説明

床用伸縮継手装置

【課題】 美観を低下させず、カバー体の離反による開口の発生を防止することができる床用伸縮継手装置を提供する。
【解決手段】 一方の躯体43aの床部44と壁部45とに第1水平方向X1に延びる第1および第2支持片50,55を有する第1および第2縁材51,56を設置してカバー体64の一端部を支持し、他方の躯体43bに床部44および壁部45の連続した第3縁材61を設置して、第3支持片60によってカバー体64を幅方向他端部で第2水平方向に変位自在に支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に隣接する2つの建物の各躯体間の相対的変位を許容し、各躯体間の空隙を塞いだ状態に維持することができる床用伸縮継手装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来の技術の床用伸縮継手装置1の構成を説明するための図であり、図6(1)は第1伸縮構造体6の鉛直断面図であり、図6(2)は床用伸縮継手装置1を上方から見た平面図であり、図6(3)は第2伸縮構造体7の鉛直断面図である。なお、図6(1)は図6(2)の切断面線A−Aから見た断面を示し、図6(3)は図6(2)の切断面線B−Bから見た断面を示す。相互に隣接する2つの建物の各躯体2a,2b間には、目地としての空隙3が存在し、この空隙3を塞いで、通路などとして利用される床の連続性を確保するとともに、空隙3内へ物体の落下防止のために、床用伸縮継手装置1が設置されている。
【0003】
床用伸縮継手装置1は、その設置区間が、各建物の構造上、各躯体2a,2bとも略水平な床部4a,4bからなる第1区間C1と、一方の躯体2aが柱および壁を含む壁部5aであり、他方の躯体2a側は前記床部4bに連続した床部5bである第2区間C2とにわたって設置される。このような床用伸縮継手装置1は、一方の躯体2aの床部4aと他方の躯体2bの床部4bとの間の空隙3を塞ぐ第1伸縮構造体6と、一方の躯体2aの壁部5aと他方の躯体2bの床部5bとの間の空隙3を塞ぐ第2伸縮構造体7との2つの構造体によって構成される。
【0004】
第1伸縮構造体6は、各躯体2a,2bの各床部4a,4bに略水平な取付面8a,8b上で複数のアンカー体9a,9bによってそれぞれ固定され、カバー体10の幅方向両端部を変位可能に保持する一対の縁材11a,11bを有する。各縁材11a,11bには、可撓性の止水シート12の幅方向両端部が係止され、略U字状に湾曲した状態で装着される。第2伸縮構造体7は、一方の躯体2aの壁部5aに略鉛直な取付面13a上でアンカー体14aによって固定される一方の縁材15aと、他方の躯体2bの床部5bに略水平な取付面13b上でアンカー体14bによって固定される他方の縁材15bとを有する。各縁材15a,15bには、カバー体16の幅方向両端部が変位可能に保持されるとともに、可撓性の止水シート17の幅方向両端部が係止され、略U字状に湾曲した状態で装着される。
【0005】
第1伸縮構造体6において、一方の躯体2aに固定される縁材11aは、他方の躯体2bに臨む対向部18aから突出する支持片19aを有する基部20aと、基部20aに上方からビス21aによって固定される化粧カバー22aとを含む。また、他方の躯体2bに固定される縁材11bは、一方の躯体2aに臨む対向部18bから突出する支持片19bを有する基部20bと、基部20bに上方からビス21bによって固定される化粧カバー22bとを含み、前記一方の躯体2aに固定される縁材11aと同様に構成される。前記カバー体10の幅方向両端部は、各縁材11a,11bの支持片19a,19bに支持された状態で、化粧カバー22a,22bの遊端部によって上方から弾発的に押圧され、図6(1)に示す設置当初の状態においては、幅方向中央部が各対向部18a,18b間のほぼ中央に配置され、地震などによる各躯体2a,2bの相対的変位を許容し、空隙3をカバー体10によって塞いだ状態に維持することができるように構成されている。
【0006】
また第2伸縮構造体7において、一方の躯体2aに固定される縁材15aは、他方の躯体2bに臨む略鉛直な取付面13aから突出する支持片23aおよび挟着片24を有する基部25aと、基部25aの挟着片24によって挟着される挿入片26を有する化粧カバー27aとを含む。他方の躯体2bに固定される縁材15bは、カバー体16の幅方向他端部を支持する支持片23bを有する基部25bと、基部25bにビス28によって固定される化粧カバー27bとを含み、前記第1伸縮構造体6の他方の躯体2bに設けられる前記縁材11bと長手方向に連続して一体的に形成される。前記カバー体16の幅方向一端部は、一方の縁材15aの支持片23a上に化粧カバー27aの遊端部によって弾発的に押圧された状態で支持される。前記カバー体16の幅方向他端部は、他方の縁材15bの支持片23b上に化粧カバー27bの遊端部によって弾発的に押圧された状態で支持される。
このような従来の技術は、たとえば特許文献1に記載されている。
【0007】
【特許文献1】実公昭62−17521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来の技術では、第1伸縮構造体6において、地震などによって各躯体2a,2bが相互に近接する方向に相対的変位を生じたときには、カバー体10の幅方向両端部が各縁材11a,11b内で相互に対向する内面30a,30bに当接するまでの距離a1,b1の和を近接変位吸収量L1IN(=a1+b1)とし、各躯体2a,2bが相互に離反する方向に相対的変位を生じたときには、カバー体10の幅方向両端部が前記離反する方向の変位を生じる前の図6(1)に示される状態から各支持片19a,19bと化粧カバー22a,22bとによって挟持された状態に至るまでの距離a11,b11の和を離反変位吸収量L1OUT(=a11+b11)とする。
【0009】
第2伸縮構造体7において、各躯体2a,2bが相互に近接する方向に相対的変位を生じたときには、カバー体16の幅方向両端部が各縁材15a,15b内で相互に対向する内面31a,31bに当接するまでの距離a2,b2の和を近接変位吸収量L2IN(=a2+b2)とし、各躯体2a,2bが相互に離反する方向に相対的変位を生じたときには、カバー体16の幅方向両端部が前記離反する方向の変位を生じる前の図6(3)に示される状態から各支持片23a,23bと化粧カバー27a,27bとによって挟持された状態に至るまでの距離a12,b12の和を離反変位吸収量L2OUT(=a12+b12)とする。
【0010】
第1伸縮構造体6の近接変位吸収量L1INと第2伸縮構造体7の近接変位吸収量L2inとを対比すると、他方の躯体2bに設けられる各縁材11b,15bは同一構造で連続した構成であるため、これらの縁材11b,15bによる変位吸収量b2,b12は同一(b2=b12)であるが、一方の躯体2aに設けられる各縁材11a,15aは構造が異なり、互いに不連続であるため、壁部5aの縁材15aによる変位吸収量a2,a12は、床部5bの縁材15bによる変位吸収量b2,b12よりも小さく(a2<b2,a12<b12)、第1伸縮構造体6と第2伸縮構造体7との近接変位吸収量L1IN,L2INが相違し、各カバー体10,16を第1伸縮構造体6と第2伸縮構造体7とにわたって連続した一体構造とすることができない。このため、各躯体2a,2bが図6(2)の上下方向に相対的に変位したとき、第1伸縮構造体6のカバー体10と第2伸縮構造体7のカバー体16とが離反して、各カバー体10,16間に開口が発生し、あるいは各カバー体10,16が近接して相互に干渉してしまうという問題がある。
【0011】
また、一方の躯体2aの床部4aに設けられる縁材11aの支持片19aおよび化粧カバー22aの遊端部は、壁部5aに設けられる縁材15aの支持片23aおよび化粧カバー27aの遊端部に対して、各躯体2a,2bが相互に近接/離反する水平方向(図6(1)〜図6(3)の左右方向)に距離ΔLだけずれているため、各カバー体10,16が不連続であることが強く認識され、美観が低下してしまうという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、美観を低下させず、カバー体の離反による開口の発生を防止することができる床用伸縮継手装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、相互に第1水平方向に延びる空隙をあけて第1水平方向に垂直な第2水平方向に隣接する2つの建物の各躯体の一方には、前記第2水平方向に隣接して床部と壁部とが前記空隙に臨んで設けられ、前記各躯体の他方には、前記一方の躯体の床部および壁部に第1水平方向に対向する床部が前記空隙に臨んで設けられ、前記一方の躯体の床部と前記他方の躯体の床部との間および前記一方の躯体の壁部と前記他方の躯体の床部との間にわたって、各躯体間の相対的変位に追従して前記空隙を塞いだ状態に維持する床用伸縮継手装置において、
前記一方の躯体の壁部に、前記空隙に近接した対向部の鉛直な第1取付面上で固定され、前記第1取付面よりも他方の躯体側に突出した第1支持片を有する第1縁材と、
前記一方の躯体の床部に、前記空隙に近接した対向部の水平な第2取付面上で固定され、前記第1支持片と第1水平方向に連続する第2支持片を有する第2縁材と、
前記他方の躯体の床部に、前記空隙に近接した対向部の鉛直な第3取付面上で固定され、第1および第2支持片と前記第2水平方向に予め定める間隔をあけて平行に配置される第3支持片を有する第3縁材と、
幅方向一端部が第1および第2支持片に支持され、幅方向他端部が第3支持片に変位可能に支持されるカバー体とを含むことを特徴とする床用伸縮継手装置である。
【0014】
本発明に従えば、一方の躯体は床部と壁部とを有し、他方の躯体は床部を有し、一方の躯体の床部と他方の躯体の床部および一方の躯体の壁部と他方の躯体の床部は、各建物間の目地などである空隙を介して対向し、これらの躯体間にわたって床用伸縮継手装置が設けられる。
【0015】
一方の躯体の壁部には、前記空隙に近接した対向部の鉛直な第1取付面上に第1縁材が固定される。この第1縁材は、第1取付面よりも他方の躯体側に突出した第1支持片を有する。また、一方の躯体の床部には、空隙に近接した対向部の水平な第2取付面上に第2縁材が固定される。この第2縁材は、第1支持片と第1水平方向に連続する第2支持片を有する。さらに、他方の躯体の床部には、空隙に近接した対向部の鉛直な第3取付面上に第3縁材が固定される。この第3縁材は、第1縁材の第1支持片および第2縁材の第2支持片に平行であって、これらの第1および第2支持片に対して第2水平方向に予め定める間隔をあけて平行に配置される第3支持片を有する。
【0016】
このような第1および第2縁材によってカバー体の幅方向一端部が支持され、第3縁材によってカバー体の幅方向他端部が変位可能に支持されるので、前記カバー体を第1水平方向に連続的に配置することができ、美観を低下させずに、各躯体の相対的変位に伴う開口の発生を防止することができる。
【0017】
また本発明は、前記カバー体は、幅方向一端部に、第1および第2支持片に一方の躯体側から臨む係合部が形成されることを特徴とする。
【0018】
本発明に従えば、前記カバー体の幅方向一端部に係合部を設けることによって、各躯体が相対的変位を生じても、前記係合部が第1および第2支持片に一方の躯体側から係合し、カバー体の脱落を防止することができる。またカバー体の係合部が第1および第2支持片に係合することによって、カバー体の第1縁材または第2縁材からの離反による開口の発生を防止することができる。
【0019】
さらに本発明は、前記カバー体は、幅方向一端部が、第1および第2支持片に第2水平方向に変位可能に持されることを特徴とする。
【0020】
本発明に従えば、前記カバー体の幅方向一端部が第1縁材の第1支持片および第2縁材の第2支持片に対して第2水平方向に変位可能に支持されるので、前記第2水平方向に関して各躯体のより大きな相対的変位を許容することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、第1水平方向に連続する第1支持片と第2支持片とによって、カバー体の幅方向一端部が支持され、第1および第2支持片に平行な第3支持片によってカバー体の幅方向他端部が支持されるので、第1水平方向に連続してカバー体を配置することができ、これによって美観を低下させずに、各躯体の相対的変位を許容し、開口の発生を防止することができる。
【0022】
また本発明によれば、カバー体の幅方向一端部に係合部を設け、カバー体が第1および第2支持片に係合するように構成されるので、カバー体の脱落およびカバー体のずれによる開口の発生を防止することができる。
【0023】
さらに本発明によれば、第1および第2支持片によってカバー体の幅方向一端部が第2水平方向に変位可能に支持されるので、各躯体の第2水平方向に関して許容可能な変位量を大きくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明の実施の一形態の床用伸縮継手装置41を示す図であり、図1(1)は床用伸縮継手装置41の床部44における構成を示す鉛直断面図であり、図1(2)は床用伸縮継手装置41の平面図であり、図1(3)は床用伸縮継手装置41の壁部45における構成を示す鉛直断面図である。なお、図1(1)は図1(2)の切断面線D−Dから見た断面を示し、図1(3)は図1(2)の切断面線E−Eから見た断面を示す。
【0025】
相互に第1水平方向X1に延びる空隙42をあけて第1水平方向X1に垂直な第2水平方向X2に隣接する2つの建物の各躯体43a,43bのうちの一方の躯体43aには、前記第2水平方向X2に隣接して床部44と壁部45とが前記空隙42に臨んで設けられ、前記各躯体43a,43bのうちの他方の躯体43bには、前記一方の躯体43aの床部44および壁部45に第1水平方向X1に対向する床部46が前記空隙42に臨んで設けられる。
【0026】
このような各躯体43a,43b間の相対的変位に追従して前記空隙42を塞いだ状態に維持するために、本実施の形態の床用伸縮継手装置41が前記一方の躯体43aの床部44と前記他方の躯体43bの床部46との間、および前記一方の躯体43aの壁部45と前記他方の躯体43bの床部46との間にわたって設けられる。
【0027】
この床用伸縮継手装置41は、一方の躯体43aの壁部45に、前記空隙42に近接した対向部47の鉛直な第1取付面48上でアンカー体49によって固定され、前記第1取付面48よりも他方の躯体43b側に突出した第1支持片50を有する第1縁材51と、一方の躯体43aの床部44に、空隙42に近接した対向部52の水平な第2取付面53上でアンカー体54によって固定され、第1支持片50と第1水平方向X1に連続する第2支持片55を有する第2縁材56と、他方の躯体43bの床部46に、空隙42に近接した対向部57の鉛直な第3取付面58上でアンカー体59によって固定され、第1および第2支持片50,55と前記第2水平方向X2に予め定める間隔ΔLをあけて平行に配置される第3支持片60を有する第3縁材61と、幅方向一端部が第1および第2支持片50,55に支持され、幅方向他端部が第3支持片60に変位可能に支持されるカバー体64と、第1および第3縁材51,61に幅方向両端部が係止され、断面を略U字状に湾曲させた状態で第1水平方向に延びて装着される第1止水シート62と、第2および第3縁材56,61に幅方向両端部が係止され、断面を略U字状に湾曲させた状態で第1水平方向に延びて装着される第2止水シート63とを含む。
【0028】
図2は、図1(2)の切断面線E−Eから見た床用伸縮継手装置41の拡大断面図であり、図1(3)を拡大した断面を示す。前記第1縁材51は、断面が略U字状の基部67と、第1支持片50に装着されるクッション材69とを有する。基部67およびカバー体64の幅方向一端部間には、中空のパッキン68が装着される。
【0029】
基部67は、前記アンカー体49によって壁部45の第1取付面48に固定される第1側板51aの下端部に、底板51bが直角に連なり、この底板51bの前記側板51aから最も離れた部分に第2側板51cが直角に連なって上方に立ち上がり、この第2側板51cの上端部分に前記第1側板51aに向かって直角に突出する上縁板51dが連なり、底板51bの下面にL字状の嵌合片51eが連なった長尺材からなる。前記第2側板51cと上縁板51dとによって、前記第1支持片50が構成される。このような基部67は、構造用鋼またはアルミニウム合金からなる押し出し形材によって実現される。
【0030】
パッキン68は、前記基部67の第1側板51aに沿って平行に配置される第1側部68aと、第1側部68aに平行な第2側部68bと、第1および第2側部68a,68bの各一端部を連結する略U字状の案内部68cと、第1および第2側部68a,68bの各他端部を連結する上壁部68dと、上壁部68dの一端部から壁部45側に突出する第1リップ部68eと、上壁部68dの他端部から突出する第2リップ部68fと、案内部68cおよび第2側部68bの連結部分から外方に突出する突部68gとを有する。
【0031】
このようなパッキン68は、可撓性および弾発性を有するとともに、耐水性および耐候性の高い軟質の合成樹脂、たとえばシリコーンゴム、EPDMまたはクロロプレンゴムからなる中空の長尺材によって実現され、基部67とカバー体64との間に嵌着される。
【0032】
前記カバー体64は、平坦部分73と、平坦部分73の幅方向一端部に直角に連なる第1屈曲部分74と、第1屈曲部分74の遊端部に直角に連なる第2屈曲部分75と、平坦部分73の幅方向他端部に屈曲して連なる第3屈曲部分76とを有する。前記第1屈曲部分74と第2屈曲部分75とは、カバー体64の幅方向一端部に形成され、第1および第2支持片50,55に一方の躯体43a側から臨む係合部を構成する。このようなカバー体64は、アルミ押出形材またはステンレス鋼板からなる。
【0033】
次に、まず第3縁材61について説明し、第2縁材56については図4において後述する。前記第3縁材61は、本体81と、化粧カバー82と、ライナー部材83とを含む。本体81は、平板状の底板81aの幅方向一端部に上方に向かって直角に立ち上がる第1側板81bが形成され、この第1側板81bの裏側には第1および第2止水シート62,63の幅方向他端部が嵌着されるL字状の嵌合片81cが形成される。前記第1側板81bは、この部分によって前記第3支持片60を構成し、上端部には前記第1支持片50に装着されたクッション材69と同様なクッション材86が装着される。
【0034】
また底板81aの幅方向他端部には、上方に向かって直角に立ち上がる第2側板81dが形成され、第2側板81dの上端部には、前記第1側板81b側に突出する略U字状のねじ受け部81eと、前記第1側板81bとは反対側(図2の右側)に突出して上方に立ち上がる見切り片81fとが形成される。
【0035】
底板81aの下面には、3条のL字状の脚部81g,81h,81iが幅方向にほぼ等間隔をあけて平行に形成される。最も空隙42側に形成される脚部81gと中央に形成される脚部81hとは、空隙42から最も離れた位置、すなわち第2側板81dの直下に形成される脚部81iに対向する向きに。これらの脚部81g,81h,81iは、ライナー部材83上に乗載され、第3縁材61全体を安定に支持するとともに、ライナー部材83に後述するように係合して、第3縁材61がライナー部材83に対して第2水平方向X2に位置決めされて、第2水平方向X2の変位が阻止される。この状態では、第3縁材61の前記最も空隙42側の脚部81gから幅方向一端部側の部分は、空隙42内に突出している。
【0036】
前記第2側板81d、ねじ受け部81eおよび見切り片81fが相互に交差する部分84には、第2側板81dに垂直な支持面85が形成され、この支持面85上には前記化粧カバー82の幅方向他端部が乗載されて支持される。化粧カバー82の幅方向一端部は、第1側板81bの直上に配置され、この幅方向一端部およびその近傍によってカバー体64が第3支持片60から浮き上がらないように下方に押さえられ、第3支持片60にクッション材86を介して確実に支持される。
【0037】
図3は、ライナー部材83の斜視図である。前記ライナー部材83は、第1水平方向X1を長手方向とする帯状または矩形状のライナープレート90と、このライナープレート90に前記長手方向に300mm〜500mmの等間隔をあけて底板81aに係止される複数の係止プレート91とを有する。係止プレート91は、中央に幅方向に延びる長孔92が形成される基板93と、この基板93の幅方向両端部でかつ中心軸線94に関して1つの対角線上に位置を違えて配置される一対の係止片95a,95bとを有する。
【0038】
各係止片95a,95bは、前記基板93から幅方向外側方(図2では左方および右方)に鉤状に突出し、前記第3縁材61の各脚部81h,81iが係合して係止される。長孔92には、前記アンカー体59のアンカープラグ96(図2参照)の上端面がライナープレート90に形成される透孔99を介して上方に臨み、底板81aのボルト挿通孔97を挿通して装着されたアンカーボルト98が螺着され、ライナー部材83上に本体81が水平に固定される。
【0039】
前記係止プレート91は、長手方向に連続した係止片95a,95bを有する長尺状のアルミ押出形材を所要の長さに切断加工した長尺材または短尺材であってもよい。また、ボルト挿通孔97を係止プレート91の長孔92と位置を合わせた後、ライナープレート90および躯体43bに孔明けをし、アンカープラグ96を挿着してアンカーボルト98を固定してもよい。
【0040】
図4は、図2(2)の切断面線D−Dから見た床用伸縮継手装置41の拡大断面図である。前記第2縁材56は、前述の第1縁材51と第1水平方向X1に隣接して一方の躯体43bの床部46の第2取付面53上に固定される。この第2縁材56の具体的構成について、以下に説明する。
【0041】
第2縁材56は、本体101と、ライナー部材102と、化粧カバー103とを含む。本体101は、平板状の第1底板101aの幅方向一端部に上方に向かって直角に立ち上がる第1側板101bが形成され、第1底板101aの幅方向他端部には下方に直角に立ち下がる段差部101cが連なり、段差部101cの下端部には第2底板101dが第1側板101aから離反する方向に延びて直角に連なる。第2底板101dの幅方向他端部には、第2側板101eが上方に直角に立ち上がって形成され、第2側板101eの上端部には第1側板101aに向かって直角に突出する上縁板101fが形成される。
【0042】
底板101dの下面には、第2止水シート63の幅方向一端部が嵌着されるL字状の嵌合片101gが形成される。前記第2側板101eと上縁板101fとは、前記第2支持片55を構成し、上縁板101fには前記第1支持片50に装着されたクッション材69と同様なクッション材104が装着される。
【0043】
第1側板101bの上端部には、第2側板101e側に突出する略U字状のねじ受け部101hと、前記第2側板101eとは反対側(図4の左側)に突出して上方に立ち上がる見切り片101iとが形成される。
【0044】
第1底板101aの下面には、2条のL字状の脚部101j,101kが幅方向に間隔をあけて平行に形成される。各脚部101j,101kは、相互に近接する方向に突出したL字状断面をなし、ライナー部材102上に乗載され、第2縁材56全体を安定に支持するとともに、ライナー部材102に係合して、第2縁材56をライナー部材102に対して第2水平方向X2に位置決めして、第2水平方向X2の変位を阻止する。この状態では、第2縁材56の空隙42側の脚部101kから幅方向他端部側の部分は、空隙42内に突出している。
【0045】
前記第1側板101b、ねじ受け部101hおよび見切り片101iが相互に交差する部分105には、第1側板101bに垂直な支持面106が形成され、この支持面106上には化粧カバー103の幅方向一端部が乗載されて支持される。化粧カバー103の幅方向他端部は、第2側板101eの直上よりも第1側板101b側にわずかに退避して配置され、この幅方向他端部によってカバー体64が下方に押さえられ、第2支持片55にクッション材104を介して確実に支持される。
【0046】
前記ライナー部材102は、前記ライナー部材83とほぼ同様に構成されるが、第2縁材56の2条の脚部101,101とほぼ等しい幅を有する点で相違する。すなわち、ライナー部材102は、第1水平方向X1を長手方向とする帯状または矩形状のライナープレート110と、このライナープレート110に前記長手方向に300mm〜500mmの等間隔をあけて第1底板101aに係止される複数の係止プレート111とを有する。係止プレート111は、中央に幅方向に延びる長孔112が形成される基板113と、この基板113の幅方向両端部でかつ中心軸線114に関して1つの対角線上に位置を違えて配置される一対の係止片115a,115bとを有する。
【0047】
各係止片115a,115bは、前記基板103から幅方向外側方(図4では左方および右方)に鉤状に突出し、前記第2縁材56の各脚部101j、101kが係合して係止される。長孔112には、前記アンカー体54のアンカープラグ116の上端面がライナープレート110に形成される透孔117を介して上方に臨み、第1底板101aのボルト挿通孔118を挿通して装着されたアンカーボルト119が螺着され、ライナー部材102上に本体101が水平に固定される。
【0048】
前記係止プレート111は、長手方向に連続した係止片115a,115bを有するアルミ押出形材を所要の長さに切断加工した長尺材または短尺材であってもよい。また、ボルト挿通孔117を係止プレート111の長孔112と位置を合わせた後、ライナープレート110および躯体43aに孔明けをし、アンカープラグ116を挿着してアンカーボルト119を固定してもよい。
【0049】
このような床用伸縮継手装置41によれば、地震などによって各躯体43a,43bが相互に近接する方向に相対的変位を生じたとき、第1縁材51はパッキン68の圧縮変形量に相当する距離を近接変位吸収量L11とし、第2縁材56はカバー体64の第1屈曲部分74がねじ受け部101hに当接するまでの距離を近接変位吸収量L12とし、第3縁材61は、カバー体64の幅方向他端部が第2側板81dに当接するまでの距離を近接変位吸収量L13として、各躯体43a、43b間の近接する方向の相対的変位を許容することができる。
【0050】
また、各躯体43,43bが相互に離反する方向に相対的変位を生じたときには、第1縁材51は第1支持片50によってカバー体64の第1縁材51から離反する方向の変位が阻止され、第2縁材56は第2支持片55によってカバー体64の第2縁材56から離反する方向の変位が阻止され、第3縁材61は、カバー体64の幅方向他端部が第3支持片60に係止されるまでの距離を離反変位吸収量L14とし、各躯体43,43b間の相互に離反する方向の相対的変位を許容することができる。
【0051】
このように第1および第2縁材51,56によってカバー体64の幅方向一端部が支持され、第3縁材61によってカバー体64の幅方向他端部が変位可能に支持されるので、前記カバー体64を第1水平方向X1に連続的に配置することができ、美観を低下させずに、各躯体43a,43bの相対的変位に伴う開口の発生を防止し、美観の低下させずに各躯体43a,43b間の変位を許容することができる。
【0052】
また、前記カバー体64の幅方向一端部に係合部として第1および第2屈曲部分74,75を設けることによって、各躯体43a,43bが相互に離反する方向に相対的変位を生じても、第1および第2屈曲部分74,75が第1および第2支持片50,55に一方の躯体43a側から係合し、カバー体64の脱落を防止することができる。またカバー体64の第1および第2屈曲部分74,75が第1および第2支持片50,55に係合することによって、カバー体64の第1縁材51または第2縁材56からの離反による開口の発生を防止することができる。
【0053】
図5は、本発明の実施の他の形態の床用伸縮継手装置41aを示す鉛直断面図であり、図1(2)の切断面線D−Dから見た断面を示す。なお、前述の実施の形態と対応する部分には、同一の参照符を付す。本実施に形態の床用伸縮継手装置41aにおいて注目すべきは、前記カバー体64aは、幅方向一端部側に第1傾斜部121が形成され、幅方向他端部側に第2傾斜部122が形成され、第1および第2傾斜部121,122間に水平部123が形成される。
【0054】
このように構成されるカバー体64aが第2および第3支持片55,60に第2水平方向X2に変位可能に支持されるので、各躯体43a,43b間の前記近接変位吸収量L12,L13の近接方向の相対的変位を許容することができるとともに、カバー体64aの幅方向一端部が第2縁材56の第2支持片55に対して離反変位吸収量L15の離反変位吸収することができるので、前記第2水平方向X2の離反する方向の変位に関して各躯体43a,43b間のより大きな相対的変位を許容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の一形態の床用伸縮継手装置41を示す図であり、図1(1)は床用伸縮継手装置41の床部44における構成を示す鉛直断面図であり、図1(2)は床用伸縮継手装置41の平面図であり、図1(3)は床用伸縮継手装置41の壁部45における構成を示す鉛直断面図である。
【図2】図1(2)の切断面線E−Eから見た床用伸縮継手装置41の拡大断面図である。
【図3】ライナー部材83の斜視図である。
【図4】図2(2)の切断面線D−Dから見た床用伸縮継手装置41の拡大断面図である。
【図5】本発明の実施の他の形態の床用伸縮継手装置41aを示す鉛直断面図である。
【図6】従来の技術の床用伸縮継手装置1の構成を説明するための図であり、図6(1)は第1伸縮構造体6の鉛直断面図であり、図6(2)は床用伸縮継手装置1を上方から見た平面図であり、図6(3)は第2伸縮構造体7の鉛直断面図である。
【符号の説明】
【0056】
41,41a 床用伸縮継手装置
42 空隙
43a,43b 躯体
44 床部
45 壁部
46 床部
50 第1支持片
51 第1縁材
53 第2取付面
54 アンカー体
55 第2支持片
56 第2縁材
58 第3取付面
59 アンカー体
60 第3支持片
61 第3縁材
64 カバー体
83 ライナー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に第1水平方向に延びる空隙をあけて第1水平方向に垂直な第2水平方向に隣接する2つの建物の各躯体の一方には、前記第2水平方向に隣接して床部と壁部とが前記空隙に臨んで設けられ、前記各躯体の他方には、前記一方の躯体の床部および壁部に第1水平方向に対向する床部が前記空隙に臨んで設けられ、前記一方の躯体の床部と前記他方の躯体の床部との間および前記一方の躯体の壁部と前記他方の躯体の床部との間にわたって、各躯体間の相対的変位に追従して前記空隙を塞いだ状態に維持する床用伸縮継手装置において、
前記一方の躯体の壁部に、前記空隙に近接した対向部の鉛直な第1取付面上で固定され、前記第1取付面よりも他方の躯体側に突出した第1支持片を有する第1縁材と、
前記一方の躯体の床部に、前記空隙に近接した対向部の水平な第2取付面上で固定され、前記第1支持片と第1水平方向に連続する第2支持片を有する第2縁材と、
前記他方の躯体の床部に、前記空隙に近接した対向部の鉛直な第3取付面上で固定され、第1および第2支持片と前記第2水平方向に予め定める間隔をあけて平行に配置される第3支持片を有する第3縁材と、
幅方向一端部が第1および第2支持片に支持され、幅方向他端部が第3支持片に変位可能に支持されるカバー体とを含むことを特徴とする床用伸縮継手装置。
【請求項2】
前記カバー体は、幅方向一端部に、第1および第2支持片に一方の躯体側から臨む係合部が形成されることを特徴とする請求項1記載の床用伸縮継手装置。
【請求項3】
前記カバー体は、幅方向一端部が、第1および第2支持片に第2水平方向に変位可能に支持されることを特徴とする請求項1記載の床用伸縮継手装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−16485(P2007−16485A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−199157(P2005−199157)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000004732)株式会社日本アルミ (64)
【Fターム(参考)】