説明

店舗管理システム

【課題】店舗内に配置したショーケースの冷却能力低下の要因を診断して冷却能力を補助する。
【解決手段】診断手段における「着霜」警報を入力した場合(ステップS21:Yes)、バックアップ処理手段は、蒸発器の除霜を行う除霜機能の作動間隔を徐々に広げ、場合によっては完全に止める(ステップS22)。このようにショーケースの冷却能力低下の要因に応じてショーケースの冷却能力を補助する。このため、故障予測の警報を受けてからサービスマンが店舗に到着してメンテナンスを施すまでの時間を確保できるように、ショーケースが故障に至るまでの時間を引き延ばすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、店舗内に配置したショーケース、エアコン、照明などの各種機器を店舗内または店舗外から管理/制御する店舗管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの店舗内に配置したショーケースの負荷に応じて、当該ショーケース以外の機器によってショーケースの冷却機能をバックアップする店舗管理システムの技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−205194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の店舗管理システムでは、例えばショーケースの負荷に応じて空調装置の冷房運転設定温度を規定値よりも下げることで、ショーケースの負荷の増大による冷凍機の運転効率の低下を抑えている。しかしながら、従来の店舗管理システムは、ショーケースの故障の要因に係わらず冷凍機の運転効率の低下を間接的に抑えているだけである。この結果、ショーケースが早期に故障するおそれがある。ショーケースが故障した場合、空調装置だけでのバックアップでは当該ショーケース内の商品温度を管理できないため、例えば故障したショーケース内の商品が溶けて売り物にならなくなることがあり、費用負担やシステムの信用低下を招くことになる。さらに、従来の店舗管理システムでは、ショーケースの負荷に応じて空調装置の冷房運転設定温度を規定値よりも下げたとき、空調装置の作動によって店舗内全体が過剰に冷えて店舗内にいる顧客や店員に不快感を与えるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、店舗内に配置したショーケースの冷却能力低下の要因を診断して冷却能力を補助することができ、また店舗内の環境を損なう事態を防ぐことができる店舗管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る店舗管理システムは、店舗内に配置したショーケースおよび他の機器を管理する店舗管理システムにおいて、前記ショーケースの冷却能力低下の要因を診断する診断手段と、前記診断手段によって診断した冷却能力低下の要因に応じて前記ショーケースの機能をバックアップするバックアップ処理手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に係る店舗管理システムは、上記請求項1において、前記バックアップ処理手段は前記ショーケースに収容した商品を照らす照明を消灯することを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3に係る店舗管理システムは、上記請求項1において、前記バックアップ処理手段は前記ショーケースの蒸発器の除霜を行う除霜機能の作動間隔を徐々に広げる、あるいは前記除霜機能の作動を停止することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4に係る店舗管理システムは、上記請求項1において、前記バックアップ処理手段は前記ショーケースに隣接する他のショーケースの冷却能率を上げてその冷気を前記ショーケースに廻すことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項5に係る店舗管理システムは、上記請求項1において、前記バックアップ処理手段は前記ショーケース内の結露を防ぐ結露防止機能のON/OFF制御での通電時間を徐々に短くすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る店舗管理システムは、診断手段によって診断したショーケースの冷却能力低下の要因に応じ、バックアップ処理手段によってショーケースの機能をバックアップして冷却能力を補助する。このため、故障診断の警報を受けてから、店舗の機器メンテナンスやショーケースの製造メーカーのサービスマンが店舗に到着してメンテナンスを施すまでの時間を確保できるように、ショーケースが故障に至るまでの時間を引き延ばすことができる。この結果、ショーケースが故障して、商品が溶けて売り物にならなくなる事態を防ぐため、費用負担がなくシステムの信頼性を向上できる。さらに、ショーケースの機能をバックアップする処理を行うため、ショーケースの負荷に応じて空調装置の冷房運転設定温度を規定値よりも下げる必要がなくなるので店舗内全体が過剰に冷えて店舗内にいる顧客や店員に不快感を与える事態を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る店舗管理システムの好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
最初に、店舗管理システムの構成について説明する。図1は店舗内の構成を示すブロック図、図2は本発明の店舗管理システムの実施の形態を示す概略図である。
【0014】
図1に示すように店舗100A(店舗100B、店舗100Cも同様である)は、ショーケース(冷凍/冷蔵オープンショーケース)1、エアコン2、自動販売機3、およびセキュリティシステム4、照明装置などを配設した店舗である。例えば、店舗100A〜100Cは、チェーン店化したスーパーマーケットのように、地域的に分散配置された店舗である。
【0015】
上記各店舗100A〜100Cを管理する店舗管理システムは、各店舗100A〜100C内のショーケース1、エアコン2、その他照明などの各種機器に、それぞれ別個のコントローラ11,12,13,14,15を配設し、ネットワークアダプタ(NA)20、ルータ21、およびネットワーク22を介して、店舗内パソコン(以下、店舗内PCという)23や、図2に示す店舗外の情報処理装置(店舗本部サーバ24,サービス本部サーバ25,セキュリティ本部サーバ26,店舗オーナーサーバ27,機器オーナーサーバ28,機器メンテナンス業者サーバ29)と接続するように構成したものである。店舗管理システムでは、各コントローラが、それぞれ管轄する機器からデータを一定時間毎に経時的に集計し、収集したデータを店舗内PC23に送信する。あるいは、収集したデータは、ネットワーク22を介して、店舗外の情報処理装置(24,25,26,27,28,29)に送信するようにしてもよい。なお、上記コントローラは、データ収集専用ではない。
【0016】
図1に示す各店舗100A〜100C内のシステムは、店舗制御コントローラ15、ショーケースコントローラ11、エアコンコントローラ12、蓄熱コントローラ13、照明コントローラ14、自動販売機3、セキュリティシステム4などを、マルチドロップ方式(図示のように、各種コントローラ、自動販売機などを各々経由させて接続させる方式)でネットワークアダプタ20に接続した構成を有し、各機器の状態に係わる情報の通知や指示などを行える。
【0017】
店舗制御コントローラ15は、店舗全体の省エネルギー制御を行うコントローラであり、具体的にはパソコンなどで構成される。ショーケースコントローラ11は、ショーケース1の収容庫31内や冷蔵庫5の庫内商品に対する温度調整を行うために冷凍機7を制御するコントローラである。エアコンコントローラ12は、店舗内を所定の温度に調整するためのエアコン2を冷凍機8を用いて制御するコントローラである。蓄熱コントローラ13は、冷凍機7,8の負荷状態に基づいて、氷を蓄熱する蓄熱槽6を制御するコントローラである。照明コントローラ14は、店舗内の天井などに配設された各種照明機器などを制御するコントローラであり、併せて、ショーケース1の蛍光灯調光をも行う。自動販売機3は、店舗内に設置され、飲料や食品などを販売する、オーナー管理される自動販売機である。なお、かかる自動販売機3は、ショーケースなどとの関連が薄いため、この自動販売機3用のコントローラは設けていない。セキュリティシステム4は、ドア4aに設けられたセンサ、火災報知器4b、防犯装置4cなどからのデータに基づいて店舗全体のセキュリティ管理するシステムである。なお、このセキュリティシステム4は、元々コントローラの機能を有するため、別個にコントローラを設けていない。
【0018】
店舗内PC23は、店舗100A〜100C内に設置されているパソコンであり、店舗で販売する商品の種類、価格などの管理や、売上げの計数の他に、各コントローラから受信した時系列データに基づいて各機器の故障診断/予測およびバックアップ処理を行う。なお、店舗内PC23に付設されたPHSアダプタ231を介して、店舗オーナーサーバ27や機器オーナーサーバ28などに音声メッセージを用いて例えば後述する故障の予測情報などを発信することもできる。
【0019】
コントローラからデータを受信した店舗内PC23や店舗外の情報処理装置は、受信したデータに基づいて後述する各機器の故障診断/予測およびバックアップ処理を行う。情報処理装置として、店舗本部サーバ24は、各店舗100A〜100Cを統括する本部機構の端末装置であり、提供する商品の種別および価格などを各店舗に指示し、また各店舗100A〜100Cの売上げ状況などを把握する。サービス本部サーバ25は、各店舗100A〜100Cが顧客に提供すべきサービスの内容を集中管理する本部機構の端末装置である。セキュリティ本部サーバ26は、各店舗100A〜100Cにおける入退出管理や火災、防犯に係わるセキュリティ機構を統括する本部機構の端末装置である。
【0020】
店舗管理システムでは、単に店舗ごとにその店舗の商品、サービス、セキュリティなどを管理するのではなく、店舗本部サーバ24、サービス本部サーバ25、セキュリティ本部サーバ26という各店舗100A〜100Cに共通の本部機構を設け、各店舗100A〜100Cを機能ごとに集中管理している。また、店舗オーナーサーバ27は、各店舗100A〜100Cのオーナーが所有する端末装置である。機器オーナーサーバ28は、各店舗100A〜100Cに設置されるショーケース1などの機器がメーカーなどからレンタルしたレンタル機器である場合、このレンタル機器のオーナーが所有する端末装置である。機器メンテナンス業者サーバ29は、各店舗100A〜100Cに設置されるショーケース1などの機器を維持・管理するメンテナンス業者が所有する端末装置である。なお、ここでは説明の便宜上、各店舗100A〜100Cの店舗オーナー、機器オーナー、および機器メンテナンス業者は、同一人であるものとする。
【0021】
上述したように、各店舗100A〜100C、店舗本部サーバ24、サービス本部サーバ25、セキュリティ本部サーバ26、店舗オーナーサーバ27、機器オーナーサーバ28、機器メンテナンス業者サーバ29は、それぞれ、ルータ21を介してネットワーク22に接続されている。ネットワーク22は、公衆回線網(電話回線、ISDNなど)やインターネット、ATMを用いるネットワークなどであり、各端末装置はTCP/IPプロトコルを用いた通信を行う。よって、各店舗100A〜100Cと各端末装置との間でインターネット上のファイル転送(FTP)や電子メールの転送を行うことも可能である。
【0022】
なお、各店舗100A〜100C内の各機器の故障診断/予測およびバックアップ処理は、各店舗100A〜100C内の店舗内PC23だけでなく、店舗本部サーバ24、サービス本部サーバ25、セキュリティ本部サーバ26、店舗オーナーサーバ27、機器オーナーサーバ28、機器メンテナンス業者サーバ29などの各端末装置において行わせることもできる。または、ネットワークアダプタ20に行わせるようにしてもよい。
【0023】
ネットワークアダプタ20は、「機器の状態表示/機器の設定入力」などのホームページを提供し、アクセスを許可されている端末装置のブラウザ画面上で、上記のように接続した機器の状態表示や設定を行うことができるようにする機能(以下、ホームページ機能という)と、接続している機器にトラブルなどが発生した場合に自動的に管理者あるいは予め指定/登録されている任意の者に対して、電子メールなどによりトラブル発生を通知する機能(以下、自動メール送信機能という)とを有する。
【0024】
ネットワークアダプタ20を用いることにより、各店舗100A〜100C内の各種機器の監視や管理などを外部(例えば店舗本部サーバ24など)において集中的に行ったり、障害発生などを機器メンテナンス業者サーバ29などに電子メールにより迅速に通知することができる。なお、ネットワークアダプタ20は、シリアル通信ラインを収容するインタフェースを有するオプションボードとして形成し、店舗内PC23などに装着することもできる。また、ネットワークアダプタ20に代えて、ホームページ機能やメール送信機能を有するパソコンなどを配設したり、店舗内の各種機器に直接ネットワークアダプタ20を装着する構成としてもよい。
【0025】
なお、上述した説明では、ショーケースコントローラ11やエアコンコントローラ12などの各種機器をマルチドロップ方式で接続することとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、リング型などの各種のネットワークトポロジーを用いることもできる。また、ネットワーク22を介して店舗100A〜100Cと店舗本部サーバ24などとが通信可能としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば無線通信系、衛星通信などによる伝送路を介して、通信可能とする構成であってもよい。
【0026】
次に、ショーケース1および冷凍機7の構成について説明する。ここでは、ショーケース1としてオープンショーケースを例にして、図3を参照して説明する。図3はショーケースの実施の形態を示す側断面図である。
【0027】
ショーケース1は、基本的に室内(店舗内)に設置してあり、図3に示すようにショーケース1の筐体をなす本体30を有している。本体30には、その一方向に開口31aを有した収容庫31が形成してあり、その開口31aから収容庫31に対して商品の出し入れを行える形状となっている。収容庫31内には、商品を置くための陳列棚32が配置してある。また、収容庫31の開口31aの一側縁(上側縁)には吹出口33が設けてあり、開口31aの他側縁(下側縁)には吸込口34が設けてあって、これら吹出口33および吸込口34は、本体30の筐体内でダクト35を介して繋がっている。さらに、本体30の筐体には、ダクト35に通じる蒸発器36および送風機37が設けてある。蒸発器36は、冷凍機7から送られた低温・低圧の液冷媒を蒸発させて周囲の空気を冷却する。送風機37は冷却された空気をダクト35に送る。
【0028】
また、ショーケース1には、外気温度用サーミスタ38、収容庫内温度用サーミスタ39、温調温度用サーミスタ40、除霜温度用サーミスタ41が設けてある。外気温度用サーミスタ38は、ショーケース1の周囲の温度を検知するための温度センサであり、本体30の外部に配置してある。収容庫内温度用サーミスタ39は、ショーケース1の収容庫31の内部温度を検知するための温度センサであり、収容庫31の内部に配置してある。温調温度用サーミスタ40は、送風機37によりダクト35に送り込まれた空気の温度を検知するための温度センサであり、ダクト35内の吹出口33の近傍に配置してある。除霜温度用サーミスタ41は、蒸発器36の近傍の温度を検知するための温度センサであり、蒸発器36の近傍に配置してある。
【0029】
冷凍機7は、基本的に室外(店舗外)に設置してあり、図3に示すようにショーケース1に対して冷媒配管42を介して接続した圧縮機43および凝縮器44を有している。圧縮機43は、ショーケース1の蒸発器36から供給された低温・低圧の液冷媒を圧縮して高温・高圧のガス冷媒にするものである。凝縮器44は、圧縮機から供給された高温・高圧のガス冷媒を放熱して高温・高圧の液冷媒にしてショーケース1側に送るものである。なお、ショーケース1側に送られた高温・高圧の液冷媒は、不図示の膨張弁によって低温・低圧の液冷媒とされてショーケース1の蒸発器36に送られる。
【0030】
また、冷凍機7には、吸込(低圧)側温度センサ45、吸込(低圧)側圧力センサ46、吐出(高圧)側温度センサ47、吐出(高圧)側圧力センサ48が設けてある。吸込(低圧)側温度センサ45および吸込(低圧)側圧力センサ46は、圧縮機43に供給される以前の低温・低圧のガス冷媒の温度および圧力を測定するセンサである。吐出(高圧)側温度センサ47および吐出(高圧)側圧力センサ48は、圧縮機43によって圧縮された高温・高圧のガス冷媒の温度および圧力を測定するセンサである。
【0031】
冷凍機7は、高温・高圧の液冷媒を生成して、ショーケース1側に供給する。すなわち、冷凍機7により生成された高温・高圧の液冷媒は、冷媒配管42を通り、ショーケース1本体側に供給される。この高温・高圧の液冷媒は、不図示の膨張弁により低温・低圧の液冷媒となり、蒸発器36に送られる。これにより蒸発器36周辺の空気が冷やされる。冷やされた空気は、送風機37によりダクト35に送り込まれ、さらに吹出口33からショーケース1の収容庫31へと送られ、収容庫31内を冷やす。吹出口33から収容庫31に送られた冷気の一部は、図3に矢印で示すようにエアカーテンを形成しつつ吸込口34に吸い込まれる。吸込口34に吸い込まれた冷気は、再び送風機37により送られて冷気の循環を作り出す。
【0032】
ここで、インバータ式冷凍機の場合、負荷の増大、過渡的な外乱により冷凍サイクル機器、電気・電子部品の許容範囲を越えると予想された場合、通常運転制御とは異なる保護制御動作に入る。例えば、吐出(高圧)側圧力が高すぎた場合に運転周波数を減らす、などのような保護制御を行う。このような保護制御を行うことにより、冷凍機7自体の故障は防止することが可能となるが、後述するようなショーケース庫内温度上昇という問題が生じる場合がある。詳しくは後述する。
【0033】
以下に、各種故障が起きた場合の、ショーケース1、冷凍機7に設置した上記各種センサの信号変化特性について説明する。
【0034】
まず、蒸発器36に着霜故障(アイスバンク)が発生した場合について説明する。図4は外気温度用、収容庫内温度用および温調温度用のサーミスタでそれぞれ計測される温度の経時変化の一例を示す図である。
【0035】
図4では、蒸発器36において、霜が完全に除去された状態から、除霜機能の動作により霜を完全に除去できる限界の量まで霜が付着した状態になるまで(さらにその後も)、外気温度用サーミスタ38、収容庫内温度用サーミスタ39、および温調温度用サーミスタ40でそれぞれ計測される温度の経時変化をグラフで示す。図4に示すグラフの縦軸は計測温度、横軸は時間である。
【0036】
図4において、時間t1は霜が完全に除去された状態のとき、時間t2は除去できる限界の量まで霜が付着した状態のときである。外気温度用サーミスタ38は、ショーケース1の周囲の温度を測定するので、蒸発器36への霜の付着状態には影響されない。図4に示す例では、周囲温度はほぼ一定であったものとする。一方、蒸発器36への霜の付着量が増すに従って冷気が送風され難くなるため、収容庫内温度用サーミスタ39および温調温度用サーミスタ40で計測される温度(収容庫31およびダクト35の温度)は、図4に示すように徐々に上昇していく。
【0037】
次に、冷凍機7の凝縮器44の目詰り故障時について説明する。図5は吐出(高圧)側温度センサで計測される冷媒温度の経時変化の一例を示す図、図6は吐出(高圧)側圧力センサで計測される冷媒圧力の経時変化の一例を示す図である。
【0038】
図5では、凝縮器44において、ゴミが完全に除去された状態から、ゴミが詰まった状態になるまでの間(更にその後も)吐出(高圧)側温度センサ47で計測される冷媒温度の経時変化をグラフで示す。図5に示すグラフの横軸は時間、縦軸は温度である。図6では、凝縮器44において、ゴミが完全に除去された状態から、ゴミが詰まった状態になるまでの間(更にその後も)吐出(高圧)側圧力センサ48で計測される冷媒温度の経時変化をグラフで示す。図6に示すグラフの横軸は時間、縦軸は圧力である。
【0039】
図5および図6において、時間t3はゴミが完全に除去された状態のとき、時間t4はゴミが詰まった状態のときである。凝縮器44が目詰まりし伝熱面積が小さくなると、ガス冷媒からの放熱が正常に行われなくなるため、吐出(高圧)側のガス冷媒の温度および圧力は、目詰まりの度合いに応じて上昇する。吐出(高圧)側のガス冷媒の温度および圧力が上昇することで、蒸発器36に導かれる冷媒の温度および圧力も上昇するため、ショーケース1の収容庫31内の温度が上昇してしまう。
【0040】
さらに、蒸発器36から冷凍機7側へ戻る冷媒、すなわち吸込(低圧)側のガス冷媒の温度および圧力も上昇する。このガス冷媒の圧力が上昇すると、インバータ式冷凍機の場合、上記の様に、運転周波数を低くする保護制御動作に入る。保護制御動作に入ることで、冷凍機7は故障を免れるかもしれないが、運転周波数を低くすると、蒸発器36に導かれる冷媒の温度や圧力が更に上昇してしまい、ショーケース1の収容庫31内が全く冷えない状態になってしまう。さらに、このまま運転を続けることで凝縮器44の目詰まりが更に酷くなると、最終的には冷凍機7は高圧圧力異常となり停止する。
【0041】
次に、ガス冷媒の漏れまたは不足時の現象について説明する。図7はガス冷媒の漏れまたは不足時の圧縮機に対する吸込(低圧)側および吐出(高圧)側の圧力値の経時変化の一例を示す図である。
【0042】
図7に示すように吐出(高圧)側圧力は、ガス冷媒漏れの初期には上昇する傾向を示すが、その後、ガス冷媒の漏れまたは不足が多くなると、圧縮機43における圧縮効果が低下するため圧力は徐々に低下していく。一方、吸込(低圧)側圧力は、ガス冷媒の漏れまたは不足の度合いに係わらず、蒸発器36において熱交換が過度に進むため徐々に上昇する。
【0043】
上記のことは、温度(吸込(低圧)側温度、吐出(高圧)側温度)についても同様である。図8は除霜動作が入った後の収容庫内温度および温調温度のプルダウン時間を表わした図である。なお、図8において、収容庫31内の温度は収容庫内温度用サーミスタ39で計測し、温調温度は温調温度用サーミスタ40で計測している。
【0044】
図8の左側にはガス冷媒の漏れ/不足がない状態、右側にはガス冷媒の漏れ/不足がある状態における収容庫31内の温度および温調温度の経時変化を示す。図8の左側に示すようにガス冷媒の漏れ/不足がない状態では、除霜動作が行われることによって収容庫31内の温度および温調温度が急激に上昇するが、除霜動作終了後は急激に低下する。一方、図8の右側に示すようにガス冷媒の漏れ/不足がある状態では、蒸発器36における冷却能力が低下するため、除霜動作終了後、収容庫31内の温度および温調温度が低下するまでのプルダウン時間がかかるようになる。
【0045】
最後に、ショーケースの吹出口33(ハニカム部)のゴミ、ホコリによる目詰まり時について説明する。図9は吹出口にゴミやホコリが付着した場合のショーケースの収容庫内温度および温調温度の温度変化の一例を示す図である。
【0046】
図9に示すように吹出口33にゴミ、ホコリが無い場合、収容庫31内の温度と温調温度との温度差は例えば5℃程度でほぼ一定となっている。これに対し、吹出口33にゴミ、ホコリが付着すると、吹出口33からの風量が低下するため、収容庫31内に冷気が行き渡らなくなり、収容庫31内の温度は上昇する。吹出口33に付着するゴミ、ホコリの量が増えていくに従って、図9に示すように、収容庫31内の温度は徐々に上昇していく。一方、温調温度用サーミスタ40が設置してあるダクト35内までは冷気が行き渡るので、温調温度はゴミ、ホコリの付着前とほとんど変わらない。これより、図9に示すように、収容庫31内の温度と温調温度との温度差は、ゴミ、ホコリの付着前と比べて、次第に大きくなっていく。なお、これは、温度差ではなく温度比で考えた場合でも、同様である。
【0047】
ここで、図10は除霜動作が入った後の収容庫内の温度および温調温度のプルダウン時間を表した図である。図10の左側に示すように、ゴミ、ホコリの付着がない状態では、除霜により上昇した収容庫31内の温度(図10に実線で示す)と温調温度(図10に破線で示す)は、除霜動作終了後、急激に低下する。一方、図10の右側に示すように、ゴミ、ホコリが付着して目詰まりを起こしている状態では、吹出口33からの風量が低下するため、除霜動作後、温調温度のプルダウン時間は、ゴミ、ホコリの付着がない状態のプルダウン時間とほとんど変わらないが、収容庫31内の温度のプルダウン時間は長くなる。
【0048】
以上、ショーケース1および冷凍機7の状態データを検出するための各種センサの信号変化特性が、各種故障が起きた場合にそれぞれどの様になるかを説明した。そして、店舗管理システムでは、これを用いて、故障診断/予測方法を実施する。さらに、店舗管理システムでは、各機器毎/設置場所毎に信号変化特性がバラツクことに対応して、学習処理を行う。これら各処理について以下に説明する。
【0049】
上述したように、図1および図2に示す店舗管理システムでは、各コントローラ(ショーケースコントローラ11など)がそれぞれ管轄する機器(ショーケース1および冷蔵庫5など)のデータ(各種センサの計測データなど)を、一定時間毎に経時的に集計し、収集した時系列データを店舗内PC23に送信する。店舗内PC23(診断手段)は、上記のように送信されてきたデータを用いて、所定期間(学習期間)内に収集したデータに基づいて閾値を決定し、その後はこの閾値を用いて故障診断/予測を行う。
【0050】
図11は診断手段の概略的な機能ブロック図である。図11に示すように診断手段50は、基本データ算出部51、閾値決定部52、故障予測部53を有する。基本データ算出部51は、ネットワークアダプタ20を介して収集した各種機器(ショーケース、エアコンなど)の状態データに基づいて、少なくとも、冷凍機の吐出側圧力と、ショーケース1の温調温度のプルダウン時間と、ショーケース1の庫内温度と温調温度のプルダウン時間の差という各種基本データを算出する。
【0051】
閾値決定部52は、所定の学習期間内において上記基本データ算出部51により算出された各種基本データを蓄積し、この蓄積した各種基本データを用いて各種機器毎にその各種故障発生を予測するための各種閾値を決定する。
【0052】
故障予測部53は、上記学習期間後において、基本データ算出部51で算出された各種基本データを、閾値決定部52で決定された各種閾値と比較することにより、故障が起こるか否かを予測する。そして、予測結果を出力、表示、通知などさせる。
【0053】
診断手段50による故障予測方法について説明する。図12は学習期間における学習/閾値決定(学習処理)の手順を示すフローチャート、図13は故障診断/予測処理の手順を示すフローチャートである。なお、ここでは、ショーケースコントローラ11が管轄する機器(ショーケース1および冷蔵庫5)の故障診断/予測であって、ショーケース1を例にして説明する。この例では、学習の開始日は、例えばあるショーケース1(ショーケース1と冷凍機7)を新たに店舗に設置して電源を入れた日とする。あるいは、電源投入後、数日運転を行って動作が安定したのを見計らって学習を開始するようにしてもよい。また、この例では、学習開始日を「n月m日」とする。また、学習期間は、この例では2週間とする。
【0054】
図12に示すようにn月m日において、上述した各種センサからの計測データのうち、収容庫内温度用サーミスタ39により計測されたショーケース1の収容庫31内の温度、温調温度用サーミスタ40により計測された温調温度、および冷凍機7側に設けられている吐出(高圧)側圧力センサ48により計測された吐出(高圧)側圧力のデータに基づいて、以下の(1)〜(4)を算出する処理を行う(ステップS1)。なお、(1)はショーケース1の収容庫31内の温度の変化率、(2)は冷凍機7の吐出(高圧)側圧力、(3)はショーケースの温調温度のプルダウン時間、(4)は収容庫31内の温度と温調温度のプルダウン時間の差である。
【0055】
次に、(1)ショーケースの収容庫31内の温度の変化率が、予め設定される所定の閾値(以下、閾値Aとする)以上であるか否かを判定する(ステップS2)。閾値A以上であった場合には(ステップS2:YES)、蒸発器36に、あるレベル以上(例えば、除霜動作で除去できる限界量以上)の霜が付着したものとし、「着霜」警報を発する(ステップS3)。ここで、ショーケース1においては、通常、新しい商品の補充作業が行われた場合や、周囲の空気の変動などに影響されて、収容庫31内の温度が一時的に上昇する場合がある。このため、収容庫31内の温度の変化率が閾値A以上になったときに直ちに警報を発すると、誤報となってしまうおそれがある。そこで、収容庫31内の温度の変化率が閾値A以上になった後に一定時間以上収容庫31内の温度が下がらなかった場合に、「着霜」警報を発するようにしてもよい。なお、このような「着霜」警報が発せられる状態では、正しいデータが収集できないかもしれないので、警報が解除されるまで学習処理を中断するようにしてもよい。
【0056】
(1)以外については((2),(3),(4))、算出後に判定処理を行うものではなく、算出結果を記憶/蓄積していき(その日(n月m日)1日中)、後に後述するステップS5の処理に用いる。
【0057】
以上が、1日分(n月m日)の処理であり、翌日(n月m+1日)からも同じ処理を行っていく(ステップS4)。すなわち、毎日、一定時間毎に上述した(1),(2),(3),(4)を算出する処理を行い、(1)については上記ステップS2と同様に着霜判定を実施して、必要に応じて「着霜」警報を発し、(2),(3),(4)については算出結果を記憶/蓄積していく。
【0058】
そして、1週間後、この1週間(n月m日〜n月m+6日)に蓄積した上記(2),(3),(4)の算出結果に基づいて、それぞれの1週間分の平均値を求める(ステップS5)。なお、平均値を求めた後は、記憶/蓄積してあったデータを消去すれば、当該診断手段50で必要な記憶容量が少なくて済む。
【0059】
翌週(n月m+7日〜n月m+14日)についても、同様に、毎日、上記ステップS1およびステップS2と同様の処理を実施していき(ステップS6)、最後にこの1週間(n月m+7日〜n月m+14日)に蓄積した(2),(3),(4)の算出結果に基づいて、それぞれの1週間分の平均値を求める(ステップS7)。
【0060】
以上で、第1週目の(2),(3),(4)の平均値、すなわち、冷凍器の吐出(高圧)側圧力の平均値:P(n月m日〜n月m+6日)、ショーケースの温調温度のプルダウン時間の平均値:T1(n月m日〜n月m+6日)、およびショーケース1の収容庫31内の温度と温調温度のプルダウン時間の差の平均値:T2(n月m日〜n月m+6日)と、第2週目の(2)、(3)、(4)の平均値、すなわち、冷凍器の吐出(高圧)側圧力の平均値:P(n月m+7日〜n月m+14日)、ショーケースの温調温度のプルダウン時間の平均値:T1(n月m+7日〜n月m+14日)、およびショーケース1の収容庫31内の温度と温調温度のプルダウン時間の差の平均値:T2(n月m+7日〜n月m+14日)とが求められ、これに基づいて以下に説明するステップS8〜S10の計算を行って、閾値C、Dを求める。
【0061】
まず、第1週目から第2週目までの、(2),(3),(4)の平均値の差(絶対値)を算出する(ステップS8)。これは、既に各週毎の(2),(3),(4)の平均値を算出してあるので、この差の絶対値を求めることで、1週間あたりのデータの平均値の差(変化傾向)ΔP,ΔT1,ΔT2が求まる。
【0062】
なお、第1週目と第2週目の平均値にほとんど差がない場合も考えられる(極端な場合、ΔPが「0」であった場合、以下の係数αを求める式が成立しなくなる)。よって、ΔP,ΔT1,ΔT2の少なくともいずれか1つについて、予め適当と思われる閾値を決めておき、閾値を越えなかった場合には、以下のステップS9以降の処理を行わず、第3週目について上述したデータ収集/平均値算出処理を行い、第1週目と第3週目(もしくは、第2週目と第3週目)との間で上記ΔP,ΔT1,ΔT2を求めるようにする。これでもまだ閾値を越えない場合には、引続き第4週目以降も、同様の処理を行っていく。
【0063】
次に、ショーケースの温調温度のプルダウン時間の閾値Cと、ショーケース1の収容庫31内の温度と温調温度のプルダウン時間差の閾値Dを求めるための係数αを、以下の式により求める(ステップS9)。
【0064】
係数α=(吐出(高圧)側圧力の閾値B−Pmax)/ΔP(Pmax:冷凍器の吐出(高圧)側圧力の平均値においてPの第1週目と第2週目のいずれか大きいほう)。ここで、上述してあるように、あるインバータ式冷凍機においては、吐出(高圧)側圧力が高すぎた場合に運転周波数を減らすなどのような保護制御動作に入るが、この保護制御動作に入るときの吐出(高圧)側圧力を基準として、これに任意の係数β(≦1)を乗じた値を、上記閾値Bとして予め求め設定しておく。なお、保護制御機能が備っていない冷凍機の場合には、その冷凍機が異常停止する圧力値を基準として、これに任意の係数γ(<1)を乗じた値を閾値Bとする。
【0065】
そして、求めた係数αを用いて、以下の式により、ショーケースの温調温度のプルダウン時間の閾値Cと、ショーケースの庫内温度と温調温度のプルダウン時間差の閾値Dを、それぞれ求める(ステップS10)。
【0066】
C=T1max+α×ΔT1D=T2max+α×ΔT2(T1max:ショーケースの温調温度のプルダウン時間の平均値においてT1の第1週目と第2週目のいずれか大きいほう、T2max:ショーケース1の収容庫31内の温度と温調温度のプルダウン時間の差の平均値においてT2の第1週目と第2週目のいずれか大きいほう)。以上で学習期間の処理は終了し、その後は求めた閾値B、C、Dを用いて、以下に説明する故障診断/予測処理を行う。
【0067】
なお、上述した実施の形態の説明では、第1週目と第2週目という1週間単位で平均値を算出し、これに基づいて処理を行ったが、勿論これに限る必要はなく、例えば5日単位、10日単位、2週間単位などとしてもよい。また、ステップS10におけるC、Dの算出式において、例えば予め設定される所定の補正係数p,qを用いて、p×α,q×αを求め、これらをαの代わりに用いて、C,Dを求めるようにしてもよい。
【0068】
その後、診断手段50は、故障診断/予測処理を行う。なお、図13に示す故障診断/予測処理は、上記学習処理がn月m+14日で完了し、その翌日(n月m+15日)から開始されるものとして説明する。
【0069】
図13に示すようにn月m+15日においても、学習期間中のステップS1と同様に、各センサからの測定値を読み込んで、上記(1),(2),(3),(4)の値を算出する(ステップS11)。
【0070】
そして、(1)ショーケース1の収容庫31内の温度の変化率、については、図12のステップS2と同様、閾値A以上であるか否かを判定し、閾値A以上となった場合は「着霜」警報を発する。
【0071】
同様に、(2)冷凍機7の吐出(高圧)側圧力、が閾値B以上であるか否かを判定し(ステップS12)、閾値B以上となった場合には「凝縮器熱交換性能低下」の警報を発する(ステップS13)。(3)ショーケースの温調温度のプルダウン時間、が閾値C以上であるか否かを判定し(ステップS14)、閾値C以上となった場合には「冷却性能低下」の警報を発する(ステップS15)。(4)収容庫31内の温度と温調温度のプルダウン時間の差、が閾値D以上であるか否かを判定し(ステップS16)、閾値D以上となった場合には「吹出口目詰まり」の警報を発する(ステップS17)。
【0072】
以後、毎日、上記ステップS11〜ステップS17の処理を行っていく(ステップS18)。基本的には、一旦、学習処理で閾値を決定すれば、以後ずっと、毎日、上記ステップS11〜ステップS17の処理を繰り返していけばよいが、例えば誤報が多いというような問題が起こった場合には、再度学習処理を行わせる。あるいは、これに限らず、定期的に学習処理を行わせて、閾値を再設定させるようにしてもよい。
【0073】
以上、診断手段50による故障診断/予測方法を説明した。そして、店舗管理システムでは、これを用いて、以下に説明するバックアップ処理を行う。このバックアップ処理ついて以下に説明する。
【0074】
店舗管理システムでは、診断手段50による故障診断/予測情報を用い、店舗内PC23(バックアップ処理手段)によって、ショーケース1の故障(冷却能力低下)の要因に応じたバックアップ処理を行う。
【0075】
図14はバックアップ処理手段の概略的な機能ブロック図である。図14に示すようにバックアップ処理手段60は、診断手段50から故障診断/予測情報を入力し、当該情報からショーケース1の故障(冷却能力低下)の要因に応じてバックアップ処理の方法を決定し、その結果をショーケースコントローラ11や照明コントローラ14に対して出力するバックアップ処理決定部61を有する。
【0076】
バックアップ処理手段60によるバックアップ処理について説明する。図15のフローチャートに示すように診断手段50における「着霜」警報を入力した場合(ステップS21:Yes)、バックアップ処理手段60は、蒸発器36の除霜を行う除霜機能(ヒータ)の作動間隔を徐々に広げ、場合によっては完全に止める(ステップS22)。例えば定期的(6時間毎)に通電することで実施している除霜の作動間隔を、9時間毎,12時間毎,15時間毎,…,24時間毎などのように徐々に広げ、場合によっては止める。このため、除霜時に発生する熱による収容庫31内の温度上昇を防ぐことになる。あるいは、ショーケース1に隣接する他のショーケースがある場合、図16のフローチャートに示すように診断手段50における「着霜」警報を入力したとき(ステップS23:Yes)、バックアップ処理手段60は、他のショーケースの冷却能力を通常運転時よりも上げ、余分に冷やされた空気を該当するショーケースに廻す(ステップS24)。このため、除霜時に発生する熱による収容庫31内の温度上昇を最小限に止めることになる。
【0077】
また、図17のフローチャートに示すように診断手段50における「吹出口目詰まり」の警報を入力した場合(ステップS25:Yes)、バックアップ処理手段60は、収容庫内温度用サーミスタ39によって収容庫31内の温度を監視しながら徐々に陳列棚32に設けた照明(図示せず)を消灯する(ステップS26)。このため、陳列棚32に載置した商品へ放熱する熱の発生を防ぐ。すなわち、吹出口33に目詰まりが生じると、収容庫31内に冷気が十分に行き渡らなくなって収容庫31内の温度が上昇していくことが予想される。そこで、上記のごとく照明を消灯することによって商品への放熱を防ぐ。なお、吹出口33の目詰まり意外に、冷凍機7のガス冷媒漏れがあった場合にも収容庫31内に冷気が十分に行き渡らなくなって収容庫31内の温度が上昇していくことが予想されるので、同様に収容庫内温度用サーミスタ39によって収容庫31内の温度を監視しながら徐々に陳列棚32に設けた照明(図示せず)を消灯すれば、陳列棚32に載置した商品へ放熱する熱の発生を防ぐことができる。
【0078】
また、図には明示しないが扉付きショーケースやウォークインタイプのショーケースなどのように扉を有している場合では、扉の結露を防ぐために結露防止機構を有している。結露防止機能は、蒸発器36のヒータのON/OFF制御を行うことで結露の発生を防いでいる。この構成において、図18のフローチャートに示すように診断手段50における「冷却性能低下」の警報を入力した場合(ステップS27:Yes)、バックアップ処理手段60は、結露防止機能のON/OFF制御での通電時間を徐々に短くする(ステップS28)。例えば通電時間のONデューティーを100%から80%,50%,30%,0%と徐々に下げることで、結露防止時に発生する熱による収容庫31内の温度上昇を防ぐ。
【0079】
なお、バックアップ処理手段60による上記処理方法の内、どの方法を適用するかは、その時の故障診断/予測の状況によって、各方法を適宜組み合わせてもよい。
【0080】
このように、上述した店舗管理システムでは、診断手段50によって診断したショーケース1の故障(冷却能力低下)の要因に応じ、バックアップ処理手段60によってショーケース1の機能のバックアップを行う。すなわち、ショーケースの冷却能力を補助する。このため、故障予測の警報を受けてから、店舗の機器メンテナンスやショーケース1の製造メーカーのサービスマンが店舗に到着してメンテナンスを施すまでの時間を確保できるように、ショーケースが故障に至るまでの時間を引き延ばすことが可能になる。
【0081】
この結果、ショーケース1が故障して、商品が溶けて売り物にならなくなる事態を防ぐため、費用負担がなくシステムの信頼性を向上することが可能になる。さらに、従来の店舗管理システムのように、ショーケースの負荷に応じて空調装置の冷房運転設定温度を規定値よりも下げる制御を行なわずに、ショーケース1の機能を用いたバックアップ処理を行うので、空調装置の作動によって店舗内全体が過剰に冷えて店舗内にいる顧客や店員に不快感を与えるようなことがない。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】店舗内の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の店舗管理システムの実施の形態を示す概略図である。
【図3】ショーケースの実施の形態を示す側断面図である。
【図4】外気温度用、収容庫内温度用および温調温度用のサーミスタでそれぞれ計測される温度の経時変化の一例を示す図である。
【図5】吐出(高圧)側温度センサで計測される冷媒温度の経時変化の一例を示す図である。
【図6】吐出(高圧)側圧力センサで計測される冷媒圧力の経時変化の一例を示す図である。
【図7】ガス冷媒の漏れまたは不足時の圧縮機に対する吸込(低圧)側および吐出(高圧)側の圧力値の経時変化の一例を示す図である。
【図8】除霜動作が入った後の収容庫内温度および温調温度のプルダウン時間を表わした図である。
【図9】吹出口にゴミやホコリが付着した場合のショーケースの収容庫内温度および温調温度の温度変化の一例を示す図である。
【図10】除霜動作が入った後の収容庫内の温度および温調温度のプルダウン時間を表した図である。
【図11】診断手段の概略的な機能ブロック図である。
【図12】学習期間における学習/閾値決定(学習処理)の手順を示すフローチャートである。
【図13】故障予測処理の手順を示すフローチャートである。
【図14】バックアップ処理手段の概略的な機能ブロック図である。
【図15】バックアップ処理手段の手順を示すフローチャートである。
【図16】バックアップ処理手段の手順を示すフローチャートである。
【図17】バックアップ処理手段の手順を示すフローチャートである。
【図18】バックアップ処理手段の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0083】
1 ショーケース
2 エアコン
3 自動販売機
4 セキュリティシステム
4a ドア
4b 火災報知器
4c 防犯装置
5 冷蔵庫
6 蓄熱槽
7 冷凍機
8 冷凍機
11 ショーケースコントローラ
12 エアコンコントローラ
13 蓄熱コントローラ
14 照明コントローラ
15 店舗制御コントローラ
20 ネットワークアダプタ
21 ルータ
22 ネットワーク
23 店舗内PC
231 アダプタ
24 店舗本部サーバ
25 サービス本部サーバ
26 セキュリティ本部サーバ
27 店舗オーナーサーバ
28 機器オーナーサーバ
29 機器メンテナンス業者サーバ
30 本体
31 収容庫
31a 開口
32 陳列棚
33 吹出口
34 吸込口
35 ダクト
36 蒸発器
37 送風機
38 外気温度用サーミスタ
39 収容庫内温度用サーミスタ
40 温調温度用サーミスタ
41 除霜温度用サーミスタ
42 冷媒配管
43 圧縮機
44 凝縮器
45 吸込(低圧)側温度センサ
46 吸込(低圧)側圧力センサ
47 吐出(高圧)側温度センサ
48 吐出(高圧)側圧力センサ
50 診断手段
51 基本データ算出部
52 閾値決定部
53 故障予測部
60 バックアップ処理手段
61 バックアップ処理決定部
100A,100B,100C 店舗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
店舗内に配置したショーケースおよび他の機器を管理する店舗管理システムにおいて、
前記ショーケースの冷却能力低下の要因を診断する診断手段と、
前記診断手段によって診断した冷却能力低下の要因に応じて前記ショーケースの機能をバックアップするバックアップ処理手段と
を備えたことを特徴とする店舗管理システム。
【請求項2】
前記バックアップ処理手段は前記ショーケースに収容した商品を照らす照明を消灯することを特徴とする請求項1に記載の店舗管理システム。
【請求項3】
前記バックアップ処理手段は前記ショーケースの蒸発器の除霜を行う除霜機能の作動間隔を徐々に広げる、あるいは前記除霜機能の作動を停止することを特徴とする請求項1に記載の店舗管理システム。
【請求項4】
前記バックアップ処理手段は前記ショーケースに隣接する他のショーケースの冷却能率を上げてその冷気を前記ショーケースに廻すことを特徴とする請求項1に記載の店舗管理システム。
【請求項5】
前記バックアップ処理手段は前記ショーケース内の結露を防ぐ結露防止機能のON/OFF制御での通電時間を徐々に短くすることを特徴とする請求項1に記載の店舗管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−300356(P2006−300356A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−118632(P2005−118632)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】