説明

座席利用状況管理システム

【課題】 可能な限り省力化しつつ、正当な乗車券で座席が利用されているか否かを確認可能にする。
【解決手段】 座席に対応して設けられ、乗車券情報を保持する可搬情報処理媒体と通信してデータの読み書きをするリーダ/ライタ(3)と、リーダ/ライタにより制御され、座席の利用状態、座席利用の可否に応じて表示態様を変える座席に対応して設けられた表示手段(3a、3b、3c)と、位置情報システム(1)から運行情報を取得するとともに、前記リーダ/ライタとの間で相互に情報を送受信する座席管理装置(2)とを備え、前記リーダ/ライタは、可搬情報処理媒体から読み取った乗車券情報と、座席管理装置から受信した運行情報とに基づいて表示手段による表示態様を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席に対応して設けられ、ICカード等の可搬情報処理媒体と通信可能なリーダ/ライタと相互に情報を送受信する座席管理装置を備えた座席利用状況管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ラッシュアワー等の混雑時であってもゆとりを持って乗車したい顧客のために、普通列車グリーン車が増大しつつある。グリーン車への乗客に対しては、グリーン乗車券を購入しているか否か乗務員がチェックして不正な利用を防止する方式が取られている。また、ラッシュアワー等の混雑時でも座って通勤できるようにするライナー列車も運転されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
乗務員がチェックする方式では、グリーン車が増えると乗務員の負担が増大し、乗務員を増やさなければならない。しかし、経営合理化の面から乗務員を増やすことはできず、なるべく座席管理の機械化を図ることが要請されている。
【0004】
ホームライナーではホームに設置した発券機で座席数だけの券を発券し、乗車する時に駅係員がチェックする方式をとっており、人手を要する点では同じである。なお、ホームライナーでは、各停車駅において予め決められた枚数のライナー券を発売しているため、後発の駅では先発の駅で何枚売れたかが分からず、予め割り当てられた枚数以上のライナー券を売ることができない不都合があった。この対策として、列車の指定席券情報を座席管理サーバで管理して指定券を発売できるようにしたシステムも提案されている(特許文献1)が、車上においてのチェックは行われないため、正しい乗車券で座席が利用されているか否かは確認できない。
【特許文献1】特開2003−281572号公報
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決しようとするもので、可能な限り省力化しつつ、正当な乗車券で座席が利用されているか否か確認可能にすることを目的とする。
そのために本発明は、座席に対応して設けられ、乗車券情報を保持する可搬情報処理媒体と通信してデータの読み書きをするリーダ/ライタと、
前記リーダ/ライタにより制御され、座席の利用状態、座席利用の可否に応じて表示態様を変える座席に対応して設けられた表示手段と、
位置情報システムから運行情報を取得するとともに、前記リーダ/ライタとの間で相互に情報を送受信する座席管理装置とを備え、
前記リーダ/ライタは、可搬情報処理媒体から読み取った乗車券情報と、座席管理装置から受信した運行情報とに基づいて前記表示手段による表示態様を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、座席に対応して設置されたリーダ/ライタで可搬情報処理媒体に格納された乗車券情報を読み取って正当な乗車券か否か判定し、判定結果に応じた表示を行うようにしたので人手による車内改札をせずに正当な乗車券で座席が利用されているか否かが一目で確認でき、また、各リーダ/ライタの情報を車上の座席管理装置に送信することにより、座席の利用状況が正確に把握できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下では普通列車のグリーン車を例にとって説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、座席を管理する必要のある車両、バス等にも適用可能である。また、以下では乗車券情報(運賃、料金を含む)を保持する可搬情報処理媒体として非接触ICカードを例にとって説明するが、可搬情報処理媒体はこれに限定されるものではなく、接触式ICカード、携帯電話、PDA等、リーダ/ライタと接触式或いは非接触式に通信可能な任意の電子装置を含むものである。
【0008】
図1は車上に搭載される座席利用状況管理システムの例を説明する概念図、図2は非接触ICカードのメモリ領域の内容を示す図である。
1は列車がどこを走行しているかを管理している列車位置情報システムであり、列車が運行される線区と走行する方向、始発駅/終着駅等の運行情報を保持し、車輪の回転から列車がどの位置にいるかの情報を取得している。そして、各駅での列車のドアの開閉信号によって走行位置がどの区間にあるかの位置情報を更新している。もちろん、列車位置情報システムに代えてGPSシステム等により対象となる車両、バス等の位置情報等を取得するようにしてもよい。
【0009】
2は普通列車のグリーン車座席利用状況を管理する座席管理装置であり、列車位置情報システム1から列車の位置情報、列車情報(行き先や駅順情報)等の運行情報を取得し、また、各グリーン車座席に対応して設置された各リーダ/ライタ3と接続されて座席利用状況、即ちどの座席が利用され、どの座席が空席であるか等を管理している。また、グリーン定期券による優先座席の管理も行っており、グリーン座席の一部を優先使用するように管理している。
【0010】
3はグリーン車の各座席に対応して設置されるリーダ/ライタであり、グリーン券等の乗車券情報を保持する非接触ICカードと通信してデータの読み書きを行い、非接触ICカードのデータを読み取ってグリーン券が有効か否か判定し、判定結果をランプで表示する機能を有している。また、非接触ICカードとの通信において、乗車時には乗車駅名を書き込み、降車時には降車駅名を上書きする。
【0011】
リーダ/ライタ3に接続されるランプは、図示の例では、赤ランプ3a、黄ランプ3b、青ランプ3cからなり、全て空席のときは赤ランプ3aが点灯している。黄ランプ3bは、座席管理装置2からグリーン定期券による優先座席であることの情報がリーダ/ライタ3に送信されたとき点灯し、この座席はグリーン定期券でのみ乗車可能であることを表示する。青ランプ3cは正当なグリーン券であれば点灯する。これら、ランプは列車位置情報システムから送信される運行情報における終着駅において、全て初期状態に設定(リセット)される(全て赤ランプ点灯)。なお、本実施例では赤ランプ、黄ランプ、青ランプによる点灯色で座席利用状況が判るようにしているが、このような色表示に代えて文字による表示等、他の任意の表示形態を用いてもよく、さらに音声等を付加して報知するようにしてもよい。
【0012】
非接触ICカードは、図2に示すように、カードID、定期券情報、SF(Stored Fare )券情報、グリーン券情報等をメモリ領域に書き込むためのカードであり、例えば、駅に設置された券売機で購入する、或いはSF券残額より支払う等により、グリーン券情報が電子チケットとして書き込まれる(チャージされる)。
【0013】
4はアテンダント(乗務員)が保持する発券端末(ここでは点灯するランプの色を変えるので発券色変え端末と呼ぶこともできる)で、座席管理装置2から座席利用状況の情報を受信し、一覧表示して座席利用状況を一目で知ることができる機能を有している。また、発券端末が保持する座席利用情報を座席管理装置からリーダ/ライタへ送信し、受信したリーダ/ライタでは受信した情報に基づいて表示手段を制御する。なお、座席管理装置から受信した座席利用状況の情報を座席管理装置2のバックアップ用として発券端末のメモリに保持することにより、万一座席管理装置が機能しなくなった場合にも対応することが可能である。
【0014】
発券端末4は、グリーン座席が空席であるのに赤ランプが消灯し、青ランプが点灯している場合には強制的に青ランプを消灯し、赤ランプを点灯する信号を座席管理装置2を介してリーダ/ライタ3へ送ることができ、座席管理装置2からこの信号を受信したリーダ/ライタ3は青ランプを消灯し、赤ランプを点灯する。また、乗客が磁気グリーン券を購入し、この券を赤ランプが点灯しているグリーン座席のリーダ/ライタ3にかざしてもリーダ/ライタ3は読み取ることができないため赤ランプは消灯せず、青ランプは点灯しない。このような場合、発券端末4は、磁気グリーン券が有効券であることを条件に、赤ランプを消灯し、青ランプを点灯する信号を座席管理装置2へ送り、この信号を座席管理装置2からリーダ/ライタ3へ転送することにより赤ランプを消灯し、青ランプを点灯して着座を可能にする。また、空席があった場合にグリーン券を販売する発券機能も有しており、グリーン券を販売した場合には、着席利用情報(乗車区間、着席位置が分かればその座席番号)を座席管理装置2へ転送する。
【0015】
5はアテンダント(乗務員)が保持し、乗客が保持する非接触ICカードのデータの読み書きをするための端末であり、例えば、乗客が保持する非接触ICカードの情報を読み取ってグリーン券の有効性を確認し、利用済みであることを示す入鋏情報を書き込む機能を有しており、グリーン車が満席で立っている乗客がいる場合、その乗客が保持するグリーン券に入鋏するなどに使用され、そのため図では入鋏端末として表示しているが、入鋏以外にもデータの読み書きに使用される。。
【0016】
次に、本システムの動作について説明する。
グリーン車座席を利用するために、駅の券売機でグリーン券をチャージした非接触ICカードを、乗客が赤ランプの点灯しているリーダ/ライタ3(空席)にかざすと、リーダ/ライタ3はグリーン券の情報(発駅、着駅、利用期限、とり得る線区の情報、カードID等)を読み取り、同時に乗車駅名を書き込む。そして、読み取ったグリーン券の情報と座席管理装置2から取得した列車位置等の運行情報とを照合し、グリーン券が有効であれば赤ランプ3aを消灯し、青ランプ3cを点灯する。また、グリーン券が有効でなければ赤ランプ3aが点灯する。また、例えば、乗り越した時や間違えてグリーン券の内容と異なる線区に行ってしまった時(例えば、上野駅から高崎駅まで乗車すべきところ、東北線に乗車し、そのまま大宮駅を通過した時)、青ランプを消灯して赤ランプを点灯させることにより、乗り越し、乗車線区の間違いを警告する。
【0017】
したがって、青ランプが点灯して着座していれば正当なグリーン券での着座、赤ランプが点灯したまま着座していれば正当でないグリーン券での着座であることが一目で認識できる。そして、着駅において乗客が非接触ICカードをリーダ/ライタ3にかざすと、青ランプ3cが消灯し、赤ランプ3aが点灯し、このとき非接触ICカードの乗車駅名は降車駅名に上書きされる。
【0018】
優先座席の場合は、さらに黄ランプ3bが点灯する以外は、他の通常の座席と同様な表示形態となり、例えば、有効な(期間、区間とも)グリーン定期券であれば黄ランプ3bと青ランプ3cが点灯し、有効でないグリーン定期券であると黄ランプ3bとともに赤ランプ3aが点灯する。
【0019】
各リーダ/ライタのランプの点灯、消灯の情報は座席管理装置2に送信されて管理され、ディスプレイに座席の利用状況を表示することにより座席の利用状況を一目で把握することができる。
【0020】
次に、乗り換え、乗り継ぎ、重複乗車等について説明する。
乗り換えについて説明すると、本システムでは、グリーン券の発駅と着駅の区間内であれば、戻らないことを条件に乗換は自由である。例えば、乗車した列車が混んでいるので一旦降車し、降車駅、或いは降車駅よりさらに着駅側の任意の駅で次の列車に乗り、グリーン車に空席があればリーダ/ライタにICカードをかざすことにより着座することができる。この場合、降車時に非接触ICカードにはリーダ/ライタより降車駅名が書き込まれ、乗り換え時に非接触ICカードをリーダ/ライタにかざすと、リーダ/ライタは降車駅名を読み取り、乗車駅が降車駅より戻っていないか否かを確認している。
【0021】
次に、乗り継ぎについて説明すると、図3において、グリーン車を利用して宇都宮から上野へ向かう列車(東北線)に乗り、新宿へ行こうとする場合を想定すると、高崎から大宮、赤羽を経由して新宿駅へ行く列車に大宮駅または赤羽駅で乗り継ぎ、その列車のグリーン車に空席があればリーダ/ライタにICカードをかざすことにより正当に着座することができる。この場合も、降車時に非接触ICカードにはリーダ/ライタより降車駅名が上書きされ、乗り継ぎ時に非接触ICカードをリーダ/ライタにかざすと、リーダ/ライタは降車駅名を読み取り、乗車駅が降車駅より手前側(発駅側)か否かを確認し、乗車駅が降車駅かそれより着駅側の駅であれば正当であると認識する。そして、乗車時に降車駅名を乗車駅名に上書きする。
【0022】
次に、重複乗車禁止について説明すると、リーダ/ライタは非接触ICカードのグリーン券情報を読み取ったときに、グリーン券に対して乗車駅名を書き込み、降車するときに乗車駅名を降車駅名で上書きする。例えば、図4に示すように、上野から高崎へ行く場合に、一旦熊谷で降車すると、乗車時に非接触ICカードに書き込まれた駅名「上野」は「熊谷」で上書される。次いで、他の列車で熊谷から上野方面へ向かい、大宮で再度高崎方面行きに乗車し、非接触ICカードをリーダ/ライタにかざすと、リーダ/ライタは記録されている降車駅名を読み取り、乗車駅である大宮駅が降車駅(熊谷)より手前側(発駅側)であることを検出する。このとき、リーダ/ライタ3は同一線区を複数回乗車した重複乗車であると認識し、赤ランプ3aを点灯して正当なグリーン券での乗車ではないことを表示する。
【0023】
次に、乗車方向の判定について説明すると、リーダ/ライタ3は、グリーン券情報の発駅と着駅のパターンが、列車の運行情報から得られる列車の通る駅のパターンで定義される方向(列車が走行する方向)と合っているか否か判断し、グリーン券の方向と列車が走行する方向とが合っていない場合、発駅と着駅の区間内であっても赤ランプ3aを点灯して警告する。
【0024】
次に、座席変更の管理について説明すると、リーダ/ライタ3では非接触ICカードの情報を読み取って青ランプを点灯させたとき、カードID(識別番号)を読み取って登録し、この情報を座席管理装置2に送信している。このため、例えば、座席1番を利用しているA氏のカードIDが「0000」であったとし、青ランプが点灯している座席2番においてカードID「0000」が検出されると、座席管理装置2はA氏が座席1番から座席2番に席移動したと判定する。この場合、座席管理装置2は座席1番のリーダ/ライタに青ランプ消灯信号を送信して青ランプを消灯させ、赤ランプを点灯させて座席1番を空席状態に変更する。こうすることにより、座席1番は他の人が利用可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、車内改札をせずに正当な乗車券で座席が利用されているか否かが一目で確認できるとともに、座席の利用状況が正確に把握できるので産業上の利用価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】車上に搭載される座席利用状況管理システムの例を説明する概念図である。
【図2】非接触ICカードのメモリ領域の内容を示す図である。
【図3】乗り継ぎを説明するための図である。
【図4】重複乗車を説明するための図である。
【符号の説明】
【0027】
1…列車位置情報システム、2…座席管理装置、3…リーダ/ライタ、4…発券端末、5…入鋏端末。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席に対応して設けられ、乗車券情報を保持する可搬情報処理媒体と通信してデータの読み書きをするリーダ/ライタと、
前記リーダ/ライタにより制御され、座席の利用状態、座席利用の可否に応じて表示態様を変える座席に対応して設けられた表示手段と、
位置情報システムから運行情報を取得するとともに、前記リーダ/ライタとの間で相互に情報を送受信する座席管理装置とを備え、
前記リーダ/ライタは、可搬情報処理媒体から読み取った乗車券情報と、座席管理装置から受信した運行情報とに基づいて前記表示手段による表示態様を制御することを特徴とする座席利用状況管理システム。
【請求項2】
前記リーダ/ライタは、可搬情報処理媒体から読み取った乗車券情報と、前記座席管理装置から取得した運行情報とに基づいて有効乗車区間内か否か判定し、判定結果に基づいて表示手段を制御することを特徴とする請求項1記載の座席利用状況管理システム。
【請求項3】
前記リーダ/ライタは、可搬情報処理媒体から読み取った乗車券情報と、前記座席管理装置から取得した運行情報とから乗車方向を判定し、判定結果に基づいて表示手段を制御することを特徴とする請求項1記載の座席利用状況管理システム。
【請求項4】
前記リーダ/ライタは、請求項3記載の乗車方向の判定において判定された正規の乗車方向と、可搬情報処理媒体から読み取った降車駅名とから重複乗車か乗り継ぎかを判定し、判定結果に基づいて表示手段による表示態様を制御することを特徴とする座席利用状況管理システム。
【請求項5】
前記座席管理装置は、リーダ/ライタから送信される媒体識別情報により座席の変更があったか否かを検出することを特徴とする請求項1記載の座席利用状況管理システム。
【請求項6】
前記運行情報における終着駅において、前記リーダ/ライタは表示手段を初期状態に設定することを特徴とする請求項1記載の座席利用状況管理システム。
【請求項7】
さらに、座席管理装置と通信し、座席利用情報を送受信して座席利用状況を一覧表示する機能を有する乗務員が保持する発券端末を備え、発券端末が保持する座席利用情報を座席管理装置からリーダ/ライタへ送信し、座席利用情報を受信したリーダ/ライタは受信した情報に基づいて表示手段を制御することを特徴とする請求項1記載の座席利用状況管理システム。
【請求項8】
さらに、座席管理装置と通信するとともに、乗車券情報を保持する可搬情報処理媒体と通信してデータの読み書きをする乗務員が保持する端末を備えたことを特徴とする請求項1記載の座席利用状況管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−79186(P2006−79186A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259868(P2004−259868)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年7月1日 社団法人日本鉄道技術協会発行の「サイバネティクスVol.9 No.3号」に発表
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(593092482)ジェイアール東日本メカトロニクス株式会社 (85)
【Fターム(参考)】