説明

床用水性塗料および床塗工方法

【課題】リコート性および初期硬度に優れ、かつ、耐水性にも優れた床用水性塗料と、この床用水性塗料を用いた床塗工方法を提供すること。
【解決手段】ポリイソシアネート(A)と、少なくとも60モル%、好ましくは60〜80モル%が2級水酸基となるモル比で1級水酸基と2級水酸基を有し、水酸基価が50〜120mgKOH/g、好ましくは60〜100mgKOH/gで、かつ1級水酸基に基づく水酸基価が20〜40mgKOH/gであるアクリル系樹脂(B)が水性媒体中に分散してなる床用水性塗料、および、この床用水性塗料を、プライマーが塗工されていてもよい床材の上に塗工し、乾燥させた後、その上にさらに前記床用水性塗料を塗工し、乾燥させる床塗工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリコート性に優れた床用水性塗料およびその塗工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から床用塗料にはポリイソシアネート組成物と活性水素含有基を有する有機溶剤系樹脂からなる有機溶剤系硬化性組成物を用いたものが多く用いられてきた。近年、塗料分野において、塗料に含まれる揮発性有機溶剤の含有量を低減させることが、環境問題の観点から強く求められている。この動向は床用塗料においても同様である。この要求に応えるべく、床用塗料の水性化が試みられており、特に床用塗料の主要な硬化組成物であるポリイソシアネート組成物と活性水素含有基を有する有機溶剤系樹脂からなる有機溶剤系硬化性組成物の水性化が試みられてきた。例えば、ポリイソシアネートと、水酸基価が10〜200で1級水酸基/2級水酸基(モル比)が5/95〜55/45の水性樹脂とを含有してなる水性硬化性組成物、ないしはその硬化物を含んでなる水性塗料によれば、硬度、外観、耐水性、耐溶剤性に優れる水性塗料を提供できることが報告されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
床用水性塗料では硬度、外観、耐水性、耐溶剤性等の塗膜物性だけでなく、その塗工過程における、塗り重ね適性いわゆるリコート性は重要な作業性である。また、硬度においても、塗装後1週間程度経過した硬度だけでなく、塗装数時間あるいは翌日といった比較的短い時間に歩行可能となるような、いわゆる初期硬度も必要である。しかしながら、前記特許文献1に記載された水性硬化性組成物を用いた水性塗料ではリコート性および初期の硬度が十分ではなく、しかも耐水性は比較的優れるが十分ではないため、リコート性および初期硬度に優れ、かつ、耐水性のより優れた床用水性塗料の開発が期待されている。
【0004】
なお、床用塗料におけるリコート性とは、重ね塗り適性のことであり、一定の塗装間隔をおいた後に塗り継ぐ場合、塗装が不十分な部分を塗り直す場合、膜厚を確保する場合等における塗り重ねた塗膜の付着性と表現できる。床用塗料において、このリコート性は重要な性能である。一般に、リコート性は溶剤や水が揮発した後、塗装後の時間経過に伴い低下する。これは硬化反応により塗膜表面の架橋密度が高くなり、塗り重ねた塗膜が付着し難くなることによる。
【0005】
また、初期硬度とは、塗装後の塗膜硬度を示し、少なくとも翌日に歩行可能な状態であればよい。更に、耐水性は塗膜性能を示す代表的な性能であり、ブリスタが発生しないことが望ましい。
【0006】
【特許文献1】特開2005−200497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、リコート性および初期硬度に優れ、かつ、耐水性にも優れた床用水性塗料と、この床用水性塗料を用いた床塗工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、このような現状を考慮して鋭意研究した結果、活性水素含有基を有する樹脂として、前記特許文献1には具体的に示されていない特定範囲の水酸基含有アクリル系樹脂、すなわち、水酸基価を50〜120mgKOH/g、1級水酸基に基づく酸基価を20〜40mgKOH/g、かつ、1級と2級の水酸基に占める2級水酸基のモル比を60モル%以上に、それぞれ限定してなるアクリル樹脂(B)を用い、ポリイソシアネート(A)と共に水性媒体中に分散してなる床用水性塗料は、リコート性、初期硬度および耐水性に優れること、更に、この床用水性塗料を用いた床塗工方法としては、この床用水性塗料をプライマーが塗工されていてもよい床材の上に塗工し、乾燥させた後、その上にさらに前記床用水性塗料を塗工し、乾燥させる方法が好ましいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、ポリイソシアネート(A)と、少なくとも60モル%が2級水酸基となるモル比で1級水酸基と2級水酸基を有し、水酸基価が50〜120mgKOH/gで、かつ1級水酸基に基づく水酸基価が20〜40mgKOH/gであるアクリル系樹脂(B)が水性媒体中に分散してなることを特徴とする床用水性塗料を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、前記床用水性塗料を、プライマーが塗工されていてもよい床材の上に塗工し、乾燥させた後、その上にさらに前記床用水性塗料を塗工し、乾燥させることを特徴とする床塗工方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、これまで難しいと考えられてきたリコート性、初期硬度および耐水性に優れる床用水性塗料を得ることができる。また、本発明の床塗工方法によれば、塗り重ね作業が容易で、従来より短時間で効率よく塗り重ねができ、硬度、外観、耐水性、耐溶剤性等に優れる塗膜が形成された床を容易に効率良く得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明をより詳細に説明する。
はじめに、本発明で使用するポリイソシアネート(A)について説明する。
本発明で使用するポリイソシアネート(A)としては、各種のポリイソシアネートを用いることができる。かかるポリイソシアネート(A)の代表的なものとしては、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、エチル(2,6−ジイソシアナート)ヘキサノエート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8−ジイソシアナート−4−イソシアナートメチルオクタン、2−イソシアナートエチル(2,6−ジイソシアナート)ヘキサノエート等の脂肪族トリイソシアネート;1,3−または1,4−ビス(イソシアナートメチルシクロヘキサン)、1,3−または1,4−ジイソシアナートシクロヘキサン、3,5,5−トリメチル(3−イソシアナートメチル)シクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,5−または2,6−ジイソシアナートメチルノルボルナン等の脂環式ジイソシアネート;2,5−または2,6−ジイソシアナートメチル−2−イソシネートプロピルノルボルナン等の脂環式トリイソシアネート;m−キシリレンジイソシアネート、α,α,α′α′−テトラメチル−m−キシリレンジイソシアネート等のアラルキレンジイソシアネート;
【0013】
m−またはp−フェニレンジイソシアネート、トリレン−2,4−またはトリレン−2,6−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジイソシアナート−3,3′−ジメチルジフェニル、3−メチル−ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4′−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート; トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアナートフェニル)チオホスフェート等の芳香族トリイソシアネート;
【0014】
前記した如き各種のジイソシアネートあるいはトリイソシアネートのイソシアネート基どうしを環化二量化して得られるウレトジオン構造を有するポリイソシアネート;前記した如き各種のジイソシアネートあるいはトリイソシアネートのイソシアネート基どうしを環化三量化して得られるイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート;前記した如き各種のジイソシアネートあるいはトリイソシアネートを水と反応させることにより得られるビュレット構造を有するポリイソシアネート;前記した如き各種のジイソシアネートあるいはトリイソシアネートを二酸化炭素と反応せしめて得られるオキサダイアジントリオン構造を有するポリイソシアネート;アロファネート構造を有するポリイソシアネート等が挙げられる。
【0015】
そして、これらの中では、水の中でのイソシアネート基の安定性と塗膜の耐候性に優れることから、脂肪族系あるいは脂環式系のジイソシアネートまたはトリイソシアネート、アラルキレンジイソシアネート、あるいは、それらから誘導されるポリイソシアネートが特に好ましい。これらのポリイソシアネートのうち、耐候性、耐久性に優れた床用水性塗料を得るためには、イソシアヌレート型ポリイソシアネート、ビュレット構造を有するポリイソシアネート、ウレトジオン構造を有するポリイソシアネート、アロファネート構造を有するポリイソシアネート、ジイソシネートと3価以上の多価アルコールを反応して得られるポリイソシアネート等の3官能以上のポリイソシアネートが好ましい。
【0016】
かかるポリイソシアネート(A)は、各種のノニオン性基、アニオン性基、カチオン性基等の親水性基を導入することで、自己水分散性を付与してもよい。好ましいものは、ノニオン性基及びアニオン性基である。また、各種の乳化剤などのポリイソシアネート(A)を水性媒体中で分散させることが可能な成分の添加や、後記するアクリル系樹脂(B)としてポリイソシアネート(A)を水分散させる能力のあるものを使用し、このアクリル樹脂(B)の水分散体と混合することにより、ポリイソシアネート(A)を水性媒体中に分散させてもよい。さらに、上記方法の組み合わせでポリイソシアネート(A)を水性媒体中に分散させてもよい。
【0017】
自己水分散性を付与するために導入されるノニオン性基としては、各種のものを導入することができるが、好ましくは、末端がアルコキシ基で封鎖されたポリオキシアルキレン基、末端が後記のアニオン性基であるポリオキシアルキレン基等のポリオキシアルキレン基である。さらに好ましくは、末端がアルコキシ基で封鎖されたポリオキシアルキレン基であり、その代表的なもとしては、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基等のポリオキシアルキレン基、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)基等の、前記したオキシアルキレン部分がランダムに共重合されたもの、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン基等の相異なるポリオキシアルキレン基がブロック状に結合したもの、等が挙げられる。そして、末端封鎖に使用されるアルコキシ基の代表的なものとしては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0018】
自己分散性を付与するために導入されるアニオン性基としては、各種のものがあるが、好ましいものは、塩基性化合物で中和された酸基である。中和された酸基の代表的なものを例示するにとどめれば、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基、ホスホン酸エステル塩基、ホスフィン酸塩基、スルフィン酸基、カルボン酸塩基等である。
【0019】
これらのアニオン性基のなかで好ましいものは、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基、ホスホン酸エステル塩基、ホスフィン酸塩基から成る群より選ばれる少なくとも1種であり、特に好ましいものは、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基である。
【0020】
酸基を中和することにより前記した如きアニオン性基に変換する際に使用される塩基性化合物の代表的なものとしては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2−アミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール等の有機アミン類;アンモニア、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム等の無機塩基性化合物;テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムハイドロオキサイドもしくはトリメチルベンジルアンモニウムハイドロオキサイド等の第四級アンモニウムハイドロオキサイド、等が挙げられる。そして、これらの中で特に好ましいものは、無機塩基性化合物である。
【0021】
ポリイソシアネート(A)にノニオン性基、アニオン性基、カチオン性基等の親水性基を導入して自己水分散性を付与する方法としては、例えば、前記ポリイソシアネートのイソシアネート基と、親水性基および活性水性含有基を併有する化合物の活性水素を反応させる方法が挙げられる。親水性基に活性水素が含まれる場合は、それとは別に活性水素含有基を有してもよい。
【0022】
前記親水性基および活性水性含有基を併有する化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とを併有するポリエーテルジオール、オキシエチレン単位を含む各種のポリエーテルジオール類、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とを併有するポリエーテルジオール類;前記ポリエーテルジオール類の片末端をアルコキシル基で封鎖したポリエーテルジオール類;前記ポリエーテルジオール類もしくは片末端をアルコキシル基で封鎖されたポリエーテルジオール類にアニオン性基ないしはカチオン性基を持つポリエーテルジオール類;親水性基と活性水素含有基を有するビニル系重合体等が挙げられる。
【0023】
これら親水性基および活性水性含有基を併有する化合物のなかで好ましいものは、片末端をアルコキシル基で封鎖したポリエーテルジオール類、片末端をアルコキシル基で封鎖したポリオキシエチレン基と水酸基とを有するビニル重合体である。
【0024】
ポリイソシアネート(A)を水性媒体中で分散させるための乳化剤としては、ノニオン性基、アニオン性基、カチオン性基等を有するものであればよい。ノニオン性基、アニオン性基としては、ポリイソシアネート(A)に自己水分散性を付与するためのノニオン性基、アニオン性基として例示したものがいずれも挙げられる。また、カチオン性基としては、例えば、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アンモニウムハイドロオキシド基などが挙げられ、これらを酸性化合物で中和したものが好ましい。さらに、上記ノニオン性基、アニオン性基、カチオン性基を複数有するものでもよい。
【0025】
上記ポリイソシアネート(A)を水性媒体中で分散させるための乳化剤は、ポリイソシアネート(A)と反応しないものであればポリイソシアネート(A)に添加してもよい。また、後記するアクリル系樹脂(B)と混合する直前にポリイソシアネート(A)と混合してもよい。
【0026】
次に、本発明で使用するアクリル系樹脂(B)について説明する。
【0027】
本発明で使用するアクリル系樹脂(B)は、水酸基価が50〜120mgKOH/gであることが必要である。水酸基価が20より低いと十分な耐水性が得られず、210より高いと親水性基である水酸基が耐水性を低下させると同時に床用水性塗料のポットライフも低下させるため、それぞれ好ましくない。塗膜の初期硬度、耐水性に優れる床用水性塗料が得られることから、水酸基価の範囲は60〜100mgKOH/gであることがより好ましく、65〜90mgKOH/gであることが最も好ましい。
【0028】
前記アクリル系樹脂(B)は1級水酸基と2級水酸基を有するが、少なくとも60モル%が2級水酸基であることが必要である。2級水酸基が50モル%より少ない場合はリコート性が低下するため好ましくない。リコート性により優れる床用水性塗料が得られることから、少なくとも65モル%が2級水酸基であることが好ましい。また、リコート性と初期の塗膜硬度のバランスが良好な床用水性塗料が得られることから、60〜80モル%が2級水酸基であることが好ましく、65〜75モル%が2級水酸基であることがより好ましい。
【0029】
前記アクリル系樹脂(B)は1級水酸基と2級水酸基を有するが、1級水酸基に基づく水酸基価が20〜40mgKOH/gであることが必要である。1級水酸基に基づく水酸基価が10mgKOH/gより低い場合は初期の塗膜硬度低く作業性に劣る。40mgKOH/gより高い場合はリコート性が低下する。初期の塗膜硬度とリコート性に優れる床用水性塗料が得られることから、1級水酸基に基づく水酸基価が25〜35mgKOH/gであることが好ましい。
【0030】
前記アクリルル系樹脂(B)は、初期の塗膜硬度、リコート性、造膜性に優れる床用水性塗料が得られることから、示差走査型熱量計により測定したガラス転移温度(Tg)が15〜60℃であることが好ましく、なかでも25〜40℃であることがより好ましい。
【0031】
前記ポリイソシアネート(A)を水性媒体中に分散させる方法としては、(1)ポリイソシアネート(A)あるいは乳化剤を添加したポリイソシアネート(A)を水性媒体に添加して分散させ、得られた水分散液を、水分散したアクリル系樹脂(B)に添加し、混合する方法、(2)ポリイソシアネート(A)あるいは乳化剤を添加したポリイソシアネート(A)を、水分散したアクリル系樹脂(B)に直接添加し、混合して分散させる方法〔ただし、ポリイソシアネート(A)として自己水分散性を有しないイソシアネートを用いる場合、水分散したアクリル系樹脂(B)としてはポリイソシアネートを水分散させる能力のあるものを用いる必要がある。〕等が挙げられる。
【0032】
本発明で使用するアクリル系樹脂(B)は、例えば、水酸基を有するアクリル系単量体やその他のアクリル系単量体を共重合させることで製造することができる。また、必要に応じてアクリル系単量体以外のビニル系単量体を用いることもできる。
【0033】
かかる水酸基を有するアクリル系単量体のうち、前記アクリル系重合体(B)に1級の水酸基を導入しうるアクリル系単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等が挙げられる。また、前記アクリル系重合体(B)に2級の水酸基を導入しうるアクリル系単量体としては、例えば、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ-n-ブチル(メタアクリレート)、3−ヒドロキシ−n−ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、好ましくは2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0034】
前記その他のアクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸やそのアルカリ金属塩、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、アクリルアマイド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアマイド、(メタ)アクリロニトリル、3−(メタ)アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等のアクリル系単量体が挙げられる。
【0035】
本発明で使用するアクリル系樹脂(B)は、水性媒体中に分散した状態にあり、各種の分散形態が挙げられる。大別すると、(1)乳化剤でアクリル樹脂(B1)を水性媒体中に分散したもの、(2)親水性基を有するアクリル樹脂(B2)が水性媒体中に分散したもの等が挙げられる。
【0036】
前記(1)の乳化剤で水性媒体中に分散したアクリル樹脂(B1)としては、例えば、アクリル樹脂(B1)と乳化剤と水を攪拌してアクリル系樹脂(B1)を水分散させたもの、アクリル系単量体を乳化剤の存在下、水性媒体中で乳化重合して得られるもの等が挙げられる。
【0037】
前記のアクリル系樹脂(B1)と乳化剤と水を攪拌してアクリル系樹脂(B1)を水分散させる際に使用できる乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン系乳化剤、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩等のアニオン系乳化剤、4級アンモニウム塩等のカチオン系乳化剤等が挙げられる。乳化剤は、単量体100重量部に対して20重量部以下の範囲で使用するのが好ましく、さらに、耐水性に優れる床用水性塗料が得られることから、5〜15重量部の範囲がより好ましい。
【0038】
また、乳化重合を行う際に使用できる乳化剤としては、前記アクリル系樹脂(B1)を水分散する際に使用できる乳化剤として列記したノニオン系乳化剤、アニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤などがいずれも使用できる。乳化剤は、単量体の全重量100重量部に対して10重量部以下の範囲で使用するのが好ましく、さらに、耐水性に優れる床用水性塗料が得られることから、2〜5重量%が好ましい。
【0039】
前記乳化重合法のうち、ラジカル重合開始剤を使用するラジカル乳化重合法が、特に簡便である。この際使用されるラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物と酸化鉄等の還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤等が挙げられる。これらラジカル開始剤の使用量は、通常、単量体の全重量100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜2重量部である。
【0040】
前記アクリル系単量体、乳化剤およびラジカル重合開始剤のほかに、必要に応じて、各種の連鎖移動剤、pH調整剤等を併用して、単量体の全重量100重量部に対して100〜500重量部の水中にて、5〜100℃、好ましくは50〜90℃の温度範囲で、0.1〜10時間かけて乳化重合を行うことにより、目的とするアクリル樹脂(B1)のエマルジョンを得ることができる。
【0041】
本発明で使用するアクリル系樹脂(B)のうち、前記(2)の親水性基を有するアクリル系樹脂(B2)が水性媒体に分散したものとしては、例えば、アニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基等の親水性基を有するアクリル樹脂を水性媒体に分散したものが挙げられる。
【0042】
前記アニオン性基としては、例えば、カルボキシル基、燐酸基、酸性リン酸エステル基、亜燐酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基などが挙げられ、これらを塩基性化合物で中和したものを使用することが好ましい。
【0043】
前記アニオン性基を中和する際に使用できる塩基性化合物としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2−アミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムハイドロオキサイドなどが挙げられる。
【0044】
前記カチオン性基としては、例えば、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アンモニウムハイドロオキシド基などが挙げられ、これらを酸性化合物で中和したものが好ましい。
【0045】
前記カチオン性基を中和する際に使用できる酸性化合物としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、リン酸モノメチルエステル、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。
【0046】
前記ノニオン性基としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンなどのポリエーテル鎖を有するものが挙げられる。
【0047】
親水性基を有するアクリル系樹脂(B2)は、例えば、水酸基を有するアクリル系単量体やその他のアクリル系単量体を共重合させる製造方法において、その他のアクリル系単量体の一部として親水性基を有するアクリル系単量体を用いて、水酸基を有するアクリル系単量体やその他のアクリル系単量体と共に重合することにより製造することができる。
【0048】
親水性基を有するアクリル系単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレートなどの各種のカルボキシル基含有アクリル単量体やそれらのアルカリ金属塩等、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの各種の3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの各種の3級アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステルやそれらの四級化物等挙げられ、これらのなかでも、(メタ)アクリル酸もしくはジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。これらは単独又は2種以上併用で使用することができる。
【0049】
前記のようなアクリル系単量体を使用して、親水性基を有するアクリル系樹脂(B2)を調製する方法としては、種々の重合方法が挙げられるが、その中でも有機溶剤を使用した溶液ラジカル重合法が最も簡便である。この際使用される有機溶剤としては、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族又は脂環族炭化水素;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル類;メタノール、エタノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類;N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、エチレンカーボネートなどが挙げられる。これらは単独又は2種以上併用で使用することができる。
【0050】
また、前記した溶液ラジカル重合法において使用するラジカル重合開始剤としては、種々の化合物を使用することができるが、それらのうちでも特に代表的なものを例示すれば、2,2′―アゾビス(イソブチル二トリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などの各種のアゾ化合物類;tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの各種の過酸化物などがある。
【0051】
前記したような、単量体類、重合開始剤類および有機溶剤類を使用して、溶液ラジカル重合法を適用することによって、目的とする、親水性基を有するアクリル樹脂(B2)を調製することができる。
【0052】
得られた親水性基を有するアクリル系樹脂(B2)を水性媒体中に分散させる方法としては、各種の方法が挙げられるが、なかでも、転相乳化法で分散させることが好ましい。
【0053】
転相乳化法は、必要に応じて親水性基を塩基性化合物もしくは酸性化合物で中和せしめてなるアクリル系樹脂(B2)の有機溶剤溶液と、水性媒体を混合して、アクリル系樹脂(B2)を水性媒体中に分散(転相乳化)させ、必要に応じて有機溶剤を除去する方法である。この際には、必要に応じて乳化剤を本発明の目的を達成する範囲内で使用することができる。
【0054】
乳化剤としては、例えば、前記アクリル系樹脂(B1)を水分散する際に使用できる乳化剤として列記したノニオン系乳化剤、アニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤などがいずれも使用できる。
【0055】
水性媒体としては、水、又は、有機溶剤を含有した水が挙げられる。
【0056】
有機溶剤としては、溶液ラジカル重合法に使用できる有機溶剤として列記したものをそのまま使用することができるが、特にエステル類、ケトン類、エーテル類が好ましい。水性媒体に含まれる有機溶剤は単独又は2種類以上であっても良く、その使用割合は水性媒体中30重量%以下であることが好ましく、15重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることが更に好ましいが、使用しないことが最も好ましい。なお、有機溶剤を使用する場合の使用割合は少なくとも1重量%以上であることが好ましい。
【0057】
本発明の床用水性塗料は、顔料を含まないクリヤー塗料として使用することも、有機系あるいは無機系の各種の顔料を配合して着色塗料として使用することもできる。本発明に使用するアクリル系樹脂(B)には、必要に応じて、添加剤、例えば、充填剤、レベリング剤、増粘剤、消泡剤、有機溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤または顔料分散剤のような、公知慣用の各種の添加剤類などをも配合することが出来る。
【0058】
着色塗料を調製する際に使用される顔料の代表的なものとしては、カーボン・ブラック、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、キナクリドン・レッド等の有機系顔料;酸化チタン、酸化鉄、チタンイエロー、銅クロムブラック等の金属酸化物系の無機系顔料;炭酸カルシウム、クレー、タルク、硫酸バリウム等の体質顔料;アルミニウムフレーク、パールマイカ等の無機系のフレーク状の顔料等が挙げられる。
【0059】
前記した各種の顔料を使用して着色塗料を調製する場合、ポリイソシアネート(A)の固形分とアクリル系樹脂(B)の固形分の合計100重量部に対して、顔料が0.1〜300重量部、好ましくは0.2〜200重量部となるような比率で顔料を配合すればよい。
【0060】
本発明の床用水性塗料の調製にあたり添加される紫外線吸収剤の代表的なものとしては、ベンゾトリアゾール系化合物、シュウ酸アニリド系、ヒドロキシベンゾフェノン系等の各種の化合物を挙げることができる。また、添加される酸化防止剤としては、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、燐系化合物等を挙げることができる。そして、これらを添加する場合の添加量は、ポリイソシアネート(A)の固形分とアクリル系樹脂(B)の固形分の合計100重量部に対して、紫外線吸収剤および/または酸化防止剤が0.2〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部となるような比率に設定すればよい。
【0061】
本発明の床用水性塗料は、前記ポリイソシアネート(A)と前記アクリル系樹脂(B)が水性媒体中に分散してなるものであるが、前記ポリイソシアネート(A)と前記アクリル系樹脂(B)を混合させる方法としては、例えば、水性媒体に分散したアクリル系樹脂(B)に、ポリイソシアネート(A)、あるいはポリイソシアネート(A)が水性媒体中に分散したものを添加し、撹拌する方法が挙げられる。撹拌方法としては、例えば、各種の攪拌機を使用する方法があり、少量ならば攪拌棒等を用いた簡便な攪拌でもよいが、各種の攪拌機を使用することは、短時間で多量の水性硬化性組成物を調製できることから好ましい。また、ポリイソシアネート(A)に自己分散性がない場合は、例えば、ジェットミルなどの強力なせん断力を有する公知慣用各種の攪拌機を用いることが好ましい。
【0062】
このときのポリイソシアネート(A)およびアクリル系樹脂(B)の混合比率は、本発明のリコート性、初期硬度および耐水性に優れる床用水性塗料が得られることから、ポリイソシアネート(A)中のイソシアネート基とアクリル系樹脂(B)中の水酸基のモル比(NCO/OH)が、0.5〜2.5であることが好ましく、0.7〜2.0であることがより好ましく、0.9〜1.5であることが更に好ましい。
【0063】
本発明の床用水性塗料は、床材上に直接塗布することができるし、各種のプライマーを塗工した床材上に塗工することもできる。さらに、本発明の床用水性塗料をプライマーが塗工されていてもよい床材も上に塗工し、乾燥させた後、その上にさらに本発明の床用水性塗料を塗り重ね、乾燥させることができる。本発明の床用水性塗料を塗り重ねる塗工方法は、リコート性および初期硬度に優れるという本発明の床用水性塗料の特徴を生かせることから、特に好ましい塗工方法である。
【0064】
本発明の床用水性塗料を塗工できる床材としては、種々のものが使用できるが、例えば、各種の無機質床材、木質系床材、プラスチック床材等が挙げられ、なかでも無機質床材が好適である。
【0065】
無機質基材としては、例えば、珪酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化カルシウム等のカルシウム化合物から製造される硬化体;アルミナ、シリカ、ジルコニア等の金属酸化物を焼結して得られるセラミック;各種の粘土鉱物を焼成して得られるタイル類;各種のガラス等が挙げられる。そして、カルシウム化合物から製造される硬化体の代表的なものとしては、コンクリートやモルタル等のセメント組成物の硬化物、石綿スレート、軽量気泡コンクリート(ALC)硬化体、ドロマイトプラスター硬化体、石膏プラスター硬化体、珪酸カルシウム板等が挙げられる。
【0066】
木質系基材としては、例えば、無垢材、集成材、突板張り化粧合板、化粧紙貼り合板、中質繊維板、パーティクルボード、およびこれらをWPC(WoodPlastic Combination)処理したもの等が挙げられる。木の種類として特に制限はないが、一般にはスギ、マツ、ヒノキ、カラマツ等の針葉樹材、カバ、ケヤキ、ミズナラ、サクラ、クルミ、ローズ、チーク、マホガニー等の広葉樹材が挙げられる。
【0067】
プラスチック基材としては、例えば、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂の成形品;不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、架橋型ポリウレタン、架橋型のアクリル樹脂、架橋型の飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂の成形品等が挙げられる。
【0068】
また、前掲したような各種の基材であって、被覆が施されており、しかも、その被覆部分の劣化が進んだような基材であっても、本発明でいう基材として使用することが出来る。
【0069】
プライマーとしては、各種のものが使用されるが、代表的なものとしては、1液湿気硬化型ウレタンプライマー、2液ビスフェノールA型エポキシ/ポリアミン系プライマー、不飽和ポリエステル系プラーマ−、ビニルエステル系プライマー、アクリル系プライマー、ゴム系プライマ−、水系2液硬化型ポリウレタンプライマー等が挙げられる。
【0070】
本発明の床用水性塗料の塗工方法としては、刷毛塗り、ローラー塗装、スプレー塗装、浸漬塗装、フロー・コーター塗装、ロール・コーター塗装等の公知慣用の方法を適用することができる。
【実施例】
【0071】
次に参考例、実施例および比較例により本発明を詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお文中の部および%は、特に断りのない限り全て重量基準である。
【0072】
参考例1〔ポリイソシアネート(A−1)の調製〕
攪拌機、温度計、冷却管、窒素導入管を装備した4つ口のフラスコに、数平均分子量560のメトキシポリエチレングリコール32部、および、ポリイソシアネート(p−1)〔大日本インキ化学工業(株)製バーノックDN−980S:ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略称する。)系イソシアヌレート型ポリイソシアネート、イソシアネート基含有率(以下、NCO基含有率と略称する。)21%、不揮発分100%〕100部を仕込み、30分間かけて90℃に昇温した後、90℃にて6時間反応させて、不揮発分100%、NCO基含有率14重量%のメトキシポリエチレングリコールで変性されたポリイソシアネートを得た。以下、これをポリイソシアネート(A−1)と略称する。
【0073】
参考例2〔ポリイソシアネート(A−2)の調製〕
参考例1と同様の4つ口のフラスコに、ジエチレングリコールジエチルエーテル(以下、EDEと略称する。)429部を仕込み、窒素気流下に110℃に昇温した後、ポリオキシエチレン基の数平均分子量が400のメトキシポリエチレングリコールのメタアクリレート(以下、MPEGMAと略称する。)400部、シクロヘキシルメタクリレート(以下、CHMAと略称する。)200部、メチルメタクリレート(以下、MMAと略称する。)400部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(以下、TBPEHと略称する。)45部およびt−ブチルパーオキシベンゾエート5部からなる混合液を5時間かけて滴下した。滴下終了後、110℃にて9時間反応せしめ、不揮発分70%、重量平均分子量18,000のアクリル系重合体の溶液を得た。以下、これをアクリル系重合体(q−1)と略称する。
【0074】
次いで、アクリル系重合体(q−1)の調製に使用したものと同様の反応器に、ポリイソシアネート(p−1)200部およびアクリル系重合体(q−1)100部を仕込み、窒素気流下に50℃に昇温した後、同温度で1時間攪拌混合し、不揮発分90%、NCO基含有率14.0重量%のポリイソシアネート(A−2)を得た。以下、これをポリイソシアネート(A−2)と略称する。
【0075】
参考例3〔アクリル系樹脂(B−1)の調製〕
参考例1と同様の4つ口のフラスコに「ハイテノールN−08」〔第一工業製薬(株)製アニオン性乳化剤〕5部、「エマルゲン931」〔花王(株)製ノニオン性乳化剤〕5部および脱イオン水240部を仕込み、窒素気流下に80℃に昇温した後、過硫酸アンモニウム0.8部を脱イオン水16部に溶解させた水溶液を添加した。さらに、ブチルアクリレート(以下、BAと略称する。)54部、MMA102部、アクリル酸(以下、AAと略称する。)4部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、2−HEMAと略称する。)11部、および、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(以下、2−HPMAと略称する。)29部からなる混合液を、3時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間反応せしめた後、25℃まで冷却し、28%アンモニア水1.5部で中和せしめ、不揮発分45%、固形分水酸基価80mgKOH/g、1級水酸基の固形分水産基価24mgKOH/g、1級と2級の水酸基の合計に対する2級水酸基のモル比70モル%、示差走査型熱量計により測定したガラス転移温度(Tg)35℃のアクリル系樹脂(B−1)を得た。
【0076】
参考例4〜7〔アクリル系樹脂(B−2)〜(B−5)の調製〕
下記第1表に記載した比率でアクリル系単量体を反応させた以外は参考例3と同様にして、アクリル系樹脂(B−2)〜(B−5)を得た。
【0077】
【表1】

【0078】
参考例8〜13〔アクリル系樹脂(RB−1)〜(RB−6)の調製〕
参考例1と同様に、第2表に記載した比率でアクリル系単量体を反応させて、アクリル系樹脂(RB−1)〜(RB−6)を得た。
【0079】
【表2】

【0080】
参考例14〔床用水性塗料主剤成分(C−1)の調製〕
脱イオン水85.4部、「Disperbyk−190」(BYKケミー社製消泡剤)23.7部、ジメチルエタノールアミンの25%水溶液1.5部、「Ti−Pure R−960」(DuPont社製酸化チタン)270.6部および「BYK−011」の10%水溶液5.4部からなる混合物を、ディスパーで1時間分散させた。次いで、アクリル系樹脂(B−1)579.9部、「BYK−346」(BYKケミー社製レベリング剤)8.3部、「プライマルRM−8W」(ローム&ハース社製増粘剤)の10%水溶液4.8部、ジメチルエタノールアミンの25%水溶液1.1部および「BYK−028」(BYKケミー社製消泡剤)の10%水溶液19.3部を加えて攪拌し、不揮発分55%の床用水性塗料主剤成分(C−1)を得た。
【0081】
参考例15〜18〔床用水性塗料主剤成分(C−2)〜(C−5)の調製〕
アクリル系樹脂(B−1)の代わりに、アクリル系樹脂(B−2)〜(B−5)を用いた以外は参考例14と同様にして、床用水性塗料主剤成分(C−2)〜(C−5)を得た。
【0082】
参考例19〜24〔床用水性塗料主剤成分(RC−1)〜(RC−6)の調製〕
アクリル系樹脂(B−1)の代わりに、アクリル系樹脂(RB−1)〜(RB−6)を用いた以外は参考例14と同様にして、床用水性塗料主剤成分(RC−1)〜(RC−6)を得た。
【0083】
実施例1
ポリイソシアネート(A−2)中のイソシアネート基(NCO)とアクリル系樹脂(B−1)中の水酸基(OH)のモル比(NCO/OH)が1.2となるように、ポリイソシアネート(A−2)13.4部と床用水性塗料主剤成分(C−1)100部を混合し、さらに不揮発分が50%となるように水で希釈を行い、白色床用水性塗料(D−1)を調製した。
【0084】
得られた白色床用水性塗料(D−1)を用い、塗膜硬度試験、付着性試験および耐水性試験を以下のようにして行なった。
【0085】
・塗膜硬度試験:白色床用水性塗料(D−1)を、スレート板に刷毛で塗布量が200g/mとなるよう塗装し、気温25℃、湿度60%RHの条件で1日間乾燥させたものに、再度白色床用水性塗料(D−1)を塗装し、気温25℃、湿度60%RHの条件で1日間乾燥させたものを試料として、ケーニッヒ硬度計により硬度を測定した。
【0086】
・付着性試験:白色床用水性塗料(D−1)を、スレート板に刷毛で塗布量が200g/mとなるよう塗装し、気温25℃、湿度60%RHの条件で8時間乾燥させたものと、1日間乾燥させたものと、3日間乾燥させたもののそれぞれに、再度白色床用水性塗料(D−1)を塗装し、気温25℃、湿度60%RHの条件で3日間乾燥させたものを試料として、付着性試験を行なった。付着性試験はリコート性評価試験であり、縦横1mm間隔でカッターナイフによる切れ目を入れて100個の升目を作成し、セロハン粘着テープで塗膜の剥離試験を実施した。評価は1回目塗装塗膜と2回目塗装塗膜間の付着を判定し、残存数で評価した。95個以上残存したものをリコート性良好と評価できる。
【0087】
・耐水性試験:白色床用水性塗料(D−1)を、スレート板に刷毛で塗布量が200g/mとなるよう塗装し、気温25℃、湿度60%RHの条件で1日間乾燥させたものに、再度白色床用水性塗料(D−1)を塗装し、気温25℃、湿度60%RHの条件で3日間乾燥させたものを試料として用い、水温25℃の水に1日間浸漬して引き上げた時のブリスタの発生の有無を下記の評価基準で評価した。ブリスタがほとんどない(5%未満)ものを耐水性良好と評価できる。
評価基準
○ :ブリスタなし
○−△:わずかにブリスタあり。ブリスタの面積5%未満。
△ :全面にブリスタあり。ブリスタの面積5%以上〜15%未満。
△−×:全面にブリスタあり。ブリスタの面積15%以上〜30%未満。
× :全面にブリスタあり。ブリスタの面積30%以上。
【0088】
実施例2〜7
ポリイソシアネート(A−2)と床用水性塗料主剤成分(C−1)の代わりに、第3表(1)〜(2)に示すポリイソシアネートと床用水性塗料主剤成分を用いた以外は実施例1と同様にして、白色床用水性塗料(D−2)〜(D−7)を調製し、同様の評価を行った。試験結果を第3表(1)〜(2)に示す。
【0089】
【表3】

【0090】
【表4】

【0091】
比較例1〜8
ポリイソシアネート(A−2)と床用水性塗料主剤成分(C−1)の代わりに、第4表(1)〜(2)に示すポリイソシアネートと床用水性塗料主剤成分を用いた以外は実施例1と同様にして、白色床用水性塗料(RD−1)〜(RD−8)を調製し、同様の評価を行った。試験結果を第4表(1)〜(2)に示す。
【0092】
【表5】

【0093】
【表6】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート(A)と、少なくとも60モル%が2級水酸基となるモル比で1級水酸基と2級水酸基を有し、水酸基価が50〜120mgKOH/gで、かつ1級水酸基に基づく水酸基価が20〜40mgKOH/gであるアクリル系樹脂(B)が水性媒体中に分散してなることを特徴とする床用水性塗料。
【請求項2】
アクリル系樹脂(B)が、60〜80モル%が2級水酸基となるモル比で1級水酸基と2級水酸基を有し、水酸基価が60〜100mgKOH/gで、かつ1級水酸基に基づく水酸基価が20〜40mgKOH/gのアクリル系樹脂である請求項1に記載の床用水性塗料。
【請求項3】
アクリル系樹脂(B)が、示差走査型熱量計により測定したガラス転移温度(Tg)が15〜60℃のアクリル系樹脂である請求項2に記載の床用水性塗料。
【請求項4】
ポリイソシアネート(A)中のイソシアネート基(NCO)とアクリル系樹脂(B)中の水酸基(OH)のモル比(NCO/OH)が0.5〜2.5である請求項1、2または3に記載の床用水性塗料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の床用水性塗料を、プライマーが塗工されていてもよい床材の上に塗工し、乾燥させた後、その上にさらに前記床用水性塗料を塗工し、乾燥させることを特徴とする床塗工方法。
【請求項6】
床材が無機質床材である請求項1に記載の床塗工方法。


【公開番号】特開2007−126623(P2007−126623A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29563(P2006−29563)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】