説明

床材

【課題】基材の表面に緩衝材を介して化粧シートを貼着してなる構成の床材において、重量物の長期載置や落下等によっても緩衝材の過度の沈み込みを防止し、もって化粧シートの白色化や破れを防止する。
【解決手段】基材の表面に緩衝材及び矯正シートを順次に介して化粧シートを貼着してなる床材を提供する。矯正シートは、不織布、寒冷紗、綿及び絹織物のいずれか一又は任意組み合わせによる積層体からなり、床材表面からの荷重によって緩衝材が大きく沈み込む場合であっても化粧シートの伸びを押さえ、白色化や破れを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は床材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、木質板1の表面に発泡体2を貼着し、その発泡体上に合成樹脂シート3を貼着してなるフロアー材が記載されている(請求項,図面等)。また、特許文献2には、合板基板1の表面に発泡樹脂シート2を接着し、さらにその上に、化粧紙の印刷表面に熱可塑性樹脂シート3を貼り合わせたものを接着してなる床材が記載されている(請求項,第4図等)。これら従来技術による床材は、合板等の木質基材の表面に発泡体や発泡シート等の緩衝材を貼り合わせることで、歩行感や遮音効果を向上させることを意図しているものと認められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実願昭48−90051(実開昭50−38122)のマイクロフィルム
【特許文献2】実公昭38−10354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これら従来技術による床材は、収納家具等の重量物を床上に長期間載置したままにしたり重い物を床上に落下させたりしたときに、緩衝材の沈み込みによって表面の化粧紙や化粧シートが伸びてしまい、白色化したり破れたりすることがあった。
【0005】
したがって、本発明が課題とするところは、このような従来技術の不利欠点を解消し、基材の表面に緩衝材を介して化粧シートを貼着してなる構成の床材において、重量物の長期載置や落下等によっても緩衝材の過度の沈み込みを防止し、もって化粧シートの白色化や破れを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するため、請求項1に係る本発明は、基材の表面に緩衝材及び矯正シートを順次に介して化粧シートを貼着してなり、該矯正シートは不織布、寒冷紗、綿及び絹織物のいずれか一又は任意組み合わせによる積層体からなることを特徴とする衝撃吸収性能を持つ床材である。
【発明の効果】
【0007】
本発明による床材は、化粧シート/矯正シート(不織布、寒冷紗、綿及び絹織物のいずれか一又は任意組み合わせによる積層体からなるもの)/緩衝材/基材の積層構成を有するので、緩衝材による衝撃吸収性能を備えつつ、重量物の長期載置や落下等が生じても、化粧シートと緩衝材との間に介在される矯正シートが緩衝材の過度の沈み込みを防止するため、化粧シートの伸びによる白色化や破れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態による床材の断面図である。
【図2】本発明の他実施形態による床材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態による床材1が図1に示されている。この床材1は、図示のように、化粧シート5/矯正シート4/緩衝材3/基材2の積層構成を有する。
【0010】
基材2は主として木質板であり、MDFやHDF等の木質繊維板、無垢板、積層板、集成材、合板等が用いられる。基材2の厚さは一般に3.0〜15.0mmである。基材2の四周木口面には一対の雄実と雌実(いずれも図示せず)が形成されて、隣接する一方の床材1の雄実と他方の床材1の雌実とを嵌合させるようにして施工されるので、基材2の厚さが3.0mm未満であると床材1に実を形成することが困難になる。また、基材2が15.0mmより厚くなると、床材1が重くなってしまい施工性が損なわれる。
【0011】
緩衝材3は、衝撃吸収性能を発揮するものであれば特にその材質を限定されないが、例えば、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリウレタン、ポリエチレン等の合成樹脂発泡体や、合成ゴム、天然ゴム等のゴム発泡体を用いることができる。
【0012】
緩衝材3の厚さや硬度は、使用場所によって目的別に選択されるものであるが、衝撃吸収性能を優先させる場合には、厚さは1.0〜5.0mm、硬度はアスカーC硬度で20〜70度とすることが好ましい。厚さについては、1.0mmより薄い緩衝材3では十分な衝撃吸収性能を発揮することが困難であり、5.0mmより厚くなると歩行時の沈み込みが大きくなって不快感を与える。アスカーC硬度が20度未満である緩衝材3は柔らかすぎて歩行時の沈み込みが大きく、不快感を与えるだけでなく、人が転倒したときにその衝撃を十分に緩衝することができず、基材に強く打ち付けられて怪我をする危険性が生ずる。一方、アスカーC硬度が70度を超えるようになると緩衝材3として硬くなりすぎて衝撃吸収性能が不十分となる。これらの理由から、より好ましくは30〜60度のアスカーC硬度を有する緩衝材3を用いると良い。
【0013】
矯正シート4は、重量物の長期載置や落下等が生じたときに緩衝材3の過度の沈み込みを防止することによって化粧シート5の伸びや破れを防止する作用を果たすものであり、不織布、寒冷紗、綿及び絹織物のいずれか一又は任意組み合わせによる積層体からなるものが用いられる。不織布の場合は、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ポリアミド繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維等によるものを任意選択して使用可能であり、特にポリエステル不織布やアクリル不織布等が好適に使用される。
【0014】
矯正シート4は、10〜100g/mの目付量を有することが好ましい。10g/mより小さい目付量の矯正シート4では表面からの荷重に対する矯正作用を十分に発揮することができず、また、100g/mより大きい目付量になると矯正シート4が床材1に占める厚さが大きくなり、床材1の厚さを不必要に厚くしてしまう。これらの理由から、より好ましくは20〜50g/mの目付量を有する矯正シート4を使用すると良い。
【0015】
床材1の表面に設けられて表面を化粧する化粧シート5としては、化粧紙や、オレフィンまたは熱可塑性樹脂等からなる合成樹脂シートを用いることができる。化粧紙を用いる場合は、化粧紙の汚れや摩擦による擦り傷等を防止する目的で表面にアクリル系やウレタン系等の塗料で塗装を施すことが好ましい。この場合、塗料を塗厚が20μm以上となるように塗布することで、化粧紙表面の耐汚染性や耐傷性を十分に向上させることができる。
【0016】
本発明の他実施形態による床材1’が図2に示されている。この床材1’は、図示のように、化粧シート5/矯正シート4/緩衝材3/基材2/クッション材6の積層構成を有するものであり、図1の床材1の基材2の裏面にクッション材6を積層貼着した構成を有する。他の構成要素(基材2,緩衝材3,矯正シート4及び化粧シート5)については図1の床材1と同様であるので、既述事項を参照されたい。
【0017】
クッション材6は、緩衝材3と同様のものを使用することができる。すなわち、例えば、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリウレタン、ポリエチレン等の合成樹脂発泡体や、合成ゴム、天然ゴム等のゴム発泡体を用いることができる。また、厚さやアスカーC硬度についても緩衝材3と同様であり、厚さは1.0〜5.0mm、硬度はアスカーC硬度で20〜70度(より好ましくは30〜60度)であることが好ましい。
【0018】
図1に示す積層構成を有する本発明による床材(実施例1〜3)と、矯正シート4を省いた化粧シート5/緩衝材3/基材2の積層構成を有する従来技術による床材(比較例1,2)について、3通りの試験を行い、それぞれ床材表面の状態を観察した。実施例1〜3及び比較例1,2の構成を表1に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
試験1:車椅子キャスター試験
600×300mmの大きさの台板の裏面に、車椅子のゴムキャスターを一方の短手側の中央に1つ、他方の短手側に中央から等間隔置いた位置に2つ、計3点で支持するように取り付け、台板の上に87kgの荷重を載置した。台板の一辺側にフックを付け、空気圧ピストンによって繰り返し床材の表面を行き来するように走行させた。このようにして30000回往復走行させた後に、各床材の表面状態を目視にて確認した。その結果を表2に示す。
【0021】
【表2】

【0022】
表2に示すように、実施例1〜3の床材においては表面に何ら変化が見られなかったのに対し、比較例1の床材は表面のオレフィンシートが延びてしまって白色化し、比較例2の床材はキャスターが通った部分の化粧紙に亀裂が入って破れてしまい、いずれも床材の意匠性が大きく低下した。
【0023】
試験2:短期荷重試験
万能試験機によって直径25mmの載置板に荷重50kgの重りを付けて、床材表面が最大に沈み込むまで押さえ付けた後にすぐに載置板を離して、各床材の表面状態を目視にて確認した。その結果を表3に示す。
【0024】
【表3】

【0025】
表3に示すように、実施例1〜3の床材においては表面に何ら変化が見られなかったのに対し、比較例1の床材は表面のオレフィンシートが延びてしまって白色化し、比較例2の床材は載置板の沈み込みに伴って化粧紙が引っ張られた結果として化粧紙が破れてしまい、いずれも床材の意匠性が大きく低下した。
【0026】
試験3:長期荷重試験
試験2と同様にして床材表面が最大に沈み込むまで押さえ付け、この状態で2週間放置した後に載置板を離して、各床材の表面状態を目視にて確認した。その結果を表4に示す。
【0027】
【表4】

【0028】
この試験の結果は試験2の結果と同様であった。すなわち、表4に示すように、実施例1〜3の床材においては表面に何ら変化が見られなかったのに対し、比較例1の床材は表面のオレフィンシートが延びてしまって白色化し、比較例2の床材は載置板の沈み込みに伴って化粧紙が引っ張られた結果として化粧紙が破れてしまい、いずれも床材の意匠性が大きく低下した。
【0029】
なお、比較例1で表面シートに用いたオレフィンシートはある程度まで伸びるとシート自体が伸び切って白色化し、比較例2で表面シートに用いた化粧紙はある程度まで伸びると破断してしまう特性を有しており、これが試験1〜3における結果の違いに現れている。実施例1〜3では、表面シートにオレフィンシートを用いた場合(実施例1)も化粧紙を用いた場合(実施例2,3)もいずれも良好な結果を示しており、矯正シートが化粧シートの伸びを抑えて、比較例1,2が示すような不具合を防止することが確認された。
【0030】
また、矯正シートとして実施例1,2では不織布を用い、実施例3では寒冷紗を用いたが、いずれも良好な結果を示した。不織布は繊維を織らずに絡み合わせて布状にしたものであるのに対し、寒冷紗は繊維を編み込んで布状にしているので、不織布より縦横方向に伸びにくく、緩衝材が大きく沈み込んだ場合であっても化粧シートの伸びを抑制する作用がより効果的に発揮されるものと考えられる。
【0031】
次に、矯正シートの有無によって衝撃吸収性能に差異が生ずるか否かを確認するために、実施例1の床材の基材裏面にクッション材を貼着して図2に示す積層構成(化粧シート5/矯正シート4/緩衝材3/基材2/クッション材6)を有するものとした床材(実施例4)を作成すると共に、比較例1の床材の基材裏面にクッション材を貼着した床材(比較例3)を作成して、試験4を行った。この試験に用いた床材(実施例1,4及び比較例1,3)の構成を表5に示す。
【0032】
【表5】

【0033】
試験4:衝撃吸収試験
各床材について、JIS A 6519の測定方法により最大加速度の値(G値)を測定した。その結果を表6に示す。
【0034】
【表6】

【0035】
表6に示すように、矯正シートの有無のみにおいて相違する実施例1と比較例1、また実施例4と比較例3の床材において、衝撃吸収性能において有意差は認められなかった。この結果から、矯正シートを介在させても衝撃吸収性能には何ら実質的な影響が及ぶことはなく、本発明の床材が衝撃吸収を持つことが確認できた。また、日本建築学会床工事WGの報告によると、G値が100以下であれば、人間が転倒して頭などを床にぶつけた場合であっても怪我を負いにくいものとされているが、基材2の裏面にクッション材6を積層接着させた実施例2の床材は十分にこの数値基準をクリアしている。
【符号の説明】
【0036】
1,1’ 床材
2 基材
3 緩衝材
4 矯正シート
5 化粧シート
6 クッション材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に緩衝材及び矯正シートを順次に介して化粧シートを貼着してなり、該矯正シートは不織布、寒冷紗、綿及び絹織物のいずれか一又は任意組み合わせによる積層体からなることを特徴とする衝撃吸収性能を持つ床材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−154153(P2012−154153A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16858(P2011−16858)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(390030340)株式会社ノダ (146)
【Fターム(参考)】