説明

床材固定用下地シート、及び床材の施工方法

【課題】 本発明の課題は、床材が十分に係合しうる係合層を有する床材固定用下地シートを提供することである。
【課題手段】 本発明の床材固定用下地シート1は、基材シート2と、床材に係合しうる係合層3とを有し、該係合層3が、220g/m以上の微粒子3bを有し、該微粒子3bのモース硬度が3.8以上で且つ粒子径が1mm以下である。前記微粒子としては、アルミナ、軽石及び銅から選ばれる少なくとも1つが用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィスビル、住宅などに敷設される床材を固定するための床材固定用下地シート、及び床材の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からオフィスビルや住宅等の下地面には、タイルカーペット、絨毯、樹脂製タイル床など各種の床材が敷設されている。該床材は、下地面の保護や意匠付与の為に施工される。このような床材は、一般的に接着剤や粘着剤などを用いて下地面に敷設されるため、床材を貼り替え難いという問題がある。
かかる問題点に鑑みて、下地面に予め敷設された床材固定用下地シートを介して、床材を下地面上に固定することが知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の床材固定用下地シート(同文献の下地に相当する)は、表面に係合層(同微細突起に相当)を有している。該係合層に対して係合する床材(同表面材に相当)を床材固定用下地シート上に敷設することで、床材が係合層に係合固定される。
この特許文献1に記載の床材固定用下地シートの係合層は、粒子径0.1〜5mmの各種微粒子を接着剤又は両面テープなどを介して固着させることによって形成されている。
【特許文献1】特開2005−120648
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の床材固定用下地シートでは、その係合層に係合された床材が位置ずれを起こす虞がある。
すなわち、微粒子の量及び微粒子の種類によっては、床材が十分に係合しうる係合層を形成できず、床材を十分に固定できない虞があり、その改善が求められている。
【0005】
本発明の第1の課題は、床材が十分に係合しうる係合層を有する床材固定用下地シートを提供することである。
本発明の第2の課題は、床材を敷設後、ずれ難い床材の施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、床材が位置ずれする原因を鋭意検討したところ、係合層を構成する微粒子の量、粒子径、及びモース硬度が原因であることを見出した。
【0007】
本発明の床材固定用下地シートは、基材シートと、床材に係合しうる係合層と、を有する下地シートであって、該係合層が、220g/m以上の微粒子を有し、該微粒子のモース硬度が3.8以上で且つ粒子径が1mm以下であることを特徴とする。
【0008】
本発明の好ましい態様において、前記床材固定用下地シートの係合層は、微粒子を基材シートの表面に固着させるための接着剤層を有し、該接着剤層の接着剤成分が、該微粒子100質量部に対して、20質量部以下である。
【0009】
本発明の他の好ましい態様において、前記床材固定用下地シートの係合層は、微粒子を基材シートの表面に固着させるための接着剤層を有し、前記接着剤層の接着剤成分が50g/m以下である。
【0010】
本発明の他の好ましい態様において、前記床材固定用下地シートの微粒子は、アルミナ、軽石及び銅から選ばれる少なくとも1つである。
本発明の他の好ましい態様において、前記係合面は、450g/m以下の微粒子を有する。
【0011】
また、本発明の別の局面によれば、床材の施工方法を提供する。
本発明の第1の床材の施工方法は、モース硬度が3.8以上で且つ粒子径が1mm以下である微粒子を220g/m以上有する係合層を、下地面上に設ける工程と、該係合層の表面に係合可能な被係合面を有する床材を、該係合層の表面に敷設する工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の第2の床材の施工方法は、モース硬度が3.8以上で且つ粒子径が1mm以下である微粒子を220g/m以上有する係合層が設けられた床材を用い、該床材の係合層に係合しうる被係合面を、下地面上に設ける工程と、該床材の係合層の表面を、該被係合面に敷設する工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい態様の床材の施工方法は、前記係合層が、微粒子を固着させるための接着剤層を有し、該接着剤層の接着剤成分が、微粒子100質量部に対して、20質量部以下である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の床材固定用下地シートは、その係合層に床材が十分に係合する。このため、本発明の床材固定用下地シートを用いれば、床材を実用上十分に固定することができる。
【0015】
また、本発明の床材の施工方法によれば、床材を敷設するときに接着剤や粘着剤などを用いることなく、ずれ難い床材を施工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<床材固定用下地シート>
本発明の床材固定用下地シートは、基材シートと、該基材シートの表面に設けられた係合層と、を有する。該係合層の表面(以下、係合層の表面を「係合面」という場合がある)には、多数の微粒子が突出している。そのため、該係合面に係合しうる被係合面を有する床材を、該係合層の表面に敷設することによって、床材固定用下地シートを介して、床材を下地面上に固定することができる。
以下、本発明の床材固定用下地シートについて説明する。
なお、以下、床材固定用下地シートを「下地シート」と略記する場合がある。
【0017】
(基材シート)
本発明の床材固定用下地シートを構成する基材シートは、長尺状であることが好ましい。本明細書において、長尺とは、長さ寸法が幅寸法よりも十分に大きいことを意味し、その長さ寸法は、通常、幅寸法の5倍以上であり、好ましくは10倍以上である。このような幅寸法の基材シートから構成された床材固定用下地シートは、長さ寸法が幅寸法よりも十分に大きい。そのため、床材固定用下地シートを、その長手方向に巻くことでロール状に成形することできる。ロール状に成形された床材固定用下地シートは、容易に搬送できる。また、該ロール状に成形された床材固定用下地シートは、引き出しながら下地面に貼り合わせることで容易に施工できる。
基材シート(下地シート)の長さは、一般には、100m以上であり、好ましくは300m以上であり、より好ましくは600m以上に形成される。
【0018】
上記基材シートは、十分な機械的強度及び可撓性を有するシートであれば特に限定されず、任意のものを用いることができる。
基材シートは、単層シートでもよく、シートを複数積層してなる積層シートでもよい。
尚、該基材シートには、必要に応じて、基布などの補強層、その他の機能層などが設けられていてもよい。また、基材シートの表面には、係合層の密着性を高める目的で、プライマー層などが必要に応じて設けられていてもよい。
【0019】
該基材シートとしては、合成樹脂製シート、紙質シート、不織布等を例示することができる。基材シートは、これらシートを1種単独で、又は2種以上のシートを積層して用いることもできる。
基材シートの厚みは、特に限定されず、通常、0.1mm〜20mmであり、好ましくは0.1mm〜5mmであり、更に好ましくは0.1mm〜2mmである。基材シートの厚みが0.1mmを下回ると、床材固定用下地シートの機械的強度が低下する。一方、基材シートの厚みが5mmを超えると、硬くなりすぎて床材固定用下地シートをロール状に巻くことが困難となる。
【0020】
上記合成樹脂製シートを構成する合成樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、アクリロニトリル・スチレン、ナイロン、ポリアセタール、アクリル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、及び共重合体等を例示することができる。
これらの合成樹脂は、1種単独で又は2種以上を併用することもできる。
好ましくは、合成樹脂製シートは、ポリ塩化ビニルを含む熱可塑性樹脂を成膜してなるシートである。該シートは、柔軟性、低温での加工性に優れ、且つ比較的低コストで製造することができる。
【0021】
上記紙質シートとしては、一般的には繊維質の紙質シートが好ましく用いられる。
かかる繊維質の紙質シートとしては、上質紙、普通紙、薄用紙、難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの等)、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙等を例示することができる。これらの紙質シートは、1種単独で、又は2種以上を併用することもできる。
【0022】
(係合層)
上記基材シートの表面には、微粒子を有する係合層が設けられている。該係合層は、その表面に多数の微粒子が突出しており、該微粒子は、接着剤層を介して基材シートに固着されている。
ここで、本発明の1つの実施形態における床材固定用下地シートの一部省略断面図を、図1に示す。
図1において、下地シート1は、基材シート2と、係合層3と、粘着剤層4と、を有する。係合層3は、基材シート2の表面に積層された接着剤層3aと、該接着剤層3aに固着された多数の微粒子3bと、を有する。この多数の微粒子3bは、接着剤層3aの表面5(係合面)から突出しているものもあれば、接着剤層3a内に埋没しているものもある。
【0023】
上記係合層3は、例えば、基材シート2の表面に接着剤を塗布し、その接着剤の上から所定量の微粒子3bを略均一に散布することによって形成することができる。具体的には、上記係合層3は、基材シート2の表面に接着剤を所定量塗布して接着剤層3aを設けた後、接着剤が硬化しない間に、該接着剤層3aの表面5に微粒子3bを散布し、その後、接着剤を硬化させることによって形成することができる。このような形成方法によれば、接着剤層3a内に埋没する微粒子3bの量が少なく、より多くの微粒子3bが接着剤層3aの表面5(係合面)から突出された係合層3を形成することができる。もっとも、係合層3の形成方法は、これに限定されず、例えば、接着剤と微粒子を混ぜ合わせた微粒子混合接着剤を、基材シートの表面に塗布し、これを硬化させて係合層を形成する方法でもよい。
【0024】
上記粘着剤層4は、下地シート1を下地面に貼り合わせるために、予め基材シート2の裏面に設けられている。もっとも、粘着剤を塗布しながら下地シート1を下地面に貼り合わせることもできるので、本発明の下地シート1は、上記粘着剤層4を有していなくてもよい。
なお、粘着剤層4が設けられる場合、搬送・保管時における粘着性を隠蔽するため、粘着剤層4の表面に離型紙を貼付しておくことが好ましい。
【0025】
上記接着剤層を構成する接着剤は、特に限定されず、エマルジョン型接着剤、溶剤型接着剤、無溶剤型接着剤などが挙げられる。また、紫外線硬化型接着剤などの電子線硬化型接着剤、感熱型接着剤などの反応性接着剤を用いてもよい。中でも、接着剤としては、アクリル系などのエマルジョン型接着剤を用いることが好ましい。該接着剤は、塗布可能な粘度を有し、その性質に応じて、乾燥、紫外線照射、重合剤の添加などによって硬化するものである。なお、接着剤成分は、接着剤を構成する樹脂成分をいう。
【0026】
上記微粒子は、そのモース硬度が3.8以上のものが用いられる。好ましくは、モース硬度4.0以上の微粒子が用いられる。
微粒子のモース硬度の上限は、特に限定されない。微粒子のモース硬度は、好ましくは9.5以下であり、更に好ましくは9.0以下である。また、切断し易い下地シートを構成するためには、微粒子のモース硬度は、好ましくは7.0以下であり、更に好ましくは6.5以下である。
尚、本明細書において、モース硬度は、微粒子の硬さを1〜10までの数値で評価した尺度をいう。モース硬度は、下記実施例に記載の方法に従って測定できる。
【0027】
また、微粒子は、その粒子径が1mm以下のものが用いられる。好ましくは粒子径1mm未満の微粒子が用いられる。また、切断し易い下地シートを構成するためには、微粒子の粒子径は、好ましくは0.7mm以下であり、更に好ましくは0.6mm以下である。
該微粒子の粒子径の下限は、特に限定されないが、余りに微細であると床材の被係合面と十分に係合しない虞がある。かかる観点から、微粒子の粒子径は、好ましくは0.08mm以上であり、更に好ましくは0.1mm以上である。
【0028】
なお、用いられる微粒子の全量が、上記粒子径の範囲内であることが好ましいが、上記粒子径の範囲内に微粒子を正確に篩い分けることが困難な場合もある。
従って、本発明においては、用いられる微粒子の80質量%以上が、上記粒子径の範囲内に含まれていればよく、好ましくは、用いられる微粒子の90質量%以上が、上記粒子径の範囲内に含まれていればよい。微粒子の80質量%以上が、上記範囲内の粒子径であれば、本発明の効果を奏すると推定される。
モース硬度及び粒子径が上記範囲内の微粒子を用いれば、床材の被係合面に十分に係合しうる係合層を形成することができる。
【0029】
上記微粒子としては、特に限定されず、任意のものを用いることができる。該微粒子としては、燃成カオリン、蛍石、軽石、流紋岩、珪砂、珪石、大理石、ゼオライト、ジルコンサンド、ガラス、炭酸カルシウムなどの無機微粒子;アルミナ、銅、鉄などの金属微粒子;合成樹脂などの有機微粒子;等を例示することができる。
これらの微粒子は、1種単独で又は2種以上を併用することもできる。
【0030】
好ましくは、微粒子は、アルミナ(酸化アルミニウム)、軽石、及び銅からなる群から選ばれる少なくとも1種の微粒子である。これらの微粒子を用いれば、床材の被係合面に十分に係合しうる係合層を形成できる。また、アルミナ、軽石及び銅は、加工性に優れるため、容易に微細な粒子状に加工することができる。
アルミナを用いる場合、その粒子径が0.1mm〜1mmであるアルミナ微粒子が好ましい。軽石を用いる場合、その粒子径が0.5mm〜1mmである軽石微粒子を用いることが好ましい。銅を用いる場合、その粒子径が0.1mm〜0.5mmである銅微粒子を用いることが好ましい。これらは、1種単独で、又は、2種以上併用してもよい。
【0031】
係合層中に於ける微粒子の含有量は、220g/m以上であり、好ましくは250g/m以上である。微粒子の含有量が、220g/m未満であると、床材の被係合面に十分に係合しうる係合層を形成できない虞がある。
また、微粒子の含有量は、好ましくは500g/m以下であり、更に好ましくは450g/m以下であり、より好ましくは400g/m以下であり、特に好ましくは350g/m以下である。微粒子の含有量が余りに多くても、床材の被係合面との係合効果は殆ど変わらないと推定され、更に、微粒子の含有量を多くすると、多量の微粒子を固着するために接着剤を数回に分けて、多量に使用しなければならならず、費用対効果に劣る虞がある。更に、微粒子を多量に含んだ係合層は、カット性に劣り、床材固定用下地シートを、下地面の寸法に合わせて切断し難くなる虞がある。
【0032】
また、係合層中に於ける接着剤成分の含有量は、上記微粒子100質量部に対して、好ましくは20質量部以下であり、更に好ましくは18質量部以下であり、より好ましくは16質量部以下である。
例えば、係合層中の微粒子の含有量が220g/m〜800g/m、好ましくは220g/m〜600g/mである場合、該係合層中に於ける接着剤成分の含有量は、好ましくは50g/m以下であり、更に好ましくは、40g/m以下である。
接着剤成分が多すぎると、微粒子の多くが接着剤層に埋もれ、より多くの微粒子が接着剤層の表面から突出した係合層を形成し難くなる。また、接着剤成分が多すぎると、係合層の厚みが増し、比較的薄く且つ軽量な下地シートを構成できないからである。
【0033】
また、係合層中に於ける接着剤成分の下限は、特に限定されないが、上記微粒子100質量部に対して、好ましくは5質量部以上であり、更に好ましくは10質量部以上である。例えば、係合層中の微粒子の含有量が220g/m〜800g/m、好ましくは220g/m〜600g/mである場合、該係合層中に於ける接着剤成分の含有量は、好ましくは20g/m以上であり、更に好ましくは、30g/m以上である。
接着剤成分が少なすぎると、上記含有量の微粒子を固着できない虞がある。
微粒子と接着剤成分との比率が上記範囲内である係合層は、被係合面に十分に係合しうる上、余剰の微粒子や接着剤が生じないので生産効率に優れ、より薄く形成できる。
【0034】
上記粘着剤層は、基材シートの裏面に、粘着剤を塗布することにより形成される。尚、本明細書において粘着剤とは、室温下で粘着性(適度な凝集性と流動性)を有し、圧力を加えただけで被着体に接着でき、且つ、接着した被着体から剥離することができる感圧型粘着剤を含む。
粘着剤は、特に限定されず、水系粘着剤、溶剤系粘着剤、無溶剤系粘着剤などの任意のものを用いることができる。
【0035】
粘着剤を構成する材料としては、天然ゴム、炭化水素系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、再生ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、(メタ)アクリル系樹脂、イソプレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、シリコーン系ポリマー等を例示することができる。これらは、1種単独で、又は2種以上を併用できる。
【0036】
更に、基材シートの裏面に粘着剤層を設ける場合、必要に応じて、粘着剤の密着性等を向上させるために、基材シートに各種のプライマー層を設けてもよい。
プライマー剤としては、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレン、又はポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等を例示することができる。該プライマー剤は、1種単独で、又は2種以上を併用することもできる。
【0037】
本発明の床材固定用下地シートは、上記微粒子を有する係合層を有するので、床材を実用上十分に固定することができる。
【0038】
<床材>
上記床材固定用下地シートの係合層の表面に、床材の被係合面を敷設することにより、床材が下地面に固定される。本発明で用いられる床材は、裏面に被係合面を有する。該被係合面は、微粒子が突出された係合層の表面に係合しうる面である。
【0039】
本発明の1つの実施形態における床材の一部省略断面図を、図2に示す。
図2において、床材6は、被係合層7と、機能層8と、を有する。該被係合層7は、機能層8の裏面に設けられており、被係合層7の表面が被係合面9を構成している。
【0040】
上記被係合層は、その表面が下地シートの係合層に係合しうるものであれば特に限定されない。該被係合層としては、例えば、表面に凹凸を有する粗面シートを用いることができる。
表面に凹凸を有する粗面シートとしては、不織布、フェルト、織布などが挙げられる。
不織布としては、カーボン繊維、ガラス繊維、羊毛、綿などの天然繊維、ポリエステル、塩化ビニル、ナイロンなどの合成樹脂繊維、鉱物繊維、金属繊維等の繊維、及びそれら混合物を主成分とし、それらをバインダーを使用するか、または自己融着あるいは繊維のからみを利用してシート状に成形されたものなどを例示できる。
フェルトとしては、ガラス繊維、羊毛、綿などの天然繊維、ポリエステル、塩化ビニル、ナイロンなどの合成樹脂繊維を加圧下で揉み固めてシート状に成形したものなどを例示できる。
織布としては、天延繊維又は合成繊維を各種織り法で織り込まれたものを例示できる。
これらの粗面シートは、1種単独で又は2種以上を併用することもできる。
【0041】
好ましくは、該粗面シートは、ガラス繊維、天然繊維、及び/又は、合成樹脂繊維を主成分とする不織布又はフェルトが用いられる。これらの不織布又はフェルトを用いることで、床材固定用下地シートの係合面に十分に係合しうる被係合層を形成できる。
【0042】
更に好ましくは、上記粗面シートとしては、120g〜220g/mの繊維を有する不織布又はフェルトが用いられ、より好ましくは150〜200g/mの繊維を有する不織布又はフェルトが用いられる。
上記繊維の含有量が上記範囲内の不織布又はフェルトを用いることにより、床材固定用下地シートの係合面に、より係合し易い被係合層を形成できる。
【0043】
上記機能層としては、補強層、保護層、化粧層、パイル層などが挙げられる。機能層は、これら1種単独で又は2種以上の層が積層されていてもよい。機能層が、例えば、補強層、保護層及び化粧層を有する場合、例えば、被係合層の上に、補強層が積層され、該補強層の上に、化粧層及びそれを保護する保護層が積層される。機能層が、例えば、補強層及びパイル層を有する場合、例えば、被係合層の上に、補強層が積層され、該補強層の上にパイル層が積層される。なお、これら各層は、必要に応じて、接着剤を介して積層接着される。
【0044】
上記補強層としては、例えば、ガラスマット、基布などが挙げられる。
上記保護層としては、特に限定されないが、通常、硬化型樹脂などの合成樹脂層が挙げられる。硬化型樹脂としては、ウレタン系樹脂、アミノアルキド系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等の熱硬化型樹脂や、(メタ)アクリレート系樹脂等の電離放射線硬化型樹脂等を例示することができる。
【0045】
化粧層としては、任意の模様が表されたプリント印刷層などが挙げられる。
パイル層としては、ループパイル又はカットパイルが基布に植設された層が挙げられる。なお、パイル層を有する床材は、一般にタイルカーペットとも呼ばれるが、本発明の床材は、上記被係合層を裏面に有する点で、一般のタイルカーペットとは異なっている。
【0046】
<第1の床材の施工方法>
次に、本発明の床材の施工方法について説明する。
本発明の第1の床材の施工方法は、モース硬度が3.8以上で且つ粒子径が1mm以下である微粒子を220g/m以上有する係合層を、下地面上に設ける工程と、該係合層の表面に係合可能な被係合面を有する床材を、該係合層の表面に敷設する工程と、を有する。
該第1の床材の施工方法は、(1)上記床材固定用下地シートを下地面に敷設することにより、下地面上に係合層を設けてもよいし、或いは、(2)下地面に上記微粒子を固着することにより、下地面上に係合層を設けてもよい。
【0047】
まず、(1)上記床材固定用下地シートを下地面に敷設することにより、下地面上に係合層を設ける床材の施工方法について説明する。
図3に示すように、下地面10の上に、上記係合層3を有する床材固定用下地シート1を貼り付ける。床材固定用下地シート1が粘着剤層4を有する場合、該粘着剤層4を介して下地シート1を下地面10に貼り付けることができる。下地シート1が、粘着剤層4を有しない場合には、下地シート1の裏面(係合層3が設けられた面と反対面)及び/又は下地面10に粘着剤又は接着剤を塗布した後、下地シート1を下地面10に貼り付ける。
【0048】
上記下地面の材質は、特に限定されず、コンクリート面、モルタル面、木質面、合成樹脂面、セラミックタイルや陶タイルなどの陶磁器面、石材面、鉄板などの金属面等を例示できる。
該下地面は、材質に拘わらず、平滑な面であることが好ましく、平滑で且つ比較的硬質な面であることが更に好ましい。下地面が平滑な面であれば、床材固定用下地シートと下地面とを強固に接着できる。
【0049】
貼り付けられた床材固定用下地シート1の表面には、係合面5が露出している。
この係合面5の上に、床材6の裏面に設けられた被係合層7の表面9(被係合面9)が接触するように、床材6を敷設する。敷設された床材6は、その被係合面9が係合面5に係合するため、床材6は、面方向に位置ずれし難くなる。
従って、粘着剤や接着剤などを用いずとも、床材6を床材固定用下地シート1を介して下地面10上に固定することができる。
なお、図3において、2は、基材シートを示し、3aは、接着剤層を示し、3aは、微粒子を示し、8は、機能層を示す。
【0050】
次に、(2)下地面に上記微粒子を固着することにより、下地面上に係合層を設ける床材の施工方法について説明する。
図4に示すように、上記床材固定用下地シートに設けられた係合層と同様の係合層3を、下地面10の上に直接設ける。具体的には、下地面10の上に、上記所定量の接着剤を塗工して接着剤層3aを形成し、この接着剤が硬化しない間に、接着剤層3aの上に上記モース硬度及び粒子径の微粒子を上記所定量散布する。接着剤が硬化することによって、下地面10の上に、多数の微粒子が突出した係合層3を直接設けることができる。なお、接着剤の量、微粒子の種類、量、モース硬度及び粒子径は、上記<床材固定用下地シート>の欄で説明したものからを適宜選択すればよい。
事後、該係合層3の表面5(係合面5)に、床材6の裏面に設けられた被係合層7の表面9(被係合面9)が接触するように、床材6を敷設する。
このように敷設された床材も、その被係合面9が係合層3の係合面5に係合するため、床材6は、面方向に位置ずれし難くなる。
【0051】
<第2の床材の施工方法>
本発明の第2の床材の施工方法は、モース硬度が3.8以上で且つ粒子径が1mm以下である微粒子を220g/m以上有する係合層が設けられた床材を用い、前記床材の係合層に係合しうる被係合面を、下地面上に設ける工程と、前記床材の係合層の表面を、前記被係合面に敷設する工程と、を有する。
【0052】
第2の床材の施工方法で用いられる床材6は、図5に示すように、機能層8と、該機能層8の裏面に設けられた係合層3と、を有する。この床材6の係合層3は、上記床材固定用下地シートに設けられた係合層と同様に、接着剤層3aと微粒子3aとを有する。なお、床材6の係合層3を構成する接着剤の量、微粒子の種類、量、モース硬度及び粒子径は、上記<床材固定用下地シート>の欄で説明したものからを適宜選択すればよい。
【0053】
そして、下地面10の上に、前記床材6の係合層3の表面5(係合面5)が係合しうる被係合面9を設ける。例えば、下地面10の上に、粘着剤層4を介して被係合層7を敷設する。該被係合層7としては、上記<床材>の欄で説明した粗面シートを用いることができる。具体的には、下地面10の上に、粘着剤又は接着剤を塗布し、その上に粗面シートを貼り合わせることによって、下地面10の上に被係合面9を形成できる。
【0054】
この被係合面9の上に、床材6の裏面に設けられた係合層3の表面5が接触するように、床材6を敷設する。敷設された床材6は、その係合面5が下地面10上の被係合面9に係合するため、床材6は、面方向に位置ずれし難くなる。
第2の床材の施工方法のように、床材側に係合層を設け、且つ下地面側に被係合層を設けた場合でも、実用上、ずれ難い床材を施工できる。
【0055】
上記第1及び第2の床材の施工方法によって敷設された床材は、上方に捲れば容易に取り外すことができるので、簡単に清掃やリフォームを行うことができる。
【0056】
上記第1及び第2の床材の施工方法によって敷設された床材の引張り剪断強さは、好ましくは0.00900N/mm以上であり、更に好ましくは0.00960N/mm以上である。
尚、該床材の引張り剪断強さは、下記実施例の測定方法に従って測定できる。
【実施例】
【0057】
本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記実施例のみに限定されるものではない。本実施例で用いた各種測定方法及び床材は、下記の通りである。
【0058】
<モース硬度の測定方法>
微粒子のモース硬度は、下記の方法で測定された値である。
モース硬度が既知である表面平滑な板状の標準試料を2枚用意し、該標準試料の間に微粒子をはさみ、両方の板をこすり合わせて、どちらに傷がつくかどうかを調べた。標準試料に傷がつく場合、標準試料の硬度より微粒子の方が硬いことが判明する。モース硬度がより高い標準試料を選び、同様の操作を繰り返し、微粒子が傷つくか否かを順次判定することによって、該微粒子のモース硬度を測定した。
尚、モース硬度は、旧モース硬度計(10段階評価)に準じて測定した。
【0059】
<床材固定用下地シートの切断試験>
床材固定用下地シートの切断試験は、市販のカッター(ORFA社製、製品名:NTカッター)を用いて、床材固定用下地シートを、幅方向に切断した。該幅方向の切断は、切断箇所を変えた、任意の複数の箇所で行った。
下地シートの切断性については、切断するのにかかった所要時間を基準にして、各箇所での切断を総合的に評価した。
【0060】
なお、表において、「○」は、床材固定用下地シートが短時間で容易に切断できるという評価結果を示し、「△」は、床材固定用下地シートを切断できるという評価結果を示し、「×」は、床材固定用下地シートを切断し難いという評価結果を示す。
【0061】
<床材の引張り剪断強さの測定方法>
床材の引張り剪断強さは、JIS A 5536に準拠して測定した。
具体的には、図6に示すように、ベースA(幅70mm、長さ100mmのステンレス鋼板の表面)の上に、床材固定用下地シートB(幅70mm、長さ100mm)を粘着剤層を介して接着した。該床材固定用下地シートBの上に床材C(幅50mm、長さ70mm)を載置した。床材固定用下地シートBと床材Cとの接触面積は、3500mmである。
その床材Cの上に押さえ板D(幅40mm、長さ40mmのステンレス鋼板)を載置し、該押さえ板Dの上に重さ1.6kgの重りEを置き、床材Cに対し、単位面積当たり0.01N/mmの荷重をかけた。該床材Cを鉄線Fを用いて50mm/minの変位速度で矢印Xの方向に引張り、床材Cが床材固定用下地シートBからずれるまでの最大荷重を測定した。
なお、床材の引張り剪断強さは、下記式に従って算出した。
式:床材の引張り剪断強さ=P/A。但し、該式において、Pは、最大荷重(N)を、Aは、床材固定用下地シートと床材の接触面積(mm)を示す。
【0062】
<床材の作製>
坪量150g/m(厚み1.00mm)のポリエステル繊維のフェルト(サンケミカル株式会社製)の表面に塩化ビニルゾルを1,500g/mとなるように塗布し、その上に坪量75g/m(厚み300μm)のガラスマット(オリベスト株式会社製)を貼り合わせた。該ガラスマットの表面に、塩化ビニル系印刷インキを用いてプリント層を貼り付けた。該プリント層の上に、塩化ビニルゾルを500g/m(厚み300μm)となるように塗布した。最後に、全体を加熱して、塩化ビニルゾルをゲル化することにより、裏面に被係合層(ポリエステル繊維のフェルト)を有する床材を作製した。
【0063】
[実施例1]
坪量60g/m(厚み100μm)の紙製シート(中越パルプ(株)製、商品名:CS−60)の裏面に、アクリル系粘着剤(リンテック株式会社製、商品名:リピール)を50g/m(厚み40μm)となるように塗布することにより、粘着剤層を形成した。
上記紙製シートの表面に、アクリル系エマルジョン接着剤(DIC(株)製、商品名:ST−14)を35g/m(厚み45μm)となるように塗布し、接着剤層を形成した。
該接着剤を塗布した直後に、接着剤層の表面に、粒子径が0.1〜0.5mm、モース硬度が4.0の銅微粒子(株式会社エス・サイエンス製、商品名:Cラウンド01)を250g/mで略均一に散布した。その後、銅微粒子を散布した接着剤層の表面を、金属ロールで軽く押え付けて表面をならし、乾燥機内(雰囲気温度105℃)で2分間乾燥させ、アクリル系エマルジョン接着剤を硬化させた。このようにして床材固定用下地シートを作製した。
【0064】
得られた床材固定用下地シートを用いて、上記床材の引張り剪断強さの測定方法に従って、床材の引張り剪断強さを測定した。その結果を、表1に示す。
なお、表1〜3において、「○」は、床材を十分に固定できるという評価結果を示し(床材の引張り剪断強さが0.00900N/mm以上のもの)、「×」は、床材を十分に固定できないという評価結果を示す(0.00900N/mm未満のもの)。
【0065】
また、上記銅微粒子の量を350g/mとした床材固定用下地シート、及び、銅微粒子の量を400g/mにした床材固定用下地シートを、同様にしてそれぞれ作製し、各々を用いて、床材の引張り剪断強さを測定した。その結果を、表1に示す。
【0066】
[実施例2]
粒子径が0.5〜1.0mm且つモース硬度が6.0の軽石微粒子(日本カガライト工業株式会社製、商品名:KAGA05)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして床材固定用下地シートを作製した。なお、実施例1と同様に、微粒子の量が250g/m、350g/m、400g/mの3パターンそれぞれについて、床材固定用下地シートを作製した。
各床材固定用下地シートを用いて、床材の引張り剪断強さを測定した。その結果を、表1に示す。
【0067】
[実施例3]
粒子径が0.1〜1.0mm且つモース硬度が9.0のアルミナ微粒子(日東電工株式会社製、商品名:AT−7)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして床材固定用下地シートを作製した。なお、実施例1と同様に、微粒子の量が250g/m、350g/m、400g/mの3パターンそれぞれについて、床材固定用下地シートを作製した。
各床材固定用下地シートを用いて、床材の引張り剪断強さを測定した。その結果を、表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
[比較例1]
銅微粒子の量を200g/mとしたこと以外は、上記実施例1と同様にして床材固定用下地シートを作製した。
この床材固定用下地シートを用いて、床材の引張り剪断強さを測定した。その結果を、表2に示す。
【0070】
[比較例2]
軽石微粒子の量を200g/mとしたこと以外は、上記実施例2と同様にして床材固定用下地シートを作製した。
この床材固定用下地シートを用いて、床材の引張り剪断強さを測定した。その結果を、表2に示す。
【0071】
[比較例3]
アルミナ微粒子の量を200g/mとしたこと以外は、上記実施例3と同様にして床材固定用下地シートを作製した。
この床材固定用下地シートを用いて、床材の引張り剪断強さを測定した。その結果を、表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
[比較例4]
粒子径が0.5〜1.0mm、モース硬度が0.5の木粉微粒子(富士工業式会社製、試作品名:木粉小粒)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして床材固定用下地シートを作製した。なお、微粒子の量が200g/m、250g/m、350g/mの3パターンそれぞれについて、床材固定用下地シートを作製した。
各床材固定用下地シートを用いて、床材の引張り剪断強さを測定した。その結果を、表3に示す。
【0074】
[比較例5]
粒子径が1.0〜7.0mm、モース硬度が0.5の木粉微粒子(富士工業式会社製、試作品名:木粉大粒)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして床材固定用下地シートを作製した。なお、微粒子の量が200g/m、250g/m、350g/mの3パターンそれぞれについて、床材固定用下地シートを作製した。
各床材固定用下地シートを用いて、床材の引張り剪断強さを測定した。その結果を、表3に示す。
【0075】
[比較例6]
粒子径が0.1〜0.5mm、モース硬度が1.5の硬質塩ビ微粒子(積水化学工業式会社製、商品名:PVT0105)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして床材固定用下地シートを作製した。なお、微粒子の量が200g/m、250g/m、350g/mの3パターンそれぞれについて、床材固定用下地シートを作製した。
各床材固定用下地シートを用いて、床材の引張り剪断強さを測定した。その結果を、表3に示す。
【0076】
[比較例7]
粒子径が0.5〜1.0mm、モース硬度が1.5の硬質塩ビ微粒子(積水化学工業式会社製、商品名:PVT0510)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして床材固定用下地シートを作製した。なお、微粒子の量が200g/m、250g/m、350g/m、400g/mの4パターンそれぞれについて、床材固定用下地シートを作製した。
各床材固定用下地シートを用いて、床材の引張り剪断強さを測定した。その結果を、表3に示す。
【0077】
[比較例8]
粒子径が0.1〜0.5mm、モース硬度が3.5の大理石微粒子(PANDAN MINING(株)製、商品名:Powder1)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして床材固定用下地シートを作製した。なお、微粒子の量が250g/m、350g/m、400g/mの3パターンそれぞれについて、床材固定用下地シートを作製した。
各床材固定用下地シートを用いて、床材の引張り剪断強さを測定した。その結果を、表3に示す。
【0078】
[比較例9]
粒子径が1.0〜2.0mm、モース硬度が4.0の銅微粒子(株式会社エス・サイエンス製、商品名:Cラウンド10)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして床材固定用下地シートを作製した。なお、微粒子の量が200g/m、250g/m、350g/mの3パターンそれぞれについて、床材固定用下地シートを作製した。
各床材固定用下地シートを用いて、床材の引張り剪断強さを測定した。その結果を、表3に示す。
【0079】
[比較例10]
粒子径が1.0〜5.0mm、モース硬度が6.0の軽石微粒子(日本カガライト工業株式会社製、商品名:kaga1)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして床材固定用下地シートを作製した。なお、微粒子の量が200g/m、250g/m、350g/mの3パターンそれぞれについて、床材固定用下地シートを作製した。
各床材固定用下地シートを用いて、床材の引張り剪断強さを測定した。その結果を、表3に示す。
【0080】
【表3】

【0081】
[参考例1]
銅微粒子の量を200g/m、220g/m、250g/m、300g/m、400g/m、としたこと以外は、上記実施例1と同様にして床材固定用下地シートを作製し、この床材固定用下地シートを用いて、床材固定用下地シートの切断試験を行った。その結果を、表4に示す。
【0082】
[参考例2]
軽石微粒子の量を200g/m、220g/m、250g/m、300g/m、400g/m、としたこと以外は、上記実施例2と同様にして床材固定用下地シートを作製し、この床材固定用下地シートを用いて、床材固定用下地シートの切断試験を行った。その結果を、表4に示す。
【0083】
[参考例3]
アルミナ微粒子の量を200g/m、220g/m、250g/m、300g/m、400g/m、としたこと以外は、上記実施例3と同様にして床材固定用下地シートを作製し、この床材固定用下地シートを用いて、床材固定用下地シートの切断試験を行った。その結果を、表4に示す。
【0084】
【表4】

【0085】
[評価]
実施例1と比較例1の床材固定用下地シートを比較した場合、両者は、同粒子径の銅微粒子が用いられているが、微粒子の含有量が異なっている。このことから、微粒子の含有量が床材の引張り剪断強さに大きな影響を与えていることが分かる。実施例2と比較例2、実施例3と比較例3を比較しても、同様である。従って、床材のずれを防止するためには、微粒子の量を200g/mよりも多くする必要がある。
【0086】
また、実施例1と比較例6及び8の床材固定用下地シートを比較した場合、両者は、同粒子径の微粒子が用いられているが、微粒子のモース硬度が異なっている。このことから、微粒子のモース硬度も床材の引張り剪断強さに大きな影響を与えていることが分かる。従って、床材のずれを防止するためには、モース硬度が3.8よりも大きな微粒子を用いる必要がある。なお、実施例2と比較例6などを比較しても同様のことが言える。
【0087】
また、比較例9及び10の床材固定用下地シートから、微粒子の含有量が200g/mより多く、且つ微粒子のモース硬度が3.8よりも大きい場合であっても、その粒子径が1.0mmを超える場合には床材を十分に固定できない。従って、床材のずれを防止するためには、粒子径1.0mm以下の微粒子を用いる必要がある。
【0088】
更に、参考例1〜3から、微粒子の含有量が400g/m以下の床材固定用下地シートは、切断性に優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の床材固定用下地シートの一実施形態を示す一部省略断面図。
【図2】床材の一実施形態を示す一部省略断面図。
【図3】第1の床材の施工方法の一実施形態を示す一部省略断面図。
【図4】第1の床材の施工方法の他の実施形態を示す一部省略断面図。
【図5】第2の床材の施工方法を示す一部省略断面図。
【図6】床材の引張り剪断強さの測定方法を示す参考側面図。
【符号の説明】
【0090】
1…床材固定用下地シート、2…基材シート、3…係合層、5…係合面、6…床材、7…被係合層、9…被係合面、10…下地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、床材に係合しうる係合層と、を有する下地シートであって、
前記係合層が、220g/m以上の微粒子を有し、前記微粒子のモース硬度が3.8以上で且つ粒子径が1mm以下であることを特徴とする床材固定用下地シート。
【請求項2】
前記係合層が、前記微粒子を前記基材シートの表面に固着させるための接着剤層を有し、前記接着剤層の接着剤成分が、前記微粒子100質量部に対して、20質量部以下である請求項1に記載の床材固定用下地シート。
【請求項3】
前記係合層が、前記微粒子を前記基材シートの表面に固着させるための接着剤層を有し、前記接着剤層の接着剤成分が、50g/m以下である請求項1に記載の床材固定用下地シート。
【請求項4】
前記微粒子が、アルミナ、軽石及び銅から選ばれる少なくとも1つである請求項1〜3のいずれかに記載の床材固定用下地シート。
【請求項5】
前記係合面が、450g/m以下の微粒子を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の床材固定用下地シート。
【請求項6】
モース硬度が3.8以上で且つ粒子径が1mm以下である微粒子を220g/m以上有する係合層を、下地面上に設ける工程と、
前記係合層の表面に係合可能な被係合面を有する床材を、前記係合層の表面に敷設する工程と、
を有することを特徴とする床材の施工方法。
【請求項7】
モース硬度が3.8以上で且つ粒子径が1mm以下である微粒子を220g/m以上有する係合層が設けられた床材を用い、前記床材の係合層に係合しうる被係合面を、下地面上に設ける工程と、
前記床材の係合層の表面を、前記被係合面に敷設する工程と、
を有することを特徴とする床材の施工方法。
【請求項8】
前記係合層が、前記微粒子を固着させるための接着剤層を有し、前記接着剤層の接着剤成分が、前記微粒子100質量部に対して、20質量部以下である請求項6又は7に記載の床材の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−7334(P2010−7334A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166848(P2008−166848)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000222495)東リ株式会社 (94)
【Fターム(参考)】