説明

床暖房用温水マット

【課題】構成単位である発泡樹脂成形体の基盤を縦横に配列して成る折畳み可能な床暖房用温水マットであって、基盤の積層体に折り畳まれた状態から展開する際、最初に展開する2つの基盤群の突合せ面のラインを簡単に識別でき、施工時の取扱いが一層容易な床暖房用温水マットを提供する。
【解決手段】床暖房用温水マットは、端部の2枚の基盤(A),(B)間の第1折畳みライン(6)、基盤(A)〜(A)列と基盤(B)〜(B)列との間の分割ライン前記の各列の基盤間の第2折畳みライン(71)〜(75),(81)〜(85)を有し、第1折畳みライン及び第2折畳みラインにより、各基盤を積層した積層体に折り畳まれた状態において、積層体の第1折畳みライン(6)と反対側の側面には、第1折畳みラインを起点に展開される基盤の2つの群の突合せラインを表示する識別手段が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床暖房用温水マットに関するものであり、詳しくは、フローリングの下地として敷設される床暖房用温水マットであって、構成単位である基盤を縦横に配列し且つ温水循環路としての通水管の引き回しによりこれら基盤を連結して成る折畳み可能な床暖房用温水マットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
床暖房の施工においては、フローリング等の床仕上材の下地として、薄板状の発泡樹脂成形体の表側に温水循環路としての通水管を埋設し且つ熱拡散用の放熱シートを貼着して成り、ボイラーから供給された温水を通水管に循環させ、温水の熱を居室側に供給する様になされた床暖房用の温水マットが使用される。斯かる温水マットは、発泡樹脂成形体を複数の基盤によって構成し且つこれら基盤を通水管の引き回しによって連結し、基盤単位で山折、谷折に順次に折り畳むことにより、施工前の輸送や施工現場への搬入の便宜を図っている。
【0003】
折畳み構造を備えた上記の温水マットは、温水マットの幅方向に2枚、長さ方向に4〜10枚程基盤を配列すると共に、温水マットの幅に沿った端部の基準となる2枚の基盤の間に第1折畳みラインを設け、温水マットの長さ方向に沿って第1折畳みラインの延長上に分断ラインを設け、前記の2枚の基盤から温水マットの長さ方向にそれぞれ並ぶ基盤間に第2折畳みラインを設け、そして、各第2折畳みラインで九十九折に折り畳み、前記の2枚の基盤を突き合わせる様に第1折畳みラインで折ることにより、各基盤を積層した状態の積層体に折り畳むことが出来る。
【0004】
温水マットの折畳み構造としては、隣接する基盤間の折畳みラインを通水管が斜め方向に横切る状態に架け渡され、折畳みラインを構成する基盤の端部に通水管とは逆の斜め方向に通水管の収容溝が彫込まれ、折り畳んだ際に通水管の曲がり部分を収容溝に収めて通水管に対する引張りを防止する様にした構造、あるいは、折畳みラインに添わせて通水管の一部が直線状に配置され、折り畳んだ際に通水管の直線部の僅かな捩れにより通水管に対する引張りを防止する様にした構造などが提案されている。
【特許文献1】特開2005−24206号公報
【特許文献2】特開2005−240410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、基盤の積層体に折り畳まれた上記の温水マットを展開する場合は、先ず、温水マットの端部の基準となる2枚の基盤にそれぞれ積層された基盤群の2つを第1折畳みラインを起点に展開し、次いで、各基盤群を各第2折畳みラインを起点に展開する。しかしながら、1枚の基盤の厚さは通常20mm以下と薄く、しかも、第1折畳みラインを起点に最初に展開する2つの基盤群の突合せライン(分割線)が積層体の第1折畳みラインと反対側の側面の中央付近に位置しており、前記の突合せラインを識別し難いため、展開作業に手間が掛ると言う実情がある。また、上記の突合せラインを構成する基盤同士の重なり面以外の重なり面で誤って展開すると、通水管が基盤面から外れたり、これにより基盤表面の放熱シートが破れることがある。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、構成単位である基盤を縦横に配列し且つ温水循環路としての通水管の引き回しによりこれら基盤を連結して成る折畳み可能な床暖房用温水マットであって、基盤の積層体に折り畳まれた状態から展開する際、最初に展開する2つの基盤群の突合せラインを簡単に識別でき、施工時の取扱いが一層容易な床暖房用温水マットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、基盤を積層した積層体に折り畳まれた状態において、第1折畳みラインと反対側の側面に対し、第1折畳みラインを起点に最初に展開する2つの基盤群の突合せラインを表示する識別手段を設け、2つの基盤群を展開する際、識別手段より突合せラインを目視で直ちに特定できる様にした。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、断熱材としての薄板状の発泡樹脂成形体から成る方形の基盤が幅方向に2枚、長さ方向に複数枚配列されて全体の平面形状を方形に形成され、表側に温水循環路としての通水管が埋設され且つ熱拡散用の放熱シートが貼着され、かつ、前記通水管の引き回しにより前記各基盤が連結された床暖房用の温水マットであって、温水マットの幅に沿った一端部を構成する2枚の基盤またはこれらに隣接する2枚の基盤の間に第1折畳みラインが構成され、温水マットの長さ方向に沿って前記第1折畳みラインの延長上に分断ラインが構成され、前記2枚の基盤から温水マットの長さ方向にそれぞれ並ぶ基盤の間に第2折畳みラインが構成されており、前記第1折畳みライン及び前記第2折畳みラインにより、前記各基盤を積層した積層体に折り畳まれた状態において、前記積層体の前記第1折畳みラインと反対側の側面には、前記第1折畳みラインを起点に展開される基盤の2つの群の突合せラインを表示する識別手段が設けられていることを特徴とする床暖房用温水マットに存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の床暖房用温水マットによれば、各基盤を積層した積層体に折り畳まれた状態において、積層体の第1折畳みラインと反対側の側面に識別手段が設けられており、折り畳まれた状態から第1折畳みラインを起点に最初に2つの基盤群を展開する際、当該2つの基盤群の突合せラインを識別手段により目視で直ちに特定できるため、誤って他の基盤同士の重なり面を展開する虞がなく、前記の突合せラインで2つの基盤群を安全に展開でき、施工時の取扱いが一層容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る床暖房用温水マットの実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図4は、各々、本発明に係る床暖房用温水マットの折り畳まれた状態を示す斜視図であり、各々、図1及び図2は、積層体の側面に描かれた図柄で基盤群の識別手段が構成された例を示す図、図3は、基盤間に挟み込まれた紙で基盤群の識別手段が構成された例を示す図、図4は、積層体の側面を被覆する保護カバーに描かれた図柄で基盤群の識別手段が構成された例を示す図である。また、図5は、床暖房用温水マットの内部構造を一部破断して示す斜視図であり、図6は、床暖房用温水マットにおける通水管および根太状部材の配置を示す平面図である。図7及び図8は、暖房用温水マットにおける基盤の配列および折畳みラインを示す平面図であり、図9は、図7の暖房用温水マットの折畳み方法を示す斜視図である。なお、以下の説明は本発明の代表例であり、これらの内容に本発明は限定されるものではない。
【0011】
本発明の床暖房用温水マット(以下、「温水マット」と言う。)は、床暖房システムを施工する際、フローリング等の床仕上材の下地として、ベニヤ等の構造用合板やパーティクルボード或いはコンクリートスラブ等から成る床下地の上に敷設されるものであり、図7及び図8に示す様に、断熱材としての薄板状の発泡樹脂成形体(1)(図5参照)から成り且つ平面形状を方形に形成された基盤(A),(A)・・・,(B),(B)・・・が幅方向に2枚、長さ方向に複数枚、例えば6枚配列されて全体の平面形状を方形に形成されている。
【0012】
図5に示す様に、温水マットの表側(発泡樹脂成形体(1)の表側)には、温水循環路としての通水管(3)が埋設され、また、温水マットの表側には、熱拡散用の放熱シートが貼着される。そして、図6に示す様に、温水マットは、通水管(3)の引き回しによって各基盤(A),(A)・・・及び(B),(B)・・・が連結されることにより、平面視して基盤の大きさで折畳み可能に構成される。図1〜図4は折り畳まれた状態を示す。なお、居室床の寸法設計に対応するため、図6に示す様に、通常、温水マットの幅(W)は1000〜3600mm程度、長さ(L)は1000〜9000mm程度、厚さは7〜20mm程度に設計される。
【0013】
各基盤(A),(A)・・・及び(B),(B)・・・の基材となる発泡樹脂成形体(1)は、硬質ポリウレタン発泡体、硬質ポリエチレン発泡体、硬質ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体、フェノール樹脂発泡体、硬質ポリ塩化ビニル発泡体、ポリメチルメタクリレート発泡体、ポリカーボネート発泡体、ポリフェニレンオキサイド発泡体、ポリスチレンとポリエチレン混合物の発泡体などから成る。
【0014】
なお、図7及び図8に示す様に、各基盤(A)・・・(A)及び(B)・・・(B)を構成する発泡樹脂成形体(1)の長さ(a)は500〜1800mm程度であり、幅(b)は250〜1500mm程度である。図示しないが、温水マットの幅に沿った一端部(10)及び他端部(11)に配置される基盤(図7における基盤(A),(B),(A),(B)、図8における基盤(A),(B),(A),(B)の幅は、その他の基盤の幅(b)よりも短く設計されていてもよい。また、発泡樹脂成形体(1)の裏面には、遮音材として不織布などが貼設されてもよく、更に、コストダウンを図るため、後述する根太状部材(2)の長さ方向と平行に凹溝が設けられてもよい。
【0015】
更に、図5及び図6に示す様に、通常、発泡樹脂成形体(1)には、温水マットの幅と平行に根太状部材(2)が所定の間隔で配置される。根太状部材(2)は、上方から加わる鉛直荷重を支持するための小割り状の部材であり、スギ、サクラ、ヒノキ、ラワン及び合板などの木材、または、樹脂の硬質発泡材で構成される。あるいは、合板などの木材と樹脂の硬質発泡材との組合せで構成されてもよい。また、根太状部材(2)は、上面に敷設されるフローリングを釘や接着剤で固定し、床下地にビスや釘を使用して当該温水マットを固定するのに利用される。根太状部材(2)の長さ及び厚さは、各々、温水マットの上記の幅および厚さに応じて設計され、根太状部材(2)の幅は、施工性の観点から40〜50mm程度とされる。なお、図6は、放熱シート(4)を貼着していない状態で内部構造を示したものである。
【0016】
通水管(3)は、図5に示す様に、発泡樹脂成形体(1)の表面に形成された少なくとも1組の連続的する溝(13)に挿入される。通水管(3)としては、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管、ポリプロピレン管、ポリエチレン管などの樹脂管が使用される。一般的には、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管が使用される。通水管(3)の大きさは、流れる温水の圧力損失を小さくして平均温度をより高い温度に維持するため、外径が通常は4〜10mm、好ましくは5〜8mm、内径が通常は4〜7mm、好ましくは5〜6mmとされる。
【0017】
図6に示す様に、通水管(3)は、例えば、温水マットの幅方向に沿って直線状に配置され且つ幅方向の両端側、すなわち、温水マットの長さ方向に沿った縁部で折り返す様に配置される。換言すれば、通水管(3)は、平行に複数配列した直線部と曲線部との組合せにより、温水マットの略全面を所定のパターンで循環する循環路を複数構成している。なお、上面側への放熱効率を高めるため、通水管(3)の少なくとも直線部は、その長さ方向に直交する断面がU字状に形成され且つその上端縁に鍔が付設されたアルミニウム(又はアルミニウム合金)の箔などから成る樋状の伝熱部材(図示省略)に収容され、そして、通水管(3)は、発泡樹脂成形体(1)の溝(13)に伝熱部材と共に配置されてもよい。
【0018】
また、温水マットの1つの端部(図6では左下隅の下縁部)には、切り欠かれた形状のヘッダー取付用の切欠き(15)が設けられ、当該切欠きには、流体分岐ブロックであるヘッダー(5)が付設される。ヘッダー(5)は、ガスの燃焼や電力によって温水を製造する湯沸し装置やボイラー装置などの熱源装置から供給された温水を各系統の通水管(3)(各循環路)に分配し且つこれら通水管(3)に循環させた温水を集約して前記の熱源装置へ戻すための温水分配回収用の流路集合機器である。そして、上記の通水管(3)は、ヘッダー(5)に繋ぎ込まれ、複数系統(複数回路)、例えば図示する様な6系統の循環路を構成する様になされている。上記の様に、ヘッダー(5)を使用して循環路を複数組構成することにより、各系統における温水の温度低下を少なくしてマット全体で均一に放熱し且つ出力を高めることが出来る。
【0019】
図5に示す様に、放熱シート(4)は、通水管(3)の温水の熱をフローリング側に伝えるためのシートであり、各基盤(A),(A)・・・及び(B),(B)・・・を構成する発泡樹脂成形体(1)及び根太状部材(2)の表側に配置される。放熱シート(4)としては、厚さが通常は10μm〜200μm、好ましくは30μm〜100μmで且つ熱伝導性に優れた可撓性のフィルム又はシート、例えば、アルミニウム箔、錫箔、銅箔、ステンレス鋼箔などの金属箔、金属製の織布や不織布、樹脂フィルム又は樹脂シート、あるいは、これらを組合せた積層シート等が使用される。放熱シート(4)は、発泡樹脂成形体(1)及び根太状部材(2)の表面に接着剤や粘着剤などよって貼着される。
【0020】
本発明の温水マットは、敷設前には折畳み状態で取り扱われるため(図1〜図4参照)、前述した様に、構成単位である基盤(A),(A)・・・及び(B),(B)・・・を通水管(3)の引き回しにより連結され、前記の基盤間には、折畳みライン(後述する第1折畳みライン(6)及び第2折畳みライン(70),(71)・・・)が設けられる。
【0021】
上記の折畳みラインにおいては、これを横切る状態に通水管(3)が架渡されるが、通水管(3)の折畳みラインを横切る部分は、例えば、一方の基盤(発泡樹脂成形体)から折畳みラインに向けて直交しない角度で斜めに伸長された斜行部分と、折畳みライン上に添わせた平行部分と、折畳みラインから他方の基盤(発泡樹脂成形体)へ前記の斜行部分と略同一の角度で伸長された他方の斜行部分とで構成される。上記の様な通水管(3)の架渡し構造は、折畳みラインで温水マットを折り畳んだ際、通水管(3)の平行部分が僅かに捩れることにより、通水管(3)(各斜行部分および平行部分)における座屈の発生を防止できる。
【0022】
また、通水管(3)の架渡し構造としては、通水管(3)が折畳みラインを斜め方向に横切る状態に架け渡され、折畳みラインで隣接する基盤(発泡樹脂成形体)の端部に折畳みラインとは逆の斜め方向に通水管収容用の溝が彫込まれ、折畳みラインで温水マットを折り畳んだ際、通水管の曲がり部分が収容溝に収める様にした構造でもよい。なお、上記の様な折畳みラインにおける通水管(3)の架渡し構造は、特開2005−240410号、特開2005−24206号の各公報に開示されている。
【0023】
温水マットの折畳み構造は、図7及び図8に示す様に、温水マットの幅を2分する第1折畳みライン(6)及び分割ライン(9)と、温水マットの2分された部位の長さをそれぞれに4以上に分割する第2折畳みライン(70)・・・(75),(80)・・・(85)とを備えている。上記の折畳み構造においては、折畳みの基準となる2枚の基盤(A),(B)の配置および温水マットの長さ方向に沿った基盤の配列数の違いにより、第1折畳みライン(6)の配置、第1折畳みライン(6)及び第2折畳みライン(70),(71)・・・の折り方が相違する。
【0024】
図7に例示する温水マットにおいては、温水マットの幅に沿った一端部(10)を構成する2枚の基盤(A),(B)の間に第1折畳みライン(6)が構成され、温水マットの長さ方向に沿って第1折畳みライン(6)の延長上に分割ライン(9)が構成され、2枚の基盤(A),(B)から温水マットの長さ方向にそれぞれ並ぶ基盤(A),(A)・・・及び(B),(B)・・・の間に第2折畳みライン(71),(72)・・・及び(81),(82)・・・が構成されている。そして、上記の温水マットは、第2折畳みライン(71),(72)・・・及び(81),(82)・・・で九十九折に折られ、基盤(A)と基盤(B)の各裏側を突合せる様に、第1折畳みライン(6)で山折に折られることにより、各基盤(A),(A)・・・及び(B),(B)・・・を積層した積層体(図1〜図4参照)に折り畳まれる。
【0025】
一方、図8に示す温水マットにおいては、温水マットの幅に沿った一端部(10)を構成する2枚の基盤(A),(B)に隣接する2枚の基盤(A),(B)の間に第1折畳みラインが構成され、温水マットの長さ方向に沿って第1折畳みライン(6)の延長上に2つの分割ライン(9)が構成され、2枚の基盤(A),(B)から温水マットの長さ方向にそれぞれ並ぶ基盤(A),(A)・・・及び(B),(B)・・・の間に第2折畳みライン(70),(71)・・・及び(80),(81)・・・が構成されている。そして、上記の温水マットは、第2折畳みライン(70),(71)・・・及び(80),(81)・・・で九十九折に折られ、第1折畳みライン(6)で谷折に折られることにより、各基盤(A),(A)・・・及び(B),(B)・・・を積層した積層体(図1〜図4参照)に折り畳まれる。
【0026】
図7及び図8に示す温水マットは、施工時の移動などによる放熱シート(4)や通水管(3)の損傷を防止するため、積層体に折り畳まれた状態において積層方向の両端面に位置する基盤、すなわち、図7の基盤(A)及び(B)、図8の基盤(A)及び(B)の各裏側が表に露出する様に折り畳まれている。なお、図7及び図8中、第1折畳みライン(6)及び第2折畳みライン(70)〜(75),(80)〜(85)のうち、点線は、温水マットを表側から平面視した場合に谷折に折られる折畳みラインを示し、一点鎖線は、温水マットを表側から平面視した場合に山折に折られる折畳みラインを示す。
【0027】
本発明の温水マットは、その施工時に安全かつ容易に展開できる様に、図1〜図4に示す様に、上記の様に積層体に折り畳まれた状態において、積層体の第1折畳みライン(6)と反対側の側面(図の正面側の面)には、第1折畳みライン(6)を起点に展開される基盤の2つの群(A),(B)の突合せライン(PL)(展開ライン)を表示する識別手段(1M)が設けられる。
【0028】
すなわち、上記の識別手段(1M)は、基準となる2枚の基盤(図7に示す基盤(A)及び図8に示す基盤(B))のうちの一方の基盤(A)に積層された基盤群(A)と、2枚の基盤(図7に示す基盤(A)及び図8に示す基盤(B))のうちの他方の基盤(B)に積層された基盤群(B)との重なり面で構成される突合せラインであって、第1折畳みライン(6)を起点に展開する際に分割される上記の側面の突合せライン(PL)を視認させるためのものである。なお、図1〜図4は、図7の温水マットの積層体を例示したものである。
【0029】
具体的には、図1に示す様に、上記の識別手段(1M)は、積層体の側面に基盤(A),(A)・・・及び(B),(B)・・・とは異なる色で描かれた図柄、記号または模様で構成される。図1に例示した積層体は、識別手段(1M)として、当該積層体の側面において一方の基盤(A)に積層された基盤の群(A)に相当する部位(図において積層体の側面の上半部)に赤色、青色、黒色または白色などで図柄としての帯状のラインが描かれており、帯状のラインが描かれた部位と帯状のラインが描かれていない部位との境界が突合せライン(PL)となっている。なお、図柄などに使用される色は、基盤の色と異なる限り、無彩色でもよい。
【0030】
図2に示す積層体は、識別手段(1M)として、当該積層体の側面において一方の基盤(A)に積層された基盤の群(A)に相当する部位(図において積層体の側面の上半部)に上記と同様に着色された図柄としての「矢印」が描かれており、「矢印」の先端の境界が突合せライン(PL)となっている。なお、図2に例示した積層体は、温水マットの幅に沿った一端部(10)及び他端部(11)に配置される基盤(図7の基盤(A),(B),(A),(B)に相当する基盤、図8の基盤(A),(B),(A),(B)に相当する基盤)の幅がその他の基盤の幅(b)よりも短く設計されたものである。
【0031】
また、上記の識別手段(1M)は、図3に示す様に、温水マットの幅に沿った一端部(10)を構成する2枚の基盤(A),(B)(図7参照)、または、一端部(10)を構成する2枚の基盤(A),(B)に隣接する2枚の基盤(A),(B)(図8参照)の間に挟み込まれ且つ積層体の側面からその一部が食み出した紙で構成されてもよい。図3に例示した積層体は、識別手段(1M)として、基盤の群(A)と基盤の群(B)の突合せライン(PL)に予め挟み込んだ紙の一部を食み出させたものである。なお、識別手段(1M)を構成する紙は、天然紙、合成紙の何れでもよく、また、着色されていたり、取扱い説明や注意書きが表記されていてもよい。
【0032】
更に、上記の識別手段(1M)は、図4に示す様に、基盤の2つの群(A)及び/又は(B)の第1折畳みライン(6)と各反対側の端部を被覆する保護カバー(図4に仮想線で示すカバー)で構成されてもよい。すなわち、積層体の上記の側面の例えば上反部を構成する基盤の群(A)の端部と、積層体の上記の側面の例えば下反部を構成する基盤の群(B)の端部との少なくとも一方が保護カバーで被覆される。図4に例示した積層体は、上記の基盤の群(A)の端部と基盤の群(B)の端部をそれぞれに被覆する保護カバーで識別手段(1M)が構成されており、第1折畳みライン(6)と反対側の側面には、保護カバーによって基盤の群(A)と基盤の群(B)の突合せライン(PL)だけが形成されている。
【0033】
上記の様に、本発明の床暖房用温水マットにおいては、各基盤(A),(A)・・・及び(B),(B)・・・或いは各基盤(A),(A)・・・及び(B),(B)・・・を積層した積層体に折り畳まれた状態において、積層体の第1折畳みライン(6)と反対側の側面に識別手段(1M)が設けられており、折り畳まれた状態から第1折畳みライン(6)を起点に最初に2つの基盤群(A),(B)を展開する際、当該2つの基盤群の突合せライン(PL)を識別手段(1M)により目視で直ちに特定できるため、誤って他の基盤同士の重なり面、例えば基盤(A)と(A)や基盤(A)と(A)或いは基盤(B)と(B)や基盤(B)と(B)の重なり面を展開する虞がなく、2つの基盤群(A),(B)を突合せライン(PL)で安全に展開でき、施工時の取扱いが一層容易である。
【0034】
また、本発明の床暖房用温水マットにおいては、図7に示す様に、温水マットの幅に沿った一端部(10)を構成する2枚の基盤(A),(B)(図7参照)、または、一端部(10)を構成する2枚の基盤(A),(B)に隣接する2枚の基盤(A),(B)(図8参照)のうちの何れか1枚の基盤(例えば基盤(B))の第1折畳みライン(6)と平行な端部に前述のヘッダー取付用の切欠き(15)が設けられているのが好ましい。すなわち、上記の基盤(B)の端部に切欠き(15)が設けられている場合には、積層体の第1折畳みライン(6)と反対側の側面の一部が上記の基盤(B)の端部で構成されるため、積層体を展開する際、切欠き(15)を手掛りとして突合せライン(PL)において2つの基盤群(A),(B)をより簡単に展開することが出来る。なお、本発明における折畳み構造は、発熱用の電線を埋設したマットにも適用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る床暖房用温水マットの折り畳まれた状態を示す斜視図であり、積層体の側面に描かれた図柄で基盤群の識別手段が構成された例を示す図である。
【図2】本発明に係る床暖房用温水マットの折り畳まれた状態を示す斜視図であり、積層体の側面に描かれた図柄で基盤群の識別手段が構成された他の例を示す図である。
【図3】本発明に係る床暖房用温水マットの折り畳まれた状態を示す斜視図であり、基盤間に挟み込まれた紙で基盤群の識別手段が構成された例を示す図である。
【図4】本発明に係る床暖房用温水マットの折り畳まれた状態を示す斜視図であり、積層体の側面を被覆する保護カバーに描かれた図柄で基盤群の識別手段が構成された例を示す図である。
【図5】床暖房用温水マットの内部構造を一部破断して示す斜視図である。
【図6】床暖房用温水マットにおける通水管および根太状部材の配置を示す平面図である。
【図7】暖房用温水マットにおける基盤の配列および折畳みラインの一例を示す平面図である。
【図8】暖房用温水マットにおける基盤の配列および折畳みラインの他の例を示す平面図である。
【図9】図7の暖房用温水マットの折畳み方法を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
1 :発泡樹脂成形体
10:一端部
11:他端部
13:溝
15:切欠き
1M:識別手段
2 :根太状部材
3 :通水管
4 :放熱シート
5 :ヘッダー
6 :第1折畳みライン
70〜75:第2折畳みライン
80〜85:第2折畳みライン
9 :分割ライン
A :基盤の群
〜A:基盤
B :基盤の群
〜B:基盤
PL:突合せライン
W :温水マットの幅
L :温水マットの長さ
a :基盤の長さ
b :基盤の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材としての薄板状の発泡樹脂成形体から成る方形の基盤が幅方向に2枚、長さ方向に複数枚配列されて全体の平面形状を方形に形成され、表側に温水循環路としての通水管が埋設され且つ熱拡散用の放熱シートが貼着され、かつ、前記通水管の引き回しにより前記各基盤が連結された床暖房用の温水マットであって、温水マットの幅に沿った一端部を構成する2枚の基盤またはこれらに隣接する2枚の基盤の間に第1折畳みラインが構成され、温水マットの長さ方向に沿って前記第1折畳みラインの延長上に分断ラインが構成され、前記2枚の基盤から温水マットの長さ方向にそれぞれ並ぶ基盤の間に第2折畳みラインが構成されており、前記第1折畳みライン及び前記第2折畳みラインにより、前記各基盤を積層した積層体に折り畳まれた状態において、前記積層体の前記第1折畳みラインと反対側の側面には、前記第1折畳みラインを起点に展開される基盤の2つの群の突合せラインを表示する識別手段が設けられていることを特徴とする床暖房用温水マット。
【請求項2】
識別手段が、積層体の側面に基盤とは異なる色で描かれた図柄、記号または模様で構成されている請求項1に記載の床暖房用温水マット。
【請求項3】
識別手段が、温水マットの幅に沿った一端部を構成する2枚の基盤またはこれらに隣接する2枚の基盤の間に挟み込まれ且つ積層体の側面からその一部が食み出した紙で構成されている請求項1に記載の床暖房用温水マット。
【請求項4】
識別手段が、基盤の2つの群の第1折畳みラインと各反対側の端部を被覆する保護カバーで構成されている請求項1に記載の床暖房用温水マット。
【請求項5】
温水マットの幅に沿った一端部を構成する2枚の基盤またはこれらに隣接する2枚の基盤のうちの何れか1枚の基盤の第1折畳みラインと平行な端部にヘッダー取付用の切欠きが設けられている請求項1〜4の何れかに記載の床暖房用温水マット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−63249(P2009−63249A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232200(P2007−232200)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】