説明

床材固定用下地シート

【課題】 本発明の課題は、床材を十分に固定し得る係合面を有しつつ、切断し易い床材固定用下地シートを提供することである。
【課題手段】 本発明の床材固定用下地シートは、基材シート2と、前記基材シート2の表面に並設された床材と係合可能な複数の係合面5と、を有し、前記係合面5の総面積が、前記基材シート2の表面積の55〜95%を占めており、前記係合面5の形状が、前記基材シート2の幅方向X及び長さ方向Yに平行な直線状の端辺を有する形状、又は円弧状の端辺を有する形状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィスビル、住宅などに用いられる床材固定用下地シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からオフィスビルや住宅等の下地面には、タイルカーペット、絨毯、樹脂製タイル床などの各種の床材が施工されている。該床材は、下地面の保護や意匠付与の為に施工される。このような床材は、一般的に接着剤や粘着剤などを用いて下地面に貼り付けられるため、床材を貼り替え難いという問題がある。
【0003】
このような問題に対して、下地面に予め施工された床材固定用下地シートを介して、床材を下地面上に固定する方法が知られている(特許文献1)。
特許文献1に記載の床材固定用下地シート(同文献の下地に相当)は、その表面に係合面(同微細突起に相当)を有している。該係合面に係合する床材(同表面材に相当)を下地シート上に載置することで、床材が係合面に固定される。
【特許文献1】特開2005−120648
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の床材固定用下地シートは、その表面全体に係合面が設けられているので、該係合面が抵抗となり、床材固定用下地シートを下地面の形状に合わせて切断し難いという問題点がある。特に、係合面が微粒子を含む場合、カッターの刃先が微粒子に接触するので、床材固定用下地シートの切断が困難である。
一方、床材固定用下地シートは、床材に十分に係合して床材を固定できるものでなければならない。
【0005】
本発明の課題は、床材を十分に固定でき、更に、切断し易い床材固定用下地シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の床材固定用下地シートは、基材シートと、該基材シートの表面に並設され且つ床材と係合可能な複数の係合面と、を有し、該係合面の総面積が、該基材シートの表面積の55〜95%を占めており、該係合面の形状が、該基材シートの幅方向及び長さ方向に平行な直線状の端辺を有する形状、又は円弧状の端辺を有する形状であることを特徴とする。
【0007】
本発明の好ましい態様において、上記第1の床材固定用下地シートは、複数の係合面の形状が、四角形、円形及び楕円形から選ばれる1つである。
【0008】
本発明の好ましい他の態様において、上記第1の床材固定用下地シートは、複数の係合面が、該基材シートの幅方向及び長さ方向に5.0mm以下の間隔を空けて並設されている。
【0009】
また、本発明の第2の床材固定用下地シートは、基材シートと、該基材シートの表面に並設され且つ床材と係合可能な複数の係合面と、を有し、該係合面の総面積が、該基材シートの表面積の35%以上を占めており、該係合面の形状が、該基材シートの幅方向及び長さ方向に対して鋭角に交わる2つの端辺で形成された角部を有する形状であることを特徴とする。
【0010】
本発明の好ましい態様において、上記第2の床材固定用下地シートは、複数の係合面の形状が、四角形又は三角形である。
【0011】
本発明の好ましい他の態様において、上記第2の床材固定用下地シートは、複数の係合面が、該基材シートの幅方向及び長さ方向に2.5mm以下の間隔を空けて並設されている。
【0012】
更に、本発明の好ましい他の態様において、上記第1及び第2の床材固定用下地シートは、係合面が、微粒子を220g/m以上有しており、該微粒子のモース硬度が3.8以上であり、且つ粒子径が1.0mm以下である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の床材固定用下地シートは、床材に係合して床材を十分に固定することができる。さらに、本発明の床材固定用下地シートは、下地面の形状に合った寸法に容易に切断することができる。従って、本発明によれば、固定機能に優れ、且つ施工し易い床材固定用下地シートを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の床材固定用下地シート(以下、下地シートと略記する場合がある)は、基材シートと、該基材シートの表面に設けられた複数の係合面と、を有する。該係合面に係合し得る被係合面を有する床材を、該下地シート上に敷設することで、下地シートを介して、床材を下地面上に固定することができる。係合面には、微粒子が突出していることが好ましい。
上記係合面は、基材シートの表面全体に設けられていない。本発明の係合面は、所定の平面視形状に形成され、該係合面の複数が基材シート上に島海状に設けられている。
この複数の係合面の総面積(総面積とは、基材シート上に設けられた各係合面の面積の合計をいう)が、基材シート上の所定面積を占めるように設けられる。
本発明の下地シートは、床材を十分に固定することができ、且つ容易に切断することができる。
以下、本発明の床材固定用下地シートについて具体的に説明する。
【0015】
<第1の実施形態における下地シート>
本実施形態の下地シートは、係合面の平面視形状が、基材シートの幅方向及び長さ方向に平行な直線状の端辺を有する形状、又は円弧状の端辺を有する形状に形成されている。なお、「基材シートの幅方向及び長さ方向に平行な直線状の端辺を有する形状」を「第1の形状」と略称する場合がある。「円弧状の端辺を有する形状」を「第2の形状」と略称する場合がある。
該係合面は、基材シートの表面上に複数が設けられている。複数の係合面は、基材シートの表面上に隙間を有した状態で並設されている。
【0016】
第1の実施形態における床材固定用下地シートの一部省略平面図を、図1に示し、その一部断面図を、図2に示す。
図1及び図2において、床材固定用下地シート1は、基材シート2と、該基材シート2の表面に設けられた複数の係合層3と、基材シート2の表面に設けられた非係合面6と、基材シート2の裏面に設けられた粘着剤層4と、を有する。該係合層3の表面が、係合面5である。従って、係合面5は、基材シート2の表面に複数設けられている。
複数の係合面5は、基材シート2の幅方向Xに間隔Wを空けて並設され、且つ基材シート2の長さ方向Yに間隔Lを空けて島海状に並設されている。
以下、本明細書において、隣り合う係合面における、基材シートの幅方向Xに空けられた上記間隔Wを「幅間隔W」といい、同長さ方向Yに空けられた上記間隔Lを「長さ間隔L」という。
また、本明細書において、前記幅間隔W及び長さ間隔Lは、隣り合う係合面の端辺間のうち、最も短い部分の距離を意味する。
【0017】
図1に示す係合面5は、第1の形状である。具体的には、該係合面5の平面視形状は、基材シート2の幅方向Xに平行な直線状の2本の第1端辺5a,5bと、基材シート2の長さ方向Yに平行な直線状の2本の第2端辺5c,5dと、を有する四角形である。図示例の係合面5は、第1端辺5a,5bが第2端辺5c,5dよりも長い長方形に形成されている。
【0018】
係合面5の第1の形状は、上記長方形に限られず、様々に変更することができる。係合面5の第1の形状としては、例えば、図3(a)に示すような正方形であってもよく、図3(b)に示すような八角形であってもよく、図3(c)に示すような台形であってもよい。その他図示しないが、係合面5の第1の形状は、多角形などでもよい。
【0019】
上記第1の形状のうち、好ましくは、係合面5の平面視形状は、幅方向Xに平行な直線状の2本の第1端辺5a,5bと、長さ方向Yに平行な直線状の2本の第2端辺5c,5dと、を有する四角形である。
【0020】
一方、係合面5の平面視形状は、第2の形状でも良い。該第2の形状としては、図3(d)に示すような円形が挙げられる。その他、係合面5の第2の形状としては、図3(e)に示すような楕円形であってもよい。また、係合面5の平面視形状は、第1の形状と第2の形状が組み合わされていてもよい。このような係合面5は、図3(f)に示すような、2本の直線状の端辺と1本の円弧状の端辺とで形成された形状などが挙げられる。
上記第2の形状のうち、好ましくは、係合面5の平面視形状は、円形又は楕円形である。
【0021】
係合面5が、第1又は第2の形状である場合、該係合面5の総面積が基材シート2の表面積に対して占める割合は、55〜95%である。
また、係合面5が、第1の形状である場合、好ましくは上記割合は、60〜95%であり、更に好ましくは、70〜95%である。
更に、係合面5が、第2の形状である場合、好ましくは上記割合は、60〜80%であり、更に好ましくは、65〜80%である。
なお、前記割合(%)=(係合面の総面積/基材シートの表面積)×100で求められる。
係合面5の占める割合が55%以上であれば、床材を実用上十分に固定することができる。また、係合面5の占める割合が95%を超えると、該係合面が抵抗となり、下地シートを切断し難くなる虞がある。
【0022】
上記複数の係合面5は、幅間隔W及び長さ間隔Lを空けて並設される。前記幅間隔W及び長さ間隔Lを有することにより、隣接する係合面5の間に、非係合面6(隙間)が形成される。非係合面6は微粒子を有しないので、該非係合面6が形成されていることによって、下地シート1を容易に切断できる。
【0023】
上記幅間隔W及び長さ間隔Lは、特に限定されないが、幅間隔W及び長さ間隔Lは、5.0mm以下が好ましい。
特に、係合面5が第1の形状である場合、幅間隔W及び長さ間隔Lは、4.0mm以下が更に好ましく、3.0mm以下がより好ましい。また、係合面5が第1の形状である場合、幅間隔W及び長さ間隔Lは、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上が更に好ましい。
【0024】
該係合面5が第2の形状である場合、幅間隔W及び長さ間隔Lは、2.5mm以下が更に好ましく、2.0mm以下がより好ましく、1.0mm以下が特に好ましい。また、係合面5が第2の形状である場合、幅間隔W及び長さ間隔Lは、0mm以上が好ましく、0.3mm以上が更に好ましい。
【0025】
幅間隔W及び長さ間隔Lが上記範囲を下回る場合、下地シート1を切断し難くなる虞がある。一方、幅間隔W及び長さ間隔Lが上記範囲を上回る場合、係合面5の総面積が相対的に小さくなって、床材を十分に固定できない虞がある。
【0026】
上記係合面5は、図2に示すように、係合層3の表面であり、床材に係合し得る突起を有する面である。
係合層3は、基材シート2の表面に設けられた接着剤層3aと、該接着剤層3aに固着された多数の微粒子3bと、を有する。接着剤層3aは、微粒子3bを基材シート2に固着するためのバインダーである。係合面5は、該微粒子3bによって形成された微細な突起を有する。
非係合面6は、微粒子3bを有しておらず、床材と係合し得ない部分である。
【0027】
図2(a)に示す下地シート1の係合面5は、例えば、下記の方法で形成することができる。
形成予定の係合面5の平面視形状及び形成位置に対応して、基材シート2の表面に、部分的に接着剤を塗布する。この接着剤の上から微粒子3bを略均一に散布した後、接着剤を硬化させる。最後に、接着剤が塗布されていない部分に残った微粒子3bを除去する。かかる方法によれば、所定の平面視形状の係合面5を基材シート2の表面に容易に形成することができる。
また、その他の方法としては、表面にベタ状に微粒子が突出したシート材を準備し、このシート材を形成予定の係合面5の平面視形状に裁断し、この裁断シート片の複数を、基材シート2の表面に間隔を空けて貼り付けてもよい。
【0028】
なお、図2(a)に示す下地シート1は、微粒子3bを固着する接着剤が基材シート2の表面に部分的に設けられているが、図2(b)に示す下地シート1のように、接着剤がベタ状に設けられていてもよい。
図2(b)に示す下地シート1は、基材シート2の表面全体に接着剤層3aがベタ状に設けられ、この接着剤層3aに部分的に微粒子3bを固着することによって、複数の係合面5が設けられている。微粒子3bが固着されていない接着剤層3aの表面は、非係合面6である。基材シート2の表面に接着剤層3aがベタ状に設けられていることを除いて、図2(b)に示す下地シート1は、図2(a)のものと同様である。
【0029】
図2(b)に示す下地シート1の係合面5は、例えば、下記の方法で形成することができる。
基材シート2の表面全体にベタ状に接着剤を塗布し、該接着剤が硬化する前に、微粒子3bを部分的に散布する。該微粒子3bが散布される部分は、係合面5の形成予定部分である。その後、接着剤を硬化させることにより、複数の係合面5が島海状に並設された下地シート1を得ることができる。
【0030】
上記微粒子の種類は、特に限定されず、任意のものを用いることができる。該微粒子としては、焼成カオリン、蛍石、軽石、流紋岩、珪砂、大理石、ゼオライト、ジルコンサンド、ガラス、炭酸カルシウム等の無機微粒子;アルミナ(酸化アルミニウム)、銅、鉄等の金属微粒子;合成樹脂等の有機微粒子を例示することができる。
これら微粒子は、1種単独で又は2種以上を併用することもできる。
【0031】
好ましくは、微粒子は、アルミナ及び軽石から選ばれる少なくとも1種である。これらの微粒子を用いれば、床材と十分に係合する係合面を形成できる。また、アルミナ及び軽石は、加工性に優れるため、所定の粒子径を有する微粒子に容易に加工できる。
【0032】
上記微粒子のモース硬度の下限は、特に限定されないが、好ましくはモース硬度3.8以上であり、更に好ましくは同5.8以上、より好ましくは同6.0以上の微粒子が用いられる。
また、該微粒子のモース硬度は、好ましくは9.5以下であり、更に好ましくは9.0以下である。
尚、本明細書において、モース硬度は、微粒子の硬度を1〜10までの数値で評価した尺度を示し、該数値が高いほど硬度が高いことを意味する。モース硬度は、下記実施例に記載の方法に従って測定できる。
【0033】
上記微粒子の粒子径は、特に限定されず、適宜適切な粒子径の微粒子が用いられる。該微粒子の粒子径は、好ましくは2.0mm以下であり、更に好ましくは1.5mm以下であり、より好ましくは1.0mm以下である。また、該微粒子の粒子径は、好ましくは0.08mm以上であり、更に好ましくは0.1mm以上である。
例えば、アルミナ微粒子を用いる場合、その粒子径は0.1〜1.0mmであることが好ましい。また、軽石微粒子を用いる場合、その粒子径は0.5〜1.0mmであることが好ましい。
微粒子の粒子径が余りに微細であると、係合面が床材を十分に係合しない虞がある。
尚、用いられる微粒子の全量が、上記範囲内の粒子径であることが好ましいが、微粒子をその粒子径に対応して正確に篩い分けることが困難な場合がある。そのため、本発明においては、用いられる微粒子の80質量%以上が、上記範囲内の粒子径であればよく、好ましくは、微粒子の90質量%以上が、上記範囲内の粒子径であればよい。微粒子の80質量%が、上記範囲内の粒子径であれば、床材と十分に係合する係合面を形成することができ、更に、切断し易い下地シートを形成できる。
【0034】
上記微粒子の係合面(係合層)における含有量は、特に限定されないが、好ましくは、該微粒子の含有量は220g/m以上であり、更に好ましくは250g/m以上である。微粒子の含有量が220g/m未満であれば、床材を十分に固定できる係合面を形成できない虞がある。
また、上記微粒子の係合面における含有量の上限は、特に限定されない。好ましくは、係合面における微粒子の含有量は、500g/m以下であり、更に好ましくは450g/m以下であり、より好ましくは400g/m以下である。更に好ましくは400g/m以下である。微粒子の含有量が500g/mを超えても、十分に床材を固定できるが、微粒子の量が余りに多い場合、該微粒子を固着するのに必要な接着剤の量が多くなるため、費用対効果に劣る虞がある。
【0035】
上記接着剤層を構成する接着剤は、特に限定されず、酢酸ビニル樹脂系、エチレン/ビニルアセテート樹脂系、尿素樹脂系、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系等のエマルジョン型接着剤;クロロプレンゴム系、ニトリルゴム系等の溶剤型接着剤;エポキシ樹脂系等の無溶剤型接着剤;ポリエステル樹脂系、ポリオレフィン樹脂系等のホットメルト型接着剤;紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等の反応性接着剤を例示できる。
中でも、接着剤は、エマルジョン型接着剤、溶剤型接着剤を用いることが好ましい。これらの接着剤は、固化する際に接着剤に含まれる水や有機溶媒が気化する。そのため、該接着剤を用いて設けられた接着剤層に微粒子を固着させた後、接着剤を固化させた場合、接着剤層の内部に埋没した微粒子が係合面に表れやすくなり、より多くの突起を有する係合面を形成することができる。
【0036】
また、上記接着剤には、必要に応じて、可塑剤や軟化剤等の添加剤を加えることもできる。これらの添加剤を加える場合、その量は、一般的には接着剤の接着剤成分100質量部に対して0.1〜10質量部であり、好ましくは0.1〜5質量部である。
尚、本明細書において接着剤成分とは、接着剤を構成する樹脂成分をいう。
【0037】
上記接着剤の使用量は、特に限定されない。好ましくは、該接着剤の使用量は、上記微粒子100質量部に対して50質量部以下であり、更に好ましくは30質量部以下であり、より好ましくは20質量部以下である。
また、上記接着剤の使用量は、好ましくは、上記微粒子100質量部に対して5質量部以上であり、更に好ましくは10質量部以上である。
例えば、アルミナ微粒子を用い、該微粒子の含有量が220〜500g/mである場合、上記接着剤の使用量は、好ましくは50g/m以下であり、更に好ましくは40g/m以下である。
また、軽石微粒子を用い、該微粒子の含有量が220〜500g/mである場合、上記接着剤の使用量は、好ましくは50g/m以下であり、更に好ましくは45g/m以下であり、より好ましくは40g/m以下である。
【0038】
上記基材シートは、長尺状であることが好ましい。本明細書において、長尺とは、長さ寸法が幅寸法よりも十分に大きいことを意味し、その長さ寸法は、通常、幅寸法の5倍以上であり、好ましくは10倍以上である。このような幅寸法の基材シートから構成された床材固定用下地シートは、長さ寸法が幅寸法よりも十分に大きい。そのため、床材固定用下地シートを、その長手方向に巻くことでロール状に成形することできる。ロール状に成形された床材固定用下地シートは、容易に搬送できる。また、該ロール状に成形された床材固定用下地シートは、引き出しながら下地面に貼り合わせることで容易に施工できる。
基材シート(下地シート)の長さは、一般には、100m以上であり、好ましくは300m以上であり、より好ましくは600m以上に形成される。
【0039】
上記基材シートは、十分な機械的強度及び可撓性を有するシートであれば特に限定されず、任意のものを用いることができる。
基材シートは、単層シートでもよく、シートを複数積層してなる積層シートでもよい。尚、該基材シートには、必要に応じて、基布などの補強層、その他の機能層などが設けられていてもよい。
【0040】
該基材シートとしては、合成樹脂製シート、紙質シート、不織布等を例示することができる。基材シートは、これらシートを1種単独で、又は2種以上のシートを積層して用いることもできる。
基材シートの厚みは、特に限定されず、通常、0.1mm〜10.0mmであり、好ましくは0.1mm〜5.0mmであり、更に好ましくは0.1mm〜2.0mmである。基材シートの厚みが0.1mmを下回ると、床材固定用下地シートの機械的強度が低下する。一方、基材シートの厚みが10.0mmを超えると、硬くなりすぎて床材固定用下地シートをロール状に巻くことが困難となる。
【0041】
上記合成樹脂製シートを構成する合成樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、アクリロニトリル・スチレン、ナイロン、ポリアセタール、アクリル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、及び共重合体等を例示することができる。
これらの合成樹脂は、1種単独で又は2種以上を併用することもできる。
好ましくは、合成樹脂製シートは、ポリ塩化ビニルを含む熱可塑性樹脂を成膜してなるシートである。該シートは、柔軟性、低温での加工性に優れ、且つ比較的低コストで製造することができる。
【0042】
上記紙質シートとしては、一般的には繊維質の紙質シートが好ましく用いられる。
かかる繊維質の紙質シートとしては、上質紙、普通紙、薄用紙、難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの等)、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙等を例示することができる。これらの紙質シートは、1種単独で、又は2種以上を併用することもできる。
【0043】
また、上記粘着剤層4は、下地シート1を下地面に貼り合わせるために設けられている。該粘着剤層4が下地シート1に設けられる場合、搬送や保存時において粘着剤層4の粘着性を担保するために、その表面に離型紙が貼付されることが好ましい。
もっとも、下地シート1は、粘着剤層4を有していなくてもよい。この場合、下地シートを下地面に貼り合わせるときに、接着剤や粘着剤などが塗布される。
【0044】
<第2の実施形態における下地シート>
本実施形態の下地シートは、係合面の平面視形状が、基材シートの幅方向に対して鋭角に交わる2つの端辺で形成された角部及び長さ方向に対して鋭角に交わる2つの端辺で形成された角部を有する形状である。なお、「基材シートの幅方向に対して鋭角に交わる2の端辺で形成された角部及び長さ方向に対して鋭角に交わる2つの端辺で形成された角部を有する形状」を「第3の形状」と略称する場合がある。
以下、第2の実施形態の下地シートを説明するが、上記第1の実施形態の下地シートと同様の構成及び効果についてはその説明を省略し、用語及び符号を援用する場合がある。
【0045】
第2の実施形態における床材固定用下地シート1の一部省略平面図を、図4に示す。
本実施形態の下地シート1の層構成は、上記第1の実施形態で示した図2(a)又は図2(b)と同様である。
図4において、床材固定用下地シート1は、基材シート2の表面に、第3の形状の係合面5が複数並設されている。複数の係合面5は、所定の幅間隔W及び長さ間隔Lを空けて並設されている。隣り合う係合面5の間には、非係合面6が形成されている。
【0046】
係合面5の平面視形状は、基材シート2の幅方向Xに対して鋭角に交わる2つの端辺で形成された1つの角部5eと、基材シート2の長さ方向Yに対して鋭角に交わる2つの端辺で形成された2つの角部5f,5gと、を有する三角形である。図示例の係合面5は、角部5eを頂角とする二等辺三角形に形成されている。
【0047】
該角部の内角は、好ましくは100°以下であり、更に好ましくは90°以下であり、より好ましくは80°以下であり、特に好ましくは60°以下である。
【0048】
係合面5の第3の形状は、様々に変更することができる。係合面5の第3の形状としては、例えば、図5(a)に示すような正三角形であってもよく、図5(b)に示すような二等辺三角形であってもよく、図5(c)に示すような不等辺三角形であってもよく、図5(d)に示すような菱形であってもよい。その他図示しないが、係合面5の第3の形状としては、四角形、五角形、六角形などを含む多角形などでもよい。
【0049】
上記第3の形状のうち、好ましくは、係合面5の平面視形状は、長さ方向Yに対して鋭角に交わる2つの端辺で形成された2つの角部と、幅方向Xに対して鋭角に交わる2つの端辺で形成された1つの角部と、を有する三角形である。
第3の形状を有する係合面5は、床材に対して、幅方向X又は長さ方向Yに剪断応力が加わった場合、角部が被係合面に係合する。即ち、係合面5は、微粒子5bによって形成された突起のみならず、その角部自体が被係合面に対して係合し得る。また、係合面5の角部は、床材に対して上記方向の剪断力が加わるに従い、より被係合面に強く係合し得る。そのため、係合面5の総面積が小さくても、実用上十分に床材を固定することができる。また、係合面5の総面積を小さくできるため、床材固定用下地シートを容易に切断することができる。
【0050】
上記第3の形状の係合面5において、係合面5の総面積が基材シート2の表面積に対して占める割合は、35%以上であり、好ましくは、40%以上である。また、該係合面5の総面積が基材シート2の表面積に対して占める割合は、好ましくは80%以下であり、更に好ましくは60%以下であり、より好ましくは50%以下である。
係合面5の占める割合が35%以上であれば、床材を実用上十分に固定することができる。また、係合面5の占める割合が80%を超えると、該係合面が抵抗となり、下地シートを切断し難くなる虞がある。
【0051】
上記係合面5は、幅間隔W及び長さ間隔Lを空けて並設されており、隣接する係合面5の間に非係合面6(隙間)が形成される。該非係合面6は微粒子を有しないため、係合面5の間に非係合面6が存在することによって、下地シート1を容易に切断できる。
第3の形状の係合面5を並設する場合、その幅間隔W及び長さ間隔Lは、特に限定されず、適宜設定できる。本実施形態の係合面5間の幅間隔W及び長さ間隔Lは、好ましくは2.5mm以下であり、更に好ましくは2.0mm以下であり、より好ましくは1.5mm以下である。一方、前記幅間隔W及び長さ間隔Lは、好ましくは0mm以上であり、更に好ましくは0.3mm以上である。
【0052】
幅間隔W及び長さ間隔Lが上記範囲を上回る場合、係合面5の総面積が相対的に小さくなって、床材を十分に固定できない虞がある。
【0053】
<床材>
上記床材固定用下地シートの係合面に、床材の被係合面を敷設することにより、床材が下地面上に固定される。本発明で用いられる床材は、裏面に被係合面を有する。該被係合面は、下地シートの係合面に係合し得る面である。
【0054】
本発明の一実施形態における床材の一部省略断面図を、図6に示す。
図6において、床材7は、被係合層8と、機能層9と、を有する。該被係合層8は、機能層9の裏面に設けられており、被係合層8の表面が被係合面10を構成している。
【0055】
上記被係合層8は、その表面が下地シートの係合面に係合しうるものであれば特に限定されない。該被係合層8としては、例えば、表面に凹凸を有する粗面シートを用いることができる。
表面に凹凸を有する粗面シートとしては、不織布、フェルト、織布などが挙げられる。
不織布としては、カーボン繊維、ガラス繊維、羊毛、綿などの天然繊維、ポリエステル、塩化ビニル、ナイロンなどの合成樹脂繊維、鉱物繊維、金属繊維等の繊維、及びそれら混合物を主成分とし、それらをバインダーを使用するか、または自己融着あるいは繊維のからみを利用してシート状に成形されたものなどを例示できる。
フェルトとしては、ガラス繊維、羊毛、綿などの天然繊維、ポリエステル、塩化ビニル、ナイロンなどの合成樹脂繊維を加圧下で揉み固めてシート状に成形したものなどを例示できる。
織布としては、天然繊維又は合成繊維を各種織り法で織り込まれたものを例示できる。
これらの粗面シートは、1種単独で又は2種以上を併用することもできる。
【0056】
好ましくは、該粗面シートは、ガラス繊維、天然繊維、及び/又は、合成樹脂繊維を主成分とする不織布又はフェルトが用いられる。これらの不織布又はフェルトを用いることで、床材固定用下地シートの係合面に十分に係合しうる被係合層を形成できる。
【0057】
更に好ましくは、該粗面シートとしては、120g〜220g/mの繊維を有する不織布又はフェルトが用いられ、より好ましくは150〜200g/mの繊維を有する不織布又はフェルトが用いられる。
上記繊維の含有量が上記範囲内の不織布又はフェルトを用いることにより、床材固定用下地シートの係合面に、より係合し易い被係合層を形成できる。
【0058】
上記機能層9としては、補強層、保護層、化粧層、パイル層などが挙げられる。機能層9は、これら1種単独で又は2種以上の層が積層されていてもよい。
該機能層9が、例えば、補強層、保護層及び化粧層を有する場合、被係合層8の上に、補強層が積層され、該補強層の上に、化粧層及びそれを保護する保護層が積層される。また、機能層9が、例えば、補強層及びパイル層を有する場合、被係合層8の上に、補強層を積層し、該補強層の上にパイル層が積層される。なお、これら各層は、必要に応じて、接着剤を介して積層接着される。
【0059】
上記補強層としては、特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂や、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂などの合成樹脂;ガラス繊維や炭素繊維などの無機質繊維;天然繊維、合成繊維などの織布からなる基布等を例示することができる。
【0060】
上記保護層としては、特に限定されないが、硬化型樹脂などの合成樹脂層を例示することができる。該硬化型樹脂としては、ウレタン系樹脂、アミノアルキド系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等の熱硬化型樹脂や、(メタ)アクリレート系樹脂等の電離放射線硬化型樹脂等を例示することができる。
【0061】
上記化粧層としては、特に限定されないが、突き板や合成樹脂製の化粧薄板;印刷紙などの化粧シート;任意の模様が表されたプリント印刷層等を例示することができる。
上記パイル層としては、特に限定されないが、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリプロピレンなどからなるパイル糸をループ状に成形したループパイル;該パイル糸の先端を平滑にカットしたカットパイル;などを基布に植設した層などを例示することができる。
尚、該パイル層を有する床材は、一般にタイルカーペットとも呼ばれるが、本発明の床材は、上記被係合層を裏面に有する点で、一般のタイルカーペットとは異なっている。
【0062】
<床材の施工方法>
次に、床材の施工方法について説明する。
床材の施工方法は、上記床材固定用下地シートを、下地面に貼り合わせる工程と、該下地シートの上に係合可能な被係合面を有する床材を敷設する工程と、を有する。以下、この床材の施工方法について説明する。
【0063】
具体的には、図7に示すように、まず、下地面11の上に、上記係合面5を有する床材固定用下地シート1を貼り合わせる。下地シート1は、その裏面に設けられた粘着剤層4を介して貼り合わされる。なお、下地シート1が粘着剤層4を有しない場合には、下地シート1の裏面及び/又は下地面11に接着剤又は粘着剤を塗布した後に貼り合わされる。
貼り合わされた床材固定用下地シート1の表面には、係合面5と、非係合面6とが露出している。この下地シート1の上に、床材7の裏面に設けられた被係合層8の表面(被係合面10)が接触するように、床材7を敷設する。敷設された床材7の被係合面10と、下地シート1の係合面5とが係合するため、床材7は面方向に位置ずれし難くなる。
従って、接着剤や粘着剤などを用いずとも、床材7を下地シート1を介して下地面11上に固定することができる。
尚、図7において、係合面5は、基材シート2の上に部分的に設けられた接着剤層3aと、該接着剤層3aに固着された微粒子3bとによって構成された係合層3の表面である。また、床材7は、機能層9を有している。
【0064】
上記床材の施工方法において、下地面の材質は、特に限定されず、コンクリート面、モルタル面、木質面、合成樹脂面、セラミックタイルや陶タイルなどの陶磁器面、石材面、鉄板などの金属面等を例示できる。
該下地面は、材質に拘わらず、平滑な面であることが好ましく、平滑で且つ比較的硬質な面であることが更に好ましい。下地面が平滑な面であれば、床材固定用下地シートと下地面とを強固に接着できる。
【0065】
次に、床材の施工方法の第1の変形例について説明する。
該第1の変形例の床材の施工方法は、床材と係合可能な複数の係合面を、該下地面上に直接設ける工程と、該係合面が設けられた下地面上に、被係合面を有する床材を敷設する工程と、を有する。
【0066】
具体的には、図8に示すように、まず、上記床材固定用下地シートに設けられた係合面と同様の係合面5を、下地面11上に直接設ける。該係合面5は、例えば、下地面11上に接着剤を部分的に塗布することによって接着剤層3aを形成し、該接着剤層3aが硬化しない間に、該接着剤層3aの上に所定量の微粒子3bを散布した後、接着剤を硬化させることによって形成することができる。また、係合面5は、表面にベタ状に微粒子が突出固着されたシート材を準備し、このシート材を形成予定の係合面の平面視形状に裁断して得た裁断シート片を、下地面11の表面に複数貼り付けることによって形成することもできる。上記いずれの形成法によっても、下地面11の表面に、複数の係合面5を並設することができる。
次に、下地面11に設けられた該係合面5の上に、被係合層8と、機能層9と、を有する床材7を敷設する。
このようにして敷設される床材7も、その被係合層8の表面(被係合面10)が、下地面11に直接設けられた係合面5と係合するため、床材7は面方向に位置ずれし難くなる。
【0067】
尚、床材の施工方法の第1の変形例において、下地面11に直接設けられる係合面5の構成は、上記第1及び第2の実施形態の下地シートに設けられた各種の係合面の構成から適宜選択すればよい。
【0068】
更に、床材の施工方法の第2の変形例について説明する。
該第2の変形例の床材の施工方法は、複数の係合面が設けられた床材を用い、該床材の係合面に係合しうる被係合面を、下地面上に設ける工程と、該被係合面に係合可能な係合面を有する床材を、該被係合面上に敷設する工程と、を有する。
【0069】
この床材の施工方法の第2の変形例で用いる床材7は、図9に示すように、機能層9と、該機能層9の裏面に設けられた複数の係合面5と、を有する。
図9において、係合面5は、接着剤層3aと、該接着剤層3aに固着した微粒子3bとを有する係合層3の表面である。
【0070】
尚、この床材7に設けられた係合面5は、上記第1及び第2の実施形態の下地シートに設けられた各種の係合面の構成から適宜選択すればよい。
【0071】
第2の変形例に係る床材の施工方法は、まず、下地面11の表面に、上記床材7の係合面5が係合しうる被係合面10を設ける。該被係合面10は、例えば、下地面11上に、粘着剤層4(又は接着剤層)を介して、粗面シート8を貼り合わせることによって形成できる。
該被係合面10の上に、上記床材7の裏面に設けられた係合面5が接触するように、床材7を敷設する。
このようにして敷設される床材7も、その係合面5が、下地面11上に設けられた被係合面10と係合するため、床材7は面方向に位置ずれし難くなる。
【0072】
上記何れかの方法によって敷設された床材は、上方に捲ることで容易に取り外すことができる。そのため、床材の清掃や床材の取り替えを簡単に行うことができる。
【0073】
上記何れかの方法によって敷設された床材の引張り剪断強さは、0.0090N/mm以上であり、更に好ましくは0.00960N/mm以上である。
尚、該床材の引張り剪断強さは、下記実施例の測定方法に従って測定できる。
【実施例】
【0074】
本発明の実施例及び比較例について説明する。なお、本発明は、下記実施例のみに限定されるものではない。本実施例で用いた各種測定方法及び床材は、下記の通りである。
【0075】
<モース硬度の測定方法>
微粒子のモース硬度は、下記の方法で測定された値である。
モース硬度が既知である表面平滑な板状の標準試料を2枚用意し、該標準試料の間に微粒子をはさみ、両方の板をこすり合わせて、どちらに傷がつくかどうかを調べた。標準試料に傷がつく場合、標準試料の硬度より微粒子の方が硬いことが判明する。モース硬度がより高い標準試料を選び、同様の操作を繰り返し、微粒子が傷つくか否かを判定していくことによって、該微粒子のモース硬度を測定した。
尚、モース硬度は、旧モース硬度計(10段階評価)に準じて測定した。
【0076】
<床材の引張り剪断強さの測定方法>
床材の引張り剪断強さは、JIS A 5536に準拠して測定した。
具体的には、図10に示すように、ベースA(幅70mm、長さ100mmのステンレス鋼板の表面)の上に、床材固定用下地シートB(幅70mm、長さ100mm)を粘着剤層を介して接着した。該床材固定用下地シートBの上に床材C(幅50mm、長さ70mm)を載置した。床材固定用下地シートBと床材Cとの接触面積は、3500mmである。
その床材Cの上に押さえ板D(幅40mm、長さ40mmのステンレス鋼板)を載置した。押さえ板Dの上に重さ1.6kgの重りEを置き、床材Cに対し、単位面積当たり0.01N/mmの荷重をかけた。該床材Cを鉄線Fを用いて50mm/minの変位速度で矢印Xの方向に引張り、床材Cが床材固定用下地シートBからずれるまでの最大荷重を測定した。
なお、床材の引張り剪断強さは、下記式に従って算出した。
式:床材の引張り剪断強さ=P/A。但し、該式において、Pは、最大荷重(N)を、Aは、床材の床材固定用下地シートに敷設された部分の面積(mm)を示す。
【0077】
尚、各表において、「○」は、床材を十分に固定できるという評価結果を示し(床材の引張り剪断強さが0.00900N/mm以上のもの)、「×」は、床材を十分に固定できないという評価結果を示す(0.00900N/mm未満のもの)。
【0078】
<下地シートの切断試験>
下地シートの切断試験は、市販のカッター(ORFA社製、製品名:NTカッター)を用いて、下地シートの幅方向と平行に下地シートを切断した。該幅方向の切断は、切断箇所を変えた、任意の複数の箇所で行った。同様に、下地シートの長さ方向と平行に下地シートを切断した。該長さ方向の切断についても、切断箇所を変えた、任意の複数の箇所で行った。
下地シートの切断性については、切断したときに手に加わる抵抗を基準にして、各箇所での切断を総合的に評価した(切断箇所によって前記抵抗の度合いが若干異なるため)。
【0079】
なお、各表において、「良」は、下地シートを切断し易いという評価結果を示し、「悪」は、下地シートを切断し難いという評価結果を示す。
【0080】
<試験用床材の作製>
坪量150g/m(厚み1.0mm)のポリエステル繊維のフェルト(サンケミカル株式会社製)の表面に塩化ビニルゾルを坪量1,500g/mとなるように塗布し、その上に坪量75g/m(厚み300μm)のガラスマット(オリベスト株式会社製)を貼り合わせた。該ガラスマットの表面に、塩化ビニル系印刷インキを用いてプリント層を貼り付けた。該プリント層の上に、塩化ビニルゾルを坪量500g/m(厚み300μm)となるように塗布した。最後に、全体を加熱して、塩化ビニルゾルをゲル化することにより、裏面に被係合層(ポリエステル繊維のフェルト)を有する床材を作製した。
【0081】
[実施例1]
坪量60g/m(厚み100μm)、幅×長さ=980mm×6000mmの紙製シート(中越パルプ(株)製、商品名:CS−75)の裏面に、アクリル系粘着剤(リンテック株式会社製、商品名:リピール)を坪量50g/m(厚み40μm)となるように塗布することにより、粘着剤層を形成した。この紙製シートを「ベースシート」という。
【0082】
上記ベースシートと同じ紙製シート(裏面に粘着剤層を有する紙製シート)を別途準備した。この紙製シートの表面全体に、アクリル系エマルジョン接着剤(DIC(株)製、商品名:ST−14)を坪量35g/m(厚み45μm)となるようにベタ状に塗布し、接着剤層を形成した。
該接着剤を塗布した直後に、接着剤層の表面全体に、粒子径が0.5〜1.0mm、モース硬度が6.0の軽石微粒子(日本カガライト工業株式会社製、商品名KAGA05)を略均一に散布した(軽石微粒子の量:250g/m)。その後、軽石微粒子を散布した接着剤層の表面を、金属ロールで軽く押え付けて表面をならし、乾燥機内(雰囲気温度105℃)で2分間乾燥させ、アクリル系エマルジョン接着剤を硬化させた。このようにして、微粒子を有する係合面が紙製シートの表面全体にベタ状に設けられたシートを作製した。この係合面を有する紙製シートを「係合シート」という。
【0083】
次に、上記係合シートを、図3(a)に示すような一辺10mmの正方形状に裁断し、複数枚の裁断シート片(係合面に相当する)を得た。この裁断シート片を、上記ベースシートの表面に、幅方向に間隔3.0mm(幅間隔W=3.0mm)、長さ方向に間隔3.0mm(長さ間隔L=3.0mm)を空けて並べて貼り付けた。なお、裁断シート片は、粘着剤層を介してベースシートに貼り付けた。このようにして、実施例1−1に係る下地シートを作製した。
【0084】
また、上記裁断シート片の幅間隔W及び長さ間隔Lを、表1に示すような間隔に変えたこと以外は、上記実施例1−1と同様にして、実施例1−2〜1−4に係る下地シートを作製した。
なお、表1の「係合面の面積比」とは、実施例1−1〜1−4の裁断シート片(係合面)の総面積がシート表面に対して占める割合を示す(表2〜6についても同様)。該割合(%)=(係合面の総面積/基材シートの表面積)×100で求められる。
また、表1の「係合面の間隔」の欄において、例えば、実施例1−2の「W2.0」という表示は、隣り合う係合面の幅間隔W=2.0mmを表し、「L2.0」という表示は、隣り合う係合面の長さ間隔L=2.0mmを表す(表2〜6についても同様)。
これらの下地シートについて、上記床材の引張り剪断強さの測定方法及び下地シートの切断試験に従って、床材のずれ及び切断性を評価した。その結果を、表1に示す。
【0085】
[実施例2]
裁断シート片(係合面)を、図3(d)に示すような直径10mmの真円状にしたこと、及び、幅間隔W、長さ間隔Lを表1のように設定したこと以外は、上記実施例1と同様にして、実施例2−1〜2−4に係る下地シートを作製した。
なお、各表において、幅間隔W=0.0mm、長さ間隔L=0.0mmとは、隣り合う裁断シート片(係合面)の端辺の一部分が接している状態である。
これらの下地シートについて、床材のずれ及び切断性を評価した。その結果を、表1に示す。
【0086】
[実施例3]
裁断シート片(係合面)を、図5(a)に示すような一辺10mmの正三角形状にしたこと、及び、幅間隔W、長さ間隔Lを表1のように設定したこと以外は、上記実施例1と同様にして、実施例3−1〜3−4に係る下地シートを作製した。
なお、正三角形状の裁断シート片は、図5(a)に示すように、その一辺がベースシートの幅方向Xに平行となるようにして並べた。
これらの下地シートについて、床材のずれ及び切断性を評価した。その結果を、表1に示す。
【0087】
[実施例4]
裁断シート片(係合面)を、図5(d)に示すような2つの対角線の長さが何れも10mmの菱形状にしたこと、及び、幅間隔W、長さ間隔Lを表1のように設定したこと以外は、上記実施例1と同様にして、実施例4−1〜4−4に係る下地シートを作製した。
なお、菱形状の裁断シート片は、図5(d)に示すように、その2つの対角線がベースシートの幅方向X及び長さ方向Yにそれぞれ平行となるようにして並べた。
これらの下地シートについて、床材のずれ及び切断性を評価した。その結果を、表1に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
[比較例1]
幅間隔W及び長さ間隔Lを、表2のように設定したこと以外は、上記実施例1と同様にして、比較例1−1〜1−4に係る下地シートを作製した。
これらの下地シートについて、床材のずれ及び切断性を評価した。その結果を、表2に示す。
【0090】
[比較例2]
幅間隔W及び長さ間隔Lを、表2のように設定したこと以外は、上記実施例2と同様にして、比較例2−1〜2−4に係る下地シートを作製した。
これらの下地シートについて、床材のずれ及び切断性を評価した。その結果を、表2に示す。
【0091】
[比較例3]
幅間隔W及び長さ間隔Lを、表2のように設定したこと以外は、上記実施例3と同様にして、比較例3−1〜3−4に係る下地シートを作製した。
これらの下地シートについて、床材のずれ及び切断性を評価した。その結果を、表2に示す。
【0092】
[比較例4]
幅間隔W及び長さ間隔Lを、表2のように設定したこと以外は、上記実施例4と同様にして、比較例4−1〜4−4に係る下地シートを作製した。
これらの下地シートについて、床材のずれ及び切断性を評価した。その結果を、表2に示す。
【0093】
【表2】

【0094】
[実施例5]
軽石微粒子に代えて、粒子径が0.1〜1.0mm、モース硬度が9.0のアルミナ微粒子(日東電工株式会社製、商品名:AT−7。アルミナ微粒子の量:250g/m)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5−1〜5−4に係る下地シートを作製した。
これらの下地シートについて、床材のずれ及び切断性を評価した。その結果を、表3に示す。
【0095】
[実施例6]
裁断シート片(係合面)を、直径10mmの真円状にしたこと、及び、幅間隔W、長さ間隔Lを表3のように設定したこと以外は、上記実施例5と同様にして、実施例6−1〜6−4に係る下地シートを作製した。
これらの下地シートについて、床材のずれ及び切断性を評価した。その結果を、表3に示す。
【0096】
[実施例7]
裁断シート片(係合面)を、一辺10mmの正三角形状にしたこと、及び、幅間隔W、長さ間隔Lを表3のように設定したこと以外は、上記実施例5と同様にして、実施例7−1〜7−4に係る下地シートを作製した。なお、正三角形状の裁断シート片は、図5(a)に示すように、その一辺がベースシートの幅方向Xに平行となるようにして並べた。
これらの下地シートについて、床材のずれ及び切断性を評価した。その結果を、表3に示す。
【0097】
[実施例8]
裁断シート片(係合面)を、2つの対角線の長さが何れも10mmの菱形状にしたこと、及び、幅間隔W、長さ間隔Lを表3のように設定したこと以外は、上記実施例5と同様にして、実施例8−1〜8−4に係る下地シートを作製した。
なお、菱形状の裁断シート片は、図5(d)に示すように、その2つの対角線がベースシートの幅方向X及び長さ方向Yにそれぞれ平行となるようにして並べた。
これらの下地シートについて、床材のずれ及び切断性を評価した。その結果を、表3に示す。
【0098】
【表3】

【0099】
[比較例5]
幅間隔W及び長さ間隔Lを、表4のように設定したこと以外は、上記実施例5と同様にして、比較例5−1〜5−4に係る下地シートを作製した。
これらの下地シートについて、床材のずれ及び切断性を評価した。その結果を、表4に示す。
【0100】
[比較例6]
幅間隔W及び長さ間隔Lを、表4のように設定したこと以外は、上記実施例6と同様にして、比較例6−1〜6−4に係る下地シートを作製した。
これらの下地シートについて、床材のずれ及び切断性を評価した。その結果を、表4に示す。
【0101】
[比較例7]
幅間隔W及び長さ間隔Lを、表4のように設定したこと以外は、上記実施例7と同様にして、比較例7−1〜7−4に係る下地シートを作製した。
これらの下地シートについて、床材のずれ及び切断性を評価した。その結果を、表4に示す。
【0102】
[比較例8]
幅間隔W及び長さ間隔Lを、表4のように設定したこと以外は、上記実施例8と同様にして、比較例8−1〜8−4に係る下地シートを作製した。
これらの下地シートについて、床材のずれ及び切断性を評価した。その結果を、表4に示す。
【0103】
【表4】

【0104】
[実施例9]
裁断シート片(係合面)を、一辺15mmの正方形状にしたこと、及び、幅間隔W、長さ間隔Lを表5のように設定したこと以外は、上記実施例1と同様にして、実施例9−1〜9−4に係る下地シートを作製した。
これらの下地シートについて、床材のずれ及び切断性を評価した。その結果を、表5に示す。
【0105】
[実施例10]
裁断シート片(係合面)を、直径15mmの真円状にしたこと、及び、幅間隔W、長さ間隔Lを表5のように設定したこと以外は、上記実施例2と同様にして、実施例10−1〜10−2に係る下地シートを作製した。
これらの下地シートについて、床材のずれ及び切断性を評価した。その結果を、表5に示す。
【0106】
[実施例11]
裁断シート片(係合面)を、一辺15mmの正三角形状にしたこと、及び、幅間隔W、長さ間隔Lを表5のように設定したこと以外は、上記実施例3と同様にして、実施例11−1〜11−2に係る下地シートを作製した。
これらの下地シートについて、床材のずれ及び切断性を評価した。その結果を、表5に示す。
【0107】
[実施例12]
裁断シート片(係合面)を、2つの対角線の長さが何れも15mmの菱形状にしたこと、及び、幅間隔W、長さ間隔Lを表5のように設定したこと以外は、上記実施例4と同様にして、実施例12−1〜12−2に係る下地シートを作製した。
これらの下地シートについて、床材のずれ及び切断性を評価した。その結果を、表5に示す。
【0108】
【表5】

【0109】
[比較例9]
幅間隔W及び長さ間隔Lを、表6のように設定したこと以外は、上記実施例9と同様にして、比較例9−1に係る下地シートを作製した。
この下地シートについて、床材のずれ及び切断性を評価した。その結果を、表6に示す。
【0110】
[比較例10]
幅間隔W及び長さ間隔Lを、表6のように設定したこと以外は、上記実施例10と同様にして、比較例10−1〜10−3に係る下地シートを作製した。
これらの下地シートについて、床材のずれ及び切断性を評価した。その結果を、表6に示す。
【0111】
[比較例11]
幅間隔W及び長さ間隔Lを、表6のように設定したこと以外は、上記実施例11と同様にして、比較例11−1〜11−3に係る下地シートを作製した。
これらの下地シートについて、床材のずれ及び切断性を評価した。その結果を、表6に示す。
【0112】
[比較例12]
幅間隔W及び長さ間隔Lを、表6のように設定したこと以外は、上記実施例12と同様にして、比較例12−1〜12−3に係る下地シートを作製した。
これらの下地シートについて、床材のずれ及び切断性を評価した。その結果を、表6に示す。
【0113】
【表6】

【0114】
[評価]
実施例1,2と比較例1,2の床材固定用下地シートを比較すると、両者は、係合面の総面積がシート表面に対して占める割合が異なり、その他の構成は同じある。従って、係合面の割合が、床材のずれ抑制に大きな影響を与えていることが分かる。同様に、下地シートの切断性も、上記係合面の割合に大きな影響を受けていることが分かる。これは、実施例5,6と比較例5,6を比較した場合、実施例9,10と比較例9,10を比較した場合も同様のことが言える。
従って、係合面の平面視形状が、第1の形状又は第2の形状である場合、該係合面の総面積が、基材シートの表面積の55〜95%を占めている必要がある。
【0115】
また、実施例3,4と比較例3,4を比較した場合、実施例7,8と比較例7,8を比較した場合、及び実施例11,12と比較例11,12を比較した場合にも、係合面の平面視形状及びその割合が、床材のずれ抑制、及び下地シートの切断性に大きな影響を与えていることが分かる。
従って、係合面の平面視形状が、第3の形状である場合、該係合面の総面積が、基材シートの表面積の35%以上を占めている必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の床材固定用下地シートの第1の実施形態を示す一部省略平面図。
【図2】(a)は、図1のI−I線断面図。(b)は、下地シートの他の実施形態を示す一部省略断面図。
【図3】(a)〜(f)共に、各種の平面視形状の係合面を示す平面図。
【図4】本発明の床材固定用下地シートの第2の実施形態を示す一部省略平面図。
【図5】(a)〜(d)共に、各種の平面視形状の係合面を示す平面図。
【図6】床材の一実施形態を示す一部省略断面図。
【図7】床材の施工方法の一実施形態を示す一部省略断面図。
【図8】床材の施工方法の第1の変形例を示す一部省略断面図。
【図9】床材の施工方法の第2の変形例を示す一部省略断面図。
【図10】床材の引張り剪断強さの測定方法の実施状況を示す参考側面図。
【符号の説明】
【0117】
1…床材固定用下地シート、2…基材シート、3…係合層、5…係合面、7…床材、8…被係合層、10…被係合面、11…下地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、前記基材シートの表面に並設され、且つ床材と係合可能な複数の係合面と、を有し、前記係合面の総面積が、前記基材シートの表面積の55〜95%を占めており、前記係合面の形状が、前記基材シートの幅方向及び長さ方向に平行な直線状の端辺を有する形状、又は円弧状の端辺を有する形状であることを特徴とする床材固定用下地シート。
【請求項2】
前記複数の係合面の形状が、四角形、円形及び楕円形から選ばれる1つである請求項1に記載の床材固定用下地シート。
【請求項3】
前記複数の係合面が、前記基材シートの幅方向及び長さ方向に5.0mm以下の間隔を空けて並設されている請求項1又は2に記載の床材固定用下地シート。
【請求項4】
基材シートと、前記基材シートの表面に並設され、且つ床材と係合可能な複数の係合面と、を有し、前記係合面の総面積が、前記基材シートの表面積の35%以上を占めており、前記係合面の形状が、前記基材シートの幅方向及び長さ方向に対して鋭角に交わる2つの端辺で形成された角部を有する形状であることを特徴とする床材固定用下地シート。
【請求項5】
前記複数の係合面の形状が、四角形又は三角形である請求項4に記載の床材固定用下地シート。
【請求項6】
前記複数の係合面が、前記基材シートの幅方向及び長さ方向に2.5mm以下の間隔を空けて並設されている請求項4又は5に記載の床材固定用下地シート。
【請求項7】
前記係合面が、微粒子を220g/m以上有しており、前記微粒子のモース硬度が3.8以上であり、且つ粒子径が1.0mm以下であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の床材固定用下地シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−7335(P2010−7335A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166849(P2008−166849)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000222495)東リ株式会社 (94)
【Fターム(参考)】