】
以下、ダクト21の吹き出し口22の近傍に断熱板4を局所的に敷設した場合と、敷設しない場合とにおける各種の比較データについて説明する。図6は、図1に示すように、第1床下空間11における吹き出し口22の近傍に断熱板4を敷設する前と敷設した後とにおける(敷設日は、図中の点線で示す某年「12月6日」である)、ヒートポンプエアコン2運転後の第1床下空間11の温度(気温)を、敷設日の前後1週間において計測して作成したグラフである。ここでは、暖房能力が6.0kWのヒートポンプエアコン2を1台用い、運転条件は2週間に亘り一定とした。
【0036】
図6において、符号601の曲線は、図1に示す第1床下空間11内の「北西」ポイント、符号602の曲線は、第1床下空間11内の「西」ポイントにおいてそれぞれ計測した温度である。また、符号603の曲線は、外気温を示すものである。図6から判るように、断熱板4を敷設する前に比べて、断熱板4の敷設後は、「北西」ポイント及び「西」ポイントのいずれにおいても、ヒートポンプエアコン2の運転条件を変更していないにもかかわらず全般的に温度が1〜3℃程度上昇しており、断熱板4の敷設により床下空間の通風性状が改善されたことが確認された。
【0037】
次に、図7は、第1床下空間11における吹き出し口22の近傍に断熱板4を敷設する前と敷設した後とにおける、土間コンクリート102の熱流を、熱流計を用いて計測して作成したグラフである。図6と同様に、計測ポイントは、図1に示す第1床下空間11内の「北西」ポイント及び「西」ポイントとした。図7において、符号611の曲線は、前記「北西」ポイントにおける土間コンクリート102の熱流、符号612の曲線は、「西」ポイントにおける土間コンクリート102の熱流をそれぞれ示している。なお、符号613で示す熱流の0レベルは、土間コンクリート102の熱レベルに相当するもので、前記0レベルを下回る熱流が観測されている時間帯は、地盤G側へ熱が流出している状態を示している。
【0038】
この図7からも明らかな通り、断熱板4の敷設後は、「北西」ポイント及び「西」ポイントのいずれにおいても、熱流が0レベルを下回る度合いが少なくなり、断熱板4により熱流出が抑止されていることが判る。また、「西」ポイントにおける熱損失も低減されていることが判る。
【0039】
続いて、ダクト21の温風吹き出し口22の近傍に断熱板4を敷設する場合と敷設しない場合とにおける、効果確認のためのシミュレーション結果について説明する。ここでは、図1に示す間取り条件(床下面積:70m2)を前提にして、
(1)床板5の、裏面の表面温度の推移(図8、図9)
(2)土間コンクリート102の、表面温度の推移(図10、図11)
(3)床板5及び地盤Gへの熱流の推移(図12、図13)
についてのシミュレーション結果を示す。ヒートポンプエアコン2は、床下設定温度:30℃、吹き出し口22における温風Hの吹き出し設定温度:46℃、温風Hの流量:300m3/hで運転するものとした。また、断熱板4は、幅1m×長さ2m×厚さ25mmの押出発泡ポリスチレンボードを温風吹き出し口22の近傍における土間コンクリート102上に敷設するものとした。
【0040】
(1)床板5の、裏面の表面温度の推移について
図8は、断熱板4を敷設しない場合の、前述の「北西」ポイント及び「西」ポイントにおける床板5の、2ヶ月スパンでみた裏面表面温度の推移の計算結果を示すグラフである。図8において、符号621の曲線は、前記「北西」ポイントにおける床板5の裏面表面温度、符号622の曲線は、「西」ポイントにおける床板5の裏面表面温度の推移をそれぞれ示している。図8のグラフに示すように、「北西」ポイントにおいては床板5の裏面表面温度は、概ね24℃〜28℃の範囲で推移し、また「西」ポイントにおいては、概ね29℃〜32℃の範囲で推移することが判る。
【0041】
一方、図9は、断熱板4を敷設した場合の、「北西」ポイント及び「西」ポイントにおける床板5の、2ヶ月スパンでみた裏面表面温度の推移の計算結果を示すグラフである。図9において、符号631の曲線は、前記「北西」ポイントにおける床板5の裏面表面温度、符号632の曲線は、「西」ポイントにおける床板5の裏面表面温度の推移をそれぞれ示している。図9のグラフに示すように、「北西」ポイントにおいては床板5の裏面表面温度は、概ね25℃〜28℃の範囲で推移し、また「西」ポイントにおいては、概ね29℃〜33℃の範囲で推移することが判る。このように、断熱板4を敷設しない場合に比べ、断熱板4を敷設することで床板5の裏面表面温度を全体的に1℃程度上昇させることができるようになる。
【0042】
(2)土間コンクリート102の、表面温度の推移について
図10は、断熱板4を敷設しない場合の、「北西」ポイント及び「西」ポイントにおける土間コンクリート102の、2ヶ月スパンでみた表面温度の推移の計算結果を示すグラフである。図10において、符号641の曲線は、前記「北西」ポイントにおける土間コンクリート102の表面温度、符号642の曲線は、「西」ポイントにおける土間コンクリート102の表面温度の推移をそれぞれ示している。図10のグラフに示すように、「北西」ポイントにおいては土間コンクリート102の表面温度は、概ね17℃〜24℃の範囲で推移し、また「西」ポイントにおいては、概ね17℃〜28℃の範囲で推移することが判る。
【0043】
一方、図11は、断熱板4を敷設した場合の、「北西」ポイント及び「西」ポイントにおける土間コンクリート102の、2ヶ月スパンでみた表面温度の推移の計算結果を示すグラフである。図11において、符号651の曲線は、前記「北西」ポイントにおける土間コンクリート102の表面温度、符号652の直線は、「西」ポイントにおける土間コンクリート102の表面温度の推移をそれぞれ示している。なお、ここでの「西」ポイントは、断熱板4の裏面に設定されたものとして算出を行っている。図11のグラフに示すように、「北西」ポイントにおいては床板5の裏面表面温度は、概ね17℃〜24℃の範囲で推移しており、図10の場合と同等であるが、「西」ポイントにおいては、17℃で一定である。このように、断熱板4を敷設しない場合に比べ、断熱板4を敷設することで「西」ポイントにおいて地盤Gへの熱流出を規制できるようになる。
【0044】
(3)床板5及び地盤Gへの熱流の推移
図12は、断熱板4を敷設しない場合の、吹き出しダクト21直近部(断熱板4の敷設領域部分)における床板5及び地盤Gへの、2ヶ月スパンでみた熱流の推移の計算結果を示すグラフである。図12において、符号661の曲線は床板5への熱流、符号662の曲線は地盤Gへの熱流の推移をそれぞれ示している。図12のグラフに示すように、床板5への熱流は2ヶ月の期間中に1000kcal/hから1600kcal/h程度まで上昇し、逆に地盤Gへの熱流は400kcal/hから150kcal/h程度まで下降していることが判る。
【0045】
一方、図13は、断熱板4を敷設した場合の、吹き出しダクト21直近部(断熱板4の敷設領域部分)における床板5及び地盤Gへの、2ヶ月スパンでみた熱流の推移の計算結果を示すグラフである。図13において、符号671の曲線は床板5への熱流、符号672の曲線は地盤Gへの熱流の推移をそれぞれ示している。図13のグラフに示すように、床板5への熱流は2ヶ月の期間中に1100kcal/hから1600kcal/h程度まで上昇し、逆に地盤Gへの熱流は300kcal/hから100kcal/h程度まで下降していることが判る。すなわち、床板5への熱流は、イニシャル期間において断熱板4を敷設しない場合に比べて100kcal/h程度多く、逆に地盤Gへの熱流は100kcal/h程度少なくなっている。つまり、イニシャル期間においてヒートポンプエアコン2のエネルギー効率を向上させることができるものである。
【0046】
以上、本発明の一実施形態に係る床下暖房システムS1を詳述したが、この床下暖房システムS1につき各種の変形実施が可能である。例えば、床下暖房システムS1においては、図1に示すように2つの補助ファン31、32を用いる例を示しているが、例えば第1床下空間11上の室内空間がユーザの主な居住空間であるような場合にあっては、補助ファン31、32の設置を省略しても良い。
【0047】
逆に、連通部W1〜W6の全てに補助ファンを設けるようにしても良い。図14は、そのような床下暖房システムS2の構成を示す模式図である。この床下暖房システムS2では、連通部W1〜W6に補助ファン31〜36が各々設けられている。図14に示すように、基礎コンクリート101に連通部W1〜W6が備えられている場合、第1床下空間11〜第5床下空間15のうちの複数を循環する空気流路としては、連通部W1−W3−W4−W5−W6を経由する第1空気流路A1と、連通部W2−W5−W6を経由する第2空気流路A2とが代表的なものとして挙げられる。補助ファン31〜36各々の送風方向は、第1空気流路A1若しくは第2空気流路A2に沿って、前記複数の床下空間内に温風を循環させ得る方向とされている。
【0048】
具体的には、補助ファン31の送風方向は第1床下空間11から第2床下空間12へ向けた方向、補助ファン33の送風方向は第2床下空間12から第3床下空間13へ向けた方向、補助ファン34の送風方向は第3床下空間13から第4床下空間14へ向けた方向、補助ファン35の送風方向は第4床下空間14から第5床下空間15へ向けた方向、補助ファン36の送風方向は第5床下空間15から第1床下空間11へ向けた方向とされており、これら補助ファンを運転することで第1空気流路A1に沿って温風を循環させ得るようになっている。また、補助ファン32の送風方向は第1床下空間11から第4床下空間14へ向けた方向とされており、補助ファン32、35、36を運転することで第2空気流路A2に沿って温風を循環させ得るようになっている。
【0049】
このように構成することで、補助ファン31〜36の運転により第1、第2空気流路A1、A2に沿って温風Hが循環され、第1床下空間11〜第5床下空間15の全体に温風を行き渡らせることができる。つまり、住宅の1階部分全体の床下空間10を加温できるようになる。これにより、第1床下空間11〜第5床下空間15の各室内空間を満遍なく暖房することができ、室内空間の温度のバラツキを抑制できるようになる。或いは、補助ファン32、35、36のみを運転することで、第2空気流路A2に沿った第1、第4、第5床下空間11、14、15を重点的に加温し、その床上の室内空間を選択的に暖房して熱効率を上げることも可能となる。
【0050】
また、補助ファン31〜36の送風方向を変更制御する制御部を設け、送風方向を暖房ニーズに応じて適宜変更できるようにすることが望ましい。この場合、補助ファン31〜36の各々に、その送風方向を変更させる駆動機構を付設し、前記制御部を備えたリモコン装置等により前記駆動機構に送風方向変更信号を送信する構成とすれば良い。このように構成することで、温風の循環経路を自在に設定することが可能となる。例えば、図14に示す補助ファン34、35の送風方向を略180度反転させることで、温風を第3床下空間13へ集中させることが可能となり、第3床下空間13の床上の室内空間を重点的に暖房することができるようになる。このような床下暖房システムS2によれば、所望の室内空間を選択的に暖房することも可能となるので、ユーザの生活スタイルに合わせた暖房設定が容易に、しかも補助ファン31〜36の送風方向を変更するだけで済むことから別段の工事等を要することなく行えるようになる。
【0051】
なお、連通部W1〜W6は、上述した通り床下空間10のメンテナンス等の際において作業員の通路として利用されることから、補助ファン31〜36は通行時の妨げとならないよう取り外し自在な固定部を具備させることが望ましい。例えば、連通部W1〜W6の周辺の根太や大引きに対して簡易に固定可能なクリップ固定部を、各補助ファン31〜36に具備させることが望ましい。
【0052】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、暖房設備の一例としてヒートポンプエアコン2を例示したが、この他に温風Hを輻射可能な各種の放熱器を用いることができる。また、断熱板4の形態として、上面視で長方形状のものを用いる例を示したが、ダクト21の吹き出し口22の形状に合わせ、例えば楕円形、扇状に形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明にかかる床下暖房システムS1の構成を示す模式図であって、住宅の床板部分を取り外して見た基礎構造体の上面図である。
【図2】図1に示した基礎構造体の側断面図である。
【図3】断熱板の土間コンクリート上への敷設状態を説明するための上面図である。
【図4】断熱板を設けない、従来の床下暖房システムの構成を示す模式図である。
【図5】ダクトの吹き出し口を床板側(上側)に配向させた床下暖房システムの構成を示す模式図である。
【図6】吹き出し口の近傍に断熱板を敷設する前と敷設した後とにおける、床下空間の温度(気温)推移を示すグラフである。
【図7】吹き出し口の近傍に断熱板を敷設する前と敷設した後とにおける、土間コンクリートへの熱流を、熱流計を用いて計測して作成したグラフである。
【図8】断熱板を敷設しない場合(従来)の、床板の裏面表面温度の推移の計算結果を示すグラフである。
【図9】断熱板を敷設した場合(本発明)の、床板の裏面表面温度の推移の計算結果を示すグラフである。
【図10】断熱板を敷設しない場合(従来)の、土間コンクリートの表面温度の推移の計算結果を示すグラフである。
【図11】断熱板を敷設した場合(本発明)の、土間コンクリートの表面温度の推移の計算結果を示すグラフである。
【図12】断熱板を敷設しない場合(従来)の、吹き出しダクト直近部における床板及び地盤への熱流の推移の計算結果を示すグラフである。
【図13】断熱板を敷設した場合(本発明)の、吹き出しダクト直近部における床板及び地盤への熱流の推移の計算結果を示すグラフである。
【図14】本発明の他の実施形態にかかる床下暖房システムS2の構成を示す模式図であって、住宅の床板部分を取り外して見た基礎構造体の上面図である。
【符号の説明】
【0054】
10 床下空間
11〜15 第1〜第5床下空間
100 基礎構造体
101 基礎コンクリート
102 土間コンクリート(土間)
2 ヒートポンプエアコン(暖房設備)
21 ダクト
22 (温風の)吹き出し口
31〜36 補助ファン
4 断熱板
A1、A2 空気流路
H 温風
G 地盤
S1 床下暖房システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下を閉鎖空間とした基礎断熱住宅における床下暖房システムであって、
床下空間内に、温風の吹き出しダクトを備える暖房設備を設置し、前記ダクトから吹き出される温風を前記床下空間に対流させることで、床上の室内空間を暖房するよう構成された床下暖房システムにおいて、
前記ダクトの温風吹き出し口の近傍に位置する土間表面に、吹き出された温風が保有する熱が地盤へ流出することを規制する断熱板を局所的に敷設したことを特徴とする床下暖房システム。
【請求項2】
前記ダクトの温風吹き出し口が、前記床下空間の高さ方向の略中間部に設置されると共に、床面と略水平な方向に温風が吹き出されるよう構成されてなり、
前記吹き出し口から吹き出される温風が土間表面に直接的に吹き当たる部位を覆うように、前記断熱板が土間表面上に敷設されていることを特徴とする請求項1に記載の床下暖房システム。
【請求項3】
前記床下空間は複数の床下空間に区画されたものであり、それぞれの床下空間区画は所定の連通部を介して互いに連通状態とされてなり、
1の床下空間区画内に前記温風の吹き出しダクトを備える暖房設備並び断熱板が設置され、他の床下空間区画へ前記連通部を通して温風が対流されるよう構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の床下暖房システム。
【請求項4】
前記連通部に、前記温風の対流を促進するための補助ファンが配置されていることを特徴とする請求項3に記載の床下暖房システム。
【請求項5】
前記連通部が複数設けられ、複数の床下空間区画を循環する空気流路が形成可能とされている場合において、
前記空気流路を構成する連通部に補助ファンが各々設けられ、各補助ファンの送風方向が、前記空気流路に沿って前記複数の床下空間内に温風を循環させ得る方向とされていることを特徴とする請求項4に記載の床下暖房システム。
【請求項6】
前記連通部が複数設けられ、複数の床下空間区画を循環する空気流路が複数形成可能とされている場合において、
前記複数の空気流路を構成可能な連通部に補助ファンが各々設けられ、各補助ファンの送風方向を制御することで、前記複数の空気流路のいずれかに沿って温風を循環させ得るよう構成されていることを特徴とする請求項4に記載の床下暖房システム。
【請求項1】
床下を閉鎖空間とした基礎断熱住宅における床下暖房システムであって、
床下空間内に、温風の吹き出しダクトを備える暖房設備を設置し、前記ダクトから吹き出される温風を前記床下空間に対流させることで、床上の室内空間を暖房するよう構成された床下暖房システムにおいて、
前記ダクトの温風吹き出し口の近傍に位置する土間表面に、吹き出された温風が保有する熱が地盤へ流出することを規制する断熱板を局所的に敷設したことを特徴とする床下暖房システム。
【請求項2】
前記ダクトの温風吹き出し口が、前記床下空間の高さ方向の略中間部に設置されると共に、床面と略水平な方向に温風が吹き出されるよう構成されてなり、
前記吹き出し口から吹き出される温風が土間表面に直接的に吹き当たる部位を覆うように、前記断熱板が土間表面上に敷設されていることを特徴とする請求項1に記載の床下暖房システム。
【請求項3】
前記床下空間は複数の床下空間に区画されたものであり、それぞれの床下空間区画は所定の連通部を介して互いに連通状態とされてなり、
1の床下空間区画内に前記温風の吹き出しダクトを備える暖房設備並び断熱板が設置され、他の床下空間区画へ前記連通部を通して温風が対流されるよう構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の床下暖房システム。
【請求項4】
前記連通部に、前記温風の対流を促進するための補助ファンが配置されていることを特徴とする請求項3に記載の床下暖房システム。
【請求項5】
前記連通部が複数設けられ、複数の床下空間区画を循環する空気流路が形成可能とされている場合において、
前記空気流路を構成する連通部に補助ファンが各々設けられ、各補助ファンの送風方向が、前記空気流路に沿って前記複数の床下空間内に温風を循環させ得る方向とされていることを特徴とする請求項4に記載の床下暖房システム。
【請求項6】
前記連通部が複数設けられ、複数の床下空間区画を循環する空気流路が複数形成可能とされている場合において、
前記複数の空気流路を構成可能な連通部に補助ファンが各々設けられ、各補助ファンの送風方向を制御することで、前記複数の空気流路のいずれかに沿って温風を循環させ得るよう構成されていることを特徴とする請求項4に記載の床下暖房システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−51859(P2007−51859A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298936(P2005−298936)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】
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