説明

床下暖房システム

【課題】潜熱蓄熱材を放熱源として用いた基礎断熱住宅の床下暖房システムにおいて、潜熱蓄熱材に熱を与える温風送風機の運転条件を最適化する。
【解決手段】床下を閉鎖空間とした基礎断熱住宅における床下暖房システムであって、床下12の空間内に、潜熱蓄熱体を有する蓄熱ユニット2、潜熱蓄熱体に温風を吹き付けて蓄熱させる温風送風機3、蓄熱状態にある潜熱蓄熱体に送風することで、前記潜熱蓄熱体に蓄熱された熱の放熱を促進させる送風機4を設置する。温風送風機3の動作条件は、吹き出し風量、吹き出し温度及び稼働時間を変数として含む所定の関係式に基づいて決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床下を閉鎖空間とした基礎断熱住宅において、潜熱蓄熱体を利用し、床下空間内に温風を対流させることで床上の室内空間を暖房する床下暖房システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に比較的温暖な地域の住宅では、床下に換気口を設けて床下空間を開放した床裏断熱工法が採用されている。しかし、床裏断熱式の住宅では、夏期において高温高湿な空気が低温環境の床下に侵入することで床下結露が発生し、躯体寿命を縮めてしまうという危惧がある。このため、専ら寒冷地で採用されていた高断熱・高気密住宅、すなわち住宅の床下換気口を閉鎖して床下外周部を断熱することで床下を閉鎖空間とした基礎断熱住宅が、温暖地でも採用されつつある。
【0003】
一方、このような基礎断熱住宅において、例えば特許文献1に開示されているように、閉鎖された床下空間内に放熱器を設置し、前記床下空間を加温することで床上の室内空間を暖房する床下暖房システムが知られている。かかる床下暖房システムとして、温風の吹き出しダクトを備えるヒートポンプエアコン(暖房設備)を用い、前記ダクトから吹き出される温風を床下空間に対流させる空気対流式のシステムが、設備規模やコスト面、安全面において優れていることから注目されている。さらに、安価な夜間電力を利用して、潜熱蓄熱材又は顕熱蓄熱材のような蓄熱材を放熱源として当該床下暖房システムに組み込むことも検討されている。
【特許文献1】特開2001−201075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄熱材を具備する床下暖房システムを構築する場合、例えば夜間電力時間帯にヒートポンプエアコン(温風送風機)を稼働させ、温風を吹き付けて蓄熱材を加温し、昼間の時間帯に前記蓄熱材に蓄熱させた熱を送風機で床下空間内に拡散供給させる手法が考えられる。この場合、夜間電力時間帯という限られた時間帯に、ヒートポンプエアコンを如何なる吹き出し風量、吹き出し温度で稼働させるか、また蓄熱材として潜熱蓄熱材を用いる場合にその融点や量を如何に設定するかが、高効率でコストパフォーマンスの良いシステム運用のために不可欠である。
【0005】
本発明は上記の要請に鑑みてなされたもので、潜熱蓄熱材を放熱源として用いた基礎断熱住宅の床下暖房システムにおいて、潜熱蓄熱材に熱を与える温風送風機の運転条件を最適化できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる床下暖房システムは、居室の床下を閉鎖空間とした基礎断熱住宅に適用される床下暖房システムであって、前記床下空間内に配置される潜熱蓄熱体と、前記潜熱蓄熱体に温風を吹き付けて蓄熱させる温風送風機と、前記温風送風機の吹き出し風量、吹き出し温度及び稼働時間を含む動作条件を制御可能な制御部と、を備え、前記動作条件は、前記居室への熱供給が前記床下のみから行われると想定したときの、前記温風送風機の稼働時における前記居室の熱収支を示す第1の関係式と、前記熱収支に基づいて、所定の外気温で前記温風送風機を稼働させた状態における、前記居室を所定の設定温度とするための目標床下温度を示す第2の関係式と、前記温風送風機の稼働時に、前記潜熱蓄熱体の融点に等しい吹き出し温度で前記床下に熱が供給されると想定した場合における、前記目標床下温度を達成するために必要な熱量を示す第3の関係式と、から導かれ、前記吹き出し風量、吹き出し温度及び稼働時間を変数として含む第4の関係式に基づいて決定されることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、潜熱蓄熱体に温風を吹き付けて蓄熱させる温風送風機の動作条件が、上記第1〜第4の関係式に基づいて決定される。すなわち、居室の熱収支に立脚して目標床下温度を設定し、これに必要な熱量を求めた上で、温風送風機の吹き出し風量、吹き出し温度及び稼働時間が決定される。従って、個々の基礎断熱住宅の居室の条件に応じて、最適な温風送風機の運転条件を設定することができる。
【0008】
上記構成において、蓄熱状態にある潜熱蓄熱体に送風することで、前記潜熱蓄熱体に蓄熱された熱の放熱を促進させる送風機をさらに備えることが望ましい(請求項2)。この構成によれば、潜熱蓄熱体に蓄熱された熱を床下空間内に速やかに拡散させることができる。
【0009】
上記いずれかの構成において、前記第1の関係式が、下記(1)の条件式であることが望ましい(請求項3)。
【0010】
【数5】

【0011】
また、上記構成において、前記第2の関係式が、下記(2)の条件式であることが望ましい(請求項4)。
【0012】
【数6】

【0013】
また、上記構成において、前記第3の関係式が、下記(3)の条件式であることが望ましい(請求項5)。
【0014】
【数7】

【0015】
また、上記構成において、前記第4の関係式が、下記(4)の条件式であることが望ましい(請求項6)。
【0016】
【数8】

【0017】
上記いずれかの構成において、前記制御部は、前記温風送風機を夜間電力時間帯に稼働させることが望ましい(請求項7)。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る床下暖房システムによれば、個々の基礎断熱住宅の居室の条件に応じて、最適な温風送風機の運転条件を設定することができる。従って、潜熱蓄熱材を放熱源として用いた基礎断熱住宅の床下暖房システムにおいて、高効率でコストパフォーマンスの良いシステム運用を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本発明の具体的な実施形態につき説明する。図1は、本発明の実施形態に係る床下暖房システムの住宅Hへの適用状態を概略的に示す図である。この住宅Hは、居室11と床下12とが床板13で仕切られてなり、床下12の空間が閉鎖空間とされた基礎断熱住宅である。本実施形態の床下暖房システムは、床下12の空間に配置された、蓄熱ユニット2、温風送風機3及び送風機4を備えている。
【0020】
蓄熱ユニット2は筐体構造を備え、該筐体内には潜熱蓄熱体が収納されていると共に、この潜熱蓄熱体に対する蓄熱若しくは潜熱蓄熱体からの放熱をエアフローで行わせるためのエアダクトが形成されている。
【0021】
温風送風機3は、常温よりも高い温度の温風を吹き出すことができる装置であり、蓄熱ユニット2の潜熱蓄熱体を蓄熱させる役目と、床下12の空間を暖めることで居室11を暖房する役目を果たす。温風送風機3の温風吹き出し口は、ダクト31を介して蓄熱ユニット2の前記エアダクトの入口側に接続されており、温風送風機3が稼働されると、前記エアダクトに温風が送り出される。この温風は、蓄熱ユニット2内の潜熱蓄熱体に熱を与えた上で、図中矢印で示すように、前記エアダクトの出口側から床下12の空間へ吹き出される。従って、潜熱蓄熱体と熱交換後の残熱をもつ温風によって床下12は加温され、この熱によって居室11が暖房される。
【0022】
送風機4は、所定の風速で送風を行うことができる装置であり、蓄熱ユニット2の潜熱蓄熱体に蓄熱された熱の放熱を促進させる役目を果たす。送風機4の送風口は、ダクト41を介して蓄熱ユニット2の前記エアダクトの入口側に接続されており、送風機4が稼働されると、前記エアダクトに常温の空気(床下12の空気)が送り出される。この空気は、潜熱蓄熱体が蓄熱状態にある場合に該蓄熱体の表面から熱を奪い、前記エアダクトの出口側から床下12の空間へ吹き出される。従って、潜熱蓄熱体が蓄熱状態であるときは、温風送風機3を稼働させることなく、送風機4を稼働させることによって床下12の空間を暖めることが可能である。
【0023】
図2は、本実施形態に係る床下暖房システムの電気的構成を示すブロック図である。床下暖房システムは、上述の温風送風機3及び送風機4に加えて、制御部5と、操作部6とを備えている。制御部5は、温風送風機3及び送風機4の動作を制御するものであって、機能的に温風送風機制御部51、送風機制御部52及びデータ記憶部53を備える。
【0024】
温風送風機制御部51は、温風送風機3からの温風の吹き出し風量、吹き出し温度及び稼働時間を含む動作条件を制御する。この動作条件については、後記で詳述する。温風送風機3が電気的に温風を生成する機構をもつ場合、一般に熱の発生に多くの電力量を要する。このため温風送風機制御部51は、温風送風機3を電力料金が比較的安価な夜間電力時間帯(23時〜7時)に稼働させる。すなわち、夜間電力時間帯に、蓄熱ユニット2の潜熱蓄熱体に蓄熱動作を行わせる。
【0025】
送風機制御部52は、送風機4からの空気の吹き出し風量及び稼働時間等を制御する。送風機制御部52は、夜間電力時間帯に潜熱蓄熱体へ蓄熱された熱を昼間に放熱させるために、昼間時間帯の適宜な時間に送風機4を駆動させる。
【0026】
データ記憶部53には、温風送風機制御部51及び送風機制御部52が各々温風送風機3及び送風機4を制御するに際して必要となる各種の動作条件データが格納される。
【0027】
操作部6は、タッチパネルやキーボード等からなり、ユーザからの当該床下暖房システムに対する操作情報の入力を受け付ける。ユーザは、例えば居室11の暖房温度等を、この操作部6を介して入力設定する。
【0028】
次に、温風送風機3の動作条件について説明する。この動作条件は、夜間電力時間帯という限られた時間帯に温風送風機3を稼働させて潜熱蓄熱体に蓄熱させることを前提に、外気条件、居室11の設定温度、住宅Hの熱性能に応じて決定され、ひいては潜熱蓄熱体の融点決定にも寄与する。
【0029】
前記動作条件は、居室11への熱供給が床下12のみから行われると想定したときの、温風送風機3の稼働時における居室11の熱収支を示す第1の関係式と、前記熱収支に基づいて、所定の外気温で温風送風機3を稼働させた状態における、居室11を所定の設定温度とするための目標となる床下12の温度を示す第2の関係式と、温風送風機3の稼働時に、前記潜熱蓄熱体の融点に等しい吹き出し温度で床下12に熱が供給されると想定した場合における、目標床下温度を達成するために必要な熱量を示す第3の関係式とから導かれ、前記吹き出し風量、吹き出し温度及び稼働時間を変数として含む第4の関係式に基づいて決定される。以下、これら第1〜第4の関係式の具体例を例示する。
【0030】
<第1の関係式>
居室11への熱供給は、床板13を通して床下12のみから行われ、温風送風機3の停止時には常に送風機4が稼動していると想定する。昼夜の外気変動を考慮すると、夜間電力時間帯における温風送風機3の稼動時の居室11の熱収支は、下記(1)の条件式のように示される。
【0031】
【数9】

【0032】
<第2の関係式>
夜間電力時間帯の温風送風機3の稼動時において、ある外気温度TOのときに、設定居室温度TRにするために目標とされる床下温度TCは、上記(1)式を変形した、下記(2)の条件式で示される。
【0033】
【数10】

【0034】
<第3の関係式>
温風送風機3から潜熱蓄熱体(蓄熱ユニット2)を通して床下12に供給される熱量のうち、R×100[%]が床板13を通して居室12へ熱移行すると扱うと、温風送風機3の稼動時における前記熱移行の関係は、下記(3)の条件式で示される。端的に言うと、条件式(3)の左辺は床下12で作られる熱量であり、右辺は居室11で必要となる熱量である。なお、この条件式(3)は、当該床下暖房システムにおいて用いられる潜熱蓄熱体の融点決定に寄与する。
【0035】
【数11】

【0036】
<第4の関係式>
以上の第1〜第3の関係式に基づき、温風送風機3の吹き出し風量、吹き出し温度及び稼働時間を変数として含む、下記(4)の条件式が導かれる。すなわち、温風送風機3により潜熱蓄熱体に供給された熱は、送風機4による送風により100%放熱されるものとし、そのうち、R×100[%]が床板13を通して居室12へ熱移行すると、居室11の1日の室温を設定居室温度TRに保つために必要となる温風送風機3の動作条件、つまり温風送風機3の吹き出し風量、吹き出し温度及び稼働時間の関係は、下記(4)の条件式で示される。
【0037】
【数12】

【0038】
上記(3)式、(4)式において、温風送風機3の吹き出し風量VHP、潜熱蓄熱体の融点TmTS、及び温風送風機3の稼動時間HHPの3変数以外は、住宅Hの熱性能、外気条件、温風送風機3の特性より既知量であるとすると、これらの3変数のうち1つを決めれば上記(3)式、(4)式を連立させて解くことにより、設定居室温度TRにするための他の2変数を決定することができる。
【0039】
温風送風機3の稼動時間HHPが固定化されている場合、例えば稼動時間HHPを夜間電力時間帯の8時間に固定化する場合は、下記(5)の条件式で示される温風送風機3の吹き出し風量VHPを満足する動作条件とすると共に、下記(6)の条件式で示される融点TmTSをもつ潜熱蓄熱体を使用すれば良い。
【0040】
【数13】

【0041】
【数14】

【0042】
これに対し、温風送風機3の吹き出し風量VHPが固定化されている場合、例えば既存のエアーコンデショナーを温風送風機3として用いる場合は、当該吹き出し風量VHPに応じて温風送風機3の稼動時間HHP、及び潜熱蓄熱体の融点TmTSを決定すれば良い。すなわち、上記(3)式、(4)式より、下記(7)の条件式で示される温風送風機3の稼動時間HHPを満足する動作条件とすると共に、下記(8)の条件式で示される融点TmTSをもつ潜熱蓄熱体を使用すれば良い。
【0043】
【数15】

【0044】
【数16】

【0045】
但し、温風送風機3の稼動時間HHPを夜間電力時間帯である8時間以内に制限するためには、温風送風機3の吹き出し風量VHPは、下記(9)の条件式を満足する必要がある。
【数17】

【0046】
次に、蓄熱ユニット2の潜熱蓄熱体に温風を吹き付けて蓄熱させる場合において、外気温の変動を考慮した動作条件を示す。温風送風機3の吹き出し風量VHPと潜熱蓄熱体の融点TmTSとの関係は、上記(3)式より、下記(10)の条件式で示される。
【0047】
【数18】

【0048】
また、上記(4)式において、温風送風機3の稼動時間HHPを8時間とした場合の、温風送風機3の吹き出し風量VHPは、下記(11)の条件式で示される。
【0049】
【数19】

【0050】
ここで、上記(10)式及び(11)式で示されるVHPを、横軸に潜熱蓄熱体の融点、縦軸に温風送風機3の吹き出し風量を取るグラフ上に展開すると、両者は当該グラフ上で交点を持つが、温風送風機3の稼動時間HHPを8時間以内とするためには、潜熱蓄熱体の融点TmTSを前記交点よりも低い融点に設定する必要がある。この交点における潜熱蓄熱体の融点温度は、上記(10)式、(11)式より、下記(12)の条件式で示される。この(12)式の値は外気温度の変動により変動し、その最も低い値が潜熱蓄熱体の上限融点TmTS,MAXとなる。
【0051】
【数20】

【0052】
上記(10)式において、温風送風機3の吹き出し風量は正の値であり、温風送風機3の稼働時における床下12の温度は、居室11の温度よりも高い。このため、潜熱蓄熱体の融点は、温風送風機3の稼働時における床下温度よりも高くなければならない。従って、潜熱蓄熱体の融点の下限値は、上記(2)式を援用した下記(2)’の条件式で表現できるが、外気温度の変動により変動する(2)’式の床下温度のうち、最も高い値が潜熱蓄熱材の下限融点TmTS,MINとなる。
【0053】
【数21】

【0054】
一方、温風送風機3の稼動時間HHPは、下記(13)の条件式で示される。
【0055】
【数22】

【0056】
以上の通り、外気温度の変動に応じて温風送風機3の動作を制御することを意図する場合は、上記(12)式で示される潜熱蓄熱体の上限融点TmTS,MAXよりも低く、上記(2)’式で示される潜熱蓄熱材の下限融点TmTS,MINよりも高い融点をもつ潜熱蓄熱材を使用し、上記(10)式、(13)式に基づいて、温風送風機3の動作条件としての吹き出し風量VHP、及び稼動時間HHPを決定すれば良い。
【0057】
なお、温風送風機3に要求される暖房能力WHPは、下記(14)の条件式に、温風送風機3の吹き出し風量VHPと、温風送風機3の稼働時における床下温度Tを代入することで求められる。但し、外気温度の変動に応じて温風送風機3の動作を制御する場合は、最寒期に想定される吹き出し風量VHPと床下温度Tとを代入する。
【0058】
【数23】

【0059】
続いて、潜熱蓄熱体の放熱時における送風機4の動作条件を決定する具体例を示す。上記(1)式と同様に、居室11への熱供給は、床板13を通して床下12のみから行われるとすると、送風機4の稼働時(夜間電力時間帯以外の時間帯)における居室11の熱収支は、下記(15)の条件式のように示される。
【0060】
【数24】

【0061】
送風機4の稼動時において、ある外気温度TOのときに、設定居室温度TRにするために目標とされる床下温度TCは、上記(15)式を変形した、下記(16)の条件式で示される。
【0062】
【数25】

【0063】
送風機4から吹き付けられる送風によって、潜熱蓄熱体(蓄熱ユニット2)から床下12に供給される熱量のうち、R×100[%]が床板13を通して居室12へ熱移行すると扱うと、送風機4の稼動時における前記熱移行の関係は、下記(17)の条件式で示される。
【0064】
【数26】

【0065】
そして、送風機4の送風量は、上記(17)式を変形した、下記(18)の条件式で示される。
【0066】
【数27】

【0067】
以上のようにして決定される温風送風機3及び送風機4(並びに潜熱蓄熱体に融点)の動作条件に基づいて、温風送風機制御部51及び送風機制御部52は、各々温風送風機3及び送風機4を制御するものである。
【0068】
続いて、本発明に係る床下暖房システムの実際の住宅への組み込み例について説明する。図3は、床下暖房システムが適用された住宅の床板部分を取り外して見た基礎構造体100の上面図である。この基礎構造体100は、基礎コンクリート101及び土間コンクリート102にて構築されており、前記基礎コンクリート101の高さに応じた床下12の空間が形成されている。床下12の空間は、居室のサイズ等に合わせて複数の床下空間に区画されている。ここでは、住宅の中心からみて、北西〜西方位の第1床下空間121、南西方位の第2床下空間122、南東方位の第3床下空間123、東方位の第4床下空間124及び北東方位の第5床下空間125が備えられている例を示している。
【0069】
この基礎構造体100は、いわゆる基礎断熱工法が採用されたもので、外周部を構成する基礎コンクリート101には換気口が備えられておらず、床下空間12は閉鎖空間とされている。図示は省略しているが、基礎コンクリート101の周囲には断熱材が貼設されており、断熱が施されている。一方、第1〜第5床下空間121〜125を区画する基礎コンクリート101には連通部W1〜W5が設けられており、この連通部W1〜W5を介して第1〜第5床下空間121〜125は互いに連通状態とされている。なお、連通部W1〜W5は、床下空間12のメンテナンス等の際における作業員の通路としても活用されるものである。
【0070】
このような基礎構造体100において、第1床下空間121には、第1蓄熱ユニット2A及び第2蓄熱ユニット2Bと、ヒートポンプエアコン30(温風送風機)と、第1送風ファン4A及び第2送風ファン4B(送風機)とが据え付けられている。なお、ヒートポンプエアコン30に対して、図示省略の室外機が備えられている。ヒートポンプエアコン30が発する温風は、第1ダクト31A及び第2ダクト31Bにより各々第1蓄熱ユニット2A及び第2蓄熱ユニット2Bに導かれる。また、第1送風ファン4A及び第2送風ファン4Bが発する風は、第3ダクト41A及び第4ダクト41Bにより各々第1蓄熱ユニット2A及び第2蓄熱ユニット2Bに導かれる。
【0071】
図4は、第1蓄熱ユニット2A(第2蓄熱ユニット2Bも同構造)の上面視の断面図、図5は側面視の断面図である。第1蓄熱ユニット2Aは、筐体21内に潜熱蓄熱体からなる薄板状の蓄熱プレート22、22、・・・が複数枚収納されてなる。
【0072】
筐体21は、その入口側21Tと出口側21Eとが開口した、断面矩形の各筒形状を有する筐体である。入口側21Tには、第1ダクト31A(第2ダクト31B)、及び第3ダクト41A(第4ダクト41B)の出口側が接続されたチャンバー23が密に取り付けられている。従って、ヒートポンプエアコン30からの温風、並びに第1送風ファン4Aからの風は、チャンバー23内の空間23Hを介して漏れなく筐体21の入口側21Tへ導入されるようになっている。
【0073】
蓄熱プレート22としては、例えばノルマルパラフィンのような潜熱蓄熱材をプラスチック樹脂製の平板状容器に封入して作成されたものが採用できる。本実施形態で好適に用いることができる潜熱蓄熱体の物性の一例は、相変化温度=36℃、融解熱量175kJ/kg、密度=900kg/m、比熱=2500J/kgK、熱伝導率=0.219W/mk、使用体積=0.68mである。
【0074】
かかる蓄熱プレート22は、図4に示すように同一平面上に複数枚が並列配置されると共に、図5に示すように、その並列配置体22Lが通気路21Hとなる間隔を置いて複層に積層されている。なお、このような蓄熱プレート22の並列・複層配置を可能とするために、図略のラックが筐体21内に組み付けられている。
【0075】
第1蓄熱ユニット2Aがこのような内部構成を備えていることから、ヒートポンプエアコン30からの温風が入口側21Tから筐体21へ導入されると、該温風が通気路21Hを通る際に温風が持つ熱が各蓄熱プレート22に与えられ、蓄熱プレート22は蓄熱する。そして、熱交換後の温風は、筐体21の出口側21Eから第1床下空間121へ吹き出され、第1〜第5床下空間121〜125を加温する。
【0076】
一方、各蓄熱プレート22が蓄熱された状態で、第1送風ファン4Aから常温の風が入口側21Tから筐体21へ導入されると、この風が通気路21Hを通る際に蓄熱プレート22が放熱する熱を与えられる。これにより、導入時は常温であった風が、温風となって筐体21の出口側21Eから第1床下空間121へ吹き出され、第1〜第5床下空間121〜125を加温する。
【0077】
図3に戻り、ヒートポンプエアコン30、若しくは第1送風ファン4A及び第2送風ファン4Bの稼働により、上述の通り第1蓄熱ユニット2A及び第2蓄熱ユニット2Bから温風F1、F2が第1床下空間121へそれぞれ吹き出される。その後温風F1、F2は、第1床下空間121において対流されると共に、連通部W1〜W5を通して他の床下空間、すなわち第2〜第5床下空間122〜125へも対流(循環)される。なお、本実施形態では、温風F1、F2の対流を促進するために、連通部W1、W2に小型の扇風機等からなる補助ファン71、72が配置されている例を示している。
【0078】
ヒートポンプエアコン30は、先に説明した温風送風機制御部51(図2)と同様な制御部にて、その動作が制御される。また、第1送風ファン4A及び第2送風ファン4Bは、送風機制御部51と同様な制御部にて、その動作が制御される。そして、その動作条件(及び潜熱蓄熱体の融点)としては、上述の(1)式〜(18)式にて決定される動作条件が選ばれるものである。
【0079】
以上、本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。従って、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施形態に係る床下暖房システムの住宅Hへの適用状態を概略的に示す図である。
【図2】床下暖房システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】床下暖房システムが適用された住宅の床板部分を取り外して見た基礎構造体の上面図である。
【図4】蓄熱ユニットの上面視の断面図である。
【図5】蓄熱ユニットの側面視の断面図である。
【符号の説明】
【0081】
11 居室
12 床下
13 床板
14 外壁
2、2A、2B 蓄熱ユニット
22 蓄熱プレート
3 温風送風機
30 ヒートポンプエアコン(温風送風機)
4 送風機
4A、4B 第1送風ファン、第2送風ファン(送風機)
5 制御部
51 温風送風機制御部
52 送風機制御部
H 住宅(基礎断熱住宅)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
居室の床下を閉鎖空間とした基礎断熱住宅に適用される床下暖房システムであって、
前記床下空間内に配置される潜熱蓄熱体と、
前記潜熱蓄熱体に温風を吹き付けて蓄熱させる温風送風機と、
前記温風送風機の吹き出し風量、吹き出し温度及び稼働時間を含む動作条件を制御可能な制御部と、を備え、
前記動作条件は、
前記居室への熱供給が前記床下のみから行われると想定したときの、前記温風送風機の稼働時における前記居室の熱収支を示す第1の関係式と、
前記熱収支に基づいて、所定の外気温で前記温風送風機を稼働させた状態における、前記居室を所定の設定温度とするための目標床下温度を示す第2の関係式と、
前記温風送風機の稼働時に、前記潜熱蓄熱体の融点に等しい吹き出し温度で前記床下に熱が供給されると想定した場合における、前記目標床下温度を達成するために必要な熱量を示す第3の関係式と、から導かれ、
前記吹き出し風量、吹き出し温度及び稼働時間を変数として含む第4の関係式に基づいて決定されることを特徴とする床下暖房システム。
【請求項2】
蓄熱状態にある潜熱蓄熱体に送風することで、前記潜熱蓄熱体に蓄熱された熱の放熱を促進させる送風機をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の床下暖房システム。
【請求項3】
前記第1の関係式が、下記(1)の条件式であることを特徴とする請求項1又は2に記載の床下暖房システム。
【数1】

【請求項4】
前記第2の関係式が、下記(2)の条件式であることを特徴とする請求項3に記載の床下暖房システム。
【数2】

【請求項5】
前記第3の関係式が、下記(3)の条件式であることを特徴とする請求項4に記載の床下暖房システム。
【数3】

【請求項6】
前記第4の関係式が、下記(4)の条件式であることを特徴とする請求項5に記載の床下暖房システム。
【数4】

【請求項7】
前記制御部は、前記温風送風機を夜間電力時間帯に稼働させることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の床下暖房システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−52765(P2009−52765A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217465(P2007−217465)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【Fターム(参考)】