説明

床用目地カバー装置

【課題】カバー体が目地方向にずれた場合に、自動的に原位置に復帰させることによって、保持受枠の垂直縁とカバー体の端縁との間に大きな隙間が生じたままになることを防止し得る原位置復帰手段を備えた床用目地カバー装置を提供する。
【解決手段】カバー体Cの一端が乗載される水平受縁19aと該水平受縁19aの外端から上方に立ち上がる垂直縁19bとを備えた保持受枠19の、その水平受縁19aに配設されて、目地sの幅方向に沿って延在し、垂直縁19b方向に向けて下り勾配で傾斜する案内傾斜面21を備えた複数の案内部材20と、カバー体Cの一端の下部に配設され、前記案内部材20を下方から遊嵌可能な長孔状に形成されて、保持受枠19の垂直縁19b側に位置する孔端16aが案内部材20の案内傾斜面21上に当接する挿通孔16を備えた複数の連結板部18とによって原位置復帰手段を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する建造物の床相互間の目地を覆う床用目地カバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝機能を備えた免震装置によって下部が支持された建造物にあっては、地震時における水平方向の揺れが大きくなる傾向がある。このような免震構造の建造物の周囲には、隣接する人工地盤からなる建造物との間に比較的広幅の目地が形成されており、かかる免震構造の建造物の目地に好適に使用し得る床用目地カバー装置が、本願出願人によって既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる床用目地カバー装置は、隣接する建造物の床相互間の目地に差し渡されるカバー体の一端が、一方の床の側縁に連結手段を介して揺動可能に連結されるとともに、該カバー体の他端を自由端とし、該自由端が他方の床の側縁に摺動可能に乗載されている。そして、地震時において、一方の建造物と他方の建造物とが近接したり離れたりするように相対変位すると、カバー体の自由端が他方の建造物の床上を摺動してその相対変位に追従するようになっている。
【0004】
また、図9(A)に示すように、カバー体Cの一端を連結する従来の連結手段aとしては、カバー体Cの端部下面でカバー体Cの両側端部の近傍位置に上下方向の挿通孔cを備えた連結板bを夫々配設する一方、建造物Aの床fの側縁に目地sの長手方向に沿って配設された保持受枠dの水平受縁eにボルトからなる複数の連結杆gを前記各連結板bの挿通孔cの形成位置に対応させて夫々立設し、各連結杆gを前記挿通孔cに夫々下方から遊嵌した状態でコイル状の圧縮ばねhを外嵌して、その上端にナットからなるばね受け部材jを螺着することにより、該圧縮ばねhの弾発力によってカバー体Cの一端を下方に付勢して揺動可能に連結するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−317516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の連結手段aにあっては、連結板bの挿通孔cに遊嵌された連結杆gを介してカバー体Cの一端を揺動可能とするために、連結杆gの直径(通常16mmφ程度)に比して連結板bの挿通孔cの直径(通常22mmφ程度)が大きく設定されており、また、保持受枠dの垂直縁k(図9(A)参照)とカバー体Cの端縁との間にもカバー体Cを揺動可能とするための比較的広い隙間n(通常4mm程度)が設けられている。このため、地震或いはカバー体C上の通行による衝撃や振動等によって、カバー体Cが目地s方向にずれると、図9(B)に示すように、保持受枠dの垂直縁kとカバー体Cの端縁との間の隙間nが大きく開いてしまい、この隙間nに歩行者のハイヒールの踵が入り込む虞があった。
【0007】
本発明は、かかる問題点を解消するためになされたものであって、カバー体が目地方向にずれた場合に、自動的に原位置に復帰させることによって、保持受枠の垂直縁とカバー体の端縁との間に大きな隙間が生じたままになることを防止し得る床用目地カバー装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、隣接する建造物の床相互間の目地に差し渡されるカバー体の一端が、一方の床の側縁に連結手段を介して連結されるとともに、該カバー体の他端を自由端とし、該自由端が他方の床の側縁に摺動可能に乗載されてなる床用目地カバー装置において、カバー体の一端が乗載される水平受縁と該水平受縁の外端から上方に立ち上がる垂直縁とを備えた保持受枠の、その水平受縁に配設されて、目地の幅方向に沿って延在し、垂直縁方向に向けて下り勾配で傾斜する案内傾斜面を備えた複数の案内部材と、カバー体の一端の下部に配設され、前記案内部材を下方から遊嵌可能な長孔状に形成されて、保持受枠の垂直縁側に位置する孔端が案内部材の案内傾斜面上に当接する挿通孔を備えた複数の連結板部とからなる原位置復帰手段を備えてなることを特徴とする床用目地カバー装置である。
【0009】
ここで、案内傾斜面の傾斜角度は、該案内傾斜面上に挿通孔の孔端が乗り上げたときに、カバー体の端部が自重で滑り落ちることができる角度に設定される。また、該案内傾斜面は、保持受枠の垂直縁方向に向けて下り勾配で傾斜して水平受縁に達するように設けることが好ましい。これにより、連結板部に設けられた長孔状の挿通孔の、保持受枠の垂直縁側に位置する孔端を、案内部材の案内傾斜面上に常時当接させることができる。
【0010】
上述した床用目地カバー装置にあって、案内部材の目地側に、保持受枠の水平受縁に立設された複数の連結杆を夫々配設し、かつ該連結杆の上部に連結板部の挿通孔より広幅の抜け止め部材を着脱可能に装着することにより、カバー体の一端を一方の床の側縁に連結する連結手段とした構成が提案される。
【0011】
また、案内部材の上部に、連結板部の挿通孔より広幅の抜け止め部材を着脱可能に装着することにより、カバー体の一端を一方の床の側縁に連結する連結手段とした構成が提案される。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上述したように、カバー体の一端が乗載される水平受縁と該水平受縁の外端から上方に立ち上がる垂直縁とを備えた保持受枠の、その水平受縁に配設されて、目地の幅方向に沿って延在し、垂直縁方向に向けて下り勾配で傾斜する案内傾斜面を備えた複数の案内部材と、カバー体の一端の下部に配設され、前記案内部材を下方から遊嵌可能な長孔状に形成されて、保持受枠の垂直縁側に位置する孔端が案内部材の案内傾斜面上に当接する挿通孔を備えた複数の連結板部とからなる原位置復帰手段を備えているから、地震等に起因してカバー体が目地方向にずれると、保持受枠の垂直縁側に位置する挿通孔の孔端が案内傾斜面上に一時的に乗り上げる状態となるが、該案内傾斜面が垂直縁方向に向けて下り勾配で傾斜していることにより、カバー体の自重によって挿通孔の孔端が案内傾斜面上を垂直縁方向に向けて滑り落ちてカバー体が原位置に戻る。これにより、保持受枠の垂直縁とカバー体の端縁との間に大きな隙間が生じたままになることを防止することができる。
【0013】
また、案内部材の目地側に、保持受枠の水平受縁に立設された複数の連結杆を夫々配設し、かつ該連結杆の上部に連結板部の挿通孔より広幅の抜け止め部材を着脱可能に装着することにより、カバー体の一端を一方の床の側縁に連結する連結手段とした構成にあっては、カバー体の一端を一方の床の側縁に上下動可能に連結することができるとともに、カバー体の一端が上動しても抜け止め部材が連結板部の挿通孔の孔縁に上方から当接することにより、カバー体の一端の保持受枠からの脱出が防止され、その連結状態を保持することができる。
【0014】
また、案内部材の上部に、連結板部の挿通孔より広幅の抜け止め部材を着脱可能に装着することにより、カバー体の一端を一方の床の側縁に連結する連結手段とした構成にあっては、上記と同様に、カバー体の一端を一方の床の側縁に上下動可能に連結することができるとともに、カバー体の一端が上動しても抜け止め部材が連結板部の挿通孔の孔縁に上方から当接することにより、カバー体の一端の保持受枠からの脱出が防止され、その連結状態を保持することができる。さらに、この構成にあっては、保持受枠の水平受縁に連結杆を立設する必要がないため、連結構造を簡単化することができ、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第一実施例にかかる床用目地カバー装置の施工状態を示す縦断面図である。
【図2】同上の床用目地カバー装置を構成するカバー体Cの縦断面図である。
【図3】同上のカバー体Cと摺動受枠2及び保持受枠19の平面図である。
【図4】要部を縦断した分解斜視図である。
【図5】(A)は要部の拡大縦断面図、(B)は要部の拡大横断面図である。
【図6】要部の作用説明図である。
【図7】(A)は第二実施例にかかる案内部材20を備えた要部の拡大縦断面図、(B)はその拡大横断面図である。
【図8】連結板部18の他の配設態様を示す要部の拡大縦断面図である。
【図9】(A)は従来の連結手段a部分の拡大縦断面図、(B)はその作用状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明にかかる床用目地カバー装置の第一実施例を、図1〜図6に基づいて説明する。
【0017】
図1において、Aは緩衝機能を備えた免震装置(図示省略)によって下部が支持された免震構造の建造物、Bは該建造物Aの周囲に形成された人工地盤からなる建造物であって、目地sを介して隣接している。目地sは、建造物Aの周囲に沿って所定幅で形成され、地震時における建造物Aと周囲の建造物Bとの水平方向の相対的な揺れを吸収し得るようになっている。
【0018】
前記建造物Bの床f2 の側縁には、図1に示すように、後述するカバー体Cの厚みに相当する深さで窪ませた支持段縁1が、目地sの幅方向(図1において左右方向)に所定幅で形成されており、該支持段縁1には摺動受枠2が配設されている。該摺動受枠2は、支持段縁1の上面を覆う水平状の下部受縁3aと、該下部受縁3aの後端から立ち上がり縁3bを介して連成されて床f2 の前部上面を覆う水平状の上部受縁3cとを備えている。この摺動受枠2は、目地sに沿う方向(図1において前後方向)に延在するように配設されており、その長さは複数個のカバー体Cを横に並べて配置し得る長さとなっている。
【0019】
建造物Aの床f1 と建造物Bの床f2 の間には、カバー体Cが差し渡され、目地sを覆っている。該カバー体Cは、目地sに沿う方向に複数個が連続状に配設されるものであって、各カバー体Cは、図1に示すように、その一端が建造物Aの床f1 の側縁に、後述する連結手段27を介して連結されている。各カバー体Cは、他端を自由端としており、該自由端が上述した摺動受枠2が配設された支持段縁1上に摺動可能に乗載されている。
【0020】
各カバー体Cは、図2,図3に示すように、上面が開口した浅底矩形状の充填筐体部5と、該充填筐体部5の前部に配設されて前方へ延出された端部カバー板11とを備えている。充填筐体部5は、ステンレス又はスチールからなる薄肉鋼板が素材に用いられており、矩形状の底板6と、該底板6の目地幅方向に沿う両側縁に夫々立設された左右の側壁板7,7と、前記底板6の後端縁に立設された後壁板8と、前記底板6の前端縁に立設された前壁板9とを備えている。この左右の側壁板7,7と後壁板8の当接縁は溶接を介して固着されている。ここで、左右の側壁板7,7と後壁板8及び前壁板9は、底板6の四辺縁に一体形成された帯板部を上方に向けて略直角に屈曲させることによって設けられている。尚、左右の側壁板7,7と後壁板8及び前壁板9は、底板6と別体形成したものを底板6の四辺縁に溶接を介して固着することにより設けることも可能である。左右の側壁板7,7と後壁板8はその上端縁が内方に向けて帯状に屈曲されており、該屈曲縁が補強縁となっている。また、前記底板6上には、モルタル止めを兼ねた複数の補強杆10が目地sの幅方向に沿って所定間隔で配設されている。該補強杆10は所要箇所が溶接を介して底板6の上面に固着されており、該補強杆10によって底板6の面方向の強度を向上させるようにしている。
【0021】
充填筐体部5の前部に配設された端部カバー板11は、充填筐体部5の肉厚に比して若干厚肉の鋼板を素材に用いて断面L形に形成されており、後端に下方に向けて略直角に屈曲された遮蔽壁部11aを備えている。該端部カバー板11は、遮蔽壁部11aの左右の側端部が、充填筐体部5の側壁板7,7の前端部に溶接を介して固着されており、該遮蔽壁部11aによって充填筐体部5の前部開口が遮蔽されている。また、遮蔽壁部11aの前面には、前記底板6の前端縁に立設された前壁板9が溶接を介して固着されている。
【0022】
尚、各カバー体Cの充填筐体部5内には、施工時に周囲の床f1 ,f2(図1参照)上に敷設されるモルタル12及びタイル13等からなる舗装材26と同じ舗装材26が充填されることとなる。
【0023】
そして、カバー体Cの自由端は、図1に示すように、前壁板9と上述した摺動受枠2の立ち上がり縁3bとの間に適宜幅の間隙が生じるようにして摺動受枠2の下部受縁3aが配設された支持段縁1上に乗載されており、前記間隙を作動間隙15としている。また、端部カバー板11は、建造物Bの床f2 側に向けて突出されて、摺動受枠2の上部受縁3c上に乗載されており、この端部カバー板11によって前記作動間隙15の上方が遮蔽されている。
【0024】
次に、本発明の要部について説明する。
建造物Aの床f1 の側縁に連結されるカバー体Cの一端には、図3〜図5に示すように、底板6の目地幅方向に沿う両側縁の近傍位置に、後述する案内部材20と連結杆22(図4参照)を下方から遊嵌可能な長孔状の挿通孔16,16が目地sの幅方向に沿って形成されている。該挿通孔16,16は、下端部が底板6に溶接された鋼材製の丸パイプからなるモルタル遮断筒17,17によって囲繞されており、この各モルタル遮断筒17で囲繞された底板6の一部領域が、この第一実施例では本発明における挿通孔16を備えた連結板部18となっている。
【0025】
一方、建造物Aの床f1 の側縁上には、目地sに沿う方向に延在するようにして保持受枠19が配設されている。該保持受枠19は、図5に示すように、水平受縁19aと該水平受縁19aの外端から上方に立ち上がる垂直縁19bとを備えた断面L形に形成されており、水平受縁19aの上面には、前記底板6の挿通孔16,16に対応する位置に三角ブロック状の案内部材20,20が配設されている。各案内部材20は、目地sの幅方向に沿って延在し、かつ、保持受枠19の垂直縁19b方向に向けて下り勾配で傾斜して水平受縁19aに達する案内傾斜面21を備えており、下部が溶接を介して水平受縁19aに固着されている。ここで、案内傾斜面21の傾斜角度は、40°〜50°程度の急勾配に設定されており、これによって案内傾斜面21上に乗り上げたカバー体Cの端部を自重によって滑り落とすことができるようになっている。案内部材20,20は、図5に示すように、水平受縁19a上にカバー体Cを構成する充填筐体部5の一端を乗載した状態において、充填筐体部5の底板6に設けられた連結板部18,18の挿通孔16,16に下方から遊嵌されており、保持受枠19の垂直縁19b側に位置する挿通孔16,16の孔端16a,16aが案内傾斜面21,21上に当接されている。そして、この保持受枠19の案内部材20,20と、挿通孔16,16を備えた連結板部18,18とによってカバー体Cの原位置復帰手段が構成されている。また、図5に示すように、水平受縁19a上にカバー体Cを構成する充填筐体部5の一端を乗載した定常状態にあって、保持受枠19の垂直縁19bとカバー体Cの端縁との間に生じる隙間nが2mm程度に設定されており、従来構成よりも狭いものとなっている。
【0026】
また、保持受枠19の水平受縁19aには、その下面側から挿通して該水平受縁19aに溶接を介して固着したボルトからなる複数の連結杆22が、前記連結板部18の挿通孔16,16に対応する位置に夫々立設されている。各連結杆22は、前記案内部材20の目地s側に隣接させて配設されており、該連結杆22と案内部材20とが溶接を介して固着されている。また、各連結杆22の上部は、前記案内部材20より上位となる高さ位置に突出されている。各連結杆22は、図5に示すように、水平受縁19a上にカバー体Cを構成する充填筐体部5の一端を乗載した状態において、前記底板6に設けられた各連結板部18の挿通孔16に下方から遊嵌されており、鍔または座金を備えたナットからなる抜け止め部材23がその上部に螺着により装着されている。該抜け止め部材23は、連結板部18の挿通孔16より広幅に形成されており、これによって、連結板部18の上方への脱出を防止し得るようになっている。そして、この各連結杆22と抜け止め部材23とによって、カバー体Cの一端を建造物Aの床f1 の側縁に連結する連結手段27が構成されている。また、各挿通孔16を囲繞するモルタル遮断筒17の上部は、前記抜け止め部材23の取付け操作を可能とする操作口24(図4参照)となっており、該操作口24には、円筒状の胴部25aを下面に備えた遮蔽蓋25が着脱可能に嵌着されている。
【0027】
次に、かかる構成からなる床用目地カバー装置の作動態様について説明する。
カバー体Cの充填筐体部5内には施工時において、図1に示すように、周囲の床f1 ,f2 上に敷設されるモルタル12及びタイル13等からなる舗装材26と同じ舗装材26が充填される。また、カバー体Cは、舗装材26が充填された充填筐体部5の上面が、建造物Aの床f1 の上面及び建造物Bの床f2 の上面と略面一になるように配設される。そして、地震時において、建造物Aと、隣接する建造物Bとが近接する方向に相対変位すると、カバー体Cの自由端が作動間隙15の範囲内で支持段縁1上を水平に摺動してその相対変位に追従する。
【0028】
また、建造物Aと、隣接する建造物Bとが離れる方向に相対変位すると、カバー体Cは、その自由端が支持段縁1上を、立ち上がり縁3bと逆方向に向けて水平に摺動してその相対変位に追従する。
【0029】
また、建造物Aと、隣接する建造物Bとが前後方向(目地sに沿う方向)に相対変位すると、カバー体Cの自由端は、支持段縁1上を前後方向に摺動してその相対変位に追従する。さらに、建造物Aと、隣接する建造物Bとが上下方向に相対変位すると、カバー体Cは、連結手段27により建造物Aの床f1 の側縁に連結された一端を支点として、建造物Aもしくは隣接する建造物Bの上下動に伴なって傾動して、その相対変位に追従する。
【0030】
かかる構成にあって、地震或いはカバー体C上の通行による振動等に起因してカバー体Cが目地s方向にずれると、図6に示すように、保持受枠19の垂直縁19b側に位置する挿通孔16の孔端16aが案内部材20の案内傾斜面21上に一時的に乗り上げる状態となるが、該案内傾斜面21が垂直縁19b方向に向けて下り勾配で傾斜していることにより、カバー体Cの自重によって挿通孔16の孔端16aが案内傾斜面21上を垂直縁19b方向に向けて滑り落ちてカバー体Cが原位置(図5(A)参照)に戻る。これにより、保持受枠19の垂直縁19bとカバー体Cの端縁との間に大きな隙間が生じたままになることを防止することができる。
【0031】
図7は第二実施例を示し、この第二実施例は、各案内部材20の目地s側の端縁に丸棒状の装着部28を一体形成したものである。装着部28には上端に開口する螺子孔29が形成されており、該螺子孔29に鍔または座金を備えたボルトからなる抜け止め部材23’が上方から螺着により装着されている。該抜け止め部材23’は、連結板部18の挿通孔16より広幅に形成されており、これによって、連結板部18の上方への脱出を防止し得るようになっている。そして、この各案内部材20の抜け止め部材23’によって、カバー体Cの一端を建造物Aの床f1 の側縁に連結する連結手段27が構成されている。その他、第一実施例と共通する構成部分については、第一実施例と同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0032】
かかる構成にあっては、上述した第一実施例と同様に、カバー体Cの一端を建造物Aの床f1 の側縁に上下動可能に連結することができるとともに、カバー体Cの一端が上動しても抜け止め部材23’が連結板部18の挿通孔16の孔縁に上方から当接することにより、カバー体Cの一端の保持受枠19からの脱出が防止され、その連結状態を保持することができる。特に、この構成にあっては、保持受枠19の水平受縁19aに連結杆22(図5参照)を立設する必要がないため、連結構造を簡単化することができ、生産性を向上させることができる。
【0033】
尚、上述した両実施例では、充填筐体部5を備えたカバー体Cにあって、該充填筐体部5の底板6をモルタル遮断筒17で囲繞した一部領域によって挿通孔16を備えた連結板部18を構成するようにしているが、充填筐体部5を備えないカバー体C、例えば図8に示すように、グレーチング基体30の上部に平板状のカバー板31を配設してなるカバー体C等にあっては、別体形成した連結板部18をカバー体Cの一端の下部に接合することにより、連結板部18を設けることができる。
【符号の説明】
【0034】
A 建造物
B 建造物
C カバー体
f1 床
f2 床
s 目地
16 挿通孔
16a 孔端
18 連結板部(原位置復帰手段)
19 保持受枠
19a 水平受縁
19b 垂直縁
20 案内部材(原位置復帰手段)
21 案内傾斜面
22 連結杆
23 抜け止め部材
23’抜け止め部材
27 連結手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する建造物の床相互間の目地に差し渡されるカバー体の一端が、一方の床の側縁に連結手段を介して連結されるとともに、該カバー体の他端を自由端とし、該自由端が他方の床の側縁に摺動可能に乗載されてなる床用目地カバー装置において、
カバー体の一端が乗載される水平受縁と該水平受縁の外端から上方に立ち上がる垂直縁とを備えた保持受枠の、その水平受縁に配設されて、目地の幅方向に沿って延在し、垂直縁方向に向けて下り勾配で傾斜する案内傾斜面を備えた複数の案内部材と、
カバー体の一端の下部に配設され、前記案内部材を下方から遊嵌可能な長孔状に形成されて、保持受枠の垂直縁側に位置する孔端が案内部材の案内傾斜面上に当接する挿通孔を備えた複数の連結板部と
からなる原位置復帰手段を備えてなることを特徴とする床用目地カバー装置。
【請求項2】
案内部材の目地側に、保持受枠の水平受縁に立設された複数の連結杆を夫々配設し、かつ該連結杆の上部に連結板部の挿通孔より広幅の抜け止め部材を着脱可能に装着することにより、カバー体の一端を一方の床の側縁に連結する連結手段が構成されていることを特徴とする請求項1記載の床用目地カバー装置。
【請求項3】
案内部材の上部に、連結板部の挿通孔より広幅の抜け止め部材を着脱可能に装着することにより、カバー体の一端を一方の床の側縁に連結する連結手段が構成されていることを特徴とする請求項1記載の床用目地カバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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